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特許7351864極紫外線用反射型ブランクマスク及びフォトマスク
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-19
(45)【発行日】2023-09-27
(54)【発明の名称】極紫外線用反射型ブランクマスク及びフォトマスク
(51)【国際特許分類】
   G03F 1/24 20120101AFI20230920BHJP
   G03F 1/54 20120101ALI20230920BHJP
   G03F 1/80 20120101ALI20230920BHJP
【FI】
G03F1/24
G03F1/54
G03F1/80
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021001365
(22)【出願日】2021-01-07
(65)【公開番号】P2021110952
(43)【公開日】2021-08-02
【審査請求日】2021-01-07
【審判番号】
【審判請求日】2022-09-22
(31)【優先権主張番号】10-2020-0002429
(32)【優先日】2020-01-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】514205126
【氏名又は名称】エスアンドエス テック カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100135079
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 修
(72)【発明者】
【氏名】シン,チョル
(72)【発明者】
【氏名】イ,ジョン-ファ
(72)【発明者】
【氏名】ヤン,チョル-ギュ
(72)【発明者】
【氏名】コン,イル-ウ
【合議体】
【審判長】波多江 進
【審判官】安藤 達哉
【審判官】野村 伸雄
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-6798(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2015-0056435(KR,A)
【文献】特開2020-34666(JP,A)
【文献】国際公開第03/085709(WO,A1)
【文献】特表2019-525240(JP,A)
【文献】国際公開第2008/129908(WO,A1)
【文献】国際公開第2011/108470(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 1/20- 1/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板、前記基板上に形成された反射膜、及び前記反射膜上に形成された吸収膜を含み、
前記吸収膜は、最上部層及び該最上部層下の複数の層で構成され、
前記最上部層は、Ta、N、及びOを含み、
前記複数の層は、Ta及びNを含み、Oを含まず、
前記最上部層は、2~5nmの厚さを有し、
前記最上部層は、前記複数の層に対して5以上のエッチング選択比を有し、
前記複数の層は、上方に行くほどNの含有量が増加するように構成され、
前記複数の層は、前記反射膜上に形成された第1層、及び前記第1層上に形成された第2層を含み、
前記第1層は、前記第2層よりも厚く、
前記第1層は、Ta:N=60at%:40at%~100at%:0at%の比率を有し、前記第2層は、Ta:N=59at%:41at%~90at%:10at%の比率を有し、
前記第2層は、前記第1層に比べてNの含有量が1~20at%高くなるように構成されることを特徴とする、EUV用ブランクマスク。
【請求項2】
前記吸収膜は、Pt、Ni、Cr、Mo、V、Co、Ag、Sb、Bi、Co、Sn、Te、Zr、Si、Nb、Pd、Zn、Al、Mn、Cd、Se、Cu、Hf、Wのうち一つ以上の物質をさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載のEUV用ブランクマスク。
【請求項3】
前記吸収膜は、C、B、Hのうち一つ以上の物質をさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載のEUV用ブランクマスク。
【請求項4】
前記第2層は1~5nmの厚さを有し、前記第1層と前記第2層は、厚さの和が40nm以上であることを特徴とする、請求項1に記載のEUV用ブランクマスク。
【請求項5】
前記反射膜は、Mo層とSi層とが交互に配置された構造を有することを特徴とする、請求項1に記載のEUV用ブランクマスク。
【請求項6】
前記基板の背面に形成された導電膜をさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載のEUV用ブランクマスク。
【請求項7】
請求項1のブランクマスクを用いて作製されたフォトマスク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体製造に用いられる極紫外線(Extreme Ultra Violet;以下、EUV)光を露光光として使用するEUV用ブランクマスクに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体回路パターンの微細化のために、露光光として13.5nmの極紫外線(EUV:Extreme Ultra-Violet)の使用が求められている。EUVを用いて基板に回路パターンを形成するためのフォトマスクは、露光光を反射させてウエハーに照射する反射型フォトマスクが主に用いられる。図1は、反射型フォトマスクの作製のための反射型ブランクマスクの一例を示す図である。
【0003】
図1に示すように、EUV用反射型ブランクマスクは、基板102、基板102上に形成された反射膜104、反射膜104上に形成された吸収膜106、及び吸収膜106上に形成されたレジスト膜108を含んで構成される。反射膜104は、例えば、モリブデン(Mo)材質から形成されたMo層とシリコン材質から形成されたSi層とが交互に数十回積層された構造で形成され、入射する露光光を反射させる機能を果たす。吸収膜106は、通常、TaBN材質から構成された下部層106aとTaBON材質から構成された上部層106bとの2層の構造を有し、入射した露光光を吸収する役割を担う。レジスト膜108は、吸収膜106をパターニングするために用いられる。吸収膜106が所定の形状にパターニングされることによって、ブランクマスクがフォトマスクとして作製され、フォトマスクに入射するEUV露光光は、吸収膜106のパターンにしたがって吸収又は反射された後、半導体ウエハー上に照射される。
【0004】
図2及び図3は、図1のブランクマスクを用いて作製されたフォトマスクにおいて吸収膜106をパターニングして得られた一つの吸収膜パターンを示す図である。(図2及び図3において、図1における吸収膜106の各層106a,106bのパターンに、同様に各層106a,106bの図面符号を付した。)
図2に示すように、レジスト膜108のパターンを用いて吸収膜106をエッチングすることによって作製された吸収膜パターン106a,106bは、その側面が傾斜して形成される。これは、吸収膜106がエッチングガスに露出される時間が、吸収膜106の上部に行くほど大きいためである。傾斜が大きいほど、吸収膜パターン106a,106bの下部層106aにおいて下部の厚さt1が上部の厚さt2よりも大きくなる。また、下部層106aの下部にはフーティング(footing)が形成される。このような現象によって、設計(design)されたCD(critical demension)との差が生じ、フォトマスクによって作製される回路パターンの精度が低下する。
【0005】
前記のフーティング問題を解決するために、図1のブランクマスクにおいて吸収膜106の下部層106aのエッチング速度を速くする方法が提案されている。しかし、図3に示すように、下部層106aのエッチング速度が速いと、下部層106aの上部、すなわち、下部層106aにおいて上部層106bに接する部分でスキュー(Skew)が発生する。このような現象によって、マスクパターンのイメージ感度(Image Contrast)が減少し、フォトマスクによって作製される回路パターン精度が低下する。このため、吸収膜パターンのプロファイルを垂直化する方案が必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記の問題点を解決するために案出されたもので、本発明の目的は、吸収膜パターンのCD偏差が最小化できるEUV用ブランクマスクを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するための本発明に係るEUV用ブランクマスクは、基板、前記基板上に形成された反射膜、及び前記反射膜上に形成された吸収膜を含み、前記吸収膜は、最上部層及び該最上部層下の複数の層で構成され、前記複数の層は、Taを含み、且つ上方に行くほどNの含有量が増加するように構成される。
【0008】
前記複数の層は、前記反射膜上に形成された第1層、及び前記第1層上に形成された第2層を含んで構成されてよい。
【0009】
前記第1層及び前記第2層はそれぞれ、1~50nmの厚さを有する。
【0010】
前記吸収膜は、Pt、Ni、Cr、Mo、V、Co、Ag、Sb、Bi、Co、Sn、Te、Zr、Si、Nb、Pd、Zn、Al、Mn、Cd、Se、Cu、Hf、Wのうち一つ以上の物質をさらに含むことができる。
【0011】
前記吸収膜は、C、B、Hのうち一つ以上の物質をさらに含むことができる。
【0012】
前記第1層は、前記第2層よりも厚い厚さを有するように構成されてよい。このとき、前記第2層は、1~5nmの厚さを有し、前記第1層と前記第2層は、厚さの和が40nm以上となるように構成される。前記第1層は、Ta:N=60at%:40at%~100at%:0at%の比率を有し、前記第2層は、Ta:N=59at%:41at%~90at%:10at%の比率を有する。前記第2層は、前記第1層に比べてNの含有量が1~20at%高くなるように構成される。
【0013】
前記第2層は、前記第1層よりも厚い厚さを有するように構成されてよい。このとき、前記第1層は、5nm以上の厚さを有し、前記第1層と前記第2層は、厚さの和が40nm以上となるように構成される。前記第1層は、Ta:N=61at%:39at%~100at%:0at%の比率を有し、前記第2層は、Ta:N=60at%:40at%~99at%:1at%の比率を有する。前記第2層は、前記第1層に比べてNの含有量が1~20at%高くなるように構成される。
【0014】
好ましくは、前記最上部層は、酸素(O)を含み、前記複数の層は酸素(O)を含まないように構成される。このとき、前記最上部層は、2~5nmの厚さを有する。前記最上部層は、前記複数の層に対して5以上のエッチング選択比を有する。
【0015】
前記反射膜は、Mo層とSi層とが交互に配置された構造を有する。
【0016】
前記基板の背面には導電膜が形成される。
【0017】
本発明によれば、前記のような構成を有するブランクマスクを用いて作製されたフォトマスクが提供される。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、吸収膜パターンのCD偏差が最小化できるEUV用ブランクマスクが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】従来の一般のEUV用反射型ブランクマスクの構造を概略的に示す図である。
図2図1のブランクマスクを用いて作製されたフォトマスクの吸収膜パターンを示す図である。
図3図1のブランクマスクを用いて作製されたフォトマスクの吸収膜パターンを示す図である。
図4】本発明に係るEUV用反射型ブランクマスクの構造を示す図である。
図5図4の第1変形例によるEUV用反射型ブランクマスクの構造を示す図である。
図6図4の第2変形例によるEUV用反射型ブランクマスクの構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下では、図面を参照して、本発明の実施例を用いて本発明を具体的に説明するが、実施例は単に本発明の例示及び説明をするための目的で用いられるもので、意味限定、又は特許請求の範囲に記載された本発明の範囲を制限するために用いられるものではない。したがって、本発明の技術分野における通常の知識を有する者であれば、実施例から様々な変形及び均等な他の実施例が可能であるという点が理解されよう。したがって、本発明の真の技術力保護範囲は、特許請求の範囲の技術的事項によって定められるべきである。
【0021】
図4は、本発明に係るEUV用反射型ブランクマスクの構造を示す図である。
【0022】
本発明に係るEUV用反射型ブランクマスクは、基板202、基板202上に形成された反射膜204、反射膜204上に形成された吸収膜206、及び吸収膜206上に形成されたレジスト膜208を備える。また、本発明のブランクマスクは、基板202の背面に形成された導電膜201、及び反射膜204と吸収膜206との間に形成されたキャッピング膜205をさらに備える。
【0023】
基板202は、EUV露光光を用いる反射型ブランクマスク用ガラス基板として適合するように、露光時の熱によるパターンの変形及びストレスを防止するために、0±1.0×10-7/℃の範囲内における低熱膨張係数を有し、好ましくは、0±0.3×10-7/℃の範囲内における低熱膨張係数を有するLTEM(Low Thermal Expansion Material)基板で構成される。基板202の素材としては、SiO-TiO系ガラス、多成分系ガラスセラミックなどを用いることができる。
【0024】
基板202は、露光時に反射光の精度を高めるために、高い平坦度(Flatness)が要求される。平坦度は、TIR(Total Indicated Reading)値で表現され、基板202は、低いTIR値を有することが好ましい。基板202の平坦度は、132mm領域又は142mm領域において、100nm以下、好ましくは50nm以下である。
【0025】
反射膜204は、EUV露光光を反射する機能を有し、各層の屈折率が異なる多層膜構造を有する。具体的には、反射膜204は、Mo材質から形成されたMo層204aとSi材質から形成されたSi層204bとを交互に40~60回積層して形成する。反射膜204はイメージ感度(Image Contrast)を良くするために、13.5nm波長に対する高い反射率が要求されるが、このような反射膜の反射強度(Reflection Intensity)は、露光光の入射角度及び各層の厚さによって変わる。例えば、露光光の入射角度が5~6゜の場合、Mo層及びSi層がそれぞれ2.8nm、4.2nmの厚さに形成されることが好ましいが、高NA(High NA)(Numerical Aperture)工法の適用のためのレンズの拡大によって入射角度が8~14゜に広くなる場合には、入射角度に最適化された反射強度を有するために、Mo層204aは2~4nm、Si層204bは3~5nmの厚さに形成されてよい。
【0026】
反射膜204は、13.5nmのEUV露光光に対して65%以上の反射率を有することが好ましい。
【0027】
反射膜204は、表面TIRが1,000nm以下の値を有し、好ましくは500nm以下、より好ましくは300nm以下の値を有する。反射膜204の表面平坦度が悪い場合、EUV露光光が反射される位置のエラーを誘発し、位置エラーが高いほど、CD(Critical Dimension)位置エラー(Position Error)を誘発する。
【0028】
反射膜204は、EUV露光光に対する乱反射を抑制するために、表面粗さ(Surface Roughness)が0.5nmRa以下、好ましくは0.3nmRa以下、より好ましくは0.1nmRa以下の値を有する。
【0029】
キャッピング膜205は反射膜204上に形成され、吸収膜206のパターニングのためのドライエッチング(Dry Etching)工程又は洗浄(Cleaning)工程の時に下部の反射膜204を保護する役割を担う。キャッピング膜104は、Ruを含む材質から形成される。
【0030】
吸収膜206はキャッピング膜205上に形成され、露光光を吸収する役割を担う。具体的には、吸収膜206は、13.5nm波長のEUV露光光に対して10%以下の反射率、好ましくは1~8%の反射率を有し、よって、露光光の大部分を吸収する。吸収膜206は、13.5nm波長のEUV露光光に対して0.03以上の消滅係数(k)を有することが好ましい。吸収膜206は、55nm以下の厚さを有する。
【0031】
吸収膜206は、複数の層で構成される。図4の実施例において、吸収膜206は、最上部層を構成する第3層206c及びその下部の複数の層で構成されている。第3層206cの下部の複数の層は、第1層206a及び第2層206bで構成される。第1層206aは反射膜204上に形成されており、第2層206bは第1層206a上に形成されている。図4の実施例では、吸収膜206が3個の層で構成されているが、4個以上で構成されてもよい。また、各層は、その組成が異なるか、或いは組成比の異なる複数のサブ層(sub-layers)で構成されてよい。また、本実施例及び以下の実施例において、第1層、第2層、第3層などの層は、各層が単一の層で構成されているものに限定されず、各層が複数のサブ層で構成されているか、或いは、各層が、組成比が連続して変わる連続膜形態の層で構成されている例も含む。また、以下の説明において、例えば、窒素の含有量が複数の層に対して上方に行くほど増加するという記載は、一つの層において、各サブ層の窒素の含有量が上方に行くほど増加又は減少する場合も、同一である場合も含む。これは、本願発明の請求項にも同一に適用して解釈されるべきである。
【0032】
吸収膜206は、Taを含む材質から構成される。また、吸収膜206は、Pt、Ni、Cr、Mo、V、Co、Ag、Sb、Bi、Co、Sn、Te、Zr、Si、Nb、Pd、Zn、Al、Mn、Cd、Se、Cu、Hf、Wのいずれか一つ以上の物質をさらに含む材質から構成されてよい。
【0033】
吸収膜206は、窒素(N)を含む材質から構成される。このとき、吸収膜206を構成する複数の層206a,206b,206c、特に、第1層206a及び第2層206bは、窒素(N)の含有量が上方に行くほど増加するように構成される。したがって、第2層206bのNの含有量が、第1層206aのNの含有量よりも大きい。TaにNが含まれる場合、Cl、SiCl、CHClなどの塩素系ガスによるエッチング時に、エッチング速度は、Nの含有量が少ないほど大きくなる。これによって、第1層206aは第2層206bに比べてエッチング速度が大きい。したがって、吸収膜206をパターニングする時、パターンの傾斜がほぼ垂直になり、第1層206aのパターンの幅が第2層206bのパターンの幅よりも大きくなる現象が防止される。これによって、CD偏差が減る。一方、吸収膜206の各層206a~206cは、炭素(C)、ホウ素(B)、水素(H)のうち一つ以上の物質をさらに含んで構成されてよい。
【0034】
一方、吸収膜206の最上部層である第3層206cは、酸素(O)を含み、第3層206c以外の層は、Oを含まないように構成される。第3層206cは、Nを含まなくてもよい。Ta材質にOが含まれる場合、第3層206cは、F、SF、CFなどのフッ素系ガスによってエッチングされ、したがって、第3層206cは、その下部の層206b,206aに対してエッチング選択比(Etching Selectivity)を有する。好ましくは、第3層206cは、その下部の層206b,206aに比べて5以上のエッチング選択比を、より好ましくは10以上のエッチング選択比を有する。
【0035】
第3層206cのエッチング物質がその下部の層206b,206aのエッチング物質と異なるため、吸収膜206は、第3層206cに対する1次エッチング工程と、第2層206b及び第1層206aに対する2次エッチング工程の、2段階エッチング工程によってエッチングされる。レジスト膜208のパターンを用いて吸収膜206をエッチングする間にレジスト膜208が次第に損傷し、レジスト膜208が吸収膜206のエッチングのためのエッチングマスクとして正常に機能しなくなることがある。これを防止するためにレジスト膜208を厚く形成すると、レジスト膜208のパターンの精度が低下し、これは吸収膜206のパターンの精度の低下につながる。このため、本発明では、吸収膜206の第3層206cを、レジスト膜208パターンを用いてまずエッチングして、吸収膜206の第3層206cのパターンを形成し、この吸収膜206の第3層206cのパターンをレジスト膜208のパターンと共にエッチングマスクとして用いて、吸収膜206の第2層206b及び第1層206aをエッチングする。このように、第3層206cがエッチングマスクの役割を担うことによって、レジスト膜208を薄く形成することが可能になり、吸収膜206のパターン精度が増加する。第3層206cは、その上部をHMDS処理のような表面処理をすることによって、レジスト膜208との接着力を向上させることができる。
【0036】
第1層206aと第2層206bはそれぞれ、1~50nmの厚さに形成されてよい。そして、第3層206cは、上記のようにエッチングマスクの機能を果たすので、第1層206a及び第2層206bよりは薄い厚さである2~5nmの厚さを有するように形成される。第3層206cの厚さが2nm以下である場合は、エッチングマスクとしての機能を果たし難く、5nm以上である場合は、所望の光学特性確保のために吸収膜206の全厚を厚くしなければならないという不都合がある。
【0037】
吸収膜206の第3層206cは、酸素(O)の含有量が50~90at%であるTa化合物で構成されることが好ましい。Oの含有量が50at%以下である場合、その下部のTaN材質に対して高いエッチング選択比を確保し難く、フッ素系エッチング時に、エッチング速度が減少して残膜が形成されることがあり、その後、下部層206b,206aを塩素系ガスでエッチング時に、エッチング速度が著しく減少する問題が発生する。
【0038】
レジスト膜208は、化学増幅型レジスト(CAR:Chemically Amplified Resist)で構成される。レジスト膜208は、150nm以下の厚さを有し、好ましくは100nm以下の厚さを有する。
【0039】
導電膜201は、基板202の背面に形成される。導電膜201は、低い面抵抗値を有するため、静電チャック(Electronic-Chuck)とEUV用ブランクマスクとの密着性を向上させ、静電チャックとの摩擦によってパーティクルが発生することを防止する機能を果たす。導電膜201は、100Ω/□以下の面抵抗を有し、好ましくは50Ω/□以下、より好ましくは20Ω/□以下の面抵抗を有する。導電膜201は、単一膜、連続膜、又は多層膜の形態で構成されてよい。導電膜201は、例えば、Crを主成分として形成されてよく、2層の多層膜で構成される場合、下部層はCr及びNを含み、上部層はCr、N、及びOを含んで形成されてよい。
【0040】
上記のような構成によれば、吸収膜206の第1層206aと第2層206bの窒素含有量が上方に行くほど増加するので、エッチング速度が下方に行くほど増加する。これによって、吸収膜206の傾斜が急になってCD偏差が減る。
【0041】
また、吸収膜206の第3層206cがその下部の層206a,206bに比べてエッチング選択比を有するので、第3層206cがその下部の層206a,206bに対するエッチングマスクの機能を担う。これによって、より精密なパターンの形成が可能となる。
【0042】
図5は、図4の第1変形例によるEUV用反射型ブランクマスクの構造を示す図であり、吸収膜の第1層306a及び第2層306bだけを示す図である。図5において、吸収膜の第1層306aと第2層306b以外の構成は、図示を省略し、省略した部分は、図4に示す実施例と同じ構成を有する。
【0043】
本変形例において、第1層306aは第2層306bに比べて厚い厚さを有する。第1層306aと第2層306bは、その厚さの和が40nm以上となるように構成される。厚さの和が40nm以下である場合、所望の反射率が確保し難い。
【0044】
第1層306aは、Ta:N=60at%:40at%~100at%:0at%の比率を有する。第1層306aのTaの含有量が60at%以下の場合、EUV露光光に対して低い反射率の確保が難しい。
【0045】
第2層306bは、Ta:N=59at%:41at%~90at%:10at%の比率を有する。第2層306bは、第1層306aに比べてNの含有量が1~20at%高くなるように構成されることが好ましい。第2層306bは、1~5nmの厚さを有する。第2層306bは、厚さが1nm以下であるか、第1層306aに比べてNの含有量増加が1at%以下であるか、又はTaが90%以上である場合、吸収膜の側面エッチングに対するCD補正が難しい。また、第2層206bは、第1層306aに比べてNの増加が20at%以上であるか、又はNの組成が41at%以上である場合、低いエッチング速度によって吸収膜エッチング時にパターンプロファイル(Pattern Profile)が悪くなる。
【0046】
このような構成によれば、前述したように、吸収膜のパターンの傾斜度特性を改善すると同時に、さらに吸収膜の側面におけるスキューが改善できる。
【0047】
図6は、図4の第2変形例によるEUV用反射型ブランクマスクの構造を示す図であり、吸収膜の第1層306a及び第2層306bだけを示す図である。図5において、吸収膜の第1層406aと第2層406b以外の構成は図示を省略しており、省略した部分は、図4に示した実施例と同じ構成を有する。
【0048】
本変形例において、第2層406bは、第1層406aよりも厚い厚さを有する。このとき、第1層406aと第2層406bは、その厚さの和が40nm以上であることが好ましい。厚さの和が40nm以下である場合、所望の反射率が確保し難い。また、第1層406aは5nm以上の厚さを有する。第1層406aの厚さが5nm以下である場合、フーティングの改善が難しい。
【0049】
第1層306aは、Ta:N=61at%:39at%~100at%:0at%の比率を有する。第1層406aのTaの含有量が60at%以下の場合、EUV露光光に対して低い反射率を確保し難く、Nの含有量が40at%以上になるため、低いエッチング速度によってフーティングの改善が難しい。
【0050】
第2層406bは、Ta:N=60at%:40at%~99at%:1at%の比率を有する。第2層406bは、第1層406aに比べてNの含有量が1~20at%高くなるように構成されることが好ましい。第1層405aと第2層406bにおけるNの含有量差が1at%以下である場合、フーティングの改善が難しい。第2層406bは、Ta含有量が60at%以下である場合、所望の反射率を確保し難い。
【0051】
このような構成によれば、前述したように吸収膜のパターンの傾斜度特性を改善すると同時に、特に、第1層406aにおけるフーティング発生を防止することができる。

以下では、本発明の具体的な具現例を述べる。
【0052】
EUV用ブランクマスクは、SiO-TiO系透明基板202の背面に、DCマグネトロン反応性スパッタリング装備を用いて、Crを主成分とする下部層と上部層の2層の構造を有する導電膜201を形成した。上・下部層の導電膜はいずれもCrターゲットを用いて形成し、下部層の導電膜は、工程ガスとしてAr:N=5sccm:5sccmを注入し、工程パワーは1.4Kwを用いてCrN膜として形成した。下部層の導電膜に対してXRR装備を用いて厚さを測定した結果、51.0nm厚と測定された。上部層の導電膜は、工程ガスとしてAr:N:NO=7sccm:7sccm:7sccmを注入し、工程パワーは1.4Kwを用いてCrON膜として形成した。上部層の導電膜に対してXRR装備を用いて厚さを測定した結果、15.0nm厚と測定された。導電膜201の面抵抗を4点プローブ(4-Point Probe)を用いて測定した結果、22.6Ω/□の面抵抗値を示し、静電チャックとの結合に不都合がなく、導電膜として使用するのに問題がないことを確認した。
【0053】
導電膜201が形成された基板202の前面にMoとSi層を交互に積層して40層の反射膜204を形成した。蒸着装備にMoターゲット、Siターゲット、BCターゲット、そしてCターゲットを装着した後、Arガス雰囲気でMo層、BC層、Si層、C層の順に成膜して形成した。具体的には、反射膜204は、Mo層を2.8nm、BC層を0.5nm、Si層を4.2nm、C層を0.5nmに成膜し、これら4層を1周期として40周期を繰り返し成膜して形成し、反射膜204の最終表面は、表面酸化を抑制するために、C層を省いてSi層となるように形成した。
【0054】
反射膜204に対する反射率を、EUVリフレクトメーター(EUV Reflectometer)装備を用いて13.5nmで測定した結果、66.2%を示し、その後、AFM装備を用いて表面粗さを測定した結果、0.125nmRaを示した。
【0055】
反射膜204上に、蒸着装備を用いて、Ruターゲットを用いて窒素雰囲気で2.5nm厚のRuからなるキャッピング膜205を形成した。キャッピング膜205の形成後、反射膜204と同じ方法で反射率を測定した結果、13.5nmの波長において65.8%の反射率を示した。
【0056】
キャッピング膜205上に、蒸着装備を用いて、第1層206a、第2層206b、そして第3層206cからなる3層構造の吸収膜206を形成した。具体的には、キャッピング膜205上に、Taターゲットを用い、工程ガスとしてAr:N=9sccm:1sccmを注入し、工程パワーは0.62Kwを用いて、吸収膜206の第1層206aを形成した。第1層206aは、XRR装備を用いた厚さ測定の結果、47.1nm厚と測定された。第1層206a上に、同一ターゲットを用い、工程ガスとしてAr:N=9sccm:5sccmを注入し、工程パワーは0.62kWを用いて第2層206bを形成した。第2層206bは、厚さ測定の結果、5.0nm厚と測定された。その後、第2層206b上に、同一ターゲットを用い、工程ガスとしてAr:N:O=3sccm:20sccm:4.5sccmを注入し、工程パワーは0.62kWを用いてTaON膜からなる第3層206cを形成した。第3層206cは、厚さ測定の結果、2.5nm厚と測定された。
【0057】
その後、吸収膜206に対してAES(Auger Electron Spectroscopy)装備を用いて組成比を確認した結果、第1層206aでは、Ta含有量85.9%、N含有量14.1%を示し、、第2層206bでは、Ta含有量62.0%、N含有量38.2%を示した。第3層206cでは、Ta含有量9.2%、N含有量13.8%、そしてO含有量77.0%を示した。
【0058】
上記の工程で形成された吸収膜206の全厚は54.6nmであり、13.5nm波長に対して3.0%の反射率を示し、179゜の位相変位を示した。この結果は、吸収膜206の成膜条件を調節して、反射率1~10%の範囲、位相差170~190゜の範囲に制御できるレベルと判断される。
【0059】
その後、吸収膜206上に、レジスト膜208を80nm厚にスピンコーティングして形成し、これで極紫外線用ブランクマスクの製造を完了した。
図1
図2
図3
図4
図5
図6