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特許7351790自律走行車両の運行管理装置および自律走行車両
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-19
(45)【発行日】2023-09-27
(54)【発明の名称】自律走行車両の運行管理装置および自律走行車両
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/127 20060101AFI20230920BHJP
【FI】
G08G1/127 B
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020066659
(22)【出願日】2020-04-02
(65)【公開番号】P2021163366
(43)【公開日】2021-10-11
【審査請求日】2022-07-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】東出 宇史
(72)【発明者】
【氏名】岡崎 健志
(72)【発明者】
【氏名】宇野 慶一
【審査官】西 秀隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-144668(JP,A)
【文献】特開2013-177022(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00-99/00
B61L 1/00-99/00
H04B 7/24- 7/26
H04W 4/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
規定経路を自律走行する自律走行車両であって、
運行管理装置から提供された自身の運行スケジュールが記憶される運行スケジュール記憶部と、
前記運行スケジュールに基づいた自律走行制御を実行するとともに、前記運行管理装置から追越指令を受信した際に、一台先行する自律走行車両である先行車両を追い越す追越走行制御を実行する、自律走行制御部と、
進行方向前方の周辺環境情報を取得するセンサと、
を備え、
前記自律走行制御部は、前記センサにより取得された前記周辺環境情報に基づいて認識された前記先行車両が停止しているときに前記運行管理装置に追越要求を送信する、
自律走行車両。
【請求項2】
規定経路を自律走行する自律走行車両であって、
運行管理装置から提供された自身の運行スケジュールが記憶される運行スケジュール記憶部と、
前記運行スケジュールに基づいた自律走行制御を実行するとともに、前記運行管理装置から追越指令を受信した際に、一台先行する自律走行車両である先行車両を追い越す追越走行制御を実行する、自律走行制御部と、
前記先行車両の追越に伴い、前記運行スケジュール記憶部に記憶された前記運行スケジュールを前倒し変更するスケジュール変更部と、
を備え、
前記規定経路は循環路であり、
前記規定経路に設けられた運行スケジュール更新地点において前記規定経路の一周分の前記運行スケジュールが提供され前記運行スケジュール記憶部に記憶され、
前記運行スケジュールには、次に前記運行スケジュール更新地点を通過する更新地点通過目標時刻と前記規定経路を走行する自律車両間の運行間隔が含まれ、
前記スケジュール変更部は、前記先行車両の追越に伴い、前記運行スケジュールの前記更新地点通過目標時刻を、前記運行間隔分前倒し変更する、
自律走行車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書では、規定経路を自律走行する自律走行車両及び複数の自律走行車両の運行を管理する運行管理装置が開示される。
【背景技術】
【0002】
近年、自律走行可能な車両を用いた交通システムが提案されている。例えば、特許文献1では、専用道路を走行するそれぞれのバスに対して、バス乗車率や速度、位置に基づき管理センターからバスへの運行に関する指示信号が送信される。例えば乗車率が相対的に高く、かつ遅延が生じている、つまり後続車両との運行間隔が詰まっているバスに対して、乗車待ちの客が待機するバス停を通過(素通り)する旨の指示信号が送信される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2005-222144号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、停留所を車両が通過することで、当該停留所にて車両を待つ客の満足度が低下する。その一方で、乗車率が高い車両への更なる乗車は困難であり、停留所での乗降時間が長時間に亘る場合がある。乗降時間が長時間に亘ることで遅延が増加され、後続車両との運行間隔が更に詰まるおそれがある。
【0005】
そこで本明細書では、遅延車両発生時において、運行中の複数の車両の運行間隔を、運行計画に沿ったものに回復可能な運行管理装置および自律走行車両が開示される。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書で開示する自律走行車両用の運行管理装置は、規定経路を自律走行する複数の車両の運行を管理する。当該運行管理装置は、運行スケジュール提供部、運行状況取得部、遅延車両抽出部、及び追越指令部を備える。運行スケジュール提供部は、規定経路を自律走行中の運行車両に対する運行スケジュールを、それぞれの運行車両に提供する。運行状況取得部は、規定経路における、複数の運行車両の運行状況を取得する。遅延車両抽出部は、それぞれの運行車両の運行状況に基づいて、運行スケジュールに対して実運行が遅れている遅延車両を複数の運行車両から抽出する。追越指令部は、遅延車両に一台後続する後続車両に対して、遅延車両を追い越す追越指令を出力する。
【0007】
遅延発生時に、遅延車両とその後続車両との運行間隔は短くなる。つまり、遅延車両が停留所から発車してから後続車両が到着するまでの待ち時間が短くなるから、後続車両を待って停留所に集まる乗客数は比較的少ない人数に留まる。このような、遅延車両と比較して空いている後続車両が、遅延車両を追い抜かし、先に次の停留所に向かうことで、混雑した遅延車両と比較して乗降時間の短縮が図られる。
【0008】
また上記構成において、追越指令部は、追越指令の出力前に、遅延車両に対して停止指令を出力してもよい。
【0009】
上記構成によれば、遅延車両の停止を待って後続車両が追越を始めるので、安全性の高い追越が可能となる。
【0010】
また上記構成において、遅延車両と後続車両との実運行間隔が所定の閾値時間未満となったときに、追越指令部は遅延車両に対して停止指令を出力してもよい。
【0011】
上記構成によれば、実運行間隔の詰まり度合いに応じた追越が可能となる。
【0012】
また上記構成において、遅延車両の運行スケジュールに対する実運行の遅延時間が所定の閾値時間を超過したときに、追越指令部は遅延車両に対して停止指令を出力してもよい。
【0013】
上記構成によれば、遅延車両の遅延度合いに応じた追越が可能となる。
【0014】
また上記構成において、遅延車両の運行スケジュールに対する実運行の遅延時間の、遅延車両と後続車両との運行スケジュールに基づく運行間隔に対する割合が所定の閾値割合を超過したときに、追越指令部は遅延車両に対して停止指令を出力してもよい。
【0015】
上記構成によれば、追越の可否判定に、運行間隔と遅延時間との割合(比)が用いられることで、例えば異なる複数の運行間隔が設定されたときでも、一律に追越の可否判定ができる。
【0016】
また上記構成において、追越指令部は、後続車両から追越可能通知を受信した後に、追越指令を出力してもよい。
【0017】
上記構成によれば、追越車両の走行状態(つまり追越可否)を踏まえた追越指令の出力が可能となる。
【0018】
また本明細書で開示される自律走行車両は、規定経路を自律走行する。また当該自律走行車両は、運行スケジュール記憶部及び自律走行制御部を備える。運行スケジュール記憶部は、運行管理装置から提供された自身(自律走行車両)の運行スケジュールが記憶される。自律走行制御部は、運行スケジュールに基づいた自律走行制御を実行するとともに、運行管理装置から追越指令を受信した際に、一台先行する自律走行車両である先行車両を追い越す追越走行制御を実行する。
【0019】
上記構成によれば、上述されたように、遅延車両よりも空いている後続車両が、遅延車両を追い抜かし、先に次の停留所に進むことで、乗降時間の短縮が図られ、その結果、運行中の複数の車両の運行間隔が、運行計画に沿ったものに回復可能となる。
【0020】
また上記構成において、進行方向前方の周辺環境情報を取得するセンサが備えられてもよい。この場合、自律走行制御部は、センサにより取得された周辺環境情報に基づいて認識された先行車両が停止しているときに、運行管理装置に追越要求を送信する。
【0021】
上記構成によれば、自律走行制御に用いられる機能を用いて周辺状況を認識することで、安全性の高い追越が可能となる。
【0022】
また上記構成において、先行車両の追越に伴い、運行スケジュール記憶部に記憶された運行スケジュールを前倒し変更するスケジュール変更部が備えられてもよい。
【0023】
上記構成によれば、追越後も引き続き自律走行が可能となる。
【0024】
また上記構成において、規定経路は循環路であってよい。この場合、規定経路に設けられた運行スケジュール更新地点において規定経路の一周分の運行スケジュールが提供され運行スケジュール記憶部に記憶される。運行スケジュールには、次に運行スケジュール更新地点を通過する更新地点通過目標時刻と規定経路を走行する自律車両間の運行間隔が含まれる。スケジュール変更部は、先行車両の追越に伴い、運行スケジュールの更新地点通過目標時刻を、運行間隔分前倒し変更する。
【0025】
上記構成によれば、次周の運行スケジュールの提供までに通常運行スケジュールとのずれが解消可能となる。
【発明の効果】
【0026】
本明細書で開示する技術によれば、遅延車両発生時において、運行中の複数の車両の運行間隔が、運行計画に沿ったものに回復可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本実施形態に係る自律走行車両及び運行管理装置が含まれる交通システムの概略図である。
図2】運行管理装置及び自律走行車両のハードウェア構成図である。
図3】運行管理装置及び自律走行車両の機能ブロック図である。
図4】運行スケジュール作成に用いられる用語の説明図(1/2)である。
図5】運行スケジュール作成に用いられる用語の説明図(2/2)である。
図6】通常運行スケジュールが例示されたダイヤグラムである。
図7】本実施形態に係る交通システムにおける追越フローを例示する図である。
図8】追越フロー実行時のダイヤグラムを例示する図である。
図9図8から車両C4のダイヤグラムを抜き出した図である。
図10】追越車両の運行スケジュールの変更フローを例示する図である。
図11図8から車両C3のダイヤグラムを抜き出した図である。
図12】遅延車両の運行スケジュールの変更フローを例示する図である。
図13】別例に係る追越フロー実行時のダイヤグラムを例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
図1には、本実施形態に係る自律走行車両C1~C8及び運行管理装置10を含む交通システムの概略図が例示される。この交通システムでは、規定経路100に沿って複数の停留所ST1~ST3が設けられる。
【0029】
なお、以下では、複数の自律走行車両C1~C8を区別しない場合は、区別用の添え字番号が省略され「車両C」と表記される。同様に、複数の停留所ST1~ST3も、区別の必要がない場合は、「停留所ST」と表記される。
【0030】
図1に例示される交通システムでは、規定経路100に沿って車両Cが走行し、不特定多数の利用者が輸送される。図1に例示されるように、規定経路100は循環路であってよい。車両Cは、規定経路100上を図示矢印のように一方通行にて循環運行し、規定経路100沿いに設けられた停留所ST1~ST3を巡回する。
【0031】
規定経路100は、例えば車両Cのみが走行を許可される専用道路であってよい。車両Cが鉄道車両である場合には、規定経路100は循環線であってよい。又は、規定経路100は、車両C以外の車両も通行可能な一般道路に設定された路線であってもよい。
【0032】
また、規定経路100と接続するようにして、交通システムには車庫110が設けられる。図1では車庫110に待機中の自律走行車両C5~C8が例示される。車庫110との接続ポイントとして、規定経路100には回収ポイントPout及び投入ポイントPinが設けられる。図1の例では回収ポイントPout及び投入ポイントPinは停留所ST2と停留所ST3との間に設けられる。
【0033】
規定経路100を走行中の自律走行車両C1~C4は、回収ポイントPoutにて、車庫110に入る。また、車庫110にて待機中の自律走行車両C5~C8は、投入ポイントPinから規定経路100内に投入される。回収用の車両Cと投入用の車両Cとの交錯を避けるために、回収ポイントPoutは投入ポイントPinの上流側に設けられる。
【0034】
また規定経路100には、運行中の自律走行車両C1~C4に各自の運行スケジュールを提供する運行スケジュール更新ポイントPu(運行スケジュール更新地点)が設けられる。運行スケジュール更新ポイントPuでは、運行管理装置10から、当該ポイントを通過する車両Cに対して、運行スケジュール更新ポイントPuを起点とした一周分の運行スケジュールが提供される。このようにして車両Cは運行スケジュール更新ポイントPuを通過するたびに(周ごとに)運行スケジュールが変更される。運行スケジュールの提供方法の詳細は後述される。
【0035】
<車両構成>
車両Cは、規定経路100を自律走行可能な車両であって、例えば、所定の停留所STから他の停留所STまで不特定多数の利用者を輸送する乗合車両として機能する。車両Cは、例えば乗合バスであってよい。
【0036】
車両Cは、自律走行可能な車両である。例えば車両Cは、米国の自動車技術会(SAE)による基準で示されるレベル3~レベル5を満たす車両である。図2には、車両C及び運行管理装置10のハードウェア構成が例示される。また図3には、車両C及び運行管理装置10の機能ブロックが、ハードウェアと混在した状態で例示される。
【0037】
図2図3に例示されるように、車両Cは、回転電機29(モータ)を駆動源とし、図示しないバッテリを電源とする電動車両である。車両Cは、運行管理装置10と無線通信により通信可能、つまりデータのやり取りが可能となっている。
【0038】
また車両Cには、自律走行を可能とするための機構が搭載されている。具体的には、車両Cは、制御部20、カメラ22、ライダーユニット23、近接センサ25、GPS受信機26、時計27、駆動機構28及び操舵機構30を備える。
【0039】
カメラ22は、ライダーユニット23と略同一の視野を撮像する。カメラ22は、例えばCMOSセンサやCCDセンサ等のイメージセンサを備える。カメラ22が撮像した画像(撮像画像)は、後述するように、自律走行制御に利用される。
【0040】
ライダーユニット23(LiDAR Unit)は、自律走行用のセンサであり、例えば赤外線を用いた測距センサである。例えば、ライダーユニット23から、水平方向及び鉛直方向に赤外線レーザー光線が走査され、これにより、車両Cの周辺環境についての測距データが3次元的に配列された、3次元点群データを得ることが出来る。カメラ22及びライダーユニット23は、一纏まりのセンサユニットとして、例えば、車両Cの前面、後面、ならびに前面及び後面を繋ぐ両側面の4面に設けられる。
【0041】
近接センサ25は、例えばソナーセンサであって、例えば車両Cが停留所STに停車する際に、車道と歩道との境界である縁石と車両Cとの距離を検出する。この検出により、車両Cを縁石に寄せて停車させる、いわゆる正着制御が可能となる。近接センサ25は、例えば車両Cの両側面と、前面と側面との角部に設けられる。
【0042】
GPS受信機26は、GPS衛星からの測位信号を受信する。例えばこの測位信号を受信することで、車両Cの現在位置(緯度、経度)が求められる。
【0043】
制御部20は、例えば車両Cの電子コントロールユニット(ECU)であってよく、コンピュータから構成される。図2に例示される制御部20は、データの入出力を制御する入出力コントローラ20Aを備える。また制御部20は演算素子として、CPU20B、GPU20C(Graphics Processing Unit)、DLA20D(Deep Learning Accelerators)を備える。さらに制御部20は記憶部として、ROM20E、RAM20F、及びハードディスクドライブ20G(HDD)を備える。これらの構成部品は内部バス20Jに接続される。
【0044】
図3には、制御部20の機能ブロックが例示される。この機能ブロックは、スキャンデータ解析部40、自己位置推定部42、経路作成部44、自律走行制御部46、及び運行スケジュール変更部47を含んで構成される。また制御部20は、記憶部として、ダイナミックマップ記憶部48及び運行スケジュール記憶部49を備える。
【0045】
ダイナミックマップ記憶部48には、規定経路100及びその周辺のダイナミックマップデータが記憶される。ダイナミックマップは、3次元地図であって、例えば道路(車道及び歩道)の位置及び形状(3次元形状)が記憶される。また道路に引かれた車線、横断歩道、停止線等の位置もダイナミックマップに記憶される。加えて、建物や車両用信号機等の構造物の位置及び形状(3次元形状)もダイナミックマップに記憶される。ダイナミックマップデータは、運行管理装置10から提供される。
【0046】
運行スケジュール記憶部49には、当該記憶部が搭載された車両Cの運行スケジュールが記憶される。上述のように、この運行スケジュールは、運行スケジュール更新ポイントPu(図1参照)にて一周ごとに更新される。
【0047】
車両Cは、ダイナミックマップ記憶部48に記憶された規定経路100のデータに沿って自律走行する。自律走行に当たり、車両Cの周辺環境の3次元点群データがライダーユニット23により取得される。またカメラ22によって車両Cの周辺環境の画像が撮像される。
【0048】
カメラ22が撮像した撮像画像内の物体は、スキャンデータ解析部40により解析される。例えば、教師有り学習を用いたSSD(Single Shot Multibox Detector)やYOLO(You Only Look Once)といった既知のディープラーニング手法により撮像画像内の物体が検出され、さらに検出された物体の属性(停留所ST、通行人、構造物等)が認識される。
【0049】
また、スキャンデータ解析部40は、ライダーユニット23から3次元点群データ(ライダーデータ)を取得する。カメラ22による撮像画像とライダーデータを重ね合わせることで、どのような属性(停留所ST、通行人、構造物等)の物体が、自身からどれ位の距離にいるかを求めることが出来る。
【0050】
また、自己位置推定部42は、GPS受信機26から受信した自己位置(緯度、経度)から、ダイナミックマップ中の自己位置を推定する。推定された自己位置は、経路作成に用いられる他、時計27から取得した時刻情報とともに運行管理装置10に送信される。
【0051】
経路作成部44は、推定された自己位置と直近の目標地点までの経路を作成する。例えば自己位置と停留所STまでの経路が作成される。自己位置と停留所STまでの直線経路上に障害物があることが、ライダーユニット23による3次元点群データ及びカメラ22による撮像画像から判明したときには、当該障害物を避けるような経路が作成される。
【0052】
自律走行制御部46は、上記により求められた、撮像画像とライダーデータの重ね合わせデータ、自己位置、作成済みの経路、及び運行スケジュールに基づいて車両Cの自律走行制御を実行する。例えば作成済み経路の走行速度は、通常運行スケジュールによって定められた目標速度V0(後述される)と一致するように、自律的に制御される。例えば自律走行制御部46は、インバータ等の駆動機構28を制御して、車両Cの速度を目標速度V0に維持する。また、自律走行制御部46は、アクチュエータ等の操舵機構30の制御を通して車輪31を操作し、決定された経路を車両Cが進むように制御する。
【0053】
また、停留所STでは、自律走行制御部46は、車両Cを停車させた後に乗降扉(図示せず)を開放させる。このとき、自律走行制御部46は、時計27を参照して、運行スケジュールによって定められた出発目標時刻Td*(後述される)まで車両Cを停車状態に維持させる。乗車及び降車が完了した後、出発目標時刻Td*に至ると、自律走行制御部46は、乗降扉を閉止させ、車両Cを発車させる。
【0054】
運行スケジュール変更部47は、先行車両を追い越す場合、または、後続車両に追い越される場合に、運行スケジュール記憶部49に記憶された通常運行スケジュールを変更する。この詳細は後述される。
【0055】
<運行管理装置の構成>
運行管理装置10は、規定経路100を自律走行する複数の車両Cの運行を管理する。運行管理装置10は、例えば車両Cの運行を管理する管理会社に設置される。運行管理装置10は例えばコンピュータから構成され、図2には、運行管理装置10のハードウェア構成が例示される。
【0056】
運行管理装置10は、車両Cのハードウェア構成と同様にして、入出力コントローラ10A、CPU10B、GPU10C、DLA10D、ROM10E、RAM10F、及びハードディスクドライブ10G(HDD)を備える。これらの構成部品は内部バス10Jに接続される。
【0057】
また運行管理装置10は、適宜データを入力するキーボードやマウス等の入力部10Hを備える。さらに運行管理装置10は、運行スケジュール等を閲覧表示するためのディスプレイ等の表示部10Iを備える。入力部10H及び表示部10Iは内部バス10Jに接続される。
【0058】
図3には、運行管理装置10の機能ブロックが例示される。運行管理装置10は、記憶部として、運行スケジュール記憶部65及びダイナミックマップ記憶部66を備える。また運行管理装置10は、機能部として、運行状況取得部60、遅延車両抽出部61、運行スケジュール作成部62、運行スケジュール提供部63、運行ルート作成部64、及び追越指令部68を備える。
【0059】
運行ルート作成部64は、車両Cを走行させるルート、つまり規定経路100を作成する。例えば分岐を含むような道路から経路が選択されて規定経路100が作成される。作成された規定経路100に対応するダイナミックマップデータが、ダイナミックマップ記憶部66から抽出され、車両Cに送信される。
【0060】
運行スケジュール作成部62は、規定経路100を運行中の複数の運行車両Cに提供される運行スケジュールを作成する。後述されるように、運行スケジュール作成部62は、通常運行スケジュールを作成可能となっている。また後述されるように、運行スケジュール作成部62は、作成された運行スケジュールと、時計17から得られた時刻情報に基づいて、各停留所ST1~ST3の到着目標時刻Ta*及び出発目標時刻Td*を算出可能となっている。なお図2では、時計17は運行管理装置10の外部に設けられているが、運行管理装置10に時計17が内蔵されていてもよい。
【0061】
運行スケジュール提供部63は、運行スケジュール作成部62により作成された運行スケジュールを、運行スケジュール更新ポイントPu(運行スケジュール更新地点)にて運行車両Cに提供する。上述されたように、運行スケジュール提供部63は、運行スケジュール更新ポイントPuを通過する運行車両Cに、循環路である規定経路100の一周分の運行スケジュールを提供する。
【0062】
運行状況取得部60は、規定経路100を走行する運行車両C(図1では車両C1~C4)から車両情報を取得する。車両情報には、現在位置、乗車人数、バッテリのSOC、車載センサが取得した各種機器の情報等が含まれる。遅延車両抽出部61は、それぞれの運行車両Cの運行状況に基づいて、運行スケジュールに対して実運行が遅れている遅延車両を、複数の運行車両Cから抽出する。
【0063】
追越指令部68は、遅延車両が生じた場合に、その一台後続する後続車両に対して、追越指令を出力する。また追越に際して、遅延車両に対して停止指令を出力する。この追越過程については後述される。
【0064】
<運行スケジュール>
運行スケジュール及びスケジュール変更の際に用いられる用語が図4図5に例示される。図4に例示されるように、通常運行スケジュールでは、各停留所STにおける到着目標時刻Ta*と、当該停留所から出発する出発目標時刻Td*が車両Cごとに定められる。到着目標時刻Ta*から出発目標時刻Td*までの期間は、スケジュール上での車両Cの停車時間となり、計画停車時間Dwpと呼ばれる。
【0065】
また実際の運行に当たり、前の停留所にて乗降に時間が掛かったことで生じる遅延や、規定経路100上の渋滞等に起因して、車両Cが到着目標時刻Ta*とは異なる時刻に停留所STに到着する場合がある。この実際の到着時刻は到着実時刻Taと呼ばれる。加えて到着実時刻Taから出発目標時刻Td*までの期間は、その停留所STからスケジュール通りに車両Cを出発させるための目標時間となり、停車目標時間Dw*と呼ばれる。
【0066】
さらに、車両Cへの実際の乗降時間が乗降実時間Dpと呼ばれる。乗降実時間Dpは、到着実時刻Taから乗降完了時刻Tpまでの期間である。乗降完了時刻Tpは、車両Cの側面に設けられたカメラ22による撮像画像とライダーユニット23による三次元点群データを、スキャンデータ解析部40が解析することで、推定可能である。例えばスキャンデータ解析部40により解析された、車両Cの搭乗口に乗り込む乗客がいなくなった時刻、及び、降車口から降りる乗客がいなくなった時刻の遅い方が、乗降完了時刻Tpとなる。また、停車目標時間Dw*から乗降実時間Dpを引いた時間は待機時間Dwと呼ばれる。
【0067】
図4には、待機時間Dwが正の値を取る場合が例示される。この場合、待機時間Dwは、乗降完了時刻Tpから出発目標時刻Td*までの時間となり、車両Cへの乗降が済み、そこから出発を待つ時間となる。待機時間Dw経過後、出発目標時刻Td*に至ると、車両Cは停留所から出発する。つまり、待機時間Dwが正の値を取る場合は、車両Cが実際に停留所STから出発する時刻である出発実時刻Tdと出発目標時刻Td*とが基本的に等しくなる。
【0068】
図5では、乗降実時間Dpが停車目標時間Dw*を超過し、待機時間Dwが負の値を取る場合、すなわち、待機時間Dwが遅延時間Dwとして表される場合が例示される。この場合、出発目標時刻Td*を過ぎても乗員の乗降が続き、乗降が完了すると直ちに車両Cが出発するため、乗降完了時刻Tpと出発実時刻Tdとが基本的に等しくなる。
【0069】
<通常運行スケジュール>
図6には、通常運行スケジュールに基づくダイヤグラムが例示される。ダイヤグラムについて横軸は時刻を示し、縦軸は規定経路100上の停留所ST1~ST3、運行スケジュール更新ポイントPu、回収ポイントPout、投入ポイントPinの各地点が示される。このような通常運行スケジュールは、運行スケジュール作成部62により作成される。
【0070】
図6では、4台の車両C1~C4が計画運行間隔Drp=15分で運行する通常運行スケジュールが編成されている。通常運行スケジュールとは、規定経路100を自律走行する車両Cの台数が維持されながら周回走行されるときに適用される運行スケジュールを指す。言い換えると、増車も減車も無い状態で車両Cが規定経路100をそれぞれ一周する場合に、通常運行スケジュールが適用される。
【0071】
例えば、通常運行スケジュールでは、規定経路100を走行する運行車両Cの運行間隔が等間隔となるように、各停留所ST1~ST3での計画停車時間Dwp1,Dwp2,Dwp3が各車両Cで一律に設定され、また目標速度V0も各車両Cで一律に設定される。
【0072】
通常運行スケジュールにて設定される目標速度V0及び各停留所ST1~ST3での計画停車時間Dwp1,Dwp2,Dwp3は、適宜「通常値」とも記載される。このような観点から、通常運行スケジュールとは、通常値を用いて編成される運行スケジュールということが出来る。通常運行スケジュールは、例えば当該運行スケジュールにて実際の運行がなされる前に、予め運行管理装置10の運行スケジュール作成部62によって定められる。
【0073】
目標速度V0及び計画停車時間Dwp1,Dwp2,Dwp3に基づいて、規定経路100上の各地点を通過する時刻が求められる。例えば運行スケジュール更新ポイントPuの通過時刻が時計17(図2参照)から得られる。
【0074】
例えば図6では車両C1の通過時刻が示される。上記のような運行スケジュール更新ポイントPuの通過時刻を起点として、停留所ST2までの道のり及び目標速度V0に基づいて、停留所ST2の到着目標時刻Ta*_C1_ST2が求められる。さらに計画停車時間Dwp2に基づいて、出発目標時刻Td*_C1_ST2が求められる。
【0075】
同様にして、各停留所ST間の距離と目標速度V0、及び、計画停車時間Dwp1,Dwp3に基づいて、車両C1の停留所ST1,ST3への到着目標時刻Ta*_C1_ST1,Ta*_C1_ST3が求められる。また、車両C1の停留所ST1,ST3からの出発目標時刻Td*_C1_ST1,Td*_C1_ST3が求められる。さらに、停留所ST1から運行スケジュール更新ポイントPuまでの道のりと目標速度V0から、運行スケジュール更新ポイントPuの通過目標時刻T*_C1_Puが求められる。
【0076】
運行スケジュール提供部63(図3)は、運行スケジュール更新ポイントPu(運行スケジュール更新地点)にて、当該ポイントを通過する車両C1~C4に通常運行スケジュールを提供する。このとき、運行スケジュール提供部63は、運行スケジュール更新ポイントPuを通過中の運行車両C1~C4に、通常運行スケジュールを、1周分提供する。
【0077】
例えば、運行車両C1が運行スケジュール更新ポイントPuを通過するときには、当該ポイントPuから、次回運行スケジュール更新ポイントPuを通過するまで(例えば図6におけるポイントP1からポイントP2まで)の、運行車両C1の運行スケジュールデータが、運行車両C1に提供される。
【0078】
このとき運行車両Ck(4台体制ではk=1~4)に提供される運行スケジュールデータには、各停留所ST1~ST3への到着目標時刻Ta*_Ck_ST1~Ta*_Ck_ST3、及び、各停留所ST1~ST3からの出発目標時刻Td*_Ck_ST1~Td*_Ck_ST3が含まれる。さらに、各停留所ST1~ST3における計画停車時間Dwp1,Dwp2,Dwp3、及び目標速度V0が、運行車両Ckに提供される運行スケジュールデータに含まれる。加えて、次回に運行スケジュール更新ポイントPuを通過する通過目標時刻T*Ck_Pu、及び、運行車両Ck間の計画運行間隔Drpが運行車両Ckに提供される運行スケジュールデータに含まれる。
【0079】
<追越プロセス>
図7には、本実施形態に係る追越プロセスのフロー図が例示される。また、図8には追越実行時のダイヤグラムが例示される。
【0080】
運行管理装置10の運行状況取得部60は、運行車両C1~C4から運行状況を取得する。この取得は所定間隔、例えば0.1[μSec]ごとに実行される。さらに遅延車両抽出部61は、運行状況取得部60が取得した運行状況に基づいて、通常運行スケジュールに対して実運行が遅れている遅延車両を、運行車両C1~C4から抽出する(図7S10)。
【0081】
具体的に、運行状況取得部60は、運行車両C1~C4から現在位置を取得する。さらに遅延車両抽出部61は、取得した現在位置及び取得時刻と、通常運行スケジュールに基づく同位置及び同位置の目標時刻とに基づいて、各車両の遅延時間Dwを求める。
【0082】
例えば図8では、車両C3が停留所ST2に停車中に、乗降時間が計画停車時間Dwp2を超過する。例えば計画停車時間Dwp2から遅延時間Dw2を超過した時点で、乗降が完了して車両C3が停留所ST2を出発する。このとき、車両C3の遅延時間はDw2となる。以下では、遅延車両を車両C3とし、後続車両(追越車両)を車両C4として追越プロセスが説明される。
【0083】
遅延車両抽出部61は、遅延車両C3の追越要否を検討する。例えば遅延車両抽出部61は、遅延車両C3とこれに一台後続する後続車両C4との実運行間隔を求める。さらにこの実運行間隔が所定の閾値時間未満となった時に、遅延車両抽出部61は遅延車両C3の追越要と判定する(図7S11)。このような判定を行うことで、実運行間隔の詰まり度合いに応じた追越が可能となる。実運行間隔における所定の閾値時間は、例えば、通常運行スケジュールに基づく計画運行間隔の50%の値であってよい。
【0084】
遅延車両抽出部61は、遅延車両C3の追越要と判定した後に、追越指令部68に対して、遅延車両として運行車両C3を指定し、当該車両を追い越す後続車両として運行車両C4を指定する。
【0085】
なお、追越要否の判定条件として、実運行間隔に代えて、遅延車両C3の遅延時間が用いられてもよい。例えば遅延車両C3の遅延時間Dw2が所定の閾値時間を超過したときに、遅延車両抽出部61は遅延車両C3の追越要と判定する。このような判定を行うことで、遅延車両の遅延度合いに応じた追越が可能となる。遅延時間Dw2に対する所定の閾値時間は、例えば、通常運行スケジュールに基づく計画運行間隔の50%の値であってよい。
【0086】
さらにこれに代えて、追越要否の判定条件として、遅延時間Dw2の、計画運行間隔に対する割合が用いられてもよい。例えばこの割合が、所定の閾値割合を超過したときに、遅延車両抽出部61は遅延車両C3の追越要と判定する。所定の閾値割合は例えば50%であってよい。この判定方法によれば、追越の可否判定に、運行間隔と遅延時間との割合(比)が用いられる。したがって例えば異なる複数の運行間隔が設定されたときでも、一律に追越の可否判定ができる。
【0087】
上記いずれかの判定方法にて、遅延車両C3の追越が必要と判定されると、追越指令部68は、遅延車両C3に対して遅延車両指定指令を出力する(図7S12)。また追越指令部68は、後続車両C4に対して追越車両指定指令を出力する(図7S14)。これを受けて遅延車両C3は追越指令部68に確認信号を出力する(図7S16)。また、追越指定された追越車両C4は、自車の状態(バッテリSOC等)を確認の後、追越可能である旨を通知する追越可能通知を追越指令部68に出力する(図7S18)。
【0088】
遅延車両C3からの確認指令及び追越車両C4からの追越可能通知を受けて、追越指令部68は、遅延車両C3に対して停止指令を出力する(図7S20)。停止指令を受けて、遅延車両C3の自律走行制御部46は、追越指令部68に確認信号を出力する(図7S22)とともに、遅延車両C3を規定経路100上に停止させる(図7S24)。
【0089】
さらに追越車両C4のスキャンデータ解析部40は、同車両のカメラ22(図3参照)及びライダーユニット23から得た周辺環境情報を分析して、規定経路100上の進行方向前方にいる遅延車両C3を認識する。さらに認識された遅延車両C3が停止しているときに、スキャンデータ解析部40は、自律走行制御部46に対して追越要求の出力を許可する。これを受けて自律走行制御部46は、運行管理装置10の追越指令部68に対して、追越要求通知を送信する(図7S25)。
【0090】
追越指令部68は、追越車両C4から追越要求通知を受信すると、追越車両C4に対して、一台先行する遅延車両C3を追い越す追越指令を出力する(図7S26)。これを受けて追越車両C4は確認信号を追越指令部68に出力し(図7S28)、その後追越車両C4の自律走行制御部46は、遅延車両C3を追い越す追越走行制御を実行する(図7S30)。図8のダイヤグラムに記載されるように、追越走行の目標速度V1は、通常運行スケジュールにて定められる目標速度V0より早い速度であってよい。
【0091】
遅延車両C3の停止中に追越車両C4が遅延車両C3を追い越すことで、安全性の高い追越、例えば両車両の交錯のおそれの低い追越が可能となる。
【0092】
追越走行に当たり、追越車両C4のスキャンデータ解析部40は、同車両のカメラ22(図3参照)及びライダーユニット23から得た周辺環境情報を分析して規定経路100上の遅延車両C3を認識する。これに応じて自律走行制御部46は、停止中の遅延車両C3を避けるような経路を作成して、当該経路に沿って遅延車両C3を追い越す追越走行制御を実行する。このように、自律走行制御に用いられる機能を用いて周辺状況を認識することで、安全性の高い追越が可能となる。
【0093】
追越車両C4が遅延車両C3を追い越すと、例えば自律走行制御部46は追越速度V1のまま、直近の停留所ST3まで走行する。その後、追越車両C4の制御部20は追越完了信号を追越指令部68に出力する(図7S32)。これを受けて追越指令部68は追越車両C4の制御部20に確認信号を出力する(図7S34)。その後、追越車両C4の自律走行制御部46は、追越に伴って変更された運行スケジュールに基づいて、自律走行制御を行う(S40)。運行スケジュールの変更については後述される。
【0094】
また追越完了指令を受けて追越指令部68は、遅延車両C3に対して、停止解除指令を出力する(図7S36)。これを受けて遅延車両C3の制御部20は確認信号を追越指令部68に出力する(図7S38)。その後、遅延車両C3の自律走行制御部46は、追越に伴って変更された運行スケジュールに基づいて、自律走行制御を行う(S42)。運行スケジュールの変更については後述される。
【0095】
<追越後の運行スケジュール>
追越後の追越車両C4及び遅延車両C3は、通常運行スケジュールに変更を加えて、スケジュール更新ポイントPuまで走行する。概念的には、追越車両C4は、それまでの遅延車両C3の通常運行スケジュールを追いかけるような運行スケジュールに変更される。
【0096】
図9には、追越車両C4のダイヤグラムが例示され、図10には、運行スケジュールの変更フローが例示される。なお、図10の記号Ckは、車両C及びその識別番号k(図8の例ではk=1~4)を示す。遅延車両C3を追い越して停留所ST3に到着した、つまり追越が完了した追越車両C4は、図示しない乗降扉を開放する。さらにこの間に、運行スケジュール変更部47は、先行車両であるところの遅延車両C3の追越に伴い、運行スケジュール記憶部49に記憶された通常運行スケジュールを前倒し変更する。
【0097】
追越車両C4の運行スケジュール変更部47は、現在位置の現在時刻と、通常運行スケジュールに基づく目標時刻との差分時間Da(図9参照)を求める(図10S70)。つまり、追越完了時刻と、停留所ST3の到着目標時刻との差分が差分時間Daとなる。
【0098】
次に運行スケジュール変更部47は、スケジュール更新ポイントPuの新たな通過目標時刻T**_C4_Puを設定する(図10S72)。この通過目標時刻T**_C4_Puは、通常運行スケジュールに定められた、スケジュール更新ポイントPuの通過目標時刻T*_C4_Puを、計画運行間隔Drp(15分)前倒しした時刻である。
【0099】
さらに運行スケジュール変更部47は、運行スケジュールの前倒し幅ΔDを求める(図10S74)。前倒し幅ΔDは、追越の際に目標速度V1で走行したことによる、追越時の前倒し分を差し引くものであり、計画運行間隔Drp-差分時間Da=前倒し幅ΔDとなる。
【0100】
さらに運行スケジュール変更部47は、目標速度をV1(>V0)に設定する(図10S76)。次に運行スケジュール変更部47は、前倒し幅ΔD及び目標速度V1に基づいて、現在位置からスケジュール更新ポイントPuまでの運行スケジュールを、通常運行スケジュールから変更する(図10S78)。
【0101】
例えば、現在位置からスケジュール更新ポイントPuまで目標速度V1で走行する場合に、同区間を目標速度V0で走行した場合からの前倒し分が得られる。この前倒し分が、前倒し幅ΔDより少ない場合、現在位置からスケジュール更新ポイントPuまでの経路にある停留所ST1の計画待機時間が、通常運行スケジュールで定められたものよりも短縮される。
【0102】
このようにして変更された運行スケジュールから、運行スケジュール変更部47は、現在位置からスケジュール更新ポイントPuまでの経路上にある停留所ST1の、到着目標時刻Ta**_C4_ST1及び出発目標時刻Td**_C4_ST1を求める(図10S80)。さらに自律走行制御部46は、目標速度V1、ならびに、到着目標時刻Ta**_C4_ST1及び出発目標時刻Td**_C4_ST1に基づいて、自律走行を再開する(図10S82)。
【0103】
以上のようにして、通常運行スケジュールから短縮変更された運行スケジュールに基づいて、追越車両C4の自律走行制御部46による走行制御が実行される。このような走行制御を行うことで、スケジュール更新ポイントPuにおいて、追越車両C4は計画運行間隔からの遅延が解消されることから、運行スケジュール提供部63(図3参照)から通常運行スケジュールが提供される。
【0104】
一方、追越車両C4に追い越された遅延車両C3も、同車両の運行スケジュール変更部47が通常運行スケジュールを変更する。概念的には、遅延車両C3の運行スケジュールは、追い越されるまで後続していた追越車両C4の通常運行スケジュールに寄せるような運行スケジュールに変更される。例えば運行スケジュール変更部47は、追越指令部68から停車解除指令を制御部20が受信したときに、運行スケジュール変更を実行する。
【0105】
図11には、遅延車両C3のダイヤグラムが例示され、図12には、運行スケジュールの変更フローが例示される。なお、図12の記号Ckは、車両C及びその識別番号k(図8の例ではk=1~4)を示す。運行管理装置10から停車解除通知を受信した遅延車両C3の運行スケジュール変更部47は、運行スケジュール記憶部49に記憶された通常運行スケジュールを遅延変更する。
【0106】
遅延車両C3の運行スケジュール変更部47は、現在位置の現在時刻と、通常運行スケジュールに基づく目標時刻との差分時間De(図11参照)を求める(図12S80)。
【0107】
次に運行スケジュール変更部47は、スケジュール更新ポイントPuの新たな通過目標時刻T**_C3_Puを設定する(図12S82)。この通過目標時刻T**_C3_Puは、通常運行スケジュールに定められた、スケジュール更新ポイントPuの通過目標時刻T*_C3_Puを、計画運行間隔Drp(15分)遅延させた時刻である。
【0108】
さらに運行スケジュール変更部47は、運行スケジュールの調整幅ΔDを求める(図12S84)。調整幅ΔDは、実運行時に発生した遅延時間Dw2と、追越時に停車によって生じた遅延時間を、計画運行間隔Drpから差し引くものであり、計画運行間隔Drp-差分時間De=調整幅ΔDとなる。
【0109】
さらに運行スケジュール変更部47は、目標速度をV0に設定するとともに、調整幅ΔDに基づいて、現在位置からスケジュール更新ポイントPuまでの運行スケジュールを、通常運行スケジュールから変更する(図12S86)。
【0110】
例えば、目標速度V0は通常運行スケジュールにて設定された値に維持されていることから、現在位置からスケジュール更新ポイントPuまでの経路にある停留所ST1の計画待機時間が調整される。
【0111】
例えば調整幅ΔDが正の値を取る場合には、停留所ST1の計画待機時間が延長される。一方、調整幅ΔDが負の値を取る場合には、実運行から追越完了までの間に発生した遅延が、計画運行間隔Drpよりも長いということであるから、停留所ST1の計画待機時間が短縮される。
【0112】
このようにして変更された運行スケジュールから、運行スケジュール変更部47は、現在位置からスケジュール更新ポイントPuまでの経路上にある停留所ST1の、到着目標時刻Ta**_C3_ST1及び出発目標時刻Td**_C3_ST1を求める(図12S88)。さらに自律走行制御部46は、目標速度V0、ならびに、到着目標時刻Ta**_C3_ST1及び出発目標時刻Td**_C3_ST1に基づいて、自律走行を再開する(図12S90)。
【0113】
以上のようにして、通常運行スケジュールから変更された運行スケジュールに基づいて、遅延車両C3の自律走行制御部46による走行制御が実行される。このような走行制御を行うことで、スケジュール更新ポイントPuにおいて、遅延車両C3は計画運行間隔からのずれが解消されることから、運行スケジュール提供部63(図3参照)から通常運行スケジュールが提供される。
【0114】
<追越プロセスの別例>
図13には、本実施形態に係る追越プロセスの別例フロー図が示される。図7に例示される追越プロセスでは、運行管理装置10の主導により、追越が管理される。これに対して、図13に例示される追越プロセスでは、追越車両指定及び遅延車両指令を受けた後、遅延車両C3と追越車両C4とが相互に通信し合い、協働的に追越が進行する。
【0115】
図13に例示されるフローは、起点から、追越車両C4が追越可能通知を運行管理装置10に出力するステップS18まで、図7のフローと同様であることから、これらのステップについては適宜説明が省略される。
【0116】
追越車両C4は、遅延車両C3に対して追越要求指令を出力する(図13S50)。また管理者である運行管理装置10にも同指令が出力される。遅延車両C3の制御部20は、追越要求指令を受けて、追越車両C4及び運行管理装置10に確認及び停止した旨の信号を出力する(図13S52)。さらに遅延車両C3の自律走行制御部46は、遅延車両C3を停止させる(図13S54)。
【0117】
一方、停止確認信号を受信した追越車両C4は、遅延車両C3及び運行管理装置10に確認信号を出力する(図13S56)。その後追越車両C4の自律走行制御部46は遅延車両C3を追い越す追越走行を実行する(図13S58)。
【0118】
図8のダイヤグラムに記載されるように、追越走行の目標速度V1は、通常運行スケジュールにて定められる目標速度V0より早い速度であってよい。また、追越走行に当たり、追越車両C4のカメラ22(図3参照)及びライダーユニット23から得た周辺環境情報から認識された遅延車両C3が停止しているときに、追越車両C4の自律走行制御部46は追越制御を実行する。
【0119】
追越車両C4が遅延車両C3を追い越すと、追越車両C4の制御部20は追越完了通知を遅延車両C3及び運行管理装置10に出力する(図13S60)。追越完了後、追越車両C4に対して図10に定めるスケジュール変更が行われ、追越車両C4の自律走行制御部46は、当該変更後の運行スケジュールに基づいて、自律走行制御を行う(S40)。
【0120】
ステップS60にて追越完了通知を受信した遅延車両C3は、運行管理装置10に確認信号を出力する(図13S62)。追越完了後、遅延車両C3に対して図12に定めるスケジュール変更が行われ、遅延車両C3の自律走行制御部46は、当該変更後の運行スケジュールに基づいて自律走行制御を行う(S42)。
【0121】
このように、運行管理装置10を介さずに、互いに近接した遅延車両と追越車両とが主導的に追越プロセスを進めることで、例えば両車両から遠隔にある運行管理装置10との通信遅延が抑制され、速やかな追越が可能となる。
【符号の説明】
【0122】
10 運行管理装置、20車両の制御部、22 カメラ、23 ライダーユニット、25 近接センサ、26 GPS受信機、27 時計、28 駆動機構、29 回転電機、30 操舵機構、40 スキャンデータ解析部、42 自己位置推定部、44 経路作成部、46 自律走行制御部、47 運行スケジュール変更部、60 運行状況取得部、61 遅延車両抽出部、62 運行スケジュール作成部、63 運行スケジュール提供部、64 運行ルート作成部、65 運行スケジュール記憶部、66 ダイナミックマップ記憶部、68 追越指令部、100 循環路、110 車庫、C 車両、ST 停留所。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
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図13