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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-19
(45)【発行日】2023-09-27
(54)【発明の名称】針貫入試験装置および針貫入試験方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 3/40 20060101AFI20230920BHJP
   E02D 1/08 20060101ALI20230920BHJP
【FI】
G01N3/40 B
E02D1/08
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020101569
(22)【出願日】2020-06-11
(65)【公開番号】P2021196217
(43)【公開日】2021-12-27
【審査請求日】2022-08-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】小林 真貴子
(72)【発明者】
【氏名】石井 裕泰
【審査官】北条 弥作子
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-234426(JP,A)
【文献】特開2004-278114(JP,A)
【文献】特開平11-211648(JP,A)
【文献】特開2005-030142(JP,A)
【文献】特開2007-192626(JP,A)
【文献】地盤工学会 地盤調査規格・基準委員会,第10章 針貫入試験,地盤調査の方法と解説,二分冊の1,公益社団法人 地盤工学会,2013年,pp.426-432
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 3/00~ 3/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
貫入針および測定手段を備える貫入機構と、
前記貫入機構を保持するチャック機構と、
前記チャック機構が移動可能な通路と、
前記通路が外周面に形成された本体部と、
前記測定手段の測定結果を記録するデータ記録手段と、を備える針貫入試験装置であって、
複数の前記貫入機構が前後方向に並設されていて、
前記貫入機構の側面には凸部が突設されており、
前記本体部の内部下端には、前記凸部が挿入される溝が形成されいて、
前記通路は、側面視逆U字状を呈しており、
前記チャック機構は、前記通路に沿って移動することで、複数の前記貫入機構のうち最後部に位置する前記貫入機構を最前部に誘導するとともに測定対象面に誘導し、
前記貫入針は、前記チャック機構により前記貫入機構が前記測定対象面に誘導された際に前記測定対象面に貫入され、
前記本体部は、複数の前記貫入機構の前記貫入針が前記測定対象面に貫入した状態にあるときに、複数の前記貫入機構の前記凸部が前記溝内において前後方向に連なることにより形成されたレールに沿って前後方向に移動可能であり、
前記測定手段は、前記貫入針が前記測定対象面に貫入された際の貫入抵抗荷重を測定することを特徴とする、針貫入試験装置。
【請求項2】
前記貫入針が、前記貫入機構の上下にそれぞれ設けられていることを特徴とする、請求項に記載の針貫入試験装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の針貫入試験装置を利用した針貫入試験方法であって、
前記針貫入試験装置を所定の位置に設置する設置工程と、
前記チャック機構で前記貫入機構を保持する保持工程と、
前記チャック機構を前記通路に沿って移動させて前記貫入機構を前記測定対象面に誘導するとともに、前記貫入針を前記測定対象面に貫入させる測定工程と、
前記チャック機構を前記貫入機構から取り外す測定終了工程と、を備えていることを特徴とする、針貫入試験方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、針貫入試験装置および針貫入試験方法に関する。
【背景技術】
【0002】
地盤等(例えば、岩盤や地盤改良体等)の強度などを確認する場合には、地盤等から採取したボーリングコアに対して、一軸圧縮試験を行うのが一般的である。しかしながら、ボーリングコアを不攪乱の状態で採取するためには熟練した技術を要する。また、採取したボーリングコアを試験室に持ち帰って一軸圧縮試験を行うには時間と手間がかかる。
そのため、非特許文献1には、地盤等の強度を簡易に確認できる針貫入試験が開示されている。針貫入試験は、地盤等への針の貫入長さLと針貫入時の荷重Pを測定し、針貫入長さに対する荷重Pの比率である針貫入勾配Np(=P/L)を求め、この針貫入勾配から一軸圧縮強さを推定するものである。このような針貫入試験を実施するための装置として、非特許文献1には、携行型形式のものと机上型形式のものが開示されている。携行型試験機は、針を保持する針チャック部が持ち手部分の内部に設けられたコイルばねと接続されており、針を供試体に貫入する際の荷重に比例してコイルばねが圧縮されるものである。持ち手部分を保持した状態で針を供試体に押し当て、針が供試体に貫入した際のコイルバネの縮みから貫入時の最大荷重を検出する。一方、机上型試験機は、架台に載置された供試体に対して、機械的に制御された針を貫入するものである。
携行型試験機を利用した針貫入試験は、手作業による測定であるため、針の貫入速度や貫入角度にばらつきが生じるおそれがある。また、貫入過程での荷重変化を把握し難いことから、異物接触の影響や強度の変化を適切に把握できないおそれもある。
机上型試験機を利用した針貫入試験は、現地から採取した試料を試験室に持ち帰って所定の形状の供試体を作成してから架台に設置する必要があるため、作業に手間と時間がかかる。また、測定対象物が改良土の場合、養生期間を経て強度が発現されるため、所定の養生期間(例えば、材齢7日、材齢28日等)が経過した供試体ごとに測定を行う場合がある。その際には、供試体を多数準備する必要があり、供試体の作成に手間がかかる。また、複数の供試体に対して測定を行う場合、供試体ごとにばらつきが生じるおそれもある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】地盤工学会基準、基準番号:JGS3431-2012、規格・基準名:針貫入試験方法
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、針貫入時の速度や角度にばらつきが生じることなく定量的な測定を現地にて簡易に実施することを可能とする針貫入試験装置および針貫入試験方法を提案することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
このような課題を解決する本発明の針貫入試験装置は、貫入針および測定手段を備える貫入機構と、前記貫入機構を保持するチャック機構と、前記チャック機構が移動可能な通路と、前記通路が外周面に形成された本体部と、前記測定手段の測定結果を記録するデータ記録手段とを備えるものである。複数の前記貫入機構が前後方向に並設されていて、前記貫入機構の側面には凸部が突設されており、前記本体部の内部下端には、前記凸部が挿入される溝が形成されいて、前記通路は、側面視逆U字状を呈している。
前記チャック機構は前記通路に沿って移動することで、複数の前記貫入機構のうち最後部に位置する前記貫入機構を最前部に誘導するとともに前記貫入機構を測定対象面に誘導する。前記貫入針は、前記チャック機構により前記貫入機構が前記測定対象面に誘導された際に前記測定対象面に貫入される。前記本体部は、複数の前記貫入機構の前記貫入針が前記測定対象面に貫入した状態にあるときに、複数の前記貫入機構の前記凸部が前記溝内において前後方向に連なることにより形成されたレールに沿って前後方向に移動可能である。そして、前記測定手段は、前記貫入針が前記測定対象面に貫入された際の貫入抵抗荷重を測定する。
また、本発明の針貫入試験方法は、前記針貫入試験装置を利用するものであって、前記針貫入試験装置を所定の位置に設置する設置工程と、前記チャック機構で前記貫入機構を保持する保持工程と、前記チャック機構を前記通路に沿って移動させて前記貫入機構を前記測定対象面に誘導するとともに、前記貫入針を前記測定対象面に貫入させる測定工程と、前記チャック機構を前記貫入機構から取り外す測定終了工程とを備えている。
かかる針貫入試験装置および針貫入試験方法によれば、通路に沿って移動させた貫入機構により貫入針を測定対象面に貫入させるため、針の貫入角度や貫入速度にばらつきが生じ難い。その結果、針の貫入長さや貫入抵抗荷重を精度良く測定することが可能となる。針貫入試験装置は、現地において測定することが可能なため、現地から試料を採取する従来の試験方法に比べて作業の手間を大幅に削減できる。
【0006】
前記針貫入試験装置が、前記通路が外周面に形成された本体部と、前記測定手段の測定結果を記録するデータ記録手段とをさらに備えてい、針貫入試験の測定結果を自動的に記録することが可能であり、また、リアルタイムで測定結果を確認できる。
また、複数の前記貫入機構が前後方向に並設されており、前記通路が側面視逆U字状を呈しており、前記チャック機構が複数の前記貫入機構のうち最後部に位置する前記貫入機構を最前部に誘導し、前記本体部が、複数の前記貫入機構の貫入針が測定対象面に貫入した状態にあるときに、複数の前記貫入機構をガイドにして前後に移動可能であるため、本体部を移動させつつ測定対象面に対して連続的に針貫入試験を実施することができる。そのため、複数個所における試験を簡易に実施することが可能となる。なお、前記貫入針は、前記貫入機構の上下にそれぞれ設けられているのが望ましい。
【発明の効果】
【0007】
本発明の針貫入試験装置および針貫入試験方法によれば、針貫入時の速度や角度にばらつきが生じることなく定量的な測定を現地にて簡易に実施することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本実施形態の針貫入試験装置を示す図であって、(a)は側面図、(b)は(a)のA-A矢視図、(c)は(a)のB-B断面図である。
図2】本実施形態の針貫入方法の手順を示すフローチャートである。
図3】針貫入試験装置を利用した針貫入試験方法における測定工程を示す図であって(a)は側面図、(b)は(a)のA-A矢視図である。
図4】針貫入試験装置を利用した針貫入試験方法における測定終了工程を示す図であって(a)は側面図、(b)は(a)のA-A矢視図である。
図5】針貫入試験装置を利用した針貫入試験方法における設置工程を示す図であって(a)は側面図、(b)は(a)のA-A矢視図である。
図6図5に続く設置工程を示す図であって(a)は側面図、(b)は(a)のA-A矢視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本実施形態では、土砂と固化材を原位置にて混合する、あるいは別の場所で混合した土砂と固化材との混合体を必要箇所に打設する地盤改良工法において、地盤改良体の達成強度を原位置にて測定するための針貫入試験装置およびこれを利用した針貫入試験方法について説明する。図1に本実施形態の針貫入試験装置1を示す。
図1に示すように、針貫入試験装置1は、本体部2と、貫入機構3と、チャック機構4と、データ記録手段5とを備えている。針貫入試験装置1は、前後方向に移動可能に構成されている。また、貫入機構3は、針貫入試験装置1の進行方向(前後方向)に沿って複数並設されている。
【0010】
本体部2は、図1(a)および(b)に示すように、正面視矩形状、側面逆U字状を呈した箱体である。図1(c)に示すように、本体部2の内部は空洞になっており、本体部2の内部上部にはデータ記録手段5が収納されており、本体部2の内部下部には複数の貫入機構3のうちの一部(本実施形態では三つの貫入機構3)が収納されている。また、本体部2の下部は開口しており、複数の貫入機構3の下部が本体部2の下部から突出している。本体部2の前面および後面には、貫入機構3が出入り可能な開口が形成されている。
本体部2の外周面には、図1(b)に示すように、チャック機構4が走行可能な通路21が形成されている。本実施形態の通路21は、本体部2の外面に形成された左右一対の溝形のレールであって、平行に形成されている。通路21は、本体部2の外面に沿って形成されており、側面視逆U字状を呈している。また、通路21の両端部(本体部2の前面側の端部および本体部2の後面側の端部)は、横方向(外方向)に延びていて、チャック機構4を横方向に誘導するように構成されている。
図1(c)に示すように、本体部2の内部下端には、ガイド部材22が形成されている。ガイド部材22は、本体部2の前後方向(図1(a)において左右方向)に沿って延設されている。ガイド部材22には、貫入機構3の側面に形成された凸部34が挿入される溝23が形成されている。
【0011】
図1(a)に示すように、貫入機構3は、貫入機構本体31と、貫入針32と、測定手段33とを備えている。貫入機構本体31は、貫入針32および測定手段33を支持している。図1(b)に示すように、貫入機構本体31の側面には、チャック機構4と係合する凸部34が突設されている。凸部34は、断面視矩形状の突条であって貫入機構本体31の幅方向に沿って形成されている。また、凸部34は、図1(c)に示すように、ガイド部材22の溝23に挿入可能な形状を有している。複数の貫入機構3の凸部34が前後方向に連なることにより、本体部2が前後方向に移動する際のレールが形成され、ガイド部材22が凸部34に沿って摺動する。
貫入針32は、貫入機構31の上下にそれぞれ設けられている。貫入針32は、測定対象面に貫入される。貫入針32は、貫入機構3の上面または下面に対して、垂直に伸びている。貫入針32には、もめん針2号(φ0.84mmまたは0.89mm、長さ54.5±1.4mm)を使用することができる。
測定手段33は、貫入針32が測定対象面に貫入された際の貫入長さおよび貫入抵抗荷重を測定する。測定手段33は、いわゆるロードセルである。測定手段33の測定結果は、データ記録手段5に送信される。
【0012】
図1(a)および(b)に示すように、チャック機構4は、直方体状に形成された部材である。本実施形態では、一対のチャック機構4が本体部2の外面に添設されている。チャック機構4の内側面(他のチャック機構4側の面)には、貫入機構3の凸部34と嵌合する凹部41が形成されている。左右一対のチャック機構4は、左右から貫入機構3を挟みつつ、凸部34と凹部41とを嵌合させることで、貫入機構3を保持する。チャック機構4は、貫入機構3を保持した状態で、通路21に沿って移動する。チャック機構4は、通路21に沿って移動することで、貫入機構3を測定対象面に誘導する。
【0013】
データ記録手段5は、測定手段33の測定結果を記録する。データ記録手段5は、測定手段33から電気信号として送信された測定結果(貫入針32の貫入長さや貫入抵抗荷重等)を記録する。データ記録手段5に記録されたデータは、図示しない表示手段に表示される。
【0014】
次に、針貫入試験装置1を利用した針貫入試験方法について説明する。図2は、本実施形態の針貫入試験方法のフローチャートである。本実施形態の針貫入試験方法は、図2に示すように、設置工程S1、保持工程S2、測定工程S3および測定終了工程S4により行う。
【0015】
設置工程S1は、図1に示すように、針貫入試験装置1を所定の位置に設置する工程である。針貫入試験を実施した後、次の針貫入試験の実施位置に針貫入試験装置1を設置する場合は、測定対象面(地表面GL)上に並設された複数の貫入機構3(貫入機構3a~3d)に沿って本体部2を移動させる。本体部2を移動させる際には、貫入針32が測定対象面に貫入した状態にある複数の貫入機構3の凸部をガイドにして移動させる。本実施形態の針貫入試験装置1は、図1(a)に示すように、最前部に位置する貫入機構3aから所定の数の貫入機構3(本実施形態では前から3番目の貫入機構3cまで)を本体部2に収納するように配置する。このとき、最後尾の貫入機構3dは、本体部2の後方に位置している。
【0016】
保持工程S2は、図1(b)に示すように、チャック機構4で貫入機構3を保持する工程である。チャック機構4は、前後に並設(図1(a)において左右に並設)された複数の貫入機構3のうち最後部に位置する貫入機構3を左右から挟む。このときチャック機構は、本体部2の進行方向に対して直交する方向に横移動することで、貫入機構3を挟む。チャック機構4が貫入機構3を挟むと、貫入機構3の凸部34が、チャック機構4の凹部41に挿入され、凸部34と凹部41が嵌合された状態になる。
【0017】
図3(a)および(b)に測定工程S3を示す。測定工程S3は、図3(a)および(b)に示すように、貫入針32を測定対象面(地表面GL)に貫入させる工程である。測定工程S3では、まず、貫入機構3を保持したチャック機構4を通路21に沿って本体部2の前方へと移動させることで、最後部の貫入機構3dを最前部(貫入機構3aの前)に誘導する。チャック機構4が移動することで、貫入機構3dが測定対象面に誘導される。貫入機構3dは、本体部2の後方において上昇し、本体部2の上面に沿って前側に移動した後、本体部2の前方において下降する。本体部2の後方で貫入機構3dが上昇すると、一方の貫入針32bが地盤から引き抜かれる。続いて、本体部2の前方において貫入機構3dが地表面GLに近付くと、貫入機構3dから突出した貫入針32aが地表面GLに押し込まれる。逆U字状の本体部2の側面は、測定対象面に対して略垂直であるため、貫入針32aは、測定対象面に対して略垂直に押し込まれる。ここで、貫入機構3が本体部2の後方に位置しているときは、一方(下側)の貫入針32bが地盤に貫入した状態で他方(上側)の貫入針32aが露出した状態となっているが、貫入機構3が本体部2の前方に移動した際には、図3(a)に示すように、他方の貫入針32aが下側となって測定対象面に貫入する。
測定手段33は、貫入針32aが測定対象面に貫入した際の貫入長さおよび貫入抵抗荷重を測定し、データ記録手段5に測定結果を送信する。データ記録手段5がデータを受信すると、測定結果を記録するとともに、表示手段にデータを転送する。表示手段に表示されたデータを確認することで、測定結果をオンタイムで確認できる。データ記録手段5は、測定手段33の測定結果に基づいて、自動的に一軸圧縮強さを算出するようにしてもよい。
【0018】
図4(a)および(b)に測定終了工程S4を示す。測定終了工程S4は、チャック機構4を貫入機構3から取り外す工程である。まず、図4(a)および(b)に示すように、本体部2の前方において、測定対象面上に配置させた貫入機構3からチャック機構4を取り外す。貫入機構3からチャック機構4を取り外すときには、左右のチャック機構4を外側(他のチャック機構4の反対側)に移動させる。
【0019】
図5および図6は、測定終了工程S4に続く設置工程S1を示す図である。測定終了工程S4が終了したら、針貫入試験装置1を次の位置に移動させる(設置工程S1)。まず、図5(a)および(b)に示すように、チャック機構4を開いた状態で本体部2を前方に移動させる。このとき、本体部2は、貫入針32が測定対象面に貫入した状態にある複数の貫入機構3をガイドにして移動させる。本体部2は、最前部の貫入機構3dが本体部2に収納される位置まで前進させる。
次に、図6(a)および(b)に示すように、チャック機構4を通路21に沿って移動させることで、チャック機構4をもとの位置(本体部2の後方)に移動させる。チャック機構4を内側(他のチャック機構4側)に移動させた後、本体部2の外面に沿って移動させる。このとき、チャック機構4は、本体部2の前面において上昇させた後、本体部2の上部において前側から後側に移動し、本体部2の後面において下降させる。以下、保持工程S2、測定工程S3、測定終了工程S4を行う。
【0020】
本実施形態の針貫入試験装置1および針貫入試験方法によれば、通路21に沿って移動させた貫入機構3により貫入針32を機械的(自動的)に測定対象面に貫入させるため、貫入針32の貫入角度や貫入速度にばらつきが生じ難い。その結果、貫入針32の貫入長さや貫入抵抗荷重を精度良く測定することが可能となる。
また、針貫入試験装置1は、原位置の地盤面に対して試験を実施することが可能なため、現場から試料を採取して試験室において試験を行う従来の試験方法に比べて作業の手間を大幅に削減できる。また、材齢日数に応じて供試体を作成する必要もないため、複数の供試体を作成する手間を必要としない。
【0021】
また、測定手段の測定結果を記録するデータ記録手段5を備えているため、針貫入試験の測定結果を自動的に記録することができる。また、データ記録手段5に記録されたデータを表示手段に表示することで、リアルタイムで測定結果を確認できる。
また、前後方向に並設された複数の貫入機構3をガイドにして本体部2を移動させることで、本体部2を移動させつつ測定対象面に対して連続的に針貫入試験を実施することができる。そのため、複数個所における試験を簡易に実施することが可能となる。このとき、貫入機構3は、貫入針32が地盤に貫入されているため、本体部2の移動時に地盤から反力を確保した状態で、本体部2を誘導することができる。
【0022】
貫入針32が、貫入機構3の上下にそれぞれ設けられているため、側面視逆U字状に沿って貫入機構3を移動させた際に、測定対象面側に貫入針32が突出した状態となる。このように、上下に配設された貫入針32は、針貫入試験用の針として使用するだけでなく、本体部2を移動させる際の反力確保用のアンカーとして使用でき、かつ、交互に繰り返し使用することができるので、広範囲の領域に対して、連続的かつ効率的に測定することができる。
針貫入試験装置1を自動的に制御することで、地盤改良工事を広範囲に実施した場合でも、効率的に測定することができるとともに、省力化、省人化が可能である。複数の針貫入試験装置1を並設して測定すれば、より効率的である。
【0023】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、前述の実施形態に限られず、前記の各構成要素については本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更が可能である。
例えば、前記実施形態では、地盤改良体に対して針貫入試験を行う場合について説明したが想定対象面は限定されるものではなく、例えば、自然地盤であってもよい。
また、並設される貫入機構3の数は限定されるものではなく、例えば、二つや三つであってもよいし、五つ以上であってもよい。
チャック機構4の構成は、貫入機構3を保持することが可能であれば、限定されるものではない。
通路21は溝形のレールに限定されるものではなく、例えば、突条であってもよい。
データ記録手段5は、必ずしも本体部2内に配設されている必要はない。
本体部2の移動のための動力は限定されるものではなく、例えば、自走式であってもよいし、牽引式であってもよい。
【符号の説明】
【0024】
1 針貫入試験装置
2 本体部
21 通路
3 貫入機構
32 貫入針
33 測定手段
4 チャック機構
5 データ記録手段
図1
図2
図3
図4
図5
図6