特許 7351781 給湯装置

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)

(12)【公報種別】特許公報(B2)

(11)【特許番号】

(24)【登録日】2023-09-19

(45)【発行日】2023-09-27

(54)【発明の名称】給湯装置

(51)【国際特許分類】

   F24H 9/00 20220101AFI20230920BHJP

   F23M 5/08 20060101ALI20230920BHJP

   F24H 1/16 20220101ALI20230920BHJP

【ＦＩ】

F24H9/00 A

F23M5/08 A

F24H1/16 B

【請求項の数】 2

(21)【出願番号】P 2020054809

(22)【出願日】2020-03-25

(65)【公開番号】P2021156452

(43)【公開日】2021-10-07

【審査請求日】2022-08-18

(73)【特許権者】

【識別番号】000000538

【氏名又は名称】株式会社コロナ

(72)【発明者】

【氏名】綿貫 順也

(72)【発明者】

【氏名】田村 竹年

(72)【発明者】

【氏名】及川 諒弥

【審査官】古川 峻弘

(56)【参考文献】

【文献】特開２０２１－１０１１３０（ＪＰ，Ａ）

【文献】特開２００１－３３６８８７（ＪＰ，Ａ）

【文献】特開昭６３－１８８４６９（ＪＰ，Ａ）

(58)【調査した分野】(Int.Cl.，ＤＢ名)

Ｆ２４Ｈ １／００－１５／４９３

Ｆ２８Ｄ ７／００－７／１６

Ｆ２３Ｍ ５／０８

(57)【特許請求の範囲】

【請求項1】

燃焼バーナの燃焼で発生した燃焼熱を、給水が流通する熱交換器で熱交換させ、
熱交換後の燃焼ガスを排気経路を介して排気口より排出するものに於いて、
前記熱交換器は、
一方側に、所定の間隔で配列された複数のフィンと、
該フィンを貫通するフィンパイプとを有する吸熱部
を備えると共に、
他方側に、内部に燃焼室が形成された燃焼胴と、
該燃焼胴の外周面に螺旋状に巻回され、かつ該外周面にロウ付け接合され、
前記フィンパイプと連通するドラムパイプとを有する胴部と
を備える角筒状のドラムであり、
前記排気経路は、
前記熱交換器の内部を通過した直後の燃焼ガスを略直角に誘導する排気横路を備え、
前記ドラムパイプと前記燃焼胴のロウ付け接合部において、
前記燃焼胴の各側面のうち、
前記排気横路の誘導方向とは反対方向に位置する側面の外周面への接合面積を
他の側面の外周面の接合面積より小さくしたことを特徴とする給湯装置。

【請求項2】

燃焼バーナの燃焼で発生した燃焼熱を、給水が流通する熱交換器で熱交換させ、
熱交換後の燃焼ガスを排気経路を介して排気口より排出するものに於いて、
前記熱交換器は、
一方側に、所定の間隔で配列された複数のフィンと、
該フィンを貫通するフィンパイプとを有する吸熱部
を備えると共に、
他方側に、内部に燃焼室が形成された燃焼胴と、
該燃焼胴の外周面に螺旋状に巻回され、かつ該外周面にロウ付け接合され、
前記フィンパイプと連通するドラムパイプとを有する胴部と
を備える角筒状のドラムであり、
前記排気経路は、
前記熱交換器の内部を通過した直後の燃焼ガスを略直角に誘導する排気横路を備え、
前記ドラムパイプと前記燃焼胴のロウ付け接合部において、
前記燃焼胴の各側面のうち、
前記熱交換器の出口に最も近い側面と対向する側面の外周面への接合面積を
他の側面の外周面の接合面積より小さくしたことを特徴とする給湯装置。

【発明の詳細な説明】

【技術分野】

【0001】

本発明は、給湯装置に関し、特に給湯装置内部の熱交換器の耐久性向上に関するものである。

【背景技術】

【0002】

従来よりこの種のものでは、板材を折り曲げて角筒状に形成したドラムの一方側に、複数のフィンとフィンを貫通するフィンパイプとを有する吸熱部と、角筒状のドラムの他方側に、内部に燃焼室が形成された燃焼胴と、燃焼胴の外周面に螺旋状に巻回されフィンパイプと連通するドラムパイプとを有する胴部とを備え、ドラムパイプが燃焼胴にロウ付け接合される熱交換器があった。（例えば、特許文献１参照。）

【先行技術文献】

【特許文献】

【0003】

【文献】特開平９－２９２１６０号公報

【発明の概要】

【発明が解決しようとする課題】

【0004】

この従来の熱交換器においては、胴部のドラム缶体の周囲に巻かれたドラムパイプが、燃焼室の温度上昇を抑える役割を持つ。しかしながら、熱交換器の内部に燃焼ガスの流れにくい速度が比較的遅い領域（以降、淀み領域という）が生じる箇所がある場合は、流れに偏りが発生し、淀み領域に近い熱交換器内壁の温度が低下して結露が発生する。燃焼室内で燃焼ガス中の水分が結露すると、酸性の凝縮水が発生し、ドラム缶体が銅製である場合、ドラム缶体の腐食・破損につながる恐れがあった。

【0005】

本発明は、上記の課題を解決すべく検討なされたもので、その目的は、結露の発生しやすい箇所の凝縮水の発生量を低減させ、ドラム缶体の腐食耐久性を向上させた給湯装置を提供することにある。

【課題を解決するための手段】

【0006】

上記の目的を達成するため、本発明の請求項１では、燃焼バーナの燃焼で発生した燃焼熱を、給水が流通する熱交換器で熱交換させ、熱交換後の燃焼ガスを排気経路を介して排気口より排出するものに於いて、前記熱交換器は、一方側に、所定の間隔で配列された複数のフィンと、該フィンを貫通するフィンパイプとを有する吸熱部を備えると共に、他方側に、内部に燃焼室が形成された燃焼胴と、該燃焼胴の外周面に螺旋状に巻回され、かつ該外周面にロウ付け接合され、前記フィンパイプと連通するドラムパイプとを有する胴部とを備える角筒状のドラムであり、前記排気経路は、前記熱交換器の内部を通過した直後の燃焼ガスを略直角に誘導する排気横路を備え、前記ドラムパイプと前記燃焼胴のロウ付け接合部において、前記燃焼胴の各側面のうち、前記排気横路の誘導方向とは反対方向に位置する側面の外周面への接合面積を他の側面の外周面の接合面積より小さくした。

【0007】

また、本発明の請求項２では、燃焼バーナの燃焼で発生した燃焼熱を、給水が流通する熱交換器で熱交換させ、熱交換後の燃焼ガスを排気経路を介して排気口より排出するものに於いて、前記熱交換器は、一方側に、所定の間隔で配列された複数のフィンと、該フィンを貫通するフィンパイプとを有する吸熱部を備えると共に、他方側に、内部に燃焼室が形成された燃焼胴と、該燃焼胴の外周面に螺旋状に巻回され、かつ該外周面にロウ付け接合され、前記フィンパイプと連通するドラムパイプとを有する胴部とを備える角筒状のドラムであり、前記排気経路は、前記熱交換器の内部を通過した直後の燃焼ガスを略直角に誘導する排気横路を備え、前記ドラムパイプと前記燃焼胴のロウ付け接合部において、前記燃焼胴の各側面のうち、前記熱交換器の出口に最も近い側面と対向する側面の外周面への接合面積を他の側面の外周面の接合面積より小さくした。

【発明の効果】

【0008】

本発明の請求項１によれば、前記排気横路の誘導方向とは反対方向に位置する燃焼胴側面の外周面への接合面積を他の側面の外周面の接合面積より小さくしたので、前記ドラムパイプ内を流れる水によるドラム内壁の冷却作用による内壁の温度低下を抑えることができ、その結果、結露発生量を低減させることができ、銅製のドラムの腐食・破損を防止でき、給湯装置の耐久性向上に繋げることができる。

【0009】

本発明の請求項２によれば、前記熱交換器の出口に最も近い側面と対向する側面の外周面への接合面積を他の側面の外周面の接合面積より小さくしたので、前記ドラムパイプ内を流れる水によるドラム内壁の冷却作用による内壁の温度低下を抑えることができ、その結果、結露発生量を低減させることができ、銅製のドラムの腐食・破損を防止でき、給湯装置の耐久性向上に繋げることができる。

【図面の簡単な説明】

【0010】

【図1】本発明の実施形態１における給湯装置の説明図

【図2】本発明の実施形態１における燃焼ガスの流れを説明する説明図

【図3】本発明の実施形態１における側面Ａ面のロウ付け接合部の要部拡大図

【図4】本発明の実施形態１における側面Ａ面以外のロウ付け接合部の要部拡大図

【図5】本発明の実施形態２における燃焼ガスの流れを説明する説明図

【図6】本発明の実施形態３における燃焼ガスの流れを説明する説明図

【図7】本発明の他の実施形態におけるロウ付け接合部の要部拡大図

【発明を実施するための形態】

【0011】

以下に、本発明に係る給湯装置の実施の形態を図面に基づいて説明する。
１は本実施形態１の燃焼器としての給湯装置、２は石油やガス等を燃料とし下向きに火炎を発生する逆燃式の燃焼部である燃焼バーナ、３は燃焼バーナ２に燃焼用の空気を供給する送風機である。

【0012】

６は、一方側に、所定の間隔で配列された複数のフィン５ａと、フィン５ａを貫通するフィンパイプ５ｂとを有する吸熱部５を備えると共に、他方側に、内部に燃焼室４ａが形成された燃焼胴４ｃと、燃焼胴４ｃの外周面に螺旋状に巻回され、かつ該外周面にロウ付け接合され、前記フィンパイプ５ｂと連通するドラムパイプ４ｂとを有する胴部４を備える角筒状のドラムで構成された熱交換器である。ここで、吸熱部５は、胴部４より燃焼ガスの流れ方向下流側に位置する。

【0013】

７は燃焼室４ａと連通しており、吸熱部５の燃焼ガス流れ方向下流側に配置され、燃焼ガスの流れ方向を横向きに誘導する排気横路である。排気横路７は、一方側で熱交換器６と接続され、他方側で消音装置８と接続される。

【0014】

前記消音装置８は、燃焼バーナ２の燃焼に伴い発生する燃焼ガスの騒音を低減させるものであり、排気横路７と連通し、排気横路７よりも燃焼ガス流れ方向下流側に位置し、排気横路７の上方に配置される。消音装置８は上下方向に延在し、その上部に燃焼ガスを器具外部に排出する排気口９を備えている。

【0015】

１０は給水管、１１は給湯装置１の器具外の給湯栓（図示せず）まで温水を供給する給湯管である。

【0016】

前記給水管１０からの給水は、熱交換器６に導入され、熱交換器６にて燃焼バーナ２の燃焼に伴い発生した高温の燃焼ガスと熱交換加熱され、給湯管１１を介して給湯栓からユーザの設定した給湯温度にて出湯されるものである。

【0017】

前記燃焼バーナ２の燃焼に伴い発生した燃焼ガスは、送風機３の送風力により、燃焼室４ａを下向きに流れ、吸熱部５を通過する。そして、吸熱部５を下向きに通過した燃焼ガスは、排気横路７にて下向きから上向きにＵターンされ、消音装置８を上向きに流入し、消音装置８を通過して排気口９から器具外に排出されるものである。

【0018】

次に、実施形態１について図２に基づいて説明する。
図２は、フィン５ａと、燃焼胴４ｃとその外周を巻回ししたドラムパイプ４ｂ、排気横路７と消音装置８の断面を示す説明図である。ここではまず、図２に示すように、熱交換器６と排気横路７の接合部であり熱交換器６の出口にあたる開口部４０が、角筒状の熱交換器６の底面の略中央に位置する場合について述べる。

【0019】

図２のＡ面は、角筒状の熱交換器６の各側面のうち、排気横路７の誘導方向とは反対方向に位置する側面である。熱交換器６の内部を通過する燃焼ガスの流れは、熱交換器６の出口の位置と排気横路７による燃焼ガスの誘導方向の影響を受けて、熱交換器６内部で淀み領域が発生し、淀み領域が発生する場所の内壁では、内壁の温度が低下して結露が発生しやすい。図２のＡ面が、結露が発生しやすい面である。
本発明では、Ａ面、すなわち、排気横路７の誘導方向とは反対方向に位置する燃焼胴側面であり、この側面の外周面へのドラムパイプ４ｂの接合面積を、他の側面の外周面の接合面積より小さくする。

【0020】

続いて、Ａ面とＡ面以外の外周面の接合面積について説明する。
図３、図４は、燃焼胴４ｃと燃焼胴４ｃの外周面にロウ付け接合されたドラムパイプ４ｂの要部拡大図である。図３に示すように、角筒状の燃焼胴４ｃの４面には、プレス加工等により成形され、燃焼胴４ｃの壁面から外側に向かって突出するビード３０が設けられている。このビード３０は、ドラムパイプ４ｂの下側に位置し、ビード３０によってドラムパイプ４ｂの外周円弧面に沿うようにビード３０が成形されており、ロウ材２０を介してドラムパイプ４ｂと燃焼胴４ｃが接合される。
ここで、ａは棒状のロウ材２０によって接合された燃焼胴４ｃとドラムパイプ４ｂの接合幅であり、ドラムパイプ４ｂの長さ方向に沿って燃焼胴４ｃの同一側面上では同一の幅で接合されており、接合面積と比例するものである。

【0021】

図４はロウ材２０より径の大きいロウ材２１を使用した場合であり、接合幅はｂとなる。接合幅ａとｂの関係はａ＜ｂとなることから、接合面積についても同じ関係となる。本発明では、Ａ面に位置するドラムパイプ４ｂの接合においては、ロウ材２０を用いて比較的小さい接合面積を成し、Ａ面以外においてはロウ材２０より径の大きいロウ材２１を用いて比較的大きい接合面積を成すものである。
なお、燃焼ガスの流速の比較的早い側面だけをロウ材２１を用いて、他の流速の比較的遅い側面をロウ材２０を用いてロウ付けすることで、接合面積に差を設けるようにしてもよい。

【0022】

以上により、排気横路７の誘導方向とは反対方向に位置する燃焼胴側面の外周面へのドラムパイプ４ｂの接合面積を、他の側面の外周面の接合面積より小さくしたので、ドラムパイプ４ｂの冷却効果が弱められ、結露の発生量を低減させることができ、腐食耐久性を向上させることができる。また、Ａ面ではＡ面以外で使用するロウ材より径の細い棒状ロウ材を使用でき、コスト削減にも貢献できる。

【0023】

次に、実施形態２について図５に基づいて説明する。
図５に示すように、熱交換器６と排気横路７の接合部であり熱交換器６の出口にあたる開口部４０が角筒状のドラム底面の中央位置にない場合について述べる。熱交換器６の出口にあたる開口部４０が角筒状のドラム底面の中央位置にない場合は、熱交換器６の出口に最も近い側面に対向する側面付近で燃焼ガスの流れに淀み領域が発生し、内壁の温度が低下して結露が発生しやすくなる。
本発明では、熱交換器６の出口に最も近い側面と対向する側面（図５のＡ面）の外周面への接合面積を他の側面の外周面の接合面積より小さくした。これにより、ドラムパイプ４ｂの冷却効果が弱められ、結露の発生量を低減させることができ、腐食耐久性を向上させることができる。

【0024】

なお、図６は実施形態３の図であり、図５の熱交換器６の出口にあたる開口部４０が角筒状のドラム底面の中央位置にないという意味で同じ条件であるが、開口部４０の位置が図５とは異なる位置にあり、異なる実施形態の対応も可能であることを示すために記載した。

【0025】

なお、接合面積を小さくするための他の方法としては、図７に示すように燃焼胴４ｃにビードを形成しないようにし、ロウ材２０を用いて接合幅ａより小さい接合幅ｃを形成するようにしてもよい。これにより、ｃ＜ａの関係から接合面積にも差を設けることができる。すなわち、Ａ面の外周面では燃焼胴４ｃにビードを形成せず、ロウ材２０を用いて接合し、Ａ面以外の外周面では燃焼胴４ｃにビードを形成して、ロウ材２０を用いて接合することで、Ａ面の結露の発生量を低減させることができ、腐食耐久性を向上させることができる。この場合、１台の熱交換器のドラムパイプ４ｂのロウ付け接合でロウ材２０を共通に用いることができ、ロウ材の太さ違いによる接合ミスを防止することもできる。

【0026】

なお、実施形態１から３では水道直圧式の給湯専用の給湯機を例に挙げて説明したが、本発明はこの実施形態に限定されるものでなく、同じく燃焼胴にドラムパイプをロウ付け溶接が必要な追い焚き機能付きの給湯機に適用してもよいものである。

【0027】

また、本実施形態で用いたその他の構成は一例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図しておらず、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。

【符号の説明】

【0028】

１ 給湯装置
２ 燃焼バーナ
４ 胴部
４ａ 燃焼室
４ｂ ドラムパイプ
４ｃ 燃焼胴
５ 吸熱部
５ａ フィン
５ｂ フィンパイプ
６ 熱交換器
７ 排気横路
１２ 排気経路

【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】