特許 7351816 パッドタイプ使い捨ておむつ

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)

(12)【公報種別】特許公報(B2)

(11)【特許番号】

(24)【登録日】2023-09-19

(45)【発行日】2023-09-27

(54)【発明の名称】パッドタイプ使い捨ておむつ

(51)【国際特許分類】

   A61F 13/56 20060101AFI20230920BHJP

   A61F 13/47 20060101ALI20230920BHJP

   A61F 13/49 20060101ALI20230920BHJP

   A61F 13/514 20060101ALI20230920BHJP

【ＦＩ】

A61F13/56 110

A61F13/47 100

A61F13/47 300

A61F13/49 100

A61F13/514 400

【請求項の数】 4

(21)【出願番号】P 2020147795

(22)【出願日】2020-09-02

(65)【公開番号】P2022042381

(43)【公開日】2022-03-14

【審査請求日】2022-04-11

(73)【特許権者】

【識別番号】390029148

【氏名又は名称】大王製紙株式会社

(74)【代理人】

【識別番号】110002321

【氏名又は名称】弁理士法人永井国際特許事務所

(72)【発明者】

【氏名】森谷 晶絵

【審査官】岡崎 克彦

(56)【参考文献】

【文献】特開２０１９－０６３００６（ＪＰ，Ａ）

【文献】特開２００５－２８７７９１（ＪＰ，Ａ）

【文献】特開２０２０－４９０１８（ＪＰ，Ａ）

【文献】特開２０１４－１４４１２（ＪＰ，Ａ）

(58)【調査した分野】(Int.Cl.，ＤＢ名)

Ａ６１Ｆ １３／５６

Ａ６１Ｆ １３／４７

Ａ６１Ｆ １３／４９

Ａ６１Ｆ １３／５１４

(57)【特許請求の範囲】

【請求項1】

前後方向の中央を含む股間部と、前記股間部より前側に延びる前側部分と、前記股間部より後側に延びる後側部分とを有し、
前記前側部分、前記股間部、及び前記後側部分にわたる吸収体を有し、
前記吸収体を有する領域の前後両端よりも前後両側にそれぞれ折り返されずに延び出た、前記吸収体の存在しないエンドフラップと、前記吸収体を有する領域の両側縁よりもそれぞれ側方に折り返されずに延び出た、前記吸収体を有しないサイドフラップとを有し、
前記股間部に位置する第１固定領域と、前記第１固定領域よりも前側及び後側に位置する第２固定領域とを有し、
前記第１固定領域及び前記第２固定領域の裏面には粘着剤層が設けられており、
前後少なくとも一方の端部が、下着のウエスト開口の縁よりはみ出た状態で、下着に固定される、パッドタイプ使い捨ておむつであり、
前記前後少なくとも一方のエンドフラップに、前後方向の位置を表す左右一対の目印が、製品の裏側から視認可能なように設けられており、
前記左右一対の目印は、互いに幅方向に離間しているとともに、製品の幅方向の中央を通る中心線に関して線対称をなしているとともに、前記パッドタイプ使い捨ておむつの両側縁から幅方向の中央側に離間して、前記吸収体を有する領域の幅方向の両端部と対応する位置にのみそれぞれ設けられた、
ことを特徴とするパッドタイプ使い捨ておむつ。

【請求項2】

前記吸収体の表側を覆うトップシートと、前記吸収体の裏側に設けられた液不透過性シートと、前記液不透過性シートの裏面を覆う外装シートとを有し、
前記トップシート、前記液不透過性シート及び前記外装シートは、前記吸収体の前後両側に延び出た部分を有し、
前記エンドフラップは、前記トップシート、前記液不透過性シート及び前記外装シートにおける、前記吸収体の前後両側に延び出た部分により形成されており、
前記吸収体は、前記股間部に、前後両側よりも幅の狭い括れ部を有しており、
前後方向に沿って直線的かつ帯状に連続する左右一対の縦基準目印を有し、前記縦基準目印は前記パッドタイプ使い捨ておむつの全長にわたり連続しているとともに、前記吸収体における前記括れ部よりも前側及び後側と重なる部分では、前記縦基準目印の幅方向の全体が前記吸収体と重なっており、
前記左右一対の目印は、前記左右一対の縦基準目印の中にそれぞれ設けられた、前後方向に規則的な間隔で並ぶ目盛であり、
前記左右一対の目印及び前記左右一対の縦基準目印は、前記液不透過性シート、前記外装シート及びこれらの間に介在された印刷シートに印刷されたものである、
請求項１記載のパッドタイプ使い捨ておむつ。

【請求項3】

前記前後少なくとも一方の端部の裏面に粘着剤層を有する、
請求項１又は２記載のパッドタイプ使い捨ておむつ。

【請求項4】

前記前後少なくとも一方の端部を裏側に折り返すための、幅方向に沿う易折り曲げ線が前後方向に間隔を空けて複数設けられている、
請求項１～３のいずれか１項に記載のパッドタイプ使い捨ておむつ。

【発明の詳細な説明】

【技術分野】

【0001】

本発明は、ブリーフやショーツのような下半身用下着（以下、単に下着ともいう）の内面に固定して使用されるパッドタイプ使い捨ておむつに関するものである。

【背景技術】

【0002】

このようなパッドタイプ使い捨ておむつの一つとして、おむつ交換費用の低減や、トイレトレーニングを目的として下着の内面に取り付けて使用されるパッドタイプ使い捨ておむつがある（例えば特許文献１、２参照）。

【0003】

一般に、下着に固定されるパッドタイプ使い捨ておむつには、裏面に粘着剤層を有する固定領域が設けられており、この固定領域の裏面がおむつ又は下着の内面に粘着されることにより装着時のズレが防止されるようになっている。

【0004】

このようなパッドタイプ使い捨ておむつは、先ず、おむつの股間部（通常、前後方向の中央）を下着の股間部に合わせて、おむつの股間部に位置する第１固定領域をその裏面の粘着剤層により下着の内面に固定した後、この第１固定領域よりも前側及び後側の第２固定領域を下着の内面に押し付けて、第２固定領域をその裏面の粘着剤層により下着の内面に固定することが一般的である。また、このような装着作業は、下着を穿く前に、下着の内部にパッドタイプ使い捨ておむつを取り付けることが一般的である。

【0005】

しかしながら、従来のパッドタイプ使い捨ておむつでは、このような一般的な手順で装着した場合、第２固定領域が、下着の幅方向の中央を通る中心線に対して傾いた状態で下着に固定され、しかも傾いているということに気付きにくいという問題点があった。このような傾いた装着状態のまま使用すると、装着感の悪化や漏れにつながるおそれがあるため、解決が望まれる。

【先行技術文献】

【特許文献】

【0006】

【文献】特開２００３－９３４３８号公報

【文献】特開２０２０－０４９０１８号公報

【発明の概要】

【発明が解決しようとする課題】

【0007】

そこで、本発明の主たる課題は、下着に対して適切な位置に固定しやすいパッドタイプ使い捨ておむつを提供することにある。

【課題を解決するための手段】

【0008】

上記課題を解決したパッドタイプ使い捨ておむつは以下のとおりである。
＜第１の態様＞
前後方向の中央を含む股間部と、前記股間部より前側に延びる前側部分と、前記股間部より後側に延びる後側部分とを有し、
前記前側部分、前記股間部、及び前記後側部分にわたる吸収体を有し、
前記股間部に位置する第１固定領域と、前記第１固定領域よりも前側及び後側に位置する第２固定領域とを有し、
前記第１固定領域及び前記第２固定領域の裏面には粘着剤層が設けられており、
前後少なくとも一方の端部が、下着のウエスト開口の縁よりはみ出た状態で、下着に固定される、パッドタイプ使い捨ておむつであり、
前記前後少なくとも一方の端部に、前後方向の位置を表す左右一対の目印が、製品の裏側から視認可能なように設けられており、
前記一対の目印は、互いに幅方向に離間しているとともに、製品の幅方向の中央を通る中心線に関して線対称をなしている、
ことを特徴とするパッドタイプ使い捨ておむつ。

【0009】

（作用効果）
本パッドタイプ使い捨おむつを下着に装着する際、おむつの股間部（通常、前後方向の中央）を下着の股間部に合わせて、おむつの股間部に位置する第１固定領域をその裏面の粘着剤層により下着の内面に固定した後、おむつの前後少なくとも一方の端部に設けられた目印を使用して、第２固定領域の位置を確認することができる。具体的には、第２固定領域を下着の内面に合わせ、おむつの前後少なくとも一方の端部が下着のウエスト開口の縁よりはみ出た状態にする。そしてこのはみ出た部分を下着を基準として視認し、一対の目印の見え具合が左右対称となるように、第２固定領域の位置を調整する。この位置調整の際、第２固定領域の粘着剤層が既に粘着していた場合には、これを剥がして位置を調整してから付け直す。この位置調整は必要に応じて繰り返すことができる。このように、おむつの端部に設けられた目印を使用することにより、より容易に、下着に対して第２固定領域を適切な位置に固定することができる。

【0010】

＜第２の態様＞
前記一対の目印は、それぞれ前後方向に規則的な間隔で並ぶ目盛である、
第１の態様のパッドタイプ使い捨ておむつ。

【0011】

（作用効果）
このように、一対の目印がそれぞれ前後方向に規則的な間隔で並ぶ目盛であると、下着のウエスト開口の縁の位置を左右各側の目盛で確認することにより、下着を基準として一対の目印の見え具合が左右対称であるか否かをより容易に視認できるため好ましい。

【0012】

＜第３の態様＞
前記吸収体を有する領域と、この吸収体を有する領域の両側縁よりもそれぞれ側方に延び出た、前記吸収体を有しないサイドフラップとを有し、
前記一対の目印は、前記吸収体を有する領域の幅方向の両端部と対応する位置にそれぞれ設けられた、
第１又は２の態様のパッドタイプ使い捨ておむつ。

【0013】

（作用効果）
一対の目印は互いに幅方向の離間距離が大きい方が好ましい。しかし、サイドフラップを有するパッドタイプ使い捨ておむつの場合、サイドフラップが変形しやすいため、サイドフラップに一対の目印を設けると、目印の配置部分が曲がったりして、左右の目印の対称性を正確に視認しにくくなるおそれがある。これに対して、吸収体を有する領域は剛性が相対的に高く変形しにくい部分であるため、この部分や、その前側、その後側に一対の目印を配置すると、目印の配置部分が曲がりにくく、左右の目印の対称性を正確に視認しやすくなる。

【0014】

＜第４の態様＞
前記前後少なくとも一方の端部の裏面に粘着剤層を有する、
第１～３のいずれか１つの態様のパッドタイプ使い捨ておむつ。

【0015】

（作用効果）
おむつの前後少なくとも一方の端部が下着のウエスト開口の縁よりはみ出た状態で、第１固定領域及び第２固定領域を下着の内面に固定した後、このはみ出し部分をそのままにしておくと、装着感や通気性を低下させるおそれがあるため、股間側に折り返すことが望ましいが、折り返すだけでは元に戻るおそれがある。これに対して、本態様のような粘着剤層を有することにより、おむつにおける下着のウエスト開口の縁よりはみ出た部分を股間側に折り返すだけでなく、この折り返し部分を粘着剤層を介して下着の外面に固定することができる。

【0016】

＜第５の態様＞
前記前後少なくとも一方の端部を裏側に折り返すための、幅方向に沿う易折り曲げ線が前後方向に間隔を空けて複数設けられている、
第１～４のいずれか１つの態様のパッドタイプ使い捨ておむつ。

【0017】

（作用効果）
おむつの前後少なくとも一方の端部が下着のウエスト開口の縁よりはみ出た状態で、第１固定領域及び第２固定領域を下着の内面に固定した後、このはみ出し部分をそのままにしておくと、装着感や通気性を低下させるおそれがあるため、股間側に折り返すことが望ましい。本態様のように、易折り曲げ線を有すると、このような折り返しを容易に行うことができるため好ましい。

【発明の効果】

【0018】

本発明によれば、下着に対して適切な位置に固定しやすいパッドタイプ使い捨ておむつとなる、等の利点がもたらされる。

【図面の簡単な説明】

【0019】

【図1】展開状態のパッドタイプ使い捨ておむつの表側を示す平面図である。

【図2】展開状態のパッドタイプ使い捨ておむつの裏側を示す平面図である（図面の見やすさのため、目印は省略されている）。

【図3】図１のＡ－Ａ断面図である。

【図4】図１のＢ－Ｂ断面図である。

【図5】図１のＣ－Ｃ断面図である。

【図6】パッドタイプ使い捨ておむつの使用方法を概略的に示す斜視図である。

【図7】展開状態のパッドタイプ使い捨ておむつの裏側を示す平面図である。

【図8】展開状態のパッドタイプ使い捨ておむつの裏側を示す平面図である。

【図9】（ａ）第１固定領域の固定状態を概略的に示す断面図、及び（ｂ）第２固定領域の固定状態を概略的に示す断面図である。

【図10】パッドタイプ使い捨ておむつを装着した下着を概略的に示す正面図である。

【図11】折り返し部分の断面図である。

【図12】展開状態のパッドタイプ使い捨ておむつの裏側を示す平面図である。

【図13】パッドタイプ使い捨ておむつの前後方向の端部を概略的に示す側面図である。

【発明を実施するための形態】

【0020】

以下、パッドタイプ使い捨ておむつの例について添付図面を参照しつつ説明する。図１～図５は、パッドタイプ使い捨ておむつ２００を示している。このパッドタイプ使い捨ておむつ２００は、前後方向ＬＤの中央２０１を含む股間部Ｍと、股間部Ｍよりも前側に延びた前側部分Ｆ１及び股間部Ｍよりも後側に延びた後側部分Ｂ１とを有するものである。各部の寸法は適宜定めることができ、例えば、製品全長（前後方向長さ）Ｌ１は２００～４８０ｍｍ程度、全幅Ｗ１は１２０～２００ｍｍ程度とすることができる。股間部Ｍは、吸収体２３が後述する括れ部２３ｎを有する場合にはこの括れ部２３ｎを有する前後方向ＬＤの範囲を意味し、吸収体２３が括れ部２３ｎを有しないものの、製品の前後方向ＬＤの中間に前後両側よりも幅が狭く形成された括れ部を有する場合（砂時計のような周知の形状のことであるため、図示を省略する）にはこの括れ部を有する前後方向ＬＤの範囲を意味し、吸収体２３及び製品外形のいずれも括れ部を有しない場合には前後方向ＬＤの中央に位置する部分であって、かつ前後方向ＬＤの寸法が製品全長の２０～４０％である部分を意味する。

【0021】

パッドタイプ使い捨ておむつ２００は、前側部分Ｆ１、股間部Ｍ、及び後側部分Ｂ１にわたり内蔵された吸収体２３と、吸収体２３の表側を覆う液透過性のトップシート２２と、吸収体２３の裏側を覆う液不透過性シート２１とを有している。以下、各部の素材及び特徴部分について順に説明する。なお、以下の説明における不織布としては、部位や目的に応じて公知の不織布を適宜使用することができる。不織布の構成繊維としては、例えばポリエチレン又はポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系等の合成繊維（単成分繊維の他、芯鞘等の複合繊維も含む）の他、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維等、特に限定なく選択することができ、これらを混合して用いることもできる。不織布の柔軟性を高めるために、構成繊維を捲縮繊維とするのは好ましい。また、不織布の構成繊維は、親水性繊維（親水化剤により親水性となったものを含む）であっても、疎水性繊維若しくは撥水性繊維（撥水剤により撥水性となった撥水性繊維を含む）であってもよい。また、不織布は一般に繊維の長さや、シート形成方法、繊維結合方法、積層構造により、短繊維不織布、長繊維不織布、スパンボンド不織布、メルトブローン不織布、スパンレース不織布、サーマルボンド（エアスルー）不織布、ニードルパンチ不織布、ポイントボンド不織布、積層不織布（スパンボンド層間にメルトブローン層を挟んだＳＭＳ不織布、ＳＭＭＳ不織布等）等に分類されるが、これらのどの不織布も用いることができる。

【0022】

吸収体２３としては、パルプ繊維の積繊体、セルロースアセテート等のフィラメントの集合体、あるいは不織布を基本とし、必要に応じて高吸収性ポリマーを混合、固着等してなるものを用いることができる。必要に応じて、吸収体２３はクレープ紙や不織布（図示せず）により包むことができる。また、吸収体２３の形状は、長方形状等、適宜の形状とすることができるが、図示例では、股間部Ｍに、前後両側よりも幅の狭い括れ部２３ｎを有する形状（略砂時計形状）となっている。吸収体２３における繊維目付け及び吸収性ポリマーの目付けは適宜定めることができるが、繊維目付けは１００～６００ｇ／ｍ²程度とするのが好ましく、また吸収性ポリマーの目付け０～４００ｇ／ｍ²程度とするのが好ましい。

【0023】

吸収体２３の裏側には、液不透過性シート２１が設けられている。液不透過性シート２１としては、ポリエチレンフィルム等の他、ムレ防止の点から遮水性を損なわずに透湿性を備えたシートも用いることができる。この遮水・透湿性シートは、例えばポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン樹脂中に無機充填材を溶融混練してシートを形成した後、一軸又は二軸方向に延伸することにより得られる多孔質シートを用いることができる。図示例では、液不透過性シート２１が吸収体２３の周囲にはみ出しているが、吸収体２３の周囲にはみ出していなくてもよい。

【0024】

液不透過性シート２１の外面（裏面）は、外装シート２５により覆われている。外装シート２５としては各種の不織布を用いることができる。

【0025】

吸収体２３の表側は、トップシート２２により覆われている。図示例ではトップシート２２の側縁から吸収体２３が一部はみ出しているが、吸収体２３の側縁がはみ出さないようにトップシート２２の幅を広げることもできる。トップシート２２としては、有孔又は無孔の不織布や穴あきプラスチックシートなどが用いられる。

【0026】

パッドタイプ使い捨ておむつ２００の前後端部は、吸収体２３の前後端よりも前後両側にそれぞれ延び出た、吸収体２３の存在しないエンドフラップＥＦとなっている。エンドフラップＥＦを構成する素材は特に限定されるものではないが、図示例では、液不透過性シート２１、外装シート２５及びトップシート２２における、吸収体２３の前後両側に延び出た部分となっている。

【0027】

また、パッドタイプ使い捨ておむつ２００の両側部は、吸収体の両側縁よりもそれぞれ側方に延び出た、吸収体２３の存在しないサイドフラップＳＦとなっている。サイドフラップＳＦを構成する素材は特に限定されるものではないが、図示例では、液不透過性シート２１、外装シート２５、トップシート２２、及びギャザーシート６２における、吸収体２３の幅方向ＷＤの両側に延び出た部分となっている。これらを含め、素材の貼り合わせは、図中に点模様で示されたホットメルト接着剤の他、ヒートシール、超音波シール等の素材溶着により行うことができる。

【0028】

（起き上がりギャザー）
トップシート２２上を横方向に移動する尿や軟便を遮り、横漏れを防止するために、使い捨ておむつの表面の幅方向ＷＤの両側には、トップシート２２の側部から肌側に立ち上がる（突出する）起き上がりギャザー６０が前後方向全体にわたり設けられている。

【0029】

図示例の起き上がりギャザー６０は、サイドフラップＳＦを含む領域に固定された付根部分６５と、この付根部分６５から延び出た突出部分６６と、この突出部分の前後方向両端部が倒伏状態に固定された倒伏部分６７と、突出部分６６のうち前後の倒伏部分間に位置する非固定の起き上がり部分６８と、この起き上がり部分６８の少なくとも先端部に、前後方向に伸張した状態で固定されたギャザー弾性部材６３とを有している。起き上がりギャザー６０は、先端で折り返されたギャザーシート６２により形成されており、ギャザー弾性部材６３は、図示例のように各複数本、間隔を空けて設ける他、各１本設けることができる。ギャザー弾性部材６３を有する部分の伸長率は特に限定されないが、通常の場合１５０～３５０％が好ましく、２００～３００％がより好ましい。

【0030】

図示例の起き上がりギャザー６０の付根部分６５は、サイドフラップＳＦにのみ設けられており、液不透過性シート２１の側部及び外装シート２５の側部に接合されているが、サイドフラップＳＦから吸収体２３と重なる領域の側部まで延びていてもよい。

【0031】

起き上がりギャザー６０の突出部分６６は、前後方向ＬＤの両端部が倒伏部分となっているものの、その間の部分は非固定の起き上がり部分６８とされており、この起き上がり部分６８がギャザー弾性部材６３の収縮力により起立するようになる。おむつの装着時には、おむつが舟形に体に装着され、そしてギャザー弾性部材６３の収縮力が作用するので、ギャザー弾性部材６３の収縮力により起き上がりギャザー６０が立ち上がり脚周りに弾力的に密着する。その結果、脚周りからのいわゆる横漏れが防止される。

【0032】

ギャザーシート６２の素材としては、プラスチックシートやメルトブローン不織布を使用することもできるが、肌への感触性の点で、不織布にシリコーンなどにより撥水処理をしたものが好適に使用される。ギャザー弾性部材６３としては、糸状、紐状、帯状等に形成された、スチレン系ゴム、オレフィン系ゴム、ウレタン系ゴム、エステル系ゴム、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリスチレン、スチレンブタジエン、シリコーン、ポリエステル等、通常使用される素材を用いることができる。

【0033】

（サイドギャザー）
各サイドフラップＳＦは、股間部Ｍを含む前後方向ＬＤの範囲に、前後方向ＬＤに延びる細長状のサイド弾性部材６４を有しており、このサイド弾性部材６４を有する領域は、サイド弾性部材６４の収縮により前後方向ＬＤに収縮しているとともに前後方向ＬＤに伸長可能である伸縮領域（サイドギャザー）を有している。サイド弾性部材６４は、図示例のように、ギャザーシート６２の接合部分のうち接合始端近傍の幅方向ＷＤ外側において、ギャザーシート６２と液不透過性シート２１との間に設けるほか、サイドフラップＳＦにおける液不透過性シート２１と外装シート２５との間に設けることもできる。サイド弾性部材６４は、図示例のように各側に１本のみ設ける他、各側に複数本設けることもできる。サイド弾性部材６４としては、ギャザー弾性部材６３と同様の素材を使用することができる。

【0034】

サイド弾性部材６４は伸縮領域のみに存在していてもよいし、伸縮領域よりも前側、後側又はその両側にわたり存在していてもよい。後者の場合、伸縮領域以外は、サイド弾性部材６４が一か所又は多数個所で細かく切断されていたり、サイド弾性部材６４を挟むシートに固定されていなかったり、あるいはその両方であったりすることにより、非伸縮領域（実質的には、弾性部材を設けないことに等しい）とされる。伸縮領域の前後方向ＬＤの範囲は適宜定めることができるが、少なくとも股間部Ｍを含むことが望ましく、吸収体２３が括れ部２３ｎを有する場合にはその前後端部とほぼ同じ前後位置まで、前後方向ＬＤの両側に延びていることが好ましい。

【0035】

（粘着剤層）
図２、図３及び図５に示すように、パッドタイプ使い捨ておむつ２００の裏面、つまり図示例では外装シート２５の裏面には、粘着剤層３０が設けられている。この粘着剤層３０を有する領域のうち、股間部Ｍに位置する領域が第１固定領域Ａ１であり、この第１固定領域Ａ１よりも前側及び後側に位置する領域が第２固定領域Ａ２である。粘着剤層３０は、図示例のように、剥離シート３１により剥離可能に被覆しておき、使用時に剥離シート３１を剥離して粘着剤層３０を露出させるのが望ましい。

【0036】

図示例では、第１固定領域Ａ１及び第２固定領域Ａ２が隙間なく連続するように、粘着剤層３０を前後方向ＬＤに沿って連続的に設けているが、第１固定領域Ａ１及び第２固定領域Ａ２が前後方向ＬＤに離間するように、粘着剤層３０を前後方向ＬＤに間欠的に設けてもよい。したがって、第１固定領域Ａ１の前後方向ＬＤの寸法は、股間部Ｍの前後方向ＬＤの寸法の５５～１００％とすることができる。また、股間部Ｍの前側に位置する第２固定領域Ａ２の前後方向ＬＤの寸法は、前側部分Ｆ１の前後方向ＬＤの寸法の７０～１００％とすることができ、股間部Ｍの後側に位置する第２固定領域Ａ２の前後方向ＬＤの寸法は、後側部分Ｂ１の前後方向ＬＤの寸法の７０～１００％とすることができる。

【0037】

粘着剤層３０は、後述する目印４１，４２と重ならないことが好ましく、特に後述する左右一対の目印４１，４２の間に収まっていることが望ましいが、後述する目印４１，４２と一部重なっていてもよい。

【0038】

粘着剤層３０はエンドフラップＥＦにも設けられていることが好ましく、特に図示例のように製品の前端から後端まで連続的に延びていることが好ましいが、粘着剤層３０の全体が吸収体２３と厚み方向に重なる領域内に収まるような寸法及び配置となっていてもよい。

【0039】

（目印）
特徴的には、図７に示すように、製品の前端部及び後端部に、前後方向ＬＤの位置を表す左右一対の目印４１，４２が、製品の裏側から視認可能なように設けられており、これら一対の目印４１，４２は、互いに幅方向ＷＤに離間しているとともに、製品の幅方向ＷＤの中央を通る中心線１０２に関して線対称（以下、単に左右対称ともいう）をなしている。図６に示すように本パッドタイプ使い捨おむつを下着１００に装着する際、図９に示すように、おむつの股間部Ｍ（通常、前後方向ＬＤの中央）を下着１００の股間部Ｍに合わせて、おむつの股間部Ｍに位置する第１固定領域Ａ１をその裏面の粘着剤層３０により下着１００の内面に固定した後、おむつの前後少なくとも一方の端部に設けられた目印４１，４２を使用して、第２固定領域Ａ２の位置を確認することができる。具体的には、図１０に示すように、第２固定領域Ａ２を下着１００の内面に合わせ、おむつの前後少なくとも一方の端部が下着１００のウエスト開口の縁１１０よりはみ出た状態にする。そしてこのはみ出た部分２１０を下着１００を基準として視認し、例えば、図１０に示す状態と異なり、右側に見える目印４１の数又は見える部分の形状と、左側に見える目印４２の数又は見える部分の形状が異なる場合、第２固定領域Ａ２は傾斜していることになる。また、左右両側に見える目印４１，４２の数が同じでも、左右の目印４１，４２の間に位置する部分の幅方向ＷＤの中央が下着１００の幅方向ＷＤの中心線１０２からずれている場合には、第２固定領域Ａ２は傾斜していないが、幅方向ＷＤの位置がずれていることになる。よって、これらの場合、一対の目印４１，４２の見え具合が左右対称となるように、第２固定領域Ａ２の位置を調整する。この位置調整の際、第２固定領域Ａ２の粘着剤層３０が既に粘着していた場合には、これを剥がして位置を調整してから付け直す。この位置調整は必要に応じて繰り返すことができる。このように、おむつの端部に設けられた目印４１，４２を使用することにより、より容易に、下着１００に対して第２固定領域Ａ２を適切な位置（図１０の状態）に固定することができる。

【0040】

目印４１，４２は、下着１００のウエスト開口の縁１１０よりはみ出た部分２１０の前後方向ＬＤの位置を表しうる限りその形状は特に限定されず、円形、三角形、四角形、星形、矢印形、又は文字、絵等、位置を表示しうるものから適宜選択することができる。目印４１，４２は左右各側に複数（ただし、左右対称である必要があるため、左右同数）設けることができる。図７に示す例では、星形の目印４１ａ，４２ａと、楕円形の目印４１ｂ，４２ｂとが前後方向ＬＤに交互かつ所定の間隔で繰り返すように並んでおり、図８に示す例では、角丸横長長方形の目印４１ｃ，４２ｃ三つおきに１つの星形の目印４１ａ，４２ａが並ぶように、規則的な間隔で目印４１，４２が前後方向ＬＤに並んでいる。図示例では、製品の前端部及び後端部だけでなく、それらの間の部分にも一対の目印４１，４２が設けられているが、製品の前端部及び後端部以外の部分には一対の目印４１，４２を設けなくてもよい。

【0041】

目印４１，４２は印刷により設けることができるほか、エンボス加工等の形状加工により設けることもでき、両者を組み合わせて設けることもできる。目印４１，４２は、パッドタイプ使い捨ておむつ２００の裏側から視認可能である限り、どの既存部材に設けてもよく、また専用の部材を追加してもよい。例えば、目印４１，４２は液不透過性シート２１の裏面に印刷し、この目印４１，４２が外装シート２５を通して透けて視認できるようにしてもよい。また、液不透過性シート２１と外装シート２５との間に目印４１，４２を印刷した紙等からなる印刷シートを介在させ、この印刷シートの目印４１，４２が外装シート２５を通して透けて視認できるようにしてもよい。さらに、外装シート２５の裏面に目印４１，４２を直接に印刷してもよい。

【0042】

個々の目印４１，４２の寸法は適宜定めることができるが、局所的な部位を表示するものであること、及び通常の使用における視認性を考慮すると、前後方向ＬＤの寸法（全長）Ｌ４は２～２０ｍｍであることが好ましく、幅方向ＷＤの寸法（全幅）Ｗ４は５～２０ｍｍであることが好ましい。また、目印４１，４２を前後方向ＬＤに間隔を空けて繰り返し設ける場合には、その中心間隔Ｄ４は適宜定めることができ、例えば２～１５ｍｍとすることができる。なお、この目印４１，４２の前後方向ＬＤの中心間隔Ｄ４は、規則的であれば一定でなくてもよく、例えば図１０に示すように複数種の目印４１，４２を混在させる場合には、異なる目印の前後方向ＬＤの中心間隔Ｄ４と、同一の目印の前後方向ＬＤの中心間隔Ｄ４とが異なっていてもよい。

【0043】

特に、図示例のように、左右一対の目印４１，４２は、それぞれ前後方向ＬＤに規則的な間隔で並ぶ目盛をなしていると、下着１００のウエスト開口の縁１１０の位置を左右各側の目盛としての目印４１，４２で確認することにより、下着１００を基準として一対の目印４１，４２の見え具合が左右対称であるか否かをより容易に視認できるため好ましい。

【0044】

さらに、図示例のように、左右一対の目印４１，４２とともに、前後方向ＬＤに沿って直線的に連続する帯状又は線状の縦基準目印５０が、少なくとも下着１００のウエスト開口からはみ出す部分２１０（好ましくは製品全長）に設けられていると、製品の前後方向ＬＤをより直感的に把握できるため好ましい。この場合に、図示例のように、帯状の縦基準目印５０の中に、前後方向ＬＤの位置を表す目印４１，４２が設けられていると、両方の目印４１，４２を一度に視認できるとともに、前後方向ＬＤの位置を表す目印４１，４２に目線を向けやすいため特に好ましい。

【0045】

特に、縦基準目印５０の幅方向の寸法５０ｗは適宜定めることができるが、通常の場合７～３０ｍｍ程度であることが好ましい。

【0046】

第２固定領域Ａ２の位置確認を正確に行うには、一対の目印４１，４２は互いに幅方向ＷＤの離間距離が大きい方が好ましい。しかし、図示例のように、サイドフラップＳＦを有するパッドタイプ使い捨ておむつ２００の場合、サイドフラップＳＦが変形しやすいため、サイドフラップＳＦに一対の目印４１，４２を設けると、目印４１，４２の配置部分が曲がったりして、左右の目印４１，４２の対称性を正確に視認しにくくなるおそれがある。これに対して、吸収体２３を有する領域は剛性が相対的に高く変形しにくい部分であるため、図示例のように一対の目印４１，４２が、吸収体２３を有する領域の幅方向ＷＤの両端部と対応する位置（吸収体２３の両端部と重なる部分や、その前側、その後側）にそれぞれ設けられていると、目印４１，４２の配置部分が曲がりにくく、左右の目印４１，４２の位置の対称性を正確に視認しやすくなる。

【0047】

おむつ２００における下着１００のウエスト開口の縁１１０よりはみ出た部分２１０は、そのままにしておくと、装着感や通気性を低下させるおそれがあるため、股間側に折り返すことが望ましいが、折り返すだけでは元に戻るおそれがある。したがって、図示例のように、パッドタイプ使い捨ておむつ２００の前端部及び後端部の少なくとも一方の裏面に粘着剤層３０を有しているのは好ましい。これにより、おむつにおける下着１００のウエスト開口の縁１１０よりはみ出た部分２１０を股間側に折り返すだけでなく、この折り返し部分を図１１に示すように粘着剤層３０を介して下着１００の外面に固定することができる。

【0048】

おむつにおける下着１００のウエスト開口の縁１１０よりはみ出た部分２１０を折り返す場合、図１２及び図１３に示すように、当該部分を裏側に折り返すための、幅方向ＷＤに沿って連続する易折り曲げ線２１１が前後方向ＬＤに間隔を空けて複数設けられていると、作業が容易になるため好ましい。易折り曲げ線２１１は、その存在により裏側への折り返しが容易になるように加工された部分であり、対象部分の裏面に凹部が形成されるとともに表面に凸部又は凹部が形成されたエンボス加工線や、ミシン目等を例示することができる。易折り曲げ線２１１は、図示例のようにエンドフラップＥＦに設けることができるほか、これとともに又はこれに代えて、吸収体２３を有する領域に設けることもできる（図示略）。

【0049】

＜明細書中の用語の説明＞
明細書中の以下の用語は、明細書中に特に記載が無い限り、以下の意味を有するものである。

【0050】

・「前後方向」とは図中に符号ＬＤで示す方向（縦方向）を意味し、「幅方向」とは図中にＷＤで示す方向（左右方向）を意味し、前後方向と幅方向とは直交するものである。

【0051】

・「表側」とは着用した際に着用者の肌に近い方を意味し、「裏側」とは着用した際に着用者の肌から遠い方を意味する。

【0052】

・「表面」とは部材の、着用した際に着用者の肌に近い方の面を意味し、「裏面」とは着用した際に着用者の肌から遠い方の面を意味する。

【0053】

・「伸長率」は、自然長を１００％としたときの値を意味する。例えば、伸長率が２００％とは、伸長倍率が２倍であることと同義である。

【0054】

・「ゲル強度」は次のようにして測定されるものである。人工尿（尿素：２ｗｔ％、塩化ナトリウム：０．８ｗｔ％、塩化カルシウム二水和物：０．０３ｗｔ％、硫酸マグネシウム七水和物：０．０８ｗｔ％、及びイオン交換水：９７．０９ｗｔ％を混合したもの）４９．０ｇに、高吸収性ポリマーを１．０ｇ加え、スターラーで攪拌させる。生成したゲルを４０℃×６０％ＲＨの恒温恒湿槽内に３時間放置したあと常温にもどし、カードメーター（Ｉ．ｔｅｃｈｎｏ Ｅｎｇｉｎｅｅｒｉｎｇ社製：Ｃｕｒｄｍｅｔｅｒ－ＭＡＸ ＭＥ－５００）でゲル強度を測定する。

【0055】

・「目付け」は次のようにして測定されるものである。試料又は試験片を予備乾燥した後、標準状態（試験場所は、温度２３±１℃、相対湿度５０±２％）の試験室又は装置内に放置し、恒量になった状態にする。予備乾燥は、試料又は試験片を温度１００℃の環境で恒量にすることをいう。なお、公定水分率が０．０％の繊維については、予備乾燥を行わなくてもよい。恒量になった状態の試験片から、試料採取用の型板(１００ｍｍ×１００ｍｍ)を使用し、１００ｍｍ×１００ｍｍの寸法の試料を切り取る。試料の重量を測定し、１００倍して１平米あたりの重さを算出し、目付けとする。

【0056】

・「厚み」は、自動厚み測定器（ＫＥＳ－Ｇ５ ハンディ圧縮計測プログラム）を用い、荷重：０．０９８Ｎ／ｃｍ²、及び加圧面積：２ｃｍ²の条件下で自動測定する。

【0057】

・「展開状態」とは、収縮（弾性部材による収縮等、あらゆる収縮を含む）や弛み無く平坦に展開した状態を意味する。

【0058】

・各部の寸法は、特に記載が無い限り、自然長状態ではなく展開状態における寸法を意味する。

【0059】

・試験や測定における環境条件についての記載が無い場合、その試験や測定は、標準状態（試験場所は、温度２３±１℃、相対湿度５０±２％）の試験室又は装置内で行うものとする。

【産業上の利用可能性】

【0060】

本発明は、裏面に粘着剤層を有するパッドタイプ使い捨ておむつに利用可能である。

【符号の説明】

【0061】

Ａ１…第１固定領域、Ａ２…第２固定領域、Ｂ１…後側部分、Ｆ１…前側部分、ＬＤ…前後方向、Ｍ…股間部、ＥＦ…エンドフラップ、ＳＦ…サイドフラップ、ＷＤ…幅方向、２１…液不透過性シート、２２…トップシート、２３…吸収体、２３ｎ…括れ部、２５…外装シート、３０…粘着剤層、３１…剥離シート、４１，４２…目印、５０…縦基準目印、６０…起き上がりギャザー、６４…サイド弾性部材、１００…下着、１０２…中心線、１１０…ウエスト開口の縁、２００…パッドタイプ使い捨ておむつ、２１０…はみ出た部分、２１１…易折り曲げ線。

【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】

【図8】

【図9】

【図10】

【図11】

【図12】

【図13】