(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-19
(45)【発行日】2023-09-27
(54)【発明の名称】成形型、及びインサート成形体の製造方法
(51)【国際特許分類】
B29C 44/58 20060101AFI20230920BHJP
B29C 33/12 20060101ALI20230920BHJP
B29C 44/00 20060101ALI20230920BHJP
B29C 44/12 20060101ALI20230920BHJP
B29C 44/44 20060101ALI20230920BHJP
B29K 105/04 20060101ALN20230920BHJP
B29L 31/58 20060101ALN20230920BHJP
【FI】
B29C44/58
B29C33/12
B29C44/00 G
B29C44/12
B29C44/44
B29K105:04
B29L31:58
(21)【出願番号】P 2020041776
(22)【出願日】2020-03-11
【審査請求日】2022-11-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000131810
【氏名又は名称】株式会社ジェイエスピー
(74)【代理人】
【識別番号】110002354
【氏名又は名称】弁理士法人平和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】橋本 圭一
(72)【発明者】
【氏名】久松 功昇
【審査官】加賀 直人
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-136851(JP,A)
【文献】特開2019-142086(JP,A)
【文献】国際公開第2015/159691(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/009820(WO,A1)
【文献】特開2011-020417(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 44/58
B29C 33/12
B29C 44/00
B29C 44/12
B29C 44/44
B29K 105/04
B29L 31/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発泡粒子成形体と、前記発泡粒子成形体に埋設された剛性部材との一体成形物であり、前記発泡粒子成形体から前記剛性部材の一部が露出して突出する略U字状の突出部を有するインサート成形体を型内成形にて形成するための成形型であって、
前記成形型は、前記突出部を成形型に固定するための固定構造を備え、
前記固定構造は、
前記突出部を収容する収容体と、
前記収容体に収容された前記突出部を前記収容体と共に固定する固定体と、
前記固定体に取り付けられ、前記収容体に収容された前記突出部の柱部を避けて前記収容体の開口部を閉塞可能とする切欠きが形成されている、前記収容体の開口部を閉塞するシャッターとを有する一又は複数の固定具を備え、
前記一又は複数の固定具のうちの少なくとも一つが第一の固定具であり、
前記第一の固定具が有する前記固定体は、前記略U字状の突出部の柱部間に挿入される位置決めピンを備え、
前記位置決めピンは、前記収容体に収容された前記突出部側に向かって先細りする形状であり、
前記第一の固定具においては、前記収容体に収容された前記突出部と前記固定体とが接近することで、前記位置決めピンが前記柱部間に挿入されて、前記収容体の位置決め部と前記固定体との間に前記突出部を固定すると共に、前記シャッターが前記収容体の開口部を閉塞することを特徴とする成形型。
【請求項2】
前記固定構造は、複数の固定具を備え、
前記複数の固定具のうちの少なくとも一つが第二の固定具であり、
前記第二の固定具が有する前記固定体は、前記略U字状の突出部の柱部に当接される位置決めプレートを備え、
前記第二の固定具においては、前記収容体に収容された前記突出部と前記固定体とが接近することで、前記位置決めプレートが該突出部の該位置決めプレートと対向する面に当接されて、前記収容体の位置決め部と前記固定体との間に前記突出部を固定すると共に、前記シャッターが前記収容体の開口部を閉塞する請求項1に記載の成形型。
【請求項3】
発泡粒子成形体と、前記発泡粒子成形体に埋設された剛性部材との一体成形物であり、前記発泡粒子成形体から前記剛性部材の一部が露出して突出する略U字状の突出部を有するインサート成形体を製造する方法であって、
請求項1又は2に記載の成形型を用い、
前記収容体に前記突出部を収容し、前記収容体に収容された突出部と前記固定体とを接近させることにより、前記突出部を前記固定構造に固定する工程Aと、
前記突出部が固定されて前記剛性部材が取り付けられた成形型内に発泡粒子を充填して型内成形することにより、前記インサート成形体を成形する工程Bと
を有し、
前記工程Aにおいて、前記第一の固定具に前記突出部を固定するに際し、
前記略U字状の突出部の柱部間に前記位置決めピンを挿入することで、前記収容体の位置決め部と前記固定体との間に前記突出部を固定すると共に、前記収容体の開口部を前記シャッターにより閉塞することを特徴とするインサート成形体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発泡粒子成形体に埋設された剛性部材の一部が、発泡粒子成形体から露出して突出する略U字状の突出部を有するインサート成形体を型内成形するための成形型、及びそのようなインサート成形体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、熱可塑性樹脂からなる発泡粒子を型内成形してなる発泡粒子成形体が知られており、種々の製品への適用が試みられている。
近年にあっては、自動車の座席シートに用いられる車両用座席芯材などにも適用されるようになってきている。車両用座席芯材に適用した例として、成形型内の所定の位置に、車両への座席芯材の取り付けに利用される取付フックを備える金属製の剛性部材を取り付けて、発泡粒子成形体を型内成形する、いわゆるインサート成形によって製造された、発泡粒子成形体と該発泡粒子成形体に埋設された剛性部材との一体成形物であり、取り付けフックが略U字状の突出部として発泡粒子成形体から露出して突出するように構成されたインサート成形体が知られている(例えば、特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-136851号公報
【文献】国際公開2015/159691号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1では、突出部(留め具)に隙間なく篏合する凹部を設けた基準位置保持部に、一つの突出部を相対移動不能に保持し、他の突出部を相対移動可能に保持して、剛性部材を成形型に取り付けるようにしている。
しかしながら、例えば、ワイヤー材を曲げ加工するなどして形成される突出部には、加工精度のバラツキなどが生じ得るため、隙間なく篏合させて保持するような機構では、成形型への取り付け性が低下する虞があり、作業性にも劣ってしまうという不具合もある。
【0005】
また、特許文献2では、成形型に設けた突出部の収容部に、突出部の挿入操作などに連動して開閉する開閉体を備えることにより、収容部に発泡粒子が入り込んでしまわないようにして、インサート成形体の突出部周辺にバリが発生してしまうのを抑制している。
しかしながら、引用文献2では、主に付勢手段によって開閉体が開閉するように構成されており、装置構造が複雑なため、収容部内の清掃やメンテナンスが煩雑になるなどの不具合がある。
また、突出部の加工精度のバラツキ等により、成形型への剛性部材の取り付け性が低下する虞や、得られるインサート成形体における突出部の位置精度が低下する虞がある。
【0006】
そこで、本発明者らは、上記の如き不具合を解消すべく鋭意検討を重ねた結果、本発明を完成するに至った。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る成形型は、発泡粒子成形体と、前記発泡粒子成形体に埋設された剛性部材との一体成形物であり、前記発泡粒子成形体から前記剛性部材の一部が露出して突出する略U字状の突出部を有するインサート成形体を型内成形にて形成するための成形型であって、前記成形型は、前記突出部を成形型に固定するための固定構造を備え、前記固定構造は、前記突出部を収容する収容体と、前記収容体に収容された前記突出部を前記収容体と共に固定する固定体と、前記固定体に取り付けられ、前記収容体に収容された前記突出部の柱部を避けて前記収容体の開口部を閉塞可能とする切欠きが形成されている、前記収容体の開口部を閉塞するシャッターとを有する一又は複数の固定具を備え、前記一又は複数の固定具のうちの少なくとも一つが第一の固定具であり、前記第一の固定具が有する前記固定体は、前記略U字状の突出部の柱部間に挿入される位置決めピンを備え、前記位置決めピンは、前記収容体に収容された前記突出部側に向かって先細りする形状であり、前記第一の固定具においては、前記収容体に収容された前記突出部と前記固定体とが接近することで、前記位置決めピンが前記柱部間に挿入されて、前記収容体の位置決め部と前記固定体との間に前記突出部を固定すると共に、前記シャッターが前記収容体の開口部を閉塞する構成としてある。
【0008】
また、本発明に係るインサート成形体の製造方法は、発泡粒子成形体と、前記発泡粒子成形体に埋設された剛性部材との一体成形物であり、前記発泡粒子成形体から前記剛性部材の一部が露出して突出する略U字状の突出部を有するインサート成形体を製造する方法であって、上記成形型を用い、前記収容体に前記突出部を収容し、前記収容体に収容された突出部と前記固定体とを接近させることにより、前記突出部を前記固定構造に固定する工程Aと、前記突出部が固定されて前記剛性部材が取り付けられた成形型内に発泡粒子を充填して型内成形することにより、前記インサート成形体を成形する工程Bとを有し、前記工程Aにおいて、前記第一の固定具に前記突出部を固定するに際し、前記略U字状の突出部の柱部間に前記位置決めピンを挿入することで、前記収容体の位置決め部と前記固定体との間に前記突出部を固定すると共に、前記収容体の開口部を前記シャッターにより閉塞する方法としてある。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、発泡粒子成形体に埋設された剛性部材の一部が、発泡粒子成形体から露出して突出する略U字状の突出部を有するインサート成形体を型内成形するに際し、インサート成形体の突出部周辺のバリの発生を抑制できると共に、突出部が加工精度のバラツキを有する場合であっても、成形型に突出部を容易に固定できる。また、突出部の位置精度が高いインサート成形体を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施形態に係るインサート成形体の製造方法によって製造されるインサート成形体の一例を模式的に示す説明図である。
【
図2】本発明の実施形態に係るインサート成形体の製造方法における一工程を模式的に示す説明図である。
【
図3】本発明の実施形態に係るインサート成形体の製造方法における一工程を模式的に示す説明図である。
【
図4】本発明の実施形態に係るインサート成形体の製造方法における一工程を模式的に示す説明図である。
【
図5】本発明の実施形態に係るインサート成形体の製造方法における一工程を模式的に示す説明図である。
【
図6】本発明の実施形態に係る成形型が備える固定構造の第一の固定具の動作を示す説明図である。
【
図7】本発明の実施形態に係る成形型が備える固定構造の第一の固定具の動作を示す説明図である。
【
図8】本発明の実施形態に係る成形型が備える固定構造の第一の固定具の動作を示す説明図である。
【
図9】本発明の実施形態に係る成形型が備える固定構造の第二の固定具の動作を示す説明図である。
【
図10】本発明の実施形態に係る成形型が備える固定構造の第二の固定具の動作を示す説明図である。
【
図11】本発明の実施形態に係る成形型が備える固定構造の第二の固定具の動作を示す説明図である。
【
図12】本発明の実施形態に係る成形型が備える固定構造の固定具において、固定体が後退して収容体の開口部が開放された状態を斜視して示す説明図である。
【
図13】本発明の実施形態に係る成形型が備える固定構造の固定具において、固定体が後退して収容体の開口部が開放された状態を平面視して示す説明図である。
【
図14】本発明の実施形態に係る成形型が備える固定構造の固定具において、固定体が前進して収容体の開口部がシャッターで閉塞された状態を斜視して示す説明図である。
【
図15】本発明の実施形態に係る成形型が備える固定構造の固定具において、固定体が前進して収容体の開口部がシャッターで閉塞された状態を平面視して示す説明図である。
【
図16】本発明の実施形態に係る成形型が備える固定構造の第一の固定具において、収容体の位置決め部と固定体との間に突出部が固定されたときの、位置決めピンと突出部との位置関係を示す説明図である。
【
図18】本発明の実施形態に係る成形型が備える固定構造の第二の固定具において、収容体の位置決め部と固定体との間に突出部が固定されたときの、位置決めプレートと突出部との位置関係を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の好ましい実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0012】
図1は、本実施形態に係るインサート成形体の製造方法によって製造されるインサート成形体1の一例を模式的に示している。
図1に示す例において、インサート成形体1は、発泡粒子成形体2と、発泡粒子成形体2に埋設された剛性部材3との一体成形物であり、発泡粒子成形体2から剛性部材3の一部が露出して突出する略U字状の突出部4を有している。
なお、略U字状とは、U字又はこれに近似する形状をいい、所定の距離で離間する一対の柱部が一端側で連なった形状をいうものとする。
【0013】
本実施形態において、製造対象とされるインサート成形体1の用途は、特に限定されない。例えば、自動車の座席シートに用いられる車両用座席芯材などに適用することができ、用途に適した構成とすることができる。車両用座席芯材に適用する場合、インサート成形体1は、車両への取り付けに利用される取り付けフック5と、かかる取り付けフック5が連結されたフレーム部材6とが、剛性部材3として発泡粒子成形体2に埋設されるように一体に成形されるとともに、取り付けフック5の少なくとも一部が、略U字状の突出部4として発泡粒子成形体2から露出して突出するように構成することができる。
【0014】
インサート成形体1を座席芯材として使用する場合、座席芯材の前方端側には、座席芯材の左右方向にわたる肉厚領域が設けられていることが好ましい。また、この肉厚領域おいて、座席芯材の左右方向に延在する剛性部材3が埋設されることが好ましい。なお、座席芯材の前後方向、左右方向、上下方向は、座席芯材が車両に設置された際における、車両の前後方向、左右方向、上下方向に一致する方向である。また、肉厚領域とは、座席芯材の上下方向における厚みが、座席芯材の上下方向における最小厚みより厚くなっている領域を意味する。肉厚領域における座席芯材の厚みは、100mm以上であることが好ましく、120mm以上であることがより好ましく、150mm以上であることがさらに好ましい。
【0015】
インサート成形体1をこのように構成して、車両用シート芯材に適用するにあたり、取り付けフック5とフレーム部材6は、例えば、鉄、アルミニウム、銅等の金属、又は繊維強化樹脂などの剛性を備えた材料を用いて形成することができる。これらは適宜組み合わせて用いてもよい。車両用シート芯材としてのインサート成形体1の強度を向上させるという観点からは、金属を用いるのが好ましく、特に、鋼材を用いるのが好ましい。
【0016】
また、フレーム部材6には、ワイヤー材などが好適に使用できる。フレーム部材6としては、線状、管状又は棒状などの形状を有するものを用いることができる。また、適用される車両用座席芯材の形状、寸法などに応じて、曲げ加工をするなどして、発泡粒子成形体2内の適切な位置に、フレーム部材6が埋設されるようにすることができれば良く、例えば直線状や環状のフレーム部材6や、直線状や環状の部材を組み合わせた形状等のフレーム部材6を用いることができる。
取り付けフック5も同様に、ワイヤー材などが好適に使用でき、例えば、ワイヤー材を略U字状に曲げ加工することによって形成できる。取り付けフック5は、例えば、フレーム部材6に直接連結してもよく、板状の台座部等の連結部材を介して連結されるようにしてもよく、ワイヤー材の所定の部位を略U字状に曲げ加工して、フレーム部材6と一体に形成してもよい。
また、取り付けフック5における、柱部間の離間距離(それぞれの柱部4aの中心線を結ぶ線分上における、一方の柱部4aの外縁と、他方の柱部4aの外縁との間の長さ)は、概ね6~20mmであることが好ましく、8~15mmであることがより好ましい。
【0017】
座席芯材用途においては、剛性部材3は、座席芯材の下面から外方(座席芯材の下方)に向かって突出する少なくとも2つの取り付けフック5を有することが好ましい。また、該取り付けフック5は、少なくとも座席芯材の前方端側に設けられていることが好ましい。
特に、少なくとも座席芯材の前方端側に、座席芯材の左右方向に延在する剛性部材3が埋設されると共に、該剛性部材3が座席芯材の下面から外方に向かって突出する少なくとも2つの取り付けフック5を有することが好ましい。
なお、取り付けフック5の個数の上限は、概ね6つであることが好ましく、5つであることがより好ましく、4つであることがさらに好ましい。
【0018】
ワイヤー材としては、直径2~8mmの棒状又は線状のものを用いるのが好ましく、ワイヤー材の直径は、3~7mmであるのがより好ましい。さらに、ワイヤー材は、引張強さが200N/mm2以上であるのが好ましく、車両用シート芯材としてのインサート成形体1の強度を向上させる観点から、250~1300N/mm2であるのがより好ましい。ワイヤー材の降伏点は、400N/mm2以上であるのが好ましく、440N/mm2以上であるのがより好ましい。
なお、ワイヤー材の物性は、JIS G3532に基づいて測定することができる。
【0019】
ここで、埋設とは、剛性部材3の形状が、発泡粒子成形体2によりその周囲を囲われている状態を意味する。この場合、発泡粒子成形体2と剛性部材3との間に、わずかな隙間があってもよい。剛性部材3としてワイヤー材を用いる場合、剛性部材3(取り付けフックを含む)の周囲(剛性部材3の軸方向(中心線)に直交する面における剛性部材の外縁部)が埋設された部分が、剛性部材3(取り付けフックを含む)の50%以上にわたる範囲となることが好ましく、70%以上にわたる範囲となることがより好ましく、90%以上にわたる範囲となることがさらに好ましい。
また、露出とは、剛性部材3の少なくとも一部がインサート成形体1の外方から視認できる状態を意味する。
【0020】
本実施形態において、インサート成形体1を製造するには、剛性部材3の突出部4を固定するための固定構造20を備えた成形型10が用いられる。
図2~5は、本実施形態に係るインサート成形体の製造方法における一工程を模式的に示す説明図である。これらの図では、一対の凸型ユニット11と凹型ユニット12とを含んで構成される成形型10において、凸型ユニット11が固定構造20を備えるように成形型10を構成した例を示しているが、凹型ユニット12が固定構造20を備えるようにしてもよい。固定構造20を除く成形型10の具体的な構成は、特に限定されず、後述するように構成された固定構造20を備えるように、従来の成形型を改良して用いることもできる。
【0021】
図2~5を参照して、インサート成形体1を製造する工程の概略を説明するに、まず、工程Aとして、成形型10を型開きした状態で待機させておき(
図2参照)、剛性部材3の突出部4を固定構造20に固定して、成形型10内の所定の位置に剛性部材3を取り付ける(
図3参照)。このとき、製造されたインサート成形体1において、発泡粒子成形体2内の適切な位置に剛性部材3が埋設されるように、剛性部材3を取り付ける位置が定められる。成形型10に固定構造20を設置する位置は、剛性部材3が取り付けられる位置が適切となるように、適宜設計することができる。
【0022】
次に、工程Bとして、まず、凸型ユニット11と凹型ユニット12のいずれか一方又は両方を移動させて型閉じする(
図4参照)。その後、熱可塑性樹脂からなる発泡粒子を、図示しない充填口から成形型10のキャビティ内に充填し、次いで、図示しない配管から、加熱スチームをキャビティ内に導入して、発泡粒子を加熱して二次発泡させるとともに、発泡粒子を相互に融着させて発泡粒子成形体2を型内成形する(
図5参照)。そして、冷却工程などの後工程を経た後に、成形型10を型開きして離型することによって、発泡粒子成形体2と、発泡粒子成形体2に埋設された剛性部材3とが一体に成形され、発泡粒子成形体2から剛性部材3の一部が露出して突出する略U字状の突出部4を有するインサート成形体1を製造することができる。
【0023】
上記発泡粒子を構成する熱可塑性樹脂は、適宜選択可能であるが、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリ乳酸系樹脂などの熱可塑性樹脂や、ポリオレフィン系樹脂とポリスチレン系樹脂とを含む複合樹脂を用いることができる。
上記樹脂の中でも、強度や耐衝撃性の観点から、ポリオレフィン系樹脂、又はポリオレフィン系樹脂とポリスチレン系樹脂との複合樹脂を用いることが好ましい。さらに、ポリオレフィン系樹脂としては、ポリプロピレン系樹脂やポリエチレン系樹脂が好ましく、ポリプロピレン系樹脂が特に好ましい。
【0024】
熱可塑性樹脂発泡粒子としては、熱可塑性樹脂の樹脂粒子に発泡剤を含浸させて発泡性樹脂粒子とした後、これを発泡させることで得られるような発泡粒子の他、発泡ストランド、発泡成形体及び押出発泡体の粉砕物等が挙げられる。さらに、該発泡粒子としては、発泡粒子内に貫通孔を有する、筒状形状の発泡粒子を使用することもできる。
なお、発泡粒子の形状としては、例えば、円柱状、球状、角柱状、楕円球状、円筒状等を採用することができる。
【0025】
また、発泡粒子成形体2の成形体密度(見掛け密度)は、0.02~0.5g/cm3であるのが好ましく、0.03~0.3g/cm3であるのがより好ましい。特に、ポリオレフィン系樹脂を用いる場合には、0.02~0.2g/cm3であるのが好ましく、0.03~0.1g/cm3であるのがより好ましい。ポリオレフィン系樹脂からなる発泡粒子成形体2は、成形体密度が上記範囲であれば、剛性や耐衝撃性に優れるとともに、適度な弾性を有するので、剛性部材3の保持性にも優れたものとなる。
なお、成形体密度は、発泡粒子成形体の重量を、その体積で除することで算出することができる。発泡粒子成形体の体積(見掛け体積)は、発泡粒子成形体2を水没させた際の体積増加分から算出する方法(水没法)や、発泡粒子成形体の
外形寸法から算出する方法により求めることができる。
【0026】
本実施形態において、剛性部材3の突出部4を成形型10に固定するための固定構造20は、第一の固定具20aと第二の固定具20bとを備えている。
図6~
図8は、第一の固定具20aの動作を示す説明図であり、
図2のA-A断面に相当する第一の固定具20aの要部断面を模式的に示している。
また、
図9~
図11は、第二の固定具20bの動作を示す説明図であり、
図2のB-B断面に相当する第二の固定具20bの要部断面を模式的に示している。
【0027】
これらの図に示すように、固定構造20が備える第一の固定具20aと第二の固定具20bとは、剛性部材3の突出部4を収容する収容体21と、収容体21に収容された突出部4を収容体21と共に固定する固定体27と、収容体21の開口部22を閉塞するシャッター28とを共通に有している。
型内成形時における剛性部材3の変形をより抑制する観点から、固定構造20は、一つの第一の固定具20aを備えることが好ましい。
【0028】
図示する例において、収容体21には、収容体21の天面に開口する開口部22から挿入された突出部4が収容される収容部23が設けられているとともに、収容体21に収容された突出部4に対して固定体27が進退可能となるように、収容部23と連通する固定体27の可動スペース26が、収容体21の天面側から底面側に貫通して設けられている。
ここで、
図6及び
図9は、固定体27が後退した状態を示している。
図7及び
図10は、収容部23に突出部4が挿入された状態を示している。
図8及び
図11は、収容部23に挿入された突出部4に対して固定体27が前進した状態を示している。
【0029】
収容部23は、突出部4の加工精度のバラツキ、突出部4の挿入し易さ、型内成形時の剛性部材3と成形型10との線膨張差などを考慮しつつ、挿入された突出部4を仮止めできるように、その開口部22が、突出部4の外形寸法よりもやや大きめに形成されているのが好ましい。
【0030】
例えば、突出部4の突出方向に対して直交する面における、収容部23の開口部(開口面)長手方向の長さL1と、突出部4の幅w(突出部4を構成する一方の柱部4aの外方側の一端から、他方の柱部4aの外方側の一端までの長さ)との差(L1-w)が、1~5mmとなるように設計するのが好ましい。特に、収容部23への突出部4の取り付け性を良好に維持しつつ、より安定して突出部4の位置決めを行うことができる観点から、第一の固定具20aの収容部23においては、上記差(L1-w)が1~4mm、より好ましくは1.2~3.0mmとなるように設計することが好ましい。また、第二の固定具20bの収容部23における上記差(L1-w)が、第一の固定具20bの収容部23における上記差(L1-w)よりも大きいことが好ましい。このようにすることで、第二の固定具20bの収容部23に収容された突出部4を固定する際に、突出部4の開口部長手方向に沿った移動を許容しやすくなり、突出部4の位置精度に優れると共に、寸法精度に優れるインサート成形体1を安定して得ることができる。
【0031】
また、突出部4の突出方向に対して直交する面における、収容部23の開口部(開口面)短手方向(前記長手方向に直交する方向であり、突出部4の2つの柱部4aの中心線を通る直線と直交する方向)の長さL
2と、突出部4の厚み(突出部4がワイヤー材を用いて形成されている場合には、当該ワイヤー材の直径)tとの差(L
2-t)が、0.5~5mmとなるように設計するのが好ましい。特に、収容部23への突出部4の取り付け性を良好に維持しつつ、より安定して突出部4の位置決めを行うことができる観点から、第一の固定具20aの収容部23においては、上記差(L
2-t)が1~4mm、より好ましくは1.2~3.0mmとなるように設計するのが好ましい(
図13参照)。
【0032】
また、第二の固定具20bの収容部23における上記差(L2-t)が、第一の固定具20bの収容部23における上記差(L2-t)よりも大きいことが好ましい。このようにすることで、第二の固定具20bの収容部23に収容された突出部4を固定する際に、突出部4の開口部短手方向に沿った移動を許容しやすくなり、突出部4の位置精度に優れると共に、寸法精度に優れるインサート成形体1を安定して得ることができる。
【0033】
収容部23と連通して設けられる固定体27の可動スペース26は、収容部23に挿入された突出部4の仮止めを妨げない範囲で、収容部23の天面側における、開口部長手方向の長さを確保しつつ、収容部23と連通させるのが好ましい。
後述する位置決めピン29aや位置決めプレート29bに対して、これらを備える固定体27の横幅(収容体21の開口部長手方向の長さ)が長い場合には、固定体27の可動スペース26を次のように設けることもできる。すなわち、収容体21の天面側の部分では、収容部23に挿入された突出部4の仮止めを妨げない範囲で、収容部23の開口部長手方向の長さL
1よりも短い横幅Wで、固定体27の可動スペース26を収容部23と連通させる。収容体21のそれ以外の部分(天面側を除く部分)では、例えば、収容部23の開口部長手方向の長さL
1と同じ横幅で、固定体27の可動スペース26を収容部23と連通させる。このようにして、収容体21の天面側の部分では、収容部23に挿入された突出部4の仮止めを妨げないようにしつつ、収容体21の天面側を除く部分では、固定体27の可動スペース26を幅広に設けることにより、それに応じて固定体27の横幅を長くして、位置決めピン29aや位置決めプレート29bを備えるのに必要な固定体27の横幅を確保することができる(
図12、
図14など参照)。
【0034】
収容部23の深さ、換言すれば、収容部23の開口部から底部24までの高さは、収容部23に挿入された突出部4の先端部を底部24で受けて、突出部4の高さ方向(突出部4の突出方向)の位置決めがなされるように適宜設計することができる。突出部4の高さ方向の位置は、製造されたインサート成形体1において、発泡粒子成形体2から露出して突出する突出部4の突出長さに応じて定められる。
【0035】
また、固定体27に対向する収容部23の内壁面には、後述するようにして収容体21と固定体27との間に突出部4を固定する際に、突出部4を面で受けて、固定体27から離れる方向への突出部4の移動を規制する位置決め部25が、当該内壁面から突出するように設けられている。位置決め部25は、後述する位置決めピン29aや位置決めプレート29bと対向する位置に設けるのが好ましい。
また、突出部4をより安定して位置精度良く固定する観点から、突出部4の突出方向における、位置決め部25の中心位置は、収容部23の開口部22から、収容部23の深さの1/2までの間に位置することが好ましい。
【0036】
突出部4を面で受ける際に、突出部4が傾いてしまったりすることがないように、位置決め部25の横幅(突出部4の突出方向に対して直交する面における、突出部4の2つの柱部4aの中心線を通る直線と一致する方向の長さ)が、略U字状の突出部4の柱部4aの中心間距離(一方の突出部4の柱部4aの中心線と、他方の突出部4の柱部4aの中心線との間の長さ)よりも長くなるように、位置決め部25を設けるのが好ましく、このような態様は、柱部4aが円柱状である場合に、特に好適である(
図17、
図19参照)。このような位置決め部25を当該内壁面に設けることで、収容部23への突出部4の挿入し易さを損なうことなく、固定体27から離間する方向への突出部4の移動を規制できるため好ましい。
なお、当該内壁面を位置決め部とし、内壁の全面で突出部4を受けて、突出部4の移動を規制するようにしてもよい。
【0037】
このような収容体21と共に突出部4を固定する固定体27は、図示するような板状に形成することができる。そして、収容体21の底面側から収容体21の外方に向かって突出させた固定体27の一方の端部側に、エアシリンダ又は油圧シリンダなどの駆動装置30を接続することにより、収容体21に設けられた可動スペース26内を収容体21に収容された突出部4に対して進退するように構成することができる。
【0038】
また、固定体27の他方の端部(収容体21の開口部22側に位置する固定体27の端部)には、収容体21の開口部22を閉塞するシャッター28が取り付けられている。シャッター28には、収容体21の開口部22を閉塞する際に、収容体21に収容された突出部4との干渉を避けるために、収容体21に収容された突出部4の柱部4aを避けて前記収容体21の開口部22を閉塞可能とする切欠き28aが形成されている(
図12~
図15参照)。
ここで、
図12は、固定体27が後退して収容体21の開口部22が開放された状態を斜視して示す説明図であり、
図13は、同状態を平面視した説明図である。
図14は、固定体27が前進して収容体21の開口部22がシャッター28で閉塞された状態を斜視して示す説明図であり、
図15は、同状態を平面視した説明図である。
【0039】
収容体21の開口部22がシャッター28で閉塞されるようにするのは、型内成形時にキャビティ内に充填された発泡粒子が、収容体21の内部に入り込んでしまうことによって、製造されたインサート成形体1において、突出部4の周辺に発泡粒子によるバリが発生するのを抑制するためである。したがって、シャッター28に形成する切り欠き28aの形状、大きさなどは、突出部4と切欠き28aとの間から、収容体21の内部に発泡粒子が入り込んでしまうことがないように適宜設計するのが好ましい。具体的には、収容体21の開口部長手方向におけるシャッター28の切欠きの開口端の長さと、収容体21の開口部長手方向における柱部4aの長さとの差が0.5~5mmであることが好ましく、1~4mmであることがより好ましい。
柱部4aが円柱状である場合には、シャッター28の切欠きは半円状に形成されることが好ましい。
【0040】
また、固定体27の他方の端部にシャッター28を取り付けるにあたり、固定体27の他方の端部が収容体21の天面と略面一となるように、収容体21に設けられた可動スペース26内に固定体27を配置し、固定体27が後退又は前進するのに伴って、シャッター28が収容体21の天面上を移動して、収容体21の開口部22を開閉するように構成するのが好ましい。このように構成することで、収容体21の天面とシャッター28との間から、より確実に、収容体21の内部に発泡粒子が入り込んでしまわないようにすることができる。
【0041】
本実施形態おいて、第一の固定具20aと第二の固定具20bとは、上記の如き収容体21、固定体27、及びシャッター28を共通に有するところ、
図6~
図8に示すように、第一の固定具20aの固定体27は、略U字状の突出部4の柱部4a間に挿入される位置決めピン29aを備えている。第一の固定具20aの固定体27が備える位置決めピン29aは、収容体21に収容された突出部4側に向かって先細りする形状に形成されている。
なお、位置決めピン29aは、位置決めピン29aが突出部4に挿入された状態において、突出部4から収容体21側の部分において、少なくとも先細り形状となっていれば良い。
【0042】
図示する例では、位置決めピン29aは円錐台状に形成されているが、角錐台状などに形成してもよい。
また、位置決めピン29aは複数の部材を組み合わせて形成してもよく、例えば、三角柱や四角柱等の部材を複数組み合わせて、収容体21に収容された突出部4側に向かって先細り形状とした位置決めピン29aとしてもよい。
円錐台状等の位置決めピン29aを用いる場合、位置決めピン29aのテーパ(突出部4の突出方向に直交する面における、位置決めピン29aの挿入方向と、位置決めピン29a外縁部との成す角)は、概ね10~50°であることが好ましく、15~40°であることがより好ましく、20~30°であることがさらに好ましい。
【0043】
このような位置決めピン29aを固定体27が備えることによって、第一の固定具20aにおいては、前述したようにしてインサート成形体1を製造するに際の工程Aにおいて、固定体27が後退して収容体21の開口部22が開放された状態で(
図6、
図12、
図13参照)、収容部23に突出部4が挿入されると(
図7参照)、固定体27が前進し、収容体21に収容された突出部4と固定体27とが接近することで、位置決めピン29aが柱部4a間に挿入されて、収容体21の位置決め部25と固定体27との間に突出部4を固定すると共に、シャッター28が収容体21の開口部22を閉塞するように構成されている(
図8、
図14、
図15参照)。
【0044】
ここで、
図16に、略U字状の突出部4の柱部4a間に位置決めピン29aが挿入されて、収容体21の位置決め部25と固定体27との間に突出部4が固定されたときの、位置決めピン29aと突出部4との位置関係を示し、
図16のC-C断面を
図17に示す。これらの図に示すように、第一の固定具20aは、収容部23の内壁面に設けられた位置決め部25により、固定体27から離れる方向(
図17における下方向)への突出部4の移動が規制されながら、柱部4a間に挿入された位置決めピン29aにより、収容部23の開口部長手方向(
図16及び
図17における左右方向)に沿った突出部4の移動と、固定体27に向かう方向(
図17における上方向)への突出部4の移動とが規制された状態で、収容体21の位置決め部25と固定体27との間に突出部4を固定することができる。
【0045】
このようにして突出部4を固定するにあたり、収容体21に収容された突出部4側に向かって先細りする形状に位置決めピン29aを形成することによって、収容部23に挿入されて仮止めされた際の突出部4の位置ずれや、突出部4の加工精度のバラツキなどに起因する、収容部23の開口部長手方向及び開口部短手方向における突出部4の位置ずれが生じていたとしても、位置決めピン29aが柱部4a間に挿入されていく過程で、突出部4が位置決めピン29aの周面(テーパー面)と当接し、位置決めピン29aにより押されて所定の位置に移動することで、そのような位置ずれを修正することができる。
なお、剛性部材3や突出部4における加工精度のバラツキとしては、例えば、突出部4の形状の変動や、突出部4間の間隔の変動等が挙げられる。
【0046】
また、位置決めピン29aは、突出部4の柱部4a間に挿入されたときに、柱部4aに当接して突出部4を固定するように構成してもよいが、突出部4の加工精度のバラツキを考慮して、柱部4aと位置決めピン29aとの間で若干の隙間を以て突出部4を固定するように構成するのが好ましい。
例えば、位置決めピン29aが柱部4a間に挿入されて、収容体21の位置決め部25と固定体27との間に突出部4を固定したときに、柱部4a間の離間距離(それぞれの柱部4aの中心線を結ぶ線分上における、一方の柱部4aの外縁と、他方の柱部4aの外縁との間の距離)w
0と、それぞれの柱部4aの中心線を結ぶ線分上における、位置決めピン29aの径φDとの差(w
0-φD)が、0.1~3mm、より好ましくは0.2~2mm、さらに好ましくは0.3~1mmとなるように、突出部4の形状、寸法などに応じて位置決めピン29aを設計するのが好ましい(
図17参照)。
【0047】
位置決めピン29aの基端側の横幅に対して、固定体27の横幅が長い場合には、前述したようにして、収容体21の天面側を除く部分で、固定体27の可動スペース26を幅広に設け、それに応じて固定体27の横幅を長くして、位置決めピン29aを備えるのに必要な固定体27の横幅を確保するのが好ましい。
また、突出部4をより安定に位置精度良く固定する上で、収容体21の天面にできるだけ近い位置で、位置決めピン29aが柱部4a間に挿入されて、突出部4が固定されるようにするのが好ましい。
【0048】
一方、
図9~
図11に示すように、第二の固定具20bの固定体27は、略U字状の突出部4の柱部4aに跨って当接される位置決めプレート29bを備えている。第二の固定具20bの固定体27が備える位置決めプレート29bは、収容体21に収容された突出部4の二つの柱部4aを押圧可能な形状に形成されている。
【0049】
このような位置決めプレート29bを固定体27が備えることによって、第二の固定具20bにおいては、前述したようにしてインサート成形体1を製造するに際の工程Aにおいて、固定体27が後退して収容体21の開口部22が開放された状態で(
図9、
図12、
図13参照)、収容部23に突出部4が挿入されると(
図10参照)、固定体27が前進し、収容体21に収容された突出部4と固定体27とが接近することで、位置決めプレート29bが該突出部4の該位置決めプレートと対向する面に当接されて、収容体21の位置決め部25と固定体27との間に突出部4を固定すると共に、シャッター28が収容体21の開口部22を閉塞するように構成されている(
図11、
図14、
図15参照)。
【0050】
ここで、
図18に、略U字状の突出部4の柱部4aに位置決めプレート29bが当接されて、収容体21の位置決め部25と固定体27との間に突出部4が固定されたときの、位置決めプレート29bと突出部4との位置関係を示し、
図18のD-D断面を
図19に示す。これらの図に示すように、第二の固定具20bは、収容部23の内壁面に設けられた位置決め部25と、位置決めプレート29bとで突出部4を挟むことで、位置決め部25により、固定体27から離れる方向(
図19における下方向)への突出部4の移動が規制され、柱部4aに跨って当接された位置決めプレート29bにより、固定体27に向かう方向(
図19における上方向)への突出部4の移動が規制されるが、収容部23の開口部長手方向(
図18及び
図19における左右方向)に沿った収容部23内での突出部4の移動が許容された状態で、収容体21の位置決め部25と固定体27との間に突出部4を固定することができる。
【0051】
これにより、第一の固定具20aに固定した突出部4の収容部23の開口部長手方向に沿った移動が規制されている一方で、第二の固定具20bに固定した突出部4の収容部23の開口部長手方向に沿った移動が許容されるようにして、剛性部材3を成形型10内に安定して精度よく取り付けることができる。その結果、剛性部材3が変形するなどの不具合を抑制しつつ、突出部4の位置精度が高いインサート成形体1を安定して製造することができる。
なお、固定構造20における、突出部4の突出方向に沿った突出部4の移動は、例えば、剛性部材3の自重により規制することや、収容部23と突出部4との間に磁力を生じさせること等により規制することができる。
【0052】
第二の固定具20bに突出部4を固定するにあたり、位置決めプレート29bは、突出部4を面で受けて、収容部23の開口部長手方向における突出部4の移動を規制するように形成されているのが好ましい。位置決めプレート29bは、前記突出部4の該位置決めプレート29bに対向する面を受けることができる形状であれば良く、例えば、直方体状、円錐台状、角錐台状等の部材を用いることができる。また、位置決めプレート29bは、一又は複数の部材で形成されていても良いが、安定して突出部4を受けることができる観点から、一つの部材で形成されることが好ましい。この場合は、突出部4を面で受ける際に、突出部4が傾いてしまったりすることがないように、位置決めプレート29bの突出部4側の端部の横幅(収容体21の開口部長手方向における長さ)が、柱部4aの中心間距離よりも長くなるように、位置決めプレート29bを形成するのが好ましく、このような態様は、柱部4aが円柱状である場合に、特に好適である(
図19参照)。
【0053】
位置決めプレート29bの横幅に対して、固定体27が長い場合には、前述したようにして、収容体21の天面側を除く部分で、固定体27の可動スペース26を幅広に設け、位置決めプレート29bを備えるのに必要な固定体27の横幅を確保するのが好ましい。
突出部4をより安定に固定する上で、収容体21の天面にできるだけ近い位置で、位置決めプレート29bが柱部4aに当接されて、突出部4が固定されるようにするのが好ましい。
【0054】
以上のような本実施形態によれば、発泡粒子成形体2に埋設された剛性部材3の一部が、発泡粒子成形体2から露出して突出する略U字状の突出部4を有するインサート成形体1を型内成形するに際し、インサート成形体1の突出部4周辺のバリの発生を抑制できると共に、突出部4が加工精度のバラツキを有する場合であっても、成形型10に突出部4を容易に固定でき、突出部4の位置精度が高いインサート成形体1を製造することができる。
【0055】
また、突出部4を成形型10に固定するための固定構造20が備える第一の固定具20aと第二の固定具20bは、いずれも固定体27が前進又は後退するだけで、突出部4の固定又はその解除と、収容体21の開口部22の閉塞又は開放とが同時になされるという簡易な構造であるため、収容部23内の清掃や収容体21や固定体27のメンテナンスも容易である。
【0056】
以上、本発明について、好ましい実施形態を示して説明したが、本発明は、前述した実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の範囲で種々の変更実施が可能であることはいうまでもない。
【0057】
例えば、前述した実施形態では、製造対象のインサート成形体1が二つの突出部4を有し、突出部4を成形型10に固定するための固定構造20が、第一の固定具20aと第二の固定具20bとを一つずつ備える例を示したが、これに限定されない。固定構造20が備える固定具は、製造対象のインサート成形体1が有する突出部4の数に応じて適宜設置することができる。例えば、製造対象のインサート成形体1が一つの突出部4を有する場合には、固定構造20が第一の固定具20aだけを備えるように構成することができる。また、製造対象のインサート成形体1が三以上の突出部4を有する場合には、少なくとも一つの固定具を第一の固定具20aとして構成し、他の固定具を第二の固定具20bとして構成することができる。
【符号の説明】
【0058】
1 インサート成形体
2 発泡粒子成形体
3 剛性部材
4 突出部
10 成形型
20 固定構造
20a 第一の固定具
20b 第二の固定具
21 収容体
22 開口部
23 収容部
25 位置決め部
27 固定体
28 シャッター
29a 位置決めピン
29b 位置決めプレート