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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-19
(45)【発行日】2023-09-27
(54)【発明の名称】油性化粧料
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/39 20060101AFI20230920BHJP
   A61K 8/02 20060101ALI20230920BHJP
   A61K 8/34 20060101ALI20230920BHJP
   A61K 8/37 20060101ALI20230920BHJP
   A61K 8/49 20060101ALI20230920BHJP
   A61K 8/86 20060101ALI20230920BHJP
   A61Q 17/04 20060101ALI20230920BHJP
【FI】
A61K8/39
A61K8/02
A61K8/34
A61K8/37
A61K8/49
A61K8/86
A61Q17/04
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020535909
(86)(22)【出願日】2019-08-09
(86)【国際出願番号】 JP2019031596
(87)【国際公開番号】W WO2020032242
(87)【国際公開日】2020-02-13
【審査請求日】2022-07-01
(31)【優先権主張番号】P 2018151678
(32)【優先日】2018-08-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019091903
(32)【優先日】2019-05-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001959
【氏名又は名称】株式会社 資生堂
(74)【代理人】
【識別番号】100149294
【弁理士】
【氏名又は名称】内田 直人
(72)【発明者】
【氏名】氏本 慧
(72)【発明者】
【氏名】長井 宏一
(72)【発明者】
【氏名】トゥアティ・マリアンヌ・彩香
(72)【発明者】
【氏名】永禮 由布子
(72)【発明者】
【氏名】八巻 悟史
【審査官】池田 周士郎
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/057676(WO,A1)
【文献】特開2018-062504(JP,A)
【文献】特開2006-052155(JP,A)
【文献】国際公開第2011/027710(WO,A1)
【文献】特開2009-132638(JP,A)
【文献】Shiseido,Sun Protection Lip Treatment,Mintel GNPD, [online],2005年10月,ID#:406984
【文献】Kose,Pure Bright Foundation,Mintel GNPD, [online],2003年04月,ID#:200747
【文献】Shiseido,Pressed Powder SPF15/PA++,Mintel GNPD, [online],2015年02月,ID#:2952765
【文献】Shiseido,UV Protective Lip Treatment 30,Mintel GNPD, [online],2017年08月,ID#:5005209
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)メトキシケイヒ酸エチルヘキシル、4-tert-ブチル-4’-メトキシジベンゾイルメタン、サリチル酸オクチル、ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン、オクトクリレン、ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル、ホモサレート、エチルヘキシルトリアゾンからなる群から選択される1種以上の紫外線防御剤と、
(B)水溶性かつIOBが5.0以下である多価アルコールから選択される1種以上と、PEG/PPG-9/2ジメチルエーテルとの組合せ
を含み、かつ、
水の含有量が5質量%以下である、油性化粧料。
【請求項2】
(A)紫外線防御剤が4-tert-ブチル-4’-メトキシジベンゾイルメタンを含む場合に、その配合量が(A)紫外線防御剤全量に対して10質量%以下である、請求項1に記載の油性化粧料。
【請求項3】
(B)価アルコールが、ポリアルキレングリコール、ブチレングリコール、ジプロピレングリコール、ジグリセリン、プロパンジオール、エリスリトール、キシリトール、メチルグルセス-10、ソルビトールから成る群から選択される1種以上であり、
前記ポリアルキレングリコールは下記式(II):
HO(RO)H (II)
(式中、ROは炭素原子数2~4のオキシアルキレン基を示し、pは3~500である)を満たす、請求項1又は2に記載の油性化粧料。
【請求項4】
(B)価アルコールが平均分子量150~23000のポリエチレングリコールである、請求項1~のいずれか一項に記載の油性化粧料。
【請求項5】
(B)成分の配合量が、油性化粧料全量に対して2.5質量%以上である、請求項1~のいずれか一項に記載の油性化粧料。
【請求項6】
固化剤をさらに含む、請求項1~のいずれか一項に記載の油性化粧料。
【請求項7】
非分離一相である、請求項1~のいずれか一項に記載の油性化粧料。
【請求項8】
透明である、請求項1~のいずれか一項に記載の油性化粧料。
【請求項9】
油性化粧料がジェル状である場合に、25℃における粘度が300mPa・s以上である、請求項1~のいずれか一項に記載の油性化粧料。
【請求項10】
油性化粧料が固形状である場合に、25℃における硬度が5N以上である、請求項1~のいずれか一項に記載の油性化粧料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、日焼け止め効果を有する油性化粧料に関する。さらに詳しくは、加熱により塗布直後よりも紫外線防御効果が向上するという従来にない特性を有する油性化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
日焼け止め効果を有する化粧料は、化粧料に配合された紫外線吸収剤や紫外線散乱剤の作用によって、当該化粧料を塗布した皮膚に到達する紫外線量を低下させることにより、皮膚への悪影響を抑制する効果がある。
【0003】
化粧料の紫外線防御効果の指標としては、サンプロテクション・ファクター(Sun Protection Factor:SPF)が最も広く知られており、紫外線防御効果がSPF値(例えば、「SPF30」等)として表示される。我が国においては、UVA領域の紫外線に関してPFA(Protection Factor of UVA)又はUVAPF(UVA Protection factor of product)が用いられ、製品のUVA防御効果の程度が、PFA又はUVAPFの値に基づくPA(Protection grade of UVA)分類(「PA++」等)で表示されている。米国では、UVAとUVBの防御効果のバランスを示す臨界波長(Critical Wavelength:CW)が用いられている。
【0004】
近年、紫外線による皮膚への悪影響を抑制するため、UVAからUVBに渡る広い波長領域で高い紫外線防御効果を発揮する化粧料が求められるようになっており、例えば、SPF50以上(50+)及びPA++++を訴求した日焼け止め製品が上市されるに至っている。
【0005】
日焼け止め製品による紫外線防御効果は、配合されている紫外線防御剤、すなわち紫外線吸収剤や紫外線散乱剤によって発揮されるが、紫外線吸収剤の中には光照射によって紫外線吸収能が低下(光劣化)するものがあり、また、紫外線吸収剤や紫外線散乱剤は水分と接触した際に皮膚表面から流出してしまうこともある。
【0006】
紫外線防御効果の光劣化を抑制するための工夫は多数提案されており(特許文献1)、また、耐水性に関しては、水分に接触しても紫外線防御効果が低下せず、逆に防御効果が向上するという革新的な性能を有する化粧料が開発されている(特許文献2)。
【0007】
一方、光や水分と同様に、熱による紫外線防御効果の低下も無視できない。一般に、皮膚に塗布された化粧料に熱が加わると、化粧料に含まれる紫外線吸収剤やその他の成分が劣化し、紫外線防御効果が低下してしまう。しかしながら、熱に関しては、例えば、化粧料を含む乳化化粧料の乳化安定性に対する熱の影響を検討した例は存在するが(特許文献3)、熱よる紫外線防御効果の変化については今日まで検討対象とされることはなく、熱による紫外線防御効果の低下抑制を目的とする化粧料はこれまでに提案されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】国際公開2017/057676号公報
【文献】国際公開2016/068300号公報
【文献】特許第4397286号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、紫外線防御効果を持つ化粧料を開発する研究過程において、使用環境下で加わる熱によって紫外線防御効果が低下せずに逆に向上するという現象を見出したことに基づき、熱によって紫外線防御効果が向上する従来にない革新的な特性を有する油性化粧料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者等は、前記の課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、紫外線防御剤と特定のアルキレンオキシド誘導体又は多価アルコールとを配合し、水分量を所定の範囲に制限することにより、前記目的とする新規な特性を有する油性化粧料が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明は、
(A)紫外線防御剤と、
(B)水溶性かつIOBが5.0以下である(i)アルキレンオキシド誘導体及び(ii)多価アルコールから選択される1種以上と、
を含み、
前記(B)(i)アルキレンオキシド誘導体は下記式(I):
O-[(AO)(EO)]-R (I)
(式中、R及びRは、それぞれ独立に、炭素原子数1~4の炭化水素基又は水素原子を示し、AOは炭素原子数3~4のオキシアルキレン基、EOはオキシエチレン基を示し、1≦m≦70、1≦n≦70、かつ、m+n≦40である)
で表されるポリオキシアルキレン・ポリオキシエチレン共重合体ジアルキルエーテルであり、かつ、
水の含有量が5質量%以下である、油性化粧料を提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明の油性化粧料は、上記構成とすることにより、実際の使用において熱が付加した際に紫外線防御効果が劣化するどころか、化粧料を肌に塗布した直後よりも紫外線防御効果を顕著に向上させることができる。すなわち、本発明に係る油性化粧料は、従来の化粧料において効果劣化の原因とされていた熱により紫外線防御効果が却って向上するという、従来の常識とは逆の特性を有する革新的な化粧料である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の油性化粧料は、(A)紫外線防御剤、及び、(B)所定のアルキレンオキシド誘導体又は多価アルコールを含み、水の含有量が5質量%以下であることを特徴とする。以下、本発明の油性化粧料を構成する各成分について詳述する。
【0014】
<(A)紫外線防御剤(紫外線吸収剤および/又は紫外線散乱剤)>
本発明の油性化粧料に配合される(A)紫外線防御剤(以下、単に「(A)成分」と称する場合がある)は、紫外線吸収剤および/又は紫外線散乱剤を意味し、化粧料に通常配合されるものを使用することができる。
【0015】
本発明で使用できる紫外線吸収剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、安息香酸誘導体、サリチル酸誘導体、ケイヒ酸誘導体、ジベンゾイルメタン誘導体、β,β-ジフェニルアクリラート誘導体、ベンゾフェノン誘導体、ベンジリデンカンファー誘導体、フェニルベンゾイミダゾール誘導体、トリアジン誘導体、フェニルベンゾトリアゾール誘導体、アントラニル誘導体、イミダゾリン誘導体、ベンザルマロナート誘導体、4,4-ジアリールブタジエン誘導体等が例示される。以下に具体例および商品名などを列挙するが、これらに限定されるものではない。
【0016】
安息香酸誘導体としては、パラ-アミノ安息香酸(PABA)エチル、エチル-ジヒドロキシプロピルPABA、エチルヘキシル-ジメチルPABA(例えば「エスカロール507」;ISP社)、グリセリルPABA、PEG-25-PABA(例えば「ユビナールP25」;BASF社)、ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル(例えば「ユビナールAプラス」)などが例示される。
【0017】
サリチル酸誘導体としては、ホモサレート(「ユーソレックス(Eusolex)HMS」;ロナ/EMインダストリーズ社)、エチルヘキシルサリチレート又はサリチル酸オクチル(例えば「ネオ・ヘリオパン(NeoHeliopan)OS」;ハーマン・アンド・レイマー社)、ジプロピレングリコールサリチレート(例えば「ディピサル(Dipsal)」;スケル社)、TEAサリチラート(例えば「ネオ・ヘリオパンTS」;ハーマン・アンド・レイマー社)などが例示される。
【0018】
ケイヒ酸誘導体としては、オクチルメトキシシンナメート又はメトキシケイヒ酸エチルヘキシル(例えば「パルソールMCX」;DSM株式会社)、メトキシケイヒ酸イソプロピル、メトキシケイヒ酸イソアミル(例えば「ネオ・ヘリオパンE1000」;ハーマン・アンド・レイマー社)、シンノキセート、DEAメトキシシンナメート、メチルケイヒ酸ジイソプロピル、グリセリル-エチルヘキサノエート-ジメトキシシンナメート、ジ-(2-エチルヘキシル)-4’-メトキシベンザルマロネートなどが例示される。
【0019】
ジベンゾイルメタン誘導体としては、4-tert-ブチル-4’-メトキシジベンゾイルメタン(例えば「パルソール1789」;DSM株式会社)などが例示される。
【0020】
β,β-ジフェニルアクリレート誘導体としては、オクトクリレン(例えば「ユビナールN539T」;BASF社)などが例示される。
【0021】
ベンゾフェノン誘導体としては、ベンゾフェノン-1(例えば「ユビナール400」;BASF社)、ベンゾフェノン-2(例えば「ユビナールD50」;BASF社)、ベンゾフェノン-3又はオキシベンゾン(例えば「ユビナールM40」;BASF社)、ベンゾフェノン-4(例えば「ユビナールMS40」;BASF社)、ベンゾフェノン-5、ベンゾフェノン-6(例えば「ヘリソーブ(Helisorb)11」;ノルクアイ社)、ベンゾフェノン-8(例えば「スペクトラ-ソーブ(Spectra-Sorb)UV-24」;アメリカン・シアナミド社)、ベンゾフェノン-9(例えば「ユビナールDS-49」;BASF社)、ベンゾフェノン-12などが例示される。
【0022】
ベンジリデンカンファー誘導体としては、3-ベンジリデンカンファー(例えば「メギゾリル(Mexoryl)SD」;シメックス社)、4-メチルベンジリデンカンファー、ベンジリデンカンファースルホン酸(例えば「メギゾリルSL」;シメックス社)、メト硫酸カンファーベンザルコニウム(例えば「メギゾリルSO」;シメックス社)、テレフタリリデンジカンファースルホン酸(例えば「メギゾリルSX」;シメックス社)、ポリアクリルアミドメチルベンジリデンカンファー(例えば「メギゾリルSW」;シメックス社)などが例示される。
【0023】
フェニルベンゾイミダゾール誘導体としては、フェニルベンゾイミダゾールスルホン酸(例えば「ユーソレックス232」;メルク社)、フェニルジベンゾイミダゾールテトラスルホン酸二ナトリウム(例えば「ネオ・ヘリオパンAP」;ハーマン・アンド・レイマー社)などが例示される。
【0024】
トリアジン誘導体としては、ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン(例えば「チノソーブ(Tinosorb)S」;チバ・スペシャリティー・ケミカルズ社)、エチルヘキシルトリアゾン(例えば「ユビナールT150」;BASF社)、ジエチルヘキシルブタミドトリアゾン(例えば「ユバソーブ(Uvasorb)HEB」;シグマ3 V社)、2,4,6-トリス(ジイソブチル-4’-アミノベンザルマロナート)-s-トリアジン、2,4,6-トリス[4-(2-エチルヘキシルオキシカルボニル)アニリノ]-1,3,5-トリアジンなどが例示される。
【0025】
フェニルベンゾトリアゾール誘導体としては、ドロメトリゾールトリシロキサン(例えば「シラトリゾール(Silatrizole)」;ローディア・シミー社)、メチレンビス(ベンゾトリアゾリルテトラメチルブチルフェノール)(例えば「チノソーブM」(チバ・スペシャリティー・ケミカルズ社))などが例示される。
【0026】
アントラニル誘導体としては、アントラニル酸メンチル(例えば「ネオ・ヘリオパンMA」;ハーマン・アンド・レイマー社)などが例示される。
【0027】
イミダゾリン誘導体としては、エチルヘキシルジメトキシベンジリデンジオキソイミダゾリンプロピオナートなどが例示される。
【0028】
ベンザルマロナート誘導体としては、ベンザルマロナート官能基を有するポリオルガノシロキサン(例えば、ポリシリコーン-15;「パルソールSLX」;DSMニュートリション ジャパン社)などが例示される。
【0029】
4,4-ジアリールブタジエン誘導体としては、1,1-ジカルボキシ(2,2’-ジメチルプロピル)-4,4-ジフェニルブタジエンなどが例示される。
【0030】
特に好ましい紫外線吸収剤の例としては、限定されないが、メトキシケイヒ酸エチルヘキシル、オクトクリレン、ジメチコジエチルベンザルマロネート、ポリシリコーン-15、4-tert-ブチル-4’-メトキシジベンゾイルメタン(t-ブチルメトキシジベンゾイルメタン)、エチルヘキシルトリアゾン、ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル、ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン、オキシベンゾン-3、メチレンビスベンゾトリアゾリルテトラメチルブチルフェノール、フェニルベンズイミダゾールスルホン酸、3-(4‘-メチルベンジリデン)-d,l-カンファー、3-ベンジリデン―d,l-カンファー、ホモサレート、サリチル酸エチルへキシルを挙げることができる。なかでも、(A)成分として少なくともオクトクリレンを含む場合に良好な紫外線防御向上効果を得ることができる。
【0031】
ただし、4-tert-ブチル-4’-メトキシジベンゾイルメタンを配合する場合には、その配合量を(A)成分の全量に対して10質量%以下とすることが好ましい。4-tert-ブチル-4’-メトキシジベンゾイルメタンは、(B)アルキレンオキシド誘導体又は多価アルコールを配合したときの加熱による紫外線防御効果の向上を妨げる傾向があるため、熱による紫外線防御効果の増強を実感しにくいからである。
【0032】
本発明で用いられる紫外線散乱剤は、特に限定されるものではないが、具体例としては、微粒子状の金属酸化物、例えば、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化鉄、酸化セリウム、酸化タングステン等を挙げることができる。
【0033】
紫外線散乱剤は、表面処理していないものでも各種疎水化表面処理したものでもよいが、疎水化表面処理をしたものが好ましく用いられる。表面処理剤としては、化粧料分野で汎用されているもの、例えば、ジメチコン、アルキル変性シリコーン等のシリコーン、オクチルトリエトキシシランなどのアルコキシシラン、パルミチン酸デキストリンなどのデキストリン脂肪酸エステル、ステアリン酸などの脂肪酸を用いることができる。
【0034】
本発明における(A)紫外線防御剤は、紫外線吸収剤のみからなる態様、紫外線散乱剤のみからなる態様、および紫外線吸収剤と紫外線散乱剤の両方を含む態様を包含する。
【0035】
(A)紫外線防御剤の配合量は特に限定されないが、通常は油性化粧料全量に対して5質量%以上、例えば5~40質量%、好ましくは6~40質量%、より好ましくは7~35質量%である。(A)紫外線防御剤の配合量が5質量%未満では十分な紫外線防御効果が得られにくく、40質量%を超えて配合しても配合量に見合った紫外線防御効果の増加を期待できず、安定性が悪くなるなどの点から好ましくない。
【0036】
<(B)アルキレンオキシド誘導体又は多価アルコール>
本発明の油性化粧料に配合される(B)(i)アルキレンオキシド誘導体又は(ii)多価アルコール(以下、単に「(B)成分」と称する場合がある)は、通常の化粧料では保湿剤として配合されることが多い。本発明では、特定のアルキレンオキシド誘導体又は多価アルコールを配合することにより、化粧料を肌に塗布した直後よりも、熱が加わった後の紫外線防御効果を顕著に向上させることができる。
【0037】
(B)(i)アルキレンオキシド誘導体又は(ii)多価アルコールは、いずれも水溶性であることを必要とする。水溶性でないものを用いると、加熱により紫外線防御力向上効果が低下する傾向がある。なお、本発明において「水溶性」とは、25℃の水に0.1質量%以上溶解することをいう。
【0038】
また、(B)(i)アルキレンオキシド誘導体又は(ii)多価アルコールは、いずれもIOBが5.0以下、より好ましくは3.0以下、さらに好ましくは2.5以下のものである。IOB値が高すぎると、熱による紫外線防御能向上の効果が十分に得られない場合がある。一方、IOB値の下限は特に限定されるものではないが、0.5以上が好ましく、さらに好ましくは0.8以上である。
【0039】
ここでIOBとは、Inorganic/Organic Balance(無機性/有機性比)の略であって、無機性値の有機性値に対する比率を表す値であり、有機化合物の極性の度合いを示す指標となるものである。IOB値は、具体的には、IOB値=無機性値/有機性値として表される。「無機性値」、「有機性値」のそれぞれについては、例えば、分子中の炭素原子1個について「有機性値」が20、水酸基1個について「無機性値」が100といったように、各種原子又は官能基に応じた「無機性値」、「有機性値」が設定されており、有機化合物中の全ての原子及び官能基の「無機性値」、「有機性値」を積算することによって、当該有機化合物のIOB値を算出することができる(例えば、甲田善生著、「有機概念図-基礎と応用-」p11~17、三共出版、1984年発行参照)。
【0040】
さらに、(B)(i)アルキレンオキシド誘導体又は(ii)多価アルコールは、エーテル結合を有するものが好ましい。エーテル結合を有することにより、エーテル結合を有しないものと比べて水に溶解しやすく、油にも溶解し得ると考えられる。
【0041】
本発明に使用できる(i)アルキレンオキシド誘導体としては、下記(I)で表されるポリオキシアルキレン・ポリオキシエチレン共重合体ジアルキルエーテルを挙げることができる。
O-[(AO)(EO)]-R (I)
上記式中、AOは炭素原子数3~4のオキシアルキレン基を示す。具体的にはオキシプロピレン基、オキシブチレン基、オキシイソブチレン基、オキシトリメチレン基、オキシテトラメチレン基等が挙げられる。好ましくはオキシプロピレン基、オキシブチレン基が挙げられる。EOはオキシエチレン基を示す。
【0042】
及びRは、それぞれ独立に、炭素原子数1~4の炭化水素基又は水素原子を示す。炭化水素基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基などが挙げられる。好ましくはメチル基、エチル基である。
一分子中のR及びRは、それぞれ同一の1種の炭化水素基であってもよく、炭化水素基と水素原子とが混在してもよく、炭素原子数が異なる複数の炭化水素基が混在していてもよい。ただし、R及びRの各々について、炭化水素基と水素原子との存在割合は、炭化水素基の数(X)に対する水素原子の数(Y)の割合(Y/X)が0.15以下であるのが好ましく、より好ましくは0.06以下である。
【0043】
mはAOの平均付加モル数であり、1≦m≦70、好ましくは2≦m≦20、さらに好ましくは2≦m≦10である。nはEOの平均付加モル数であり、1≦n≦70、好ましくは2≦n≦20、さらに好ましくは2≦n≦10である。また、m+nは、40以下、好ましくは25以下、さらに好ましくは20以下である。特にm+nが20以下の場合に、著しく優れた加熱による紫外線防御力向上効果を得ることができる。
【0044】
AOおよびEOの付加する順序は特に限定されるものではない。AOとEOはブロック状に付加したブロック共重合体でもよく、あるいはランダムに付加したランダム共重合体でもよい。ブロック共重合体は、2段ブロックのみならず、3段以上のブロックを含む共重合体が含まれる。好ましくはランダム共重合体が用いられる。
前記式(I)で表されるポリオキシアルキレン・ポリオキシエチレン共重合体ジアルキルエーテルの分子量は、100~10000、好ましくは150~5000、さらに好ましくは200~3000、より好ましくは300~2000である。一分子中のAOとEOの合計に対するEOの割合[EO/(AO+EO)]は、20~80質量%であることが好ましい。
【0045】
本発明で好ましく用いられるポリオキシアルキレン・ポリオキシエチレン共重合体ジアルキルエーテルの具体例としては、以下のポリオキシプロピレン・ポリオキシエチレン共重合体ジメチルエーテルが含まれるが、これらに限定されない。
PEG/PPG-9/2ジメチルエーテル
PEG/PPG-17/4ジメチルエーテル
PEG/PPG-14/7ジメチルエーテル
PEG/PPG-11/9ジメチルエーテル
PEG/PPG-55/28ジメチルエーテル
PEG/PPG-36/41ジメチルエーテル
PEG/PPG-6/3ジメチルエーテル
PEG/PPG-8/4ジメチルエーテル
PEG/PPG-6/11ジメチルエーテル
PEG/PPG-14/27ジメチルエーテル
【0046】
ポリオキシアルキレン・ポリオキシエチレン共重合体ジアルキルエーテルは、分子量が比較的小さいものほど熱による紫外線防御能向上効果に優れる傾向がある。したがって、上に列挙したポリオキシプロピレン・ポリオキシエチレン共重合体ジメチルエーテルの中でも、PEG/PPG-9/2ジメチルエーテルなどが最も高い効果を示す。
【0047】
一方、本発明に使用できる(ii)多価アルコールとしては、後述する式(II)のポリアルキレングリコール、及び、ブチレングリコール、ジプロピレングリコール、ジグリセリン、プロパンジオール、エリスリトール、キシリトール、メチルグルセス-10、ソルビトール等を挙げることができる。
【0048】
ここで、ポリアルキレングリコールは、下記式(II):
HO(RO)H (II)
(式中、ROは炭素原子数2~4のオキシアルキレン基を示し、pは3~500である)
で表されるものである。
具体的には、ポリエチレングリコール(「PEG」とも表記する)、ポリプロピレングリコール(「PPG」とも表記する)およびポリブチレングリコール(「PBG」とも表記する)等、化粧料に広く使用されているものから選択される。
【0049】
なかでも、上記式(II)において、ROがオキシエチレン基であり、pが3~500、より好ましくは3~60の範囲であるポリエチレングリコールが好ましい。好ましいポリエチレングリコールの平均分子量は150~23000、さらに好ましくは150~3000の範囲である。具体的には、ポリエチレングリコール300、ポリエチレングリコール400、ポリエチレングリコール1500、ポリエチレングリコール20000等を挙げることができる。
【0050】
ポリアルキレングリコールは、分子量が比較的小さいものほど熱による紫外線防御能向上効果に優れる傾向がある。したがって、上に列挙したポリエチレングリコールの中ではポリエチレングリコール300又はポリエチレングリコール400を用いると特に高い効果が得られる。
【0051】
本発明において(B)成分は、アルキレンオキシド誘導体のみからなる態様、多価アルコールのみからなる態様、およびアルキレンオキシド誘導体と多価アルコールの両方を含む態様を包含する。
なかでも、熱による紫外線防御能向上効果を最大限に発揮させるためには、アルキレンオキシド誘導体と多価アルコールをそれぞれ一種以上含むことが好ましい。例えば、平均分子量150~3000の低分子量ポリオキシプロピレン・ポリオキシエチレン共重合体ジメチルエーテルと、平均分子量150~3000のポリアルキレングリコールとを組み合わせて含む場合に、熱による紫外線防御能向上効果が顕著となる。具体例として、特にポリエチレングリコール300とPEG/PPG-9/2ジメチルエーテルとの組合せ、ポリエチレングリコール400とPEG/PPG-9/2ジメチルエーテルとの組合せを挙げることができる。
【0052】
(B)成分の配合量は、油性化粧料全量に対して少なくとも1.0質量%以上、より好ましくは2.5質量%以上であり、30質量%以下、より好ましくは25質量%以下である。配合量が1.0質量%未満であると、熱による紫外線防御能向上の効果が十分に得られない場合がある。特に2.5質量%以上であれば、当該効果をより確実に達成することができる。また、30質量%を超えると安定性や使用性に影響を及ぼす場合がある。
【0053】
<水>
本発明の油性化粧料は、従来の油性化粧料と同様に水を実質的に含まないが、本発明の効果、外観、使用性等を損なわない範囲であれば水を含有してもよい。ただし、水を含む場合は、油性化粧料全量に対して5質量%以下、より好ましくは3質量%以下に抑えることが必要である。水の含有量が多すぎると、油性化粧料の安定性が損なわれたり、化粧料が白濁したりする場合がある。
【0054】
<任意配合成分>
本発明の油性化粧料には、上記(A)成分及び(B)成分に加えて、本発明の効果を妨げない範囲で、化粧料に通常用いられる成分を配合することができる。例えば、固化剤、油分、低級アルコール、粉末成分等を適宜配合することができる。
【0055】
固化剤は、油分をゲル化又は増粘する成分であり、例えば、パルミチン酸デキストリン、ミリスチン酸デキストリン等のデキストリン脂肪酸エステル、ショ糖カプリル酸エステル等のショ糖脂肪酸エステル、ワセリン、水添パーム油、水添ヒマシ油等の固形又は半固形の炭化水素油、ジステアルジモニウムヘクトライト、ベンジルジメチルステアリルアンモニウムヘクトライト等の有機変性粘土鉱物、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、12-ヒドロキシステアリン酸等の常温で固体の炭素数8~22の高級脂肪酸又はその塩、あるいは、ジブチルラウロイルグルタミド、ジブチルエチルヘキサノイルグルタミド、ポリアミド-8、ポリアミド-3等のアミノ酸系ゲル化剤等が挙げられる。
【0056】
また、本発明の油性化粧料に配合できる油分は、極性であるか非極性であるかを問わず、化粧料において広く用いられている種々の油分を広く使用できる。例えば、セバシン酸ジイソプロピル、ミリスチン酸イソプロピル、コハク酸ジエチルヘキシル、トリ2-エチルヘキサン酸グリセリル、テトラ2-エチルヘキサン酸ペンタエリスリチル、2-エチルヘキサン酸セチル、炭素数12~15のアルキルベンゾエート、イソノナン酸イソノニル等のエステル油;流動パラフィン、スクワラン、イソドデカン、イソヘキサデカン、水添ポリイソブテン等の炭化水素油;ジメチコン、ヘキサメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルテトラシクロシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン、ジフェニルシロキシフェニルトリメチコン等のシリコーン油;パーム油、アマニ油、ツバキ油、マカデミアナッツ油、トウモロコシ油、オリーブ油、アボカド油、サザンカ油、ヒマシ油、サフラワー油、キョウニン油、シナモン油、ホホバ油、ブドウ油、アルモンド油、ナタネ油、ゴマ油、ヒマワリ油、小麦胚芽油、米胚芽油、米ヌカ油、綿実油、大豆油、落花生油、茶実油、月見草油、卵黄油、肝油、トリグリセリン、トリオクタン酸グリセリル、トリイソパルミチン酸グリセリル、イソステアリン酸等の液状油脂などを挙げることができる。
【0057】
低級アルコールとしては、エタノール、イソプロパノールなどの炭素数1~5のアルコールが挙げられる。
【0058】
また、球状粉末をさらに含むことが好ましい。球状粉末を配合することにより、べたつきが抑えられ、使用感が改善されてさらさらとした良好な感触を得ることができる。球状粉末としては、一般に化粧品等において用いられるものであれば特に制限されることなく任意に使用し得る。例えば、(メタ)アクリル酸エステル樹脂粉末、ポリアミド樹脂粉末(ナイロン粉末)、ポリエチレン粉末、ポリスチレン粉末、スチレンと(メタ)アクリル酸の共重合体樹脂粉末、ベンゾグアナミン樹脂粉末、ポリ四弗化エチレン粉末、セルロース粉末、及びトリメチルシルセスキオキサン粉末等、並びにオルガノポリシロキサンエラストマー球状粉末又はこれを母粉末とする複合球状粉末を挙げることができる。球状粉末の平均粒子径は3~20μmが好ましい。3μmより小さいとべたつきを抑制する効果が見られず、20μmより大きいと却ってざらつきを生じる場合がある。球状粉末の配合量は特に限定されないが、好ましくは3~30質量%、さらに好ましくは7~20質量%である。
【0059】
市販の球状有機樹脂粉末としては、例えば、ガンツパール(アイカ工業社)が挙げられ、市販の球状シリコーン樹脂粉末としては、例えば、トレフィルE-505C、トレフィルE-506C、トレフィルE-506S、トレフィルHP40T(以上、東レ・ダウコーニング・シリコーン社)、トスパール2000B(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社)、シリコーンパウダーKSP-100、KSP-300(信越化学工業社)等が挙げられる。
【0060】
また、本発明の油性化粧料には、上記以外に、調製する剤形に応じて、本発明の効果を妨げない範囲で、化粧料に通常用いられる成分を配合することができる。例えば、pH調整剤、キレート剤、防腐剤、酸化防止剤、薬剤、アルコール類、色剤、色素等を適宜配合することができる。薬剤としては例えば、アスコルビン酸(ビタミンC)、トラネキサム酸、コウジ酸、エラグ酸、アルブチン、アルコキシサリチル酸、ニコチン酸アミド、グリチルリチン酸、トコフェロール、レチノール及びこれらの塩又は誘導体(例えば、L-アスコルビン酸ナトリウム、L-アスコルビン酸エステルマグネシウム塩、L-アスコルビン酸グルコシド、2-O-エチル-L-アスコルビン酸、3-O-エチル-L-アスコルビン酸、4-メトキシサリチル酸ナトリウム塩、4-メトキシサリチル酸カリウム塩、グリチルリチン酸ジカリウム、グリチルリチン酸ステアリル、酢酸トコフェノール、酢酸レチノール、パルミチン酸レチノール等)を例示することができる。
【0061】
本発明は、一般的な油性化粧料の形態で提供することが可能である。具体的な剤型としては、液状、ジェル状、固形状等であり、各剤型に適した常法を用いて製造することができる。
【0062】
ジェル状である場合、25℃における油性化粧料の粘度は300mPa・s以上であることが好ましく、500mPa・s以上であることがより好ましい。粘度が300mPa・s以上であれば、十分に高い紫外線防御効果を達成することができる。本明細書において、粘度は、ブルックフィールド型粘度計(スピンドル番号7、回転数5rpm)で測定した最大粘度である。
【0063】
固形状である場合、25℃における油性化粧料の硬度は5N以上が好ましく、30N以上がより好ましい。硬度が5N以上であればより高い紫外線防御効果を得ることができる。硬度の上限は特に限定されるものではないが、使用性を考慮して300N以下とするのが好ましい。本発明における硬度とは、レオテック社製レオメーター(感圧軸5φ、針入速度2cm/min、針入度3mm)で測定した値である。
【0064】
本発明の油性化粧料は、非分離一相の形態に調製することができる。油性化粧料が非分離一相である場合には、化粧料を直前に振り混ぜることなく適用できるため好ましい。本発明において「非分離一相」とは、化粧料に含まれる液体成分が互いに相溶して一相の状態にあることをいい、目視観察により確認できる。
【0065】
また、本発明の油性化粧料は、透明な状態に調製することができる。本発明において「透明」とは、光路長10mmのセルに充填し、分光光度計で波長700nmの光の透過率を測定した場合に、透過率が少なくとも50%以上のものをいう。
【0066】
本発明の油性化粧料は、日焼け止め化粧料のみならず、日焼け止め効果を付与したファンデーション等のメーキャップ化粧料や化粧下地、毛髪化粧料(紫外線から毛髪や頭皮を保護するためのヘアスプレーやヘアトリートメント等の各種ヘア製品を含む)、噴霧型化粧料にも適用可能である。
【0067】
本発明の油性化粧料は、塗膜の紫外線防御効果が熱により向上するという新規な特性を有する。ここで、「紫外線防御効果が熱により向上する」とは、熱処理前の塗膜(非加熱サンプル)について280~400nmにわたって分光光度計等で測定した吸光度積算値と、熱処理後の塗膜(加熱サンプル)について同様に測定した吸光度積算値から、以下の式で求めた熱反応率が100%を超えた場合をいう。
熱反応率(%)=(熱処理後の吸光度積算値)/(熱処理前の吸光度積算値)×100
本発明の油性化粧料では、熱反応率が少なくとも100%を超えており、好ましくは103%以上、より好ましくは105%以上、更に好ましくは110%以上、特に好ましくは115%以上である。
【0068】
熱による紫外線防御効果の向上を調べる場合には、加熱温度は30℃~70℃の範囲とするのが好ましく、例えば32℃以上、35℃以上、37℃以上、あるいは40℃以上とすることができ、65℃以下、60℃以下、55℃以下、あるいは50℃以下の温度とすることができる。加熱温度が70℃を超えると樹脂製の測定プレートが溶解する等の問題を生じることがある。
加熱時間は、熱による影響を的確に評価するために、1分以上とするのが好ましく、より好ましくは10分以上である。加熱時間の上限としては、特に限定されないが、通常は60分以下、好ましくは30分以下である。
【実施例
【0069】
以下に具体例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。また、以下の実施例における配合量は特に断らない限り質量%を示す。各実施例について具体的に説明する前に、採用した評価方法について説明する。
【0070】
(1)熱照射後の吸光度積算値の変化(熱反応率)
調製した油性化粧料を、疑似皮膚PMMAプレート(SPFMASTER-PA01)に2mg/cmの量で滴下し、60秒間指で塗布し、15分間乾燥させて塗膜を形成した。未塗布のプレートをコントロールとして、前記塗膜の吸光度(280~400nm)を日立製作所製U-3500型自記録分光光度計にて測定し、得られた測定データから熱処理前の吸光度積算値を求めた。
次いで、前記塗膜を有するプレートを恒温槽に置き、37℃、30分の加熱処理を行い、上記と同様に吸光度積算値を求めた。
以下の式から熱照射前後の吸光度積算値の変化(熱反応率)を算出した。
熱反応率(%)=(熱処理後の吸光度積算値)/(熱処理前の吸光度積算値)×100
【0071】
(2)相分離の有無
調製した油性化粧料の外観を目視により観察し、液体成分が相溶状態にあり一相をなしているか(非分離一相)、液体成分の一部が他の液体成分と相溶せずに分離を生じているか(相分離)を調べた。
【0072】
(3)透明性
調製した油性化粧料を、光路長10mmのセルに充填し、分光光度計(日立製作所製U3510)で波長700nmの光の透過率を測定した。
透過率が50%以上のものを「透明」であると評価した。
【0073】
(4)粘度
調製した油性化粧料の粘度を、25℃において、ブルックフィールド型粘度計(スピンドル番号7、回転数5rpm)を用いて測定した。
【0074】
(5)硬度
調製した油性化粧料の硬度を、25℃において、レオテック社製レオメーター(感圧軸5φ、針入速度2cm/min、針入度3mm)で測定した。
【0075】
[試験例1~7]
下記表1に示す各試験例について、全成分をホモミキサーを用いて混合して液状日焼け止め化粧料を得た。
【0076】
【表1】
【0077】
表1に示されるように、(B)成分として、水溶性かつIOBが5.0以下であるアルキレンオキシド誘導体又は多価アルコールを配合することにより、加熱による紫外線防御効果の向上が確認された(試験例1~5)。一方、多価アルコールではあってもIOBが高すぎるグリセリン(IOB値=6.0)を用いた場合や、(B)成分を配合しない場合には当該効果を確認できなかった(試験例6及び7)。また、アルキレンオキシド誘導体及び多価アルコールのいずれについても、分子量が小さいものほど熱による紫外線防御効果が大きく向上する傾向が見られた。
【0078】
[試験例8~13]
下記表2に示す各試験例について、全成分をホモミキサーを用いて混合して液状日焼け止め化粧料を得た。
【0079】
【表2】
【0080】
表2に示されるように、(B)成分を配合しないと加熱による紫外線防御効果の向上は認められなかった(試験例13)。一方、(B)成分を配合することによって当該効果を確認できた(試験例8~12)。特に、(B)成分の配合量を2.5質量%以上とすることで十分に実感できる程度の効果を確認できた。
【0081】
[試験例14~20]
下記表3に示す各試験例について、全成分をホモミキサーを用いて混合して油性日焼け止め化粧料を得た。固化剤を含む場合には、油性成分に固化剤を添加して加温・融解し、保湿剤を添加後、混合して均一化し、その後冷却して固形状日焼け止め化粧料を得た。
【0082】
【表3】
【0083】
表3に示されるように、(B)成分を配合することにより、加熱による紫外線防御効果の向上が確認された(試験例16~20)。また、この効果は、固化剤を配合して固形状とした化粧料でも得られた(試験例17~20)。
【0084】
[試験例21~26]
下記表4に示す各試験例について、全成分をホモミキサーを用いて混合して油性日焼け止め化粧料を得た。固化剤を含む場合には、油性成分に固化剤を添加して加温・融解し、保湿剤を添加後、混合して均一化し、その後冷却してジェル状日焼け止め化粧料を得た。
【0085】
【表4】
【0086】
表4に示されるように、油性化粧料の粘度が高くなると、加熱による紫外線防御効果の向上幅は小さくなる傾向があった(試験例22~26)。しかし、熱照射後の塗膜の300nmにおける吸光度の値そのものは粘度の上昇に伴って向上しており、結果的に高い日焼け止め効果が得られた。
【0087】
[試験例27~32]
下記表5に示す各試験例について、全成分をホモミキサーを用いて混合して油性日焼け止め化粧料を得た。固化剤を含む場合には、油性成分に固化剤を添加して加温・融解し、保湿剤を添加後、混合して均一化し、その後冷却して固形状日焼け止め化粧料を得た。
【0088】
【表5】
【0089】
表5に示されるように、油性化粧料の硬度が高くなると、加熱による紫外線防御効果の向上幅は小さくなる傾向があった(試験例28~32)。しかし、熱照射後の塗膜の300nmにおける吸光度の値そのものは硬度の上昇に伴って向上しており、結果的に高い日焼け止め効果が得られた。
【0090】
[試験例33~38]
下記表6に示す各試験例について、油性成分に固化剤を添加して加温・融解し、保湿剤を添加後、混合して均一化し、その後冷却してジェル状日焼け止め化粧料を得た。
【0091】
【表6】
【0092】
表6に示されるように、いずれの試験例においても加熱による紫外線防御効果の向上は確認されたが、油性化粧料に含まれる水分量が増えると透過率が著しく低下し白濁が見られた(試験例37及び38)。
【0093】
[試験例39~42]
下記表7に示す各試験例について、全成分をホモミキサーを用いて混合して液状日焼け止め化粧料を得た。
【0094】
【表7】
【0095】
表7に示されるように、配合する油分の種類を変更しても、加熱による紫外線防御効果の向上が認められた(試験例39~42)。
【0096】
[試験例43~50]
下記表8に示す各試験例について、全成分をホモミキサーを用いて混合して液状日焼け止め化粧料を得た。
【0097】
【表8】
【0098】
表8に示されるように、(A)紫外線防御剤としてt-ブチルメトキシジベンゾイルメタン(4-tert-ブチル-4’-メトキシジベンゾイルメタン)を配合する場合、その配合量を(A)紫外線防御剤の全量に対して10質量%以下とすることにより高い熱反応率が得られた。
【0099】
以下に、本発明の化粧料の処方を例示する。本発明はこれらの処方例によって何ら限定されるものではなく、特許請求の範囲によって特定されるものであることはいうまでもない。なお、配合量は全て化粧料全量に対する質量%で表す。
【0100】
処方例1:化粧下地(液状)
(成分名) 配合量(質量%)
イソドデカン 残余
セバシン酸ジイソプロピル 30
エタノール 10
PEG/PPG-9/2ジメチルエーテル 20
メトキシケイヒ酸エチルヘキシル 10
サリチル酸オクチル 5
ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン

オクトクリレン 5
ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル 2
イソステアリン酸 2
ポリメタクリル酸メチル 6
疎水化処理シリカ 0.5
疎水化微粒子酸化チタン 1
疎水化微粒子酸化亜鉛 1
疎水化処理酸化鉄 0.7
疎水化処理硫酸バリウム被覆雲母チタン 0.01
疎水化処理雲母チタン 0.01
【0101】
処方例2:エアゾールスプレータイプの日焼け止め
(成分名) 配合量(質量%)
イソドデカン 残余
セバシン酸ジイソプロピル 20
トリ2-エチルヘキサン酸グリセリル 5
ミルスチン酸イソプロピル 6
エタノール 7
PEG/PPG-9/2ジメチルエーテル 20
メトキシケイヒ酸エチルヘキシル 10
サリチル酸オクチル 5
ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン

オクトクリレン 5
ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル 2
イソステアリン酸 2
ポリメタクリル酸メチル 6
疎水化処理シリカ 0.5
上記成分を混合して原液とし、原液とLPGとを50:50となるようにスプレー缶に充填して、エアゾールスプレータイプの日焼け止めを得た。
【0102】
処方例3:リップスティック
(成分名) 配合量(質量%)
セバシン酸ジイソプロピル 残余
水添ポリデセン 20
ジフェニルシロキシフェニルトリメチコン 2
PEG/PPG-9/2ジメチルエーテル 15
メトキシケイヒ酸エチルヘキシル 10
4-tert-ブチル-4’-メトキシベンゾイルメタン

ホモサレート 10
ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン

オクトクリレン 5
ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル 3
ヒドロキシステアリン酸 6
ポリアミド-8 2
ジブチルラウロイルグルタミド 2
色素 0.03