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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-19
(45)【発行日】2023-09-27
(54)【発明の名称】電力制御システム
(51)【国際特許分類】
   H02J 3/46 20060101AFI20230920BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20230920BHJP
   H02J 3/00 20060101ALI20230920BHJP
   H02J 3/38 20060101ALI20230920BHJP
   B60L 50/60 20190101ALI20230920BHJP
   B60L 53/14 20190101ALI20230920BHJP
   B60L 53/66 20190101ALI20230920BHJP
   B60L 55/00 20190101ALI20230920BHJP
   B60L 58/12 20190101ALI20230920BHJP
   G06Q 50/06 20120101ALI20230920BHJP
【FI】
H02J3/46
H02J7/00 P
H02J3/00 130
H02J3/38 110
B60L50/60
B60L53/14
B60L53/66
B60L55/00
B60L58/12
G06Q50/06
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020091583
(22)【出願日】2020-05-26
(65)【公開番号】P2021191044
(43)【公開日】2021-12-13
【審査請求日】2022-07-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000232955
【氏名又は名称】株式会社日立ビルシステム
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】鹿野 竜大
(72)【発明者】
【氏名】阿部 裕道
【審査官】田中 慎太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-137886(JP,A)
【文献】特開2018-148679(JP,A)
【文献】特開2015-211482(JP,A)
【文献】特開2010-110173(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 3/46
H02J 7/00
H02J 3/00
H02J 3/38
B60L 50/60
B60L 53/14
B60L 53/66
B60L 55/00
B60L 58/12
G06Q 50/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
空調設備と照明設備を含むビル設備が接続されており、複数の電気自動車の充放電制御を行う電力制御システムにおいて、
前記複数の電気自動車それぞれの使用スケジュールを受け付けるスケジュール入力部と、
前記受け付けた電気自動車のスケジュールに基づき、前記複数の電気自動車の現在SOCをおよび充電要求SOCを比較して、前記複数の電気自動車に対する充電優先順位および放電優先順位を求める充放電判定部と、
前記ビル設備における電力使用量に対する予想超過電力量を算出し、前記複数の電気自動車に対する充電可能量を算出するデマンド制御部と、
前記予想超過電力量を超えない範囲内で、前記放電優先順位が高い電気自動車から順に放電を開始させる制御指令を生成し、前記充電可能量の範囲内で、前記充電優先順位が高い電気自動車から順に充電を開始させる制御指令を生成する設備制御部と、
使用電力量が所定に閾値に達した場合に、デマンド警報を発生するデマンド警報部を備え、
前記充放電判定部は、前記デマンド警報が発生した場合、前記現在SOCおよび前記充電要求SOCのうち一定時間内の充電要求SOCを比較して、前記複数の電気自動車の備えるバッテリから放電が可能かを判定し、
前記デマンド制御部は、放電が可能と判定した電気自動車における充電要求SOCと現在SOCの差分の合計値を総余剰電力として算出し、
前記充放電判定部は、放電が可能と判定した電気自動車に対する前記放電優先順位を求め、
前記設備制御部は、放電が可能と判定した電気自動車に対する前記放電優先順位が高い電気自動車から順に放電を開始させる制御指令を生成する電力制御システム。
【請求項2】
前記設備制御部は、前記放電優先順位が高い電気自動車から順に、現在SOCと充電要求SOCの差分に対してバッテリ容量を乗算することで、当該電気自動車の余剰容量を算出し、前記予想超過電力量に達するまで余剰容量を順に足し合わせる請求項1に記載の電力制御システム。
【請求項3】
少なくとも交通情報と気象情報を受け取る外部情報受取部をさらに備え、
前記充放電判定部は、前記外部情報受取部が受け取った交通情報と気象情報に基づいて、前記電気自動車のバッテリへの充電が必要か、放電が可能かを判定する請求項1に記載の電力制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力制御のシステムに関する。その中でも特に、電気自動車の利用状況に応じた充放電制御に関する。なお、本明細書での電気自動車とは、少なくとも一部の動力源に電気を用いられるか、バッテリへの充電放電が可能であればよい。このため、電気自動車には、いわゆるハイブリッド車、プラグインハイブリッド車、プラグインハイブリッド車なども含まれる。
【背景技術】
【0002】
従来、電気自動車は充電して運転するのみであったが、近年では不使用の時間帯はバッテリに蓄電されている余剰電力を建物側に供給することでデマンド制御やピークシフトに活用するような充放電制御を行っている。このような技術として、特許文献1には余剰充電量が蓄電されているかを自動車の実走行時間により推定し、余剰充電量が蓄電されている場合に電気自動車から電力を供給させる技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2009―183086号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のように、余剰充電量が蓄電されているかを自動車の実走行時間により推定するには電気自動車に計測装置が内蔵されていることが必要である。しかし、事業所などで複数(特に、多種多数)の電気自動車が運用されている場合に、各電気自動車の実走行データを取得し推定することは困難である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を解決するための本発明の代表的な一態様は、空調設備と照明設備を含むビル設備が接続されており、複数の電気自動車の充放電制御を行う電力制御システムにおいて、前記複数の電気自動車それぞれの使用スケジュールを受け付けるスケジュール入力部と、前記受け付けた電気自動車のスケジュールに基づき、前記複数の電気自動車の現在SOCをおよび充電要求SOCを比較して、前記複数の電気自動車に対する充電優先順位および放電優先順位を求める充放電判定部と、前記ビル設備における電力使用量に対する予想超過電力量を算出し、前記複数の電気自動車に対する充電可能量を算出するデマンド制御部と、前記予想超過電力量を超えない範囲内で、前記放電優先順位が高い電気自動車から順に放電を開始させる制御指令を生成し、前記充電可能量の範囲内で、前記充電優先順位が高い電気自動車から順に充電を開始させる制御指令を生成する設備制御部と、使用電力量が所定に閾値に達した場合に、デマンド警報を発生するデマンド警報部を備え、前記充放電判定部は、前記デマンド警報が発生した場合、前記現在SOCおよび前記充電要求SOCのうち一定時間内の充電要求SOCを比較して、前記複数の電気自動車の備えるバッテリから放電が可能かを判定し、前記デマンド制御部は、放電が可能と判定した電気自動車における充電要求SOCと現在SOCの差分の合計値を総余剰電力として算出し、前記充放電判定部は、放電が可能と判定した電気自動車に対する前記放電優先順位を求め、前記設備制御部は、放電が可能と判定した電気自動車に対する前記放電優先順位が高い電気自動車から順に放電を開始させる制御指令を生成する電力制御システムである。
【0006】
なお、本発明には、電力制御処理システムでのコンピュータとして機能を実現するプログラムも含まれる。
【発明の効果】
【0007】
本発明により、複数の電気自動車を運用する場合に、適切な充放電制御が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の一実施形態におけるシステム構成を示す図
図2】本発明の一実施形態の電力制御処理装置の機能構成を示す図
図3】本発明の一実施形態の設備コントローラの機能構成を示す図
図4】本発明の一実施形態の電気自動車の使用情報を示す図
図5】本発明の一実施形態の電気自動車の属性情報を示す図
図6】本発明の一実施形態の優先度情報を示す図
図7】本発明の一実施形態で実行されるピークシフト制御のための処理手順を示すフローチャート
図8】本発明の一実施形態で実行されるピークシフト制御の様子を模式的に示す図
図9】本発明の一実施形態で用いられるデマンド制御のための処理手順を示すフローチャート
図10】本発明の一実施形態の充電優先順位および放電優先順位の求め方を説明するための図
図11】本発明の一実施形態の電力制御処理装置のハードウエア構成を示す図
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の一実施形態について、図面を用いて説明する。本実施形態では、設備の一例における建物10と、複数の電気自動車に対する電力制御を行うシステムを例として、説明する。
【0010】
まず、図1に、本実施形態の電力制御を行う為のシステム構成を示す。なお、本明細書におけるデマンド制御とは、省電力のための制御の他、電気料金を削減するための制御を含む。図1において、一般的に電力会社からの受電は受電電力量を計測する電力メータ1を介して行っている。
【0011】
図1において、建物10が、本実施形態における電力制御対象である。なお、電慮制御対象は、建物10に限定されず、様々な設備に適用可能である。ここで、建物10には、電力制御対象である、複数の電気自動車充放電器7、空調設備8や照明設備9が設置されている。そして、これらに対する電力制御を実行する設備コントローラ6が、各機器に接続されている。なお、空調設備8や照明設備9も、図1では1つしか記載していないが、各エリアに設置されることが望ましい。また、設備コントローラ6は、建物10に1つ設置してもよいし、複数の空調設備8や照明設備9毎ないし各エリアに設置してもよい。
【0012】
そして、設備コントローラ6には、自身に対し制御信号を出力する電力制御処理装置2が接続されている。
【0013】
電力制御処理装置2は、設備コントローラ6に対し、複数の電気自動車充放電器7や、空調設備8、照明設備9への制御指令を出力する。この際、電力制御処理装置2は、電力メータ1からの受電電力量と、電気自動車スケジューラシステム3、交通情報システム4の交通情報や気象情報システム5からの気象情報を参照する。
【0014】
また、電力制御処理装置2は、電気自動車スケジューラシステム3とインターネットなどのネットワークを介して接続されている。但し、電力制御処理装置2が、電気自動車スケジューラシステム3の機能もしくは電気自動車スケジューラシステム3が記憶している電気自動車のスケジュールデータを保持してもよい。
【0015】
また、設備コントローラ6の機能も、電力制御処理装置2が保持してもよい。また、電力制御処理装置2と、後述する電力メータ1、各種設備7~9、設備コントローラ6は専用線で接続されることが望ましいが、他のインターネットなどでも構わない。
【0016】
なお、本実施形態は、他の電力利用のシステムとの接続(例えば太陽光発電システム)や他の電力利用のシステムに対する制御(例えば蓄電池・バッテリ)にも適用可能である。
【0017】
次に、図2に、電力制御処理装置2の機能構成を示す。電力制御処理装置2は、設備コントローラ6に対し、複数の電気自動車充放電器7、空調設備8や照明設備9に制御指令を出力する設備制御部21を有する。また、電力制御処理装置2は、これら制御対象に関する電力量を管理するデマンド制御部24を有し、デマンド制御部24の出力および電力メータ1で計測した受電電力量を元にデマンド警報の発生を行うデマンド警報部22を有する。なお、制御対象に関する電力量には、後述する予想超過電力量や予想超過電力量が含まれる。
【0018】
また、電力制御処理装置2は、各種情報を記憶するデマンド設定記憶部26、および過去データ記憶部27、電気自動車優先度設定部28を有する。そして、電力制御処理装置2は、これらに記憶された情報を参照し、複数の電気自動車に対する充電優先順位および放電優先順位を求める充放電判定部23を有する。
【0019】
さらに、電力制御処理装置2は、電力メータ1と設備コントローラ6と電気自動車スケジューラシステム3と各種設備7~9と、通信接続を可能にする外部情報受取部25を有している。
【0020】
なお、これらの構成について、コンピュータとして、実現可能である。このコンピュータのハードウエア構成を、図11に示す。図11において、電力制御処理装置2は、処理部201、メモリ202、通信I/F部203および各種記憶装置260、270、280が、バスなどを介して互いに接続されている。処理部201は、上述した各処理を実行するもので、メモリ202に展開された各プログラムに従って、その処理を実行する。具体的には、設備制御プログラム210、デマンド警報プログラム220、充放電判定プログラム230およびデマンド制御プログラム240に従った処理を実行する。これら各プログラムは、図2に記載した機能構成と、以下の対応関係を有する。
設備制御プログラム210:設備制御部21
デマンド警報プログラム220:デマンド警報部22
充放電判定プログラム230:充放電判定部23
デマンド制御プログラム240:デマンド制御部24
つまり、各プログラムは、対応関係にある各構成で実現する機能を実行する。また、処理部201は、CPUの如きプロセッサで実現できる。なお、これら、各プログラムは、一体で構成してもよい。
【0021】
また、通信I/F203は、図2の外部情報受取部25に該当し、その他各種情報の送受信を行う。
【0022】
さらに、記憶装置260は、デマンド設定情報を記憶し、図2のデマンド設定記憶部26に該当する。また、記憶装置270は、過去データを記憶し、図2の過去データ記憶部27に該当する。さらに、記憶装置280は、電気自動車の優先度情報を記憶し、図2の電気自動車優先度設定部28に該当する。なお、記憶装置260、270、280は、一体で構成してもよいし、電力制御処理装置2とは別筐体に設けてもよい。
【0023】
次に、図3を用いて、設備コントローラ6について、説明する。設備コントローラ6は、電力制御処理装置2からの制御指令を受けて、各制御対象に対する電力制御を実行する。具体的には、設備コントローラ6は、通信I/F部64を介して、電力制御処理装置2から制御指令を受信する。そして、設備コントローラ6は、以下の各制御部で、制御信号を生成し、通信I/F部64を介して各制御対象へ制御信号を送信する。
【0024】
以下、各制御部について、説明する。照明制御部61は、照明設備9に制御を実行する制御信号を生成する。また、空調制御部62は、空調設備8に制御を実行する制御信号を生成する。電気自動車充放電制御部63は、複数の電気自動車充放電器7に制御を実行する制御信号を生成する。つまり、電気自動車充放電制御部63により、電気自動車のバッテリに対する充放電を制御することになる。
【0025】
なお、設備コントローラ6の機能を、電力制御処理装置2が保持する場合、通信I/F部64の機能は、電力制御処理装置2の通信I/F24が実行する。
【0026】
次に、図4図6により、本実施形態で用いる各情報・データについて、説明する。まず、図4に、本実施形態の電気自動車の使用情報31を示す。この使用情報31は、電気自動車スケジューラシステム3にて記憶されている。ここで、使用情報31は、運用対象の電気自動車を識別する電気自動車No.ごとに、その使用スケジュールが記憶されている。その一例として、使用時間帯、走行予定距離および使用目的種別が記憶されている。図4の場合、EV_1は使用時間として、9:00~11:00、14:00~16:00が予約されており、それぞれの時間帯の使用目的種別がAとB、走行距離が共に72kmであることを示している。なお、本実施形態では、模式的に使用目的をA,B…としているが、具体的な内容が記述されることが望ましい。
【0027】
ここで、各項目は、電気自動車の利用者の利用する端末装置から入力される。この際、使用時間帯や使用目的種別は、端末装置に対して手入力で入力される他、プルダウンメニューで選択して入力される形態を採用してもよい。
【0028】
また、走行距離については、電気自動車スケジューラシステム3などが、端末装置から入力される経路情報(出発地と目的地)を用いて算出することが望ましい。なお、使用目的種別は、電気自動車No.毎に予め定められていてもよい。この場合、「緊急車両」といった必要性が特に高い目的の電気自動車に限って、予め定めておいてもよい。
【0029】
次に、図5に、本実施形態の電気自動車の属性情報32を示す。この属性情報32は、電気自動車スケジューラシステム3にて記憶されている。図5の場合、運用対象の電気自動車を識別する電気自動車No.ごとに、その電気自動車の車種、バッテリ容量、燃費、充電仕様および放電仕様を示す情報である。ここで、燃費とは、単位電力(例えば、1Kwh)当たりの走行可能距離を示すもので、電費などの表現の情報も含まれる。
【0030】
また、電気自動車の属性情報32には、予め定められる使用目的種別を含めてもよい。この使用目的種別は、使用情報31と同様に端末装置を介して入力されてもよいし、予め定められた情報として記憶されてもよい。後者の場合、この場合、「緊急車両」といった必要性が特に高い目的の電気自動車に限って、予め定めておいてもよい。
【0031】
次に、図6に、本実施形態の優先度情報271を示す。この優先度情報271は、電力制御処理装置2の電気自動車優先度設定部28に記憶されている。この優先度情報は、使用目的種別ごとに、電気自動車の使用優先度が定められている。図6に示す例の場合、放電を行う場合は優先度3のものを優先して放電を行い、充電行う時は優先度1のものを優先することを示す。
【0032】
なお、使用優先度については、使用情報31や属性情報32に、電気自動車No.ごとに記憶してもよい。この場合、端末装置を介して使用目的種別が入力・選択されると、優先度情報271基づいて、対応する使用優先度が使用情報31や属性情報32に設定されるよう構成してもよい。さらに、使用情報31や属性情報32に、電気自動車Noが入力・選択されると、予め定められた使用優先度を設定するよう構成してもよい。
【0033】
以下、図7~10を用いて、本実施形態の処理手順を説明する。なお、この際、各処理の主体については、図2に示す機能構成に従って説明する。
【0034】
図7は、本発明の一実施形態で実行されるピークシフト制御のための処理手順を示すフローチャートである。尚、本処理は、図示するように10分毎などで周期的に実行される。つまり、本処理は、省電力制御など特殊な電力を必要としない通常の際の制御である。
【0035】
まず、ステップS1において、充放電判定部23は、電力メータ1の計測値、過去データ記憶部27に記憶される過去の建物負荷電力および気象情報システム5からの気象情報を元に、将来の所定時間帯の建物負荷電力を予測する。この際、時間帯としては、30分先などが想定される。
【0036】
次に、ステップS2において、充放電判定部23は、電気自動車充放電器7を介して接続された運用対象の各電気自動車のSOC、現在SOCとして取得する。ここで、SOCとは、State of Chargeの略であり、電気自動車における充電率を示す。
【0037】
次に、ステップS3において、充放電判定部23は、電気自動車スケジューラシステム3の使用情報31および属性情報32を取得する。この際、充放電判定部23は、現在時刻から将来の情報を取得することになる。また、ここでの将来の情報として、一定期間の情報としてもよい。例えば、ステップS1で予測する時間帯の使用情報に絞って取得してもよい。
【0038】
また、ステップS3において、充放電判定部23は、交通情報システム4や気象情報システム5から、それぞれ使用情報に対応する時間帯の交通情報や気象情報を取得することが望ましい。
【0039】
次に、ステップS4において、充放電判定部23は、現在SOCおよび取得した使用情報31を用いて、充電要求SOCを算出する。充電要求SOCとは、電気自動車(バッテリ)で要求されるSOCであり、例えば、以下のとおり算出できる。
【0040】
まず、充放電判定部23は、使用情報31の走行予定距離、燃費および属性情報32の燃費を用いて、想定使用SOCを算出する。
【0041】
想定使用SOC=走行予定距離[km]/燃費[km/kWh]/バッテリ容量[kW]…(数1)
この際、充放電判定部23は、上記数1に、気象情報及び交通情報を元にした補正係数αを掛けて、想定使用SOCを補正してもよい。例えば、気象情報で温度が高い場合、エアコンの使用を想定して、燃費を下げる、つまり、想定使用SOCを減じる補正を行うことが想定される。
【0042】
そして、充放電判定部23は、想定使用SOCに対して、余裕を持たせ予備SOCβを加えて、充電要求SOCを算出する。
【0043】
充電要求SOC=想定使用SOC+予備SOC[%]…(数2)
なお、想定使用SOCをそのまま充電要求SOCとして、用いてもよい。
【0044】
次に、ステップS5において、デマンド制御部24は、複数の電気自動車における総余剰電力を求め、これを充放電判定部23へ通知する。つまり、充放電判定部23は、時間帯ごとに、各電気自動車における充電要求SOCと現在SOCの差分を算出し、これらの差分の合計値を、総余剰電力とする。
【0045】
また、ステップS6において、充放電判定部23は、各電気自動車に対する充電優先順位および放電優先順位を求める。この求め方について、図10を参照して、説明する。
【0046】
図10は、充電優先順位および放電優先順位の求め方を説明するための図であり、その考え方を示す。本実施形態では、各電気自動車の現在SOCと充電SOCを比較する。この結果、その差分もしくは割合(充電要求SOC-現在SOC、現在SOC/充電要求SOC)が大きな順にソートする(以下、割合とする)。図10において、上ほど割合が小さいことを示す。つまり、図10において、現在SOC<充電SOCでは割合が1未満、現在SOC>充電要求SOCでは割合が1より大きいことを示す。これは、図10において、上の方ほど、特に現在SOC<充電SOCのエリアほど充電の必要性が高いことを示す。また、図10において、下の方ほど放電を許容される可能性が高いことを示す。但し、現在SOC<充電SOCのエリアにおいては、充電の必要性が特に高いので、放電を許容できない可能性が非常に高い。
【0047】
そこで、本実施形態では、充放電判定部23は、現在SOCと充電要求SOCの割合に従って、充電優先順位および放電優先順位を求める。この際、割合の小さい順序をそのまま充電優先順位とする。また、充放電判定部23は、現在SOC>充電要求SOC示す各電気自動車に対して、割合の大きい順序をそのまま放電優先順位とする。
【0048】
ここでは、各電気自動車に対して、充電優先順位を求めたが、現在SOC<充電要求SOCを示す電気自動車に対して、充電優先順位を求めてもよい。さらに、現在SOC=充電要求SOCとなる電気自動車は、現在SOC<充電要求SOC、現在SOC>充電要求SOCのいずれかと同じように扱えばよい。
【0049】
なお、より実情に合うように、充電優先順位と放電優先順位を、使用時間も用いて求めることが望ましい。このために、充放電判定部23は、使用開始時間t×現在SOC/充電要求SOCを計算する。そして、充放電判定部23は、計算結果が示す値が低い順に、充電優先順位が高くなるようにする。また、充放電判定部23は、計算結果が示す値が高い順に、放電優先順位が高くなるようにする。この際、上述のように、放電優先順位は、現在SOC>充電要求SOC示す各電気自動車に対して、求めることが望ましい。なお、現在SOC=充電要求SOCとなる電気自動車は、現在SOC<充電要求SOC、現在SOC>充電要求SOCのいずれかと同じように扱えばよい。
【0050】
またさらに、充放電判定部23は、充電優先順位を使用開始時間t×現在SOC/充電要求SOC従って求め、放電優先順位を上記の割合に従って求めてもよい。なお、この求め方は、充電優先順位と放電優先順位を逆の方法を用いて求めてもよい。
【0051】
なお、ステップS6において、充放電判定部23は、特定の使用目的や特定の使用優先度の電気自動車については、本ステップでの処理対象から除外してもよい。さらに、このような電気自動車に対しては、充電優先順位を最優先としてもよい。このように扱うことで、緊急車両などは、優先的に充電対象としたり、放電対象から除外することができる。
【0052】
次に、ステップS7において、設備制御部21は、デマンド設定記憶部26に記憶されたデマンド目標値を、ステップS1で予測された建物負荷電力が超過するかを確認する。超過する場合(YES)はステップS8に進み、超過しない場合(NO)は、ステップS10に進む。
【0053】
次に、ステップS8において、デマンド制御部24は、予想超過電力量を算出する。このために、設備制御部21は、建物負荷電力量とデマンド目標値の差分を、予想超過電力量として算出する。そして、デマンド制御部24は、この予想超過電力量を設備制御部21へ通知する。
【0054】
そして、ステップS9において、設備制御部21は、求められた予想超過電力量を超えない範囲内で、放電優先度の高い電気自動車から放電を開始させる制御指令を生成する。そして、設備制御部21は、この制御指令を、設備コントローラ6の電気自動車充放電制御部63に通知する。このことで、電気自動車充放電制御部63は放電のための制御信号を生成する。この際、放電された分の電力が、建物10の設備で余分に利用されることになる。そこで、設備制御部21は、空調設備8や照明設備9への電力供給を増加させる制御指令を生成することが望ましい。そして、このような制御指令を受けた照明制御部61や空調制御部62は、省エネ運転の抑制など電力使用を増加させる制御信号を生成し、通信I/F64を介して、空調設備8や照明設備9へ出力することなる。
【0055】
なお、設備制御部21は、放電優先順位が高い電気自動車から順に、現在SOCと充電要求SOCの差分に対して、そのバッテリ容量を乗算することで、その余剰容量を算出する。そして、設備制御部21は、予想超過電力量に達するまでこの余剰容量を順に足し合わせていくことで、ステップS9を実現する。
【0056】
さらに、ステップS9で生成された制御指令に応じた放電処理は、放電優先順位の高い電気自動車から順に実施することが望ましいが、その順序は問わない。放電対象の電気自動車に対し、余剰容量分の放電ができればよいので、順序を放電優先順位から変更しても構わない。
【0057】
また、ステップS10において、設備制御部21は、満充電でない電気自動車があるかを判断する。つまり、現在SOCが100%もしくは90%以上などの電気自動車があるかを判断する。この結果、あれば(YES)ステップS11に進む。また、なければ(NO、ステップS13に進む。
【0058】
次に、ステップS11において、デマンド制御部24は、電気自動車に対する充電可能量を、デマンド目標値と建物負荷電力から算出する。具体的には、設備制御部21は、デマンドを数3で、計算する。
【0059】
デマンド=(デマンド目標値-建物負荷電力量)×σ(係数)…(数3)
なお、係数σはデマンド目標値付近まで充電してしまうとデマンド警報の発動が乱発してしまうおそれがある為、その為の補正を行うための計数である。そして、デマンド制御部24は、設備制御部21へ充電可能量を通知する。
【0060】
そして、ステップS12において、設備制御部21は、充電可能量の範囲内で、充電優先順位の高い電気自動車から充電を開始させる制御指令を生成する。そして、設備制御部21は、この制御指令を、設備コントローラ6の電気自動車充放電制御部63に通知する。このことで、電気自動車充放電制御部63は充電のための制御信号を生成する。
【0061】
なお、設備制御部21は、充電優先順位が高い電気自動車から順に、現在SOCと充電要求SOCの差分に対して、そのバッテリ容量を乗算することで、その不足容量を算出する。そして、設備制御部21は、充電可能量に達するまでこの不足容量を順に足し合わせていくことで、ステップS12を実現する。この際、充電された分の電力が、建物10の設備で利用できなくなる。そこで、設備制御部21は、空調設備8や照明設備9への電力供給を抑制させる制御指令を生成することが望ましい。そして、このような制御指令を受けた照明制御部61や空調制御部62は、省エネ運転など電力使用を抑制させる制御信号を生成し、通信I/F64を介して、空調設備8や照明設備9へ出力することなる。
【0062】
さらに、ステップS12で生成された制御指令に応じた充電処理は、充電優先順位の高い電気自動車から順に実施することが望ましいが、その順序は問わない。充電対象の電気自動車に対し、不足容量分の充電ができればよいので、順序を充電優先順位から変更しても構わない。
【0063】
最後に、ステップS13において、設備制御部21は、上述のような制御政令を作成せず、処理を終了する。
【0064】
次に、図8を用いて、本実施形態における電気自動車に対する充放電制御の様子について、説明する。図8は、図7でのピークシフト制御の様子を模式的に示す図である。
【0065】
図8の場合、7台の電気自動車が電力制御システムに接続されており9:00時点で全ての電気自動車の充電状態は100%の状態とする。EV_1の場合、9:00~11:00は使用予定があり、運転されるため放電可能な電気自動車として見込むことは出来ない。ここで、図4で示した使用情報31の走行距離と図5で示した属性情報32のバッテリ容量及び燃費情報より、9:00~11:00にSOC20%の使用が想定される。つまり、上述の数1で計算できる。
【0066】
この例では想定使用SOCに予備としてSOC20%を足したものを充電要求SOCとし、EV_1の場合、9:00の使用開始までにSOC40%を残しておかなければならない。
【0067】
同様にして14:00~16:00の想定使用SOCは20%のため、14:00時点での充電要求SOCは40%となる。ここで、9:00~11:00での使用で充電要求SOC分使用された場合、帰着時の11:00時点での電気自動車のSOCは60%となる。このため使用予定がない11:00~14:00の時間帯にSOC20%分の余剰電力量が存在し、放電可能な電力として見込むことができる。同様にして他の電気自動車のスケジュールから時間帯ごとの余剰電力を求め、総余剰電力を求める。
【0068】
次に、図9を用いて、デマンド制御、つまり、建物10の設備の電力需要量が増加し、電力の需給が逼迫する場合の制御について説明する。つまり、建物10で不足する電力を、電気自動車に電力を放電させて賄うための制御を行う。図9は、本発明の一実施形態で用いられるデマンド制御のための処理手順を示すフローチャートを示す。
【0069】
まず、前提として、デマンド警報部22は電力メータ1を、周期的に監視し、使用電力量が所定の閾値に達するか判断している。そして、ステップS101において、デマンド警報部22が所定の閾値に達したことを検知した場合、デマンド警報を発生する。つまり、デマンド制御への移行を行う。
【0070】
次に、ステップS2において、充放電判定部23は、電気自動車充放電器7を介して接続された運用対象の各電気自動車のSOC、現在SOCとして取得する。
【0071】
次に、ステップS103において、充放電判定部23は電気自動車スケジューラシステム3の使用情報31および属性情報32を取得する。また、充放電判定部23は、交通情報システム4や気象情報システム5から、それぞれ使用情報に対応する時間帯の交通情報や気象情報を取得することが望ましい。
【0072】
次に、ステップS104において、充放電判定部23は、現在SOCおよび取得した使用情報31を用いて、充電要求SOCを算出する。これは、上述のステップステプS4と同様の処理である。
【0073】
次に、ステップS105において、充放電判定部23は、各電気自動車の現在SOCと、一定時間以内における充電要求SOCを比較する。ここで、一定時間後としては、数時間以内などスケジュールが確定している可能性が高い時間を用いることが望ましい。つまり、スケジュールが確定していないと、充電要求SOCも未確定で、その電気自動車への適切な充放電制御が困難と考えられるためである。この結果、現在SOCが大きな場合(YES)、ステップS107に進む。また、現在SOCが大きくない場合(NO)、ステップS106に進む。
【0074】
次に、ステップS106において、充放電判定部23は、その電気自動車を放電対象から外し、次の電気自動車について、ステップS105の判断を行う。
【0075】
また、ステップS107において、デマンド制御部24は、複数の電気自動車における総余剰電力を求める。つまり、充放電判定部23は、ステップS105で、放電の対象とされた各電気自動車における充電要求SOCと現在SOCの差分を算出し、これらの差分の合計値を、総余剰電力とする。そして、デマンド制御部24は、この総余剰電力を充放電判定部23へ通知する。
【0076】
次に、ステップS108において、充放電判定部23は、放電優先順位を求める。この内容は、ステップS6と同様である。つまり、充放電判定部23は、現在SOCと充電要求SOCの割合、差分を用いて算出を行う。なお、その詳細は、ステップS6と同様なので、省略する。但し、ステップS108では、充電優先順位をステップS6と同様の手法で求め、その逆の順位を放電優先順位として用いてもよい。
【0077】
次に、ステップS109において、ステップS9と同様の処理を実行する。つまり、放電優先順位に応じた電気自動車の放電制御を実行する。
【0078】
この放電の結果、電力供給量が増加する。このため、ステップS110において、充放電判定部23は、デマンド警報部22に対して、デマンド警報が解除されたか確認する。この結果、デマンド警報を解除された場合(YES)はステップS111に進み、未解除の場合(NO)はステップS112へ進む。
【0079】
次に、ステップS111において、設備制御部21は、設備コントローラ6に放電を終了するための制御指令を出し、これを受けて、電気自動車充放電制御部63は放電を停止する制御信号を出力して、電気自動車充放電器での放電を終了する。
【0080】
また、ステップS112において、充放電判定部23は、他に余剰電力を有した電気自動車が存在するか確認する。存在している場合(YES)はステップS113へ進み、存在しない場合(NO)はステップS114へ進む。
【0081】
次に、ステップS113において、ステップS109と同様の放電制御を実行するステップS109で放電制御を行った次に放電優先順位の高い電気自動車に対して、ステップS109と同様の放電制御を行う。
【0082】
また、ステップS113においては、デマンド制御が未解除であり、他に余剰電力を有した電気自動車が存在しない。このため、ステップS113において、デマンド制御部24を用いたデマンド制御に移行する。つまり、設備制御部21は、ら設備コントローラ6に制御指令を出し、照明制御部61、空調制御部62から制御を行い空調設備8や照明設備9に対する設備制御によるデマンド制御に移行する。このことで、建物10での電力使用を抑止する。
【0083】
以上の本実施形態では、電気自動車スケジュールデータで充放電制御を行っているが、より精度の高い制御を行うために電気自動車との無線でのデータ連携を活用し、充放電制御を行っても良い。また、本実施形態では、電気自動車は電力制御システム上に接続された電気自動車充放電器から充放電されることとしているが、外部での充放電も考慮しても良い。
【0084】
以上の本実施形態によれば、電気自動車の余剰電力を有効に活用した充放電制御を行うことで、ビルなどの設備に対するデマンド制御、ピークシフト制御が可能になる。
【符号の説明】
【0085】
1・・・電力メータ、2…電力制御処理装置、3…電気自動車スケジューラシステム、4…交通情報システム、5…気象情報システム、6…設備コントローラ、7…電気自動車充放電器、8…空調設備、9…照明設備、10…建物
図1
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