(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-19
(45)【発行日】2023-09-27
(54)【発明の名称】単一細胞の核酸配列分析
(51)【国際特許分類】
C12N 15/10 20060101AFI20230920BHJP
C12Q 1/6869 20180101ALI20230920BHJP
C12Q 1/6844 20180101ALI20230920BHJP
C12Q 1/686 20180101ALI20230920BHJP
C12Q 1/6806 20180101ALI20230920BHJP
C40B 40/06 20060101ALN20230920BHJP
【FI】
C12N15/10 Z ZNA
C12N15/10 110Z
C12Q1/6869 Z
C12Q1/6844 Z
C12Q1/686 Z
C12Q1/6806 Z
C40B40/06
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022031630
(22)【出願日】2022-03-02
(62)【分割の表示】P 2020128048の分割
【原出願日】2016-08-26
【審査請求日】2022-03-10
(32)【優先日】2015-08-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2015-09-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500358711
【氏名又は名称】イルミナ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100193493
【氏名又は名称】藤原 健史
(72)【発明者】
【氏名】サラシア ニーラジ
(72)【発明者】
【氏名】ファン ジャン-ビン
(72)【発明者】
【氏名】ケイパー フィオナ
(72)【発明者】
【氏名】カン ゴードン エム
(72)【発明者】
【氏名】ジャムシディ アラシュ
(72)【発明者】
【氏名】アラヴァニス アレックス
【審査官】小金井 悟
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/103339(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/201273(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/031691(WO,A1)
【文献】Cell,2015年05月,vol.161, no.5,pp.1202-1214
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00-15/90
C12Q 1/00- 3/00
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDream III)
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数個の単一細胞からcDNAライブラリーを調製する方法であって、
各単一細胞からmRNAを遊離させて複数の個別mRNAサンプルを提供する工程であって、各個別mRNAサンプルのmRNAが1つの単一細胞に由来する工程;
各個別mRNAサンプルのmRNAから、cDNAの第一鎖を、(i)タグを備え、タグをcDNAに取り込み、複数のタグ付加cDNAサンプルを提供する第一鎖合成プライマーであって、各タグ付加cDNAサンプルのcDNAが1つの単一細胞に由来するmRNAと相補性であり、タグが細胞特異的識別子配列及び固有分子識別子(UMI)配列を含む、第一鎖合成プライマーと、(ii)鋳型切換えオリゴヌクレオチド(TSO)プライマーと、を有する、混合物により合成する工程;
複数の単一細胞に由来するタグ付加cDNAサンプルをプールする工程;
プールされたタグ付加cDNAを増幅させてプールされたタグ付加二本鎖cDNAを生成する工程;及び
プールされたタグ付加二本鎖cDNAサンプルに対してタグメンテーション反応を実施して同時に各cDNAを切断して当該cDNAの各鎖にアダプターを取り込み、それによって複数個の単一細胞からcDNAライブラリーを生成する工程
であって、前記タグメンテーション反応が、二本鎖cDNAを、第一鎖合成プライマーに見出されないアダプター配列を含むトランスポザーゼ混合物と接触させることを含む工程、
を含む方法。
【請求項2】
前記第一鎖合成プライマーが、増幅プライマー結合部位を更に含む、請求項
1に記載の方法。
【請求項3】
複数個の単一細胞からcDNAライブラリーを調製する方法であって、
各単一細胞からmRNAを遊離させて複数の個別mRNAサンプルを提供する工程であって、各個別mRNAサンプルのmRNAが1つの単一細胞に由来する工程;
各個別mRNAサンプルのmRNAから、cDNAの第一鎖を、(i)タグを備える第一鎖合成プライマーであって、オリゴdTプライマーとランダマープライマーとの混合物であり、それによってタグをcDNAに取り込み、複数のタグ付加cDNAサンプルを提供し、各タグ付加cDNAサンプルのcDNAが1つの単一細胞に由来するmRNAと相補性であり、タグが細胞特異的識別子配列、第1リードシークエンシングアダプター配列、及び異なる第2の部分を有する、第一鎖合成プライマーと、(ii)TSOプライマーと、を有する混合物により合成する工程;
タグ付加cDNAサンプルをプールする工程;
プールされたタグ付加cDNAを増幅させてプールされたタグ付加二本鎖cDNAを生成する工程;及び
プールされたタグ付加cDNAを、第2リードシークエンシングアダプター配列を有するトランスポゾンと複合したトランスポザーゼをそれぞれが有する複数のトランスポソーム複合体と接触させることにより、プールされたタグ付加二本鎖cDNAに対してタグメンテーション反応を実施してcDNAライブラリーを生成する工程であって、前記第2リードシークエンシングアダプター配列が、前記第1リードシークエンシングアダプター配列とは異なり、cDNAライブラリーが、前記第1リードシークエンシングアダプター配列を第1鎖に有し、前記第2リードシークエンシングアダプター配列を第2鎖に有する複数のタグ付加cDNAフラグメントを含む、工程、
を備える方法。
【請求項4】
前記異なる部位がUMI配列を有する、請求項
3に記載の方法。
【請求項5】
各オリゴdTプライマー及びランダマープライマーが、増幅プライマー結合部位を更に含む、請求項
3又は
4に記載の方法。
【請求項6】
複数の単一細胞小器官からcDNAライブラリーを調製する方法であって、
単一細胞小器官を空間的に分離する工程;
各単一細胞小器官からmRNA、ミクロRNA、小干渉RNA、リボソームRNA及び/又はミトコンドリアRNAを遊離させて、複数の個別RNAサンプルを提供する工程であって、各個別RNAサンプルのRNAが1つの単一細胞小器官に由来する工程;
各個別RNAサンプルのRNAから、cDNAの第一鎖を、(i)タグを備える第一鎖合成プライマーであって、それによってタグをcDNAに取り込み、複数のタグ付加cDNAサンプルを提供し、各タグ付加cDNAサンプルのcDNAが1つの単一細胞小器官に由来するRNAと相補性であり、タグが細胞特異的識別子配列及び第1リードシークエンシングアダプター配列を含み、固有分子識別子(UMI)配列を含んでいてもよい、第一鎖合成プライマーと、(ii)TSOプライマーと、を有する混合物により合成する工程;
複数の単一細胞小器官に由来するタグ付加cDNAサンプルをプールする工程;
プールされたタグ付加cDNAを増幅させてプールされたタグ付加二本鎖cDNAを生成する工程;及び、
プールされたタグ付加cDNAを、第2リードシークエンシングアダプター配列を有するトランスポゾンと複合したトランスポザーゼをそれぞれが有する複数のトランスポソーム複合体と接触させることにより、プールされたタグ付加二本鎖cDNAサンプルに対してタグメンテーション反応を実施してcDNAライブラリーを生成する工程であって、前記第2リードシークエンシングアダプター配列が、前記第1リードシークエンシングアダプター配列とは異なり、cDNAライブラリーが、前記第1リードシークエンシングアダプター配列を第1鎖に有し、前記第2リードシークエンシングアダプター配列を第2鎖に有する複数のタグ付加cDNAフラグメントを含む、工程、
を含む方法。
【請求項7】
前記第一鎖合成プライマーが、増幅プライマー結合部位を更に含む、請求項
6に記載の方法。
【請求項8】
前記第一鎖合成プライマーが、第1増幅プライマー結合部位を有し、前記TSOプライマーが、第2増幅プライマー結合部位を有する、請求項1~
7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
前記第一鎖合成プライマーが、mRNAを超えて伸長され、更にTSOプライマー鎖をコピーして相補性TSO鎖を生成する、請求項1~
5のいずれか、または請求項
8に記載の方法。
【請求項10】
前記第一鎖合成プライマーが、ミクロRNA、小干渉RNA、リボソームRNA及び/又はミトコンドリアRNAを超えて伸長され、更にTSOプライマー鎖をコピーして相補性TSO鎖を生成する、請求項
6~
8のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
cDNAの第二鎖が、mRNA鋳型を超えて伸長されて相補性TSO鎖を包含
するように、cDNAの第一鎖に相補的である第二の増幅プライマーを用いて合成されて、プールされたタグ付加二本鎖cDNAを生成する、請求項
9又は
10に記載の方法。
【請求項12】
前記プールされたタグ付加二本鎖cDNAが、第一増幅プライマー結合部位に結合する第一の増幅プライマーと、第二増幅プライマー結合部位に結合する第二の増幅プライマーとにより増幅される、請求項
11に記載の方法。
【請求項13】
前記第一の増幅プライマー、前記第二の増幅プライマー、または第一及び第二の増幅プライマーの両方が、固相支持体に固定される、請求項
12に記載の方法。
【請求項14】
前記固相支持体が、ビーズ、フローセル、またはマイクロウェルである、請求項
13に記載の方法。
【請求項15】
さらに、前記固相支持体上で増幅生成物をシークエンシングする工程を備える、請求項
13又は
14に記載の方法。
【請求項16】
前記タグメンテーション反応が、前記二本鎖cDNAをTn5トランスポザーゼを含むトランスポザーゼ混合物と接触させる工程を有する、請求項1~
15のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
前記複数のトランスポソーム複合体が、第2リードシークエンシングアダプター配列を含むトランスポゾンを有するトランスポソームから本質的になる、請求項
16に記載の方法。
【請求項18】
前記第一鎖合成プライマーが、二本鎖部位を含むプライマーを含む、請求項1~
17のいずれかに記載の方法。
【請求項19】
(a)前記第一鎖合成プライマーが、一本鎖の第一鎖合成プライマーと比較して連結副産物を減少させ;
(b)前記第一鎖合成プライマーが、ヘアピンを形成し得る領域を備えるプライマーを有し;
(c)前記第一鎖合成プライマーが、RNA領域を含むプライマーを有し;かつ/または、
(d)前記第一鎖合成プライマーが、相補性オリゴヌクレオチドとハイブリダイズし、それによって二本鎖部分を形成するプライマーを有する、
請求項
18に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願)
本出願は、米国仮特許出願62/211,597(2015年8月28日出願)に対し優先権を主張し、さらに本出願は、米国仮特許出願61/985,983(2014年4月29日出願)及び61/987,433(2014年5月1日出願)に対して優先権を主張するPCT出願PCT/US15/28062(2015年4月28日出願)の部分継続出願である。これらのより早い出願の各々は参照によりその全体が本明細書に含まれる。
(政府補助)
本発明は、公衆衛生サービス(PHS)が提供する国立衛生研究所(NIH)グラント番号MH098977の下で政府の補助を受けて達成された。当該政府は本発明に一定の権利を有する。
【背景技術】
【0002】
細胞又は組織のmRNAの内容の決定(すなわち“遺伝子発現プロファイリング”)は、正常並びに病的組織及び器官の機能分析のための方法を提供する。通常では、遺伝子発現プロファイリングは、組織サンプルからmRNAを単離しこのmRNAをマイクロアレイハイブリダイゼーションに付すことによって実施される。しかしながら、そのような方法は、既に公知の遺伝子の分析を可能にするだけであって、また別のスプライシング、プロモータ及びポリアデニル化シグナルの分析に用いることはできない。加えて、マイクロアレイは2つの主要な欠点を有する。すなわち、マイクロアレイは公知の遺伝子に連結されること、及びマイクロアレイは感受性及び動的域に限界があることである。
組織のmRNAの内容の全て又は部分の直接的シークエンシングの利用は増え続けている。しかしながら、直接的シークエンシングによって細胞のmRNAの内容を分析する従来の方法は、典型的には何百万の細胞を含む組織サンプルから得られる大量のmRNAを分析することを必要とする。このことは、遺伝子発現を大量のmRNAで分析する場合には単一細胞に存在する機能情報の多くが失われるかあいまいになることを意味する。加えて、動的プロセス(例えば細胞周期)を集団の平均として観察することは不可能である。同様に、複雑な組織(例えば脳)の別個の細胞型は細胞を個々に分析する場合にのみ調べることが可能である。
調べようとする単一細胞の単離に使用される適切な細胞表面マーカーはしばしば存在せず、マーカーが存在するときでさえも、少数の単一細胞では遺伝子発現の自然な変動域を捉えるには十分ではない。必要なことは、複数個の単一細胞における遺伝子発現の分析に用いることができるcDNAライブラリーを調製する方法である。
【0003】
(配列表)
本出願は電子書式の配列表とともに出願されている。当該配列表は、IP-1388-US_SequenceListing.txtと表題を付したファイル(2015年9月15日作成、4Kb)として提供される。当該配列表の電子書式情報は参照によりその全体が本明細書に含まれる。
【発明の概要】
【0004】
単一細胞に由来する核酸及び/又は単一細胞の核及び細胞小器官に由来する核酸の分析のための方法及び組成物が本明細書で提示される。いくつかの方法及び組成物は、多重化単一細胞の遺伝子発現分析のために用いることができる。いくつかの方法及び組成物は、固有のバーコード(例えば固有分子バーコード(UMI))を保持する小滴及び/又はビーズの使用を含む。
ある実施態様では、1つの単一細胞に由来する核酸を分析する方法及び組成物が本明細書で提示される。いくつかの実施態様では、当該核酸配列分析方法及び組成物を用いて、1つの単一細胞小器官に由来する核酸からシークエンシングライブラリーを調製できる。いくつかの実施態様では、細胞小器官は1つの単一細胞に由来する核であってもよい。いくつかの実施態様では、細胞小器官は単一細胞から入手される。他の例示的細胞小器官にはミトコンドリア及びリボソームが含まれるが、ただしこれらに限定されない。
【0005】
ある実施態様では、当該方法は、複数の細胞から核を遊離させて複数個の核を提供する工程を含み、ここで各々の核は1つの単一細胞に由来する。当該複数の核は空間的に互に分離され、したがって1つの核は空間的隔離区画に存在する。cDNAの第一鎖は、個々のmRNAサンプルの各々のmRNAから第一鎖合成プライマーにより合成される。いくつかの実施態様では、第一鎖合成プライマーはオリゴdTプライマーであり、前記はさらに第一の増幅プライマー結合部位を含む。いくつかの実施態様では、第一鎖合成プライマーはランダマーである。いくつかの実施態様では、第一鎖合成プライマーはランダマーであり、前記はさらに第一の増幅プライマー結合部位を含む。いくつかの実施態様では、第一鎖合成プライマーはオリゴdTプライマー及びランダマーの混合物であり、各々はさらに第一の増幅プライマー結合部位を含む。いくつかの実施態様では、当該方法はさらに、鋳型切換えオリゴヌクレオチドプライマー(TSOプライマー)をオリゴdT及びランダマーの混合物と一緒に取り込む工程を含み、オリゴdTプライマー及びランダマーの各々はさらに第一の増幅プライマー結合部位を含む。いくつかの実施態様では、TSOプライマーはさらに第二の増幅プライマー結合部位を含む。いくつかの実施態様では、第一鎖合成プライマーはmRNA鋳型を超えて伸長され、さらにTSOプライマー鎖をコピーする。いくつかの実施態様では、cDNAの第二鎖はTSOプライマーを用いて合成される。いくつかの実施態様では、cDNAの第二鎖は、cDNAの第一鎖に相補的な第二の増幅プライマーを用いて合成され、前記はmRNA鋳型を超えて伸長され相補性TSO鎖を包含する。いくつかの実施態様では、二本鎖cDNAは第一及び第二の増幅プライマーにより増幅される。いくつかの実施態様では、第一、第二、及び第一第二両増幅プライマーは固相支持体に固定される。例示的固相支持体にはビーズ、フローセル、マイクロウェルが含まれる。
【0006】
いくつかの実施態様では、二本鎖cDNAはタグメンテーション反応に付され、したがって、バーコードを二本鎖cDNAに導入できる。タグメンテーションの例示的方法は、米国特許9,115,396号、9,080,211号、9,040,256号、米国特許出願広報2014/0194324に開示されている。前記文献の各々は参照によりその全体が本明細書に含まれる。いくつかの実施態様では、当該バーコードを用いて、配列の隣接情報を決定できる。いくつかの実施態様では、バーコードをソース識別子として用いることができる。
いくつかの実施態様では、当該方法は、cDNAにタグを取り込んで複数個のタグ付加cDNAサンプルを提供する工程を含み、ここで各タグ付加cDNAサンプルのcDNAは1つの単一細胞に由来するmRNAに相補性である。ある実施態様では、タグは細胞特異的識別子配列及び固有の分子識別子(UMI)配列を含む。いくつかの実施態様では、第一鎖合成プライマーはタグを含む。いくつかの実施態様では、TSOプライマーはタグを含む。いくつかの実施態様では、複数の単一細胞の核に由来するタグ付加cDNAをプールし、場合により増幅させることができる。
いくつかの実施態様では、当該方法は、1つの単一細胞に由来するミクロRNA(miRNA)、小干渉RNA(siRNA)、リボソームRNA、又はミトコンドリアDNAからシークエンシングライブラリーを調製する工程を含む。当該方法は、1つの単一細胞から複数の細胞小器官を遊離させて複数個の細胞小器官を提供する工程を含む。当該複数の細胞小器官は空間的に互に分離され、したがって1つの小器官は空間的隔離区画に存在する。DNAの第一鎖は、ミクロRNA(miRNA)、小干渉RNA(siRNA)、リボソームRNA、又は第一鎖合成プライマーから第一鎖合成プライマーにより合成される。いくつかの実施態様では、第一鎖合成プライマーはランダマーである。いくつかの実施態様では、第一鎖合成プライマーはランダマーであり、さらにプライマー結合部位を含む。いくつかの実施態様では、第一鎖合成プライマーは、第一鎖特異的合成プライマー及びランダマーの混合物である。いくつかの実施態様では、第一鎖合成プライマーは第一鎖特異的合成プライマー及びランダマーの混合物であり、各々はさらに第一の増幅プライマー結合部位を含む。
【0007】
いくつかの実施態様では、第一のプライマー結合部位と結合するプライマーは増幅プライマーである。いくつかの実施態様では、当該方法はさらに、鋳型切換えオリゴヌクレオチドプライマー(TSOプライマー)を第一鎖特異的合成プライマー及びランダマーの混合物と一緒に取り込む工程を含み、第一鎖特異的合成プライマー及びランダマーはさらに第一のプライマー結合部位を含む。いくつかの実施態様では、TSOプライマーはさらに第二のプライマー結合部位を含む。いくつかの実施態様では、第二のプライマー結合部位に結合するプライマーは増幅プライマーである。いくつかの実施態様では、第一鎖合成プライマーは、ミクロRNA(miRNA)、小干渉RNA(siRNA)、リボソームRNA、又はミトコンドリアDNA鋳型を超えて伸長し、さらにTSOプライマー鎖をコピーする。いくつかの実施態様では、DNAの第二鎖はTSOプライマーを用いて合成される。いくつかの実施態様では、DNAの第二鎖はDNAの第一鎖に相補的な第二のプライマーを用いて合成され、前記は鋳型RNA又はDNAを超えて伸長されて相補性TSO鎖を包含する。いくつかの実施態様では、二本鎖DNAは第一及び第二のプライマーにより増幅される。
ある実施態様では、複数の細胞小器官(例えば核、ミトコンドリア、リボソーム)は蛍光活性化細胞選別(FACS)によって空間的に分離され、各細胞小器官は、空間的隔離区画(例えば単一マイクロウェル又はフリューダイム(Fluidigm)C1チップ)中に選別される。いくつかの実施態様では、各細胞小器官は、固体表面に固定されることによって空間的隔離区画中に空間的に分離される。例えば、前記は抗体を介して実施され、この場合、抗体は細胞小器官に特異的に結合し、かつ抗体は固体表面に固定される。いくつかの実施態様では、固体表面はフローセル又はビーズである。
【0008】
いくつかの実施態様では、ランダマーは、以下から成る群から選択される1つ以上の準ランダムプライマーを含む:ランダム増幅プライマーのAT-リッチセット;AT-リッチ5’末端を含むランダム増幅プライマーセット;長さ変動性ランダム増幅プライマーセット(この場合、各プライマーはランダム3’部分及び縮退5’末端を含み、前記の縮退5’末端はプライマーのランダム3’部分のA/T含量に対して長さが比例し得る);Tm標準化ランダムプライマーセット(この場合、当該セットの各プライマーは、当該プライマーセット中の他のプライマーのTmに対して各プライマーのTmを標準化できる1つ以上の塩基アナローグを含む);ランダムプライマーセット(この場合、各プライマーは、ランダム3’部分及び定常5’プライミング部分を含む);ランダム増幅プライマーセット(この場合、各プライマーは、ランダム3’部分及び定常5’プライミング部分を含み、さらにランダム3’部分はRNAを含む);ランダム増幅プライマーセット(この場合、各プライマーは、ランダム3’部分及び定常5’プライミング部分を含み、さらにランダム3’部分は、以下を含む核酸から成る群から選択される少なくとも1つ非天然塩基を含む:2′-デオキシ-2-チオチミジン(2-チオ-dT)、2-アミノプリン-2′-デオキシリボシド(2-アミノ-dA)、N4-エチル-2′-デオキシシチジン(N4-Et-dC)、N4-メチルデオキシシチジン(N4-Me-dC)、2′-デオキシイノシン、7-デアザグアニン(7-デアザ-G)、7-ヨード-7-デアザグアニン(I-デアザG)、7-メチル-7-デアザグアニン(MecG)、7-エチル-7-デアザグアニン(EtcG));及び前述のプライマーセットの任意の組合せ。上記に示す準ランダムプライマーは、本明細書でさらに詳細に述べる。本明細書に記載されるいくつかの実施態様では、準ランダムプライマーはペア又はセットで提供される。
【0009】
本明細書で提示するある実施態様は、複数個の単一細胞からcDNAライブラリーを調製する方法である。前記方法は以下の工程を含む:各単一細胞からmRNAを遊離させて個々のmRNAの複数個のサンプルを提供する工程(ここで、個々のmRNAサンプルの各々のmRNAは1つの単一細胞に由来する);個々のmRNAサンプルの各々のmRNAからcDNAの第一鎖を第一鎖合成プライマーにより合成し、さらに当該cDNAにタグを取り込み複数個のタグ付加cDNAサンプルを提供する工程(ここで、各タグ付加cDNAサンプルのcDNAは1つの単一細胞に由来するmRNAに相補性である)。ある実施態様では、タグは細胞特異的識別子配列及び固有の分子識別子(UMI)配列を含む。いくつかの実施態様では、タグはUMIをもたない細胞特異的識別子配列を含む。当該方法はさらに以下の工程を含む:タグ付加cDNAサンプルをプールする工程;プールしたcDNAサンプルを場合により増幅させて二本鎖cDNAを含むcDNAライブラリーを生成する工程;及びタグメンテーション反応を実施し同時に各cDNAを切断して当該cDNAの各々の鎖にアダプターを取り込み、それによって複数個のタグ付加cDNAフラグメントを生成する工程。いくつかの実施態様では、十分な数の単一細胞が存在し、cDNAの増幅を回避することができる。cDNAの第二鎖は、鋳型切換えオリゴヌクレオチドプライマー(TSOプライマー)を用いて合成され、対称性ネクストエラ(Nextera)がその後に続く。
ある種の実施態様では、当該方法はさらに、タグ付加cDNAフラグメントを増幅し、増幅タグ付加cDNAフラグメントを生成する工程を含む。いくつかの特徴では、増幅工程は、追加の配列を増幅生成物の5’末端に付加する工程を含む。
いくつかの特徴では、追加の配列は、固相支持体での増幅のためにプライマー結合配列を含む。いくつかの特徴では、追加の配列は追加のインデックス配列を含む。
ある種の実施態様では、当該方法はさらに、増幅タグ付加cDNAフラグメントを固相支持体上で増幅する工程を含む。
ある種の実施態様では、当該方法はさらに、増幅生成物を固相支持体上でシークエンシングする工程を含む。
【0010】
いくつかの特徴では、タグメンテーション反応は、第一鎖合成プライマーでは見出されないアダプター配列を含むトランスポザーゼ混合物と二本鎖cDNAを接触させる工程を含む。
いくつかの特徴では、トランスポザーゼ混合物は、本質的に1つのタイプのアダプター配列を有するトランスポソームから成る。
ある種の実施態様では、当該方法はさらに、タグ付加cDNAフラグメントをシークエンシングする工程を含む。
いくつかの特徴では、シークエンシング工程は3’タグの計測を含む。
いくつかの特徴では、シークエンシング工程は全トランスクリプトームの分析を含む。
いくつかの特徴では、第一鎖の合成はランダムプライマーの混合物を用いて実施され、ランダムプライマーはさらにタグを含む。
いくつかの特徴では、第一鎖合成プライマーは二本鎖部分を含む。いくつかの実施態様では、二本鎖部分を含む第一鎖合成プライマーはさらに1つの一本鎖ループを一方の末端に含む。いくつかの特徴では、第一鎖合成プライマーはヘアピンを形成できる領域を含む。
いくつかの特徴では、第一鎖合成プライマーは、一本鎖の第一鎖合成プライマーと比較して連結副産物を減少させる。
いくつかの特徴では、第一鎖合成プライマーはRNA領域を含む。
いくつかの特徴では、第一鎖合成プライマーは相補性オリゴヌクレオチドとハイブリダイズし、それによって二本鎖部分を形成する。
さらにまた複数個のビーズが本明細書で提示され、ここで、各ビーズは複数個のオリゴヌクレオチドを含み、各オリゴヌクレオチドは以下を含む:(a)リンカー、(b)増幅プライマー結合部位、(c)場合により固有分子識別子(各オリゴヌクレオチドについて相違する)、(d)ビーズ特異的配列(当該ビーズの各オリゴヌクレオチドで同じであるが、他のビーズでは異なる)、及び(e)mRNAを捕捉し逆転写をプライミングする捕捉配列。
いくつかの特徴では、捕捉配列はオリゴdTを含む。
いくつかの特徴では、各ビーズは、他のビーズから隔離された分離小滴に存在する。
1つ以上の実施態様の詳細が添付の図面及び下記の記述で説明される。他の特色、目的及び利点は、当該記述及び図面からさらに特許請求の範囲から明白となるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】スマーター(SMARTer)方法論を用いるcDNA合成の概要を示す例示的模式図である。
【
図2A】ある実施態様の第一鎖合成を示す例示的模式図である。第一鎖合成はオリゴdTによりプライミングされ、その後で鋳型切換え、サンプルプール、単一プライマーPCRが実施される。オリゴdTには、場合により分子バーコード(UMI)、サンプルバーコード(BC)、増幅プライマー結合配列(V2.A14)及び鋳型スイッチ(TS)プライマー配列が添付されている。
【
図2B】プールした増幅生成物の対称性ネクストエラによるタグメンテーション、続いて異なるフォワード(V2.B15)及びリバース(V2.A14)PCRプライマーを用いる増幅、さらにその後のペアエンドシーケンシングを示す例示的模式図である。
【
図3A】ある実施態様の第一鎖合成を示す例示的模式図である。第一鎖合成はオリゴdTによりプライミングされ、その後で鋳型切換え、サンプルプール、単一プライマーPCRが実施される。オリゴdTには、サンプルバーコード(BC)、場合により分子バーコード(UMI)、増幅プライマー結合配列(V2.A14)及び鋳型スイッチ(TS)プライマー配列が添付されている。場合によりUMIはBCの5’末端に存在する。
【
図3B】ある実施態様における増幅生成物プールのタグメンテーション、増幅及びシークエンシングを示す例示的模式図である。
【
図4A】ある実施態様の第一鎖合成を示す例示的模式図である。
【
図4B】ある実施態様における増幅生成物プールのタグメンテーション、増幅及びシークエンシングを示す例示的模式図である。
【
図5】ある実施態様にしたがって多重化サンプルをプールしシークエンシングする方法を示す例示的模式図である。
【
図6】100pgのヒト脳参照RNAを用いる遺伝子発現分析の複数の方法を比較する表である。
【
図7】複数の単一細胞を用いる高処理単一細胞遺伝子発現分析の複数の方法を比較する表である。
【
図8】ただ1つのトランスポザーゼアダプター(V2.B15)を用いるタグメンテーションに対し2つのトランスポザーゼ(V2.A14及びV2.B15)による標準/非対称性タグメンテーションを用いるタグメンテーションで転写カバー範囲を比較するグラフを示す。
【
図9A】ある実施態様における、ランダマー使用第一鎖合成を必要とする全トランスクリプトーム分析を示す模式図である。
【
図9B】第一鎖合成にランダマーを用いたときに生成され得る連結副産物を示す模式図である。
【
図10】連結副産物を減少又は回避させる多様なプライマー設計を示す。
【
図11】ある実施態様の小滴を土台とするバーコード付与を示す模式図である。
【
図12】ある実施態様のビーズを土台とするバーコード付与を示す模式図である。
【
図13】単一核RNAシークエンシングのワークフローを示す模式図である。
【
図14】単一核からcDNAを合成する工程を示す。
【
図15】鋳型スイッチスマーター法を用いるcDNA合成を示す模式図である。
【
図16】オリゴdTプライマーに加えてランダムプライマーの存在下で実施したcDNA合成の模式図である。
【
図17】SMART-プラスアッセイ法を用いた場合の利点を示す。
図17Aは、1000を超える高品質単一核からコンパイルしたSMART-プラスアッセイのアッセイ性能を示す。
図17Bは転写カバー域データを示す。
【
図18】SMART-seq法を超えるSMART-Seqプラスの向上したアッセイ感度を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
多重化単一細胞遺伝子発現分析のための方法及び組成物が本明細書で提示される。いくつかの方法及び組成物は、固有のバーコード(例えば固有の分子バーコード(UMI))を保持する小滴及び/又はビーズの使用を含む。
これまでのところ、単一細胞のRNA-Seqのためにもっとも一般的に用いられる方法は、CLONTECH
TM SMART-SEQ
TM技術又はその誘導技術を土台とする。簡単に言えば、オリゴ(dT)プライマーが第一鎖cDNA合成反応をプライミングする。逆転写酵素(SMARTSCRIBE
TM)がmRNAの5’末端に達するとき、当該酵素のターミナルトランスフェラーゼ活性はいくつかの付加的な非鋳型ヌクレオチドを当該cDNAの3’末端に付加する。鋳型スイッチオリゴ(この非鋳型ヌクレオチドストレッチと塩基対を形成するように設計されている)は、アニーリングして伸長した鋳型を作出し、当該RTが当該オリゴヌクレオチドの末端の複製を継続することを可能にする(
図1)。
本明細書で提示される方法は、例えばUS2012/0010091の開示(参照によりその全体が本明細書に含まれる)に記載されているように、サンプル特異的タグを付加したcDNAを作製する方法を含むことができる。本明細書で用いられるように、単一細胞タグ付加逆転写及びSTRTという用語は、例えばUS2012/0010091の参照により本明細書に取り込んだ資料に開示された方法を指す。いくつかの実施態様では、二本鎖cDNAはSTRT法ではDNaseで分解されない。その代わりに、二本鎖cDNAは、トランスポザーゼでタグメンテーションされる(例えば標準ネクストエラ)。
二本鎖cDNAは続いて、例えば、全トランスクリプトームRNA-SeqのためにはNEXTREA
TM若しくはTRUSEQ
TMを用い、又は5’末端シークエンシングのためには酵素分解、例えばDNase I若しくはフラグメンターゼを用いその後アダプター連結を実施してシークエンシングライブラリーに変換され得る。両方法には賛否両論がある。すなわち、前者では、サンプルバーコードがライブラリー調製中に導入された後で多重化され得るだけであるが、後者は、バーコードは第一鎖合成工程中に導入できるのでcDNA合成後に多重化できる。したがって、サンプル当たりの処理能力が高ければ高いほど及び経費が安ければ安いほど後者が有利である。しかしながら、両方法により得られる情報は異なる用途を有する。すなわち、前者は全トランスクリプトームのシークエンシングを可能にし、後者は遺伝子発現レベルのみ審問する。
【0013】
本明細書では、単一細胞インプットレベルで適用でき、さらにプロトコルの初期に高レベルのサンプル多重化を可能にする迅速な遺伝子発現ライブラリーの調製が提示される。
いくつかの実施態様では、第一鎖合成は、(定着させた)オリゴdTで(或いは場合により1つのランダマー又は2つのランダマーの組合せで)プライミングされ、前記にはサンプルバーコード(BC)、増幅プライマー結合部位、及び場合により鋳型スイッチ(TS)プライマー配列が添付される。いくつかの実施態様では、増幅プライマー結合部位はトランスポザーゼアダプター配列であり、例えばネクストエラアダプター配列V2.A14又はV2.B15である。当該バーコードは、分子バーコード(固有分子識別子又は“UMI”(前記はPCR重複物の検出を可能にするであろう))の後ろにあっても前にもあってもよい。逆転写酵素がmRNAの5’末端に到達するとき、上記及びUS2012/0010091の本明細書取り込み資料に記載されたように鋳型スイッチが生じる。鋳型スイッチは、TSプライマー配列の相補物を第一鎖cDNAに取り込む。サンプルバーコードは第一鎖cDNAに取り込まれているので、異なるサンプルがこの時点でプールされ得る。続いて、第一鎖プールは二本鎖にされ、さらに場合によってTSプライマーによりPCR反応で増幅される(
図2A)。cDNAの両末端が相補性配列を含むという事実のために、ヘアピン構造の形成はより小さなフラグメント(例えば人工産物など)の増幅の抑制をもたらすであろう。
【0014】
いくつかの実施態様では、
図2A及び3Aに示すように、第一鎖合成はオリゴdTでプライミングされ、前記オリゴdTには、サンプルバーコード(BC)、トランスポザーゼアダプター配列(“ネクストエラV2.A14配列”)のコピー、場合により分子バーコード(UMI)、及び鋳型スイッチ(TS)プライマー配列が添付されている。cDNA鎖の3’末端の鋳型スイッチは当該第一鎖の他方の末端でTSプライマー配列を取り込む。異なるサンプルのcDNAをこの時点でプールすることができる。
いくつかの実施態様では、
図2B及び3Bに示すように、cDNAはTSオリゴで増幅される。この単一プライマーPCRは小アンプリコン(例えばプライマーダイマーなど)を抑制する。cDNAプールはトランスポザーゼ(例えば“NEXTERA
TM”)でタグメンテーションできる。前記トランスポザーゼは、典型的な2つのアダプターではなく1つのアダプターを含むだけである。
図2B及び3Bに示す例では、トランスポザーゼはV2.B15オリゴをローディングされる。タグメンテーションの後で、p5-V2.A14及びp7-V2.B15増幅プライマーによるPCRは当該cDNAの3’末端フラグメントを優先的に増幅する。2つのタグメンテーション事象によって生成されたフラグメント(“対称性フラグメント”)はPCRの間抑制され、シークエンシング可能なフラグメントを生成しないであろう。例えば、
図2B及び3Bに示すように、対称性フラグメントから生じる増幅生成物は、増幅生成物の5’及び3’の両末端にP7プライマー配列を提示し、P5及びP7増幅プライマーを保持する標準イルミナ(Illumina)フローセルでシークエンシング可能クラスターを形成しないであろう。加えて、それらは、それらの相補性末端のためにPCRの間抑制されるであろう。対照的に、3’末端フラグメントは増幅後にP5及びP7プライマー結合部位を保持し、イルミナフローセルでシークエンシング可能なクラスターを形成することができる。ペアエンドシーケンシングは、リード1でサンプルのBC及びUMIをもたらし、リード2でcDNA配列をもたらす。
【0015】
したがって、本明細書で提示するある種の実施態様では、全転写物のシークエンシングを実施するのではなく、3’タグの計測に依拠するデジタル遺伝子発現アッセイ型が実施される。本明細書で提示する方法は、細胞に第一鎖合成工程で個々にバーコードを付す能力を提供する。加えて、安価なオリゴdTプライマー又はランダマーによるcDNA 3’末端のバーコード付与は顕著な経費軽減利点を提供する。さらにまた、cDNA合成のためにランダマーを使用することは、3’タグ計測アッセイに加えて当該方法を全RNAシークエンシングプロトコルにより類似させるので有利である。
その後のプール化、クリーンアップ、単一プライマーcDNA PCR増幅、タグメンテーション及びシークエンシングライブラリー調製を、1本の単一チューブで2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、30、40、50、60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100又は100を超える細胞のために実施することができる。したがって、本明細書に記載する方法及び組成物は多重化に極めて馴染みやすい。例として、
図5に示すように、本明細書で提供される方法は、細胞レベルの多重化を可能にする(例えば96ウェルプレートに付き96サンプル)。さらにまた、当該方法は、固有にバーコードを付したプレートを用いて更なる多重化を可能にする(例えば96ウェルプレートを識別するバーコードを取り込むためにタグメンテーションを実施する)。これらの方法は自動化に馴染みやすく、経費及び時間の目覚ましい軽減を提供する。
第一鎖合成プライマーにおけるサンプルバーコード及びUMIの順序は変動させることができる。例えば、いくつかの実施態様では、サンプルバーコードはUNIに対し3’に配置される。いくつかの実施態様では、サンプルバーコードはUNIに対し5’に配置される。いくつかの実施態様では、サンプルバーコードはUNIと直に連続する。いくつかの実施態様では、サンプルバーコード(BC)は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10又は11以上のヌクレオチドによりUMIから隔てられる。いくつかの実施態様では、サンプルバーコード(BC)は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10又は11以上のヌクレオチドによりUMIとオーバーラップする。
【0016】
いくつかの実施態様では、タグメンテーションはトランスポザーゼ混合物を用いて実施される(前記トランスポザーゼ混合物は第一鎖合成プライマーでは見出されないアダプター配列を含む)。そのようにして、第一鎖合成プライマーに取り込まれる配列と比較して異なるアダプター配列を保持するタグメンテーションフラグメントが生成される。例えば、いくつかの実施態様では、トランスポザーゼ混合物は、もっぱら1つのタイプのアダプター配列を有するトランスポソームを含む。このタイプの混合物によって生成されるフラグメントは本明細書では“対称性フラグメント”と称され、イルミナフローセルでシークエンシング可能なクラスターを生じない。いくつかの実施態様では、トランスポザーゼ混合物は第一鎖合成プライマーに取り込まれるいくらかの量の配列を含むことができ、この場合、当該量は、3’cDNAフラグメントの全て又は実質的に全てが増幅及びシークエンシングされることをなお可能にするには十分に少ない。例えば、トランスポソーム混合物のアダプター配列は、第一鎖合成プライマーに取り込まれる配列の0.01%、0.1%、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、8%、19%、20%未満、又は25%、30%、35%、40%、45%未満、又は50%未満を含むことができる。典型的には2つのトランスポザーゼアダプターが用いられる場合、当該2つのアダプターのどちらか一方は第一鎖合成プライマーに取り込まれ、他方のアダプターはタグメンテーション事象時に用いられ得ることは理解されるであろう。例えば、
図3A、3B、4A及び4Bに示す例示的実施態様で、1つのアダプター配列が第一鎖合成プライマーに取り込まれる場合には当該アダプターはタグメンテーション混合物で用いられない。
図3A及び3Bは、アダプターV2.A14が第一鎖合成プライマーに取り込まれ、アダプターV2.B15がタグメンテーション工程時にトランスポソームアダプターとして用いられる1つの実施態様を示す。
図4A及び4Bはまた別の実施態様を示し、この場合は、アダプターV2.B15が第一鎖合成プライマーに取り込まれ、アダプターV2.A14がタグメンテーション工程時にトランスポソームアダプターとして用いられる。両事例で、得られるタグメンテーションフラグメントは2つのカテゴリーに分けられる。すなわち対称性フラグメント(増幅及び/又はシークエンシングできない)及び非対称性フラグメント(V2.A14及びV2.B15プライマーセットを用いて増幅できる)である。
【0017】
いくつかの実施態様では、多重化できる単一細胞の数は、トランスポソームアダプター配列にインデックスを取り込ませることによって顕著に増加する。
図5に示すように、細胞特異的バーコードを用いて個々の細胞の各々を識別でき、さらに、複数の細胞の各セットをトランスポソームアダプター配列にプレート特異的バーコードを取り込ませたタグメンテーション混合物と接触させることができる。
図5に示す例では、プレートの96細胞の各々に由来するcDNAをタグメンテーションの前にプールし、続いてタグメンテーション実施サンプルを多重化シークエンシングの前にプールする。任意の数の細胞をタグメンテーションの前にプールできること、及び96ウェルプレートの使用は単に多様な実施態様の1つであることは理解されるであろう。例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48、50、52、54、56、58、60、62、64、66、68、70、72、74、76、78、80、82、84、86、88、90、92、94、96、98、100個の細胞、又は100、200、300、400、500、600、700、800、900個を超える細胞、又は1000個を超える細胞、及びその間に介在する任意の数の細胞のセットをタグメンテーションのためにプールすることができる。第一鎖合成は、任意の単一ウェル又はマルチウェル容器(例えばマルチウェルプレート、チップ、微小流体装置、エマルジョン、ビーズ混合物、又は複数個の細胞の多重操作のために適切な他の任意の様式)で実施できる。
図7(複数の単一細胞)に示すように、非対称性タグメンテーション(ネクストエラV2.B15/V2.A14バージョン)と比較してどちらかの対称性タグメンテーション(ネクストエラV2.B15バージョン)を用いて遺伝子発現を分析したとき、顕著な数の遺伝子が検出され、さらに他のメトリックが得られた。
図8は、2つのトランスポザーゼアダプター(V2.A14及びV2.B15)を用いるタグメンテーションに対してただ1つのトランスポザーゼアダプター(V2.B15)を用いて実施したときには、転写カバー域が転写物の3’末端に向けてほぼ完全に偏向することを示す。
【0018】
いくつかの実施態様では、サンプル及びUMIのバーコード付与は個々の細胞を小滴に隔離することによって実施される。いくつかの実施態様では、小滴はエマルジョン中で互に隔離される。いくつかの実施態様では、小滴は、小滴アクチュエータを用いて形成及び/又は操作される。特定の実施態様では、1つ以上の小滴はバーコード含有第一鎖合成プライマーの種々のセットを含む。いくつかの実施態様では、各小滴は多数の第一鎖合成プライマーを含み、これらのプライマーの各々は同一のバーコードを含む同一の配列を有し、さらに1つの小滴のバーコードは別の小滴のバーコードと異なるが、当該第一鎖合成プライマーの残りの部分は小滴間で同じものを維持する。したがって、これらの実施態様では、バーコードは、小滴の識別子として作用するとともに小滴に包含される単一細胞の識別子としても作用する。特定の実施態様では、1つ以上の小滴はUMI含有第一鎖合成プライマーの種々のセットを含む。したがって、各小滴に溶解される個々の細胞の各々は各小滴中のバーコードによって識別可能であろう。
図11に示すように、小滴によるバーコード付与は、単一細胞を含む小滴を固有のバーコードセットを含む他の小滴と混ぜ合わせることによって実施できる。この様式は、マルチウォール様式で利用できるもの以外の追加の多重性を可能にする。第一鎖合成及び鋳型切換えは個々の小滴の各々の中で実施される。いくつかの実施態様では、2つ以上の小滴をPCR前に混ぜ合わせることができる。加えて或いはまた別に、いくつかの実施態様では、タグメンテーションの前に小滴を混ぜ合わせることができる。加えて或いはまた別に、いくつかの実施態様では、PCRの後でかつタグメンテーションの前に小滴を混ぜ合わせることができる。例えば、いくつかの実施態様では、個々の小滴で第一鎖合成を実施した後で、タグ付加cDNAを混ぜ合わせ、したがってcDNAをプールすることができる。
同様に、いくつかの実施態様では、サンプル及びUMIバーコード付与は、UMI及び/又は第一鎖合成用バーコードタグ付加プライマーを保持するビーズとともに個々の細胞を隔離することによって実施できる。いくつかの実施態様では、ビーズはエマルジョン中の小滴に隔離される。いくつかの実施態様では、ビーズは小滴アクチュエータを用いて隔離及び/又は操作される。
図12に示すように、ビーズによるバーコード付与は、ビーズのセットを作成することによって実施できる(各ビーズは1つ又は複数の固有バーコードセットを保持する)。
【0019】
全トランスクリプトームのシークエンシング
いくつかの実施態様では、本明細書で提供される方法を利用して、全トランスクリプトームシークエンシングを実施することができる。そのような実施態様では、第一鎖合成はランダマーを用いて拡張される。
図9Aに示すように、ランダムプライミングは、ランダマーがハイブリダイズし第一鎖合成をプライミングできる転写物の全長に沿って任意の場所でシークエンシング可能なフラグメントのウィンドウを拡張する。ランダマーは、他のアダプター及びプライマー結合部位(例えばトランスポソームアダプター配列及び/又は鋳型切換え(TS)プライマー)に加えて、サンプルバーコード及び固有の分子識別子の同じ組合せを含むことができる。鋳型切換え及び第二鎖合成は、オリゴdTプライミングcDNA合成について上記で述べたように実施できる。得られた二本鎖cDNAを上記に述べたように続いてタグメンテーション反応に付すことができる。オリゴdTプライマーに対しランダマーを使用する違いは、転写物の3’部分ではなくて転写物の完全な又は実質的に完全な配列を得ることができるということである。
図6(100pgのRNA)に示すように、第一鎖合成のためのオリゴdT及びランダマーの混合物と比較して、どちらかのオリゴdTを用いて遺伝子発現を分析したとき、顕著な数の遺伝子が検出されさらに他のメトリックが得られた。
第一鎖合成のプライミングにランダマーを用いたときに生じ得る副産物の1つのタイプは連結副産物である。特に、
図9Bに示すいくつかの状況では、ランダマーは他のランダムプライマーとハイブリダイズし、RNA転写物とのアニーリングを打ち負かすことがある。生じたcDNA生成物はさらにまたランダムプライミングに付され、鋳型切換え事象の連鎖が生じ得る。この連鎖は、連結副産物の形成(鋳型切換えオリゴヌクレオチドの存在に依存し得る)をもたらし得る。
【0020】
そのような副産物の形成を減少させ及び/又は最小限にするために、副産物形成確率を減少させる多様なプライマー設計が本明細書で提示される。例示的な設計は
図10に示されるが、ただし本明細書に示すプライマー組成の範囲は当該図に示す例を超えるものであることは理解されよう。ある実施態様では、プライマーはヘアピンを形成するように構成され、バーコード、アダプター又は増幅プライマー結合領域のいずれの部分に対するランダマープライミングも妨げ或いは最小限にすることができる。プライマー自体によって形成される二本鎖部分は、したがってランダムハイブリダイゼーションを打ち負かすことができる。いくつかの実施態様では、ヘアピンの二本鎖部分は、トランスポザーゼアダプターのモザイク末端(ME)配列を含む。また別に或いはさらに加えて、いくつかの実施態様では、二本鎖部分は、モザイク末端配列を超えてトランスポザーゼアダプター配列のいくつか又は全部を含むことができる。いくつかの実施態様では、アダプター配列は短いRNA配列で完全に入れ替えられ、したがってプライマーの長さを短縮しランダマーがプライマーとハイブリダイズする潜在能力を最小限にすることができる。いくつかの実施態様では、短いRNA配列の相補物がプライマーの5’末端に又はその近くに提供され、したがってヘアピンの形成を可能にする。いくつかの実施態様では、相補性オリゴヌクレオチドをアダプター及び/又はプライマー部分とアニーリングさせることによって二本鎖領域が形成され、したがってバーコード、アダプター又は増幅プライマー結合領域のいずれの部分に対するランダマープライミングも妨げ或いは最小限にし、それによって連結化副産物を減少させ或いは回避する。
【0021】
ランダマー又はランダムプライマー:
本明細書で用いられるように、“ランダマー”及び“ランダムプライマー”という用語は互換的に用いられる。ランダマーという用語は、各位置で4倍縮退性を示すことができるランダムプライマーを指す。
いくつかの実施態様では、ランダマーは、当業界で公知の多様なランダム配列長を有する任意の核酸プライマーである。例えば、ランダマーは、3、4、5、6、7、8、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20又は20を超えるヌクレオチドの長さを有するランダム配列を含むことができる。ある種の実施態様では、複数個のランダムプライマーは多様な長さを有するランダマーを含むことができる。ある種の実施態様では、複数個のランダマーは長さが等しいランダマーを含むことができる。ある種の実施態様では、複数個のランダマーは約5から約18ヌクレオチドの長さであるランダム配列を含むことができる。いくつかの実施態様では、複数個のランダマーはランダムヘキサマーを含む。ランダムプライマー(及び特にランダムヘキサマー)は市場で入手でき、増幅反応(例えばマルチ入れ替え増幅(MDA))で広く用いられる(MDAはREPLI-g全ゲノム増幅キット(QIAGEN, Valencia, CA)で具体化される)。本明細書に提示する方法及び組成物では任意の適切な長さのランダマーを用い得ることは理解されよう。
3’ランダム配列部分及び5’指定配列部分を含む例示的ランダマー配列を以下に示す:
GTGTAGATCT CGGTGGTCGC CGTATCATTN NNNN
GTGTAGATCT CGGTGGTCGC CGTATCATTN NNNNN
GTGTAGATCT CGGTGGTCGC CGTATCATTN NNNNNN
GTGTAGATCT CGGTGGTCGC CGTATCATTN NNNNNNN
GTGTAGATCT CGGTGGTCGC CGTATCATTN NNNNNNNN
ATCTCGTATG CCGTCTTCTG CTTGNNNNN
ATCTCGTATG CCGTCTTCTG CTTGNNNNNN
ATCTCGTATG CCGTCTTCTG CTTGNNNNNNN
ATCTCGTATG CCGTCTTCTG CTTGNNNNNNNN
ATCTCGTATG CCGTCTTCTG CTTGNNNNNNNNN
本明細書で用いられるように、“SMART-Seqプラス”という用語はRNAからcDNAを調製する方法を指し、前記方法は第一鎖合成プライマー(第一増幅プライマー結合部位を含む)、ランダマー(第一増幅プライマー結合部位を含む)、及びオリゴヌクレオチド切換えオリゴヌクレオチド(cDNAの第一鎖に部分的に相補性であり、さらに第二増幅プライマー結合部位を含む)を用いる。いくつかの実施態様では、第一鎖合成プライマーはオリゴ(dT)部分を含む。
【0022】
バーコード及びUMI:
本明細書で用いられるように、“バーコード”又は“BC”は、サンプル又は核酸物質の供給源を識別するために用いることができる核酸タグを指す。したがって、核酸サンプルが複数の供給源に由来する場合、各核酸サンプルの核酸は異なる核酸タグを付され、したがってサンプルの供給源を識別することができる。バーコード(一般的にはインデックス、タグなどと称される)は当業者に周知である。当業界で公知であり、米国特許8,053,192号及びPCT公開広報WO05/068656の開示でも例示されている、任意の適切なバーコード又はバーコードセットを用いることができる(前記文献は参照によりその全体が本明細書に含まれる)。単一細胞のバーコード付与は、例えばU.S.2013/0274117(参照によりその全体が本明細書に含まれる)の開示に記載されているように実施できる。
1つ以上の供給源に由来する核酸は多様なタグ配列を取り込むことができる。このタグ配列は、長さが好ましくは100ヌクレオチド(二本鎖分子の場合は塩基対)まで、好ましくは長さが1から10ヌクレオチド、もっとも好ましくは長さが4、5又は6ヌクレオチドであり、さらにヌクレオチドの組合せを含む。例えばある実施態様で、タグの形成に6塩基対が選択され4つの異なるヌクレオチドの並べ替えが用いられる場合、合計4096の核酸アンカー(例えばヘアピン)(その各々が固有の6塩基タグを有する)を作成できる。
本明細書で用いられるように、UMI、固有識別子、及び固有の分子識別子という用語は、複数個の核酸分子の各々に添付される固有の核酸配列を指す。例えば第一鎖合成時に核酸分子に取り込まれるとき、UMIはその後の増幅偏向の修正に用いることができる。前記偏向の修正は、増幅後にシークエンシングされる固有の分子識別子(UMI)を直接計測することによって実施される。UMIの設計、取り込み、及び適用は、当業界で公知のように、例えば以下の文献の開示で例示されるように実施できる:WO 2012/142213;Islam et al.Nat.Methods (2014) 11:163-166;及びKivioja, T.et al.Nat.Methods (2012) 9: 72-74(前記文献の各々は参照によりその全体が本明細書に含まれる)。
【0023】
タグメンテーション:
本明細書で用いられるように、“タグメンテーション”という用語は、トランスポソーム複合体によるDNAの改変を指し、前記トランスポソーム複合体は、トランスポゾン末端配列を含むアダプターと複合体を形成したトランスポザーゼ酵素を含む。タグメンテーションは、DNAの同時断片化及び二重体フラグメントの両鎖の5’末端へのアダプターの連結をもたらす。トランスポザーゼ酵素を除去する精製工程に続いて、例えばPCR、連結、又は当業者に公知の他の適切な方法によって当該改造フラグメントの末端に追加配列を付加することができる。
本発明の方法は、トランスポザーゼ末端配列を受け入れて標的核酸を断片化でき、移転末端を添付するが非移転末端を添付しない任意のトランスポザーゼを利用することができる。“トランスポソーム”は少なくとも1つのトランスポザーゼ酵素及びトランスポザーゼ認識部位で構成される。“トランスポソーム”と呼ばれるいくつかのそのような系では、トランスポザーゼはトランスポゾン認識部位と機能的な複合体を形成することができ、前記は転移反応を触媒することができる。トランスポザーゼ又はインテグラーゼはトランスポザーゼ認識部位と結合し、トランスポザーゼ認識部位を標的核酸に挿入できる。前記プロセスはときに“タグメンテーション”と称される。いくつかのそのような挿入事象では、トランスポザーゼ認識部位の一方の鎖が標的核酸に挿入され得る。
標準的なサンプル調製方法では、各鋳型は挿入物のどちらかの末端にアダプターを含み、さらにしばしば多数の工程が、DNA又はRNAの改変及び改変反応の所望の生成物の精製の両方のために必要とされる。これらの工程は、改造フラグメントをフローセルに付加する前に溶液中で実施され、そこで当該フラグメントはプライマー伸長反応によって表面に連結される(前記伸長反応は、当該表面に共有結合したプライマーの末端にハイブリダイズしたフラグメントをコピーする)。続いて、これらの“シード”鋳型は、数回の増幅サイクルによりコピーされた鋳型のモノクローン性クラスターを生じる。
【0024】
クラスター形成及びシークエンシングに使えるように、DNAを溶液中でアダプター改変鋳型に変換するために必要とされる工程数は、トランスポザーゼ媒介断片化及びタグ添付の使用によって最小限にすることができる。
いくつかの実施態様では、トランスポゾン系技術をDNA断片化のために利用することができる。前記技術は、例えばNEXTERATM DNAサンプル調製キット(Illumina, Inc.)のためのワークフローで具体化され、この場合、ゲノムDNAは操作されたトランスポゾンによって断片化することができる(前記操作されたトランスポゾンは、インプットDNAを同時に断片化及びタグ付加し(“タグメンテーション”)、それによって当該フラグメントの末端に固有のアダプター配列を含む断片化核酸分子の集団を作製する)。
いくつかの実施態様は以下の使用を含む:超活性Tn5トランスポザーゼ及びTn5型トランスポザーゼ認識部位(Goryshin and Reznikoff, J.Biol.Chem., 273:7367, 1998)、又はMuAトランスポザーゼ並びにR1及びR2末端配列を含むMuトランスポザーゼ認識部位(Mizuuchi, K., Cell, 35: 785, 1983;Savilahti, H, et al., EMBO J., 14: 4893, 1995)。超活性Tn5トランスポザーゼと複合体を形成する例示的なトランスポザーゼ認識部位は、例えばEZ-Tn5TMトランスポザーゼ(Epicentre Biotechnologies, Madison, Wis.)である。
本明細書で提供するある種の実施態様で用いることができる転移系の更なる例には以下が含まれる:黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)Tn552(Colegio et al., J.Bacteriol., 183: 2384-8, 2001;Kirby C et al., Mol.Microbiol., 43: 173-86, 2002)、Ty1(Devine & Boeke, Nucleic Acids Res., 22: 3765-72, 1994;及び国際特許公開WO 95/23875)、トランスポゾンTn7(Craig, N L, Science.271: 1512, 1996;Craig, N L, Review in: Curr Top Microbiol Immunol., 204:27-48, 1996)、Tn/O及びIS10(Kleckner N, et al., Curr Top Microbiol Immunol., 204:49-82, 1996)、Marinerトランスポザーゼ(Lampe D J, et al., EMBO J., 15: 5470-9, 1996)、Tc1(Plasterk R H, Curr.Topics Microbiol.Immunol., 204: 125-43, 1996)、Pエレメント(Gloor, G B, Methods Mol.Biol., 260: 97-114, 2004)、Tn3(Ichikawa & Ohtsubo, J Biol.Chem.265:18829-32, 1990)、細菌挿入配列(Ohtsubo & Sekine, Curr.Top.Microbiol.Immunol.204: 1-26, 1996)、レトロウイルス(Brown, et al., Proc Natl Acad Sci USA, 86:2525-9, 1989)、及び酵母のレトロトランスポゾン(Boeke & Corces, Annu Rev Microbiol.43:403-34, 1989)。更なる例には以下が含まれる:IS5、Tn10、Tn903、IS911、及びトランスポザーゼファミリー酵素の操作バージョン(Zhang et al., (2009) PLoS Genet.5:e1000689.Epub 2009 Oct.16;Wilson C.et al (2007) J.Microbiol.Methods 71:332-5)。
【0025】
簡単に記せば、“転移反応”は、1つ以上のトランスポゾンが標的核酸のランダムな部位に又はほぼランダムな部位に挿入される反応である。転移反応の必須の成分はトランスポザーゼ及びDNAオリゴヌクレオチドであり、前記DNAオリゴヌクレオチドはトランスポゾン配列を提示し、移転トランスポゾン配列及びその相補物(すなわち非移転トランスポゾン末端配列)とともに機能的転移又はトランスポソーム複合体の形成に必要な他の成分を含む。DNAオリゴヌクレオチドは、必要な又は所望される追加の配列(例えばアダプター又はプライマー配列)をさらに含むことができる。略記すれば、in vitro転移は、トランスポゾン複合体及び標的DNAを接触させることによって開始させることができる。本開示のトランスポザーゼとの使用に容易に適合し得る例示的な転移手順及び系は、例えばWO 10/048605;US 2012/0301925;US 2013/0143774に記載されている(前記文献の各々は参照によりその全体が本明細書に含まれる)。
核酸の5’及び/又は3’末端に付加されるアダプターはユニバーサル配列を含むことができる。ユニバーサル配列は、2つ以上の核酸分子と共通である(すなわち共有される)ヌクレオチド配列の領域である。場合により、当該2つ以上の核酸分子はまた配列相違領域を有する。したがって、例えば5’アダプターは同一又はユニバーサル核酸配列を含むことができ、3’アダプターは同一又はユニバーサル配列を含むことができる。複数個の核酸分子の種々のメンバーに存在し得るユニバーサル配列は、ただ1つのユニバーサルプライマー(当該ユニバーサル配列に相補性である)を用いて多くの種々の配列の複製又は増幅を可能にすることができる。本明細書に提示する例で用いられるいくつかのユニバーサルプライマー配列には、V2.A14及びV2.B15 NEXTERATM配列が含まれる。しかしながら、任意の適切なアダプター配列を本明細書に提示する方法及び組成物で利用できることは理解されよう。例えば、Tn5モザイク末端配列(Mosaic End Sequence)A14(Tn5MEA)及び/又はTn5モザイク末端配列B15(Tn5MEB)(下記に示す相補性非移転配列(NTS)を含む)を本明細書で提供する方法に用いることができる。
Tn5MEA:5’-TCGTCGGCAGCGTCAGATGTGTATAAGAGACAG-3’(配列番号:1)
Tn5MEB:5’-GTCTCGTGGGCTCGGAGATGTGTATAAGAGACAG-3’(配列番号:2)
Tn5 NTS:5’-CTGTCTCTTATACACATCT-3’(配列番号:3)
【0026】
小滴のバーコード及びUMI
いくつかの実施態様では、サンプルバーコードを保持するプライマーは溶液中に存在できる。加えて或いはまた別に、UMI配列を保持するプライマーは溶液中に存在できる。例えば、固相支持体は1つ以上の小滴でもよい。したがって、ある種の実施態様では、複数個の小滴が存在でき、この場合、当該複数個の小滴の各々は固有のサンプルバーコード及び/又はUMI配列(前記の各々は分子に固有である)を保持する。したがって、いくつかの実施態様では、バーコードは小滴に固有であること、及びUMIは分子に固有でありしたがって小滴収集物内でUMIは何度も繰り返されることは当業者には理解されるであろう。いくつかの実施態様では、個々の細胞を識別するために、サンプルバーコード及び/又はUMI配列の固有のセットを有する小滴と個々の細胞を接触させる。いくつかの実施態様では、個々の細胞の溶解物を識別するために、サンプルバーコード及び/又はUMI配列の固有のセットを有する小滴と個々の細胞の溶解物を接触させる。いくつかの実施態様では、個々の細胞の精製核酸を識別するために、サンプルバーコード及び/又はUMI配列の固有のセットを有する小滴と個々の細胞の精製核酸を接触させる。
複数個の小滴の各々がサンプルバーコード及び/又はUMI配列の固有のセットを保持する本明細書に提示する実施態様では、小滴を形成及び操作するために任意の適切な系を用いることができる。
【0027】
“小滴アクチュエータ”は小滴を操作するための装置を意味する。小滴アクチュエータの例は例えば以下を参照されたい:米国特許6,911,132号(Pamula et al.)、発明の名称“Apparatus for Manipulating Droplets by Electrowetting-Based Techniques(エレクトロウェッティング系技術による小滴操作装置)”(2005年6月28日交付);米国特許公開No.20060194331(Pamula et al.)、発明の名称“Apparatuses and Methods for Manipulating Droplets on a Printed Circuit Board(プリント基板上で小滴を操作する装置及び方法)”(2006年8月31日公開);国際特許公開WO/2007/120241(Pollack et al.)、発明の名称“Droplet-Based Biochemistry(小滴系の生化学)”(2007年10月25日公開);米国特許6,773,566号(Shenderov)、発明の名称:“Electrostatic Actuators for Microfluidics and Methods for Using Same(微小流体工学のための静電気アクチュエータ及び前記を使用する方法)”(2004年8月10日交付);米国特許6,565,727号(Shenderov)、発明の名称:“Actuators for Microfluidics Without Moving Parts(パーツの移動のない微小流体工学のためのアクチュエータ)”(2003年5月20日交付);米国特許公開No.20030205632(Kim et al.)、発明の名称:“Electrowetting-driven Micropumping(エレクトロウェッティング駆動微小ポンプ)”(2003年11月6日公開);米国特許公開No.20060164490(Kim et al.)、発明の名称“Method and Apparatus for Promoting the Complete Transfer of Liquid Drops from a Nozzle(ノズルから液滴の完全な移転を容易にする方法及び装置)”(2006年7月27日公開);米国特許公開No.20070023292(Kim et al.)、発明の名称“Small Object Moving on Printed Circuit Board(プリント基板上を移動する小物体)”(2007年2月1日公開);米国特許公開No.20090283407(Shah et al.)、発明の名称“Method for Using Magnetic Particles in Droplet Microfluidics(小滴微小流体工学で磁性粒子を用いる方法)”(2009年11月19日公開);米国特許公開No.20100096266(Kim et al.)、発明の名称“Method and Apparatus for Real-time Feedback Control of Electrical Manipulation of Droplets on Chip(チップ上の小滴の電気的操作によるリアルタイムフィードバック制御のための方法及び装置)”(2010年4月22日公開);米国特許7,547,380号(Velev)、発明の名称“Droplet Transportation Devices and Methods Having a Fluid Surface(流動体表面を有する小滴移送装置及び方法)”(2009年6月16日交付);米国特許7,163,612号(Sterling et al.)、発明の名称“Method, Apparatus and Article for Microfluidic Control via Electrowetting, for Chemical, Biochemical and Biological Assays and the Like(化学、生化学及び生物学的アッセイなどのためのエレクトロウェッティングによる微小流動体の制御のための方法、装置及び物品)”(2007年1月16日交付);米国特許7,641,779号(Becker et al.)、発明の名称“Method and Apparatus for Programmable Fluidic Processing(プログラム可能な流動体プロセッシングのための方法及び装置)”(2010年1月5日交付);米国特許6,977,033号(Becker et al.)、発明の名称“Method and Apparatus for Programmable Fluidic Processing(プログラム可能な流動体プロセッシングのための方法及び装置)”(2005年12月20日交付);米国特許7,328,979号(Decre et al.)、発明の名称“System for Manipulation of a Body of Fluid(流動体本体の操作のための系)”(2008年2月12日交付);米国特許公開No.20060039823(Yamakawa et al.)、発明の名称“Chemical Analysis Apparatus(化学分析装置)”(2006年2月23日公開);米国特許公開No.20110048951(Wu)、発明の名称“Digital Microfluidics Based Apparatus for Heat-exchanging Chemical Processes(熱交換化学プロセスのためのデジタル微小流体工学による装置)”(2011年3月3日公開);米国特許公開No.20090192044(Fouillet et al.)、発明の名称“Electrode Addressing Method(電極指定方法)”(2009年7月30日公開);米国特許7,052,244号(Fouillet et al.)、発明の名称“Device for Displacement of Small Liquid Volumes Along a Micro-catenary Line by Electrostatic Forces(静電力による微小懸垂線における小体積流動体の入れ替え装置)”(2006年5月30日交付);米国特許公開No.20080124252(Marchand et al.)、発明の名称“Droplet Microreactor(小滴マイクロリアクター)”(2008年5月29日公開);米国特許公開No.20090321262(Adachi et al.)、発明の名称“Liquid Transfer Device(流動体移転装置)”(2009年12月31日公開);米国特許公開No.20050179746(Roux et al.)、発明の名称“Device for Controlling the Displacement of a Drop Between Two or Several Solid Substrates(2つ又はいくつかの固相間の小滴の入れ替えを制御する装置)”(2005年8月18日公開);及びDhindsaらの論文(Dhindsa et al., “Virtual Electrowetting Channels: Electronic Liquid Transport with Continuous Channel Functionality,” Lab Chip, 10:832-836, 2010)(前記文献の全ての開示は参照によりその全体が本明細書に含まれる)。
【0028】
ある種の小滴アクチュエータは、1つ以上の基板であってそれらの間の小滴処理間隙ととともに配置される当該1つ以上の基板、及び当該1つ以上の基板と密接に関係し(その上に重ねられているか、それに添付されているか、及び/又はその中に埋め込まれている)、1つ以上の小滴の作業を遂行するために配置される電極を含むであろう。例えば、ある種の小滴アクチュエータは、ベース(又は底部)基板、当該基板に結合した小滴処理電極、当該基板及び/又は電極の最上部の1つ以上の誘電層、及び場合により当該基板最上部の1つ以上の疎水層、小滴処理表面を形成する誘電層及び/又は電極を含むであろう。上部基板がまた提供され、前記は小滴処理表面から間隙(一般的には小滴処理間隙と称される)によって隔てられる。上部及び/又は底部基板上の多様な電極配置が上記で参照した特許及び特許出願で考察され、ある種の新規な電極配置は本開示の記述中で考察される。小滴処理時に、小滴が外側電極又は参照電極と連続的接触若しくは頻繁な接触を維持することが好ましい。外側又は参照電極は、当該間隙と向き合う上部基板、当該間隙と向き合う底部基板と間隙内で密接に関係することができる。電極が両方の基板上で提供される場合、電極の制御又はモニターのために電極と小滴アクチュエータ装置を連結する電気的接触は一方又は両方のプレートと密接に関係することができる。いくつかの事例では、1つの基板上の電極は、1つの基板のみが小滴アクチュエータと接触するように他方の基板と電気的に連結される。ある実施態様では、導電材料(例えばエポキシ、例えばMASTER BONDTM ポリマー系EP79(Master Bond, Inc., Hackensack, NJ))が、一方の基板の電極と他方の基板の電気路との電気的連絡を提供する。例えば上部基板の外側電極は、そのような導電材料によって底部基板の電気路と連結させることができる。
【0029】
複数の基板が用いられる場合、当該基板の間にスペーサーが提供され、基板間の間隙の高さを決定しオン-アクチュエータ分配槽を規定することができる。スペーサーの高さは、例えば少なくとも約5μm、100μm、200μm、250μm、275μm又は前記を超えることができる。また別に或いは前記に加えて、スペーサーの高さはせいぜい約600μm、400μm、350μm、300μm又は前記未満であり得る。スペーサーは、例えば上部又は底部基板からの1層の突起物及び/又は上部基板と底部基板との間に挿入された物質で形成できる。1つ以上の開口部を1つ以上の基板に提供して、当該開口部から流動体が小滴処理間隙にデリバリーできる流動体路を形成できる。いくつかの事例では、1つ以上の開口部を1つ以上の電極との相互作用のために一直線に並べ、例えば、開口部を流れる流動体が1つ以上の小滴処理電極と十分に接近し、当該流動体を用いる小滴処理電極によって小滴処理を遂行可能なように一直線に並べることができる。いくつかの事例では、ベース(又は底部)及び上部基板は、1つの完全成分として形成できる。1つの参照電極をベース(又は底部)及び/又は上部基板上に及び/又は間隙内に提供できる。参照電極の配置例は上記の参照特許及び特許出願に提供されている。多様な実施態様では、小滴アクチュエータによる小滴の操作は電極によって媒介できる。例えばエレクトロウェッティング媒介、又は誘電泳動媒介、又はクーロン力媒介である。本開示の小滴アクチュエータで用いることができる小滴処理制御のための他の技術の例には、流体力学的な流体圧を誘発する装置の使用が含まれ、前記装置は、例えば以下の原理に基づいて作動する装置である:機械的原理(例えば外部注射器ポンプ、空気圧膜ポンプ、振動膜ポンプ、真空装置、遠心力、圧電/超音波ポンプ、及び音響力);電気的又は磁気的原理(例えば、電気浸透流、動電学ポンプ、磁性流体プラグ、電気水力学ポンプ、磁力を利用する吸引又は反発、及び磁性水力学ポンプ);熱力学原理(例えば気泡発生/相変化誘発体積膨張);他の種類の表面湿潤化原理(例えばエレクトロウェッティング及びオプトエレクトロウェッティングとともに化学的、熱的、構造的及び放射能的に誘発される表面張力勾配);重力;表面張力(例えば毛細管作用);静電力(例えば電気浸透流);遠心力流(基板をコンパクトディスクに配置し回転させる);磁力(例えば振動イオンは流れを引き起こす);磁性水力学的な力;及び真空又は圧力差。
【0030】
ある種の実施態様では、前述の技術の2つ以上の組合せを利用して、本開示の小滴アクチュエータで小滴処理を遂行することができる。同様に前述の1つ以上の技術を用いて、小滴処理間隙に例えば別の装置の貯水槽から又は当該小滴アクチュエータの外部の貯水槽(例えばある小滴アクチュエータ基板及び当該貯水槽から当該小滴処理間隙への流路に結合されている貯水槽)から流動体をデリバリーすることができる。本開示のある種の小滴アクチュエータの小滴処理表面は疎水性物質で作製するか、又はそれら表面を疎水性にするために被覆又は処理することができる。例えば、いくつかの事例では、小滴処理表面のいくらかの部分又は全部を低表面エネルギー物質又は化学反応で、例えばポリフッ素化若しくは過フッ素化化合物のような化合物を沈積させるか又は前記を溶液若しくは重合性モノマーで用いるin situ合成を利用することによって誘導することができる。前記の例には以下が含まれる:TEFLON(登録商標) AF(デュポン社(DuPont, Wilmington, DE)から入手できる)、サイトップ(cytop)ファミリーのメンバー物質、疎水性及び超疎水性コーティングのFLUOROPEL(商標)でのコーティング(サイトニック社(Cytonix Corporation, Beltsville, MD)から入手できる)、シランコーティング、フルオロシランコーティング、疎水性ホスホネート誘導体(例えばアクロン社(Aculon, Inc)から販売されているもの)、及びNOVECTMエレクトロニックコーティング(3M社(3M Company, St.Paul, MN)から入手できる)、プラズマ強化化学気相蒸着(PECVD)のための他のフッ素化モノマー、及びPECVDのためのオルガノシロキサン(例えばSiOC)。いくつかの事例では、小滴処理表面は約10nmから約1,000nmの範囲の厚さを有する疎水性コーティングを含むことができる。
【0031】
さらにまたいくつかの実施態様では、小滴アクチュエータの上部基板は導電性有機ポリマーを含み、前記は続いて疎水性コーティングで被覆されるか、そうでなければ小滴処理表面を疎水性にするために処理される。例えば、プラスチック基板に沈積される導電性有機ポリマーは、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)ポリ(スチレンスルホネート)(PEDOT:PSS)であり得る。導電性有機ポリマー及び代替導電層の他の例は以下に記載されている:国際特許公開WO/2011/002957(Pollack et al.)、発明の名称“Droplet Actuator Devices and Methods(小滴アクチュエータ装置及び方法)”(2011年1月6日公開)(前記文献は参照によりその全体が本明細書に含まれる)。一方又は両方の基板は、プリント回路板(PCB)、ガラス、酸化インジウムスズ(ITO)被覆ガラス、及び/又は半導体物質を基板として用いて製作され得る。基板がITO被覆ガラスであるときは、ITO被覆は好ましくは厚さが少なくとも約20nm、50nm、75nm、100nm又は前記を超える。また別に或いは前記に加えて、厚さはせいぜい約200nm、150nm、125nm又は前記未満でもよい。いくつかの事例では、上部及び/又は底部基板は、誘電体(例えばポリイミド誘電体)で被覆されたPCB基板を含む。いくつかの事例では、前記はまた小滴処理表面を疎水性にするために被覆されるか或いは処理される。基板がPCBを含むとき、以下の物質が適切な物質の例である:MITSUITM BN-300(三井化学アメリカ社(MITSUI Chemicals America, Inc., San Jose CA)から入手できる);ARLONTM 11N(アーロン社(Arlon, Inc, Santa Ana, CA)から入手できる);NELCO(商標) N4000-6及びN5000-30/32(パークエレクトロケミカル社(Park Electrochemical Corp., Melville, NY)から入手できる);ISOLATM FR406(イソラグループ(Isola Group, Chandler, AZ)から入手できる)、特にIS620;フルオロポリマーファミリー(前記は低バックグラウンド蛍光を有するので蛍光検出に適している);ポリイミドファミリー;ポリエステル;ポリエチレンナフタレート;ポリカーボネート;ポリエーテルエーテルケトン;液晶ポリマー;シクロオレフィンコポリマー(COC);シクロオレフィンポリマー(COP);アラミド; THERMOUNT(商標) 不織アラミド強化(デュポン社(DuPont, Wilmington, DE)から入手できる);NOMEX(商標) ブランドファイバー(デュポン社(DuPont, Wilmington, DE)から入手できる);及び紙。
【0032】
多様な物質がまた基板の誘電性成分としての使用に適している。例には以下が含まれる:気相蒸着誘電体、例えば、PARYLENETM C(特にガラスに)、PARYLENETM N及びPARYLENETM HT(高温用、約300℃)(パリレンコーティングサービス社(Parylene Coating Services, Inc., Katy, TX)から入手できる);TEFLON(登録商標) AFコーティング;サイトップ;はんだマスク、例えば流動性写真画像形成はんだマスク(例えばPCBに)、例えばTAIYOTM PSR4000シリーズ、TAIYOTM PSR及びAUSシリーズ(タイヨーアメリカ社(Taiyo America, Inc.Carson City, NV)から入手できる)(熱管理を必要とする適用について良好な熱特性を有する)、及びPROBIMERTM 8165(ハンツマンアドバーンスドマテリアルズ社(Huntsman Advanced Materials Americas Inc., Los Angeles, CA)から入手できる)(熱管理を必要とする適用について良好な熱特性を有する);ドライフィルムはんだマスク、例えばVACREL(商標)ドライフィルムはんだマスク系のもの(デュポン社(DuPont, Wilmington, DE)から入手できる);フィルム誘電体、例えばポリイミドフィルム(例えばKAPTON(商標)ポリイミドフィルム(デュポン社(DuPont, Wilmington, DE)から入手できる))、ポリエチレン、及びフルオロポリマー(例えばPEP)、ポリテトラフルオロエチレン;ポリエステル;ポリエチレンナフタレート;シクロオレフィンコポリマー(COC);シクロオレフィンポリマー(COP);上記に挙げた任意の他のPCB基板物質;黒色マトリックス樹脂;ポリプロピレン;及び黒色可撓性回路物質、例えばDuPontTM Pyralux(商標) HXC及びDuPontTM Kapton(商標) MBC(デュポン社(DuPont, Wilmington, DE)から入手できる)。
【0033】
小滴移送電圧及び周波数は、具体的なアッセイプロトコルで用いられる試薬の性能により選択できる。設計パラメータは変動可能である。例えば、オン-アクチュエータ貯水槽の数及び配置、独立電極接続数、種々の貯水槽のサイズ(体積)、磁石/ビーズ洗浄ゾーンの配置、電極サイズ、電極間ピッチ、及び(上部及び底部基板間の)間隙の高さは、具体的な試薬、プロトコル、小滴体積などの使用により変動し得る。いくつかの事例では、本開示の基板は、低表面エネルギー物質又は化学反応で、例えばポリフッ素化若しくは過フッ素化化合物を沈積させるか又は前記を溶液若しくは重合性モノマーで用いるin situ合成を利用することによって誘導することができる。例には以下が含まれる:浸漬又は噴霧コーティングのためのTEFLON(登録商標) AFコーティング及びFLUOROPEL(商標)コーティング、プラズマ強化化学蒸着沈積(PECVD)のための他のフッ素化モノマー、及びPECVDのための有機シロキサン(例えばSiOC)。加えて、いくつかの事例では、小滴処理表面のいくらかの部分又は全体を、PCB基板に由来するバックグラウンドノイズ(例えばバックグラウンド蛍光)を軽減する物質で被覆できる。例えば、ノイズ軽減コーティングは、黒色マトリックス樹脂(例えば東レ株式会社(日本)から入手できる黒色マトリックス樹脂)を含むことができる。小滴アクチュエータの電極は典型的にはコントローラー又はプロセッサーで制御され、それ自体は系の部分として提供され、プロセッシング機能とともにデータ及びソフトの保存並びに入出力能力を含むことができる。試薬は、小滴処理間隙又は貯水槽(小滴処理間隙と流体により連結されている)で小滴アクチュエータに提供できる。試薬は液状形(例えば小滴)として存在するか、又はそれらは、小滴処理間隙又は小滴処理間隙と流体により連結されている貯水槽で再構成可能な形態で提供され得る。再構成可能な試薬は、典型的には再構成のために液体と一緒にすることができる。本明細書に示す方法及び装置との使用に適切な再構成可能試薬の例は以下に記載されたものが含まれる:米国特許7,727,466号(Meathrel et al.)、発明の名称“Disintegratable Films for Diagnostic Devices(診断装置のための分解可能フィルム)”(2010年6月1日交付)(前記文献は参照によりその全体が本明細書に含まれる)。
【0034】
1つ以上の電極に関して“活性化する”とは、1つ以上の電極の電気的状態における変化に影響を与えることを意味し、前記は小滴の存在下で小滴処理を生じる。電極の活性化は、交流(AC)又は直流(DC)を用いて達成できる。任意の適切な電圧を用いることができる。例えば、電極は、約150Vより強い、又は約200Vより強い、又は約250Vより強い、又は約275Vから約1000V、又は約300Vの電圧を用いて活性化することができる。ACシグナルが用いられる場合は、任意の適切な周波数を用いることができる。例えば、電極は、約1zHから約10MHz、又は約10Hzから約60Hz、又は約20Hzから約40Hz、又は約30Hzの周波数を有するACシグナルを用いて活性化することができる。
小滴アクチュエータのビーズに関して“ビーズ”とは、小滴アクチュエータ上の又は小滴アクチュエータに近接する小滴と相互作用することができる任意のビーズ又は粒子を意味する。ビーズは任意の広範囲の形状(例えば球体、大まかな球体、卵形、円盤形、立方形、非晶質、及び他の三次元形状)であり得る。ビーズは、例えば、小滴アクチュエータ上の小滴として小滴処理を受ける能力を有し得るか、又はそうでなければ小滴アクチュエータ上の小滴が小滴アクチュエータ上の及び/又は小滴アクチュエータから離れたビーズと接触することを可能にする態様で、ビーズは小滴アクチュエータに対して構成され得る。ビーズは、小滴内に、小滴処理間隙内に、又は小滴処理表面上に提供され得る。ビーズは、小滴処理間隙に対して外側にあるか、又は小滴処理表面から離れて位置する貯水槽に提供することが可能で、前記貯水槽は、ビーズを含む小滴が小滴処理間隙に到達するか又は小滴処理表面に接触することを可能にする流路と結合され得る。ビーズは、広範囲の物質(例えば樹脂及びポリマーを含む)を用いて製造することができる。ビーズは任意の適切なサイズであることができ、例えばマイクロビーズ、マイクロ粒子、ナノビーズ、ナノ粒子を含む。いくつかの事例では、ビーズは磁気応答性であり、他の事例では、ビーズは顕著には磁気応答性ではない。磁気応答性ビーズのためには、磁気応答性物質が実質的にビーズの全て、ビーズの部分、又はビーズのただ1つの成分を構成することができる。ビーズの残り部分にはとりわけポリマー物質、コーティング、及びアッセイ試薬の添付を可能にする部分が含まれ得る。
【0035】
適切なビーズの例には以下が含まれる:フローサイトメトリーマイクロビーズ、ポリスチレンマイクロ粒子及びナノ粒子、官能化ポリスチレマイクロ粒子及びナノ粒子、被覆ポリスチレンマイクロ粒子及びナノ粒子、シリカマイクロビーズ、蛍光性マイクロ球体及びナノ球体、官能化蛍光性マイクロ球体及びナノ球体、被覆マイクロ球体及びナノ球体、着色マイクロ粒子及びナノ粒子、磁性マイクロ粒子及びナノ粒子、超常磁性マイクロ粒子及びナノ粒子(例えばDYNABEADS(商標)粒子、インビトロゲングループ(Invitrogen Group, Carlsbad, CA)から入手できる))、蛍光性マイクロ粒子及びナノ粒子、被覆磁性マイクロ粒子及びナノ粒子、強磁性マイクロ粒子及びナノ粒子、被覆強磁性マイクロ粒子及びナノ粒子、並びに以下に記載されたもの:米国特許公開No.20050260686(Watkins et al.)、発明の名称“Multiplex Flow Assays Preferably with Magnetic Particles as Solid Phase(固相として好ましくは磁性粒子が用いられる多重フローアッセイ)”(2005年11月24日公開);米国特許公開No.20030132538(Chandler)、発明の名称“Encapsulation of Discrete Quanta of Fluorescent Particles(蛍光性粒子の別々の量子の被包化)”(2003年7月17日公開);米国特許公開No.20050118574(Chandler et al.)、発明の名称“Multiplexed Analysis of Clinical Specimens Apparatus and Method(臨床標本多重分析装置及び方法)”(2005年6月2日公開);米国特許公開No.20050277197(Chandler et al.)、発明の名称“Microparticles with Multiple Fluorescent Signals and Methods of Using Same(複数の蛍光シグナルを有するマイクロ粒子及び前記を使用する方法)”(2005年12月15日公開);及び米国特許公開No.20060159962(Chandler et al.)、発明の名称“Magnetic Microspheres for use in Fluorescence-based Applications(蛍光系適用で用いられる磁性微小球体)”(2006年7月20日公開)(ビーズ並びに磁気応答性物質及びビーズに関する前記文献の教示のために、前記文献の全開示内容が参照により本明細書に含まれる)。
【0036】
ビーズは、生物分子又は生物分子と結合し複合体を形成することができる他の分子と予め連結され得る。ビーズは、抗体、タンパク質若しくは抗原、DNA/RNAプローブ又は所望の標的に対し親和性を有する任意の他の分子と予め連結され得る。磁気応答性ビーズ及び/又は非磁気応答性ビーズを固定する、及び/又はビーズを用いて小滴処理プロトコルを遂行するための小滴アクチュエータ技術の例は以下に記載されている:米国特許公開No.20080053205(Pollack et al.)、発明の名称“Droplet-Based Particle Sorting(小滴による粒子選別)”(2008年3月6日公開);米国特許出願No.61/039,183、発明の名称“Multiplexing Bead Detection in a Single Droplet(1つの単一小滴による多重ビーズ検出)”(2008年3月25日出願);米国特許出願No.61/047,789(Pamula et al.)、発明の名称“Droplet Actuator Devices and Droplet Operations Using Beads(ビーズを用いる小滴アクチュエータ装置及び小滴処理)”(2008年4月25日出願);米国特許出願No.61/086,18、発明の名称“Droplet Actuator Devices and Methods for Manipulating Beads(小滴アクチュエータ装置及びビーズを操作する方法)”(2008年8月5日出願);国際特許公開WO/2008/098236(Eckhardt et al.)、発明の名称“Droplet Actuator Devices and Methods Employing Magnetic Beads(小滴アクチュエータ装置及び磁性ビーズを利用する方法)”(2008年8月14日出願);国際特許公開WO/2008/134153(Grichko et al.)、発明の名称“Bead-based Multiplexed Analytical Methods and Instrumentation(ビーズ系多重化分析方法及び装置)”(2008年11月6日公開);国際特許公開WO/2008/116221(Eckhardt et al.)、発明の名称“Bead Sorting on a Droplet Actuator(小滴アクチュエータでのビーズ選別)”(2008年9月25日出願);国際特許公開WO/2007/120241(Eckhardt et al.)、発明の名称“Droplet-based Biochemistry(小滴による生化学)”(2007年10月25日公開)(前記文献の全開示が参照により本明細書に含まれる)。
ビーズの特徴を本開示の多重的特徴で利用することができる。多重化に適切であるとともに、そのようなビーズから放出されるシグナルを検出及び分析する方法に適する特徴を有するビーズの例は以下で見出すことができる:米国特許公開No.20080305481(Whitman et al.)、発明の名称“Systems and Methods for Multiplex Analysis of PCR in Real Time(PCRのリアルタイム多重分析のための系及び方法)”(2008年12月11日公開);米国特許公開No.20080151240(Roth)、発明の名称“Methods and Systems for Dynamic Range Expansion(動的範囲を拡張するための方法及び系)”(2008年6月26日公開);米国特許公開No.20070207513(Sorensen et al.)、発明の名称“Methods, Products, and Kits for Identifying an Analyte in a Sample(サンプル中の分析物を識別する方法、製品及びキット)”(2007年9月6日公開);米国特許公開No.20070064990(Roth)、発明の名称“Methods and Systems for Image Data Processing(画像データ処理のための方法及び系)”(2007年3月22日公開);米国特許公開No.20060159962(Chandler et al.)、発明の名称“Magnetic Microspheres for use in Fluorescence-based Applications(蛍光系適用で使用される磁性ミクロ球体)”(2006年7月20日公開);米国特許公開No.20050277197(Chandler et al.)、発明の名称“Microparticles with Multiple Fluorescent Signals and Methods of Using Same(多重蛍光シグナルを有するミクロ粒子及び前記を用いる方法)”(2005年12月15日公開);及び米国特許公開No.20050118574(Chandler et al.)、発明の名称“Multiplexed Analysis of Clinical Specimens Apparatus and Method(臨床標本の多重化分析装置及び方法)”(2005年6月2日公開)(前記文献の全ての開示は参照により本明細書に含まれる)。
【0037】
“小滴”とは小滴アクチュエータ上の大量の液状物を意味する。典型的には、小滴は少なくとも部分的に充填流動体と境界を接する。例えば、小滴は充填流動体によって完全に取り囲まれるか、又は充填流動体及び小滴アクチュエータの1つ以上の表面と境界を接することができる。別の例として、小滴は、充填流動体、小滴アクチュエータの1つ以上の表面、及び/又は大気と境界を接することができる。さらに別の例として、小滴は、充填流動体及び大気と境界を接することができる。小滴は例えば水性又は非水性であることができ、又は水性及び非水性成分を含む混合物又はエマルジョンであってもよい。小滴は多様な形状をもつことができ、非限定的な例には大雑把に以下が含まれる:円盤形、ナメクジ形、切詰められた球体、楕円、球状、部分的に圧縮された球体、半球状、卵形、筒状、そのような形状の組合せ、及び小滴処理中に形成される多様な形状、例えばそのような形状と小滴アクチュエータの1つ以上の表面との接触の結果として出現し分裂し又は形成された形状。本開示のアプローチを用いる小滴処理に付すことができる小滴液状物の例については以下を参照されたい:国際特許公開WO/2007/120241(Eckhardt et al.)、発明の名称“Droplet-Based Biochemistry(小滴による生化学)”(2007年10月25日公開)(前記文献の全開示は参照により本明細書に含まれる)。
【0038】
多様な実施態様では、小滴は、生物学的サンプル、例えば全血、リンパ液、血清、血漿、汗、涙液、唾液、痰、脳脊髄液、羊水、膣分泌物、漿液、髄液、心嚢液、腹腔液、胸水、漏出液、浸出液、嚢胞液、胆汁、尿、胃液、腸液、糞便サンプル、単一又は複数細胞を含む液、細胞小器官を含む液、液状化組織、液状化器官、多細胞生物を含む液、生物学的スワブ、及び生物学的洗浄液を含むことができる。さらにまた、小滴は、試薬(例えば水、脱イオン水、食塩水溶液、酸性溶液、塩基性溶液、洗剤溶液、及び/又は緩衝液)を含むことができる。小滴は以下を含むことができる:核酸、例えばDNA、ゲノムDNA、RNA、mRNA、又は前記のアナローグ;ヌクレオチド、例えばデオキシリボヌクレオチド、リボヌクレオチド、又は前記のアナローグ、例えばターミネータ部分を有するアナローグ(例えば以下に記載されたもの:Bentleyらの論文(Bentley et al., Nature 456:53-59, 2008);国際特許公開WO/2013/131962(Gormley et al.)、発明の名称“Improved Methods of Nucleic Acid Sequencing(核酸シークエンシングの改良方法)”(2013年9月12日公開);米国特許7,057,026号(Barnes et al.)、発明の名称“Labelled Nucleotides(標識ヌクレオチド)”(2006年6月6日交付);国際特許公開WO/2008/042067(Kozlov et al.)、発明の名称“Compositions and Methods for Nucleotide Sequencing(ヌクレオチドシークエンシングのための組成物及び方法)”(2008年4月10日公開);国際特許公開WO/2013/117595(Rigatti et al.)、発明の名称“Targeted Enrichment and Amplification of Nucleic Acids on a Support(支持体上の核酸の標的誘導濃縮及び増幅)”(2013年8月15日公開);米国特許7,329,492号(Hardin et al.)、発明の名称“Methods for Real-Time Single Molecule Sequence Determination(リアルタイム単一分子配列決定の方法)”(2008年2月12日交付);米国特許7,211,414号(Hardin et al.)、発明の名称“Enzymatic Nucleic Acid Synthesis: Compositions and Methods for Altering Monomer Incorporation Fidelity(酵素的核酸合成:モノマー取り込みフィデリティを改変するための組成物及び方法)”(2007年5月1日交付);米国特許7,315,019号(Turner et al.)、発明の名称“Arrays of Optical Confinements and Uses Thereof(光閉じ込めアレー及びその使用)”(2008年1月1日交付);米国特許7,405,281号(Xu et al.)、発明の名称“Fluorescent Nucleotide Analogs and Uses Therefor(蛍光性ヌクレオチドアナローグ及びその使用)”(2008年7月29日交付);及び米国特許公開No.20080108082(Ranket al.)、発明の名称“Polymerase Enzymes and Reagents for Enhanced Nucleic Acid Sequencing(核酸シークエンシングの強化のためのポリメラーゼ酵素及び試薬)”(2008年5月8日公開)(前記文献の全開示は参照により本明細書に含まれる));酵素、例えばポリメラーゼ、リガーゼ、リコンビナーゼ、又はトランスポザーゼ;結合パートナー、例えば抗体、エピトープ、ストレプトアビジン、ビオチン、レシチン、又は炭水化物;又は他の生化学的に活性な分子。小滴の含有物の他の例には試薬、例えば生化学的プロトコル(例えば核酸増幅プロトコル、親和性系アッセイプロトコル、酵素アッセイプロトコル、シークエンシングプロトコル、及び/又は生物学的液体分析用プロトコル)のための試薬が含まれる。小滴は1つ以上のビーズを含むことができる。
【0039】
“小滴処理”とは、小滴アクチュエータ上の小滴の任意の操作を意味する。小滴処理には例えば以下が含まれる:小滴を小滴アクチュエータにローディングすること、1つ以上の小滴を小滴供給源から分配すること、1つの小滴を2つ以上の小滴に分裂させ分離し又は分割すること、ある場所から任意の方向の別の場所に小滴を移送すること、1つ以上の小滴を1つの単一小滴に合体又は結合させること、小滴を希釈すること、小滴を混合すること、小滴を撹拌すること、小滴を変形させること、小滴を適切な位置に維持すること、小滴をインキュベートすること、小滴を加熱すること、小滴を気化させること、小滴を冷却すること、小滴を処分すること、小滴を小滴アクチュエータの外に移送すること、本明細書に記載する他の小滴処理、及び/又は前述の組合せ。“合体させる”、“合体”、“結合させる”、“結合”などという用語は、2つ以上の小滴から1つの小滴を生成することを言うために用いられる。そのような用語が2つ以上の小滴に関して用いられるときは、2つ以上の小滴の1つの小滴への結合をもたらすために十分な小滴処理の任意の組合せを用いることが可能なことは理解されるべきである。例えば、“小滴Aの小滴Bとの合体”は以下によって達成できる:小滴Aを移送して静止した小滴Bと接触させる;小滴Bを移送して静止した小滴Aと接触させる;又は小滴A及びBを移送して互に接触させる。“分裂”、“分離”及び“分割”という用語は、生じた小滴の体積(すなわち生じた小滴の体積は同じでも異なってもよい)又は生じた小滴の数(生じた小滴の数は2、3、4、5、又はそれより多くてもよい)に関していずれの特定の結果を示唆することも意図しない。“混合する”という用語は、1つの小滴内の1つ以上の成分のより均質な分布をもたらす小滴処理を指す。小滴処理の“ローディング”の例には、微小透析、圧力補助ローディング、自動ローディング、受動ローディング、及びピペットローディングが含まれる。小滴処理は電極によって媒介され得る。いくつかの事例では、小滴処理は、表面における親水性及び/又は疎水性領域の使用によって、及び/又は物理的障害によってさらに促進される。小滴処理については、“小滴アクチュエータ”の定義の下で上記に引用した特許及び特許出願を参照されたい。
【0040】
小滴処理の成果を検出又は確認するために、時にインピーダンス若しくは静電容量の検出又は画像化技術を用いることができる。そのような技術の例は、米国特許公開No.20100194408(Sturmer et al.)、発明の名称“Capacitance Detection in a Droplet Actuator(小滴アクチュエータの静電容量検出)”(2110年8月5日公開)に記載されている(前記の全開示は参照により本明細書に含まれる)。一般的に言えば、検出又は画像化技術を用いて、個々の電極における小滴の有無を確認することができる。例えば、小滴分配処理に続いて目的場所の電極に分配された小滴が存在すれば、小滴分配処理は有効であったことが確認される。同様に、アッセイプロトコルの適切な工程である検出箇所に小滴が存在すれば、以前の一連の小滴処理が検出のための小滴を首尾よく生じたことを確認できる。小滴移送時間は極めて速い。例えば、多様な実施態様では、1つの電極から次の電極への小滴の移送は、約1秒、又は約0.1秒、又は約0.01秒、又は約0.001秒を超えることができる。ある実施態様では、電極はACモードで作動されるが、画像化のためにDCモードに切換えられる。小滴のフットプリント領域がエレクトロウェッティング領域と同様であるように小滴処理を遂行することは有益である。換言すれば、1x-、2x-、3x-小滴が、それぞれ1、2及び3電極を用いて操作されて有効に制御される。小滴フットプリントがある時間の小滴処理の遂行のために利用できる電極数より大きい場合、小滴サイズと電極数の差は典型的には1を超えるべきではない。換言すれば、2x小滴は1つの電極を用いて有効に制御され、3x小滴は2つの電極を用いて有効に制御される。小滴がビーズを含むとき、小滴サイズが小滴を制御する(例えば小滴を移送する)電極数と等しいことは有用である。
【0041】
“充填流動体”とは、小滴アクチュエータの小滴処理基板と密接な関係を有する流動体を意味し、当該流動体は小滴相と極めて非混和性で、小滴相が電極媒介小滴処理を受けやすくする。例えば、小滴アクチュエータの小滴処理間隙は典型的には充填流動体で満たされる。充填流動体は、例えば低粘度油(例えばシリコーン油)又はヘキサデカン充填流動体であるか或いは前記を含む。充填流動体はハロゲン化油(例えばフッ素化又は過フッ素化油)であるか、或いは前記を含むことができる。充填流動体は小滴アクチュエータの全間隙を満たすか、又は小滴アクチュエータの1つ以上の表面を被覆することができる。充填流動体は導電性又は非導電性である。充填流動体を選択して以下を達成できる:小滴処理を改善する及び/又は小滴の試薬又は標的物質の損失を減少させる、微小小滴の形成を改善する、小滴間の交差汚染を減少させる、小滴アクチュエータ表面の汚染を減少させる、小滴アクチュエータ材料の分解を減少させる、など。例えば、充填流動体は小滴アクチュエータ材料との適合性のために選択できる。例として、フッ素化充填流動体はフッ素化表面コーティングとともに有利に用いることができる。フッ素化充填流動体は親油性化合物の消失を減少させるために有用である。親油性化合物は、例えばウンベリフェロン基質、例えば6-ヘキサデカノイルアミド-4-メチルウンベリフェロン基質(例えばクラッベ病、ニーマン-ピック病又は他のアッセイで用いる)であり、他のウンベリフェロン基質は以下に記載されている:米国特許公開No.20110118132(Winger et al.)、発明の名称“Enzymatic Assays Using Umbelliferone Substrates with Cyclodextrins in Droplets of Oil(油の小滴中でシクロデキストリンとともにウンベリフェロン基質を用いる酵素アッセイ)”(2011年5月19日公開)(前記文献の全開示は参照により本明細書に含まれる)。適切なフッ素化油の例には以下が含まれる:Galden系のもの、例えばGalden HT170(bp=170℃、粘度=1.8 cSt、密度=1.77)、Galden HT200(bp=200℃、粘度=2.4 cSt、密度=1.79)、Galden HT230(bp=230℃、粘度=4.4 cSt、密度=1.82)(いずれもSolvay Solexis):Novec系、例えばNovec 7500(bp=128℃、粘度=0.8 cSt、密度=1.61)、フロリナートFC-40(bp=155℃、粘度=1.8 cSt、密度=1.85)、フロリナートFC-43(bp=174℃、粘度=2.5 cSt、密度=1.86)(ともに3M)。
【0042】
一般的に、過フッ素化充填流動体の選択は動粘度(<7 cStが好ましいが要件ではない)及び沸点(DNA/RNA系適用(PCRなど)には>150℃が好ましいが要件ではない)を基準にする。充填流動体には例えば界面活性剤又は他の添加物をドーピングすることができる。例えば、添加物を選択して以下を達成することができる:小滴処理を改善する及び/又は小滴の試薬又は標的物質の損失を減少させる、微小小滴の形成を改善する、小滴間の交差汚染を減少させる、小滴アクチュエータ表面の汚染を減少させる、小滴アクチュエータ材料の分解を減少させる、など。具体的なアッセイプロトコルで用いられる試薬に関する性能、及び小滴アクチュエータ材料との効果的な相互作用又は無相互作用のために、充填流動体の組成(界面活性剤のドーピングを含む)を選択することができる。本明細書に示す方法及び装置とともに使用するために適切な充填流動体及び充填流動体処方の例は以下で提供される:国際特許公開WO/2010/027894(Srinivasan et al.)、発明の名称“Droplet Actuators, Modified Fluids and Methods(小滴アクチュエータ、改変液及び方法)”(2010年6月3日公開);国際特許公開WO/2009/021173(Srinivasan et al.)、発明の名称“Use of Additives for Enhancing Droplet Operations(小滴処理強化のための添加材の使用)”(2009年2月12日公開);国際特許公開WO/2008/098236(Sista et al.)、発明の名称“Droplet Actuator Devices and Methods Employing Magnetic Beads(磁性ビーズを使用する小滴アクチュエータ装置及び方法)”(2009年1月15日公開);米国特許公開No.20080283414(Monroe et al.)、発明の名称“Electrowetting Devices(エレクトロウェッティング装置)”(2008年11月20日公開)(前記文献の全開示は、本明細書に引用する他の特許及び特許出願とともに参照により本明細書に含まれる)。いくつかの事例では、フッ素化油は、フッ素化界面活性剤(例えばZonyl FSO-100(Sigma-Aldrich)及び/又は他のもの)をドーピングされる。充填流動体は典型的には液体である。いくつかの実施態様では、液体の代わりに充填ガスを用いることができる。
【0043】
磁気応答性ビーズに関して“固定する”とは、ビーズが、小滴アクチュエータ上の小滴で又は充填流動体で位置的に実質的に拘束されることを意味する。例えば、ある実施態様では、固定されたビーズは小滴で位置的に十分に拘束されて小滴分割処理の遂行を可能にし、実質的に全てのビーズを有する1つの小滴及び実質的にビーズを欠く1つの小滴を生じる。
“磁気応答性”とは磁場に応答することを意味する。“磁気応答性ビーズ”は、磁気応答性材料を含むか又は前記で構成される。磁気応答性材料の例には、常磁性材料、強磁性材料、フェリ磁性材料、及びメタ磁性材料が含まれる。適切な常磁性材料の例には、鉄、ニッケル、及びコバルトともに酸化金属、例えばFe3O4、BaFe12O19、CoO、NiO、Mn2O3、Cr2O3及びCoMnPが含まれる。
“貯水槽”とは囲い又は部分的囲いを意味し、液体を保持、貯蔵又は供給するための構造を有する。本開示の小滴アクチュエータ系はオン-カートリッジ貯水槽及び/又はオフ-カートリッジ貯水槽を含むことができる。オン-カートリッジ貯水槽は、(1)オン-アクチュエータ貯水槽(小滴処理間隙内又は小滴処理表面上の貯水槽);(2)オフ-アクチュエータ貯水槽(小滴アクチュエータカートリッジ上の貯水槽であるが小滴処理間隙の外側にあり、小滴処理表面と接触しない);又は(3)ハイブリッド貯水槽(オン-アクチュエータ領域及びオフ-アクチュエータ領域を有する)であり得る。オフ-アクチュエータ貯水槽の例は上部基板内の貯水槽である。オフ-アクチュエータ貯水槽は典型的には開口部又は流路により流体連絡があり、前記開口部又は流路は、オフ-アクチュエータ貯水槽から小滴処理間隙に(例えばオン-アクチュエータ貯水槽に)液体を流すために配置される。オフ-カートリッジ貯水槽は、小滴アクチュエータカートリッジの部分では全くないが小滴アクチュエータカートリッジのいくらかの部分へ液体を流す貯水槽であり得る。例えば、オフ-カートリッジ貯水槽は、系の部分又は小滴アクチュエータカートリッジが処理中に連結されるドッキングステーションであってもよい。同様に、オフ-カートリッジ貯水槽は、試薬保存容器又は注射器であることができ、後者はオン-カートリッジ貯水槽に又は小滴処理間隙に流体を強制的に送り込むために用いられる。オフ-カートリッジ貯水槽を用いる系は、典型的には流体移送手段を含み、それによってオフ-カートリッジ貯水槽からオン-カートリッジ貯水槽に又は小滴処理間隙に液体を移すことができる。
【0044】
本明細書で用いられる、“磁石の磁場への移送”、“磁石に向けて移送する”などは、小滴及び/又は小滴内の磁気応答性ビーズを指し、小滴内の磁気応答性ビーズを実質的に引き付けることができる磁場領域内への移送を指すことを意図する。同様に、本明細書で用いられる“磁石又は磁場から離す”、“磁石の磁場の外へ移送する”などは、小滴及び/又は小滴内の磁気応答性ビーズを指し、小滴又は磁気応答性ビーズが完全に磁場から除去されるか否かにかかわらず、小滴内の磁気応答性ビーズを実質的に引き付けることができる磁場領域から外への移送を指すことを意図する。本明細書に記載のいずれの事例でも、小滴を所望の磁場領域に向けて又はその外へ移送できること、及び/又は所望の磁場領域を小滴に向けて又は小滴から離れるように移動させ得ることは理解されよう。電極、小滴又は磁気応答性ビーズが磁場内に又は磁場に存在するなどというとき、電極が小滴を所望の磁場領域内に及び/又はその外へ移送することを可能にする態様で電極が配置される状況、或いは小滴又は磁気応答性ビーズが所望の磁場領域に配置される状況を指すことが意図され、各々の事例で、所望の領域にある磁場は当該小滴内の一切の磁気応答性ビーズを実質的に引き付ける能力を有する。同様に、電極、小滴又は磁気応答性ビーズが磁場の“外側”又は磁場から“離れて”存在するなどというとき、電極が小滴を一定の磁場領域から外へ移送することを可能にする態様で電極が配置される状況、或いは小滴又は磁気応答性ビーズが一定の磁場領域から離れて配置される状況を指すことが意図され、各々の事例で、そのような領域にある磁場は当該小滴内の一切の磁気応答性ビーズを実質的に引き付ける能力をもたないか、又は一切の残留吸引力は当該領域内で遂行される小滴処理の効力を排除しない。本開示の多様な特徴では、系、小滴アクチュエータ又は系の別の成分が、磁石(例えば1つ以上の常磁性磁石(例えば単一の筒状又は棒状磁石、又はそのような磁石のアレー(例えばハルバッハアレー))、又は電磁石若しくは電磁石アレー)を含み、磁気応答性ビーズ又はチップ上の他の成分と相互作用するために磁場を形成することができる。そのような相互作用には、例えば貯蔵時における又は小滴処理時の小滴における磁気応答性ビーズの移動若しくは流動を実質的に固定又は拘束すること、又は小滴から磁気応答性ビーズを磁力により引き出すことが含まれる。
【0045】
ビーズの洗浄に関して“洗浄する”とは、ビーズに接触した又はビーズに暴露された1つ以上の物質の量及び/又は濃度をビーズと接触した小滴から減少させることを意味する。当該物質の量及び/又は濃度の減少は、部分的であることも、実質的に完全であることも、又は全く完全であることもある。物質は極めて多様な任意の物質であり得る。例には、更なる分析のための標的物質、及び望ましくない物質(例えばサンプルの成分、夾雑物、及び/又は過剰試薬)が含まれる。いくつかの実施態様では、洗浄処理は、磁気応答性ビーズと接触した出発小滴で開始し、この場合、当該小滴は最初の量及び最初の濃度の物質を含む。洗浄処理は多様な小滴処理を用いて進行させることができる。洗浄処理は、最初の量及び/又は濃度の物質より低い総量及び/又は濃度を有する、磁気応答性ビーズを含む小滴をもたらすことができる。適切な洗浄技術は以下に記載されている:米国特許7,439,014号(Pamula et al.)、発明の名称“Droplet-Based Surface Modification and Washing(小滴系表面の改変及び洗浄)”(2008年10月21日交付)(前記文献の全開示は参照により本明細書に含まれる)。
“上部”、“底部”、“~の上方に”、“~の下に”及び“~上の”という用語は、小滴アクチュエータの成分の相対的位置、例えば小滴アクチュエータの上部及び底部基板の相対的位置に関する説明を通して用いられる。小滴アクチュエータはその空間的方向性に関係なく機能を有することは理解されよう。
任意の形状の液体(例えば、移動していようと静止していようと小滴又は連続体)が、電極、アレー、マトリックス又は表面“の上に”、“に”、又は“の上方に”存在すると記載されるとき、そのような液体は、当該電極/アレー/マトリックス/表面と直接接触することができるか、又は1つ以上の層若しくはフィルム(当該液体と当該電極/アレー/マトリックス/表面との間に挿入される)と接触することができる。ある実施態様では、充填流動体は、そのような液体と当該電極/アレー/マトリックス/表面との間のフィルムとみなすことができる。
小滴が、小滴アクチュエータの“上に存在する”又は小滴アクチュエータに“ローディングされる”と記載されるとき、小滴アクチュエータを用いて当該小滴での1つ以上の小滴処理の遂行を促進する態様で当該小滴が小滴アクチュエータ上に配置されていること、又は当該小滴から生じるシグナルの特性の検出又はシグナルの検出を促進する態様で当該小滴が小滴アクチュエータ上に配置されていること、及び/又は当該小滴は当該小滴アクチュエータ上で小滴処理に付されていることは理解されるべきである。
【0046】
ビーズ上のバーコード及びUMI
いくつかの実施態様では、サンプルバーコードを保持するプライマーは固相支持体に固定できる。加えて或いはまた別に、UMI配列を保持するプライマーは固相支持体に固定できる。例えば、固相支持体は1つ以上のビーズであり得る。したがって、ある種の実施態様では、複数個のビーズを提示でき、この場合、複数個のビーズの各々は固有のサンプルバーコード及び/又はUMI配列を保持する。いくつかの実施態様では、個々の細胞は、個々の細胞の識別のために、固有のサンプルバーコードセット及び/又はUMI配列を有する1つ以上のビーズと接触される。いくつかの実施態様では、個々の細胞の溶解物は、個々の細胞溶解物の識別のために、固有のサンプルバーコードセット及び/又はUMI配列を有する1つ以上のビーズと接触される。いくつかの実施態様では、個々の細胞の精製核酸は、個々の細胞の精製核酸の識別のために、固有のサンプルバーコードセット及び/又はUMI配列を有する1つ以上のビーズと接触される。ビーズは、当業界で公知の任意の適切な態様で、例えば上記に記載の小滴アクチュエータを用いて操作することができる。
“固体表面”、“固相支持体”及び本明細書の他の文法的等価語は、本明細書に記載のプライマー、バーコード及び配列の添付のために適切な、又は添付のために適切であるように改変できる任意の材料を指す。当業者には理解されるところであるが、可能な基板の数は非常に大きい。可能な基板には以下が含まれる(ただしこれらに限定されない):ガラス及び改変又は官能化ガラス、プラスチック(アクリル、ポリスチレン及びスチレンと他の材料とのコポリマー、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリブチレン、ポリウレタン、テフロン(登録商標)(TeflonTM)などを含む)、多糖類、ナイロン又はニトロセルロース、セラミクス、樹脂、シリカ又はシリカ系材料(シリコン及び改変シリコンを含む)、炭素、金属、無機ガラス、プラスチック、光ファイバー束、及び他の多様なポリマー。いくつかの実施態様のために特に有用な固相支持体及び固体表面はフローセル装置に存在する。例示的なフローセルは下記でさらに詳細に示される。
【0047】
いくつかの実施態様では、固相支持体は、本明細書に記載のプライマー、バーコード及び配列を指定のパターンで固定するために適切なパターン化表面を有する。“パターン化表面”は、固相支持体の露出層における又は露出層上の種々の領域の配置を指す。例えば、当該1つ以上の領域は、1つ以上のトランスポソーム複合体が存在する造作であり得る。当該造作は、介在する領域(トランスポソーム複合体は存在しない)によって分離できる。いくつかの実施態様では、造作はx-y形式であり、行及び列を形成し得る。いくつかの実施態様では、パターンは造作及び/又は介在領域が繰り返される配置であり得る。いくつかの実施態様では、パターンは造作及び/又は介在領域のランダムな配置であり得る。いくつかの実施態様では、トランスポソーム複合体は固相支持体上にランダムに分布する。いくつかの実施態様では、トランスポソーム複合体はパターン化表面に分布する。本明細書に示される方法及び組成物で用いることができる例示的なパターン化表面は、US Ser.No.13/661,524又はUS Pat.App.Publ.No.2012/0316086 A1に記載されている(前記文献の各々は参照により本明細書に含まれる)。
いくつかの実施態様では、固相支持体は表面にウェル又は窪みのアレーを含む。前記は、多様な技術を用い当業界で一般的に知られているように製作できる。前記技術には、例えばフォトリソグラフィー、捺印技術、鋳型技術及び微細エッチング技術が含まれるが、ただしこれらに限定されない。当業者には理解されるところであるが、用いられる技術は、アレー基板の組成及び形状に左右されるであろう。
【0048】
固相支持体の組成及び幾何学的構造はその使用に応じて変動し得る。いくつかの実施態様では、固相支持体は、平板状構造、例えばスライド、チップ、マイクロチップ及び/又はアレーである。したがって、基板の表面は平板な層の形状であり得る。いくつかの実施態様では、固相支持体はフローセルの1つ以上の表面を含む。本明細書で用いられる“フローセル”という用語は、固体表面を含むチャンバーを指し、その全体にわたって1つ以上の流動試薬を流すことができる。本開示の方法で容易に用いることができるフローセル及び関連する流体系並びに検出プラットフォームの例は、例えば以下に記載されている:Bentley et al., Nature 456:53-59, 2008;WO 04/018497;US 7,057,026;WO 91/06678;WO 07/123744;US 7,329,492;US 7,211,414;US 7,315,019;US 7,405,281;及びUS 2008/0108082(前記文献の各々は参照により本明細書に含まれる)。
いくつかの実施態様では、固相支持体又はその表面は、非平板状、例えば管又は容器の内側若しくは外側表面である。いくつかの実施態様では、固相支持体はマイクロ球体又はビーズを含む。“マイクロ球体”又は“ビーズ”又は“粒子”或いは本明細書の他の文法的等価語は、小さな別々の粒子を意味する。適切なビーズ組成物には以下が含まれる(ただしこれらに限定されない):プラスチック、セラミクス、ガラス、ポリスチレン、メチルスチレン、アクリルポリマー、常磁性材料、トリアゾル、カーボングラファイト、二酸化チタン、ラテックス又は架橋デキストラン、例えばセファロース、セルロース、ナイロン、架橋ミセル及びテフロン(登録商標)。固相支持体のために本明細書で概略した任意の他の材料も同様にいずれも用いることができる。以下のガイドブック(“Microsphere Detection Guide”, Bangs Laboratories(Fishers Ind.))は有用な手引きである。
ビーズは球体である必要はなく、不規則な粒子を用いることができる。また別に或いは前記に加えて、ビーズは多孔性でもよい。ビーズのサイズはナノメートル(すなわち100nm)からミリメートル(すなわち1mm)の範囲であり、約0.2ミクロンから約200ミクロンのビーズが好ましく、約0.5から約5ミクロンのビーズが特に好ましいが、ただしいくつかの実施態様では、それよりも小さい又は大きいビーズを用いることができる。
本出願を通して、多様な刊行物、特許及び/又は特許出願が参照されている。これら刊行物の全開示が参照により本出願に含まれる。
含むという用語は本明細書では制限がないことが意図され、記載の成分だけでなく任意の追加成分をさらに包含する。
多数の実施態様を記載してきた。それにもかかわらず、多様な改変を実施できることは理解されよう。したがって、他の実施態様も以下の特許請求の範囲内である。
【配列表】