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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-19
(45)【発行日】2023-09-27
(54)【発明の名称】汚染土壌等の浄化方法
(51)【国際特許分類】
   B09C 1/10 20060101AFI20230920BHJP
【FI】
B09C1/10 ZAB
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020073529
(22)【出願日】2020-04-16
(65)【公開番号】P2021169067
(43)【公開日】2021-10-28
【審査請求日】2022-07-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】高畑 陽
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 雅子
【審査官】岡田 三恵
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-279403(JP,A)
【文献】特開2011-020088(JP,A)
【文献】特開2005-058893(JP,A)
【文献】特開平07-136632(JP,A)
【文献】米国特許第06589776(US,B1)
【文献】特開2003-047950(JP,A)
【文献】特開2011-194307(JP,A)
【文献】特開平09-234485(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B09C 1/10
C02F 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
浄化材容器内において有機物を含む浄化材溶液の中から酸素を除去する浄化材溶液製造工程と、
前記浄化材溶液および浄化菌を地盤に供給するための注入管を当該地盤に設ける注入管設置工程と、
前記注入管の内部の酸素を除去する管内酸素除去工程と、
地盤に前記浄化材溶液を供給して一定期間放置することで嫌気的な地盤を形成する浄化材溶液供給工程と、
前記嫌気的な地盤内に嫌気性の浄化菌を供給する浄化菌供給工程と、を備え、
前記管内酸素除去工程では、PSA方式の窒素発生装置から前記注入管の底部に窒素ガスを供給し、
前記浄化材溶液供給工程では、前記窒素発生装置から前記浄化材容器に窒素ガスを供給し、前記窒素発生装置から供給された窒素ガスの圧力により、前記浄化材容器から前記注入管の上端部まで前記浄化材溶液を圧送することを特徴とする、浄化方法。
【請求項2】
前記浄化菌供給工程の前に、前記浄化菌が培養された培養容器から前記注入管に至る管路内の酸素を除去する配管酸素除去工程を備えていることを特徴とする、請求項1に記載の浄化方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、汚染土壌等の浄化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
揮発性有機塩素化合物等(例えば、テトラクロロエチレンやトリクロロエチレンなどの塩素化エチレン類)で汚染された帯水層(地下水)の浄化方法として、例えば、特許文献1には、有機物を含む浄化材を地盤に設置した注入管(井戸等も含む)から供給し、有用な絶対嫌気性細菌(嫌気性脱塩素細菌)を活性化させることで、無害なエチレンまで浄化する技術が開示されている。また、特許文献2には、浄化材とともに嫌気性脱塩素細菌の培養液を地盤に供給することで浄化期間の短縮化を図る浄化方法が開示されている。
特許文献1および特許文献2に記載の浄化方法では、以下の二つのステップにより浄化が進行する。第一のステップは、帯水層中の好気性細菌により地盤に嫌気環境を形成するステップである。地盤に浄化材を供給すると、好気性細菌によって浄化材中の有機物が分解される過程で、地盤内に存在する酸素が消費されて嫌気環境が形成される。第二のステップは、嫌気性細菌により脱塩素化を進めるステップである。第二のステップでは、嫌気性細菌が浄化材中の有機物を分解することによって水素(電子供与体)が供給され、嫌気性の浄化菌(嫌気性脱塩素細菌)がこの水素を利用することで脱塩素化が進行する。
前記浄化方法では、浄化材の使用量を少なくすることでコストの低減化を図ることができる。一方、浄化材を溶解した液中の酸素量が多いと、浄化材中の有機物が好気性細菌によって多く消費されるため、嫌気性細菌が分解する有機物の量が少なくなってしまい、結果的に浄化材の供給量を多くする必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2012-101201号公報
【文献】特開2014-108061号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、嫌気性細菌が分解する有機物の量が少なくなることを防止するための浄化方法を提案することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するために、本発明の浄化方法は、浄化材容器内において有機物を含む浄化材溶液の中から酸素を除去する浄化材溶液製造工程と、前記浄化材溶液および浄化菌を地盤に供給するための注入管を当該地盤に設ける注入管設置工程と、前記注入管の内部の酸素を除去する管内酸素除去工程と、地盤に前記浄化材溶液を供給して一定期間放置することで嫌気的な地盤を形成する浄化材溶液供給工程と、前記嫌気的な地盤内に嫌気性の浄化菌を供給する浄化菌供給工程とを備えている。前記管内酸素除去工程では、PSA方式の窒素発生装置から前記注入管の底部に窒素ガスを供給し、前記浄化材溶液供給工程では、前記窒素発生装置から前記浄化材容器に窒素ガスを供給し、前記窒素発生装置から供給された窒素ガスの圧力により、前記浄化材容器から前記注入管の上端部まで前記浄化材溶液を圧送する。かかる浄化方法によれば、浄化材溶液から酸素を除去し、酸素が除去された浄化材溶液を地盤内に供給するため、好気性細菌によって消費される浄化材中の有機物の量を抑制することが可能となり、その結果、嫌気性細菌が分解する有機物を一定量残存させることができる。そのため、従来の浄化方法に比べて、浄化材の供給量を制限し、コスト低減化を図ることが可能となる。
なお、前記浄化方法において、前記嫌気的な地盤内に嫌気性の浄化菌を供給すれば、脱塩素化がより早く進行する。
【0006】
本発明の浄化方法において、前記浄化菌が培養された培養容器から前記注入管に至る管路内の酸素を除去する配管酸素除去工程を前記浄化菌供給工程の前に備えているのが望ましい。
嫌気性の浄化菌が空気(酸素)に触れると死滅するおそれがあるため、注入管を利用して浄化菌を供給する場合には、注入管の内部および注入管に至る管路内の酸素を除去して浄化菌が酸素に触れることを防止することが望ましい。
【0007】
浄化材溶液中の酸素や、注入管や管路内の酸素を除去するためには、酸素を含まない安全な不活性ガスを用いるが、一般的には安価で入手しやすい窒素ガスを用いる。前記管内酸素除去工程ではPSA(Pressure Swing Adsorption)方式の窒素発生装置を利用して前記注入管の底部に窒素ガスを供給してもよい。このとき、前記浄化材溶液供給工程では、前記窒素発生装置から前記浄化材容器に窒素ガスを供給し、前記窒素発生装置から供給された窒素ガスの圧力により前記浄化材容器から前記注入管の上端部まで前記浄化材溶液を圧送すればよい。
窒素ガスの供給にガスボンベを用いると、保管場所として比較的大きな用地が必要となり、かつ、高圧ガス保安法に基づいて管理する必要があるが、ガスボンベに代えてPSA方式の窒素発生装置を使用すると、取り扱い易くなるとともに、小スペース化が可能となる。また、費用もガスボンベに比べて安価である。浄化材溶液を注入管の底部から供給する場合には、浄化材溶液を圧送する管路内での圧力損失に対して十分に高い圧力が必要となるが、本発明の浄化方法によれば、注入管の上端部まで浄化材溶液を圧送すればよいので、ガスボンベに比べて圧力が低いPSA方式の窒素発生装置でも浄化材溶液を供給することができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明の浄化方法によれば、従来の浄化方法に比べて少ない浄化材の使用量により効果的に浄化することが可能となり、ひいてはコスト低減化が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施形態に係る浄化方法のフローチャートである。
図2】本発明の実施形態に係る注入管を示す断面図である。
図3】注入管の蓋材を示す図であって、(a)は平面図、(b)は断面図である。
図4】浄化材溶液の製造状況の概要を示す断面図である。
図5】管内酸素除去工程の概要を示す断面図である。
図6】配管酸素除去工程の概要を示す模式図である。
図7】浄化材溶液供給工程の概要を示す断面図である。
図8】浄化菌供給工程の概要を示す断面図である。
図9】砂層に対する浄化材溶液の注入実験の比較例の概要を示す断面図である。
図10】浄化方法の実証実験における注入管の配置を示す平面図である。
図11】浄化方法の実証実験における注入管の配置を示す断面図である。
図12】浄化方法の実証実験における塩素化エチレン類の挙動を示すグラフである。
図13】浄化方法の実証実験における有機物濃度の残存率の挙動を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本実施形態では、揮発性有機塩素化合物(例えば、テトラクロロエチレンやトリクロロエチレン等の塩素化エチレン類)で汚染された帯水層を地中で無害化する浄化方法について説明する。本実施形態の浄化方法では、地盤内に有機物を含む浄化材を供給し、一定時間放置することにより酸素を除去(消費)して嫌気的な地盤を形成させることにより、地盤内に低濃度に存在する浄化菌(脱塩素細菌)が増殖し、浄化が進行する。しかしながら、嫌気的な地盤を形成させた後で地盤内に元々存在する浄化菌が増えるまでには時間がかかるため、浄化期間を短縮したい場合には、嫌気的な地盤を形成させた後で絶対嫌気性の浄化菌を含む培養液を供給することにより脱塩素化を促進させる。つまり、浄化菌の供給工程は必要に応じて選択することになる。図1に本実施形態の浄化方法のフローチャートを示す。本実施形態の浄化方法は、図1に示すように、注入管を地盤に設ける注入管設置工程S1と、浄化材溶液を製造する浄化材溶液製造工程S2と、注入管内の酸素を除去する第一管内酸素除去工程S3と、注入管に接続する管路内の酸素を除去する第一配管酸素除去工程S4と、管路を介して浄化材溶液を注入管に供給する浄化材溶液供給工程S5と、浄化菌培養液を培養する浄化菌培養液製造工程S6と、注入管内の酸素を除去する第二管内酸素除去工程S7と、注入管に接続する管路内の酸素を除去する第二配管酸素除去工程S8と、管路を介して浄化菌を注入管に供給する浄化菌供給工程S9とを備えている。なお、浄化菌培養液製造工程S6、第二管内酸素除去工程S7および第二配管酸素除去工程S8は、浄化菌供給工程S9を実施する場合に実施するものであって、浄化菌供給工程S9を実施しない場合には省略する。
【0011】
(1)注入管設置工程S1
注入管設置工程S1では、注入管1を地盤に設ける。図2は、注入管1の設置状況を示す断面図である。図2に示すように、注入管1は、地表GLから地下水位WL以深まで到達している。本実施形態の地下水は、汚染物質を含有したいわゆる汚染地下水である。すなわち、注入管1は、汚染地下水が存在する帯水層Gに到達している。本実施形態では、帯水層Gの上下には粘土層Gが積層されている。本実施形態の注入管1は、地盤(粘土層Gおよび帯水層G)に圧入または打ち込むことにより地盤内(地中)に配管する。なお、注入管1の地中への設置方法は限定されるものではなく、例えば、地盤を削孔することにより形成された掘削孔に注入管1を挿入してもよい。
注入管1は、浄化材溶液および浄化菌の培養液を地盤に供給するための管材である。注入管1を構成する材料は限定されるものではないが、地盤に設置する際の押圧力や土圧に対して十分な耐力を有した金属製の管材であるのが望ましい。注入管1には、汚染地盤(汚染帯水層G)の位置に応じて開口部11が形成されている。本実施形態の開口部11は、スリット状に形成されているが、開口部11の形状は限定されるものではなく、例えば、円形や矩形状の孔であってもよい。
また、注入管1の先端は、円錐状の先端部材12により遮蔽されている。先端部材12の注入管1への固定方法は限定されるものではなく、例えば、螺合してもよいし、溶接してもよい。また、先端部材12の構成は、注入管1の先端を遮蔽することが可能であれば限定されるものではなく、例えば板材であってもよい。
【0012】
注入管1の頭部には、蓋材13が設置されている。図3に蓋材13を示す。蓋材13は、注入管1の頭部外周に形成された雄ネジに螺合することにより注入管1の頭部に固定されている。なお、注入管1の頭部には、予めシールテープを設置しておくことで、注入管1と蓋材13との接合部の密閉性を高めるのが望ましい。蓋材13は、注入管1は金属製とする。なお、蓋材13を構成する材料は限定されるものではなく、適宜決定すればよい。
蓋材13には、少なくとも2本の取付管14,15が貫通した状態で固定されている。本実施形態の取付管14,15は、金属製の管材からなる。取付管14、15と蓋材13との接合部では、各取付管14、15と蓋材13との間に隙間が形成されることがないように、取付管14、15の全周が蓋材13に溶接されている。なお、取付管14、15を構成する材料は限定されるものではないが、蓋材13と同種の金属の管材を使用する。また、取付管14,15と蓋材13との固定方法は限定されるものではなく、例えば、蓋材13に形成されたネジ孔に外面にネジ加工が施された取付管14,15を螺合してもよい。このとき、シール材などにより密封する。
取付管14、15の上端(注入管1と反対側の端部)には、カップリングプラグ16が設けられている。なお、取付管14,15の構成は限定されるものではなく、例えば、取付管14、15の上端にはカップリングプラグ16に代えてカップリングソケットが設けられていてもよいし、開閉バルブが設けられていてもよい。
図2に示すように、注入管1の内部には、一方の取付管(第一取付管14)から注入管1の管底に至る内管17が配管されている。内管17を構成する材料は限定されるものではないが、内管17を介して輸送される流体(窒素ガスG等)との摩擦力が少ない材質の管材(例えば、フッ素樹脂チューブ)を使用するのが望ましい。
【0013】
(2)浄化材溶液製造工程S2
浄化材溶液製造工程S2では、浄化材溶液Sを製造する。図4に浄化材溶液Sの製造状況の概要を示す。浄化材溶液Sは、耐圧性の浄化材容器2内に浄化材と希釈液とを投入して、浄化材を希釈することにより所定の濃度に調整する。本実施形態では、浄化材溶液Sの有機物濃度を500mg/L~50000mg/Lの範囲内とする。浄化材溶液Sの濃度は、浄化材の種類などに応じて適宜決定すればよい。希釈液を構成する材料は限定されるものではなく、例えば、水や汚染されていない地下水等を使用することができる。
浄化材容器2は、金属製の筒状部材からなり、上部に材料を投入するための投入口が形成されている。投入口は、投入口用蓋21により密閉する。また、浄化材容器2には、浄化材容器2の内部に連通する第一プラグ22と第二プラグ23が形成されている。第一プラグ22および第二プラグ23には、ワンタッチ式のコネクタが形成されている。なお、第一プラグ22および第二プラグ23には、コネクタに代えて、開閉バルブ等が設けられていてもよい。さらに、浄化材容器2の内部には、第一プラグ22から浄化材容器2の底部に至る内管24が配管されている。内管24を構成する材料は限定されるものではないが、内管24を介して輸送される流体との摩擦力が少ない材質の管材(例えば、ステンレス管)を使用するのが望ましい。
【0014】
浄化材溶液製造工程S2では、浄化材容器2内において有機物を含む浄化材溶液Sの中から酸素を除去する。本実施形態では、PSA(Pressure Swing Adsorption)方式の窒素発生装置3から窒素ガスGを浄化材容器2に供給することで、浄化材容器2内の酸素を除去する。窒素発生装置3により供給される窒素ガスGの純度は99.9%以上(酸素濃度が1000ppm以下)、より望ましくは99.99%以上(酸素濃度100ppm以下)とする。また、窒素発生装置3から供給する窒素ガスGの風量を5~10L/minとする。
まず、窒素発生装置3から延設された送ガス管31を浄化材容器2の第一プラグ22に接続する。送ガス管31を構成する材料は限定されるものではないが、例えば、取り扱い性に優れ、かつ、ガス漏れの危険性の少ないフッ素樹脂チューブを使用すればよい。
次に、窒素発生装置3から送ガス管31を介して浄化材容器2に窒素ガスGを供給する。このとき、浄化材容器2の第二プラグ23を開口しておく。第二プラグ23は、コネクタに開口用ソケット25を差し込むことにより開口すればよい。本実施形態では、窒素ガスGの供給時間を5分以上とする。窒素発生装置3から供給された窒素ガスGは、浄化材容器2の内管24を介して浄化材容器2の底部から浄化材容器2の内部に供給される。こうすることで、浄化材溶液S中に含まれる酸素が第二プラグ23から排出される。浄化材容器2内へ窒素ガスGを一定時間供給し、酸素の除去が終了したら、窒素発生装置3からの窒素ガスGの供給を停止するとともに、第二プラグ23から開口用ソケット25を取り外し、第二プラグ23を遮蔽する。
【0015】
(3)第一管内酸素除去工程S3
第一管内酸素除去工程S3では、地盤に設置した注入管1の内部の酸素を除去する。本実施形態では、PSA方式の窒素発生装置3から注入管1の底部に窒素ガスGを供給することで、注入管1内の酸素を除去する。図5は、第一管内酸素除去工程S3の概要を示す断面図である。
まず、窒素発生装置3から延設された送ガス管31を第一取付管(一方の取付管)14のカップリングプラグ16に接続する。次に、窒素発生装置3から送ガス管31を介して注入管1に窒素ガスGを供給する。このとき、第二取付管(他方の取付管)15を開口しておく。第二取付管15は、カップリングプラグ16に開口用ソケット18を取り付けることにより開口すればよい。窒素発生装置3から供給された窒素ガスGは、注入管1の内管17を介して注入管1の底部から供給される。こうすることで、注入管1内の酸素が第二取付管15から排出される。注入管1に供給する窒素ガスGの量は、注入管1の長さに応じて決定する。本実施形態では、注入管1の管内の体積の3倍以上の窒素ガスGを供給する。
注入管1内へ窒素ガスGを一定時間供給し、注入管1内の酸素の除去が終了したら、窒素発生装置3からの窒素ガスGの供給を停止するとともに、第二取付管15(カップリングプラグ16)から開口用ソケット18を取り外し、第二取付管15を遮蔽する。
【0016】
(4)第一配管酸素除去工程S4
第一配管酸素除去工程S4では、浄化材容器2から注入管1に至る管路5内の酸素を除去する。図6に第一配管酸素除去工程S4の概要を示す。第一配管酸素除去工程S4では、PSA方式の窒素発生装置3から管路5内に窒素ガスGを供給することで、管路5内の空気を窒素ガスGに置き換える。管路5を構成する管材の材質は限定されるものではないが、例えば、取り扱い性に優れ、かつ、ガス漏れの危険性の少ないフッ素樹脂チューブを使用すればよい。管路5の一方の端部には、注入管1のカップリングプラグ16に接続可能なカップリングソケット51が設けられていて、他方の端部には窒素発生装置3に接続可能なコネクタソケット52が設けられている。
管路5内の酸素を除去する際には、コネクタソケット52を窒素発生装置3に接続するとともに、カップリングソケット51に開口用プラグ53を接続し、カップリングソケット51を開口した状態で窒素ガスGを供給する。一定時間、窒素ガスGを供給したら、窒素ガスGの供給を停止するとともに、開口用プラグ53を取り外す。コネクタソケット52を窒素発生装置3から取り外すと、管路5の内部が窒素ガスGで充填された状態で、管路5の両端が遮蔽される。
【0017】
(5)浄化材溶液供給工程S5
浄化材溶液供給工程S5では、地盤(帯水層G)に浄化材溶液Sを供給する。地盤に浄化材溶液Sを供給したら、一定期間放置して、嫌気的な地盤を形成する。図7に浄化材溶液供給工程S5の概要を示す。図7に示すように、浄化材容器2の第一プラグ22と注入管1の第二取付管15とを管路5により接続する。また、浄化材容器2の第二プラグ23には、窒素発生装置3から延設された送ガス管31を接続する。このとき、浄化材容器2は、秤6等により、内容量の計測が可能な状態としておく。
浄化材溶液供給工程S5では、窒素発生装置3から浄化材容器2に窒素ガスGを供給し、窒素発生装置3から供給された窒素ガスGの圧力により、浄化材容器2から注入管1の上端部まで浄化材溶液Sを圧送する。このとき、注入管1の第一取付管14は遮蔽しておく。窒素発生装置3から供給された窒素ガスGは、送ガス管31を介して浄化材容器2の上部に供給される。浄化材容器2の上部に窒素ガスGが供給されると、浄化材溶液Sが窒素ガスGの圧力により、浄化材容器2の下部から内管24を介して管路5に排出される。管路5により圧送された浄化材溶液Sは、取付管15を介して注入管1の上部に圧送される。本実施形態では、窒素ガスGの圧力を0.5MPa以下の低い圧力で供給する。浄化材溶液Sは、注入管1の上端から押し込まれることで開口部11から排出されて地盤内に供給される。
浄化材溶液Sを所定時間供給し、浄化材容器2の重量の減少が停止したら、窒素ガスGの供給を停止する。なお、培養容器4には、浄化材溶液Sの供給後、空となった浄化材容器2を繰り返し使用してもよい。
【0018】
(6)浄化菌培養液製造工程S6
浄化菌培養液製造工程S6では、培養液Bを製造する。図8に培養容器4を示す。培養液B(浄化菌)は、図8に示すように、密閉容器である培養容器4内において嫌気的な状態で培養されている。培養容器4は、浄化材容器2と同様に、金属製の筒状部材からなり、培養容器4の内部に連通する第一プラグ41と第二プラグ42が形成されている。第一プラグ41および第二プラグ42には、ワンタッチ式のコネクタが形成されている。なお、第一プラグ41および第二プラグ42には、コネクタに代えて、開閉バルブ等が設けられていてもよい。さらに、培養容器4の内部には、第一プラグ41から培養容器4の底部に至る内管43が配管されている。内管43を構成する材料は限定されるものではないが、内管43を介して輸送される流体との摩擦力が少ない材質の管材(例えば、ステンレス管)を使用するのが望ましい。なお、培養容器4には、浄化材溶液Sの供給後、空となった浄化材容器2を使用してもよい。
【0019】
(7)第二管内酸素除去工程S7
第二管内酸素除去工程S7では、地盤に設置した注入管1の内部の酸素を除去する(図5参照)。第二管内酸素除去工程S7は、浄化材溶液供給工程S5における浄化材溶液Sの供給後、一定時間が経過して嫌気的地盤が形成されたことが確認されてから実施すればよい。なお、第二管内酸素除去工程S7の詳細は、第一管内酸素除去工程S3と同様なため、詳細な説明は省略する。
【0020】
(8)第二配管酸素除去工程S8
第二配管酸素除去工程S8では、培養容器4から注入管1に至る管路5内の酸素を除去する(図6参照)。なお、第二配管酸素除去工程S8の詳細は、第一配管酸素除去工程S4と同様なため、詳細な説明は省略する。
【0021】
(9)浄化菌供給工程S9
浄化菌供給工程S9では、嫌気的な地盤に嫌気性の浄化菌を供給する。図8に浄化菌供給工程S9の概要を示す。浄化菌供給工程S9は、第二管内酸素除去工程S7および第二配管酸素除去工程S8により、注入管1および管路5から酸素を除去してから実施する。
浄化菌供給工程S9では、まず、培養容器4の第一プラグ41と注入管1の第二取付管15とを管路5により接続する。また、培養容器4の第二プラグ42には、窒素発生装置3から延設された送ガス管31を接続する。このとき、培養容器4は、秤6等により、内容量の計測が可能な状態としておく。また、送ガス管31は、予め内部の酸素を除去しておく。
次に、窒素発生装置3から培養容器4に窒素ガスGを供給し、窒素発生装置3から供給された窒素ガスGの圧力により、培養容器4から注入管1の上端部まで浄化材の培養液Bを圧送する。このとき、注入管1の第一取付管14は遮蔽しておく。窒素発生装置3から供給された窒素ガスGは、送ガス管31を介して培養容器4の上部に供給される。培養容器4の上部に窒素ガスGが供給されると、窒素ガスGの圧力により、培養液Bが培養容器4の下部から内管43を介して管路5に排出される。管路5により圧送された培養液Bは、取付管15を介して注入管1の上部に供給される。本実施形態では、窒素ガスGの圧力を0.5MPa以下の低い圧力で供給する。培養液Bは、注入管1の上端から押し込まれることで開口部11から排出されて地盤内に供給される。培養液Bを所定時間供給し、培養容器4の重量の減少が停止したら、窒素ガスGの供給を停止する。
【0022】
本実施形態の浄化方法によれば、地盤内に有機物を含む浄化材を供給することで、地盤内に存在する好気性細菌が酸素を消費しながら浄化材中の有機物を分解するため、地盤内に嫌気環境が形成される。地盤内に嫌気環境が形成されると、嫌気性細菌が活性化して有機物を分解し、水素(電子供与体)が供給される。そして、嫌気性の浄化菌(脱塩素細菌)がこの水素を利用して浄化(脱塩素化)が進行する。本実施形態では、注入管1に予め窒素ガスGを供給しておくため、浄化材溶液Sや培養液Bを供給する際に酸素が地盤に供給されることが防止されている。また、浄化材溶液Sについても、予め酸素を除去しているため、浄化材溶液Sを製造する際に使用した希釈液に酸素が多く含まれていた場合であっても、浄化材溶液Sとともに酸素が地盤に供給されることを防止することができる。そのため、好気性細菌によって消費される浄化材中の有機物の量を抑制することが可能となり、その結果、嫌気性細菌が分解する有機物を一定量残存させることができる。そのため、従来の浄化方法に比べて、浄化材の供給量を制限し、コスト低減化を図ることが可能となる。
また、培養容器4から注入管1に至る管路5内の酸素を予め除去しておくため、絶対嫌気性の浄化菌の供給過程で酸素に触れることを防止できる。
窒素ガスGの供給にガスボンベを用いると、保管場所として比較的大きな用地が必要となり、かつ、慎重に取り扱う必要があるが、本実施形態では、ガスボンベに代えてPSA方式の窒素発生装置3を使用しているため、装置が取り扱い易くなるとともに、小スペース化が可能となる。また、費用もガスボンベに比べて安価である。また、浄化材溶液Sを注入管1の底部から供給する場合には、浄化材溶液Sを圧送する管路5内での圧力損失に対して十分に高い圧力が必要となるが、本発明の浄化方法によれば、注入管1の上端部まで浄化材溶液Sを圧送すればよいので、ガスボンベに比べて圧力が低いPSA方式の窒素発生装置3でも浄化材溶液Sを供給することができる。
【0023】
次に、本実施形態の浄化方法について実施した実験結果を示す。本実験では、本実施形態の浄化方法により、実地盤に溶液の供給が可能であるか否かについて確認した。
本実験では、窒素発生装置3として、コフロック社製M4NT-0.4II(AC100V、0.4kW、窒素ガス純度:99.99%、窒素ガス圧力0.5MPa)を使用した。
【0024】
(1)砂層に対する注入試験
砂層に対して、深さ6mまで注入管1を打設し、この注入管1を介して地盤内に浄化材溶液Sと培養液B(培養液B1,培養液B2)を順次注入した(図7,8参照)。注入管1には、GL-3m~-6mの位置に対応して複数の開口部11が形成されている。表1に示す条件で浄化材溶液Sと培養液Bを注入したところ、地盤に供給できることが確認できた。
なお、比較例として、図9に示すように、注入管101の底部に浄化材溶液Sを供給するための内管を注入管101の管底まで挿入して、注入管101の底部から浄化材溶液Sを供給する方法により地盤内に浄化材溶液を供給できるか否かを確認したが、比較例では、浄化材溶液Sを地盤内に供給することができなかった。このとき、浄化材溶液Sは、窒素発生装置103(流量:5L/min、窒素ガス圧力0.5MPa)から浄化材容器102に供給された窒素ガスの圧力により管路105を介して注入管101に供給するものとした。したがって、浄化材溶液Sと培養液Bの地盤内への供給は、注入管1の上部から供給すればよいことが確認できた。
【0025】
【表1】
【0026】
(2)シルト混じり地層に対する注入試験
本実験では、トリクロロエチレンなどの塩素化エチレン類により汚染された汚染帯水層(GL-4~-6m)に対して、浄化試験を実施した。図10は、本実験の注入管1の配置を示す平面図、図11は同断面図である。図10,11に示すように、本実験では、試験対象範囲を鋼矢板7により囲った状態で、浄化材溶液Sと培養液Bを注入した。浄化材溶液Sには、有機酸をベースとした浄化材(有機物濃度10g/L)を3ガロンの耐圧容器内で作成したものを使用した。また、培養液Bには、デハロコッコイデス属細菌UCH007株(特許第6103518号公報)を5ガロンの耐圧容器内で菌濃度が約2×10cells/Lまで培養したものを使用した。試験対象範囲は、0.8m×2.4mの範囲として、同一の区画を2つ(第一区画および第二区画)設置した。試験対象範囲は、上からシルト混じり粘土層G1、粘土層G2、シルト混じり砂礫層G3,粘土層G4が積層されており、このうちの塩素化エチレン類で汚染されているシルト混じり砂礫層G3に対して浄化を行う。本実験では、5本の注入管1a~1eを千鳥状に配置した。注入管1同士の間隔は、長手方向に0.4m、短手方向に0.2mとした。また、注入管1同士の間に観測井戸M1~M4を配置して塩素化エチレン類(VCM:クロロエチレン、1,2-DCE:1,2-ジクロロエチレン、TCE:トリクロロエチレン)の挙動と溶存性の有機物濃度(全有機炭素濃度)を測定した。両方の区画に対して、各注入管1に対して10Lの浄化材溶液Sを2回供給した。また、第二区画については3週間後に培養液Bを供給した。浄化材および培養液Bの供給速度を表2~4に示す。表2~4に示すように、本実施形態の浄化方法を使用することで浄化材および培養液Bを約2L/minの速度で供給できることが確認できた。また、第一区画および第二区画の観測井戸M1~M4における塩素化エチレン類の挙動をそれぞれ図12(a)と(b)に示す。図12(a)に示すように、第一区画では47日目以降に塩素化エチレン類の減少を確認できた。一方、図12(b)に示すように、第二区画では浄化菌を供給した直後から塩素化エチレン類が急速に減少することが確認できた。そのため、絶対嫌気性細菌を酸素に触れさせずに嫌気状態を保ったまま地盤に供給でき、汚染帯水層に導入した浄化菌(脱塩素細菌)が塩素化エチレン類を浄化できる状態で帯水層に導入できることを確認できた。
浄化材に含まれる溶存性の有機物濃度の残存率を図13(a)(第一区画)、図13(b)(第二区画)に示す。浄化材の供給は、酸素を除去しないで地盤に導入する際の条件(帯水層の地下水中の有機物濃度が約1,000mg/L)とした。この場合、通常であれば約四ヶ月間で有機物濃度は1%以下になる。しかし、本試験では、約四ヶ月経過後も有機物は15%程度残存しており、窒素置換することにより有機物の消費が抑えられ、有機物が地下水に残存したと考えられた。尚、第二区画において菌液供給後に残存率が一時的に上昇したが、これは菌液に含まれる有機物が加えられたためである。
【0027】
【表2】
【0028】
【表3】
【0029】
【表4】
(3)窒素発生装置から供給される窒素ガスの純度についての検討
窒素発生装置3を用いて、窒素ガスGに含まれる酸素濃度によって培養液Bがどの程度影響を受けるかについて確認した。培養液Bには、デハロコッコイデス属細菌を培養したものを使用した。培養容器4に作成した培地500mLに、窒素発生装置3から発生した窒素ガスGを0.5L/minの供給量で培養液B中に10分間パージを行い、培養液B中に添加した酸化還元指示薬であるレザズリンが赤色反応を示さずに嫌気状態が維持できるかどうかを確認した。その結果、酸素の混入量が100ppm以下(窒素ガスGの純度が99.99%)だけではなく、酸素の混入量が1000ppm以下(窒素ガスGの純度が99.9%)でも赤色反応を示さず、嫌気状態が維持されることを確認できた。したがって、窒素ガスGの純度は99.9%以上であれば、培養液B中の嫌気性浄化菌を地盤に供給できることが確認できた。
【0030】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、前述の実施形態に限られず、前記の各構成要素については本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更が可能である。
前記実施形態では、地盤に浄化菌を供給するものとしたが、浄化菌の供給は必要に応じて行えばよい。
また、前記実施形態では、注入管1を介して浄化材溶液Sと浄化菌を供給するものとしたが、注入管1は必要に応じて配置すればよく、例えば、地盤に形成された削孔から注入してもよい。
【符号の説明】
【0031】
1 注入管
2 浄化材容器
3 窒素発生装置
4 培養容器
5 管路
B 培養液
G 窒素ガス
S 浄化材溶液
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13