(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-19
(45)【発行日】2023-09-27
(54)【発明の名称】エネルギーハーベスティングセンサ装置を備えるデジタルツインシステム
(51)【国際特許分類】
H04M 11/00 20060101AFI20230920BHJP
H04Q 9/00 20060101ALI20230920BHJP
G16Y 20/10 20200101ALI20230920BHJP
【FI】
H04M11/00 301
H04Q9/00 301Z
G16Y20/10
(21)【出願番号】P 2021560326
(86)(22)【出願日】2020-03-27
(86)【国際出願番号】 US2020025145
(87)【国際公開番号】W WO2020205484
(87)【国際公開日】2020-10-08
【審査請求日】2021-11-22
(32)【優先日】2019-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】521440530
【氏名又は名称】スマートラック テクノロジー フレッチャー インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】SMARTRAC TECHNOLOGY FLETCHER,INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100101683
【氏名又は名称】奥田 誠司
(74)【代理人】
【識別番号】100155000
【氏名又は名称】喜多 修市
(74)【代理人】
【識別番号】100139930
【氏名又は名称】山下 亮司
(74)【代理人】
【識別番号】100188813
【氏名又は名称】川喜田 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100202142
【氏名又は名称】北 倫子
(72)【発明者】
【氏名】バール,ウィリアム
(72)【発明者】
【氏名】ホァン,ビン
【審査官】山岸 登
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2018/0054376(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0196409(US,A1)
【文献】特表2017-528800(JP,A)
【文献】特開2016-213839(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0357525(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G16Y10/00-40/60
H03J9/00-9/06
H04M3/00
3/16-3/20
3/38-3/58
7/00-7/16
11/00-11/10
H04Q9/00-9/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
動的デジタルツインを構成するためのシステムであって、
少なくとも1つの物理的パラメータをリアルタイムでモニタリングする少なくとも1つのエネルギーハーベスティングセンサと、
前記少なくとも1つのエネルギーハーベスティングセンサによって生成されたセンサデータを無線で読み取る
複数のリーダと、
各リーダと通信するゲートウェイであって、各リーダからセンサデータを取得し、各リーダからの前記センサデータを統合するように構成されているゲートウェイと、
前記
ゲートウェイと通信するモノのインターネットハブ
であって、前記ゲートウェイは、前記センサデータを前記モノのインターネットハブに送信するように構成されている、モノのインターネットハブと、
前記エネルギーハーベスティングセンサと関連する物理的客体又は空間の物理的幾何学的モデルを保存するデータストレージと、
前記モノのインターネットハブ及び前記データストレージと通信するプロセッサであって、前記モノのインターネットハブからセンサデータを受信し、データストレージから物理的幾何学的モデルデータを受信して、前記センサデータを前記物理的客体又は空間の物理的幾何学的モデルと関連付け、前記センサデータを前記物理的幾何学的モデルと融合させて動的デジタルツインを生成するようプログラミングされたプロセッサと、を含むシステム。
【請求項2】
前記モノのインターネットハブと通信するサーバをさらに含み、前記サーバはデジタルツインをホスティングする、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記エネルギーハーベスティングセンサ間の通信は、低レベルリーダプロトコル(LLRP)を用いて提供される、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記リーダとゲートウェイとの通信及び前記ゲートウェイとモノのインターネットハブとの通信は、メッセージキューテレメトリトランスポート(MQTT)を用いて提供される、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記リーダとゲートウェイとの通信及び前記ゲートウェイとモノのインターネットハブとの通信は、HTTP/HTTPSプロトコルを用いて提供される、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記モノのインターネットハブ、前記データストレージ、及び前記
プロセッサは、モノのインターネットサービス型プラットフォーム(IoT PaaS)に
おいて提供される、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記エネルギーハーベスティングセンサは、受動型RFIDセンサである、請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
前記受動型RFIDセンサは、固有識別子を生成し、前記固有識別子に基づいて前記センサを識別するようプロセッサがプログラミングされる、請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
前記物理的幾何学的モデルは、物理的空間又は客体のコンピュータ支援設計モデルである、請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
前記物理的幾何学的モデルは、地理学的マップである、請求項1に記載のシステム。
【請求項11】
前記物理的幾何学的モデルは、複数のエネルギーハーベスティングセンサの各々の位置を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項12】
前記プロセッサは、シミュレーションモデルを提供し、前記シミュレーションモデルにセンサデータを統合させるよう、さらにプログラミングされる、請求項1に記載のシステム。
【請求項13】
前記リーダは、Wi―Fiリーダ、狭帯域モノのインターネットリーダ、又は無線通信プロトコルのうちの少なくとも1つである、請求項1に記載のシステム。
【請求項14】
前記モノのインターネットハブ、前記データストレージ、及び前記
プロセッサは、ローカルエリアネットワークのサーバ
上で提供される、請求項1に記載のシステム。
【請求項15】
動的デジタルツインを生成するための方法であって、
少なくとも1つのエネルギーハーベスティングセンサでリアルタイム
のセンサデータを取得するステップ
であって、前記少なくとも1つのエネルギーハーベスティングセンサによって生成されたセンサデータを、複数のリーダを用いて無線で読み取ることを含むステップと、
前記複数のリーダの各々から取得した前記センサデータを、各リーダと通信するゲートウェイによって統合するステップと、
取得した
前記センサデータを
、前記ゲートウェイと通信するモノのインターネットハブを介して、データ融合プロセッサに送信するステップと、
取得した
前記センサデータを前記センサと関連する物理的空間又は客体を規定するデータと関連付けるステップと、
前記センサデータと
前記物理的
空間又は客体を規定するデータとを融合させるステップと、
前記センサデータを含む
前記物理的空間又は客体の動的デジタルツインを構成するステップと、
を含む、方法。
【請求項16】
前記エネルギーハーベスティングセンサは、受動型RFIDセンサである、請求項
15に記載の方法。
【請求項17】
前記受動型RFIDセンサは、固有識別子(UID)をリーダに送信する、請求項
16に記載の方法。
【請求項18】
前記デジタルツインを用いて資産追跡、プロセス計画、モニタリング、及びデータ視覚化のうちの少なくとも1つを提供するステップをさらに含む、請求項
15に記載の方法。
【請求項19】
前記センサデータの離散的な読み取り値の間を補間するステップをさらに含む、請求項
15に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2019年3月29日に出願された米国仮特許出願第62/826,183号の優先権を主張し、全ての目的のためにその内容全体を本明細書に参照として含む。
【背景技術】
【0002】
本発明は、バッテリがないエネルギーハーベスティングの非接触送信センサデータ及び前記データを通信及び融合する方法に基づいたデジタルツインに関する。
【0003】
デジタルツインは、物理的客体又は空間のデジタル表現、並びにその全てのコンテンツ及び/又は一連のセンサデータの表現である。前記デジタルツインは、物理的装置の形状や位置等の物理的客体データと、最終の動的デジタルツインに融合し得る非有形のセンサデータを何れも含むことができる。よって、デジタルツインは、静的部分、静的データ及び動的データをセンシングするためのセンサ、並びにシミュレーションモデル又はエミュレーションモデルを含むことができる。
【0004】
デジタルツインの静的部分は、3D形状又はその相対客体のGIS情報を示す幾何学的モデルを含む。例えば、前記モデルは、2D/3Dコンピュータ支援設計(CAD:Computer Aided Design)モデル、地理学的マップ又は多数のCAD構成要素のアセンブリを使用するか、或いは、離散点をサンプリングした後、面と辺に再構成することにより物理的空間や装置を複製するために、有形(「物理的」)客体を測定するか又はレーザスキャンすることによって生成できる。
【0005】
また、前記デジタルツインの静的部分は、静的センサを含む。静的センサは、幾何学的モデルにタギングできる。前記幾何学的モデルは、デジタルモデルにおける全てのセンサの相対的位置を識別するための参照として機能する。
【0006】
前記デジタルツインの動的部分は、ツイン又はそのコンテンツの状態若しくは挙動の変化に由来するリアルタイムデータを含むことができる。例えば、動的センサは、ツイン又はそのコンテンツの状態/挙動の変化からリアルタイムデータを提供することができる。多くのデジタルツインシステムは、リアルタイムセンサデータと、シミュレーション技術又はエミュレーション技術から計算されたデータとを統合する「融合モデル」で生成される。
【0007】
ツインの状態及び挙動の履歴データは、物理的客体又はプロセスについて有用な予想を提供して、それらの将来の挙動及び状態を予測することができる。よって、デジタルツインは、例えば、物理的資産、システム及び製造工程の運営やメンテナンスを最適化するために用いられ、産業用のモノのインターネットの形成技術であり、ここで、物理的客体は、他の機械や人と仮想的に相互作用することができる。
【0008】
デジタルツイン及びその応用は当業界に公知となっているが、現在としては、静的デジタルツインを効果的に実現し、動的データをリアルタイムで安定的に取得し送信することが困難である。具体的に、デジタルツインは、きちんとセンシングされていないデータ及び送信遅延が発生しやすいため、装置の実際の作動を適切に表現するシステムの機能を妨害し得る。本発明は、かかる問題及びその他の問題に関する。
【発明の概要】
【0009】
一態様において、本発明は、動的デジタルツインを構成するためのシステムを提供する。前記システムは、少なくとも1つの物理的パラメータをリアルタイムでモニタリングする複数のエネルギーハーベスティングセンサと、前記エネルギーハーベスティングセンサによって生成されたセンサデータを読み取るリーダと、前記リーダと通信するモノのインターネットハブと、エネルギーハーベスティングセンサと関連する物理的客体又は空間の物理的幾何学的モデルを保存するデータストレージと、を含む。モノのインターネットハブ及びデータストレージと通信するプロセッサは、モノのインターネットハブからセンサデータを受信し、データストレージから物理的幾何学的モデルデータを受信して、前記センサデータを物理的客体又は空間の物理的幾何学的モデルと関連付け、前記センサデータを物理的幾何学的モデルと融合させてデジタルツインを生成するようプログラミングされる。前記モノのインターネットハブと通信するサーバは、動的デジタルツインをホスティングすることができる。
【0010】
エネルギーハーベスティングセンサ間の通信は、センサメーカーが提供する低レベルリーダプロトコル(LLRP:Low―Level Reader Protocol)又は高レベルSDK(Software Development Kit)を用いて提供できる。前記リーダとゲートウェイとの通信及び前記ゲートウェイとモノのインターネットハブとの通信は、メッセージクエリテレメトリトランスポート(MQTT:Message Querying Telemetery Transport)又はHTTP/HTTPSプロトコルを用いて提供される。前記リーダは、Wi―Fiリーダ、狭帯域モノのインターネットリーダ、又は無線通信プロトコルのうちの1つであり得る。
【0011】
前記モノのインターネットハブ(IoT Hub)、データストレージ、及び融合プロセスは、モノのインターネットサービス型プラットフォーム(IoT PAAS)に提供できる。ゲートウェイは、リーダ及びモノのインターネットハブと通信して提供でき、前記リーダからセンサデータを取得してモノのインターネットハブにデータを提供することができる。
【0012】
エネルギーハーベスティングセンサは、受動型RFIDセンサであり得る。前記受動型RFIDセンサは、固有識別子を生成することができ、前記固有識別子に基づいてセンサを識別するようプロセッサをプログラミングすることができる。物理的幾何学的モデルは、物理的空間又は客体のコンピュータ支援設計モデル、或いは地理学的マップであり得、複数のエネルギーハーベスティングセンサの各々の位置を含むことができる。
【0013】
シミュレーションモデルを提供し、前記シミュレーションモデルにセンサデータを統合させるよう、前記プロセッサをさらにプログラミングすることができる。
【0014】
他の態様において、本発明は、動的デジタルツインを生成するための方法を提供する。前記方法は、エネルギーハーベスティングセンサでリアルタイムセンサデータを取得するステップと、取得したセンサデータをデータ融合プロセッサに送信するステップと、前記取得したセンサデータを前記センサと関連する物理的空間又は客体を規定するデータと関連付けるステップと、前記センサデータと物理的客体を規定するデータとを融合させるステップと、前記センサデータを含む物理的空間又は客体のデジタルツインを構成するステップと、を含む。
【0015】
前記エネルギーハーベスティングセンサは、固有識別子(UID:unique identifier)をリーダに送信できる受動型RFIDセンサであり得る。前記デジタルツインは、資産追跡、プロセス計画、モニタリング、及びデータ視覚化のうちの少なくとも1つを提供することができる。
【0016】
本発明のこれらの態様及び他の態様は、下記の説明から明らかになるであろう。本明細書において、本明細書の一部を形成して本発明の好ましい実施形態を示す添付の図面を参照する。かかる実施形態は、必ずしも本発明の全範囲を示すものではなく、よって、本発明の範囲を解釈するために、本明細書の請求範囲を参照する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明によるデジタルツインを構成するためのシステムを示すダイアグラムである。
【
図2】
図1の形態のシステムにおけるデータの流れを示すフローチャートである。
【
図3】モノのインターネット環境において、デジタルツインシステムのシステム・アーキテクチャを示すダイアグラムである。
【
図4】
図1及び
図3に示す形態のデジタルツインシステムにおけるデータの流れを示すデータフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明は、動的デジタルツインが、温度、水分、湿度、動き、気圧又は差圧、伝導度、電圧/電位、インピーダンス、プロキシミティ、変形率、及びプレゼンスセンシング等の非有形の客体又はパラメータに相応するデジタルツインを生成する方法に関する。センシングは、RFID技術又はBLE技術に基づいたエネルギーハーベスティングセンサを用いて達成される。次いで、動的デジタルツインは、物理的客体のデジタルツインに取り付けられるか又は関連付けられ、オーブンから取り出される部分等のプロセスでの客体の挙動を示す。よって、本明細書において、生きたデジタルツインの生成は、エネルギーハーベスティングセンサによるリアルタイムセンシングで始まった後、次いで、センサデータを読み取り、ゲートウェイによってデータを取得及び補完し、モノのインターネットハブ(IoT HUB)に転送する。取得したデータを用いて抽象的な動的デジタルツイン(例えば、温度曲線)を生成した後、物理的客体と関連付けることにより、客体の挙動に対する遡及のみならず、予測分析(例えば、人工知能によって)を行うことが可能となる。本発明は、パラメータに関するセンサデータを迅速且つ効率的に提供し、そのデータを物理的客体又は場所と関連付けることにより、摩耗時間、製品ライフサイクル、安定性等のシミュレーションを可能にする。
【0019】
次いで、
図1を参照して、本発明によって構成されたデジタルツインセンサシステム10を示す。本明細書に示すように、前記システムは、RFIDアンテナ等のアンテナ14と通信するセンサ12を含む。前記アンテナ14からのデータは、リーダ16で受信される。データは、前記リーダ16からゲートウェイ18に送信された後、次いで、エンドポイント20に送信される。以下、
図2をさらに参照すると、エンドポイント20から、デジタルツイン22は、外部システムによって構成されアクセスされて、多様なデータ視覚化及びモニタリング機能を提供する。
【0020】
続いて、
図1及び
図2を参照すると、状態の変化が予想される客体上に又は客体にRFIDセンサ等のセンサ12を配置することができる。各々のセンサ12は、トランスポンダID(TID)又は電子製品コードID(EPC ID)であり得る固有識別子(UID)を有する。前記固有ID(UID)は、単一センサから一連のデータを識別して関連付けるために、センサ12によって放出された任意のデータ又は信号に取り付けられる。前記センサは、バッテリのない、即ち、エネルギーハーベスティングセンサが好ましい。つまり、センサは、外部源からエネルギーを得ることができる。RFIDは、例えば、RFIDリーダフィールドからエネルギーを得る受動型RFIDであり得る。前記RFIDセンサは、客体に取り付けられたタグを自動的に識別し追跡するためにエンコーディングされた識別番号を使用できるチップに提供することができる。受動型RFIDセンサは、他のセンサ技術に比べて安価である点で特に有利であり、よって、センサを大規模に又は重複配置して、正確度や範囲全体を保障することを可能とする。前記センサは、UHF技術を用いてリーダ装置から読み取ることができ、受信機から数メートル以上離れて位置することができる。また、前記リーダは、複数のセンサから自発的にデータを収集することができる。
【0021】
受動型RFIDセンサを用いることができるが、代案として、前記バッテリのないセンサは、太陽熱、熱エネルギー、風力エネルギー、塩分勾配、及び運動エネルギー又は周辺エネルギーを通じて得られたエネルギーをキャプチャして保存することができるセンサであり得る。また、センサは、上述のようなRFID、又は低消費電力ブルートゥース(BLE:Bluetooth Low Energy)技術等の多様なタイプの無線技術を用いて作動することができる。他の適切な無線技術は、当業者にとって自明であろう。
【0022】
上述のように、一般のセンサ12は、温度、水分、湿度、動き(加速度計)、気圧若しくは差圧、伝導度、電圧/電位、インピーダンス、プロキシミティ、変形率、又は存在(規定空間内の物体の存在の識別)をモニタリングすることができる。
【0023】
前記リーダ16は、アンテナ14によって送信される信号を生成し、センサ12からリターン信号を受信する。前記アンテナ14は、無線電波を放出してセンサ12と通信し、これは、センサ12に電源を供給してエネルギーが供給される間、センサ12が状態変化の計算を行うことを可能とする。各計算の結果は、センサを明確に識別するUIDと共にアンテナ14に再度送信され、前記データ又は信号は、リーダ16によってキャプチャされる。前記リーダ16は、センサへの送信のために信号を生成することができるプロセッサを含むことができ、内部的にセンサ信号をデコーディングして処理する。また、前記プロセッサは、例えば、多数の信号を1つの値で集計するために、受信されたセンサデータを処理し得る(例えば、1つの平均温度値を生成するための10サイクルの温度信号)。また、リーダ16は、WiFi、NB―IoT、3G、4G及び5G等の携帯電話通信プロトコル、LoRaプロトコル、又はその他のプロトコルを用いてゲートウェイと通信できる通信インターフェースを含むことができる(
図2参照)。さらに、一般に、リーダ装置16は、メモリ構成要素を含み、ユーザインターフェースを含み得る。前記アンテナ14が
図1に個別の構成要素として示されているが、例えば、
図2に示すように、前記アンテナは、リーダ装置16の一部を形成することができる。
【0024】
ゲートウェイ18は、リーダ16から最終のセンサ値を取得し、また、センサ12の位置を決定し得る。前記ゲートウェイ18は、三角測量が可能なように、複数のリーダから同時にデータを収集することができる。代案として、リーダ座標を用いて、センサ12の位置を識別することができる。
【0025】
次いで、前記ゲートウェイ18は、例えば、MQTT、高度なメッセージキューイングプロトコル(AMQP:Advanced Message Queuing Protocol)、HTTP、HTTPS、上述のもの等を含むインターネット通信プロトコル又は無線ネットワークを用いた通信インターフェースを介して送信できるメッセージに値をパッケージングする。前記ゲートウェイ18は、メッセージを受容して処理するように構成されたエンドポイント20にデータを送信する。三角測量データは、ゲートウェイ18、エンドポイント20又はリーダ装置16でセンサに関する位置情報を導き出すために結合され得る。また、前記ゲートウェイ18は、プロセッサを含むことができ、多数のリーダからのデータを統合することによってデータを処理し、任意の個別のデータソースによって提供されることに比べて、さらに一貫した正確かつ有用な情報を生成することができる。
【0026】
ブロックチェーン技術又はその他の暗号化或いは保安措置を用いて、本明細書に記載された任意の通信におけるデータ改ざんを防止することができる。
【0027】
上述のように、エンドポイント20は、メッセージを収集し、センサ値(温度、水分等)を抽出し、保存されている規則に沿って、意図した目的地(デジタルツイン22)に値をルーティングすることができる。アプリケーションに応じて多様なタイプのデータ及び多様な計算を提供することができるよう、前記保存されている規則をカスタマイズ可能にすることができる。前記エンドポイント20は、示すように、クラウドベースのモノのインターネット(IoT)ハブ、リモートコンピュータ若しくはサーバ、有線システムと無線システムの双方を含む多様なタイプのローカルエリアネットワーク及び広域ネットワーク、又はこれらの装置の組み合わせであり、これは、以下で説明するように、
図3に示すようなサービス型プラットフォーム(PaaS:Platform as a Service)を共に形成することができる。
【0028】
図2に示すように、センサデータ及びセンシングされたパラメータは、プロセッサを含むコンピューティング装置によって用いられ、デジタルツイン22を生成することができる。前記デジタルツイン22は、物理的客体に取り付けられて/関連付けられて、特定のセンシングされた条件での経時による物理的客体の挙動を示す。
図2に示すように、前記デジタルツイン22は、データ視覚化プロセス、モニタリングシステム、資産追跡、及びその他のプロセスに用いることができる。よって、前記デジタルツイン22は、以下の実施例で記載するような摩耗時間、製品ライフサイクル、安定性、警報シナリオ(例えば、湿気による建物でのカビの繁殖)、及びその他のシナリオのシミュレーションを可能にする。
【0029】
以下、
図3を参照して、本発明によって構成されたモノのインターネット(IoT)システムにおけるデジタルツインのシステム・アーキテクチャを示す。バッテリがない複数のエネルギーハーベスティングセンサ12は、データを取得するために位置する。上述のように、各々のセンサ12は、固有識別子(UID)を含む受動型RFIDチップであり得る。受動型RF技術を用いると、電磁信号によりセンサデータを収集することができる。回路に内蔵されたインピーダンスを活用することにより、RFID集積回路チップが無線周波数の移動による環境物理の変化に対応することができる。次いで、無線周波数の変化を検出し、デジタル測定に変換することができる。また、RFIDチップは、センサを自動的に識別して追跡するICにエンコーディングされた識別番号を生成することができる。以下で説明するように、固有識別子に基づいたセンサデータを識別するために、プロセッサをプログラミングすることができる。
【0030】
センサ12から取得されたデータは、リーダ16に無線で送信され、次いで、リーダは、モノのインターネット(IoT)ハブ24と通信するゲートウェイ18にデータを無線で送信する。モノのインターネットハブ24は、例えば、企業資源計画(ERP:Enterprise Resource Planning)システム等の外部のコンピュータ又はサーバ32、34と通信できるデータストレージ30と通信する。前記IoTハブ24は、再度データストレージ30と通信するセンサ又はデータ融合プロセッサ26と通信する。前記データ融合プロセッサ26の出力は、デジタルツイン22をホスティングするコンピュータ又はサーバ28に提供される。また、取得した情報は、コンピュータ又はネットワーク34に送信されて分析することができる。
【0031】
多様な通信プロトコルを用いることができるが、一実施形態において、前記センサ12は、RFIDリーダに標準ネットワークインターフェースを提供するRFID認識プロトコルである低レベルリーダプロトコル(LLRP:Low Level Reader Protocol)を用いてリーダ16にデータを送信することによって、ダウンストリームに用いるための標準データ形式を提供する。前記リーダ16は、一般に、TCP/IPプロトコルを用いて装置間にメッセージを送る軽量パブリッシュサブスクライブネットワークプロトコルであるMQTTを用いてゲートウェイ18に送信することができる。前記IoTハブ24、データ融合プロセッサ26、及びデータストレージ30は、取得したデータを保存、転送、管理又は処理できる管理型クラウドプラットフォームを提供し、接続された装置がクラウドアプリケーション及びその他の装置と容易且つ安全に相互作用することを可能とするサービス型IoTプラットフォーム(PaaS)25等のクラウドに有利に提供することができる。PaaSシステムは当業界で公知となっており、例えば、Azure/IoT及びAWS/IoTを含む。また、特定のPaaSシステムを記載しているが、処理及びデータ保存を提供する多様なクラウドベースのサービスを用いることができる。さらに、前記IoTハブは、上述のデータ取得及びデータ統合プロセスを提供するローカルエリアネットワークの中央サーバに提供できる。データ保存及びプロセッシング機能を含む他の多様なタイプの有線ネットワーク及び無線ネットワークを用いてもよい。
【0032】
また、
図4を参照して、
図3のシステムにおけるデータの流れを示すフローチャートを示す。最初に、ステップ40において、センサデータは、上述のようにセンサ12から収集される。その後、収集されたデータはゲートウェイ18に送信され、ステップ42のイベントパイプラインに入る。データ融合プロセッサ26において、収集されたセンサデータは、得られた情報が前記ソースを個別に用いたときよりも不確実性が少ないように結合され、より正確で、より完全で、より信頼できる結果を提供する。前記センサ又はデータ融合は、中心極限定理、カルマンフィルタ、ベイジアンネットワーク、デンプスターシェファ、及び畳み込みニューラルネットワーク等のアルゴリズムを用いることができる。さらに、前記センサデータは、保存された形状又は幾何学的モデル50、センサ静的データ52、及びERPデータ54からの幾何学的モデルデータと結合することができる。データ融合プロセッサ26がセンサデータを融合した後、融合されたデータは、データ放出ステップ46に入り、ここで、前記データは、ステップ48に示すように、デジタルツイン22の視覚化及び分析に用いるためにサーバ28に送信される。図示するように、シミュレーション又はエミュレーションコントローラ41は、幾何学的モデルデータ50を受信し、イベントパイプライン42にシミュレーションを提供し得る。前記シミュレーションエンジン又はエミュレーションコントローラ41は、受信するセンサデータによって生成された離散データ状態間を連続的に補間し、イベント42のパイプラインをトリガするのに用いることができる。例えば、RFIDセンサが10秒ごとに温度を収集すると、シミュレーションエンジンは、中間データポイントの温度を計算し、センサデータの変化を順に管理することができる。
【実施例】
【0033】
上述のプロセスは、様々なタイプのデジタルツインの構成に用いることができる。デジタルツインシステムの実施例は、例えば、「ブリッジ」を含むことができ、ここで、センサは、伝導度、変形率及びその他のセンサ、圧力センサを介して、コンクリートの腐食及び/又は老化をモニタリングし、交通負荷を表示したり、安定性等の観点から将来挙動をシミュレーションすることができる。
【0034】
他の実施例において、デジタルツインシステムは、「建物」であり得る。ここで、センサは、水分、温度、及び気圧を含むことができる。前記センサデータは、空調を制御し、カビ防止等の観点から建物の「健康」をモニタリングすることに用いることができる。
【0035】
他の実施例において、デジタルツインは、「スマートファクトリ」であり得る。ここで、センサは、機械、部品又はコンポーネント、その他の装備、及び建物内に提供することができる。センサデータは、効率的な生産計画、機械メンテナンス、機械の休止時間計画、及び同様の操作を提供することに用いることができる。
【0036】
他の実施例において、デジタルツインは、「製品ライフサイクル管理」システムであり得る。ここで、例えば、物品は、生産する際、或いは最初にセンサ付き若しくはセンサレスのRFID又はBLEタグと共に用いる際にタギングできる。センサは、摩耗及び閾値温度のモニタリングに用いることができる。また、前記データは、製品ライフサイクル(「ゆりかごから墓場まで(cradle to grave)」)又は製品のリサイクル可能性(「ゆりかごからゆりかごまで(cradle to cradle)」)の追跡及び予測に用いることができる。
【0037】
他の実施例において、前記デジタルツインは、「農業」又は「農場からトラック(farm to truck)」の追跡システムに用いることができる。ここで、前記センサは、例えば、土壌の水分をモニタリングして慢性の過灌漑等の問題を防止したり、未処理食品/調理食品をモニタリングしてバクテリア、カビ及び白カビによる腐敗を最小化することができる。また、センサは、特に、室内温室/農場での湿度、塩分、又は肥料をモニタリングして収穫量を極大化することができる。
【0038】
他の実施例において、前記デジタルツインは、「自動車」システムに用いることができる。ここで、例えば、水分センシングを用いて防水を確認することができ、温度センシングを用いて断熱効果を確認することができる。また、温度センシングを用いて塗料硬化及びラミネート硬化を確認することができる。
【0039】
他の実施例において、前記デジタルツインは、「航空宇宙」システムに用いることができる。ここで、例えば、モーションセンシングを用いて機体構成要素の過剰な振動限界を検出することができる。温度センシングを用いて内面又は区画の上限/下限をモニタリングすることができ、圧力センシングを用いて加圧区画での漏出の存在を検出することができる。
【0040】
他の実施例において、前記デジタルツインは、「ヘルスケア」システムに用いることができる。ここで、水分センシングを用いて出血、尿等を表示する寝具、シート及びおむつの過度な湿気を検出することができる。また、センサを用いて、ロッカ、ボトル、キャビネット等の変造を識別したり、各種のシールが破損した場合を検出することができる。
【0041】
本明細書において特定の実施例を提供しているが、多くの異なるタイプのデジタルツインが構成できることは明らかである。例えば、デジタルツインは、建物、輸送手段(航空機、自動車、船舶)、農業環境(農場/果樹園/ブドウ園)等の物理的空間のクローンを提供することができる。また、デジタルツインは、機械、部屋、建築資材、制御システム、HVAC、及びセンサ等を含む物理的空間のコンテンツのクローンを提供することができる。さらに、デジタルツインは、温度、湿度/水分の含量、位置、速度、気圧、加速度等の物理的空間とそのコンテンツの挙動又は状態のクローンを提供し、装置の封止又は破損の有無に関する分析を提供することができる。多くのその他のセンサやモデルが当業者にとって明らかである。さらなる細部事項は、添付文書のExhibit Aで確認することができ、この文書は本明細書で参照として含む。
【0042】
好ましい実施形態を説明しているが、本発明の思想及び範囲内において多数の修正が可能であることは明らかである。例えば、特定のハードウェア及び通信プロトコルを詳述しているが、ハードウェア及び通信システムの何れにおいても変形が使用できるということが明らかである。上述のように、アンテナをリーダ装置の一部として提供することができる。同様に、一部の適用において、ゲートウェイ及びリーダ機能を単一装置に結合することが可能であり得る。また、リーダ、ゲートウェイ、又はエンドポイントを含むシステムの多くの異なる位置で計算を行うことができる。
【0043】
本発明の範囲を一般に知らせるために、以下の請求項が構成される。