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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-19
(45)【発行日】2023-09-27
(54)【発明の名称】基礎構造の施工方法および基礎構造
(51)【国際特許分類】
   E02D 27/42 20060101AFI20230920BHJP
   E02D 7/00 20060101ALI20230920BHJP
   E02D 13/04 20060101ALI20230920BHJP
【FI】
E02D27/42 Z
E02D7/00 Z
E02D13/04
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020160833
(22)【出願日】2020-09-25
(65)【公開番号】P2022053933
(43)【公開日】2022-04-06
【審査請求日】2022-11-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】橋本 敦史
(72)【発明者】
【氏名】清水 正巳
(72)【発明者】
【氏名】中村 広規
(72)【発明者】
【氏名】小口 弘樹
【審査官】石川 信也
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-152735(JP,A)
【文献】特開2011-144532(JP,A)
【文献】特開2017-201101(JP,A)
【文献】特開2003-293938(JP,A)
【文献】実開平06-046040(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 27/00-27/52
E02D 7/00
E02D 13/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
風車と前記風車を支持する支柱とを有する水上施設を支持する基礎構造の施工方法であって、
前記支柱の直下の水底地盤に一本の直杭を鉛直に打設する直杭打設工程と、
前記直杭の上部の水面以上の高さ位置にテンプレート構造体を設置して、前記直杭によって前記テンプレート構造体を支持するテンプレート設置工程と、
前記直杭に対して傾斜した複数本の斜杭を水底地盤に打設する斜杭打設工程と、
前記斜杭の上部を前記テンプレート構造体に固定する斜杭固定工程と、を備えており、
前記斜杭打設工程では、前記テンプレート構造体に形成されたガイド部材によって前記斜杭の打設方向を規制し、
前記斜杭固定工程では、前記ガイド部材に前記斜杭を固定することを特徴とする、基礎構造の施工方法。
【請求項2】
前記ガイド部材は、前記斜杭を挿通可能な外挿管からなり、
前記斜杭打設工程では、前記ガイド部材に前記斜杭を挿通し、
前記斜杭固定工程では、前記斜杭の外面と前記ガイド部材の内面との隙間に固化材を充填することを特徴とする、請求項1に記載の基礎構造の施工方法。
【請求項3】
水上施設を支持する基礎構造の施工方法であって、
前記水上施設の直下の水底地盤に直杭を鉛直に打設する直杭打設工程と、
前記直杭の上部の水面以上の高さ位置にテンプレート構造体を設置するテンプレート設置工程と、
前記直杭に対して傾斜した複数本の斜杭を水底地盤に打設する斜杭打設工程と、
前記斜杭の上部を前記テンプレート構造体に固定する斜杭固定工程と、を備えており、
前記斜杭打設工程では、前記テンプレート構造体に形成された一対の半割管を組み合わせてなる筒状部材からなるガイド部材の一方の前記半割管を取り外した状態で、他方の前記半割管に沿って前記斜杭を打設することによって前記斜杭の打設方向を規制し、
前記斜杭固定工程では、前記半割管同士を組み合わせた状態で、前記ガイド部材に前記斜杭を固定して、前記斜杭の上部と前記テンプレート構造体とを固定することを特徴とする、基礎構造の施工方法。
【請求項4】
水上施設を支持するための基礎構造であって、
前記水上施設の直下に鉛直に設けられた一本の直杭と、
前記直杭の周囲に前記直杭に対して傾斜するように設けられた複数本の斜杭と、
前記直杭の上部および前記斜杭の上部に固定されたテンプレート構造体と、を備える基礎構造であって、
前記水上施設は、風車と、前記風車を支持する支柱とを有しており、
前記直杭は、前記支柱の中心軸上の延長線と一致するように設けられていることを特徴とする、基礎構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水上施設用の基礎構造の施工方法および基礎構造に関する。
【背景技術】
【0002】
温室効果ガスの排出量削減を目的として、再生可能エネルギーの需要が高まっている。再生可能エネルギーには、例えば、太陽光発電、風力発電、水力発電、地熱発電、バイオマス等がある。風力発電施設は、風車による騒音や振動が生活環境に影響を及ぼす場合があり、居住空間等への影響を十分に考慮する必要があることから、居住区域から離れた山間部などに設置されることが多い。しかしながら、大型の風車を設置する用地を山間部に確保することは難しく、また、風力発電施設までの交通路の確保や、送電線等の設置等も困難であった。
そのため、風力発電施設を海上(水上)に設置することが検討されている。
【0003】
風力発電施設を水上に設置する場合には、風車の基礎構造を水上に露出させた状態で構築する必要がある。このような基礎構造の多くは、水底に設置された杭により支持される。
水上風力発電施設の基礎構造として、例えば、特許文献1には、水底に打ち込まれた一本の鋼管杭からなるものが開示されている。鋼管杭は、大口径の鋼管であり、鋼管杭の上端部の杭径は、風車を支持するタワーの基部と同程度となっている。
また、特許文献2には、複数の斜杭と、斜杭の頭部を連結する連結部材とを備える基礎構造が開示されている。特許文献2の基礎構造は、複数本の仮設杭と仮設杭の頭部を保持する枠体とを備える仮支承台を形成し、この仮支承台に設けられたテンプレートを利用して斜杭を水底に打ち込むことにより形成する。
【0004】
特許文献1の基礎構造では、水深や風力発電施設の規模が大きくなるにつれて杭の構造も大規模になる。大規模な杭は重量が大きいため、杭の施工に大規模な台船(SEP船等)を使用する必要があるが、大規模な台船の隻数は限られており、台船を確保できないおそれもある。
また、特許文献2の基礎構造は、仮設の仮支承台の施工や撤去に手間がかかる。また、水深が大きい場合には、仮支承台の規模も大きくなり、コストも高くなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2003-293938号公報
【文献】特開昭60-3319号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、大規模な台船を要することなく既存の起重機船等を使用しての施工が可能で、仮支承台を要することなく施工することが可能な基礎構造の施工方法および基礎構造を提案することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するための本発明の基礎構造の施工方法は、風車と前記風車を支持する支柱とを有する水上施設を支持する基礎構造の施工方法であって、前記支柱の直下の水底地盤に一本の直杭を鉛直に打設する直杭打設工程と、前記直杭の上部の水面以上の高さ位置にテンプレート構造体を設置して、前記直杭によって前記テンプレート構造体を支持するテンプレート設置工程と、前記直杭に対して傾斜した斜杭を水底地盤に打設する斜杭打設工程と、前記斜杭の上部を前記テンプレート構造体に固定する斜杭固定工程とを備えている。前記斜杭打設工程では前記テンプレート構造体に形成されたガイド部材によって前記斜杭の打設方向を規制し、前記斜杭固定工程では前記ガイド部材に前記斜杭を固定する。
前記基礎構造の施工方法により構築される基礎構造は、前記水上施設の直下に鉛直に設けられた直杭と、前記直杭の周囲に前記直杭に対して傾斜するように設けられた複数本の斜杭と、前記直杭の上部および前記斜杭の上部に固定されたテンプレート構造体とを備えている。
【0008】
かかる基礎構造の施工方法によれば、支持杭としての直杭や斜杭の1本あたりの重量を小さくすることができるため、大型の台船(SEP船)を使用しなくても、既存の起重機船等を使用して基礎構造を構築できる。また、直杭によりテンプレート構造体を支持するので、仮支承台を必要としない。このため、仮支承台の設置および撤去に要する手間や費用を削減できる。
なお、前記ガイド部材が前記斜杭を挿通可能な外挿管である場合には、前記斜杭打設工程において前記ガイド部材に前記斜杭を挿通し、前記斜杭固定工程において前記斜杭の外面と前記テンプレート部材の内面との隙間に固化材を充填すればよい。
また、前記ガイド部材が一対の半割管を組み合わせてなる筒状部材である場合には、前記斜杭打設工程において一方の前記半割管を取り外した状態で他方の前記半割管に沿って前記斜杭を打設し、前記斜杭固定工程において前記半割管同士を組み合わせた状態で前記斜杭の上部と前記ガイド部材とを固定すればよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明の基礎構造の施工方法および基礎構造によれば、大規模な台船を要することなく既存の起重機船を使用しての施工が可能で、仮支承台を要することなく施工することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施形態に係る水上施設を示す正面図である。
図2】本発明の実施形態に係る基礎構造を示す正面図である。
図3】本発明の実施形態に係る基礎構造の一部を示す平面図である。
図4】本発明の実施形態に係る基礎構造の施工方法のフローチャートである。
図5】第一実施形態の基礎構造の施工方法の各工程を示す正面図であって、(a)は直杭打設工程、(b)はテンプレート設置工程である。
図6】(a)~(c)本実施形態の基礎構造の施工方法の斜杭打設工程を示す正面図である。
図7】第一実施形態の斜杭打設工程を示す拡大断面図である。
図8】第一実施形態の斜杭固定工程を示す拡大断面図である。
図9】第二実施形態の基礎構造の施工方法を示す拡大断面図であって、(a)はテンプレート構造体の設置状況、(b)は斜杭の打設状況である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<第一実施形態>
第一実施形態では、洋上風力発電施設(水上施設)1の基礎構造2について説明する。図1は、洋上風力発電施設1の正面図である。図1に示すように、洋上風力発電施設1は、風車11と、風車11を支持する支柱12とを有していて、基礎構造2を介して水面よりも高い位置に設けられている。風車11は、支柱12の上端部に回転可能に設けられている。支柱12は、基礎構造2上に立設されている。
基礎構造2は、水底地盤から立設された複数本の杭(直杭3および斜杭4)と、杭の頭部に固定されたテンプレート構造体5とを備えている。図2に基礎構造2の正面図、図3に基礎構造2の平面図を示す。本実施形態の基礎構造2は、図2および図3に示すように、一本の直杭3と、四本の斜杭4とを備えている。
【0012】
直杭3は、洋上風力発電施設1の支柱12の直下に鉛直に設けられている。直杭3は、水底地盤Gに、十分な根入れを確保した状態で水中に立設されている。本実施形態の直杭3は、鋼管により構成されている。直杭3の中心軸は、洋上風力発電施設1の支柱12の中心軸の延長線と一致している。直杭3の頭部には、テンプレート構造体5が固定されている。直杭3は、テンプレート構造体5を単独(一本)で支持することが可能な強度(杭径)を有している。すなわち、直杭3を構成する鋼管(材料)の寸法は、洋上風力発電施設1の形状寸法、波や風により予想される作用応力、テンプレート構造体5を頭部に固定した際に自立可能な強度等に応じて適宜決定する。なお、基礎構造2は、直杭3の中心軸が洋上風力発電施設1の支柱12の中心軸の延長線と一致していない場合であっても、直杭5で鉛直力を負担し、斜杭4で水平力を負担できる。そのため、直杭3の中心軸と洋上風力発電施設1の支柱12の中心軸の延長線は、一致していなくてもよい。
【0013】
斜杭4は、図2および図3に示すように、直杭3の周囲に設けられている。斜杭4は、直杭3から離れた位置において十分な根入れを確保した状態で水底地盤Gに打設されている。斜杭4は、上に向かうにしたがって直杭3に近付くように、直杭3に対して傾斜している。本実施形態では、四本の斜杭4が、直杭3を囲うように配設されている。周方向に隣り合う斜杭4同士の間隔は等間隔である。また、各斜杭4と直杭3との間隔は同等である。また、本実施形態の斜杭4は、直杭3よりも小さい外径の鋼管からなる。斜杭4を構成する鋼管の寸法は、直杭3とともに洋上風力発電施設1を支持することが可能な寸法とする。すなわち、予想される波や風による影響も考慮した上で、斜杭4の寸法を決定する。
【0014】
テンプレート構造体5は、直杭3の上部(頭部)および斜杭4の上部(頭部)に固定されている。テンプレート構造体5は、四角錐台状の本体部51と、本体部51の各角部に設けられたガイド部材52とを備えている。本体部51は、上下に配設された一対の枠状部材53と、上下の枠状部材53を連結するX字状のブレース材54とを備えている。上側の枠状部材53は、下側の枠状部材53よりも小さく、ブレース材54は上に向かうにしたがって中央側に近付くように傾斜している。本体部51の中央部には、直杭3の頭部に固定するための固定部55が設けられている。
ガイド部材52は、斜杭4を挿通可能な外挿管からなる。外挿管は、斜杭4の外径よりも大きな内径を有した管材(鋼管など)からなる。テンプレート構造体5は、ガイド部材52に斜杭4の頭部を挿入した状態で、斜杭4に固定されている。
【0015】
次に、基礎構造2の施工方法について説明する。図4は、基礎構造2の施工方法の手順を示すフローチャートである。基礎構造2の施工方法は、図4に示すように、直杭打設工程S1,テンプレート設置工程S2,斜杭打設工程S3および斜杭固定工程S4を備えている。図5(a)に直杭打設工程S1、図5(b)にテンプレート設置工程S2を示す。
直杭3および斜杭4を構成する鋼管は、基礎構造2の施工個所近傍まで杭打船71により運搬する。
直杭打設工程S1は、図5(a)に示すように、水底地盤Gに直杭3を打設する工程である。直杭3は、洋上風力発電施設1の設置予定箇所の直下において、鉛直になるように打設する。具体的には、杭打船71から延びるガイド72に沿って直杭3を打設する。本実施形態では、油圧ハンマー73により直杭3の頭部を打撃することにより、直杭3を所定の根入れを確保した状態で水底地盤Gに打設する。このとき、直杭3の頭部は、水面WLから突出させる。
【0016】
テンプレート設置工程S2は、図5(b)に示すように、直杭3の頭部にテンプレート構造体5を設置する工程である。テンプレート構造体5は、水面WL以上の高さ位置に設ける。テンプレート構造体5は、直杭3のみによって支持する。すなわち、直杭3は、テンプレート構造体5を上部に固定した状態で自立している。直杭3のテンプレート構造体5への固定は、テンプレート構造体5に設けられた固定部55に直杭3の上端部を挿入した状態でテンプレート構造体5を仮設置した後に、直杭3と固定部55との隙間に固化材を充填することにより行う。
【0017】
斜杭打設工程S3は、複数本の斜杭4を水底地盤に打設する工程である。図6に斜杭打設工程S3の作業状況を示す。斜杭4は、図6(a)~(c)に示すように、直杭3に対して傾斜した状態で打設する。斜杭4を打設する際には、テンプレート構造体5に形成されたガイド部材52によって斜杭4の打設方向を規制する。図7に、斜杭打設工程S3の拡大断面図を示す。図7に示すように、斜杭4は、ガイド部材52に斜杭4を挿通することで、ガイド部材52をガイドとして、水底地盤Gに打設する。
具体的には、図6(a)に示すように、斜杭4をクレーンで吊り込みつつ、ガイド部材52に挿通させる。次に、図6(b)に示すように、バイブロハンマー74により斜杭4の角度を調整しながら打撃する。斜杭4の十分な根入れが取れた後、図6(c)に示すように、油圧ハンマー73により斜杭4の頭部を打撃する。
同様に、残りの三本の斜杭4を打設する。
【0018】
斜杭固定工程S4は、斜杭4の上部をテンプレート構造体5に固定する工程である。図8に斜杭固定工程S4の断面図を示す。斜杭4のテンプレート構造体5への固定は、図8に示すように、斜杭4の外面とガイド部材52の内面との隙間に固化材(例えばグラウト)6を充填することにより行う。
なお、斜杭4とガイド部材52との隙間への固化材6の充填は、直杭3をテンプレート構造体5に仮固定した状態で斜杭4を打設した後に、直杭3と固定部55との隙間への固化材の充填と同時に行っても良い。
直杭3および斜杭4のサイズは、水上施設1や水底地盤Gなどにより異なるが、例えば、10MW級水上施設を設置する場合、直杭3は杭径3000mm、板厚45mmの材質がSKK490の鋼管杭と、斜杭4は直径1800mm、板厚27mmの材質がSKK490の鋼管杭が使用される。
【0019】
本実施形態の基礎構造2の施工方法によれば、支持杭としての直杭3や斜杭4の1本あたりの重量を小さくすることができるため、大型の台船(SEP船)を使用しなくても、既存の起重機船や杭打船等を使用して基礎構造2を構築できる。
また、一本の直杭3によりテンプレート構造体5を支持するので、仮支承台を必要としない。このため、仮支承台等の大掛かりな仮設構造物の設置および撤去に要する手間や費用を削減できる。
また、テンプレート構造体5のガイド部材52が斜杭4を挿通可能な外挿管であるため、ガイド部材52に斜杭4を挿通することで、斜杭4を所望の角度で打設することができる。また、斜杭4の頭部をテンプレート構造体5に固定する際は、斜杭4の外面とガイド部材52の内面との隙間に固化材を充填すればいいため、作業性に優れている。
また、本実施形態の基礎構造2は、一本の直杭3と複数本(四本)の斜杭4により支持するため、各杭の軽量化が可能となり、材料の輸送の手間および施工の手間の低減化を図ることができる。また、輸送や施工に使用する作業船の小型化を図ることが可能となり、ひいては費用の低減化も可能となる。
また、波や風に起因する水平力を、直杭3に作用する曲げモーメントと複数本の斜杭4の軸力により分散させることで各杭の負担を低減することができる。
【0020】
<第二実施形態>
第二実施形態では、第一実施形態と同様に、洋上風力発電施設(水上施設)1の基礎構造2について説明する(図1参照)。
基礎構造2は、水底地盤から立設された複数本の杭(直杭3および斜杭4)と杭の頭部に固定されたテンプレート構造体5とを備えている(図2参照)。図9(a)、(b)に第二実施形態の基礎構造の施工方法を示す。第二実施形態の基礎構造2は、図9(a)および(b)に示すように、ガイド部材52が、一対の半割管により構成されている点で、ガイド部材52が外挿管からなる第一実施形態の基礎構造2と異なっている。その他の基礎構造2の詳細は、第一実施形態で示した内容と同様なため、詳細な説明は省略する。
基礎構造2の施工方法は、直杭打設工程S1,テンプレート設置工程S2,斜杭打設工程S3および斜杭固定工程S4を備えている(図4参照)。直杭打設工程S1およびテンプレート設置工程S2の詳細は、第一実施形態で示した内容と同様なため、詳細な説明は省略する。
【0021】
斜杭打設工程S3では、複数本の斜杭4を水底地盤に打設する。本実施形態の斜杭4を打設する際には、図9(b)に示すように、一方の半割管57を取り外した状態で、他方の半割管56に沿って斜杭4を打設する。すなわち、斜杭4は、半割管56の内面を摺動させることで、半割管56(ガイド部材52)をガイドとして、所定の角度で水底地盤Gに打設する。斜杭4は、まず、クレーンでつり込みつつ、半割管56に添接させる。次に、バイブロハンマー74により斜杭4の十分な根入れが確保できるまで打撃する。斜杭4の根入れが確保できたら、油圧ハンマー73により斜杭4の頭部を打撃する。
【0022】
斜杭固定工程S4では、斜杭4の上部をテンプレート構造体5に固定する。斜杭4のテンプレート構造体5への固定は、一方の半割管57と他方の半割管56とを組み合わせて管状のガイド部材52により斜杭4の頭部を覆った後、斜杭4の外面とガイド部材52の内面との隙間に固化材(例えばグラウト)6を充填することにより行う。
【0023】
本実施形態の基礎構造2の施工方法によれば、ガイド部材52に斜杭4を挿通させる必要がなく、半割管56に沿わせることで、斜杭4を所定の角度で打設することができる。そのため、水面WLから支持層までの距離が大きく、斜杭4の長さが長い場合であっても、施工しやすい。すなわち、斜杭4の上端を吊った状態で施工する場合において、初期の段階から斜杭4の中間部をガイド部材52に沿わせることができるため、斜杭4の下端がガイド部材52よりも高くなるように吊り上げる必要が無い。
この他の第二実施形態の基礎構造の施工方法及び基礎構造2の作用効果は、第一実施形態で示した内容と同様なため、詳細な説明は省略する。
【0024】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、前述の実施形態に限られず、前記の各構成要素については本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更が可能である。
例えば、基礎構造2を使用する水上施設は洋上風力発電施設に限定されるものではなくあらゆる水上施設の基礎構造として使用することができる。
直杭3の本数は一本に限定されるものではなく、複数本であってもよい。
また、斜杭4の本数は限定されるものではなく、例えば三本であってもよいし、五本以上であってもよい。斜杭4の本数が3本の場合は、テンプレート構造体5の本体部51は、三角錐台状となり、斜杭4の本数が5本の場合は、テンプレート構造体5の本体部51は、五角錐台状となる。また、直杭3および斜杭4を構成する材料は鋼管に限定されるものではなく、例えば、PC部材や鋼材であってもよい。
【0025】
また、前記実施形態では、斜杭4の施工時に、斜杭4の上端部を吊持する場合について説明したが、斜杭4の吊る位置は限定されるものではなく、斜杭4の中間部において吊り上げてもよい。
また、前記実施形態では、直杭3の施工に油圧ハンマー、斜杭4の施工にバイブロハンマー74と油圧ハンマー73とを使用する場合について説明したが、各杭の打設に使用する装置は限定されるものではなく、例えば、ドロップハンマーを使用してもよい。また、水底地盤Gの地質等によっては、斜杭4の施工に油圧ハンマー73またはバイブロハンマー74のいずれか一方のみを使用してもよい。
【0026】
また、前記実施形態では、ガイド部材52により斜杭4の頭部を覆い、ガイド部材52と斜杭4との隙間に固化材を充填することでテンプレート構造体5と斜杭4とを固定するものとしたが、斜杭4の固定方法は限定されるものではない。例えば、ガイド部材52が一対の半割管56,57により構成されている場合には、ガイド部材52の外径と斜杭4と同等とし、斜杭4の上端面にガイド部材52の下端面を当接させた状態で、溶接や治具等を介して固定してもよい。
【符号の説明】
【0027】
1 洋上風力発電施設(水上施設)
2 基礎構造
3 直杭
4 斜杭
5 テンプレート構造体
56,57 半割管
6 固化材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9