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特許7351788車両の運行管理装置、運行管理方法、および交通システム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-19
(45)【発行日】2023-09-27
(54)【発明の名称】車両の運行管理装置、運行管理方法、および交通システム
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/127 20060101AFI20230920BHJP
【FI】
G08G1/127 B
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020066595
(22)【出願日】2020-04-02
(65)【公開番号】P2021163356
(43)【公開日】2021-10-11
【審査請求日】2022-07-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡崎 健志
(72)【発明者】
【氏名】東出 宇史
(72)【発明者】
【氏名】宇野 慶一
【審査官】貞光 大樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-49629(JP,A)
【文献】特開2000-264210(JP,A)
【文献】特開2002-205648(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00 - 1/16
B61L 1/00 - 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車列を構成するとともに規定の走行経路を自律走行する複数の車両それぞれについて走行計画を生成する計画生成部と、
前記走行計画を対応する車両に送信する通信装置と、
前記車両の運行状況を取得する運行監視部と、
前記運行状況に基づいて、前記車列への車両の追加および前記車列からの車両の削減の要否を判断する判断部と、
を備え、
前記計画生成部は、前記車両の追加または削減が必要と判断された場合、前記車両の追加前または削減後の車列を構成する複数の車両の一つである基準車両について第一表定速度で走行させる走行計画を生成するとともに、残りの車両について前記第一表定速度よりも一時的に増速または減速した表定速度で走行させる走行計画を生成し、
前記計画生成部は、前記車両の追加が必要と判断された場合、新たに追加される車両を除く他の車両の運行間隔の調整が完了する前に、前記追加される車両が前記車列に加わって利用者の乗降を受け付けるような、走行計画を生成する、
ことを特徴とする運行管理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の運行管理装置であって、
前記第一表定速度は、前記車両を追加または削減する前に前記複数の車両に設定されていた表定速度である、ことを特徴とする運行管理装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の運行管理装置であって、
前記計画生成部は、前記車両の追加後または削減後の車列を構成する複数の車両の運行間隔が均等になるように、前記残りの車両の表定速度を調整した走行計画を再生成する、ことを特徴とする運行管理装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載の運行管理装置であって、
前記計画生成部は、前記車両の追加または削減が必要と判断された場合、前記残りの車両について前記第一表定速度よりも一時的に増速した表定速度で走行させる走行計画を再生成する、ことを特徴とする運行管理装置。
【請求項5】
請求項4に記載の運行管理装置であって、
前記計画生成部は、前記車両の追加が必要と判断された場合、新たに追加される車両の一つ後続の車両を基準車両に設定するとともに、前記残りの車両について前記第一表定速度よりも一時的に増速した表定速度で走行させる走行計画を再生成する、ことを特徴とする運行管理装置。
【請求項6】
請求項4または5に記載の運行管理装置であって、
前記計画生成部は、前記車両の削減が必要と判断された場合、削減される車両の一つ先行の車両を基準車両に設定するとともに、前記残りの車両について前記第一表定速度よりも一時的に増速した表定速度で走行させる走行計画を再生成する、ことを特徴とする運行管理装置。
【請求項7】
請求項1から3のいずれか一項に記載の運行管理装置であって、
前記計画生成部は、前記車両の追加または削減が必要と判断された場合、前記残りの車両について前記第一表定速度よりも一時的に減速した表定速度で走行させる走行計画を再生成する、ことを特徴とする運行管理装置。
【請求項8】
車列を構成するとともに規定の走行経路を自律走行する複数の車両それぞれについて走行計画を生成する計画生成部と、
前記走行計画を対応する車両に送信する通信装置と、
前記車両の運行状況を取得する運行監視部と、
前記運行状況に基づいて、前記車列への車両の追加および前記車列からの車両の削減の要否を判断する判断部と、
を備え、
前記計画生成部は、前記車両の追加または削減が必要と判断された場合、前記車両の追加前または削減後の車列を構成する複数の車両の一つである基準車両について第一表定速度で走行させる走行計画を生成するとともに、残りの車両について前記第一表定速度よりも一時的に増速または減速した表定速度で走行させる走行計画を生成し、
前記計画生成部は、前記車両の削減が必要と判断された場合、削減される車両を除く他の車両の運行間隔の調整が完了するまで、前記削減車両による利用者の乗降を許容する走行計画を生成する、ことを特徴とする運行管理装置。
【請求項9】
車列を構成するとともに規定の走行経路を自律走行する複数の車両それぞれについて走行計画を生成する計画生成部と、
前記走行計画を対応する車両に送信する通信装置と、
前記車両の運行状況を取得する運行監視部と、
前記運行状況に基づいて、前記車列への車両の追加および前記車列からの車両の削減の要否を判断する判断部と、
を備え、
前記計画生成部は、前記車両の追加または削減が必要と判断された場合、前記車両の追加前または削減後の車列を構成する複数の車両の一つである基準車両について第一表定速度で走行させる走行計画を生成するとともに、残りの車両について前記第一表定速度よりも一時的に増速または減速した表定速度で走行させる走行計画を生成し、
前記計画生成部は、前記車両の削減が必要と判断された場合、削減される車両について、少なくとも一周分、利用者の乗車を拒否するとともに乗員の降車を許容した状態で、前記走行経路を一周分走行させる、走行計画を生成する、ことを特徴とする運行管理装置。
【請求項10】
車列を構成するとともに規定の走行経路を自律走行する複数の車両それぞれについて走行計画を生成し、
前記走行計画を対応する車両に送信し、
前記車両の運行状況を取得し、
前記運行状況に基づいて、前記車列への車両の追加および前記車列からの車両の削減の要否を判断し、
前記車両の追加または削減が必要と判断された場合、前記車両の追加前または削減後の車列を構成する複数の車両の一つである基準車両について第一表定速度で走行させる走行計画を生成するとともに、残りの車両について前記第一表定速度よりも一時的に増速または減速した表定速度で走行させる走行計画を生成し、
前記車両の追加が必要と判断された場合、新たに追加される車両を除く他の車両の運行間隔の調整が完了する前に、前記追加される車両が前記車列に加わって利用者の乗降を受け付けるような、走行計画を生成する、
ことを特徴とする運行管理方法。
【請求項11】
規定の走行経路を自律走行する複数の車両で構成される車列と、
前記複数の車両の運行を管理する運行管理装置と、
を備え、
前記車両は、前記運行管理装置から送信される走行計画に従って自律的に走行し、
前記運行管理装置は、
車列を構成するとともに規定の走行経路を自律走行する複数の車両それぞれについて走行計画を生成する計画生成部と、
前記走行計画を対応する車両に送信する通信装置と、
前記車両の運行状況を取得する運行監視部と、
前記運行状況に基づいて、前記車列への車両の追加および前記車列からの車両の削減の要否を判断する判断部と、
を備え、
前記計画生成部は、前記車両の追加または削減が必要と判断された場合、前記車両の追加前または削減後の車列を構成する複数の車両の一つである基準車両について第一表定速度で走行させる走行計画を生成するとともに、残りの車両について前記第一表定速度よりも一時的に増速または減速した表定速度で走行させる走行計画を生成し、
前記計画生成部は、前記車両の追加が必要と判断された場合、新たに追加される車両を除く他の車両の運行間隔の調整が完了する前に、前記追加される車両が前記車列に加わって利用者の乗降を受け付けるような、走行計画を生成する、
ことを特徴とする交通システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書では、規定の走行経路を自律走行する複数の車両の運行を管理する運行管理装置、運行管理方法、および当該運行管理装置を有する交通システムを開示する。
【背景技術】
【0002】
近年、自律走行可能な車両を用いた交通システムが提案されている。例えば、特許文献1には、専用路線に沿って自律走行可能な車両を用いた車両交通システムが開示されている。この車両交通システムは、専用路線に沿って走行する複数の車両と、当該複数の車両を運行させる管制制御システムと、を備える。管制制御システムは、運行計画に従い、車両に出発指令や進路指令を送信する。また、管制制御システムは、輸送需要に応じて、車両の増車または減車を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2000-264210号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1では、増車または減車を行った場合、運行ダイヤをどのように調整するかについて充分に検討されていない。そのため、特許文献1の技術では、車両を増車または減車を行った際に運行間隔にばらつきが生じ、一部の車両に乗員が集中するおそれがあった。この場合、車両の遅延が生じやすくなり、結果として、駅での車両の待ち時間や、駅間の移動時間が増加し、交通システムとしての利便性が低下する。
【0005】
そこで、本明細書では、交通システムとしての利便性をより向上できる運行管理装置、運行管理方法、および交通システムを開示する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書で開示する運行管理装置は、車列を構成するとともに規定の走行経路を自律走行する複数の車両それぞれについて走行計画を生成する計画生成部と、前記走行計画を対応する車両に送信する通信装置と、前記車両の運行状況を取得する運行監視部と、前記運行状況に基づいて、前記車列への車両の追加および前記車列からの車両の削減の要否を判断する判断部と、を備え、前記計画生成部は、前記車両の追加または削減が必要と判断された場合、前記車両の追加前または削減後の車列を構成する複数の車両の一つである基準車両について第一表定速度で走行させる走行計画を生成するとともに、残りの車両について前記第一表定速度よりも一時的に増速または減速した表定速度で走行させる走行計画を生成する、ことを特徴とする。
【0007】
基準車両を基準として、他の車両を増速または減速させることで、車両の間隔を調整するための計算を簡易化でき、車両の運行間隔を適切に調整できる。そして、運行間隔が適切に調整できることで、交通システムとしての利便性をより向上できる。
【0008】
この場合、前記第一表定速度は、前記車両を追加または削減する前に前記複数の車両に設定されていた表定速度であってもよい。
【0009】
かかる構成とすることで、基準車両の走行計画は、車両の追加または削減の前後で変更する必要がないため、車両の間隔を調整するための計算をより簡易化できる。
【0010】
また、前記計画生成部は、前記車両の追加後または削減後の車列を構成する複数の車両の運行間隔が均等になるように、前記残りの車両の表定速度を調整した走行計画を再生成してもよい。
【0011】
等間隔運行を目指すことで、交通システムの利用者の利便性を向上できる。
【0012】
また、前記計画生成部は、前記車両の追加または削減が必要と判断された場合、前記残りの車両について前記第一表定速度よりも一時的に増速した表定速度で走行させる走行計画を再生成してもよい。
【0013】
増速で間隔を調整することで、駅での待機時間や駅間移動時間の増加を防止でき、利用者の利便性をより向上できる。
【0014】
前記計画生成部は、前記車両の追加が必要と判断された場合、新たに追加される車両の一つ後続の車両を基準車両に設定するとともに、前記残りの車両について前記第一表定速度よりも一時的に増速した表定速度で走行させる走行計画を再生成してもよい。
【0015】
追加される車両の一つ後続の車両を基準車両に設定すれば、その他の車両は、いずれも、現状維持または一時的に増速させることで、車両の間隔を調整できる。換言すれば、車両の間隔を調整するに当たって、増速と減速とが混在しないため、車両の間隔を調整するための計算を簡易化できる。
【0016】
前記計画生成部は、前記車両の削減が必要と判断された場合、削減される車両の一つ先行の車両を基準車両に設定するとともに、前記残りの車両について前記第一表定速度よりも一時的に増速した表定速度で走行させる走行計画を再生成してもよい。
【0017】
削減される車両の一つ先行の車両を基準車両に設定すれば、その他の車両は、いずれも、現状維持または一時的に増速させることで、車両の間隔を調整できる。換言すれば、車両の間隔を調整するに当たって、増速と減速とが混在しないため、車両の間隔を調整するための計算を簡易化できる。
【0018】
また、前記計画生成部は、前記車両の追加または削減が必要と判断された場合、前記残りの車両について前記第一表定速度よりも一時的に減速した表定速度で走行させる走行計画を再生成してもよい。
【0019】
かかる構成とすることで、間隔調整に起因する燃費または電費の悪化を抑制できる。また、かかる構成であれば、路面凍結時等のように増速が困難な場面でも、間隔を調整することができる。
【0020】
また、前記計画生成部は、前記車両の追加が必要と判断された場合、新たに追加される車両を除く他の車両の運行間隔の調整が完了する前に、前記追加される車両が前記車列に加わって利用者の乗降を受け付けるような、走行計画を生成してもよい。
【0021】
かかる構成とすることで、駅での待機時間が無駄に増加することを防止でき、利用者の利便性を向上できる。
【0022】
また、前記計画生成部は、前記車両の削減が必要と判断された場合、削減される車両を除く他の車両の運行間隔の調整が完了するまで、前記削減車両による利用者の乗降を許容する走行計画を生成してもよい。
【0023】
かかる構成とすることで、駅での待機時間が無駄に増加することを防止でき、利用者の利便性を向上できる。
【0024】
また、前記計画生成部は、前記車両の削減が必要と判断された場合、削減される車両について、少なくとも一周分、利用者の乗車を拒否するとともに乗員の降車を許容した状態で、前記走行経路を一周分走行させる、走行計画を生成してもよい。
【0025】
かかる構成とすることで、削減車両に乗車した利用者も確実に目的地まで輸送できる。
【0026】
本明細書で開示する運行管理方法は、車列を構成するとともに規定の走行経路を自律走行する複数の車両それぞれについて走行計画を生成し、前記走行計画を対応する車両に送信し、前記車両の運行状況を取得し、前記運行状況に基づいて、前記車列への車両の追加および前記車列からの車両の削減の要否を判断し、前記車両の追加または削減が必要と判断された場合、前記車両の追加前または削減後の車列を構成する複数の車両の一つである基準車両について第一表定速度で走行させる走行計画を生成するとともに、残りの車両について前記第一表定速度よりも一時的に増速または減速した表定速度で走行させる走行計画を生成する、ことを特徴とする。
【0027】
基準車両を基準として、他の車両を増速または減速させることで、車両の間隔を調整するための計算を簡易化でき、車両の運行間隔を適切に調整できる。そして、運行間隔が適切に調整できることで、交通システムとしての利便性をより向上できる。
【0028】
また、本明細書で開示する交通システムは、規定の走行経路を自律走行する複数の車両で構成される車列と、前記複数の車両の運行を管理する運行管理装置と、を備え、前記車両は、前記運行管理装置から送信される走行計画に従って自律的に走行し、前記運行管理装置は、車列を構成するとともに規定の走行経路を自律走行する複数の車両それぞれについて走行計画を生成する計画生成部と、前記走行計画を対応する車両に送信する通信装置と、前記車両の運行状況を取得する運行監視部と、前記運行状況に基づいて、前記車列への車両の追加および前記車列からの車両の削減の要否を判断する判断部と、を備え、前記計画生成部は、前記車両の追加または削減が必要と判断された場合、前記車両の追加前または削減後の車列を構成する複数の車両の一つである基準車両について第一表定速度で走行させる走行計画を生成するとともに、残りの車両について前記第一表定速度よりも一時的に増速または減速した表定速度で走行させる走行計画を生成する、ことを特徴とする。
【0029】
基準車両を基準として、他の車両を増速または減速させることで、車両の間隔を調整するための計算を簡易化でき、車両の運行間隔を適切に調整できる。そして、運行間隔が適切に調整できることで、交通システムとしての利便性をより向上できる。
【発明の効果】
【0030】
本明細書で開示する運行管理装置、運行管理方法、および交通システムによれば、交通システムとしての利便性をより向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】交通システムのイメージ図である。
図2】交通システムのブロック図である。
図3】運行管理装置の物理構成を示すブロック図である。
図4図1の交通システムで用いられる走行計画の一例を示す図である。
図5図4の走行計画に従って自律走行する各車両の運行タイミングチャートである。
図6】車両を追加した様子を示す図である。
図7】ケース1における走行計画の再生成の流れを示すフローチャートである。
図8】ケース1で生成された走行計画の一例を示す図である。
図9図8の走行計画に従って自律走行する各車両の運行タイミングチャートである。
図10】ケース2における走行計画の生成の流れを示すフローチャートである。
図11】ケース2で生成された走行計画の一例を示す図である。
図12図11の走行計画に従って自律走行する各車両の運行タイミングチャートである。
図13】車列を構成する複数の車両から一つの車両を削減する様子を示すイメージ図である。
図14】ケース3における走行計画の生成の流れを示すフローチャートである。
図15】ケース3で生成された走行計画の一例を示す図である。
図16図15の走行計画に従って自律走行する各車両の運行タイミングチャートである。
図17】ケース4における走行計画の生成の流れを示すフローチャートである。
図18】ケース4で生成された走行計画の一例を示す図である。
図19図18の走行計画に従って自律走行する各車両の運行タイミングチャートである。
図20】運行継続ができない不能車両が発生した場合の追加位置の決定の様子を示すイメージ図である。
図21】運行間隔に基づいて、追加位置を決定する様子を示すイメージ図である。
図22】降車時間に基づいて、追加位置を決定する様子を示すイメージ図である。
図23】乗車率に基づいて、追加位置を決定する様子を示すイメージ図である。
図24】新たな車両の追加位置の決定の流れの一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、図面を参照して、交通システム10の構成について説明する。図1は、交通システム10のイメージ図であり、図2は、交通システム10のブロック図である。さらに、図3は、運行管理装置12の物理構成を示すブロック図である。
【0033】
この交通システム10は、予め規定された走行経路50に沿って、不特定多数の利用者を輸送するためのシステムである。交通システム10は、走行経路50に沿って自律走行可能な複数の車両52A~52Dを有している。また、走行経路50には、複数の駅54a~54dが設定されている。なお、以下では、複数の車両52A~52Dを区別しない場合は、添え字アルファベットを省略し、「車両52」と表記する。同様に、複数の駅54a~54dも、区別の必要がない場合は、「駅54」と表記する。
【0034】
複数の車両52は、走行経路50に沿って一方向に周回走行し、一つの車列を構成する。車両52は、各駅54において、一時的に停車する。利用者は、車両52が一時停車するタイミングを利用して、車両52に乗車、または、車両52から降車する。したがって、本例において、各車両52は、一つの駅54から他の駅54まで不特定多数の利用者を輸送する乗り合いバスとして機能する。運行管理装置12(図1では図示せず、図2図3参照)は、こうした複数の車両52の運行を管理する。本例において、運行管理装置12は、複数の車両52が、等間隔運行となるように、その運行を制御している。等間隔運行とは、各駅54における車両52の発車間隔が均等となるような運行形態である。したがって、等間隔運行は、例えば、駅54aにおける発車間隔が5分の場合、他の駅54b,54c,54dにおける発車間隔も5分となるような運行形態である。
【0035】
また、後に詳説するように、運行管理装置12は、輸送需要の増減等に応じて、車列に新たな車両52を追加、または、車列から車両52を削減する。走行経路50の近くには、追加予定、または、削減された車両52が待機するための待機位置76が設けられている。
【0036】
こうした交通システム10を構成する各要素について、より具体的に説明する。車両52は、運行管理装置12から提供される走行計画80に従って自律走行する。走行計画80は、車両52の走行スケジュールを定めたものである。本例では、後に詳説するが、走行計画80には、各駅54a~54dにおける車両52の発車タイミングが規定されている。車両52は、この走行計画80で定められた発車タイミングで発車できるように自律走行する。換言すれば、駅54と駅54との間での走行速度や、信号等での停車、他の車両の追い越し要否等の判断は、全て、車両52側で行う。
【0037】
図2に示すように、車両52は、自動運転ユニット56を有している。自動運転ユニット56は、駆動ユニット58と、自動運転コントローラ60と、に大別される。駆動ユニット58は、車両52を走行させるための基本的なユニットであり、例えば、原動機、動力伝達装置、ブレーキ装置、走行装置、懸架装置、かじ取り装置等を含む。自動運転コントローラ60は、この駆動ユニット58の駆動を制御し、車両52を自律走行させる。自動運転コントローラ60は、例えば、プロセッサとメモリを有するコンピュータである。この「コンピュータ」には、コンピュータシステムを一つの集積回路に組み込んだマイクロコントローラも含まれる。また、プロセッサとは、広義的なプロセッサを指し、汎用的なプロセッサ(例えばCPU:Central Processing Unit、等)や、専用のプロセッサ(例えばGPU:Graphics Processing Unit、ASIC:Application Specific Integrated Circuit、FPGA:Field Programmable Gate Array、プログラマブル論理デバイス、等)を含むものである。
【0038】
自律走行を可能にするために、車両52には、さらに、環境センサ62および位置センサ66が搭載されている。環境センサ62は、車両52の周辺環境を検知するもので、例えば、カメラ、Lidar、ミリ波レーダ、ソナー、磁気センサ等を含む。自動運転コントローラ60は、この環境センサ62での検知結果に基づいて、車両52の周辺の物体の種類、当該物体との距離、走行経路50上の路面表示(例えば白線等)、および、交通標識等を認識する。また、位置センサ66は、車両52の現在位置を検出するもので、例えば、GPSである。位置センサ66での検出結果も、自動運転コントローラ60に送られる。自動運転コントローラ60は、環境センサ62および位置センサ66の検出結果に基づいて、車両52の加減速および操舵を制御する。こうした自動運転コントローラ60による制御状況は、走行情報82として運行管理装置12に送信される。走行情報82には、車両52の現在の位置、および、車両52の運行継続の可否が含まれる。したがって、何らかのトラブルで車両52の運行継続が困難になった場合には、その旨が運行管理装置12に連絡されることになる。
【0039】
車両52には、さらに、車内センサ64および通信装置68が設けられている。車内センサ64は、車両52の内部の状態、特に、乗員の数および属性を検出するセンサである。属性は、例えば、車椅子の利用の有無、白杖の利用の有無、ベビーカーの利用の有無、装具の利用の有無、および年齢層の少なくとも一つを含んでもよい。かかる車内センサ64は、例えば、車内を撮像するカメラや、乗員の総重量を検知する重量センサ等である。この車内センサ64で検出された情報は、乗員情報84として、運行管理装置12に送信される。
【0040】
通信装置68は、運行管理装置12と無線通信する装置である。通信装置68は、例えば、WiFi(登録商標)等の無線LANや、携帯電話会社等がサービス提供するモバイルデータ通信を介して、インターネット通信できる。通信装置68は、運行管理装置12から走行計画80を受信するとともに、走行情報82および乗員情報84を運行管理装置12に送信する。
【0041】
運行管理装置12は、車両52の運行状況を監視し、その運行状況に応じて、車両52の運行を制御する。この運行管理装置12は、物理的には、図3に示すように、プロセッサ22と、記憶装置20と、入出力デバイス24と、通信I/F26と、を有したコンピュータである。プロセッサとは、広義的なプロセッサを指し、汎用的なプロセッサ(例えばCPU)や、専用のプロセッサ(例えばGPU、ASIC、FPGA、プログラマブル論理デバイス、等)を含むものである。また、記憶装置20は、半導体メモリ(例えばRAM、ROM、ソリッドステートドライブ等)および磁気ディスク(例えば、ハードディスクドライブ等)の少なくとも一つを含んでもよい。なお、図3では、運行管理装置12を単一のコンピュータとして図示しているが、運行管理装置12は、物理的に分離された複数のコンピュータで構成されてもよい。
【0042】
運行管理装置12は、機能的には、図2に示すように、計画生成部14と、通信装置16と、運行監視部18と、判断部19と、記憶装置20と、を有している。計画生成部14は、複数の車両52それぞれに対して走行計画80を生成する。また、計画生成部14は、車両52の運行状況によっては、一度生成した走行計画80を修正し、再生成する。この走行計画80の生成および修正については、後に詳説する。
【0043】
通信装置16は、車両52と無線通信するための装置であり、例えば、WiFiまたはモバイルデータ通信を利用してインターネット通信が可能である。通信装置16は、計画生成部14で生成および再生成された走行計画80を車両52に送信するとともに、走行情報82および乗員情報84を車両52から受信する。
【0044】
運行監視部18は、各車両52から送信された走行情報82に基づいて、車両52の運行状況を取得する。走行情報82には、上述した通り、車両52の現在の位置、および、車両52の運行継続の可否が含まれる。したがって、運行監視部18は、各車両52の位置と、走行計画80と、を照らし合わせ、走行計画80に対する車両52の遅延量や、各車両52の運行間隔等を算出する。
【0045】
判断部19は、運行監視部18で算出された遅延量や車両52から送信される乗員情報84および走行情報82等に基づいて、車列への車両52の追加、または、車列から車両52の削減の要否を判断する。この判断の形態は、特に限定されない。したがって、例えば、車両52の走行計画80に対する遅延量が徐々に増加している場合には、輸送需要に対する輸送能力が足りていない可能性が高い。そのため、遅延量が徐々に増加している場合は、車両52の追加が必要と判断してもよい。また、別の形態として、車列を構成する車両52の一つが、運行継続不可能になった場合にも車両52の追加が必要と判断してもよい。さらに、乗員情報84に基づいて、車両52の定員に対する乗員の率を乗車率として算出し、乗車率が過度に高い場合には、車両52の追加が、乗車率が過度に低い場合には、車両52の削減が、それぞれ必要と判断してもよい。いずれにしても、判断部19による、車両52の追加または削減の要否判断の結果は、計画生成部14に送られる。計画生成部14は、車両52の追加または削減が必要と判断された場合、各車両52の走行計画80を再生成する。
【0046】
次に、こうした運行管理装置12における走行計画80の生成および修正について詳説する。図4は、図1の交通システム10で用いられる走行計画80の一例を示す図である。図1の例では、車列は、四つの車両52A~52Dで構成されており、走行経路50には、四つの駅54a~54dが等間隔に配置されている。また、本例において、各車両52が、走行経路50の1周に要する時間、すなわち、周回時間TCは、20分であるとする。
【0047】
この場合、運行管理装置12は、各駅54における車両52の発車間隔が、周回時間TCを車両52の数で除した時間、20/4=5分となるように、走行計画80を生成する。走行計画80は、図4に示すように、各駅54における発車タイミングのみが記録されている。例えば、車両52Dに送信される走行計画80Dには、当該車両52Dが、駅54a~54dそれぞれを発車する目標時刻が記録されている。
【0048】
また、走行計画80は、1周分のタイムスケジュールのみが記録されており、各車両52が、特定の駅、例えば、駅54aに到達したタイミングで、運行管理装置12から車両52に送信される。例えば、車両52Cは、駅54aに到達したタイミング(例えば、6:50)に、1周分の走行計画80Cを運行管理装置12から受け取り、車両52Dは、駅54aに到達したタイミング(例えば、6:45)に、1周分の走行計画80Dを運行管理装置12から受け取る。
【0049】
各車両52は、受け取った走行計画80に従って自律走行する。図5は、図4の走行計画80に従って自律走行する各車両52A~52Dのタイミングチャートである。図5において、横軸は、時刻を、縦軸は、車両52の位置を、それぞれ示している。各車両52の走行の様子について説明する前に、以下の説明で用いる各種パラメータの意味について簡単に説明する。
【0050】
以下の説明では、一つの駅54から次の駅54までの距離を「駅間距離DT」と呼ぶ。また、車両52が、一つの駅54を発車してから次の駅54を発車するまでの時間を「駅間所要時間TT」、利用者の乗降のために車両52が駅54で停車する時間を「停車時間TS」と呼ぶ。さらに、一つの駅54を発車してから次の駅54に到達するまでの時間、すなわち、駅間所要時間TTから停車時間TSを減算した時間を「駅間走行時間TR」と呼ぶ。
【0051】
さらに、移動距離を停車時間TSも含めた移動時間で除した値を「表定速度VS」と呼び、移動距離を停車時間TSも含めない移動時間で除した値を「平均走行速度VA」と呼ぶ。図5のラインM1の傾きは、平均走行速度VAを表しており、図5のラインM2の傾きは、表定速度VSを表している。
【0052】
図4の走行計画80に従えば、車両52Aは、7:00に駅54aを発車した後、5分後の7:05に駅54bを発車しなければならない。車両52Aは、この5分の間に、駅54aから駅54bへの移動と、利用者の乗降と、を完了するように、その平均走行速度VAを制御する。
【0053】
具体的に説明すると、車両52は、利用者の乗降のために必要な標準的な停車時間TSを、計画停車時間TSpとして予め記憶している。そして、車両52は、走行計画80で定められた駅54の発車時刻から、この計画停車時間TSpを引いた時刻を、当該駅54への到達目標時刻として算出する。例えば、計画停車時間TSpが1分の場合、車両52Aの駅54bへの到達目標時刻は、7:04となる。車両52は、こうして算出された到達目標時刻までに、次の駅54に到達できるように、その走行速度を制御する。
【0054】
ここで、車列の輸送能力に比べて輸送需要が過度に高くなると、車両52の混雑度が増加して利用者の快適性が損なわれることがある。また、輸送需要が過度に高まると、車両52が走行計画80に対して遅延し、移動に要する時間が無駄に長くなり、交通システム10としての利便性が低下することもある。逆に、車列の輸送能力に比べて輸送需要が過度に低くなると、車両52の利用効率が低下する。そこで、上述した通り、判断部19は、輸送需要等に基づいて、車両52の追加または車両52の削減の要否を判断する。
【0055】
車両52の追加が必要と判断された場合、計画生成部14は、新たな車両に対して、走行経路50に進入するような走行計画80を送信する。これにより、新たな車両52が、車列に追加される。図6の例では、新たな車両52Eが、車両52Aと車両52Dとの間に追加されている。
【0056】
ただし、新たな車両52を追加しただけの場合、複数の車両52の運行間隔が不均一となる。図6の例では、車両52Eを追加した直後では、車両52Eと車両52Aとの運行間隔が、車両52Aと車両52Bとの運行間隔に比べて小さくなっている。そこで、計画生成部14は、新たな車両52Eを車列に追加する場合には、等間隔運行に近づくように、既存車両52A~52Dの走行計画80も修正し、再生成する。同様に、車両52の削減が必要と判断された場合、計画生成部14は、等間隔運行に近づくように、複数の車両52の走行計画80を修正し、再生成する。ここで、車両52を追加する場合、および、車両52を削減する場合のいずれにおいても、計画生成部14は、複数の車両52の中の一つを基準車両として設定し、残りの車両52を、基準車両に比べて一時的に増速または減速させることで、等間隔運行に近づける。以下、これについて、具体例を挙げて説明する。
【0057】
はじめに、車両52の追加が必要と判断された場合に、基準車両以外の車両52を一時的に増速させるケース1について説明する。図7は、ケース1における走行計画80の生成の流れを示すフローチャートである。また、図8は、再生成された走行計画80の一例を示す図である。
【0058】
車両52の追加が必要と判断された場合、計画生成部14は、車両52の車列内における追加位置を決定する(S10)。この追加位置の決定の詳細な流れについては後述する。図6の例では、車両52Eの追加位置は、車両52Aの一つ後、かつ、車両52Dの一つ前となっている。車両52の追加位置が決定できれば、計画生成部14は、追加車両の一つ後続の車両52を基準車両として設定する(S12)。図6の例では、追加される車両52Eの一つ後続の車両52Dが基準車両となる。続いて、計画生成部14は、車両52の周回時間TCを、追加後の車両52の個数で割ることで、車両52の運行間隔を算出する(S13)。図6の例では、車両追加後の運行間隔は、20/5=4分となる。
【0059】
次に、計画生成部14は、基準車両について、第一表定速度VS1で走行させる走行計画80を生成する(S14)。ここで、第一表定速度VS1は、車両52が、利用者の利便性を損なわない範囲で安全に走行できる速度であれば特に限定されない。図8の例では、車両52Eの追加前に、複数の車両52に設定されていた表定速度VSを第一表定速度VS1として設定している。したがって、この場合、基準車両である車両52Dの表定速度VSは、車両52の追加の前後で変化しないため、車両52Dの走行計画80も、車両52の追加の前後で変化しない。
【0060】
次に、計画生成部14は、基準車両以外の車両52について、等間隔運行となるように、第一表定速度VS1より一時的に増速させた走行計画80を生成する(S16)。図8の例では、車両52D以外の車両52A~52Cの表定速度VSを、第一表定速度VS1より一時的に増加させている。例えば、図8の例では、第一表定速度VS1では、駅間所要時間TTは5分である。一方、車両52Aは、車両52Eの追加直後において、駅間所要時間TTが、一時的に2分に短縮されており、その表定速度VSが第一表定速度VS1より高くなっている。同様に、車両52Bは、車両52Eの追加直後において、駅間所要時間TTが、一時的に3分に短縮されており、その表定速度VSが第一表定速度VS1より高くなっている。
【0061】
なお、増速の結果、等間隔運行になれば、複数の車両52A~52Eは、いずれも、第一表定速度VS1で走行する。図8の例では、車両52Aは、駅54bを出発した後、車両52Bは駅54cを出発した後、第一表定速度VS1で走行する計画となっている。このように再生成された走行計画80は、複数の車両52A~52Eそれぞれに送信される。そして、各車両52は、再生成された走行計画80に従って自律走行する。
【0062】
図9は、図8の走行計画80に従って自律走行する各車両52A~52Eの運行タイミングチャートである。図9に示すように、車両52Eが追加された場合、車両52A~52Cは、等間隔運行になるように、一時的に増速する。そして、一時的に増速させることで、各駅54における車両52の運行間隔が4分になっている。
【0063】
なお、図8の例では、車両52Aは、駅54aから駅54bまで、2分という極短時間で走行する計画となっている。しかし、実際にこの計画を満たすことが難しい場合、車両52Aは、複数の駅を走行する過程で、徐々に、走行計画80に近づける。例えば、車両52Aは、駅54bに7:02に、駅54cに7:07に到着する計画であるが、図9の例では、車両52Aは、駅54bに7:04に、駅54cに7:08に到着しており、それぞれ、計画に対して2分および1分遅延している。しかし、最終的に、車両52Aは、駅54dに7:12に到着しており、走行計画80に対する遅延が解消される。
【0064】
ここで、車両52を追加した後、等間隔運行に調整するために、基準車両以外の車両52を一時的に増速させた場合、各駅での最大待機時間TWおよび駅間所要時間TTを、追加前のそれと比べて短く抑えることができる。例えば、図5の例では、最大待機時間TWは5分、駅間所要時間TTが5分であったのに対し、車両52Eを追加した後を示す図9の例では、いずれの駅54およびタイミングにおいても、最大待機時間TWを4分以下に抑えることができ、また、駅間所要時間TTも5分以下に抑えることができる。そして、これにより、車両に乗車する利用者の移動時間や待機時間を短く抑えることができ、利用者の利便性を高く保つことができる。
【0065】
ただし、燃費や路面状況によっては、車両52を第一表定速度VS1よりも増速できない場合もある。例えば、燃費または電費を低く保つことが強く要求されている場合には、車両52を一定以上に加速させないことが必要となる。また、路面が濡れていたり、凍結したりしている場合には、増速は適さない。そこで、そのような場合には、基準車両以外の車両52を一時的に減速させてもよい。図10は、車両52の追加が必要と判断された場合に、基準車両以外の車両52を一時的に減速させるケース2における走行計画80の生成の流れを示すフローチャートである。また、図11は、生成された走行計画80の一例を示す図である。
【0066】
図10に示すように、車両52の追加が必要と判断された場合、計画生成部14は、車両52の車列内における追加位置を決定する(S20)。続いて、計画生成部14は、基準車両を設定する(S22)。ここで、ケース2では、ケース1と異なり、追加車両の一つ先行の車両52を基準車両として設定する。図6で示せば、追加される車両52Eの一つ先行の車両52Aが基準車両となる。続いて、計画生成部14は、各駅54における車両52の運行間隔を算出する(S23)。図6の例では、車両追加後の運行間隔は、20/5=4分となる。
【0067】
次に、計画生成部14は、基準車両について、第一表定速度VS1で走行させる走行計画80を生成する(S24)。図11の例では、車両52Eの追加前に、複数の車両52に設定されていた表定速度VSを第一表定速度VS1として設定している。したがって、この場合、基準車両である車両52Aの表定速度VSは、車両52の追加の前後で変化しないため、車両52Aの走行計画80も、車両52の追加の前後で変化しない。
【0068】
次に、計画生成部14は、基準車両以外の車両52について、等間隔運行となるように、第一表定速度VS1より一時的に減速させた走行計画80を生成する(S26)。図11の例では、車両52A以外の車両52B~52Dの表定速度VSを、第一表定速度VS1より一時的に減速させている。例えば、図11の例では、第一表定速度VS1では、駅間所要時間TTは5分である。一方、車両52Bは、車両52Eの追加直後において、駅間所要時間TTが、一時的に6分に延長されており、その表定速度VSが第一表定速度VS1より減速されている。同様に、車両52Cは、車両52Eの追加直後において、駅間所要時間TTが、一時的に7分に延長されており、その表定速度VSが第一表定速度VS1より減速されている。
【0069】
そして、減速の結果、等間隔運行になれば、複数の車両52B~52Eを、いずれも、第一表定速度VS1で走行させる。図11の例では、車両52Bは、駅54cを出発した後、車両52Cは駅54dを出発した後、第一表定速度VS1で走行する計画となっている。このように再生成された走行計画80は、複数の車両52A~52Eそれぞれに送信される。そして、各車両52は、再生成された走行計画80に従って自律走行する。
【0070】
図12は、図11の走行計画80に従って自律走行する各車両52A~52Eの運行タイミングチャートである。図12に示すように、車両52Eが追加された場合、車両52B~52Dは、等間隔運行になるように、一時的に減速する。そして、一時的に減速させることで、各駅54における車両52の発車間隔が最終的に4分になる。
【0071】
なお、ケース1、ケース2のいずれの場合においても、追加される車両52Eは、追加前の車両52A~52Dの間隔の調整が完了する前に、車列に追加される。かかる構成とすることで、最大待機時間TWが過度に大きくなることを防止できる。すなわち、車両52Aと車両52Dとの間に、車両52Eを追加するとともに、等間隔運行とするためには、一つの駅54を車両52Aが出発してから車両52Dが出発するまでの間隔TW1が8分になるように、車両52Aと車両52Dとの間隔を調整する必要がある。図9の例では、駅54dを、7:12に車両52Aが出発した後、7:20に車両52Dが出発しており、7:12頃には、車両52Aと車両52Dとの間隔調整が完了している。この間隔調整が完了する7:12以降に、車両52Eを追加した場合、追加されるまでの期間(7:00~7:12までの期間)、車両52Aに間に合わなかった利用者の待機時間が過度に長くなり、利用者の利便性を損なう。一方、これまで説明した例では、追加前の車両52A~52Dの間隔の調整が完了する前に、新たな車両52Aを追加しているため、車両52Aに間に合わなかった利用者の待機時間の増加を効果的に抑制でき、利用者の利便性を高く保つことができる。
【0072】
次に、車両52の削減が必要と判断された場合に、基準車両以外の車両52を一時的に増速させるケース3について説明する。図13は、車列を構成する複数の車両52から一つの車両52Dを削減する様子を示すイメージ図である。また、図14は、ケース3における走行計画80の生成の流れを示すフローチャートであり、図15は、生成された走行計画80の一例を示す図である。
【0073】
車両52の削減が必要と判断された場合、計画生成部14は、削減する車両52を決定する(S30)。ここで、車両52を削減する場合には、輸送需要が十分に低くなっており、車両52の遅延等は、殆ど生じていない。この場合、いずれの車両52を削減したとしても、大きな悪影響は出ない。そのため、削減する車両52は、比較的単純なルールで決定できる。例えば、待機位置76に最も近い車両52を、削減車両52として決定してもよい。図13の例では、このルールに従い、車両52Dを削減している。
【0074】
削減する車両52が決定できれば、計画生成部14は、削減する車両52の一つ先行する車両52を基準車両として設定する(S32)。図13の例では、削減する車両52Dの一つ先行する車両52Aが基準車両となる。続いて、計画生成部14は、車両52の周回時間TCを、削減後の車両52の個数で割ることで、各駅54における車両52の運転間隔を算出する(S33)。図13の例では、車両追加後の運行間隔は、20/3≒6.6分となる。
【0075】
次に、計画生成部14は、基準車両について、第一表定速度VS1で走行させる走行計画80を生成する(S34)。図15の例では、車両52の削減前に、複数の車両52に設定されていた表定速度VSを第一表定速度VS1として設定している。したがって、この場合、基準車両である車両52Aの表定速度VSは、車両52の削減の前後で変化しないため、走行計画80も、車両52の追加の前後で変化しない。
【0076】
次に、計画生成部14は、基準車両および削減される車両52以外の車両52について、等間隔運行となるように、第一表定速度VS1より一時的に増速させた走行計画80を生成する(S36)。図15の例では、車両52A、車両52D以外の車両52B,52Cの表定速度VSを、第一表定速度VS1より一時的に増速させている。例えば、図15の例では、第一表定速度VS1では、駅間所要時間TTは5分である。一方、車両52Bは、車両52Dの削減決定直後において、駅間所要時間TTが、一時的に4分に短縮されており、その表定速度VSが第一表定速度VS1より大きくなっている。同様に、車両52Cは、車両52Dの削減決定直後において、駅間所要時間TTが、一時的に4分に短縮されており、その表定速度VSが第一表定速度VS1より大きくなっている。
【0077】
なお、増速の結果、削減されずに残る車両52A~52Cが、等間隔運行になれば、複数の車両52B,52Cは、いずれも、第一表定速度VS1で走行させる。図15の例では、車両52Bは、駅54dを出発した後、第一表定速度VS1で走行する計画となっている。
【0078】
続いて、計画生成部14は、削減車両52Dの走行計画80を生成する(S38)。この削減車両52については、残存車両52A~52Cと干渉しないような走行計画80とする。また、残存車両52A~52Cの運行間隔の調整が完了するまで、削減車両52Dは、利用者の乗降を許容した状態で走行する。さらに、残存車両52A~52Cの運行間隔の調整が完了した後は、削減車両52Dは、利用者の降車のみを許容し、乗車を拒否した状態で、走行経路50を一周分だけ走行する。
【0079】
このように再生成された走行計画80は、複数の車両52A~52Dそれぞれに送信される。そして、各車両52は、再生成された走行計画80に従って自律走行する。図16は、図15の走行計画80に従って自律走行する各車両52A~52Dのタイミングチャートである。図16に示すように、車両52Dの削減が7:00に決定された場合、車両52B,52Cは、残存車両52A~52Cが、等間隔運行になるように、一時的に増速する。そして、一時的に増速させることで、時刻7:12頃には、各駅54における車両52A~52Cの到着間隔が約6.6分となっている。
【0080】
一方、車両52Dは、他の車両52A~52Cと干渉しないように、速度調整しながら、7:12頃までは、利用者の乗車および降車の双方を許容している。一方、車両52A~52Cが、等間隔運行になる7:12以降では、車両52Dは、既に乗車している乗員の降車は、許容するものの、新たな乗車は、拒否した状態で1周分走行する。図16の例では、車両52Dは、7:13以降、駅54c、駅54d、駅54a、駅54bで、乗車を拒否しつつ、乗員を降車させながら走行する。
【0081】
このように、車両52の削減を決定した後、等間隔運行に調整するために、基準車両以外の車両52を一時的に増速させた場合、各駅での最大待機時間TWおよび駅間所要時間TTが、過度に増加することを抑制できる。例えば、図15の例では、いずれの駅54およびタイミングにおいても、最大待機時間TWを6.6分以下に抑えることができ、また、駅間所要時間TTも5分以下に抑えることができる。そして、これにより、車両に乗車する利用者の移動時間や待機時間を短く抑えることができ、利用者の利便性を高く保つことができる。
【0082】
次に、車両52の削減が必要と判断された場合に、基準車両以外の車両52を一時的に減速させるケース4について説明する。図17は、ケース4における走行計画80の生成の流れを示すフローチャートであり、図18は、生成された走行計画80の一例を示す図である。
【0083】
車両52の削減が必要と判断された場合、計画生成部14は、削減する車両52を決定する(S40)。削減する車両52が決定できれば、計画生成部14は、基準車両を設定する(S42)。ここで、ケース4では、ケース3と異なり、追加車両の一つ後続の車両52を基準車両として設定する。図13の例では、削減される車両52Dの一つ後続の車両52Cが基準車両となる。続いて、計画生成部14は、車両52の運行間隔を算出する(S43)。図6の例では、車両追加後の運行間隔は、20/3≒6.6分となる。
【0084】
次に、計画生成部14は、基準車両について、第一表定速度VS1で走行させる走行計画80を生成する(S44)。図18の例では、車両52の削減前に、複数の車両52に設定されていた表定速度VSを第一表定速度VS1として設定している。したがって、この場合、基準車両である車両52Cの表定速度VSは、車両52の削減の前後で変化しないため、走行計画80も、車両52Dの削減の前後で変化しない。
【0085】
次に、計画生成部14は、基準車両および削減される車両52以外の車両52について、等間隔運行となるように、第一表定速度VS1より一時的に減速させた走行計画80を生成する(S44)。図18の例では、車両52C、車両52D以外の車両52A,52Bの表定速度VSを、第一表定速度VS1より一時的に減速させている。例えば、図18の例では、第一表定速度VS1では、駅間所要時間TTは5分である。一方、車両52Aは、車両52Dの削減決定直後において、駅間所要時間TTが、一時的に8分に延長されており、その表定速度VSが第一表定速度VS1より小さくなっている。同様に、車両52Bは、車両52Dの削減決定直後において、駅間所要時間TTが、一時的に6分に延長されており、その表定速度VSが第一表定速度VS1より高くなっている。
【0086】
なお、減速の結果、削減されずに残る車両52A~52Cが、等間隔運行になれば、複数の車両52A,52Bは、いずれも、第一表定速度VS1で走行する。図18の例では、車両52Aは、駅54bを出発した後、第一表定速度VS1で走行する計画となっている。
【0087】
続いて、計画生成部14は、削減車両52Dの走行計画80を生成する(S48)。この削減車両52については、ケース3と同様に、残存車両52A~52Cと干渉しないような走行計画80とする。また、削減車両52Dは、残存車両52A~52Cの運行間隔の調整が完了するまで、利用者の乗降を許容し、完了後は、利用者の降車のみを許容し、乗車を拒否した状態で、走行経路50を一周分だけ走行する。
【0088】
このように再生成された走行計画80は、複数の車両52A~52Dそれぞれに送信される。そして、各車両52は、再生成された走行計画80に従って自律走行する。図19は、図18の走行計画80に従って自律走行する各車両52A~52Dの運行タイミングチャートである。図19に示すように、車両52Dの削減が7:00に決定された場合、車両52A,52Bは、残存車両52A~52Cが、等間隔運行になるように、一時的に増速する。そして、一時的に増速させることで、時刻7:09頃には、各駅54における車両52A~52Cの到着間隔が約6.6分となっている。
【0089】
一方、車両52Dは、他の車両52A~52Cと干渉しないように、速度調整しながら、7:09頃までは、利用者の乗降を許容している。一方、車両52A~52Cが、等間隔運行になる7:09以降では、車両52Dは、既に乗車している利用者の降車は、許容するものの、乗車は、拒否した状態で1周分走行する。図16の例では、車両52Dは、7:10以降、駅54b、駅54c、駅54d、駅54aで乗員を降車させつつも、乗車を拒否しながら走行する。
【0090】
以上の説明で明らかなとおり、ケース3、ケース4のいずれの場合においても、削減される車両52Dは、残存車両52A~52Cの間隔の調整が完了するまで、利用者の乗降を受け入れる。かかる構成とすることで、最大待機時間TWが過度に大きくなることを防止できる。すなわち、残存車両52A~52Cの間隔の調整が完了する前に、削減される車両52Dへの乗車を禁止した場合7:00に駅54aを出発する車両52Aに間に合わなかった利用者は、次の車両52Cが到着するまで10分ほど待機しなければならず、利用者の利便性を損なう。一方、残存車両52A~52Cの間隔の調整が完了するまで、削減される車両52Dへの乗車を許容することで、7:00に駅54aを出発する車両52Aに間に合わなかった利用者の最大待機時間TWは、7分程度に抑えることができる。そして、これにより、車両に乗車する利用者の移動時間や待機時間を短く抑えることができ、利用者の利便性を高く保つことができる。
【0091】
次に、車両52の追加位置の決定方法について説明する。計画生成部14は、車両52の追加が必要と判断された場合、車両52それぞれから送信される走行情報82、および、乗員情報84の少なくとも一つに基づいて、車列内における新たな車両52の追加位置を決定する。
【0092】
例えば、何らかのトラブルで、その運行の継続が不能な車両52が発生する場合がある。走行情報82には、こうした運行の継続の可否も含まれている。運行継続が不能な不能車両が発生した場合、判断部19は、不能車両に替えて新たな車両52の追加を決定する。また、計画生成部14は、不能車両の前後を走行していた二つの車両52の間を、新たな車両52の追加位置として決定する。
【0093】
例えば、図20に示すように、車両52Cが、運行継続できなくなった場合、計画生成部14は、車両52Bと車両52Dとの間を、新たな車両52Eの追加位置として決定する。これは、次の理由による。
【0094】
車両52Cが運行不能になった場合、当然ながら、車両52Bと車両52Dとの間の運行間隔が大幅に大きくなる。例えば、新たな車両52Eが追加されない場合、駅54dにおいて、車両52Dが出発してから、車両52Bが出発するまでの時間、すなわち、最大待機時間TWが大幅に大きくなる。最大待機時間TWが、長ければその分、駅54dにおいて車両52Bを待つ利用者の数も増えやすい。換言すれば、駅54dにおいて、車両52Bへの乗車希望者が多くなり、乗降に時間がかかり、車両52Bの遅延が生じやすくなる。また、車両52Cが運行不能になった場合、当該車両52Cに乗車していた利用者は、後続車両である車両52Bに収容される。そのため、車両52Bの乗員も多くなりやすく、駅54dにおいては、希望者全員が乗車できず、利用者がオーバーフローするおそれもある。
【0095】
一方、車両52Bと車両52Dとの間に新たな車両52Eを追加した場合、車両52の運行間隔を早期に等間隔に回復ができる。そして、結果として、車両52Bに乗車を希望する利用者の数を減らすことができ、車両52Bの遅延の発生やオーバーフローを効果的に抑制できる。
【0096】
なお、追加位置が決定した場合、追加車両52Eは、追加位置まで積極的に移動してもよいし、車列内における追加位置が待機位置76に近づくのを待ってもよい。すなわち、車両52Bの一つ先行位置に追加されることが決まった場合、追加車両52Eは、ショートカット88等を利用して、車両52Bに一つ先行する位置まで、積極的に移動してもよい。また、別の形態として、追加車両52Eは、車両52Dが待機位置76を通過するまで、待機位置76で待機しておき、車両52Bが待機位置76に到達する前に、待機位置から走行経路50に進入してもよい。
【0097】
また、不能車両が発生していない場合には、車両52の運行間隔に基づいて、新たな車両52の追加位置を決定してもよい。例えば、車両52から送付される走行情報82に、車両の位置情報が含まれている場合、計画生成部14は、当該位置情報に基づいて、複数の車両52の運行間隔を算出する。例えば、各車両52A~52Dが、特定の駅54を発車した時刻を記憶しておき、その発車間隔を運行間隔として算出してもよい。そして、先行する車両52との運行間隔が最大となっている車両52の一つ前を、新たな車両52の追加位置として決定してもよい。
【0098】
例えば、図21に示すように、車両52Bと車両52Cとの間の運行間隔が、他の車両間での運行間隔よりも大きい場合、車両52Bの一つ前を追加位置として決定してもよい。かかる構成とすることで、車両52の運行間隔を早期に等間隔に回復ができる。また、上述した通り、運行間隔が広がった状態を放置しておくと、車両52Bの最大待機時間TWが増加し、乗降時間の増加や、オーバーフロー等の問題を招きやすい。かかる車両52Bの一つ前に、新たな車両52Eを追加することで、車両52Bの更なる遅延やオーバーフローを効果的に抑制できる。
【0099】
また、別の形態として、複数の車両間で、乗員の降車時間の大小関係を推定し、降車時間が最大となる車両52と、最大となる車両の一つ前を走る車両52との間位置を、新たな車両52の追加位置として決定してもよい。この場合、車両52から送付される走行情報82には、車両52の乗員の数が少なくとも含まれる。また、走行情報は、さらに、乗員の属性も含まれてもよい。属性は、降車時間に影響を与える特性であり、例えば、車椅子の利用の有無、白杖の利用の有無、装具の利用の有無、ベビーカーの利用の有無、および、年齢層の少なくとも一つを含む。計画生成部14は、こうした属性に基づいて、各乗員の推定降車時間を推定し、一つの車両52に乗車している乗員の推定降車時間の積算値を、当該車両52の降車時間指標として算出する。そして、複数の車両52の中で、降車時間指標が最も高い車両52の一つ前を、新たな車両52の追加位置として決定する。
【0100】
例えば、図22の例を考える。図22において、各車両52の近傍に記載されたストップウォッチの針の位置は、当該車両52の降車時間指標の大きさを示している。この図22の例によれば、車両52Cの降車時間指標が、他の車両52A,52B,52Dの降車時間指標よりも大きい。そのため、この場合、計画生成部14は、車両52Cの一つ前を、新たな車両52Eの追加位置として決定する。
【0101】
かかる構成とするのは、降車時間指標が高い車両52Cは、乗降時間が長くなりやすく、遅延発生のリスクが高いためである。遅延しやすい車両52Cの一つ前に、新たな車両52Eを追加することで、車両52Bとその一つ前の車両52Eとの運行間隔を一時的ではあるものの狭めることができる。そして、運行間隔が短い場合、車両52Bへの乗車希望者の数を低減することができ、更なる遅延の発生やオーバーフローを効果的に抑制できる。
【0102】
また、別の形態として、複数の車両間で、定員に対する乗員の率、すなわち、乗車率を推定し、乗車率が最大となる車両52の一つ前を、新たな車両52の追加位置として決定してもよい。この場合、車両52から送付される走行情報82には、少なくとも、車両52の乗員の数が含まれていればよい。また、走行情報82は、さらに、乗員の属性を含んでもよい。この場合、属性は、車内における乗員の専有面積に影響を与える特性であり、例えば、車椅子の利用の有無、ベビーカーの利用の有無、および、大型荷物の有無の少なくとも一つを含んでもよい。計画生成部14は、乗員情報84に基づいて、乗車率を推定する。そして、複数の車両52の中で、乗車率が最大の車両52の一つ前を、新たな車両52の追加位置として決定する。
【0103】
例えば、図23の例を考える。図23において、各車両52の近傍に記載されたメータは、当該車両52の乗車率を示しており、黒塗り部分が大きいほど、乗車率が大きい。この図23の例によれば、車両52Cの乗車率が、他の車両52A,52B,52Dの乗車率よりも大きい。そのため、この場合、計画生成部14は、車両52Cの一つ前を、新たな車両52Eの追加位置として決定する。
【0104】
かかる構成とするのは、乗車率の高い車両52Cは、新たに乗車できる人数が少なく、オーバーフローが発生するリスクが高いためである。かかるオーバーフローしやすい車両52Cの一つ前に、新たな車両52Eを追加することで、車両52Cへの乗車希望者を抑制でき、車両52Cのオーバーフローを効果的に抑制できる。
【0105】
また、別の形態として、先行車との運行間隔、降車時間指標、および、乗車率の少なくとも二つを総合的に勘案して、新たな車両52の追加位置を決定してもよい。例えば、先行車との運行間隔が大きいほど、また、降車時間指標が高いほど、また、乗車率が高いほど、高くなる悪化リスクを、車両52ごとに算出し、この悪化リスクが最も高い車両52の一つ前を、新たな車両52の追加位置として決定してもよい。この場合の流れについて、図24を参照して説明する。図24は、新たな車両52の追加位置の決定の流れの一例を示すフローチャートである。
【0106】
新たな車両52の追加が必要な場合、計画生成部14は、まず、複数の車両52の中に、運行継続が不能となった不能車両52が存在するか否かを判断する(S50)。不能車両52が存在する場合、計画生成部14は、当該不能車両52の前後の車両52の間位置を追加位置として決定する(S52)。一方、不能車両52が存在しない場合、計画生成部14は、各車両52の悪化リスクを算出する(S54~S60)。
【0107】
具体的には、計画生成部14は、先行車との運行間隔、降車時間指標、および、乗車率を、それぞれ算出する(S54~S58)。続いて、計画生成部14は、算出された運行間隔、降車時間指標、および、乗車率を重み付け加算し、悪化リスクを算出する(S60)。例えば、悪化リスクをR、運行間隔をP1、降車時間指標をP2、乗車率をP3、K1,K2,K3をそれぞれ所定の値の係数とした場合、悪化リスクは、R=K1*P1+K2*P2+K3*P3の式で算出される。そして、悪化リスクが算出できれば、計画生成部14は、悪化リスクが最大となる車両52の一つ前の位置を新たな車両52の追加位置として決定する(S62)。
【0108】
以上の説明で明らかな通り、本明細書で開示する例によれば、走行情報82および乗員情報84の少なくとも一つに基づいて、新たな車両52の追加位置を決定しているため、等間隔運行に早期に回復できるとともに、別の車両52の遅延やオーバーフローを効果的に抑制できる。
【0109】
ただし、ここまで説明した構成は一例であり、車両52の追加または削減が必要と判断された場合、基準車両を第一表定速度VS1で走行させる一方で、残りの車両52の表定速度VSを前記第一表定速度VS1よりも一時的に増速または減速させる走行計画80を生成するのであれば、その他の構成は、適宜、変更されてもよい。したがって、車列を構成する車両52の数や、駅54の数、駅54の間隔等は、適宜、変更されてもよい。また、基準車両52は、追加・削減前の車列を構成する複数の車両の一つであれば、適宜、自由に選択してもよい。また、車両52の追加、削減位置も適宜、自由に選択してもよい。
【符号の説明】
【0110】
10 交通システム、12 運行管理装置、14 計画生成部、16 通信装置、18 運行監視部、19 判断部、20 記憶装置、22 プロセッサ、24 入出力デバイス、26 通信I/F、50 走行経路、52 車両、54 駅、56 自動運転ユニット、58 駆動ユニット、60 自動運転コントローラ、62 環境センサ、64 車内センサ、66 位置センサ、68 通信装置、76 待機位置、80 走行計画、82 走行情報、84 乗員情報、88 ショートカット。
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