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特許7351777アルミニウム積層体、包装材、及びプレススルーパッケージ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-19
(45)【発行日】2023-09-27
(54)【発明の名称】アルミニウム積層体、包装材、及びプレススルーパッケージ
(51)【国際特許分類】
   B32B 15/095 20060101AFI20230920BHJP
   B32B 15/09 20060101ALI20230920BHJP
   B65D 65/40 20060101ALI20230920BHJP
   B65D 75/32 20060101ALI20230920BHJP
【FI】
B32B15/095
B32B15/09 A
B65D65/40 D
B65D75/32
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020045544
(22)【出願日】2020-03-16
(65)【公開番号】P2021146519
(43)【公開日】2021-09-27
【審査請求日】2022-11-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000231626
【氏名又は名称】株式会社UACJ製箔
(73)【特許権者】
【識別番号】000107538
【氏名又は名称】株式会社UACJ
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】弁理士法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】村中 勇樹
(72)【発明者】
【氏名】芳賀 洋平
(72)【発明者】
【氏名】西尾 宏
【審査官】岩本 昌大
(56)【参考文献】
【文献】特開平04-044839(JP,A)
【文献】特開2017-197276(JP,A)
【文献】実開昭60-156152(JP,U)
【文献】実開平04-041861(JP,U)
【文献】特開2020-007406(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
B65D 65/00-65/46
B65D 67/00-79/02
B65D 81/18-81/30,81/38,85/88
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂層と、
前記樹脂層の一方の面に貼り合わされた第1アルミニウム箔と、
前記樹脂層の他方の面に貼り合わされた第2アルミニウム箔と、を含み、
前記樹脂層は、構成単位中に少なくとも1つの水酸基を含むポリヒドロキシウレタン樹脂からなることを特徴とする、アルミニウム積層体。
【請求項2】
前記ポリヒドロキシウレタン樹脂は、5員環環状カーボネート化合物とアミン化合物との反応生成物からなることを特徴とする、請求項1に記載のアルミニウム積層体。
【請求項3】
前記第1アルミニウム箔及び前記第2アルミニウム箔の少なくとも一方は、前記樹脂層とは反対側の面が艶消面となるように、前記樹脂層に貼り合わされていることを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載のアルミニウム積層体。
【請求項4】
前記第1アルミニウム箔及び前記第2アルミニウム箔は、何れも箔厚が6μm以上であり、
前記第1アルミニウム箔の箔厚と、前記第2アルミニウム箔の箔厚との和である合計箔厚は、30μm以下であることを特徴とする、請求項1から請求項3の何れか一項に記載のアルミニウム積層体。
【請求項5】
請求項1から請求項4の何れか一項に記載のアルミニウム積層体を含む、医薬品、食品、飲料品、又は工業材料用の包装材。
【請求項6】
被収容物が収容される収容部を含むシート状の樹脂容器と、
前記収容部の開口部を覆うように前記樹脂容器に貼り付けられる、請求項1から請求項4の何れか一項に記載のアルミニウム積層体からなる蓋材と、を備えるプレススルーパッケージ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書により開示される技術は、アルミニウム積層体、包装材、及びプレススルーパッケージに関する。
【背景技術】
【0002】
医薬品等の包装材として、プレススルーパッケージ(以下、PTPと称することがある)が広く用いられている。PTPは、通常、ポリ塩化ビニルやポリプロピレン等の樹脂からなり医薬品等の被収容物(被包装物の一例)が収容される収容部を含む容器材と、アルミニウム箔からなり収容部の開口を覆うように容器材に取り付けられる蓋材と、で構成される。収容部に封緘された被収容物は、収容部の外方から力を加えてこれを蓋材側に押し込むことで、蓋材を押し破りPTPを開封して、取り出される。
【0003】
金属であるアルミニウム箔は、一般的な樹脂製や紙製の包装材料と比較して透湿度が非常に低く、優れた防湿材料である。しかしながら、例えばPTPにおいて、蓋材とするアルミニウム箔に発生したピンホールが収容部に臨む位置に配された場合、ピンホールを通過した水分が被収容物に到達して医薬品等が吸湿してしまう虞がある。一般に、箔厚が15μmよりも小さいアルミニウム箔では、箔厚が15μm以上のアルミニウム箔と比べ、ピンホールの発生頻度が大幅に高くなってしまう。また、PTPの蓋材には、製造時や輸送時の損傷を回避可能であると同時に、開封時には適度な押圧力で破断可能であることも求められる。これらのバランスを考慮し、PTPの蓋材には、従来、箔厚が17μm~20μm程度のアルミニウム箔が使用されてきた。しかしながら、この範囲の箔厚のアルミニウム箔では、一定頻度でピンホールが発生することが避けられない。そこで、下記特許文献1及び特許文献2には、より箔厚の小さな2枚のアルミニウム箔を貼り合せたアルミニウム積層体からなる蓋材が開示されている。このようなアルミニウム積層体では、2枚のアルミニウム箔のピンホールが重なって配されない限り、水分が蓋材を通過することは殆どないため、被収容物の吸湿を効果的に抑制できると考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】実開昭60-156152号公報
【0005】
【文献】特許第2970857号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
アルミニウム箔に対し十分な接着力を発現可能な接着剤としては、従来、イソシアネート基を含有する2液硬化型接着剤が用いられてきた。しかしながら、このようなイソシアネート系の2液型接着剤でアルミニウム箔同士を貼り合せると、接着剤を反応硬化させる際に、ピンホールの発生箇所において、アルミニウム積層体に部分的なふくれが生じることがあった。例えばPTPの蓋材として使用するアルミニウム積層体に部分的なふくれが生じると、蓋材に印刷を施す際に支障を来たす。このため、アルミニウム積層体は、通常は印刷を施して用いられる包装材として、広く実用に供されるには至っていない状況であった。
【0007】
本明細書が開示する技術は、上記事情に基づいて完成されたものであって、良好な印刷適性と優れた防湿性とを備えたアルミニウム積層体、ひいては、これを含む包装材、及びプレススルーパッケージを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題について鋭意研究を重ねた結果、構成単位中に少なくとも1つの水酸基を含むポリヒドロキシウレタン樹脂からなる樹脂層を介して、第1アルミニウム箔と、第2アルミニウム箔とを貼り合せることで、部分的なふくれを生じることがなく、十分な貼り合せ強度を有するアルミニウム積層体が得られることを見出し、本技術を完成させるに至った。すなわち、本明細書は、下記<1>~<6>に係る技術を開示する。
【0009】
<1> 樹脂層と、前記樹脂層の一方の面に貼り合わされた第1アルミニウム箔と、前記樹脂層の他方の面に貼り合わされた第2アルミニウム箔と、を含み、前記樹脂層は、構成単位中に少なくとも1つの水酸基を含むポリヒドロキシウレタン樹脂からなることを特徴とする、アルミニウム積層体。
【0010】
<2> 前記ポリヒドロキシウレタン樹脂は、5員環環状カーボネート化合物とアミン化合物との反応生成物からなることを特徴とする、上記<1>に記載のアルミニウム積層体。
【0011】
<3> 前記第1アルミニウム箔及び前記第2アルミニウム箔の少なくとも一方は、前記樹脂層とは反対側の面が艶消面となるように、前記樹脂層に貼り合わされていることを特徴とする、上記<1>又は<2>に記載のアルミニウム積層体。
【0012】
<4> 前記第1アルミニウム箔及び前記第2アルミニウム箔は、何れも箔厚が6μm以上であり、前記第1アルミニウム箔の箔厚と、前記第2アルミニウム箔の箔厚との和である合計箔厚は、30μm以下であることを特徴とする、上記<1>から<3>の何れかに記載のアルミニウム積層体。
【0013】
<5> 上記<1>から<4>の何れかに記載のアルミニウム積層体を含む、医薬品、食品、飲料品、又は工業材料用の包装材。
【0014】
<6> 被収容物が収容される収容部を含むシート状の樹脂容器と、前記収容部の開口部を覆うように前記樹脂容器に貼り付けられる、上記<1>から<4>の何れかに記載のアルミニウム積層体からなる蓋材と、を備えるプレススルーパッケージ。
【発明の効果】
【0015】
本技術によれば、良好な印刷適性と優れた防湿性とを備えたアルミニウム積層体、ひいては、これを含む包装材、及びプレススルーパッケージを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】実施形態1に係るアルミニウム積層体の一例の断面模式図
図2】実施形態2に係るPTPの一例の断面模式図
図3】実施例1,2及び比較例2~4に係る評価試料の突刺強度を示したグラフ
図4】実施例1,2及び比較例2~4に係る評価試料の破断距離を示したグラフ
図5】ピンホール直径の算出方法についての説明図
図6】実施例3~5及び比較例5,6に係る評価試料の1日あたりの透湿度を示したグラフ
図7】実施例3~5及び比較例5,6に係る評価試料の累計透湿度を示したグラフ
【発明を実施するための形態】
【0017】
<実施形態1>
図1に示すように、本技術が開示するアルミニウム積層体1は、少なくとも樹脂層30と、樹脂層30の一方の面に貼り合わされた第1アルミニウム箔10と、樹脂層30の他方の面に貼り合わされた第2アルミニウム箔20と、を含む。なお、図1は、アルミニウム積層体1の断面をあくまで模式的に表した図であり、説明の便宜を考慮して、一部の層の厚みが他の層とは異なる尺度で示されていることがある(図2も同様である)。
【0018】
第1アルミニウム箔10及び第2アルミニウム箔20は、それぞれ箔厚が30μm以下であることが好ましい。一般に、箔厚が30μm以下のアルミニウム箔は、複数枚のアルミニウム箔を積層した状態でローラー間を通過させ、圧延することで作製される。この際、他のアルミニウム箔と接しながら圧延された面は、光沢のない艶消面となり、外側に配されてローラーに接しながら圧延された面は、比較的光沢のある光沢面となる。アルミニウム箔に印刷を施す場合、艶消面の方が光沢面よりも印刷に適している。艶消面はギラつきが少ないために、印刷を施した場合の視認性に優れ、観察者の目の疲れを軽減可能な印刷物を得ることができるからである。なお、例えば3枚のアルミニウム箔を積層圧延すると、真中のアルミニウム箔は、箔厚のバラツキが大きくなり、使用できないものとなってしまうことが多い。このため、従来の方法により、外側を向く両面が艶消面となるような単層構造のアルミニウム箔を作製することは困難であった。
【0019】
本実施形態に係る第1アルミニウム箔10及び第2アルミニウム箔20には、それぞれ一方の面が艶消面10A,20A、他方の面が光沢面とされたものを使用できる。樹脂層30とは反対側の面すなわちアルミニウム積層体1において外側を向く両面のうち、少なくとも一方が艶消面となるように、第1アルミニウム箔10及び第2アルミニウム箔20を貼り合わせれば、印刷に適する面を備えたアルミニウム積層体1を得ることができる。図1に示すように、本実施形態に係るアルミニウム積層体1は、第1アルミニウム箔10及び第2アルミニウム箔20を、艶消面10A,20Aが外側を向く両面に配されるように貼り合わされたものとする。このようにすれば、両面に印刷を施すのに適したアルミニウム積層体1を得ることができる。
【0020】
第1アルミニウム箔10及び第2アルミニウム箔20は、それぞれ箔厚が6μm以上であることが好ましい。箔厚がこれよりも小さくなると、アルミニウム箔の成形性、取扱性が低下し、ピンホールPHの発生頻度も極めて高くなる。また、アルミニウム積層体1は、第1アルミニウム箔10の箔厚と第2アルミニウム箔20の箔厚との和である合計箔厚(樹脂層30の厚みを除く)が、30μm以下であることが好ましい。例えばアルミニウム積層体1をPTPの蓋材として用いる場合、合計箔厚がこれよりも大きくなると、開封に要する押圧力が増加し、良好な開封性を担保できない虞がある。また、単層のアルミニウム箔でも、箔厚が30μm以上あればピンホールPHの発生頻度を極めて低くできるため、アルミニウム積層体1における合計箔厚が30μm以上になると、複数枚のアルミニウム箔を貼り合わせてアルミニウム積層体を作製するメリットは小さくなってしまう。
【0021】
第1アルミニウム箔10と第2アルミニウム箔20は、略同等の箔厚を有していてもよく、異なる箔厚を有していてもよい。また、第1アルミニウム箔10と第2アルミニウム箔20は、略同等の硬度を有するものであってもよく、異なる硬度を有していてもよい。例えばアルミニウム積層体1をPTPの蓋材として用いる場合、各アルミニウム箔の硬度及び箔厚を適宜調整して組み合わせれば、蓋材の開封性をさらに向上させることができる。
【0022】
さて、アルミニウム積層体1において、第1アルミニウム箔10及び第2アルミニウム箔20は、樹脂層30に貼り合わされる。換言すれば、アルミニウム積層体1において、第1アルミニウム箔10及び第2アルミニウム箔20の間には、両者を接着する樹脂層30が介在する。
【0023】
樹脂層30は、アルミニウム箔に対して十分な貼り合せ強度を発現可能な、接着性の樹脂で形成される。なお、ここで、十分な貼り合せ強度とは、具体的には、例えば15mm幅の試験片について、150mm/minの条件で180°剥離試験を行って測定したアルミニウム箔に対する剥離強度が、3.0N/15mm以上であることをいう。従来、アルミニウム箔の接着には、イソシアネート基を含有する2液型接着剤が用いられてきた。このような接着剤では、イソシアネートにポリオールを添加することにより、下記反応式(1)のようにウレタン結合が形成されることで、例えば上記条件下で測定した場合、少なくとも4.0N/15mm以上、通常は8.0N/15mm程度の剥離強度が発現することが知られている。
【0024】
【化1】
【0025】
上記反応式(1)中、R及びR’は、互いに独立して炭化水素基を示し、nは自然数を示す。
【0026】
しかしながら、イソシアネート基との反応速度は、ポリオールよりも水の方が大きく、接着を行う環境下に水分が存在すると、上記反応式(1)よりも下記反応式(2)の反応の方が優先的に進行することが知られている。この結果、接着時に水分が存在している場合には、ウレタン結合が形成されず、十分な接着強度が得られない。
【0027】
【化2】
【0028】
上記反応式(2)中、Rは、炭化水素基を示し、nは自然数を示す。
【0029】
アルミニウム積層体1の作製にあたり、第1アルミニウム箔10もしくは第2アルミニウム箔20に接着剤を塗布して両アルミニウム箔10,20を貼り合せる際に、何れかのアルミニウム箔にピンホールPHが存在していると、ピンホールPHから侵入した水分が接着剤に到達し、ピンホールPH周囲では良好な接着を行うことができない。さらには、上記反応式(2)によって発生した二酸化炭素ガスによって、ピンホールPHの周囲に部分的なふくれが生じてしまう。
【0030】
アルミニウム積層体1に部分的なふくれが生じると、この面に印刷を施す際に障害となるため、印刷適性が損なわれ、広く実用に供することができなくなってしまう。実用性の高いアルミニウム積層体1を得るには、水分の存在下で接着が行われた場合であっても、部分的なふくれを生じることがなく、十分な貼り合せ強度を発現可能な接着性の樹脂を選定して、樹脂層30を形成する必要がある。例えば1液型接着剤としては、ポリエーテル系の接着剤が知られているが、ポリエーテル系の1液型接着剤は、イソシアネート系の2液型接着剤と比較すると接着力が低く、アルミニウム箔に対する剥離強度は2.0N/15mm程度であって、アルミニウム箔の貼り合せに使用した場合に十分な貼り合せ強度が発現されず容易に剥離してしまう等、実用性に欠けていた。また、高温反応型の接着剤を用いて、例えば200℃以上での熱ラミネートによる貼り合せを行うことも考えられるが、高温での処理が必要となると製造コストが増大してしまうため、広く実用に供することができない。
【0031】
本発明者らは、鋭意検討の結果、樹脂層30を構成する接着性の樹脂として、ポリヒドロキシウレタン樹脂からなる1液型接着剤が有用であるとの知見を得た。ここで、ポリヒドロキシウレタン樹脂とは、側鎖に水酸基を有するポリウレタン樹脂をいう。なお、このような樹脂はヒドロキシポリウレタン樹脂と称されることもあるが、本明細書では、統一してポリヒドロキシウレタン樹脂と表現する。本技術では、特に、構成単位中に少なくとも1つの水酸基を含むポリヒドロキシウレタン樹脂を使用することが好ましい。ポリヒドロキシウレタン樹脂は、例えば下記化学式(3)で表される構造のものとすることができる。
【0032】
【化3】
【0033】
上記化学式(2)中、R1及びR2は、互いに独立して炭化水素基を示し、nは、1~50の整数を示す。
【0034】
上記のようなポリヒドロキシウレタン樹脂は、イソシアネート基を含まない1液型であって、水分と反応することはない。また、比較的低温でのドライラミネートによる接着が可能であって、製造コストを増大させることなく、第1アルミニウム箔10と第2アルミニウム箔20とを、十分な強度で貼り合わせることができる。具体的には、15mm幅の試験片について150mm/minの条件で180°剥離試験を行ってアルミニウム箔に対する剥離強度を測定した場合、少なくとも4.0N/15mm以上、通常は8.0N/15mm以上、条件によっては10.0N/15mm以上の剥離強度を発現可能である。なお、ポリヒドロキシウレタン樹脂とアルミニウム箔との接着メカニズムは明らかではないが、ポリヒドロキシウレタン樹脂に数多く含まれる水酸基が金属との間に水素結合を形成することで、接着力が発現しているのではないか、と推察される。なお、ポリヒドロキシウレタン樹脂は、アルミニウム箔の艶消面及び光沢面の何れの面に塗布して貼り合せを行った場合でも、十分な強度で貼り合せを行うことが可能である。
【0035】
上記のようなポリヒドロキシウレタン樹脂は、例えば5員環環状カーボネート化合物と多官能アミン化合物とを、80℃~200℃の溶融状態で反応せしめることにより、調製することができる。環状カーボネート化合物は、例えばエポキシ化合物と二酸化炭素とを、触媒存在下、0℃~200℃、0.1MPa~1MPa程度に加圧した二酸化炭素雰囲気中で反応せしめることにより、調製できる。すなわち、ポリヒドロキシウレタン樹脂は、毒性の高いホスゲンを使用して製造されるイソシアネート化合物を原料とせず、二酸化炭素を取り込んだものであることから、これを利用することは、安全面・環境面からも好ましいと言える。
【0036】
ポリヒドロキシウレタン樹脂の塗布量は、例えば0.5g/m~7.0g/mの乾燥塗膜を形成する量とすることができ、より好ましくは2.0g/m~5.0g/mとすることができる。このような範囲であれば、ドライラミネートを行う際のタクトタイム等を過度に増大させることなく、十分な接着力を発現させることができる。また、このような範囲であれば、アルミニウム積層体1の柔軟性や強度等への樹脂層30の影響を抑制し、合計箔厚と同等の箔厚を有する単層のアルミニウム箔に類似した物理的性質を示すアルミニウム積層体1を得ることができるため、製品設計を行う上でも有利である。
【0037】
アルミニウム積層体1は、上記のようなポリヒドロキシウレタン樹脂を、第1アルミニウム箔10及び第2アルミニウム箔20の少なくとも一方の面に塗布した後に乾燥させ、2枚のアルミニウム箔10,20を重ねて圧着することで、作製できる。このようなドライラミネートは、例えば、乾燥条件を80℃~120℃で5秒間~30秒間、圧着条件を50℃~80℃、0.3MPa~1.0MPaとして実施できる。なお、上記塗布量の範囲でポリヒドロキシウレタン樹脂を塗布した場合に形成される樹脂層30は、1.5μm~6.0μm程度と推察される。
【0038】
本技術に係るアルミニウム積層体1は、イソシアネート基を含まないポリヒドロキシウレタン樹脂からなる樹脂層30を介して、第1アルミニウム箔10と第2アルミニウム箔20とが貼り合されている。このため、アルミニウム箔10,20の接着時に水分の影響を受けることが無い。よって、何れかのアルミニウム箔10,20にピンホールPHが形成されている場合であっても、水分が接着状態に影響を与えることがなく、気体が発生して部分的なふくれを生じることもない。よって、2枚のアルミニウム箔10,20が十分な強度で貼り合されたアルミニウム積層体1を、良好な印刷適性を有する面を備えたものとすることができる。このようなアルミニウム積層体1は、高い防湿性が要求され、また印刷を施して使用される包装材として、好適に使用できる。具体的には、例えば吸湿によって失活する医薬品、吸湿によって食感や味が変化する食品や飲料品、さらには吸湿によって機能や性質が変化する工業材料の包装材として、特に有用である。なお、包装材として使用される場合には、熱封緘等の加熱工程を経ることが多いが、本技術に係るアルミニウム積層体1は、例えば180℃のオーブンで一定時間加熱しても殆ど変化はなく、耐熱性にも問題がないことを確認済みである。
【0039】
以上記載したように、本実施形態に係るアルミニウム積層体1は、樹脂層30と、樹脂層30の一方の面に貼り合わされた第1アルミニウム箔10と、樹脂層30の他方の面に貼り合わされた第2アルミニウム箔20と、を含み、樹脂層30は、少なくとも構成単位中に少なくとも1つの水酸基を含むポリヒドロキシウレタン樹脂からなることを特徴とする。
【0040】
上記したポリヒドロキシウレタン樹脂は、イソシアネート基を含有せず、且つ、1液の常温硬化型でありながらアルミニウム箔に対する十分な接着力を発現可能である。上記構成によれば、ポリヒドロキシウレタン樹脂からなる樹脂層30を介して、第1アルミニウム箔10と第2アルミニウム箔20とを貼り合せることにより、イソシアネート基と水分との反応によって生じる二酸化炭素ガスに起因する部分的なふくれを生じることなく、十分な貼り合せ強度を有するアルミニウム積層体1を作製できる。この結果、高い防湿性と良好な印刷適性を有するアルミニウム積層体1を得ることができる。なお、本実施形態では、第1アルミニウム箔10と第2アルミニウム箔20の2枚を貼り合わせてアルミニウム積層体1を作製したが、3枚以上のアルミニウム箔を貼り合わせてアルミニウム箔積層体を作製しても良いことは言うまでもない。アルミニウム箔の貼り合せ枚数が増えるほど、大きなピンホール減少効果を得ることができる。
【0041】
また、本実施形態に係るアルミニウム積層体1において、樹脂層30を形成するポリヒドロキシウレタン樹脂は、5員環環状カーボネート化合物とアミン化合物との反応生成物からなることを特徴とする。このようなポリヒドロキシウレタン樹脂は、毒性の高いホスゲンを用いて製造されるイソシアネート化合物を原料とせず、二酸化炭素を用いて製造される環状ポリカーボネートを原料として調製できるため、環境面・安全面においても好ましい。
【0042】
また、本実施形態に係るアルミニウム積層体1において、第1アルミニウム箔10及び前記第2アルミニウム箔20の少なくとも一方は、樹脂層30とは反対側の面が艶消面10A,20Aとなるように、樹脂層30に貼り合わされていることを特徴とする。このような構成によれば、樹脂層30とは反対側の面、すなわち外側を向く面の少なくとも一方が艶消面10A,20Aとなるようにアルミニウム積層体1を作製することで、この面に印刷を行うのに特に適したアルミニウム積層体1を得ることができる。
【0043】
また、本実施形態に係るアルミニウム積層体1において、第1アルミニウム箔10及び第2アルミニウム箔20は、何れも箔厚が6μm以上であり、第1アルミニウム箔10の箔厚と、第2アルミニウム箔20の箔厚との和である合計箔厚は、30μm以下であることを特徴とする。このような構成によれば、両アルミニウム箔10,20におけるピンホールPHの発生頻度を一定程度に抑え、アルミニウム積層体1全体を貫通する孔の発生頻度を十分に小さいものとしながら、全体の薄層化を図ることができる。これにより、例えばアルミニウム積層体をPTP蓋材に用いる場合、高い防湿性と良好な開封性とを両立させることができる。
【0044】
また、本実施形態に係るアルミニウム積層体1は、医薬品、食品、飲料品、又は工業材料用の包装材として使用できる。アルミニウム積層体1は、これを貫通するピンホールPHの発生頻度が極めて低いため、上記のような高い防湿性が求められる被包装物の包装に、好適に用いることができる。さらに、アルミニウム積層体1は、部分的なふくれ等を生じることがなく、良好な印刷適性を有する面を備えているため、印刷を施して使用される包装材として好適に使用できる。
【0045】
<実施形態2>
本実施形態では、アルミニウム積層体からなる蓋材201を備えたPTP200について例示する。図2は、本実施形態に係るPTP200の構成を模式的に表した断面図である。PTP200は、被収容物T(錠剤、カプセル剤等の医薬品)を収容する包装材の一例である。
【0046】
図2に示すように、本実施形態に係るPTP200は、被収容物Tが収容される収容部2Aを含むシート状の樹脂容器2と、収容部2Aの開口部2Bを覆うように、樹脂容器2に貼り付けられる蓋材201とを備える。
【0047】
樹脂容器2は、PTP用の公知の樹脂容器であり、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリプロピレン、非晶性ポリエチレンテレフタレート等の透明な熱可塑性樹脂からなる。樹脂容器2は、シート状の本体部2Cと、本体部2Cから外側に膨出するように形成された収容部2Aとを備えている。収容部2Aは、通常、1個の樹脂容器2について複数個形成されるが、図2には、説明の便宜上、1個の収容部2Aが示されている。収容部2Aは、内側に被収容物Tを収容するための空間Sを有する凹部状をなし、本体部2Cとの境界部分に開口部2Bを備えている。特に限定されるものではないが、収容部2Aは、平面視した際に、被収容物Tの形状に倣った形をなしている。樹脂容器2は、例えば、厚みが60μm~400μm程度のシート材が所定形状に加工されたものからなる。
【0048】
蓋材201は、実施形態1と同様の第1アルミニウム箔10、第2アルミニウム箔20、樹脂層30を含む。さらに、第1アルミニウム箔10の艶消面10A上には、印刷によって第1印刷層211が施され、この第1印刷層211の上には熱封緘性接着層212が形成されている。また、第2アルミニウム箔20の艶消面20A上にも、印刷によって第2印刷層221が施され、この第2印刷層221の上にオーバープリント層222が形成されている。
【0049】
第1印刷層211は、例えば被収容物Tの情報やその他情報を表示するものであり、公知の有色の印刷インキを用いて公知の印刷方法により設けられる。第1印刷層211は、通常、第1アルミニウム箔10の艶消面10A上に点在するように、部分的に設けられる。第1印刷層211は、例えば、カーボンブラック、フタロシニアンブルー、フタロシニアングリーン、キナクリドン系、アゾ系、チタニア等の着色剤(顔料)をバインダー樹脂に含有させた印刷インキをグラビア印刷法等により形成される。このような第1印刷層211は、樹脂容器2側から視認可能とされている。
【0050】
熱封緘性接着層212は、蓋材201を樹脂容器2の本体部2Cに接着して、樹脂容器2の収容部2Aに収容された被収容物Tを封緘するための層であり、PTP用の公知の熱接着剤からなる。熱封緘性接着層212には、具体的には、ポリエステル系接着剤、ポリプロピレン系接着剤、塩化ビニル系接着剤、塩化ビニル-酢酸ビニル系共重合体系接着剤(塩酢ビ系接着剤)等の熱接着剤が利用される。なお、PTP200を製造する際には、この熱封緘性接着層212を樹脂容器2に接着するために、高温での熱接着が行われるが、実施形態1において記載したように、本技術に係るアルミニウム積層体の樹脂層30は、十分な耐熱性を備えており、高温での熱接着を実施しても問題を生じることはない。
【0051】
第2印刷層221は、基本的には、第1印刷層211と同様、被収容物Tの情報やその他情報を表示するものであり、公知の有色の印刷インキを用いて公知の印刷方法により設けられる。第2印刷層221は、第2アルミニウム箔20の艶消面20A上に点在するように、部分的又は全面的に設けられる。すなわち、蓋材201において、樹脂層30を挟んで配される第1アルミニウム箔10と第2アルミニウム箔20の外側を向く両面に、印刷が施されている。各アルミニウム箔10,20の何れかにピンホールPHが形成されていたとしても、本技術に係るアルミニウム積層体では部分的なふくれが生じることはなく、また印刷が施される面は何れも艶消面10A,20Aであるため、良好な印刷適性を備えた面に、視認性に優れた印刷を施すことが可能とされている。
【0052】
オーバープリント層222は、第2印刷層221の全面を覆うように形成される、公知の透明な保護層である。オーバープリント層222に使用される樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ニトロセルロース樹脂、ブチラール樹脂、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、アミノ樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、塩化ビニル系樹脂、ポリビニルアルコール、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-ビニルアルコール共重合体、エチレン-アクリル酸エチル共重合体、ポリアミド等が挙げられる。これらを、単独で又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0053】
以上記載したように、本実施形態に係るPTP200は、被収容物Tが収容される収容部2Aを含むシート状の樹脂容器2と、収容部2Aの開口部2Bを覆うように樹脂容器2に貼り付けられる、アルミニウム積層体からなる蓋材201と、を備える。本技術に係るアルミニウム積層体は、高い防湿性と良好な印刷適性を有しながら、薄層化が図られている。よって、このようなアルミニウム積層体を蓋材201とすることで、防湿性、印刷適性に加え、優れた開封性を有するPTP200を得ることができる。
【実施例
【0054】
以下、実施例に基づいて本技術をさらに詳細に説明する。本技術は、実施例の記載により何ら限定されるものではない。
<1.強度評価試料の準備>
下記のように、実施例1,2並びに比較例1~4のアルミニウム積層体又はアルミニウム箔を準備し、強度評価試験に供した。
【0055】
[実施例1]
第1アルミニウム箔10及び第2アルミニウム箔20として、一方の面を光沢面、他方の面を艶消面10A,20Aとするアルミニウム箔(株式会社UACJ製箔製、材質:1N30-H18、箔厚:6.6μm)を、計2枚準備した。第1アルミニウム箔10の光沢面上に、バーコータを用いて、ポリヒドロキシウレタン樹脂接着剤(大日精化工業株式会社製、HPU C-3002)を、塗工量が3.3g/mとなるように塗布した。接着剤を塗布した第1アルミニウム箔10を、100℃のオーブン中に10秒間おいて乾燥させた後、接着剤の塗布面上に、第2アルミニウム箔20を光沢面が接着剤に接するように重ね、60℃、0.4MPaで押圧して、ドライラミネートによる貼り合せを行った。これにより、図1に示した基本的な構造を有するアルミニウム積層体1、すなわち、ポリヒドロキシウレタン樹脂からなる樹脂層30の一方の面に第1アルミニウム箔10が貼り合され、他方の面に第2アルミニウム箔20が貼り合されたアルミニウム積層体1を得た。得られたアルミニウム積層体1を、実施例1の評価試料とした。
【0056】
[実施例2]
第1アルミニウム箔10及び第2アルミニウム箔20として、何れも箔厚が12μmのアルミニウム箔(株式会社UACJ製箔製、材質:1N30-H18)を使用したほかは、実施例1と同様にして、ポリヒドロキシウレタン樹脂からなる樹脂層30を挟んで、第1アルミニウム箔10と第2アルミニウム箔20とが貼り合されたアルミニウム積層体1を得、実施例2の評価試料とした。
【0057】
[比較例1]
第1アルミニウム箔10及び第2アルミニウム箔20として、何れも箔厚が12μmのアルミニウム箔(株式会社UACJ製箔製、材質:1N30-H18)を使用し、第1アルミニウム箔10の光沢面上に、ポリヒドロキシウレタン樹脂接着剤に代えて、イソシアネート系2液型接着剤(大日本インキ株式会社製、LX-500/KW-75=10/1)を、塗工量が4.7g/mとなるように塗布したほかは、実施例1と同様にして、樹脂層を挟んで第1アルミニウム箔10と第2アルミニウム箔20とが貼り合されたアルミニウム積層体を得、比較例1の評価試料とした。
【0058】
[比較例2~4]
一方の面を光沢面、他方の面を艶消面とする、箔厚が6.6μmのアルミニウム箔(株式会社UACJ製箔製、材質:1N30-H18)を、比較例2の評価試料とした。
また、一方の面を光沢面、他方の面を艶消面とする、箔厚が12μmのアルミニウム箔(株式会社UACJ製箔製、材質:1N30-H18)を、比較例3の評価試料とした。
また、一方の面を光沢面、他方の面を艶消面とする、箔厚が25μmのアルミニウム箔(株式会社UACJ製箔製、材質:1N30-H18)を、比較例4の評価試料とした。
【0059】
各強度評価試料の概要を、表1に示す。
【0060】
【表1】
【0061】
<2.強度評価試験>
(2-1.剥離強度の評価)
実施例2並びに比較例1の評価試料から、15mm幅の試験片を各5片切り出した。各試験片について、150mm/minの条件で、180°剥離試験を行い、剥離強度(N/15mm)を測定した。実施例2の試験片(5片)についての平均剥離強度は12.0N/15mm、比較例1の試験片の平均剥離強度は8.2N/15mmであった。
【0062】
(2-2.突刺強度の評価)
実施例1,2並びに比較例2,3,4の評価試料について、JIS Z1707(2019)に準じて突刺強度を測定した。突刺強度及び破断距離の測定結果を、表2に示す。図3及び図4は、これらの結果をプロットした図である。
【0063】
【表2】
【0064】
<3.強度評価試験結果の考察>
剥離強度に関し、実施例2の評価試料は、平均で12.0N/15mmと高い値を示した。この値は、イソシアネート系2液型接着剤を用いて調製した、実用に耐えうる剥離強度を有する比較例1の評価試料の平均値(8.2N/15mm)よりも高い値である。これにより、本技術に係るアルミニウム積層体1において、第1アルミニウム箔10と第2アルミニウム箔20は、ポリヒドロキシウレタン樹脂からなる樹脂層30を挟んで、実用に耐えうる十分な強度をもって貼り合わせられていることが確認できた。
【0065】
また、突刺強度及び破断距離に関し、図3及び図4より、実施例1,2のアルミニウム積層体1は何れも、これらの合計箔厚に相当する箔厚を有する単層のアルミニウム箔と同レベルにあることが認められた。本技術に係るアルミニウム積層体1は、例えばPTPの蓋材に用いた場合、従来用いられてきた単層のアルミニウム箔からなる蓋材と同等の強度及び開封性を示すものであり、十分にこれらに代替可能と考えられる。また、アルミニウム積層体1の合計箔厚と、単層アルミニウム箔の箔厚との間に相関が認められるため、アルミニウム積層体1を用いた包装材の製品設計において、従来の単層アルミニウム箔についての知見を活かすことが可能と考えられる。
【0066】
<4.透湿度評価用試料の準備>
下記のように、実施例3~5並びに比較例5,6のアルミニウム積層体又はアルミニウム箔を準備し、透湿度評価試験に供した。なお、各評価試料に含まれるピンホールPHの大きさは、下記によって算出される「ピンホール相当直径」によって表した。
【0067】
(ピンホール相当直径の算出)
アルミニウム箔に発生するピンホールPHの形状は、発生原因によって一般に不定形状であるが、図5に示すように、一軸方向(図5におけるX方向)に長いフットボール状をなすことが多い。レーザー顕微鏡を用いて、ピンホールPHの最長径部位における長さ(X)及びこれに直交する幅(Y)を測定し、長方形の面積(X×Y)と等しい面積を有する円の直径Dを下記数式(1)によって求め、この直径Dを「ピンホール相当直径」と定義する。
【0068】
【数1】
【0069】
[実施例3~5]
第1アルミニウム箔10として、ピンホール相当直径が110μmであるピンホールPHを有するものを用いたほかは、実施例1と同様にしてアルミニウム積層体1を得、実施例3の評価試料とした。
また、第1アルミニウム箔10として、ピンホール相当直径が64μmであるピンホールPHを有するものを用いたほかは、実施例1と同様にしてアルミニウム積層体1を得、実施例4の評価試料とした。
また、第1アルミニウム箔10として、ピンホール相当直径が24μmであるピンホールPHを有するものを用いたほかは、実施例1と同様にしてアルミニウム積層体1を得、実施例5の評価試料とした。
【0070】
[比較例5,6]
一方の面を光沢面、他方の面を艶消面とし、箔厚が20μmのアルミニウム箔(株式会社UACJ製箔製、材質:A1N30)を準備し、FAYb(イッテルビウムファイバレーザー)式パナソニックデバイスSUNX(株)製、LP-Z130装置を用いて、スポット系70μm、出力13Wの条件で、レーザー光を上記アルミニウム箔に照射し、ピンホールPHを形成して、比較例5の評価試料とした。なお、比較例5の評価試料において形成されたピンホールPHは、ピンホール相当直径が89μmであった。
また、ピンホール相当直径が114μmであるピンホールPHを形成したほかは、比較例5と同様にして、比較例6の評価試料を作製した。
【0071】
各透湿度評価試料の概要を、表3に示す。
【0072】
【表3】
【0073】
<5.透湿度評価試験>
実施例3~5並びに比較例5,6の評価試料について、JIS Z 0208:1976の防湿包装材料の透湿度試験方法(カップ法)に準じて、透湿度を測定した。図6図7は、1日あたりの透湿度と、累計透湿度をプロットした図である。なお、図に示した透湿度の値は、28.27cmのカップ面積を1mに換算した値であり、実際の包装における透湿度とは異なる。
【0074】
<6.透湿度評価試験結果の考察>
図6及び図7に表されているように、比較例5,6では、常に一定量の湿度が透過しており、時間経過に正比例して累計透湿度が増加し、6日経過後の累計透湿度は約9g/mもしくは約14g/mに達したのに対し、実施例3~5の評価試料では何れも、湿度の透過量はごく僅かなレベルで推移し、6日経過後の累計透湿度は2g/m未満に留まった。本技術に係るアルミニウム積層体1では、一方のアルミニウム箔(第1アルミニウム箔10)にピンホールPHが生じていたとしても、良好な防湿性を維持できることが知られた。なお、実施例3~5の評価試料は何れも、第1アルミニウム箔10に存在していたピンホールPH周囲の領域を含め、部分的なふくれ等は認められなかった。
【符号の説明】
【0075】
1…アルミニウム積層体、10…第1アルミニウム箔、20…第2アルミニウム箔、10A,20A…艶消面、30…樹脂層、200…PTP、2…樹脂容器、2A…収容部、2B…開口部、2C…本体部、201…蓋材、211…第1印刷層、212…熱封緘性接着層、221…第2印刷層、222…オーバープリント層、D…(ピンホール相当)直径、T…被収容物
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7