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特許7351894信号解析装置、信号解析方法、及び信号解析プログラム
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  • 特許-信号解析装置、信号解析方法、及び信号解析プログラム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-19
(45)【発行日】2023-09-27
(54)【発明の名称】信号解析装置、信号解析方法、及び信号解析プログラム
(51)【国際特許分類】
   G06F 17/14 20060101AFI20230920BHJP
【FI】
G06F17/14 580
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021212740
(22)【出願日】2021-12-27
(65)【公開番号】P2023096765
(43)【公開日】2023-07-07
【審査請求日】2022-03-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000145806
【氏名又は名称】株式会社小野測器
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 爽一郎
(72)【発明者】
【氏名】山本 航大
(72)【発明者】
【氏名】梅澤 淳
(72)【発明者】
【氏名】大▲高▼ 政祥
【審査官】田中 幸雄
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2008/015449(WO,A2)
【文献】中国特許出願公開第103995950(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 17/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マザーウェーブレットをスケーリングしたウェーブレットの中心周波数を求める中心周波数算出部と、
算出した前記中心周波数と同じ周波数を有する正弦波から第1ウェーブレット係数を算出する第1ウェーブレット係数算出部と、
解析対象の入力信号から第2ウェーブレット係数を算出する第2ウェーブレット係数算出部と、
前記第2ウェーブレット係数を前記第1ウェーブレット係数で正規化する正規化処理部と、を備える
信号解析装置。
【請求項2】
マザーウェーブレットをスケーリングしたウェーブレットの中心周波数を求める中心周波数算出ステップと、
算出した前記中心周波数と同じ周波数を有する正弦波から第1ウェーブレット係数を算出する第1ウェーブレット係数算出ステップと、
解析対象の入力信号から第2ウェーブレット係数を算出する第2ウェーブレット係数算出ステップと、
前記第2ウェーブレット係数を前記第1ウェーブレット係数で正規化する正規化ステップと、をコンピュータにより実行する
信号解析方法。
【請求項3】
マザーウェーブレットをスケーリングしたウェーブレットの中心周波数を求める中心周波数算出ステップと、
算出した前記中心周波数と同じ周波数を有する正弦波から第1ウェーブレット係数を算出する第1ウェーブレット係数算出ステップと、
解析対象の入力信号から第2ウェーブレット係数を算出する第2ウェーブレット係数算出ステップと、
前記第2ウェーブレット係数を前記第1ウェーブレット係数で正規化する正規化ステップと、をコンピュータが実行する
信号解析プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、信号解析装置、信号解析方法、及び信号解析プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載の信号解析装置では、信号データの過渡現象を解析するために、時間変化と周波数成分の変化とを同時に表現することができる時間周波数解析として連続ウェーブレット変換が行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2001-125634号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
連続ウェーブレット変換においては、マザーウェーブレットと呼ばれる基底関数に対して、時間方向に拡大又は縮小を行うスケーリングと、時間方向に平行移動するシフトとを行う。そして、これらの操作を行ったウェーブレットと入力信号に対して離散フーリエ変換(DFT)を利用した畳み込み演算を行うことでウェーブレット係数の絶対値を出力結果として得ている。
【0005】
一方、ウェーブレット係数の絶対値は、スケーリングの条件に大きく依存している。
例えば、各入力信号の振幅が相互に同じであっても、各入力信号の周波数が相互に異なれば、各入力信号から得られるウェーブレット係数も相互に異なる。また、各過渡信号の振幅と周波数とが相互に同じであっても、各過渡信号の発生時刻が相互に異なれば、各過渡信号から得られるウェーブレット係数も相互に異なる。
【0006】
こうした実情は、同時刻に発生した同様の過渡信号のウェーブレット係数の比較に有意性を示すといえる。ただし、ウェーブレット係数そのものの絶対的な評価、ひいては周波数成分や発生時刻が相互に異なる過渡信号のウェーブレット係数の比較に有意性を示すとはいえない。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決する信号解析装置は、マザーウェーブレットをスケーリングしたウェーブレットの中心周波数を求める中心周波数算出部と、算出した前記中心周波数と同じ周波数を有する正弦波から第1ウェーブレット係数を算出する第1ウェーブレット係数算出部と、解析対象の入力信号から第2ウェーブレット係数を算出する第2ウェーブレット係数算出部と、前記第2ウェーブレット係数を前記第1ウェーブレット係数で正規化する正規化処理部と、を備える。
【0008】
上記構成によれば、マザーウェーブレットをスケーリングしたウェーブレットの中心周波数と同じ周波数を有する正弦波から第1ウェーブレット係数を算出して、解析対象の入力信号から第2ウェーブレット係数を算出して、第2ウェーブレット係数を第1ウェーブレット係数で正規化する。このため、正弦波入力を基準として、ウェーブレット係数を近似的に補正することができる。よって、出力結果のウェーブレット係数を異なる周波数の間で比較することができ、過渡信号におけるウェーブレット係数の絶対的な評価をすることができる。
【0009】
上記課題を解決する信号解析方法は、マザーウェーブレットをスケーリングしたウェーブレットの中心周波数を求める中心周波数算出ステップと、算出した前記中心周波数と同じ周波数を有する正弦波から第1ウェーブレット係数を算出する第1ウェーブレット係数算出ステップと、解析対象の入力信号から第2ウェーブレット係数を算出する第2ウェーブレット係数算出ステップと、前記第2ウェーブレット係数を前記第1ウェーブレット係数で正規化する正規化ステップと、を含む。
【0010】
上記方法によれば、マザーウェーブレットをスケーリングしたウェーブレットの中心周波数と同じ周波数を有する正弦波から第1ウェーブレット係数を算出して、解析対象の入力信号から第2ウェーブレット係数を算出して、第2ウェーブレット係数を第1ウェーブレット係数で正規化する。このため、正弦波入力を基準として、ウェーブレット係数を近似的に補正することができる。よって、出力結果のウェーブレット係数を異なる周波数の間で比較することができ、過渡信号におけるウェーブレット係数の絶対的な評価をすることができる。
【0011】
上記課題を解決する信号解析プログラムは、マザーウェーブレットをスケーリングしたウェーブレットの中心周波数を求める中心周波数算出ステップと、算出した前記中心周波数と同じ周波数を有する正弦波から第1ウェーブレット係数を算出する第1ウェーブレット係数算出ステップと、解析対象の入力信号から第2ウェーブレット係数を算出する第2ウェーブレット係数算出ステップと、前記第2ウェーブレット係数を前記第1ウェーブレット係数で正規化する正規化ステップと、をコンピュータが実行する。
【0012】
上記プログラムによれば、マザーウェーブレットをスケーリングしたウェーブレットの中心周波数と同じ周波数を有する正弦波から第1ウェーブレット係数を算出して、解析対象の入力信号から第2ウェーブレット係数を算出して、第2ウェーブレット係数を第1ウェーブレット係数で正規化する。このため、正弦波入力を基準として、ウェーブレット係数を近似的に補正することができる。よって、出力結果のウェーブレット係数を異なる周波数の間で比較することができ、過渡信号におけるウェーブレット係数の絶対的な評価をすることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、出力結果のウェーブレット係数を異なる周波数の間で比較することができ、過渡信号におけるウェーブレット係数の絶対的な評価をすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】信号解析装置の一実施形態の概略構成を示すブロック図。
図2】同実施形態の信号解析装置の演算部を示すブロック図。
図3】同実施形態の信号解析装置の解析結果を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図1図3を参照して、信号解析装置の一実施形態について説明する。
(信号解析装置)
図1に示すように、信号解析装置は、信号解析プログラムが記憶されたコンピュータ1である。コンピュータ1は、解析対象の装置等で計測された信号が入力信号Sとして入力される。コンピュータ1の解析結果は、表示装置2に表示される。
【0016】
コンピュータ1は、コンピュータプログラム(ソフトウェア)に従って各種処理を実行する1つ以上のプロセッサとして構成し得る。コンピュータ1すなわちプロセッサにより実行される処理には、信号解析方法が含まれる。信号解析方法は、後述する中心周波数算出ステップと、第1ウェーブレット係数算出ステップと、第2ウェーブレット係数算出ステップと、正規化ステップと、を含む。なお、コンピュータ1は、各種処理のうち少なくとも一部の処理を実行する、特定用途向け集積回路(ASIC)等の1つ以上の専用ハードウェア回路、またはその組み合わせを含む回路(circuitry)として構成してもよい。プロセッサは、CPU及び、RAM並びにROM等のメモリを含む。メモリは、処理をCPUに実行させるように構成されたプログラムコードまたは指令を格納している。メモリすなわちコンピュータ可読媒体は、汎用または専用のコンピュータでアクセス可能なあらゆる利用媒体を含む。コンピュータ可読媒体に格納されたプログラムには信号解析プログラムが含まれる。信号解析プログラムは、中心周波数算出ステップと、第1ウェーブレット係数算出ステップと、第2ウェーブレット係数算出ステップと、正規化ステップと、をコンピュータ1に実行させる。
【0017】
(解析処理)
次に、図2を併せ参照して、上記信号解析装置による解析処理について説明する。
図2に示すように、コンピュータ1の演算部10は、中心周波数算出部11と、第1ウェーブレット係数算出部12と、第2ウェーブレット係数算出部13と、正規化処理部14と、を備える。
【0018】
中心周波数算出部11は、マザーウェーブレットに対してスケーリングを行い、ウェーブレットを算出する。時刻tで発生した単位インパルスδ(t-t0)と仮定した入力信号x(t)を式(1)に示す。入力信号Sの一例は、機器の発する過渡信号である。中心周波数算出部11は、マザーウェーブレット、スケールパラメータなどのスケーリングに要する要素を、外部からの入力によって設定可能に記憶する。
【0019】
【数1】
時刻tにおけるマザーウェーブレットΨ(t)を式(2)に示す。マザーウェーブレットΨは、中心周波数f=ω/2πのガボールウェーブレットとする。
【0020】
【数2】
スケールパラメータaでスケーリングしたウェーブレットΨ(t/a)を式(3)に示す。
【0021】
【数3】
そして、中心周波数算出部11は、スケーリングしたウェーブレットを離散フーリエ変換して中心周波数を求める。ウェーブレットΨ(t/a)の中心周波数を式(4)にて算出する。なお、この算出は中心周波数算出ステップに相当し、中心周波数はパワースペクトルのピーク周波数である。
【0022】
【数4】
第1ウェーブレット係数算出部12は、中心周波数算出部11が算出した中心周波数と同じ周波数を有する正弦波からウェーブレット係数を算出する。なお、この算出は第1ウェーブレット係数算出ステップに相当し、このウェーブレット係数を第1ウェーブレット係数とする。
【0023】
まず、角周波数ωcの正弦波のウェーブレット係数を式(5)にて算出する。ここで、ω<0のときΨ=0と仮定する。
【0024】
【数5】
式(6)に示すようにωcをω0/aとする。
【0025】
【数6】
式(5)にて算出した第1ウェーブレット係数に式(4)及び式(6)を代入して、式(7)に示す第1ウェーブレット係数を得る。
【0026】
【数7】
第2ウェーブレット係数算出部13は、解析対象の入力信号x(t)からウェーブレット係数を算出する。なお、この算出は第2ウェーブレット係数算出ステップに相当し、このウェーブレット係数を第2ウェーブレット係数とする。
【0027】
【数8】
正規化処理部14は、第2ウェーブレット係数を第1ウェーブレット係数で除し、正規化することで式(9)を得る。この処理は正規化ステップに相当する。
【0028】
【数9】
よって、図3に示すように、入力信号Sの解析結果としてウェーブレット係数を得ることができる。解析結果は表示装置2に表示される。図3の縦軸は周波数であって、横軸が時間であって、濃淡がウェーブレット係数の絶対値のレベルである。縦軸の周波数においてウェーブレット係数を比較することができ、横軸の時間において定量的な評価をすることができる。
【0029】
次に、本実施形態の効果について説明する。
(1)マザーウェーブレットをスケーリングしたウェーブレットの中心周波数と同じ周波数を有する正弦波から第1ウェーブレット係数を算出して、解析対象の入力信号Sから第2ウェーブレット係数を算出して、第2ウェーブレット係数を第1ウェーブレット係数で正規化する。このため、正弦波入力を基準として、ウェーブレット係数を近似的に補正することができる。よって、出力結果のウェーブレット係数を異なる周波数の間で比較することができ、過渡信号におけるウェーブレット係数の絶対的な評価をすることができる。
【0030】
(他の実施形態)
上記実施形態は、以下のように変更して実施することができる。上記実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0031】
・上記構成において、信号解析装置をコンピュータ1としたが、信号解析専用のコンピュータであってもよいし、汎用のコンピュータに信号解析プログラムをインストールしてもよい。
【0032】
・上記実施形態において、信号解析の各式は一例であって、正弦波入力を基準として、ウェーブレット係数を近似的に補正することができれば、信号解析の各式は任意に変更可能である。
【符号の説明】
【0033】
1…コンピュータ
2…表示装置
10…演算部
11…中心周波数算出部
12…第1ウェーブレット係数算出部
13…第2ウェーブレット係数算出部
14…正規化処理部
図1
図2
図3