(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-19
(45)【発行日】2023-09-27
(54)【発明の名称】巻線形ロータタイプの同期電気機械のロータのためのワイヤ案内デバイス
(51)【国際特許分類】
H02K 3/52 20060101AFI20230920BHJP
【FI】
H02K3/52 F
(21)【出願番号】P 2021503794
(86)(22)【出願日】2019-06-24
(86)【国際出願番号】 EP2019066707
(87)【国際公開番号】W WO2020020551
(87)【国際公開日】2020-01-30
【審査請求日】2022-05-24
(32)【優先日】2018-07-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】507308902
【氏名又は名称】ルノー エス.ア.エス.
【氏名又は名称原語表記】RENAULT S.A.S.
【住所又は居所原語表記】122-122 bis, avenue du General Leclerc, 92100 Boulogne-Billancourt, France
(73)【特許権者】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】タバコリ, シャハブ
(72)【発明者】
【氏名】デル アグネーゼ, アントニー
【審査官】宮崎 賢司
(56)【参考文献】
【文献】独国特許出願公開第102015219685(DE,A1)
【文献】米国特許出願公開第2001/0006316(US,A1)
【文献】特開2002-369431(JP,A)
【文献】特開昭64-039246(JP,A)
【文献】特開2016-052193(JP,A)
【文献】特表2015-512234(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0016357(US,A1)
【文献】中国実用新案第201075800(CN,Y)
【文献】仏国特許出願公開第03062000(FR,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 3/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気機械
のロータ(1)を軸方向に通って延在するシャフト(2)の周りに分散された前記ロータの複数の極(30)の周りでの導電性ワイヤの巻付けのためのガイドデバイスであり、前記シャフト(2)に取り付けられ得るガイドヘッド(4)を備える、ガイドデバイスであって、前記ガイドヘッド(4)が、複数のレッグ(51)が設けられた金属基礎構造体(5)であって、前記複数のレッグ(51)は、中央オリフィス(53)が設けられた前記金属基礎構造体(5)の内側部分(52)から径方向に延在している、金属基礎構造体(5)と、前記中央オリフィス(53)の内部円筒状表面(53a)から引っ込んだ形で前記金属基礎構造体(5)上にオーバモールドされたプラスチック構造体(6)と、を備え、前記金属基礎構造体(5)の前記中央オリフィス(53)の前記内部円筒状表面(53a)が、前記ロータの前記シャフトと直接接触して締まり嵌めにより前記ロータの前記シャフトに取り付けられるように設計されるように、前記プラスチック構造体でオーバモールドされ
ず、前記金属基礎構造体(5)が、前記内側部分(52)の外側面から軸方向に突出する少なくとも1つの中実バランシング部(54、54’)を有し、前記少なくとも1つの中実バランシング部(54、54’)の径方向平面に延在する少なくとも1つの表面(54a、54’a)が、アクセス可能であるように、前記オーバモールドされたプラスチック構造体(6)が存在しないことを特徴とする、ガイドデバイス。
【請求項2】
前記金属基礎構造体(5)が、複数の中実バランシング部(54’)を備え、前記複数の中実バランシング部(54’)が、前記内側部分(52)の外縁(52a)の近傍に位置し、またそれぞれが前記金属基礎構造体(5)の2つのそれぞれのレッグ(51)間に延在することを特徴とする、請求項
1に記載のデバイス。
【請求項3】
前記オーバモールドされたプラスチック構造体(6)にわたって周方向に分散された複数の開口空洞(60)により、径方向の前記表面(54’a)には前記オーバモールドされたプラスチック構造体(6)が存在しないことを特徴とする、請求項
2に記載のデバイス。
【請求項4】
前記金属基礎構造体(5)が、打抜き加工または鋳造により、アルミニウムまたは鋼の合金から一体に作製されることを特徴とする、請求項1から
3のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項5】
ロータの軸の周りで回転するように取り付けられるように構成されたロータシャフト(2)と、前記ロータシャフト(2)に同軸に取り付けられた一連のラミネーション(3)であって、径方向に突出する複数の極(30)および少なくとも1つの軸方向開口部を有する、一連のラミネーション(3)と、各極に巻回されるように構成されている導電性ワイヤの巻線と、を有する、巻線形ロータタイプの同期電気機械のロータ(1)であって、前記一連のラミネーション(3)の両側で前記シャフト(2)に取り付けられた請求項1から
4のいずれか一項に記載のガイドデバイスを2つ備えることを特徴とする、ロータ(1)。
【請求項6】
前記一連のラミネーション(3)と各ガイドヘッド(4)との間に挿入されたバランシングプレート(7)を備えることにより、前記バランシングプレート(7)の外周円筒表面(71)がアクセス可能であることを特徴とする、請求項
5に記載のロータ。
【請求項7】
請求項
5または
6に記載のロータを組み立てるための方法であって、
前記一連のラミネーション(3)が締まり嵌めにより前記ロータシャフト(2)に取り付けられるのと同時に、前記一連のラミネーションの両側で前記ガイドヘッド(4)のそれぞれを締まり嵌めにより前記ロータシャフト(2)に取り付けるステップと、
前記ガイドヘッド(4)を用いて各極(30)に導電性ワイヤを巻回するステップと、
を含む、方法。
【請求項8】
前記金属基礎構造体(5)の前記少なくとも1つの中実バランシング部(54、54’)から材料を除去することにより前記ロータを釣り合わせるステップを含むことを特徴とする、請求項
7に記載の方法。
【請求項9】
前記バランシングプレート(7)から材料を除去することにより前記ロータを釣り合わせるステップを含むことを特徴とする、請求項
6に従属する請求項
7に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、巻線形ロータ同期電気機械の分野に関する。より詳細には、本発明は、電気機械ロータを軸方向に通って延在するシャフトの周りに分散されたロータの複数の極の周りでの導電性ワイヤの巻付けのためのガイドデバイスであって、シャフトに取り付けられ得るガイドヘッドを備える、ガイドデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
巻線形ロータタイプの同期電気機械のロータは、ロータの軸の周りで回転するように取り付けられるように構成されたロータシャフトと、ロータシャフトに同軸に取り付けられた一連のラミネーションであって、径方向に突出する複数の極を有する、一連のラミネーションと、各極に巻回されるように構成されている導電性ワイヤの巻線と、を有する。ロータの各極の周りで導電性ワイヤを案内するためのヘッドが、一連のラミネーションの両側に軸方向に配置され、各ガイドヘッドには、シャフトが通過するための中央オリフィスが設けられている。
【0003】
本発明の応用分野は、電気またはハイブリッドタイプの自動車両で使用される電気機械の分野である。
【0004】
特許文献FR2984034は、ラミネーションの積層体によって実現される極の周りに巻線のワイヤを固定するためのガイドデバイスを組み込む、電気牽引自動車両のための電気機械で特に使用される巻線形ロータを開示している。
【0005】
高速ロータは、厳しい動作状態、および、特に径方向における高い応力負荷にさらされる。特に、ロータの巻線は、ロータの動作中に高遠心力にさらされるので、適切に保持されなければならない。巻線ワイヤのための2つのガイドヘッド(「コイルヘッドガイド」とも呼ばれる)もまた、ロータの回転中に遠心力による応力を強く受け、したがって、そのような条件下で機能するように適合されなければならない。さらに、各ガイドヘッドは、慣例的にクラウンに固着され、このクラウンは、ロータのボディから独立した部品であり、かつ、ガイドヘッドを径方向に保持するための手段を形成するようにガイドヘッドの外周に配置される。より具体的には、クラウンは、ガイドヘッドの外周の周りに環状の構造を有し、その輪郭は、軸方向に配向されかつガイドヘッドの外周上に位置する羽根と、軸に向かって径方向に配向されかつガイドヘッドの各極の径方向端面上に位置する羽根とを有する、L形状を有するものである。クラウンがガイドヘッドに固定されることを可能にするために、クラウンは、その径方向羽根にオリフィスを有し、前述のオリフィスは、通しボルトの通過を可能にするように構成されている。ガイドヘッドの極の径方向端面、および一連のラミネーションは、通しボルトがロータの反対側までクラウン、ガイドヘッド、および一連のラミネーションを軸方向に通過することができるように、対応するオリフィスを有し、ロータの反対側では、反対側のクラウンから現れる各通しボルトの自由端上に止めナットが螺合される。典型的には通しボルトの塑性限界までである十分なトルクでナットが締め付けられると、組立体はしっかりと保持されて、ロータが高遠心力にさらされたときに、組み立てられた状態を維持する。
【0006】
しかし、ガイドヘッドを径方向に保持するためのこのクラウンのアレンジメントは、多数の部品、すなわちクラウン自体、通しボルトおよびナットを必要とし、結局は重量の増大をもたらすことになる。さらに、このアレンジメントは、多数の組立作業(通しボルトの通過、ナットを締める作業)を必要とするので、これらの作業の減少を目指すことが望ましい。
【0007】
場合により、ロータを釣り合わせるために、クラウンの径方向羽根の外部側面にバランシングリングが固定されてもよく、このリングは、その周囲に沿って分散された空洞を備える。ロータを釣り合わせる作業は、周方向に分散された空洞のうちのいくつかにバランシング錘を挿入すること、または、リングに穴を開けることによりリングから材料を除去することにある。しかし、このバランシングデバイスは、バランシングリングにバランシング錘が取り付けられるという欠点を有する。これは、重量にとって不利益になるほどのリングの存在、および、このバランシングリングをクラウンに固定する作業を、結果的に必要とする。
【0008】
金属製保持リングによりロータのラミネーションの積層体をロックすることもまた、知られた慣習であり、保持リングは、慣例的に、ラミネーションの積層体の両側でシャフトの周りに配置される。この配置は、特に事故が起きた際の衝撃からロータを保護することを可能にして、ラミネーションの積層体が、その初期位置に保持されることを確実にするが、ロータを軽量化すること、ロータの軸方向寸法を抑えること、およびロータ組立作業の数を減らすことの必要性と矛盾する。
【発明の概要】
【0009】
これを踏まえ、本発明は、上記のプリアンブルに記載されたその包括的定義に別の方法で従うガイドデバイスを提案することによりこれらの欠点を改善することを目指すものであり、このガイドデバイスは、前述のガイドヘッドが、中央オリフィスが設けられたその内側部分から複数のレッグが径方向に延在している金属基礎構造体と、前述の中央オリフィスの内部円筒状表面から引っ込んだ形で前述の金属基礎構造体上にオーバモールドされたプラスチック構造体と、を備え、前述の金属基礎構造体の前述の中央オリフィスの前述の内部円筒状表面が、ロータのシャフトと直接接触して締まり嵌めによりロータのシャフトに取り付けられるように設計されるように前述のプラスチック構造体でオーバモールドされないことを、基本的に特徴とする。
【0010】
このアレンジメントにより、単一の、特に剛体の部品で構成されるガイドヘッドが提供され、ロータのシャフトへの締まり嵌めによるガイドヘッドの金属部の取付けは、ガイドヘッドがシャフトに対して強固に保持されることを保証し、それにより、クラウンおよび関連する通しボルトによって保証されるこれまでの機能は、時代遅れのものとされ、クラウンおよび関連する通しボルトは、排除され得る。したがって、ロータ組立作業は、結果的に簡易化される。
【0011】
さらに、本発明によるガイドヘッドはまた、ラミネーションの積層体の各側でロータのシャフトに取り付けられたときに、特に衝突が起きた際にロータが受ける軸方向荷重を効率的に吸収することを可能にする。したがって、本発明によるガイドヘッドはまた、保持リングによって現在果たされている役割、つまりラミネーションの積層体をシャフト上の所定の位置に保つ役割を果たし、その結果、保持リングも排除することができる。
【0012】
有利には、前述の金属基礎構造体は、前述の内側部分の外側面から軸方向に突出する少なくとも1つの中実バランシング部を有し、径方向平面に延在するその少なくとも1つの表面は、アクセス可能であるように、前述のオーバモールドされたプラスチックが存在しない。特に、ロータバランシング作業が必要であることが判明した場合、この径方向表面は、金属基礎構造体の内側部分の外側面から突出する中実バランシング部から典型的には穴開けにより材料を除去することにより、ロータバランシングツールがアクセスできるようにすることができる。
【0013】
前述の内側部分の外縁の近傍に位置しまたそれぞれが前述の金属基礎構造体の2つのそれぞれのレッグの間に延在する、複数の中実バランシング部が設けられることが、好ましい。
【0014】
有利には、前述の径方向表面には、前述のオーバモールドされたプラスチック構造体にわたって周方向に分散された複数の開口空洞により、前述のオーバモールドされたプラスチック構造体が存在しない。
【0015】
有利には、前述の金属基礎構造体は、打抜き加工または鋳造により、アルミニウムまたは合金鋼から一体に作製される。
【0016】
本発明はまた、ロータの軸の周りで回転するように取り付けられるように構成されたロータシャフトと、ロータシャフトに同軸に取り付けられた一連のラミネーションであって、径方向に突出する複数の極および少なくとも1つの軸方向開口部を有する、一連のラミネーションと、各極に巻回されるように構成されている導電性ワイヤの巻線と、を有する、巻線形ロータタイプの同期電気機械のロータであって、前述の一連のラミネーションの両側でシャフトに取り付けられた上記のようなガイドデバイスを備えることを特徴とする、ロータに関する。
【0017】
1つの実施形態によれば、バランシングプレートが、その外部円筒状表面がアクセス可能であるように、前述の一連のラミネーションと各ガイドヘッドとの間に挿入され得る。特に、ロータバランシング作業が必要であることが判明した場合、この外部円筒状表面は、バランシングプレートから典型的には穴開けにより材料を除去することにより、ロータバランシングツールがアクセスできるようにすることができる。
【0018】
本発明はまた、上記のようなロータを組み立てるための方法に関し、前述の方法は、
前述の一連のラミネーションが締まり嵌めにより前述のロータシャフトに取り付けられるのと同時に、前述の一連のラミネーションの両側で前述のガイドヘッドのそれぞれを締まり嵌めによりロータシャフトに取り付けるステップと、
前述のガイドヘッドを用いて各極に導電性ワイヤを巻回するステップと、
を含む。
【0019】
有利には、ガイドヘッドの金属基礎構造体が上記のような少なくとも1つの中実バランシング部を備える場合、方法は、前述の金属基礎構造体の前述の少なくとも1つの中実バランシング部から材料を除去することによりロータを釣り合わせるステップを含み得る。
【0020】
有利には、上記のようなバランシングプレートを含むロータの実施形態によれば、方法は、前述のバランシングプレートから材料を除去することによりロータを釣り合わせるステップを含み得る。
【0021】
本発明のさらなる具体的な特徴および利点は、添付の図面を参照しながら、非限定的な指標として与えられた本発明の特定の実施形態に関する以下の説明を読めば、明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の1つの実施形態によるガイドヘッドの金属基礎構造体の斜視図を概略的に示す。
【
図2】
図1における実施形態によるオーバモールドされたガイドヘッドの部分断面斜視図を概略的に示す。
【
図3】
図2に示されたオーバモールドされたガイドヘッドの断面図を概略的に示す。
【
図4】ロータのシャフトに取り付けられた本発明の1つの特定の実施形態によるオーバモールドされたガイドヘッドの斜視図を概略的に示す。
【
図5】本発明の別の特定の実施形態によるオーバモールドされたガイドヘッドの部分断面斜視図を概略的に示す。
【
図6】ロータに取り付けられた
図5のガイドヘッドおよび1つの特定の実施形態によるバランシングプレートを含む本発明によるロータの分解組立図を概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図6は、電気機械のロータ1を概略的に示す。ロータ1は、ロータ1を軸方向に通って延在するシャフト2を備える。
【0024】
一連のラミネーション3が、ロータシャフトに同軸に取り付けられる。この一連のラミネーション3は、ロータシャフトの軸に直角な径方向平面に延在する、ラミネーションの軸方向積層体によって形成される。この径方向平面では、一連のラミネーションのラミネーションはみな、同一の外形を有する。この一連のラミネーションは、突出する極30を有し、これらの極30は、周方向に規則正しく分散され、かつ、シャフトからロータの外周に向かって突出する。図を参照しながら説明される例示的な実施形態では、一連のラミネーションは、8つの突出する極30を有する。しかし、本発明は、このタイプの構成に限定されるものではなく、複数の突出する極、好ましくは少なくとも3つの極を有する一連のラミネーションに適用される。
【0025】
一連のラミネーション3は、締まり嵌めにより、ロータのシャフト2の円筒状外表面に取り付けられる。したがって、一連のラミネーション3は、ロータのシャフトの円筒状外表面に高温状態で取り付けられる。
【0026】
各極30は、ロータの外周に向かって径方向に延在するアーム31で構成される。極20の自由端32は、アーム31の両側で周方向に突出する折返し部(retour)で終端する。各極30の突出する折返し部32の機能は、各極30の径方向アーム31に巻回される導電性励磁巻線をロータの回転中に励磁巻線が受ける遠心力に逆らって径方向において保持することである。
【0027】
したがって、各極30は、励磁巻線を有する。そのうちの1つだけが
図6に示されているガイドヘッド4が、各極30の周りで励磁巻線を構成する導線を案内するために、一連のラミネーション3の両側でロータのシャフト2と同軸に取り付けられる。一連のラミネーション3の両側に配置される各ガイドヘッド4は、ロータのシャフトの軸に直角な径方向平面に延在するディスクの全体形状を有する。
【0028】
図1から3は、そのようなガイドヘッドの構造をより詳細に示し、このガイドヘッドは、本発明によれば、
図1に示されるような金属基礎構造体5で構成されるという具体的な特徴を有し、金属基礎構造体5は、
図2および3に示されるように、プラスチック構造体6でオーバモールドされる。
【0029】
言い換えれば、本発明によれば、金属基礎構造体5は、好ましくはアルミニウムまたは合金鋼で作られるガイドヘッド4の金属インサートを構成し、前述のガイドヘッド4は、ガイドヘッド4のプラスチック構造体6を形成する熱硬化性プラスチック材料などの高機械的強度のプラスチック材料を用いてこの金属インサート5をオーバモールドして少なくとも部分的に被覆することによって得られる。
【0030】
図1に示されるように、金属インサート5は、インサートの内側部分52から径方向に延在する複数の、例えば8つのレッグ51を備え、前述の内側部分52は、ガイドヘッドが取り付けられるように構成されているロータのシャフトへの同軸性の取付けのための中央オリフィス53を備える。
【0031】
金属インサート5の各レッグ51は主要部分51aを有し、この主要部分51aは、内側部分52の外側縁部52aから径方向に延在し、かつ、その対向端部において2つの肩51b、51cにより外側縁部52aから区切られる。
【0032】
図1から3に示されるような金属インサート5は、好ましくは金属シートを打抜き加工することによって得られる。
【0033】
したがって、金属インサート5の各径方向レッグ51は、プラスチック構造体6でオーバモールドされると、巻付けを可能にするためにロータ1のそれぞれの極30の隣に位置決めされるように構成されたガイドヘッド4の径方向レッグを形成する。より具体的には、主要部分51aは、オーバモールドされるプラスチック構造体6で被覆されると、一連の導線を受け入れるように構成され、主要部分51aにオーバモールドされる前述のプラスチックは、ロータ1の一連のラミネーション2の各極30の径方向アーム31の隣に配置されるが、オーバモールドされるプラスチック構造体6で同様に被覆される2つの肩51b、51cは、各極30のアーム31の両側で周方向に突出する折返し部32の隣に配置されるように構成されている。したがって、各極の励磁巻線の導線は、2つの肩の間でガイドヘッドの対応するレッグの主要部分の周りに肩に平行な方向に巻かれる。
【0034】
本発明によれば、金属インサート5上にオーバモールドされるプラスチック構造体6は、金属インサート5の中央オリフィス53の内部円筒状表面53aに対して引っ込められることになっている。言い換えれば、この金属の内部円筒状表面53aは、プラスチック層6でオーバモールドされず、その結果、内部円筒状表面53aは、ガイドヘッドが締まり嵌めによりロータのシャフトに取り付けられるように、ロータのシャフトの外部円筒状表面21に直接接触することができる。言い換えれば、2つの同心性の表面、すなわちロータのシャフトの外部円筒状表面21とガイドヘッド4の内部円筒状表面53aは、それぞれ締まり嵌めによって継合される。
【0035】
ガイドヘッド4は、有利には、一連のラミネーション3が締まり嵌めによりロータシャフトに取り付けられるのと同時に、締まり嵌めによりロータシャフトに固定される。次いで、ロータの極の周りにワイヤを巻き付ける作業が行われ得る。
【0036】
したがって、ガイドヘッド4はまた、単純に締まり嵌めによりシャフトに取り付けられるので、ラミネーションの積層体のどちらかの側で保持リングとして機能する。具体的には、ガイドヘッド上の巻線の量は、ロータの極上の巻線の量と比較して、ささいなものである。ラミネーションの積層体は、巻線質量の慣性による分離の危険性がガイドヘッドよりも高く、そのため、締まり嵌めによるシャフトへの後者の取付けは、ラミネーションの積層体を慣性回転に対してロックするのに十分であろう。
【0037】
プラスチック構造体でオーバモールドされる金属基礎構造または金属インサートで構成される、上記のような本発明によるガイドヘッドの設計は、ガイドヘッドのより優れた補剛を保証して、特にロータの動作中に及ぼされ得る高遠心力に関して破壊および亀裂の危険性に対するより大きな抵抗力を提供することを可能にする。
【0038】
この設計はまた、クラウンおよび関連する通しボルトならびに保持リングなどの部品を排除することを可能にして、ロータの軽量化、およびロータ組立作業の数の減少をもたらす。
【0039】
図2および3を参照すると、金属インサート5上にオーバモールドされるプラスチック構造体6は、その外側面上に、すなわちガイドヘッドがロータに取り付けられたときのガイドヘッドに対してロータのラミネーションの積層体とは反対の面上に、周方向に分散された空洞60を備えることができ、この空洞60は、径方向平面に延在する開口部60aを介してガイドヘッドの外側に向かって軸方向に開口している。各空洞60は、ガイドヘッド4の2つの径方向レッグ間で周方向に延在することが好ましい。ガイドヘッド4のオーバモールドされたプラスチック構造体6におけるこれらの空洞60は、起こり得るロータ釣り合わせ不良を改善するためにバランシング錘を受け入れるのに、より特に適している。
【0040】
図4および5は、本発明によるガイドヘッドの特定の実施形態に関し、このガイドヘッドは、ロータの釣り合わせが必要であることが判明した場合に追加のバランシング錘をロータに加えることを必要とせずにロータ上での質量の分散を任意に修正することを可能にするように設計されている。
【0041】
この目的のために、
図4を参照すると、ガイドヘッドの金属インサートは、中実バランシング部54を有するという点で適しており、この中実バランシング部54は、金属インサートの内側部分の外側面から軸方向に突出し、かつ、径方向平面に延在する表面54aを有し、中実バランシング部54のこの径方向表面54aは、アクセス可能とされ得るように、オーバモールドされたプラスチック構造体6が存在しない。したがって、この径方向表面54aは、ガイドヘッドの金属インサートの外側面から突出するこの中実バランシング部54から例えば穴開けにより材料を除去することにより、ロータバランシングツールに軸方向におけるアクセスを提供することを可能とし、それにより、ロータの質量の分布を修正することが可能になる。
【0042】
金属インサートの外側面とは、ロータの外側に向かって軸方向に配向される面、すなわちガイドヘッドがロータに取り付けられたときガイドヘッドに対してラミネーションの積層体から離れる方向に軸方向に配向される面であると理解されることが、留意されるべきである。
【0043】
図4における特定の実施形態によれば、金属インサートの中実バランシング部54は、外側面から突出する連続的なクラウンを形成し、その内部円筒状表面54bは、金属インサートの中央オリフィスの近くに延在し、その外部円筒状表面54cは、金属インサートの内側部分の外側縁部の近くに延在する。
【0044】
中実バランシング部54の径方向表面54aはまた、中実バランシング部54の内部円筒状表面54bと外部円筒状表面54cとの間に延在する径方向溝54dを備え、この径方向溝54dは、巻線のための通路を提供すること、および、バランシング作業中にそれらを保護するように構成されている。
【0045】
図5は、ガイドヘッド4の金属インサート5上に設けられたバランシング手段の変形実施形態を示す。この変形実施形態によれば、金属インサート5のバランシング手段は、複数の中実バランシング部54’で構成され、これらの中実バランシング部54’は、金属インサート5の内側部分52の外側縁部52aの近くで外側面から軸方向に突出し、また、それぞれが、金属インサート5の2つのそれぞれのレッグ51間に延在する。次いで、プラスチック構造体6の空洞60が、これらの空洞60の外側に向かう開口部60aによりこれらの中実バランシング部54’のそれぞれの各径方向表面54’aにはオーバモールドされたプラスチック構造体6が存在しないように、この複数の突出する中実バランシング部54’の周りにオーバモールドされる。径方向表面54’aは、空洞60の開口部60aの平面に同一平面であるように配置される。
【0046】
これに関連して、ガイドヘッドの金属インサートに一体化されたロータバランシング手段を説明する
図4および5に示されたガイドヘッドの実施形態は、好ましくは鋳型造形によって得られる金属インサート5を製造する方法を適応させることを必要とする。
【0047】
図6は、可能なロータバランシング作業を実現するためのさらに別の実施形態を説明する。この実施形態によれば、その形状がロータの極の外形に厳密に一致する、鋳造によって作製された金属バランシングプレート7が、一連のラミネーション3と一連のラミネーション3のどちらかの側に軸方向に配置された各ガイドヘッド4との間でシャフトに取り付けられる。このバランシングプレート7は、外部周辺円筒状表面71を有し、この外部周辺円筒状表面71は、ロータの質量の分布の修正が必要であることが判明した場合にこのバランシングプレートから例えば穴開けにより材料を除去することにより、ロータバランシングツールに径方向におけるアクセスを提供することができる。