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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-19
(45)【発行日】2023-09-27
(54)【発明の名称】乗客コンベア
(51)【国際特許分類】
   B66B 31/00 20060101AFI20230920BHJP
   B66B 23/22 20060101ALI20230920BHJP
【FI】
B66B31/00 Z
B66B23/22 D
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021150666
(22)【出願日】2021-09-15
(65)【公開番号】P2023043116
(43)【公開日】2023-03-28
【審査請求日】2021-09-15
【審判番号】
【審判請求日】2023-03-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000112705
【氏名又は名称】フジテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114421
【弁理士】
【氏名又は名称】薬丸 誠一
(72)【発明者】
【氏名】物部 愛
(72)【発明者】
【氏名】北村 美和子
【合議体】
【審判長】小川 恭司
【審判官】尾崎 和寛
【審判官】中屋 裕一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開平2-255492(JP,A)
【文献】特表2007-520402(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 23/22
B66B 31/00-31/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
通路に面する欄干パネルと、欄干パネルよりも外側に所定の間隔を有して配置される外装材と、欄干パネル及び外装材間の内部空間とを備える乗客コンベアであって、
乗客の衣服に付着した付着物を取り除くためのエアシャワー装置として、
エアコンプレッサからのエア供給路であって、内部空間に配置されるエア供給路と
内部空間においてエア供給路に接続され、欄干パネルに設けられるエア吹出し口からエアを拡張して通路上の乗客の肩から足までの範囲に向けて吹き出すエア吹出し部とを備える
乗客コンベア。
【請求項2】
エアシャワー装置は、乗客の搬送方向に所定の間隔を有して複数の箇所に設置される
請求項1に記載の乗客コンベア。
【請求項3】
エアシャワー装置は、欄干パネルにおいて高さ方向に亘って所定の間隔を有して配置される複数のエア吹出し部を備える
請求項1又は請求項2に記載の乗客コンベア。
【請求項4】
エアシャワー装置は、少なくとも乗り口及び降り口の各箇所に設置され、
乗り口に設置されるエアシャワー装置と降り口に設置されるエアシャワー装置とは、エアの吹出し条件が異なるように設定される
請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の乗客コンベア。
【請求項5】
乗客コンベアは、エスカレータであり、
エアシャワー装置は、少なくとも乗り口に設置され、
乗り口に設置されるエアシャワー装置は、エスカレータが上りである場合と下りである場合とでエアの吹出し条件が異なるように設定される
請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の乗客コンベア。
【請求項6】
エアの吹出し条件は、エアの強度ないし風量、エアの吹出し方向又はエアの温度のいずれかである
請求項4又は請求項5に記載の乗客コンベア。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、循環駆動される無端搬送体により乗客を搬送する乗客コンベアに関する。
【背景技術】
【0002】
エスカレータや動く歩道といった乗客コンベアは、不特定多数の者が利用する設備であり、細菌やウイルスの感染の懸念を否定することはできない。特に、昨今は、いかにして新型コロナウイルスの感染を予防できるかが関心事となっている。
【0003】
対策の一つとして、空気清浄装置を乗降口付近に備える乗客コンベアが提案されている(特許文献1)。これは、空気を吸入し、吸入した空気を紫外線ランプの光で殺菌し、殺菌した空気をフィルターに通すことにより、乗降口付近の空気を清浄なものとし、乗降口付近を衛生的に管理しようというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特表2007-520402号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、この種の空気清浄装置は、乗降口付近の空気を清浄なものとすることができるが、乗客に付着したごみや花粉等の付着物を取り除くことはできない。もし、この付着物を一部でも取り除くことができるのであれば、乗客コンベアから先のエリア(たとえば乗客コンベアが設置される建物の他の階)への付着物の持ち込みを減らすことができる。
【0006】
そこで、本発明は、かかる事情に鑑みてなされたもので、乗客に付着したごみや花粉等の付着物を取り除くことができる乗客コンベアを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る乗客コンベアは、
通路に面する欄干パネルと、欄干パネルよりも外側に所定の間隔を有して配置される外装材と、欄干パネル及び外装材間の内部空間とを備える乗客コンベアであって、
乗客の衣服に付着した付着物を取り除くためのエアシャワー装置として、
エアコンプレッサからのエア供給路であって、内部空間に配置されるエア供給路と
内部空間においてエア供給路に接続され、欄干パネルに設けられるエア吹出し口からエアを拡張して通路上の乗客の肩から足までの範囲に向けて吹き出すエア吹出し部とを備える
乗客コンベアである。
【0008】
ここで、本発明に係る乗客コンベアの一態様として、
エアシャワー装置は、乗客の搬送方向に所定の間隔を有して複数の箇所に設置される
との構成を採用することができる。
【0009】
また、本発明に係る乗客コンベアの他態様として、
エアシャワー装置は、欄干パネルにおいて高さ方向に亘って所定の間隔を有して配置される複数のエア吹出し部を備える
との構成を採用することができる。
【0010】
また、本発明に係る乗客コンベアの別の態様として、
エアシャワー装置は、少なくとも乗り口及び降り口の各箇所に設置され、
乗り口に設置されるエアシャワー装置と降り口に設置されるエアシャワー装置とは、エアの吹出し条件が異なるように設定される
との構成を採用することができる。
【0011】
また、本発明に係る乗客コンベアのさらに別の態様として、
乗客コンベアは、エスカレータであり、
エアシャワー装置は、少なくとも乗り口に設置され、
乗り口に設置されるエアシャワー装置は、エスカレータが上りである場合と下りである場合とでエアの吹出し条件が異なるように設定される
との構成を採用することができる。
【0012】
また、エアの吹出し条件としては、エアの強度ないし風量、エアの吹出し方向又はエアの温度のいずれかである
との構成を採用することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、乗客コンベアに乗る乗客が移動に伴って自動的にエアシャワー送風領域の中を通過する。このため、本発明によれば、乗客コンベアに乗るだけで、乗客に付着したごみや花粉等の付着物を取り除くことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、実施形態1に係るエスカレータの概略断面側面図である。
図2図2は、エスカレータの側面図である。
図3図3は、図1のA-A線における垂直断面図である。
図4図4は、図3のB部の拡大図である。
図5図5(a)は、エアシャワー装置のエア吹出し部の垂直断面図ないし水平断面図である。図5(b)及び(c)は、エアシャワー装置のエア吹出し部の垂直断面図ないし水平断面図であって、エアの吹出し方向が変更可能であることの説明図である。
図6図6(a)は、エスカレータの乗り口側の領域に設置されるエアシャワー装置の1つの使用例に関する説明図である。図6(b)は、もう1つの使用例に関する説明図である。
図7図7は、実施形態2に係るエスカレータであって、図1のA-A線におけるものに相当する垂直断面図である。
図8図8(a)ないし(d)は、エアシャワー装置のエア吹出し部の垂直断面図ないし水平断面図であって、エアの吹出し方向が変更可能であることの説明図である。
図9図9(a)は、エスカレータの乗り口側の領域に設置されるエアシャワー装置の1つの使用例に関する説明図である。図9(b)は、もう1つの使用例に関する説明図である。
図10図10は、実施形態3に係るエスカレータであって、図1のA-A線におけるものに相当する垂直断面図である。
図11図11(a)ないし(d)は、エアシャワー装置のエア吹出し部の水平断面図であって、エアの吹出し方向が変更可能であることの説明図である。
図12図12(a)は、エスカレータの乗り口側の領域に設置されるエアシャワー装置の1つの使用例に関する説明図である。図12(b)は、もう1つの使用例に関する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
<実施形態1>
以下、本発明に係る実施形態1として、乗客コンベアの一つであり、エアシャワー装置を備えるエスカレータについて、図1ないし図6を参酌して説明する。
【0016】
図1及び図2に示すように、エスカレータ1は、乗降口3と、搬送部4と、ハンドレール部5とを備える。乗降口3は、乗り口3Aと降り口3Bとからなり、搬送部4の各端部に設けられる。搬送部4は、エスカレータ1の自重及び積載荷重を支える構造体であるトラス2に支持され、踏面が通路に沿って移動することにより、乗客をその位置に立たせたまま歩かせることなく搬送する。ハンドレール部5も、トラス2に支持され、通路の左右に通路に沿って設けられる。本実施形態においては、エスカレータ1は、乗客を左から右(階下から階上)に搬送する設定となっている。このため、エスカレータ1は、左から右に、乗り口3A、搬送部4、降り口3Bを備える。設定を逆に切り替えると、乗り口3Aは降り口に、降り口3Bは乗り口に切り替わり、乗客を右から左(階上から階下)に搬送する設定となる。
【0017】
搬送部4は、無端搬送体40を備える。無端搬送体40は、複数の踏段(ステップ)41,…が踏段チェーン42を介して無端状に連結されたもので、循環駆動される。無端搬送体40は、駆動モータ43の駆動に伴って踏段チェーン42が循環駆動されることにより、一方向又は反対方向に循環駆動される。
【0018】
ハンドレール部5は、ハンドレール50と、欄干51とを備える。ハンドレール50は、移動手摺とも呼ばれ、可撓性を有する無端状で、無端搬送体40と連動して循環駆動される。欄干51は、下辺部がトラス2に支持され、ハンドレール50を循環移動可能に支持する。ハンドレール50及び欄干51は、通路の左右に通路に沿って一対設けられる。
【0019】
図3に示すように、欄干51は、欄干パネル52と、外装材53と、スカートガード54と、外デッキカバー55と、内デッキカバー56と、柱57とを備える。欄干パネル52は、ハンドレール50の上辺部(往路部分)50A及び下辺部(復路部分)50B間に縦に配置され、通路に面する。外装材53は、欄干パネル52よりも外側に欄干パネル52と所定の間隔を有して縦に配置される。スカートガード54は、欄干パネル52よりも内側に欄干パネル52の下部の高さ位置から下方に縦に配置され、通路に面する。外デッキカバー55は、欄干パネル52及び外装材53間の上部開放部を閉鎖するように脱着自在に取り付けられる。内デッキカバー56は、欄干パネル52及びスカートガード54間の上部開放部を閉鎖するように脱着自在に取り付けられ、通路に面する。このように、欄干51は、内部空間58、より詳しくは、欄干パネル52、外装材53及び外デッキカバー55に囲まれる第1内部空間58Aと、スカートガード54、外装材53及び内デッキカバー56に囲まれる第2内部空間58Bとを有する。ハンドレール50の下辺部(復路部分)50Bは、第2内部空間58Bに収容され、外部から遮蔽される。柱57は、内部空間58に配置され、下端部がトラス2の上弦材20等のフレームに固定される欄干51の構造材である。
【0020】
エスカレータ1は、エアシャワー装置6を備える。エアシャワー装置6は、エアを欄干パネル52から通路に向けて吹き出すことにより、通路内にエアシャワー送風領域を構成する。図1及び図2に示すように、エアシャワー装置6は、乗り口3A側及び降り口3B側の各領域に設置される。乗り口3A側の領域に設置されるエアシャワー装置6は、たとえば、乗り口3A、搬送部4の水平部から傾斜部への移行部及び搬送部4の傾斜部の始端部の3箇所に設置される3つのエアシャワー装置6,6,6で構成される。降り口3B側の領域に設置されるエアシャワー装置6は、たとえば、搬送部4の傾斜部の終端部、搬送部4の傾斜部から水平部への移行部及び降り口3Bの3箇所に設置される3つのエアシャワー装置6,6,6で構成される。各エアシャワー装置6は、たとえばトラス2内に設置されるエアコンプレッサ等のエア供給源60とエアホース61を介して接続され、エア供給源60からエアの供給を受ける。
【0021】
図2に示すように、各エアシャワー装置6は、複数のエア吹出し口62,…を有する。複数のエア吹出し口62,…は、欄干パネル52において高さ方向に亘って所定の間隔を有して配置される。たとえば、乗り口3A及び降り口3Bを除く箇所に設置されるエアシャワー装置6は、欄干パネル52の上辺部、中間部及び下辺部の3箇所に3つのエア吹出し口62,62,62を有し、乗り口3A及び降り口3Bに設置されるエアシャワー装置6は、欄干パネル52の上辺部及び中間部の2箇所に2つのエア吹出し口62,62を有する。
【0022】
図3及び図4に示すように、各エアシャワー装置6は、導管63と、枝管64と、開閉弁65と、エア吹出し部66とを備える。導管63は、欄干51の第1内部空間58Aに縦に配置され、柱57等のフレームに固定される。導管63は、内部にエア流路を有し、エアホース61が接続される。枝管64は、導管63の適所から延出される。枝管64は、管体であり、内部にエア流路を有し、導管63のエア流路とエア吹出し部66のエア流路とを接続する。導管63のエア流路及び枝管64のエア流路は、エアホース61とともに、エア供給源60からのエア供給路を構成する。枝管64は、フレキシブル管であるとともに、ある程度の余裕長さを有する。これにより、エア吹出し部66の後述するノズル67の回転変位が可能となる。開閉弁65は、枝管64の管路上に設けられる。各開閉弁65を個別に開閉操作することにより、各エア吹出し部66による各エア吹出し口62からのエアの吹出しを個別に入り切りすることができる。
【0023】
図5に示すように、エア吹出し部66は、ノズル67と、ノズル保持部材68とを備える。ノズル67は、球体であり、内部にエア流路孔67aを有し、枝管64が接続される。ノズル保持部材68は、ノズル67を全方位に回転変位可能に保持する。すなわち、ノズル67は、ノズル保持部材68と干渉しない範囲において、球体の中心を中心としてあらゆる方向に回転変位が可能となる。ノズル保持部材68は、ノズル67のエア流路孔67aと連通するエア流路孔68aを有する。ノズル保持部材68は、エア流路孔68aが欄干パネル52に形成されたエア吹出し口62と一致するように、通路と反対側の欄干パネル52の外面に取り外し可能に取り付けられる。ノズル67のエア流路孔67aは、テーパ状に拡張する孔又はテーパ状に拡張する部分を有する。ノズル保持部材68のエア流路孔68a及び欄干パネル52のエア吹出し口62は、両者が一致することにより、一つのテーパ状の孔を構成する。したがって、エア吹出し部66は、欄干パネル52(の板面)と直交する方向Tに対し、所定の頂角の円錐形の範囲内で、上下、左右、斜めのあらゆる方向にエアの吹出し方向(エアの吹出し方向中心C)を設定することができ、かつ、所定の開き角度でテーパ状に拡張するようにエアを吹き出すことができる。
【0024】
ところで、エスカレータには、乗客が横並び可能な幅の通路を備える幅広タイプのものと、乗客一人分の幅の通路を備える幅狭タイプのものとがある。いずれのタイプであっても、欄干51は、通路の左右に通路に沿って一対設けられる。そこで、エアシャワー装置6は、左右両方に設けられる。あるいは、エアシャワー装置6は、左右のいずれか一方に設けられるようにしてもよい。いずれにしても、欄干51から通路に向かってエアが吹き出され、通路内にエアシャワー送風領域が構成される。
【0025】
エアシャワー装置6の各エア吹出し部66のエアの吹出し方向は、上述のとおり、変更可能である。たとえば、ドライバ等の棒状工具を通路からノズル67のエア流路孔67a内に挿入し、工具の向きを変えることにより、エアの吹出し方向を意図する方向に変更することができる。この際、欄干51の一部(たとえば内デッキカバー56)を外すような作業は不要である。
【0026】
エアシャワー装置6の1つの使用例は、図6(a)に示すとおりである。すなわち、この使用例において、i)乗り口3Aに設置されるエアシャワー装置(1つ目のエアシャワー装置)6は、今からエスカレータ1に乗ろうとする乗客に向かってエアを吹き付け、ii)搬送部4の水平部から傾斜部への移行部に設置されるエアシャワー装置(2つ目のエアシャワー装置)6は、踏段41に乗った乗客に向かってエアを吹き付け、iii)搬送部4の傾斜部の始端部に設置されるエアシャワー装置(3つ目のエアシャワー装置)6は、傾斜部に進入した乗客に向かってエアを吹き付ける。ここで、ii),iii)のそれぞれに関し、各エアシャワー装置6の上段、中段、下段の3箇所のエアの吹出し方向は、エアの吹出し方向中心Cが互いに所定の開き角度でテーパ状に拡張するように、設定される。これにより、エアシャワー装置6から吹き出されるエアは、全体として上下に範囲が拡張され、乗客の肩から足までの部分の広範囲に吹き付けられる。
【0027】
エアシャワー装置6のもう1つの使用例は、図6(b)に示すとおりである。すなわち、この使用例において、2つ目のエアシャワー装置6は、乗客の搬送方向(搬送部4の無端搬送体40の移動方向)にエアを吹き出すことにより、傾斜部に進入した乗客に対し、乗客の後方からエアを吹き付けるとともに、3つ目のエアシャワー装置6は、乗客の搬送方向と反対方向にエアを吹き出すことにより、傾斜部に進入した乗客に対し、乗客の前方からエアを吹き付ける。なお、前者のエアの吹出し方向を「後から前」といい、後者のエアの吹出し方向を「前から後」という。
【0028】
これらの使用例は、乗り口3A側の領域だけで行われるのでなく、降り口3B側の領域に設置されるエアシャワー装置6を用いて降り口側3Bの領域でも行われるようにしてもよい。あるいは、これらの使用例は、乗り口3A側の領域では行われず、降り口3B側の領域だけで行われるようにしてもよい。
【0029】
なお、本実施形態に係るエスカレータ1は、乗客がいない(人検知センサによって乗客が検知されない)状態では、搬送部4が停止し、乗客がいる(人検知センサによって乗客が検知される)と、搬送部4の運転が開始される、いわゆる自動エスカレータがある。この自動エスカレータにおいて、エアシャワー装置6は、搬送部4の運転開始に伴って起動し(エア供給源60が起動し)、搬送部4の運転停止に伴って停止する(エア供給源60が停止する)ように制御される。あるいは、エアシャワー装置6は、エスカレータ1の電源がONになっている間は連続運転されるものであってもよい。
【0030】
以上のとおり、本実施形態に係るエスカレータ1によれば、エスカレータ1に乗る乗客が移動に伴って自動的にエアシャワー送風領域の中を通過する。このため、本実施形態に係るエスカレータ1によれば、エスカレータ1に乗るだけで、乗客(の衣服)に付着したごみや花粉等の付着物を取り除くことができる。
【0031】
また、本実施形態に係るエスカレータ1によれば、エアシャワー装置6は、欄干パネル52の外側に配置され、欄干パネル52から通路側に突出するものではない。このため、本実施形態に係るエスカレータ1によれば、乗客がエアシャワー装置6に引っ掛かる等の事象が発生するのを防止することができる。
【0032】
また、本実施形態に係るエスカレータ1によれば、エアシャワー装置6のエアの吹出し方向は、エア吹出し部66のノズル67の向きを通路側から変更することにより変更可能である。このため、本実施形態に係るエスカレータ1によれば、エアシャワー装置6のエアの吹出し方向を広範囲で任意かつ簡単に変更することができる。
【0033】
なお、本実施形態に係るエスカレータ1は、複数のエアシャワー装置6,…を備えることにより、多様な使用例を用いることができる。その1つの使用例は、乗り口3Aに設置されるエアシャワー装置6(以下、「A」と称する)と降り口3Bに設置されるエアシャワー装置6(以下、「B」と称する)とでエアの吹出し条件を異ならせるものである。吹出し条件は、エアの強度ないし風量(エアの吹出し停止を含む)、エアの吹出し方向、エアの温度等である。たとえば、次のような各パターンが考えられ、これにより、乗り口3Aと降り口3Bとを識別可能となる。この識別機能は、特に視覚障害者にとって有用である。なお、パターンv)及びvi)を実現するためには、エア供給路上(たとえばエアホース61の管路上)に温調装置を設置する必要がある。
i)A又はBの一方:エア ON、A又はBの他方:エア OFF
ii)A又はBの一方:エアの風量 大、A又はBの他方:エアの風量 小
iii)A又はBの一方:エアの吹出し方向 前から後、A又はBの他方:エアの吹出し方向 後から前
iv)A又はBの一方:エアの吹出し方向 上から下、A又はBの他方:エアの吹出し方向 下から上
v)A又はBの一方:エアの温度 常温、A又はBの他方:エアの温度 冷
vi)A又はBの一方:エアの温度 常温、A又はBの他方:エアの温度 暖
【0034】
別の使用例は、乗り口3Aに設置されるエアシャワー装置6において、エスカレータ1が上りである場合(以下、「C」と称する)と下りである場合(以下、「D」と称する)とでエアの吹出し条件を異ならせるものである。たとえば、次のような各パターンが考えられ、これにより、エスカレータ1が上りであるか下りであるかを識別可能となる。この識別機能は、特に視覚障害者にとって有用である。
i)C又はDの一方:エア ON、C又はDの他方:エア OFF
ii)C又はDの一方:エアの風量 大、C又はDの他方:エアの風量 小
iii)C又はDの一方:エアの吹出し方向 前から後、C又はDの他方:エアの吹出し方向 後から前
iv)C又はDの一方:エアの吹出し方向 上から下、C又はDの他方:エアの吹出し方向 下から上
v)C又はDの一方:エアの温度 常温、C又はDの他方:エアの温度 冷
vi)C又はDの一方:エアの温度 常温、C又はDの他方:エアの温度 暖
【0035】
<実施形態2>
次に、本発明の実施形態2に係るエアシャワー装置を備えるエスカレータについて、図7ないし図9を参酌して説明する。なお、本実施形態に係るエスカレータが実施形態1に係るエスカレータと異なる点は、エアシャワー装置の構造である。具体的には、実施形態1では、エア供給源60がエアコンプレッサであるのに対し、本実施形態では、エア供給源60がファンである点、そして、実施形態1では、ノズル67が球体であるのに対し、本実施形態では、ノズル67が管体である点である。この点以外については、両者は、同じである。そこで、以下においては、異なる点について記載し、同じ点については、実施形態1についての記載と同様であるとして、記載を省略する。
【0036】
図7に示すように、エア供給源60は、欄干51の第1内部空間58Aに縦に配置され、柱57等のフレームに固定される。エア供給源60の筐体は、エア吹出し口62に対応したエア吹出し口を有する。エア吹出口は、ノズル67に接続される。
【0037】
図8に示すように、ノズル67は、欄干パネル52に形成された挿通孔52aに挿通される。ノズル67は、管体であり、内部にエア流路孔67aを有する。エア流路孔67aは、エアの吹出し方向中心Cが欄干パネル52(の板面)と直交する方向Tに対して傾斜するように、湾曲ないし屈曲される。ただし、乗客がエアシャワー装置6に引っ掛かる等の事象が発生するのを防止するために、ノズル67は、欄干パネル52からの突出量が極小となるように、短尺に形成される。
【0038】
ノズル67は、フランジ部67bを備える。フランジ部67bは、管体の端部が拡大したものであり、通路と反対側の欄干パネル52の外面に取り外し可能に取り付けられる。そして、欄干パネル52の挿通孔52aの中心に対するノズル67の角度位置を変更することにより(図8(a)及び(b))、あるいは、エアの吹出し方向中心Cの傾斜角度が異なるノズル67に取り換えることにより(図8(c))、あるいは、エアの吹出し方向中心Cが傾斜しないストレートなノズル67に取り換えることにより(図8(d))、エアの吹出し方向が変更可能である。
【0039】
エアシャワー装置6の使用例は、図9に示すように、実施形態1と同様である。このように、本実施形態に係るエスカレータ1によっても、実施形態1に係るエスカレータ1が奏する作用効果と同様の作用効果を奏する。
【0040】
<実施形態3>
次に、本発明の実施形態3に係るエアシャワー装置を備えるエスカレータについて、図10ないし図12を参酌して説明する。なお、本実施形態に係るエスカレータが実施形態2に係るエスカレータと異なる点は、エアシャワー装置のノズルの構造である。具体的には、実施形態1では、ノズル67が高さ方向に複数設けられるのに対し、本実施形態では、ノズル67が1つに繋がって縦長の形状を有する点である。この点以外については、両者は、同じである。そこで、以下においては、異なる点について記載し、同じ点については、実施形態1及び2についての記載と同様であるとして、記載を省略する。
【0041】
図10及び図11に示すように、ノズル67は、欄干パネル52において高さ方向に亘って縦長に形成される。これに合わせ、エア流路孔67a及び欄干パネル52の挿通孔52aも縦長に形成される。エア流路孔67aは、エアの吹出し方向中心Cがノズル67の幅方向(水平方向)において欄干パネル52(の板面)と直交する方向Tに対して傾斜するように、湾曲ないし屈曲される。
【0042】
エアシャワー装置6の使用例は、図12に示すように、実施形態1及び2と同様である。このように、本実施形態に係るエスカレータ1によっても、実施形態1及び2に係るエスカレータ1が奏する作用効果と同様の作用効果を奏する。
【0043】
なお、本発明は、上記各実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0044】
上記各実施形態においては、エアシャワー装置6は、乗り口3A側及び降り口3B側の各領域に設置される。しかし、本発明は、これに限定されるものではない。たとえば、エアシャワー装置は、搬送部の中間部の領域にも設置されるようにしてもよい。あるいは、エアシャワー装置は、搬送部の全長に亘って設置されるようにしてもよい。あるいは、エアシャワー装置は、乗り口側の領域、搬送部の中間部の領域又は降り口側の領域のいずれか1つの領域にだけ設置されるようにしてもよい。
【0045】
また、上記各実施形態において、エアシャワー装置6は、乗り口3A側及び降り口3B側の各領域において、乗客の搬送方向(搬送部4の無端搬送体40の移動方向)に所定の間隔を有して3箇所に設置される。しかし、本発明は、これに限定されるものではない。設置箇所は、2箇所であってもよく、4箇所あるいは5箇所以上であってもよい。
【0046】
また、上記各実施形態においては、乗客コンベアは、エスカレータである。しかし、本発明は、動く歩道にも適用できることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0047】
1…エスカレータ、2…トラス、20…上弦材、3…乗降口、3A…乗り口、3B…降り口、4…搬送部、40…無端搬送体、41…踏段、42…踏段チェーン、43…駆動モータ、5…ハンドレール部、50…ハンドレール、50A…上辺部(往路部分)、50B…下辺部(復路部分)、51…欄干、52…欄干パネル、52a…挿通孔、53…外装材、54…スカートガード、55…外デッキカバー、56…内デッキカバー、57…柱、58…内部空間、58A…第1内部空間、58B…第2内部空間、6…エアシャワー装置、60…エア供給源、61…エアホース、62…エア吹出し口、63…導管、64…枝管、65…開閉弁、66…エア吹出し部、67…ノズル、67a…エア流路孔、67b…フランジ部、68…ノズル保持部材、68a…エア流路孔、C…エアの吹出し方向中心、T…欄干パネルの直交方向
図1
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