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特許7351813補助電源装置、及び電動パワーステアリングシステム
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  • 特許-補助電源装置、及び電動パワーステアリングシステム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-19
(45)【発行日】2023-09-27
(54)【発明の名称】補助電源装置、及び電動パワーステアリングシステム
(51)【国際特許分類】
   B62D 5/04 20060101AFI20230920BHJP
   B62D 6/00 20060101ALI20230920BHJP
   B60R 16/02 20060101ALI20230920BHJP
   B60R 16/033 20060101ALI20230920BHJP
   B62D 101/00 20060101ALN20230920BHJP
【FI】
B62D5/04
B62D6/00
B60R16/02 645C
B60R16/033 C
B62D101:00
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020126538
(22)【出願日】2020-07-27
(65)【公開番号】P2022023538
(43)【公開日】2022-02-08
【審査請求日】2022-12-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】横山 亘
(72)【発明者】
【氏名】松尾 雄平
【審査官】村山 禎恒
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-001324(JP,A)
【文献】特開2009-274548(JP,A)
【文献】特開2009-248850(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 5/00-5/32
B62D 6/00-6/10
B60R 16/02
B60R 16/033
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
主電源装置から電動パワーステアリング装置への給電経路に設置される補助電源装置であって、
充放電可能な蓄電装置である補助電源と、
前記電動パワーステアリング装置及び前記補助電源と前記主電源装置とを断接する断接スイッチと、
前記断接スイッチのオンオフを切替える操作部と、を備え、
前記操作部は、前記主電源装置から当該補助電源装置に供給される電圧が既定の電圧低下判定値以下となっているときに、車速が既定の低車速判定値を超えていることを条件に前記断接スイッチをオンからオフに切替える補助電源装置。
【請求項2】
前記操作部は、前記断接スイッチがオフとなっているときに前記車速が前記低車速判定値以下となった場合には、前記断接スイッチをオフからオンに切替える請求項1に記載の補助電源装置。
【請求項3】
電力の供給を受けて車両の操舵力を発生する操舵モータと、
前記操舵モータに電力を供給する主電源装置と、
充放電可能な蓄電装置である補助電源と、
前記操舵モータ及び前記補助電源と前記主電源装置とを断接する断接スイッチと、
前記断接スイッチのオンオフを切替える操作部と、を備え、
前記操作部は、前記主電源装置が前記操舵モータに供給する電圧が既定の電圧低下判定値以下となっているときに、車速が既定の低車速判定値を超えていることを条件に前記断接スイッチをオンからオフに切替える電動パワーステアリングシステム。
【請求項4】
前記操作部は、前記断接スイッチがオフとなっているときに前記車速が前記低車速判定値以下となった場合には、前記断接スイッチをオフからオンに切替える請求項3に記載の電動パワーステアリングシステム。
【請求項5】
前記操舵モータの電力が不足することが予測されるときに運転者への警告を行う警告装置を備えており、かつ同警告装置は、前記断接スイッチにおける電動パワーステアリング装置が接続される側の端子に接続されている請求項3又は請求項4に記載の電動パワーステアリングシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、補助電源装置、及び電動パワーステアリングシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
車両に搭載されるシステムとして、運転者の操舵支援や自動操舵のための操舵力をモータにより発生する電動パワーステアリングシステムがある。そして特許文献1には、主電源と、主電源の給電圧が低下した際に電力を供給する補助電源と、を備える電動パワーステアリングシステムが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2007-045388号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の電動パワーステアリングシステムでは、主電源の給電圧が低下した際にも、補助電源からの電力供給により、電動パワーステアリングシステムの動作を継続できる。ただし、コストを考えると、使用される場面が限られる補助電源の容量は必要最小に抑えることが望ましい。
【0005】
本発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであって、その解決しようとする課題は、補助電源の小容量化を可能とした補助電源装置、及び電動パワーステアリングシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する補助電源装置は、主電源装置から電動パワーステアリング装置への給電経路に設置され、充放電可能な蓄電装置である補助電源と、電動パワーステアリング装置及び補助電源と主電源装置とを断接する断接スイッチと、前記断接スイッチのオンオフを切替える操作部と、を備え、前記操作部は、主電源装置から当該補助電源装置に供給される電圧が既定の電圧低下判定値以下となっているときに、車速が既定の低車速判定値を超えていることを条件に断接スイッチをオンからオフに切替える。
【0007】
上記補助電源装置が搭載された車両では、断接スイッチがオンとなっているときには、電動パワーステアリング装置及び補助電源が主電源装置に接続される。このとき、主電源装置が十分な電力を供給していれば、主電源装置からの電力供給により電動パワーステアリング装置が動作される。また、このときには、主電源装置から供給される電力により補助電源が充電される。一方、断接スイッチがオフとなると、電動パワーステアリング装置及び補助電源が主電源装置から切り離される。そして、補助電源からの給電により電動パワーステアリング装置が動作される。
【0008】
なお、低車速時や停車時には、操舵に大きいトルクが必要となり、電動パワーステアリング装置の消費電力が多くなる。そのため、車速に関わらず、低車速時や停車時にも断接スイッチをオフとする場合には、断接スイッチがオフの状態で補助電源だけで電動パワーステアリング装置の動作をある程度の時間維持するには、大容量の補助電源が必要となる。その点、上記補助電源装置では、車速が低車速判定値以下のときには、主電源装置から供給される電圧が低下しても、断接スイッチをオンからオフに切替えないようにしている。そのため、電動パワーステアリング装置の動作を断接スイッチがオフとされた状態で一定の時間維持するために必要な電力の最大値が、車速に関わらず断接スイッチをオフとする場合に比べて小さくなる。したがって、補助電源の小容量化が可能となる。
【0009】
上記補助電源装置における操作部は、断接スイッチがオフとなっているときに車速が低車速判定値以下となった場合には、断接スイッチをオフからオンに切替えることが望ましい。こうした場合には、断接スイッチのオフ後に車速が低下して電動パワーステアリング装置の消費電力が増加した場合にも、同電動パワーステアリング装置の動作が維持され易くなる。
【0010】
上記課題を解決する電動パワーステアリング装置は、電力の供給を受けて車両の操舵力を発生する操舵モータと、操舵モータに電力を供給する主電源装置と、充放電可能な蓄電装置である補助電源と、操舵モータ及び補助電源と主電源装置とを断接する断接スイッチと、前記断接スイッチのオンオフを切替える操作部と、を備え、前記操作部は、主電源装置が操舵モータに供給する電圧が既定の電圧低下判定値以下となっているときに、車速が既定の低車速判定値を超えていることを条件に断接スイッチをオンからオフに切替える。
【0011】
上記電動パワーステアリングシステムでは、断接スイッチがオンとなっているときには、操舵モータ及び補助電源が主電源装置に接続される。このとき、主電源装置が十分な電力を供給していれば、主電源装置からの電力供給により操舵モータが動作される。また、このときには、主電源装置から供給される電力により補助電源が充電される。一方、断接スイッチがオフとなると、操舵モータ及び補助電源が主電源装置から切り離される。そして、補助電源からの給電により操舵モータが動作される。さらに、上記電動パワーステアリングシステムにおける操作部は、主電源装置から操舵モータに供給される電圧が電圧低下判定値以下となっており、かつ車速が低車速判定値を超えている場合に断接スイッチをオンからオフに切替えている。そのため、操作モータの動作を断接スイッチがオフとされた状態で一定の時間維持するために必要な電力の最大値が、車速に関わらず断接スイッチをオフとする場合に比べて小さくなる。したがって、補助電源の小容量化が可能となる。
【0012】
なお、上記電動パワーステアリングシステムにおける操作部は、断接スイッチがオフとなっているときに車速が低車速判定値以下となった場合には、断接スイッチをオフからオンに切替えることが望ましい。こうした場合、断接スイッチのオフ後に車速が低下して電動パワーステアリング装置の消費電力が増加した場合にも、同電動パワーステアリング装置の動作が維持され易くなる。
【0013】
また、上記電動パワーステアリングシステムは、操舵モータの電力が不足することが予測されるときに運転者への警告を行う警告装置を備えており、かつ同警告装置は、断接スイッチにおける電動パワーステアリング装置が接続される側の端子に接続されていることが望ましい。こうした場合、警告装置への電力供給態様の切替えが操舵モータの場合と同様に行われる。そのため、主電源装置からの供給電圧が低下した際に警告装置の動作が維持され易くなる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、補助電源の小容量化が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】補助電源装置、及び電動パワーステアリングシステムの一実施形態の構成を模式的に示す図。
図2】同実施形態の補助電源装置に設けられた操作部が実行する断接スイッチ操作処理のフローチャート。
図3】操舵時の電動パワーステアリング装置に流れる電流と車速との関係を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、補助電源装置、及び電動パワーステアリングシステムの一実施形態を、図1図3を参照して詳細に説明する。本実施形態の補助電源装置、及び電動パワーステアリングシステムは、エンジンを駆動源とした車両に搭載されている。
【0017】
図1に示すように、本実施形態の電動パワーステアリングシステムは、車両の操舵力を発生する電動パワーステアリング装置10と、電動パワーステアリング装置10に電力を供給する主電源装置20と、を備えている。また、電動パワーステアリングシステムは、主電源装置20から電動パワーステアリング装置10への供給電圧が低下した際に電動パワーステアリング装置10に電力を供給する補助電源装置30を備えている。
【0018】
主電源装置20は、充放電可能な蓄電装置である主電源21と、エンジンの回転を受けて発電を行う発電機22と、を有する。主電源21は、例えば鉛蓄電池である。主電源装置20は、電力線23を介して補助電源装置30に接続されている。また、主電源装置20は、電力線24を介して、電動パワーステアリング装置10以外の車載電装機器に接続されている。以下の説明では、電動パワーステアリング装置10以外の車載電装機器を他の車載電装機器25と記載する。他の車載電装機器25には、各種の電子制御ユニットや、ワイパー、照明器具などが含まれる。
【0019】
補助電源装置30は、断接スイッチ31、充放電可能な蓄電装置である補助電源32、及び昇降圧回路33を備えている。断接スイッチ31の一方の端子31Aは、上述の電力線23を介して主電源装置20に接続されている。また、断接スイッチ31のもう一方の端子31Bは、電力線34を介して電動パワーステアリング装置10に接続されている。そして、断接スイッチ31は、主電源装置20から電動パワーステアリング装置10への給電経路を断接するスイッチとして構成されている。本実施形態では、こうした断接スイッチ31として無接点リレーを採用している。
【0020】
補助電源32は、昇降圧回路33を介して電力線34に接続されている。昇降圧回路33は、補助電源32が充電を行う際には、電力線34から入力された電力を昇圧して補助電源32に出力する。一方、昇降圧回路33は、補助電源32が放電を行う際には、補助電源32が放電した電力を降圧して電力線34に出力する。なお、本実施形態では、補助電源32としてキャパシタを採用している。
【0021】
さらに補助電源装置30は、断接スイッチ31を開閉操作する操作部35を備えている。操作部35は、断接スイッチ31の開閉操作に係る処理を実行する電子制御回路として構成されている。操作部35には、電力線23を介して主電源装置20から補助電源装置30に供給される電圧VB、及び車速SPDの検知結果が入力されている。そして、操作部35は、それらの検知結果に基づき、断接スイッチ31の駆動信号を出力することで、断接スイッチ31の開閉操作を実行する。
【0022】
なお、本実施形態の電動パワーステアリングシステムは、警告装置36を備えている。警告装置36は、電力不足により電動パワーステアリング装置10が要求される操舵力を発生できない状態となることが予想される場合に、聴覚的手段や視覚的手段により運転者への警告を行う装置である。警告装置36は、電力線34に接続されている。すなわち、警告装置36は、断接スイッチ31における電動パワーステアリング装置10が接続される側の端子31Bに接続されている。
【0023】
電動パワーステアリング装置10は、操舵制御回路11と、車両の操舵力を発生する操舵モータ12と、を備えている。操舵制御回路11は、運転者のステアリング操作や、車速などの車両走行状況等に応じて操舵モータ12に流す電流を制御する。なお、自動操舵走行を行う車両に適用する場合には、操舵制御回路11は、自動操作走行時には、運転者のステアリング操作によらず、車両走行状況や車線や周辺車両の検知結果に応じて操舵モータ12に流す電流を制御する。
【0024】
以上のように、本実施形態の補助電源装置30は、主電源装置20から電動パワーステアリング装置10への給電経路に設置されている。また、補助電源装置30に設けられた断接スイッチ31は、開閉に応じて、電動パワーステアリング装置10及び補助電源32と、主電源装置20と、を断接する。具体的には、断接スイッチ31がオン、すなわち閉じられた状態にあるときには、電動パワーステアリング装置10及び補助電源32は主電源装置20に接続された状態となる。一方、断接スイッチ31がオフ、すなわち開かれた状態にあるときには、電動パワーステアリング装置10及び補助電源32は主電源装置20から切断された状態となる。
【0025】
次に、図2を参照して、補助電源装置30の操作部35が行う断接スイッチ31の開閉操作に係る処理を説明する。操作部35は、図2に示す処理を、既定の制御周期毎に繰り返し実行している。
【0026】
各制御周期における処理が開始されると、操作部35はまずステップS100において、上述の電圧VB、及び車速SPDの検知結果を読み込む。続いて操作部35は、ステップS110において、電圧VBが既定の電圧低下判定値V1以下であるか否かを判定する。そして、操作部35は、電圧VBが電圧低下判定値V1を上回っている場合(NO)にはステップS120において断接スイッチ31をオンとした後、今回の制御周期の処理を終了する。一方、電圧VBが電圧低下判定値V1以下の場合(YES)の操作部35は、ステップS130に処理を進める。なお、電圧低下判定値V1には、電動パワーステアリング装置10を適切な動作を継続可能な電圧VBの範囲の下限値が値として設定されている。
【0027】
操作部35は、ステップS130に処理を進めると、そのステップS130において、車速SPDが既定の低車速判定値S1を超えているか否かを判定する。そして、操作部35は、車速SPDが低車速判定値S1以下であれば(NO)、上述のステップS120に処理を進めて、断接スイッチ31をオンとした後、今回の制御周期の処理を終了する。一方、車速SPDが低車速判定値S1を超えている場合(YES)の操作部35は、ステップS140において、断接スイッチ31をオフとした後、今回の制御周期における処理を終了する。
【0028】
以上のように操作部35は、主電源装置20から補助電源装置30に供給される電圧VBが電圧低下判定値V1以下、かつ車速SPDが低車速判定値S1を超えていることを条件に断接スイッチ31をオンからオフに切替えている。また、断接スイッチ31がオフとなっているときに操作部35は、電圧VBが電圧低下判定値V1を超えるか、或いは車速SPDが低車速判定値S1以下となるか、のいずれかとなったときに、断接スイッチ31をオフからオンに切替えている。
【0029】
図3には、操舵時に操舵モータ12が必要とする電流の最大値である最大操舵電流値と車速SPDとの関係を示す。同図に示すように、最大操舵電流値は、車速SPDが低いほど大きくなる。特に、停車中や微速走行時には、いわゆる据え切りの状態となり、操舵に多大なトルクが必要なため、最大操舵電流値が非常に大きくなる。上述の低車速判定値S1には、据え切りの状態となって最大操舵電流値が多大となる車速SPDの範囲の上限値よりも若干高い車速が値として設定されている。なお、以下の説明では、低車速判定値S1以下の車速SPDの範囲を低車速域と記載する。
【0030】
本実施形態の作用及び効果について説明する。
本実施形態の電動パワーステアリングシステムでは、通常は、補助電源装置30の断接スイッチ31をオンとした状態で、主電源装置20から供給される電力により電動パワーステアリング装置10を動作させる。なお、主電源装置20は、電動パワーステアリング装置10に加え、他の車載電装機器25にも電力を供給する。また、このときには、主電源装置20から供給される電力により補助電源32の充電が行われる。
【0031】
なお、主電源装置20は、他の車載電装機器25の稼働状況に拘わらず、電動パワーステアリング装置10に必要十分な電力を供給可能に設計されている。しかしながら、経年劣化により主電源21の放電圧が低下すると、他の車載電装機器25の電力消費が増大した際に、主電源装置20が十分な電力を電動パワーステアリング装置10に供給できなくなることがある。電動パワーステアリング装置10への供給電力が不足すると、操舵モータ12の出力不足のため、運転者がステアリング操作に要する力が増大してしまう。また、電動パワーステアリング装置10により自動操舵走行を行っている場合には、自動操舵走行を継続できなくなる。
【0032】
これに対して、補助電源装置30の操作部35は、主電源装置20から電動パワーステアリング装置10に供給される電圧VBが、車速SPDが低車速判定値S1を上回った状態で電圧低下判定値V1以下に低下すると、断接スイッチ31をオンからオフに切替える。これにより、電動パワーステアリング装置10及び補助電源32は、主電源装置20から切り離された状態となる。そして、それまでに充電された電力が補助電源32から放電されて電動パワーステアリング装置10に供給される。これにより、ある程度の時間、電動パワーステアリング装置10の動作を継続している。また、本実施形態の電動パワーステアリングシステムでは、このときの補助電源32が放電した電力が警告装置36にも供給される。そしてそれにより、警告装置36による運転者への通知が実行される。
【0033】
一方、操作部35は、電圧VBが電圧低下判定値V1以下の場合にも、車速SPDが低車速判定値S1を上回る場合には、断接スイッチ31をオンに保持している。このときの電動パワーステアリング装置10及び警告装置36には、電力線23を通じて主電源装置20から送られた電力と、補助電源32が放電した電力との双方が供給される。
【0034】
こうした電動パワーステアリングシステムの補助電源32には、断接スイッチ31がオフとされた状態で一定の時間、電動パワーステアリング装置10の動作を維持できるだけの容量が必要となる。上述のように、車速SPDが0に近い領域では、操舵モータ12の最大操舵電流値が非常に大きくなる。そのため、車速SPDに関わらず、電圧VBの低下に応じて断接スイッチ31をオフとする場合には、補助電源32の容量を、車速SPDが0に近い領域にあるときの最大操舵電流値に応じた電流を上記一定の時間流せるだけの大容量の補助電源32を採用する必要がある。これに対して本実施形態では、車速SPDが低車速判定値S1以下のときには、電圧VBが電圧低下判定値V1以下となっていても、断接スイッチ31をオンからオフに切替えないようにしている。そのため、電動パワーステアリング装置10の動作を断接スイッチ31がオフとされた状態で一定の時間維持するために必要な電力の最大値が、車速SPDに関わらず断接スイッチ31をオフとする場合に比べて小さくなる。
【0035】
以上の本実施形態の電動パワーステアリングシステム、及び補助電源装置30によれば、以下の効果を奏することができる。
(1)本実施形態の補助電源装置30における操作部35は、主電源装置20から補助電源装置30に供給される電圧VBが電圧低下判定値V1以下となっており、かつ車速SPDが低車速判定値S1を超えている場合に断接スイッチ31をオンからオフに切替えている。そのため、断接スイッチ31をオフとした状態での補助電源32単独での電動パワーステアリング装置10への電力供給は、電動パワーステアリング装置10の動作に大電流が必要な低車速域では行われないようになる。したがって、補助電源32の小容量化が可能となる。
【0036】
(2)断接スイッチ31をオフとしたときには車速SPDが低車速判定値S1を超えていても、その後に車速SPDが低車速判定値S1以下に低下すると、操舵モータ12の電流値が大きくなり、補助電源32に充電された電力だけでは十分な時間、電動パワーステアリング装置10の動作を維持できなくなる場合がある。その点、本実施形態の補助電源装置30における操作部35は、断接スイッチ31がオフとなっているときに車速SPDが低車速判定値S1以下となった場合には、断接スイッチ31をオフからオンに切替えている。断接スイッチ31がオフからオンに切替えられると、主電源装置20及び補助電源32の双方から電動パワーステアリング装置10に電力が供給される。このときの補助電源32は、主電源装置20が電動パワーステアリング装置10に供給する電力の不足分を供給することになる。そのため、断接スイッチ31のオフ後に車速SPDが低下した場合にも、電動パワーステアリング装置10の動作を維持し易くなる。
【0037】
(3)断接スイッチ31における電動パワーステアリング装置10が接続される側の端子31Bに警告装置36が接続されている。そのため、電圧VBの低下時に警告装置36の動作が維持され易くなる。
【0038】
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
〇上記実施形態では、断接スイッチ31における電動パワーステアリング装置10が接続される側の端子31Bに警告装置36を接続していたが、他の車載電装機器25と同様に、警告装置36への電力供給を主電源装置20から直接行うようにしてもよい。
【0039】
〇上記実施形態における操作部35は、断接スイッチ31のオフ後、車速SPDが低車速判定値S1以下となった場合には、断接スイッチ31をオフからオンに切替えるようにしていた。断接スイッチ31のオフ後に車速SPDが低車速判定値S1以下に低下しても、電圧VBが電圧低下判定値V1を超えるまでは断接スイッチ31をオフに維持するようにしてもよい。
【0040】
〇上記実施形態では、主電源装置20として、鉛二次電池を主電源21として備える装置を採用していたが、こうした主電源装置20の構成を適宜変更してもよい。例えばハイブリッド車両では、走行モータに電力を供給する電源として、リチウムイオンバッテリなどの高電圧バッテリを備えており、高電圧バッテリDC/DCコンバータにより降圧して車載電装機器に供給している。こうしたハイブリッド車両では、高電圧バッテリ、及びDC/DCコンバータを主電源装置20として用いることができる。
【0041】
〇上記実施形態では、補助電源32としてキャパシタを用いていたが、二次電池などのキャパシタ以外の蓄電装置を補助電源32として用いるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0042】
10…電動パワーステアリング装置、12…操舵モータ、20…主電源装置、30…補助電源装置、31…断接スイッチ、32…補助電源、35…操作部、36…警告装置。
図1
図2
図3