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特許7351923希土類ハロゲン化物シンチレーション材料
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-19
(45)【発行日】2023-09-27
(54)【発明の名称】希土類ハロゲン化物シンチレーション材料
(51)【国際特許分類】
   C09K 11/85 20060101AFI20230920BHJP
   C09K 11/00 20060101ALI20230920BHJP
   C09K 11/08 20060101ALI20230920BHJP
   G01T 1/20 20060101ALI20230920BHJP
   G01T 1/202 20060101ALI20230920BHJP
   G01N 23/22 20180101ALI20230920BHJP
【FI】
C09K11/85
C09K11/00 E
C09K11/08 A
G01T1/20 B
G01T1/202
G01N23/22
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021555345
(86)(22)【出願日】2020-10-30
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-05-18
(86)【国際出願番号】 CN2020125172
(87)【国際公開番号】W WO2021083316
(87)【国際公開日】2021-05-06
【審査請求日】2021-09-13
(31)【優先権主張番号】201911058510.3
(32)【優先日】2019-11-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】515330421
【氏名又は名称】有研稀土新材料股▲フン▼有限公司
(73)【特許権者】
【識別番号】519229622
【氏名又は名称】有研稀土高技術有限公司
【氏名又は名称原語表記】GRIREM HI-TECH CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】North of Gushan South Road And East Of Happiness Road,Hi-tech industrial zone,Yanjiao Town,Sanhe City, Langfang City, Hebei 065200, China
(73)【特許権者】
【識別番号】521180371
【氏名又は名称】河北雄安稀土功能材料創新中心有限公司
【氏名又は名称原語表記】Rare Earth Functional Materials (Xiong’an) Innovation Center Co., Ltd.
【住所又は居所原語表記】No.97-1, Jianli Road, Gouxi Village, Chengguan Town, Rongcheng County, Baoding City, Hebei 071700, P.R.China
(74)【代理人】
【識別番号】110002262
【氏名又は名称】TRY国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】余 金秋
(72)【発明者】
【氏名】羅 亮
(72)【発明者】
【氏名】▲ディアオ▼ 成鵬
(72)【発明者】
【氏名】崔 磊
(72)【発明者】
【氏名】呉 浩
(72)【発明者】
【氏名】何 華強
【審査官】黒川 美陶
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第07405404(US,B1)
【文献】国際公開第2019/168169(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/128388(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K 11/00-11/89
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
希土類ハロゲン化物シンチレーション材料であって、
前記希土類ハロゲン化物シンチレーション材料の化学式は、La1-xCeBr3+yであり、0.001≦x≦1、0.0001≦y≦0.1であり、前記希土類ハロゲン化物シンチレーション材料には、Ce3+とCe4+の両方が含有されCeイオンの見掛けの原子価が+3価と+4価の間にあることである、ことを特徴とする希土類ハロゲン化物シンチレーション材料。
【請求項2】
0.005≦x≦0.1、0.001≦y≦0.05である、ことを特徴とする請求項1に記載の希土類ハロゲン化物シンチレーション材料。
【請求項3】
x=1、0.001≦y≦0.05である、ことを特徴とする請求項1または2に記載の希土類ハロゲン化物シンチレーション材料。
【請求項4】
前記希土類ハロゲン化物シンチレーション材料は単結晶である、ことを特徴とする請求項3に記載の希土類ハロゲン化物シンチレーション材料。
【請求項5】
前記希土類ハロゲン化物シンチレーション材料は、ブリッジマン法によって成長させることによって得られる、ことを特徴とする請求項4に記載の希土類ハロゲン化物シンチレーション材料。
【請求項6】
シンチレーション検出器であって、
請求項1~5の何れか1項に記載の希土類ハロゲン化物シンチレーション材料を含む、ことを特徴とするシンチレーション検出器。
【請求項7】
陽電子放出断層撮影であって、
請求項6に記載のシンチレーション検出器を含む、ことを特徴とする陽電子放出断層撮影。
【請求項8】
ガンマ線スペクトロメータであって、
請求項6に記載のシンチレーション検出器を含む、ことを特徴とするガンマ線スペクトロメータ。
【請求項9】
油井探査装置であって、
請求項6に記載のシンチレーション検出器を含む、ことを特徴とする油井探査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無機シンチレーション材料の分野に関し、特に、希土類ハロゲン化物シンチレーション材料に関する。
【背景技術】
【0002】
シンチレーション材料は、アルファ線、ガンマ線、X線などの高エネルギー線、および中性子などの高エネルギー粒子の検出に使用でき、核医学、高エネルギー物理、安全検査、油井探査などの分野で広く応用されている。
【0003】
シンチレーション材料は通常、単結晶の形で適用され、場合によってはセラミックまたは他の形で適用されることもできる。
【0004】
応用分野が異なれば、シンチレーション材料の性能に対する要件も異なる。しかし、多く場合の応用分野では、シンチレーション材料が可能な限り高い光収量、可能な限り短い減衰時間、および可能な限り高いエネルギー分解能を有することが望まれる。特に、陽電子放出断層撮影(positron emission tomography、PET)等の核医学イメージング装置の場合、これらのパラメータは画質に対して極めて重要である。
【0005】
2001年にE.V.D.van Loefなどによって開示されたLaBr:Ce結晶は、非常に高い光出力(>60000ph /MeV)、非常に短い減衰時間(<30ns)、また非常に高いエネルギー分解能(約3%@662 keV)を有する、性能が極めて優れたシンチレーション材料である。
【0006】
LaBr:Ce結晶の発光中心はCe3+である。従来技術では、アルカリ土類金属イオンを使用してドーピングすることによって、LaBr:Ce結晶のエネルギー分解能およびエネルギー応答の線形性などの性能をさらに改善することができる。実際、前記方法は、Ce3+で活性化されたケイ酸ルテチウムおよびケイ酸イットリウムルテチウム結晶の性能を改善するためにも使用されている。しかし、アルカリ土類金属イオンは、結局不均一な不純物であり、希土類イオンとは半径や原子価状態に違いがあり、このようなドーピングは結晶成長欠陥を引き起こしやすく、また、分離現象により結晶の異なる部分にアルカリ土類金属イオンのドーピング濃度の不一致をもたらし、さらに、結晶性能の均一性に影響を及ぼしている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、組成を制御することにより、LaBr3:Ceシンチレーション材料の性能をさらに向上させ、より優れた総合性能を有する新しい材料を得、前記新しい材料に基づいて異なるシーンで適用することである。
【0008】
上記の目的を達成するために、本発明の第1の態様により、化学式がLa1-xCeBr3+yであり、ここで、0.001≦x≦1、0.0001≦y≦0.1である希土類ハロゲン化物シンチレーション材料が提供される。
【0009】
さらに、0.005≦x≦0.1、0.001≦y≦0.05である。
【0010】
さらに、x=1、0.001≦y≦0.05である。
【0011】
さらに、前記希土類ハロゲン化物シンチレーション材料には、Ce3+とCe4+の両方が含有される。
【0012】
さらに、前記希土類ハロゲン化物シンチレーション材料は単結晶である。
【0013】
さらに、前記希土類ハロゲン化物シンチレーション材料は、ブリッジマン法によって成長させることによって得られる。
【0014】
本発明の第2の態様により、前記のような希土類ハロゲン化物シンチレーション材料を含む、シンチレーション検出器が提供される。
【0015】
本発明の第3の態様により、前記のようなシンチレーション検出器を含む、陽電子放出断層撮影が提供される。
【0016】
本発明の第4の態様により、前記のようなシンチレーション検出器を含む、ガンマ線スペクトロメータが提供される。
【0017】
本発明の第5の態様により、前記のようなシンチレーション検出器を含む、油井探査装置(Oil well logging)が提供される。
【0018】
本発明の第6の態様により、前記のようなシンチレーション検出器を含む、岩相スキャンイメージャー(Lithologic scan imager)が提供される。
【0019】
本発明の上記の技術的解決策は、以下の有益な技術的効果を有する。本発明によって得られる希土類ハロゲン化物シンチレーション材料は、極めて優れたシンチレーション性能を有し、総合性能が従来の非ドープ臭化ランタン結晶よりも著しく優れており、結晶均一性がアルカリ土類金属イオンをドープした臭化ランタン結晶よりも優れており、結晶成長の歩留まりが著しく向上している。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の目的、技術的解決策、および特徴をより明確にするために、以下、具体的な実施形態を参照しながら本発明をさらに詳細に説明する。これらの説明は単なる例示であり、本発明の範囲を限定するものではないことを理解されたい。さらに、以下の説明では、本発明の概念を不必要に混乱させることを回避するために、周知の構造および技術の説明を省略している。
【0021】
本発明の第1の態様により、希土類ハロゲン化物シンチレーション材料が提供される。前記希土類ハロゲン化物シンチレーション材料の化学組成は、以下の一般式を有する。前記材料の化学式はLa1-xCeBr3+yであり、ここで、0.001≦x≦1、0.0001≦y≦0.1である。
【0022】
さらに、0.005≦x≦0.1、0.001≦y≦0.05であり、さらに好ましくは、x=1、0.001≦y≦0.05である。
【0023】
前記希土類ハロゲン化物シンチレーション材料は、粉末、セラミックまたは単結晶であり得るが、好ましくは単結晶形態で適用され、単結晶はブリッジマン法によって成長させることによって得ることができる。
【0024】
本発明の顕著な特徴は、本発明によって提供される希土類ハロゲン化物シンチレーション材料がCe3+およびCe4+の両方を含有し、Ceイオンの見掛けの原子価が+3価と+4価の間にあることである。本発明は、希土類イオンとハロゲンイオンの比率を調整することによって、Ce4+の含有量を調整し、それにより、希土類ハロゲン化物シンチレーション材料の性能の向上を実現する。
【0025】
本発明は、LaBr:Ce結晶のドーピング変更スキームをさらに改善することによって、従来のドーピング案において、LaBr:Ce結晶にアルカリ土類金属イオンヘテロをドーピングすることによって、成長欠陥および結晶シンチレーション性能の一貫性が不十分であることを引き起こしやすい問題を解決することができる。本発明の実施形態では、LaBr:Ce中のハロゲンイオンを過剰にし、それと希土類イオンとの化学量論比3:1から逸脱し、電荷バランスに基づいて、Ce3+の一部がCe4+に変換されるように誘導し、これにより結晶性能の均一性を改善する効果があり、不均一なドーピングによって引き起こされる成長欠陥や分離不均一などの問題が効果的に回避される。
【0026】
本発明の実施形態は、以下の方法を採用して化学式がLa1-xCeBr3 + yである、希土類ハロゲン化物シンチレーション材料を得る。
【0027】
方法の1:Br蒸気を含む環境で、LaBr:Ce結晶を成長させるために使用される無水LaBr、CeBr原料を加熱し、これにより、少量のBr蒸気を吸収できるため、原料中の希土類イオンに対するBrのモル比が、化学量論比3:1よりも大きくなる。Br蒸気濃度と加熱時間を制御することにより、Br余剰量の異なる臭化ランタンおよび臭化セリウム原料を得ることができる。このようなBrに富んだ臭化ランタンおよび臭化セリウム原料を使用して単結晶成長を行うことによって、本発明に係る一般式がLa1-xCeBr3+yである希土類ハロゲン化物シンチレーション材料を得ることができる。
【0028】
方法の2:まず、化学量論比のLaBr、CeBr原料を使用して、化学量論比を満たすLaBr:Ce結晶を成長させ、次に、結晶を一部のBr蒸気を含有する乾燥不活性ガス、例えば、Arガスの中でアニールすることによって、LaBr:Ce結晶中のBrが化学量論比を超え、本発明に係る一般式がLa1-xCeBr3+yである希土類ハロゲン化物シンチレーション材料を得る。
【0029】
本発明の実施形態によれば、本発明で得られる希土類ハロゲン化物シンチレーション材料は、極めて優れたシンチレーション性能を有し、総合性能は、従来の非ドープ臭化ランタン結晶の性能よりも著しく優れており、結晶均一性は、アルカリ土類金属イオンがドープされた臭化ランタン結晶より著しく優れており、同時に結晶成長の歩留まりが著しく向上している。
【0030】
本発明の技術的アイデアは、他のCeで活性化された希土類ハロゲン化物シンチレーション材料に適用しても、良好な実施効果を有することが見出されている。
【0031】
本発明におけるBrイオンの余剰量yは、比較的狭い範囲に限定されることに留意されたい。 本発明において、Brイオン余剰量の値の範囲は、0.0001≦y≦0.1であり、好ましい範囲は0.001≦y≦0.05である。本発明の範囲内で、結晶は無色または淡黄色であり、優れたシンチレーション性能を有する。Brイオンの余剰量が多すぎると、結晶がより明らかな黄色を呈し、光収量の低下、エネルギー分解能の低下、減衰時間の延長などの問題を引き起こす。
【0032】
本発明は、上記の希土類ハロゲン化物シンチレーション材料を含むシンチレーション検出器、および前記シンチレーション検出器を含む陽電子放出断層撮影、ガンマ線スペクトロメータ、油井探査装置、または岩相スキャンイメージャーにも関する。
【0033】
以下、具体的な実施形態を参照しながら、本発明の有益な効果をさらに説明する。
【0034】
比較例1:Arを充填したグローブボックスに、119.89gの無水LaBr(99.99%)および6.33gの無水CeBr(99.99%)を正確に量り取り、それらを均一に混合した後、直径25mmの石英るつぼに入れる。グローブボックスから石英るつぼを取り出し、すぐに真空システムに接続して真空にし、真空度が1×10-3Paに達したら、溶融して密閉する。るつぼは、単結晶成長のために、ブリッジマン結晶炉に入れる。高温領域の温度は850℃で、低温領域の温度は700℃で、勾配領域の温度勾配は約10℃/cmであり、るつぼの下降速度は0.5~2mm/hであり、総成長時間は約15日である。得られた結晶は透明で無色で、長さは約5cmである。 グローブボックス内で、結晶をΦ25mm×25mmの円筒状サンプルに切断して加工し、光収量、減衰時間、エネルギー分解能試験および結晶組成分析を行う。
【0035】
比較例2:Arを充填したグローブボックスに、119.89gの無水LaBr(99.99%)、6.33gの無水CeBr(99.99%)および0.041gの無水SrBr(99.99%)を正確に量り取り、それらを均一に混合した後、直径25mmの石英るつぼに入れる。残りの操作は、比較例1と同じである。
【0036】
実施例1:Arを充填したグローブボックスに、119.89gの無水LaBr(99.99%)および6.46gの無水CeBr3.1(99.99%)を正確に量り取り、それらを均一に混合した後、直径25mmの石英るつぼに入れる。残りの操作は、比較例1と同じである。
【0037】
実施例2~7は、原材料の調合比率が異なることを除いて、残りの操作は、実施例1と同じである。
【0038】
すべての実施例の詳細な比較状況を、表1に示す。
【0039】
【0040】
上記のように、本発明により、化学式がLa1-xCeBr3+yであり、ここで、0.001≦X≦1、0.0001≦y≦0.1である、希土類ハロゲン化物シンチレーション材料が提供される。本発明によって得られる希土類ハロゲン化物シンチレーション材料は、極めて優れたシンチレーション性能を有し、総合性能が従来の非ドープ臭化ランタン結晶よりも著しく優れており、結晶均一性がアルカリ土類金属イオンをドープした臭化ランタン結晶よりも著しく優れており、同時に結晶成長の歩留まりが著しく向上している。
【0041】
本発明の上記の具体的な実施形態は、本発明の原理を例示的に説明または解釈するためにのみ使用され、本発明を限定するものではないことを理解されたい。したがって、本発明の精神および範囲から逸脱することなく行われた如何なる修正、均等置換、改善などは、何れも本発明の保護範囲に含まれるべきである。さらに、本発明に添付された特許請求の範囲は、添付の特許請求の範囲および境界、またはこのような範囲および境界の同等の形態に含まれるすべての変更および修正例を網羅することを意図している。