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特許7351981MEMS作動垂直カプラアレイに基づくビーム誘導システム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-19
(45)【発行日】2023-09-27
(54)【発明の名称】MEMS作動垂直カプラアレイに基づくビーム誘導システム
(51)【国際特許分類】
   G02B 26/08 20060101AFI20230920BHJP
【FI】
G02B26/08 A
G02B26/08 F
【請求項の数】 13
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022118719
(22)【出願日】2022-07-26
(62)【分割の表示】P 2020570783の分割
【原出願日】2019-06-19
(65)【公開番号】P2022140574
(43)【公開日】2022-09-26
【審査請求日】2022-08-03
(31)【優先権主張番号】62/686,848
(32)【優先日】2018-06-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】506115514
【氏名又は名称】ザ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ カリフォルニア
【氏名又は名称原語表記】The Regents of the University of California
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】シャオシェン・ジャン
(72)【発明者】
【氏名】ミン・チアン・エー・ウ
(72)【発明者】
【氏名】アンドリュー・エス・マイケルズ
(72)【発明者】
【氏名】ヨハンネス・ヘンリクソン
【審査官】横井 亜矢子
(56)【参考文献】
【文献】特表2005-519323(JP,A)
【文献】特開平10-160964(JP,A)
【文献】特開2018-049223(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0347733(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2004/0228574(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 26/00-26/08
G02F 1/00-1/125,1/21-7/00
G01S 7/48-7/51
G01S 17/00-17/95
G02B 6/26-6/34
G02B 6/42,6/43
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板上に配置された第1の行導波路と、
第1の垂直カプラと、を含む装置であって、
前記第1の垂直カプラが、
(i)(1)制御可能な前記第1の行導波路の上方で第1の垂直分離を有する第1の可動端であって、前記第1の可動端が第1の高さを有する複数の突出部を含む、第1の可動端及び、(2)前記基板に対して不動である第1の垂直結合要素を含む第1の固定端を有する第1のカプラ導波路であって、前記第1の垂直結合要素が、前記第1のカプラ導波路から受信した光学エネルギーを自由空間に放出するように構成された、第1のカプラ導波路と、
(ii)前記第1のカプラ導波路と動作可能に結合され、前記第1の可動端を、前記第1の行導波路と光学的に結合されていない第1の位置と、前記第1の行導波路とエバネッセント結合された第2の位置との間で移動するように構成された第1のアクチュエータと、
含み、
前記第1の可動端が前記第2の位置にあるとき、前記第1の可動端及び前記第1の行導波路が、前記第1の高さに等しい均一な垂直分離を有し、併せて第1の方向性カプラを画定する、装置。
【請求項2】
前記第1の行導波路を含む複数の行導波路と、
前記第1の垂直カプラを含む垂直カプラ配列と、をさらに含み、
前記垂直カプラ配列のそれぞれが前記複数の行導波路のそれぞれの行導波路と動作可能に結合可能であり、前記垂直カプラ配列のそれぞれが、
(i)可動端及び、前記基板に対して不動である垂直結合要素を含む固定端を有するカプラ導波路であって、前記垂直結合要素が、前記カプラ導波路から受信した光学エネルギーを自由空間に放出するように構成された、カプラ導波路と、
(ii)前記カプラ導波路と動作可能に結合され、前記可動端を、前記複数の行導波路のそれぞれの行導波路と光学的に結合されていない第1の位置と、前記複数の行導波路のそれぞれの行導波路と光学的に結合された第2の位置との間で移動するように構成されたアクチュエータと、
を含む、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
レンズをさらに含み、前記レンズ及び前記垂直カプラ配列が、前記レンズが垂直結合要素のそれぞれによって放出された前記光学エネルギーを受信し、前記光学エネルギーを、前記垂直カプラ配列内の前記垂直結合要素の位置に基づく方向に向けるように配置された、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記レンズが、単一のレンズ、複合レンズ、テレセントリックレンズ、望遠鏡、及び携帯電話レンズから成るグループから選択される、請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記基板上の入力ポートから前記垂直カプラ配列の任意の垂直カプラへの光信号の伝搬を制御するように動作可能であるスイッチングネットワークをさらに含む、請求項2に記載の装置。
【請求項6】
前記スイッチングネットワークが、前記垂直カプラ配列の任意の垂直カプラを、前記垂直カプラ配列の任意の他の垂直カプラが前記光信号の少なくとも一部を受信しているか否かにかかわらず、前記光信号の少なくとも一部を受信可能であるようにする非ブロッキングスイッチングネットワークである、請求項5に記載の装置。
【請求項7】
前記垂直結合要素が、回折格子、プリズム、ホログラム、2次元格子構造、回折レンズ、ブレーズド回折格子素子、屈折レンズ、角度エッチング導波路ファセットミラー、角度エッチング導波路、及び角度付きミラーからなるグループから選択された光学素子を含む、請求項1に記載の装置。
【請求項8】
基板上に配置された第1の行導波路を提供するステップと、
(1)制御可能な前記第1の行導波路の上方で第1の垂直分離を有する第1の可動端であって、前記第1の可動端が第1の高さを有する複数の突出部を含む、第1の可動端及び、(2)前記基板に対して不動である第1の垂直結合要素を含む第1の固定端を有するカプラ導波路を含む第1の垂直カプラを提供するステップであって、前記第1の垂直結合要素が、前記第1のカプラ導波路から受信した光学エネルギーを自由空間に放出するように構成された、第1の垂直カプラを提供するステップと、
前記第1の可動端を、前記第1の行導波路と光学的に結合されていない第1の位置と、前記第1の行導波路とエバネッセント結合された第2の位置との間で制御するステップと、
を含み、
前記第1の可動端が前記第2の位置にあるとき、前記第1の可動端及び前記第1の行導波路が、前記第1の高さに等しい均一な垂直分離を有し、併せて第1の方向性カプラを画定する、方法。
【請求項9】
前記基板上に配置された複数の行導波路を提供するステップであって、前記複数の行導波路が前記第1の行導波路を含む、複数の行導波路を提供するステップと、
前記第1の垂直カプラを含む垂直カプラ配列を提供するステップと、をさらに含み、
前記垂直カプラ配列のそれぞれの垂直カプラが、前記複数の行導波路のそれぞれの行導波路と動作可能に結合可能であり、前記垂直カプラ配列のそれぞれの垂直カプラが、
(i)可動端及び、前記基板に対して不動である垂直結合要素を含む固定端を有するカプラ導波路であって、前記垂直結合要素が、前記カプラ導波路から受信した光学エネルギーを自由空間に放出するように構成された、カプラ導波路と、
(ii)前記カプラ導波路と動作可能に結合され、前記可動端を、前記複数の行導波路のそれぞれの行導波路と光学的に結合されていない第1の位置と、前記複数の行導波路のそれぞれの行導波路と光学的に結合された第2の位置との間で移動するように構成されたアクチュエータと、
を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記基板上の入力ポートから前記垂直カプラ配列の任意の垂直カプラへの光信号の伝搬を制御するステップと、
前記垂直カプラ配列の少なくとも1つの垂直カプラによって放出された光学エネルギーを、前記垂直カプラ配列と光学的に結合されたレンズにおいて受信するステップと、
前記光学エネルギーを、前記垂直カプラ配列内の少なくとも1つの垂直カプラの位置に基づく方向に向けるステップと、をさらに含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記垂直カプラ配列の前記少なくとも1つの垂直カプラにおける前記レンズの収差を修正するステップをさらに含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記入力ポートから前記垂直カプラ配列の任意の垂直カプラへの光信号の伝搬を制御するために、前記基板上に配置されたスイッチングネットワークを提供するステップをさらに含み、前記スイッチングネットワークが、前記垂直カプラ配列の任意の垂直カプラーを、前記垂直カプラ配列の任意の他の垂直カプラが前記光信号の少なくとも一部を受信するか否かにかかわらず、前記光信号の少なくとも一部を受信することを可能にする非ブロッキングスイッチングネットワークとして提供される、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記レンズと前記垂直カプラ配列との間の相対位置を制御するステップをさらに含む、請求項10に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本事例は、参照により本明細書に組み込まれる、2018年6月19日に出願された米国仮特許出願第62/686,848号(代理人整理番号:332-007PR1)の利益を主張する。
【0002】
本事例における主張の解釈に影響を及ぼす可能性がある、本出願と、参照により組み込まれている事例との間の言語における矛盾または不一致が存在する場合、本事例における主張は、本事例における言語と一致するものと解釈されるべきである。
【0003】
連邦政府委託研究に関する記載
本発明は、先端研究プロジェクト庁-エネルギー(Advanced Research Projects Agency-Energy)(ARPA-E)によって授与された契約番号DE-AR0000849のもとで米国政府の支援によってなされた。米国政府は、本発明に一定の権利を有する。
【0004】
本開示は、一般に、自由空間光通信に関し、より詳細には、自由空間ビーム誘導に関する。
【背景技術】
【0005】
アジャイルビーム誘導デバイスは、自由空間光通信だけでなく、LiDAR(光検出と測距)、3Dイメージング、センシング、および顕微鏡用途のために必要とされる。それらのデバイスは、スキャニングおよび取得/ポインティング/追跡(ATP)機能を提供する。伝統的なビーム誘導装置は、モータ駆動の機械的ジンバルを使用して、光学系全体を回転させる。不都合点として、モータ駆動のジンバルは、かさ高く、重く、かつ大量の電力を消費する。
【0006】
集積されたビーム誘導システムは、ポータブルまたはモバイルのプラットフォームにおいて高い有用性を示し、「ソリッドステートLiDAR」の主要な要素になった。たとえば、コリメーションおよびビーム誘導は、従来技術では、レンズ(たとえば、テレセントリックレンズ、望遠鏡など)の焦点面に配置された光源を使用して、ならびにレンズの光軸の位置およびレンズの焦点面の中の光源の位置の配列を変えて実証されてきた。これは、光軸に対してマクロ光源(macro light source)を動かすこと、焦点面の中に配置された光ファイバを動かすこと、および固定位置の光源に対してレンズを動かすことなどによって、様々な方法で行われてきた。
【0007】
不都合点として、レンズおよび/または光源を動かすために必要な機械システムは、負荷の重量/剛性に起因して制限された周波数応答を有し、LiDARおよび/または高速移動車両の間の自由空間通信に対してあまりに遅く、かつかさ高く、複雑で、遅くて高価である。
【0008】
他の従来技術のビーム誘導システムは、垂直共振器面発光レーザ(VCSEL:vertical cavity surface-emitting lasers)の2次元(2D)配列の個々の素子を選択的に励起する電子クロスバースイッチに基づく。しかしながら、そのような手法は、レーザの大きい配列を必要とする。加えて、そのようなシステムは、VCSEL源を必要とし、それは、いくつかの通信またはセンシングの用途に対してあまり適さない。
【0009】
さらに他の従来技術のビーム誘導システムは、シリコンフォトニックベースの熱光学スイッチを使用して、面発光格子カプラ(surface-emitting grating coupler)を活性化している。不都合点として、熱光学スイッチは、温度に敏感であり、制限された誘導能力を有し、高い電力消費量を有し、大規模ビーム誘導デバイスに対して適切に縮小拡張できない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】米国仮特許出願第62/686,848号
【文献】米国特許出願第20160327751号
【文献】国際出願第WO2018/049345号
【非特許文献】
【0011】
【文献】T. J. Seokら、「Large-scale broadband digital silicon photonic switches with vertical adiabatic couplers」、Optica、vol. 3、no. 1、64ページ、2016年1月
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
実際的なビーム誘導技術は、いまだ、従来技術において利用できないままである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本開示は、レンズの焦点面の中に配置された機械的にアクティブな垂直格子カプラ(すなわち、カプラ)の集積された光学ベースのプログラマブル2次元(2D)配列を含むビーム誘導装置を対象とする。レンズは、カプラのいずれかによって放射される自由空間光を、コリメートされた自由空間光ビームに変換するように配列される。プログラマブルカプラ配列は、基板上にモノリシックに集積され、どのカプラ(または複数のカプラ)が励起される(すなわち、光を受信して光を自由空間に放出する)かを制御するスイッチングネットワークを含む。スイッチングネットワークは、励起されないカプラへの漏洩を軽減し、それにより、光学的クロストークを軽減するように構成される。各自由空間光ビームの伝搬方向(すなわち、レンズの光軸に対するその出力角)は、レンズの光軸に対するそのそれぞれのカプラのx座標とy座標の関数である。本開示による実施形態は、LiDARシステム、光通信システム、光干渉断層計および他の医用イメージングシステム、3次元イメージングおよびセンシング用途などにおける使用に対して特によく適する。
【0014】
本開示による例示的な実施形態は、レンズと、(1)機械的にアクティブな集積された光学ベースのカプラの2次元配列および(2)どのカプラが励起されるかを制御するための集積された光学ベースのスイッチングネットワークを含むプログラマブル垂直カプラ配列とを含むビーム誘導システムである。
【0015】
2D配列の各垂直カプラは、集積された光学的導波路の中に形成された格子構造を含み、ここで、導波路および格子は、導波路を通して伝搬する光信号の光エネルギーが格子によって自由空間に放出されるように構成される。
【0016】
スイッチングネットワークは、オフ状態およびオン状態を有する異なるMEMSベースの光スイッチを介して、複数の行導波路の各々と光学的に結合可能であるバス導波路の入力ポートにおいて光信号を受信する。そのオフ状態では、スイッチにおいて受信された光信号は、バス導波路の中に留まり、実質的に光エネルギーが失われることなく、スイッチを通過する。そのオン状態では、光信号は、バス導波路からそのそれぞれの行導波路に完全に転送される。各スイッチは、スイッチにおいて両導波路の間の漏洩を軽減するためにスイッチがそのオフ状態にあるときに、バス導波路および行導波路が互いに光学的に分離されるように構成される。
【0017】
各行導波路はまた、別のMEMSベースの光スイッチによって、カプラ配列の対応する行の中で各カプラと光学的に結合可能である。各行導波路スイッチのオフ状態では、行導波路を通って伝搬する光信号は、行導波路の中に留まり、実質的に光エネルギーが失われることなく、スイッチを通過する。そのオン状態では、光信号は、行導波路からそのそれぞれカプラに完全に転送される。
【0018】
レンズは、各カプラによって自由空間の中に放出された光エネルギーを受信して、受信された光エネルギーをコリメートされた自由空間出力ビームに変換するように配列される。出力ビームは、レンズの光軸に対する垂直カプラのx座標およびy座標に基づく伝搬方向に沿って案内される。
【0019】
いくつかの実施形態では、単一の垂直カプラのみが、一度に励起され得る。いくつかの実施形態では、スイッチングネットワークは、複数の垂直カプラが所与の時間に励起されることを可能にする。いくつかの実施形態では、スイッチングネットワークは完全に非ブロッキングであり、それにより、各垂直カプラが、任意の他の垂直カプラの状態にかかわらずに励起されることを可能にする。
【0020】
いくつかの実施形態では、レンズおよびカプラ配列の配列は制御可能である。
【0021】
本開示による実施形態は、光軸(A1)および焦点面(FP1)を有するレンズ(102)と、プログラマブル垂直カプラ配列(104)とを含むビーム誘導システム(100)であり、プログラマブル垂直カプラ配列(104)は、基板(114)と、中心点(CP1)で特徴づけられる2次元配列でありかつ複数のカプラ行(CR)および複数のカプラ列(CC)を有するカプラ(112)の配列であって、カプラの配列の各カプラは、カプラ導波路(402)およびカプラ導波路から受信された光エネルギーを自由空間に放出するように構成された垂直結合要素(408)を含む、カプラ(112)の配列と、基板上に配置され、第1の光信号(120)を受信するための第1の入力ポート(IP1)を有するバス導波路(202)と、基板上に配置された複数の行導波路(204)と、第1の入力ポートからカプラの配列のうちの任意のカプラに第1の光信号(120)の伝搬を制御するために作動するスイッチングネットワーク(110)とを含み、レンズおよびプログラマブル垂直カプラ配列は、レンズが、複数の垂直結合要素の各垂直結合要素によって放出された光エネルギーを受信し、光エネルギーを、プログラマブル垂直カプラ配列の中のその垂直結合要素の位置、およびレンズと少なくとも1つの次元のプログラマブル垂直カプラ配列との第1の相対位置に基づく出力軸に案内するように配列される。
【0022】
本開示による別の実施形態は、光ビームを誘導するための方法であり、方法は、(1)光軸(A1)および焦点面(FP1)を有するレンズ(102)を提供するステップと、(2)プログラマブル垂直カプラ配列(104)を配置するステップであって、プログラマブル垂直カプラ配列は、基板(114)上に配置され、中心点(CP1)で特徴づけられる2次元配列として配列されかつ複数のカプラ行(CR)および複数のカプラ列(CC)を有するカプラ(112)の配列であって、カプラの配列の各カプラがカプラ導波路(402)とカプラ導波路から受信された光エネルギーを自由空間に放出するように構成された垂直結合要素(408)とを含む、カプラ(112)の配列と、基板上に配置され、第1の入力ポート(IP1)を有するバス導波路(202)と、基板上に配置された複数の行導波路(204)と、第1の入力ポートからカプラの配列のうちの任意のカプラへの第1の光信号(120)の伝搬を制御するために作動するスイッチングネットワーク(110)とを含む、ステップと、(3)レンズが、複数の垂直結合要素の各垂直結合要素によって放出された光エネルギーを受信しかつ光エネルギーをプログラマブル垂直カプラ配列の中のその垂直結合要素の位置、およびレンズと少なくとも1つの次元のプログラマブル垂直カプラ配列との第1の相対位置に基づく出力軸に案内するようにレンズおよびプログラマブル垂直カプラ配列を配列するステップと、(4)第1のカプラがレンズへの第1の光信号に基づいて第2の光信号(120’)を供給し、第1のカプラが第1の位置(x1、y1)に配置されるように第1の光信号を入力ポートからカプラの配列のうちの第1のカプラに案内するようにスイッチングネットワークを制御するステップと、(5)第2の光信号をコリメートし、第1の位置に基づく出力軸(A2)に沿って案内するステップとを含む。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1A】本開示による、ビーム誘導システムの例示的な実施形態の概略側面図である。
図1B】本開示による、ビーム誘導システムの例示的な実施形態の概略上面図である。
図1C】本開示による、1つのビーム誘導状態における例示的なビーム誘導システムの概略斜視図である。
図1D】本開示による、別のビーム誘導状態における例示的なビーム誘導システムの概略斜視図である。
図2】例示的実施形態による、カプラ配列の概略動作図である。
図3A】MEMS光スイッチ206の概略上面図である。
図3B】「オフ」状態にある代表的MEMS光スイッチ206の概略斜視図である。
図3C】オン状態にある代表的MEMS光スイッチ206の概略斜視図である。
図4A】例示的実施形態による、例示的MEMS制御垂直カプラの概略上面図である。
図4B】「オフ」状態にあるMEMS制御垂直カプラ212の概略断面図である。
図4C】オン状態にあるMEMS制御垂直カプラ212の概略断面図である。
図4D】本開示による、MEMS制御垂直カプラの代替実施形態の概略上面図である。
図4E】「オフ」状態にあるMEMS制御垂直カプラ212Aの概略図である。
図4F】オン状態にあるMEMS制御垂直カプラ212Aの概略図である。
図4G】MEMS制御垂直カプラ212Bの概略図である。
図5】本開示による、代替プログラマブルカプラ配列を示す図である。
図6】本開示による、別の代替プログラマブルカプラ配列を示す図である。
図7】本開示による、代替ビーム誘導システムの概略側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1Aおよび図1Bは、本開示によるビーム誘導システムの例示的な実施形態の側面および上面の概略図を示す。ビーム誘導システム100は、レンズ102と、プログラマブルカプラ配列104と、コントローラ106とを含む。システム100は、入力光信号120を受信し、その光エネルギーを自由空間出力ビーム108としてコリメートして、出力ビームを3次元ボリュームを通して誘導するように構成される。図示の例では、光信号120は連続波(CW)信号であるが、システム100は、事実上任意の光信号(たとえば、周波数変調連続波(FMCW)信号、LiDAR信号、光パルスなど)に対して作動する。
【0025】
レンズ102は、光軸A1と、焦点面FP1を画定する焦点距離fとを有する、単一の凸凸屈折レンズである。いくつかの実施形態では、レンズ102は、複合レンズ(たとえば、テレセントリックレンズなど)、またはたとえば、1つまたは複数の収差を補正するか、もしくは場合によっては光学性能を改善するように構成された他の多素子レンズなど、異なるタイプのレンズである。いくつかの実施形態では、レンズ102は、平凸レンズである。いくつかの実施形態では、レンズ102は、一般的に低コストであってモバイルシステムを可能にし得る携帯電話レンズである。いくつかの実施形態では、レンズ102は、回折レンズ、ホログラフィック素子、メタサーフェスレンズなどの回折素子である。
【0026】
プログラマブルカプラ配列104(以後、カプラ配列104と呼ぶ)は、スイッチングネットワーク110と、垂直カプラ112(1,1)~112(M,N)(カプラ112と総称する)とを含む。垂直カプラ112は、カプラ行CR-1~CR-M(カプラ行CRと総称する)とカプラ列CC-1~CC-N(カプラ列CCと総称する)とを含む2次元配列として配列される。
【0027】
図示の例では、スイッチングネットワーク110およびカプラ112は、基板114上にモノリシックに集積されるが、いくつかの実施形態では、プログラマブルカプラ配列104の1つまたは複数の要素は、バンプボンディング、マルチチップモジュールパッケージングなど、異なる集積方法を使用して基板114上に配置される。
【0028】
図示の例では、基板114はシリコン基板である。シリコン基板の使用は、カプラ配列104の能力を増大することができる集積回路および/または他の回路の容易な包含を可能にする。いくつかの実施形態では、そのようなオンチップ能力は、信号変調、位相シフト、光検知器、処理、メモリ、信号調整、前置増幅、エネルギースカベンジングおよび/または貯蔵などのための電子機器を含む。いくつかの実施形態では、LiDARシステムのすべての電子機器機能は、基板114上にモノリシックに集積される。
【0029】
コントローラ106は、高精度の多軸位置決めシステム、ボイスコイル、圧電アクチュエータ、MEMSアクチュエータなどの位置決めシステムを介してx次元、y次元およびz次元の各々の中でレンズ102およびカプラ配列104の位置を制御するように構成された従来型コントローラである。コントローラ106は、スイッチングネットワーク110の状態を、それゆえカプラ配列のうちのどの1つまたは複数のカプラが励起されるかを制御するためにも作動する。いくつかの実施形態では、コントローラ106は、少なくとも部分的にカプラ配列104上に集積される。
【0030】
本開示は、ビーム誘導用途に向けられるが、本明細書で開示する教示はまた、誘導可能レシーバ(すなわち、受信する方向が制御可能なレシーバ)だけでなく、ビーム誘導トランスミッタと誘導可能レシーバの両方を含むトランシーバにも適用可能であることに留意されたい。
【0031】
図示の例では、レンズ102およびカプラ配列104は、それらが同心であり、それらの間の間隔s1がレンズ102の焦点距離fに等しくなるように配列される。その結果、カプラ112の平面は、実質的に焦点面FP1に配置され、光軸A1は、カプラ112の配列上に中心が置かれ、それにより、中心点CP1を画定する。いくつかの実施形態では、レンズ102は、レンズおよびカプラ配列が、レンズの焦点距離以外の距離によって分離されるように、および/または光軸A1の中心がカプラ配列のカプラ112の配列上に置かれないように配置される。
【0032】
図示の例では、コントローラ106は、随意に、レンズ102およびカプラ配列104の、x次元およびy次元の各々における横調整を制御するために、スキャン方向SD1に沿ってレンズ102をスキャンするように構成される。そのような横スキャニング能力は、出力ビーム108が、カプラ配列の中の各カプラの固定位置によって指示される角度の間を円滑に動かされ、それにより固定位置システムによって可能な数より多数の解像可能な点を実現することを可能にする。いくつかの実施形態では、コントローラ106は、レンズとカプラ配列との間の垂直間隔s1を制御し、それにより、出力ビーム108が空間の中の異なる点において集束することを可能にするようにさらに構成される。レンズとカプラ配列との間の横調整は、レンズ102のみ、カプラ配列104のみを動かすことによって、またはレンズとカプラ配列の両方を動かすことによって制御され得ることに留意されたい。
【0033】
スイッチングネットワーク110は、行スイッチ116と列スイッチ118とを含み、それらは、プログラマブルカプラ配列全体を通して光信号120の光エネルギーの分配を全体的に制御する。図示の例では、スイッチングネットワーク110は、光信号120の光エネルギーのすべを1つだけのカプラ112に案内するように構成される。スイッチングネットワーク110は、図2に関して以下でより詳細に説明する。
【0034】
カプラ112(i,j)、ここでi=1~Mおよびj=1~N、の各々は、カプラ配列104の中の集積された光学的導波路(すなわち、カプラ導波路)の構造の中に集積され、その出力光信号120’が、そのそれぞれのカプラとレンズ102の中心との間の幾何学的な線と実質的に整列された出力軸A2で特徴づけられるように構成された回折格子を含む。いくつかの実施形態では、カプラ112の少なくとも1つの回折格子が、高効率を達成するためにブレーズド回折格子であることが好ましい。加えて、図示の例では、カプラ112の各々は、光信号120’の各々が、レンズ102の開口部を実質的に満たすような大きい分散角によって特徴づけられる。各カプラ112の設計は、一般的に、カプラ配列104を有するその位置に基づくことに留意されたい。
【0035】
光軸A2とレンズ102の中心との調整によって、光信号120’は、レンズの開口部のより大きい部分を照明し、そのことが、遠視野における出力ビーム108の発散角を軽減し、出力ビーム108がその分解能で誘導され得る分解能を高める。
【0036】
各カプラ112(i,j)は、それが、オン状態とオフ状態との間で切り替えられ得るように構成される。そのオン状態では、カプラ112(i,j)は、その格子構造が光信号120を受信し、その光エネルギーを光信号120’(i,j)として自由空間に散乱させるように、入力ポートIP1と光学的に結合される。そのオフ状態では、カプラ112(i,j)は、入力ポートIP1から光学的に切り離され、その格子構造は、光信号120を受信しない。好ましくは、各カプラ112は、レンズ102の収差を補正するように設計される。カプラ112の格子素子に対する多くの異なる設計は、1次元格子または2次元格子を含めて、本発明の範囲の中に入ることに留意されたい。
【0037】
レンズ102は、カプラ配列104の中の信号112(i,j)の位置に依存する光軸A1からの距離において光信号120’(i、j)を受信する。その結果、異なる垂直カプラによって放射されたすべての光信号がコリメートされ、レンズ102によって異なる出力軸A2(i、j)に沿って誘導される。
【0038】
図1C図1Dは、異なるビーム誘導状態における、本開示による、例示的ビーム誘導システムの概略斜視図を示す。ビーム誘導システム100Aは、プログラマブルカプラ配列104が、3x3配列に配列された9つだけのカプラ112A(すなわち、カプラ112A(1,1)~112A(3,3))を含むビーム誘導システム100の一例である。さらに、図1C図1Dでは、カプラ112A(1,1)~112A(3,3)の各々は、図7に関して以下で説明するように、カプラ配列104の平面に実質的に垂直である伝搬方向に沿って伝搬する比較的より狭い光信号を実現する放射パターンを有する代替カプラ、すなわち具体的には、従来型の垂直格子カプラ、の一例であることに留意されたい。
【0039】
図1Cは、カプラ112(1,1)だけがそのオン状態にあるビーム誘導状態にあるシステム100Aを示す。その結果、カプラ112(1,1)は光信号120を受信し、それを光信号120’(1,1)として自由空間に放出する。レンズ102は、光信号120’(1,1)を受信し、それをコリメートし、出力ビーム108(1,1)として出力軸A2(1,1)に沿って案内する。出力ビーム108(1,1)は、角度θx1およびθy1に向けられる出力軸A2(1,1)に沿って伝搬する。角度θx1およびθy1は、光軸A1に対する、それぞれx-z平面およびy-z平面の中の角度である。角度θx1およびθy1は、式:θx=-tan-1(x/f)およびθy=-tan-1(y/f)によって与えられ、ここで、fはレンズ102の焦点面であり、(x,y)は、中心点CP1に対するx-y平面(すなわち、垂直カプラ配列の焦点面)の中の励起された格子カプラの座標である。
【0040】
図1Dは、カプラ112(3,3)だけがそのオン状態にあるビーム誘導状態にあるシステム100Aを示す。その結果、カプラ112(3,3)は光信号120を受信し、それを光信号120’(3,3)として自由空間に放出する。レンズ102は、光信号120’(3,3)を受信し、それをコリメートし、出力ビーム108(3,3)として出力軸A2(3,3)に沿って案内する。出力ビーム108(3,3)は、角度θx2およびθy2に向けられる出力軸A2(3,3)に沿って伝搬する。
【0041】
図2は、例示的実施形態による、カプラ配列の概略動作図を示す。カプラ配列104は、スイッチングネットワーク110、カプラ112、バス導波路202、および行導波路204-1~204-Mを含む。
【0042】
図2に示すように、カプラ配列104は、MEMS光スイッチ206-1および列スイッチ配列208-1がそれぞれ、それらのオン状態にある一方で、すべての他のMEMS光スイッチ206および列スイッチ配列208が、それらのオフ状態にある、例示的スイッチ構成である(以下で説明する)。その結果、光信号120は、MEMS光スイッチ206-1によってバス導波路202から行導波路204-1に、次いで、列スイッチ配列208-1によって行導波路204-1からカプラ112(1,1)に方向転換される。
【0043】
バス導波路202および行導波路204-1~204-M(行導波路204と総称する)の各々は、単一結晶シリコンのコアを有する単一モードのリッジ導波路である。図示の例では、バス導波路および行導波路は、同一平面上にある。いくつかの実施形態では、バス導波路および行導波路のうちの少なくとも1つは、マルチモードの導波路である。いくつかのそのような実施形態では、マルチモードの導波路は、大きい幅を含み、光学的損失を低減するべくその基本モードが励起され得るように構成される。
【0044】
図示の例は、シリコンベースのリッジ導波路であるバス導波路および行導波路(および以下で説明するシャント導波路および結合導波路)を含むが、いくつかの実施形態では、異なる導波路構造(たとえば、リブ導波路など)および/または異なる導波路材料のシステムが、少なくとも1つの導波路のために使用される。たとえば、窒化シリコンコア導波路などの誘電体ベースの導波路の使用では、より低い光学的損失および/または増大された光出力処理能力(ピークまたは平均)を有するシステムを実現することができ、それは、非線形効果などを軽減することができる。
【0045】
スイッチングネットワーク110は、行スイッチ116および列スイッチ118を含む。
【0046】
行スイッチ116は、MEMS光スイッチ206-1~206-M(MEMS光スイッチ206と総称する)を含む1xM個のスイッチであり、それは、バス導波路202と行導波路204-1~204-Mそれぞれとの間の光結合を制御するための、別々に制御可能な1x2個の集積された光学ベースのMEMSスイッチである。
【0047】
図3Aは、MEMS光スイッチ206の概略上面図を示す。
【0048】
図3B図3Cは、それぞれ、その「オフ」状態およびオン状態にある代表的MEMS光スイッチ206の概略斜視図を示す。
【0049】
MEMS光スイッチ206は、バス導波路202の一部、行導波路204の一部、シャント導波路302、およびMEMSアクチュエータ304(図3B図3Cに示さず)を含む。
【0050】
図示の例では、バス導波路202および行導波路204の一部は、それらの間で導波路が交差しないように配列される。その結果、非常に低い光学的挿入損失だけでなく、実質的にゼロの導波路間の光学的クロストークも達成することができる。しかしながら、いくつかの実施形態では、2つの導波路の部分は、好ましくは、それらが直交して、MEMS光スイッチ206がそのオフ状態にあるときにバス導波路202の行導波路204への漏洩を軽減するように、交差点において交差する。いくつかの実施形態では、バス導波路202は、マルチモード干渉(MMI)領域と、MMI領域の中に至りその外に出るテーパとを含む。いくつかの実施形態では、バス導波路202および行導波路204は、それらの共通基板の上の異なる平面の中に形成される。
【0051】
シャント導波路302は、端部306-1と306-2との間に延びる導波路部である。シャント導波路302は、バス導波路202および行導波路204に類似するが、シャント導波路302は、バス導波路および行導波路に対して可動であるように構成される。
【0052】
端部306-1および306-2(端部306と総称する)は、導波路部308-1および308-2それぞれの真上に整列され、ここで導波路部308-1および308-2(導波路部308と総称する)は、バス導波路202および行導波路204それぞれの一部である。
【0053】
図3A図3Cに明確には示されないが、一般的に、シャント導波路302は、MEMS光スイッチ206がオン状態にあるときに端部306と導波路部308との間に正確な垂直間隔を確立するためにその下面から延びる突出部も含む。
【0054】
MEMSアクチュエータ304は、導波路部308-1および308-2に対するシャント導波路302および端部306の垂直位置を制御するために作動する静電MEMS垂直アクチュエータである。MEMSアクチュエータ304は、図4A図4Cに関して以下でより詳細に説明する。
【0055】
MEMS光スイッチ206は、図示の実施形態では静電MEMS垂直アクチュエータを含むが、当業者には、本明細書を読めば、端部306と導波路部308との間の間隔を制御するために好適な任意のアクチュエータを、いかにして規定し、作製し、かつ使用するかが明らかとなろう。本発明における使用に好適なアクチュエータには、限定はしないが、垂直アクチュエータ、横アクチュエータ、および垂直と横の両方に作動するアクチュエータが含まれる。さらに、本発明によるアクチュエータには、限定はしないが、電熱、熱、磁気、電磁、静電コームドライブ、磁歪、圧電、流体、空気圧のアクチュエータなどを含む。
【0056】
MEMS光スイッチ206がその切り替えられていない(すなわち「オフ」)状態にあるとき、シャント導波路302は、端部306-1および306-2が導波路部308-1と308-2から距離d1だけ離隔される第1の位置に保持される。距離d1は、光エネルギーが、端部306とそれらのそれぞれの導波路部との間で実質的に転移しないことを確実にするのに十分な大きさを有する。その結果、光信号120はMEMS光スイッチ206をバイパスし、実質的に摂動することなくバス導波路202を通って伝搬することを継続する。
【0057】
MEMS光スイッチ206がその切り替えられた(すなわち「オン」)状態にあるとき、シャント導波路302は、端部306が導波路部308から距離d2だけ離隔され、それにより指向性カプラ310-1および310-2を画定する、第2の位置に移される。距離d2は、シャント導波路の底の突出部の高さによって決定され、光信号120の光エネルギーが、指向性カプラ310-1において導波路部308-1から端部306-1に、および指向性カプラ310-2において端部306-2から導波路部308-2に実質的に完全に転移することを可能にする大きさを有する。その結果、光信号120は、バス導波路202から行導波路204に実質的に完全に切り替えられる。
【0058】
MEMS光スイッチ206は、集積された光学ベースのMEMS光スイッチの一例にすぎないことに留意されたい。本開示の教示による使用に好適なMEMSスイッチの追加の例は、T. J. Seokら、「Large-scale broadband digital silicon photonic switches with vertical adiabatic couplers」、Optica、vol. 3、no. 1、64ページ、2016年1月、ならびに米国特許出願第20160327751号、および国際出願第WO2018/049345号によって記載されており、それらの各々は、参照により本明細書に組み込まれる。これらの出版物に記載されるそのようなMEMSスイッチは、従来技術のビーム誘導システムに対して、本開示によるプログラマブルカプラ配列に対する多くの利点を提示する。特に、そのようなスイッチは、従来の電気光学または熱光学のスイッチよりかなり低い光学的損失を有し、それらの光学的クロストーク(-60dB未満)および電力消費(10マイクロワットまで)は、従来のスイッチより数桁低く、それらはデジタルモードで動作することができる。これらの利点は、従来技術で可能なものより比較的高いスループット(すなわち、より低い光学的挿入損失)および比較的高い分解能(すなわち、より高密度の格子カプラ)ならびに単純なデジタル制御を有するビーム誘導デバイスを可能にする。
【0059】
ここで図2に戻ると、列スイッチ118は、列スイッチ配列208-1~208-N(列スイッチ配列208と総称する)を含む1xN個のスイッチである。
【0060】
図示の例では、各列スイッチ配列208は、M個の実質的に同一のMEMS光スイッチ210を含み、それらの各々はMEMS光スイッチ206に類似するが、各MEMS光スイッチ210は、それぞれのカプラ112と行導波路204との間の光結合を制御するように構成される。各MEMS光スイッチ210およびその関連するカプラ112は、MEMS制御垂直カプラ212を全体的に画定する。
【0061】
図示の例では、各列スイッチ配列208のMEMS光スイッチ210のすべては、それらが同じ制御信号ですべて制御されるように「連動」される(ganged together)。その結果、各列スイッチ配列208は、カプラ配列104のそのそれぞれの列におけるすべてのM個のカプラ112とそれらのそれぞれの行導波路との間の光結合を同時に制御する。そのようなスイッチ配列構成は、多数のカプラ(たとえば、MおよびNの各々が1000以上であるMxN配列)を有し、各カプラが個々にアドレス指定される場合にはMxN個の制御信号が必要である、ビーム誘導システムに対して特に有利である。大規模システムに対して、電気入力/出力(I/O)の数は、標準的な電気パッケージング限界をすぐに超える。しかしながら、列スイッチ配列208などのスイッチ配列の使用では、制御信号の数をMxNからM+Nに低減する「行-列」アドレス指定方式を可能にすることによって、必要な電気的制御信号の数を顕著に低減することができる。
【0062】
各MEMS制御垂直カプラ212のオン状態では、そのMEMS光スイッチ210は、そのそれぞれの行導波路204をそのそれぞれのカプラ112と光学的に結合する。その結果、光信号120が、その行導波路を通って伝搬しているとき、その光エネルギーは、そのカプラ112に方向転換される。各MEMS制御垂直カプラ212のオフ状態では、そのMEMS光スイッチ210は、そのそれぞれの行導波路とカプラとを光学的に結合せず、それゆえ、光信号120は、行導波路の中に留まって、そのカプラをバイパスする。
【0063】
図4Aは、例示的実施形態による、例示的MEMS制御垂直カプラの概略上面図を示す。MEMS制御垂直カプラ212は、MEMS光スイッチ210とカプラ112とを含む。
【0064】
図4B図4Cは、それぞれ、その「オフ」状態およびオン状態にあるMEMS制御垂直カプラ212の概略断面図を示す。図4B図4Cに示す断面図は、図4Aに示す線a-aを通して取られる。
【0065】
MEMS光スイッチ210は、MEMSアクチュエータ404と動作可能に結合されたカプラ導波路402の一部を含む。
【0066】
カプラ導波路402は、シャント導波路302に類似し、可動端部406-1から固定端部406-2に光を搬送するように構成され、固定端部406-2において、垂直結合要素408が配置され、それによりカプラ112が画定される。図示の例では、垂直結合要素408は、光軸A1が中心点CP1と整列されているとき、その光エネルギーをレンズ102の中心の方に案内するように構成された回折格子である。いくつかの実施形態では、垂直結合要素408のうちの少なくとも1つは、所望の出力光信号120’を供給するのに好適な異なる光学素子を含む。垂直結合要素408における使用に好適な光学素子は、限定はしないが、プリズム、ホログラム、2次元格子構造、回折レンズ、回折格子素子、屈折レンズ、角度エッチング導波路ファセットミラー、角度エッチング導波路、角度付きミラーなどを含む。
【0067】
可動端部406-1において、カプラ導波路402は、MEMSアクチュエータ404に取り付けられる。
【0068】
固定端部406-2において、カプラ導波路402は、下部の基板114から上に突き出る硬い要素であるアンカー410のペアに物理的に取り付けられる。カプラ導波路は、この領域の中の硬い構造要素に添付されるので、行導波路204の上のその高さは固定される。
【0069】
MEMSアクチュエータ404は、上記で説明したMEMSアクチュエータ304に類似し、アンカー410の別のペアに接続される支柱412、電極414およびテザー416を含む。
【0070】
支柱412は、可動端部406-1を電極414の各々に接続する実質的に硬い要素である。
【0071】
電極414は、電極の2つのペアの間に印加された電圧が、電極、支柱および可動端部を基板の方に引っ張る静電力を生じ、それにより、カプラ導波路402と行導波路204との間の間隔が低減されるように、基板114(図示せず)上に配置された電極のマッチングペアの上に配置される。
【0072】
テザー416は、z方向に柔軟であるがx方向およびy方向に沿って実質的に硬い「ばねのような」要素である。テザー416の柔軟性は、行導波路204に対する可動端部406-1の運動を可能にする。
【0073】
MEMSアクチュエータ404が、その非作動状態にあるとき、可動端部406-1は、行導波路204から距離d1だけ離隔される。その結果、2つの導波路は、上記で説明したように、光学的に結合されず、カプラ112はそのオフ状態にある。
【0074】
MEMSアクチュエータ404がその作動状態にあるとき、可動端部406-1は、それが、突出部418の高さによって決定される距離d2だけ行導波路204から離隔されることになるように、下方に引き下げる。その結果、2つの導波路は、実質的にすべての光信号120がカプラ導波路402にエバネッセント結合して、格子素子408に伝搬することを可能にする指向性カプラ420を全体的に画定する。次いで、光信号の光エネルギーは、格子素子408によって自由空間に放出され、カプラ112はそのオン状態にある。
【0075】
MEMS制御垂直カプラ212は例にすぎず、MEMS制御垂直カプラ212に対する無数の代替設計は、本開示の範囲内に入ることに留意されたい。
【0076】
たとえば、いくつかの実施形態では、カプラ導波路は、MEMS制御垂直カプラ212の中に含まれず、格子素子は、MEMSアクチュエータ404自体の上に配置される。
【0077】
図4Dは、本開示による、MEMS制御垂直カプラの代替実施形態の概略上面図を示す。MEMS制御垂直カプラ212Aは、MEMSアクチュエータ404、格子素子408、プラットフォーム422、およびカプラ導波路424を含む。
【0078】
プラットフォーム422は、MEMSアクチュエータの中心に形成された実質的に硬い構造要素である。プラットフォーム422は、カプラ導波路402の可動部分に類似するカプラ導波路424を含む。
【0079】
図4E図4Fは、それぞれ、そのオフ状態およびオン状態にあるMEMS制御垂直カプラ212Aの概略図を示す。図4E図4Fに示す断面図は、図4Dに示す線b-bを通して取られる。
【0080】
MEMSアクチュエータ404が、その非作動状態にあるとき、可動端部406-1は、行導波路204から距離d1だけ離隔される。その結果、2つの導波路は光学的に結合されず、カプラ112はオフ状態にある。
【0081】
MEMSアクチュエータ404がその作動状態にあるとき、行導波路204およびカプラ導波路424は指向性カプラ426を全体的に画定し、指向性カプラ426は、光エネルギーを行導波路から直接格子素子408に結合し、格子素子408は、次いで、エネルギーを自由空間に放射する。
【0082】
いくつかの実施形態では、MEMS制御垂直カプラ212は、同じ平面内にある行導波路と結合導波路とを含み、スイッチングは、上記で説明したように、可動シャント導波路を使用して実現される。
【0083】
図4Gは、本開示による、別の代替のMEMS制御垂直カプラの概略上面図を示す。MEMS制御垂直カプラ212Bは、MEMSアクチュエータ304、行導波路204、カプラ導波路424、シャント導波路302、およびカプラ112を含む。MEMS制御垂直カプラ212Bは、図3A図3Cに関して上記で説明したMEMS光スイッチ206に類似する。
【0084】
MEMSアクチュエータ304がその非作動状態にあるとき、シャント導波路は、行導波路204およびカプラ導波路424の十分上に保持される。その結果、2つの導波路は光学的に結合されず、カプラ112は励起されない。
【0085】
MEMSアクチュエータ304がその作動状態にあるとき、シャント導波路302は、行導波路204およびカプラ導波路424の各々と光学的に結合され、それにより、指向性カプラをシャント導波路の各端部において画定する。その結果、光エネルギーは、行導波路からシャント導波路に、次いで、シャント導波路から結合導波路に結合する。光エネルギーは、結合導波路によってカプラ112に搬送され、それにより、カプラ112が光エネルギーを自由空間に放射するようにカプラ112を励起する。
【0086】
図5は、本開示による、代替プログラマブルカプラ配列を示す。カプラ配列500は、カプラ配列104に類似するが、カプラ配列500は、複数の光信号を複数のカプラ112に案内し、それにより、複数の出力ビームを同時に形成して誘導することができるビーム誘導システムを可能にするように構成される。
【0087】
カプラ配列500は、スイッチングネットワーク502、垂直カプラ112、バス導波路202、および行導波路204-1~204-Mを含む。
【0088】
スイッチングネットワーク502は、行スイッチ504および列スイッチ506-1~506-Mを含む。
【0089】
行スイッチ504は、入力信号120-1~120-Lのいずれかを行導波路204-1~204-Mのうちの異なる1つに案内するように作動するLxM個のスイッチである。
【0090】
列スイッチ506-1~506-Mの各々は、N個のスイッチ510を含む1xN個の光スイッチである。列スイッチ506-1は、行スイッチ504から受信する光信号をカプラ112(1,1)~112(1,N)のうちの1つに案内し、列スイッチ506-2は、光信号120-2をカプラ112(2,1)~112(2,N)のうちの1つに案内し、以下同様である。
【0091】
その結果、カプラ配列500を含むビーム誘導システムは、複数の個別に誘導可能なコリメートされた出力ビーム110-1~110-Lを供給することができる。
【0092】
上記で説明したように、必要な電気信号の数は、個別に制御可能なスイッチを有するビームシステムに対して問題となることがある。たとえば、システム500では、必要な電気信号の数は、NxM+LxMである。しかしながら、いくつかの実施形態では、集積された電気アドレス指定回路が、電気パッケージング問題を軽減するために含まれる。そのような集積は、モノリシック集積、ハイブリッド集積、フリップチップボンディングなど、広く知られている技法のいずれかを介して達成され得る。
【0093】
システム500のアーキテクチャは、行ごとに1つだけのカプラ112が、行スイッチ504から光信号を受信することができるという意味でブロッキングであることに留意されたい。
【0094】
図6は、本開示による、別の代替プログラマブルカプラ配列を示す。プログラマブルカプラ配列600は、複数の個別に誘導可能な出力ビームを供給するように構成されたビーム誘導システムにおいて使用するのに好適な非ブロッキングカプラ配列である。プログラマブルカプラ配列600は、プログラマブルカプラ配列500に類似するが、スイッチングネットワーク602は、LxM個の光スイッチである1つの行スイッチと、PxN個の光スイッチであるM個の列スイッチとを含む。
【0095】
カプラ配列600は、スイッチングネットワーク602、垂直カプラ112、バス導波路202、および行導波路204-1~204-MxPを含む。
【0096】
スイッチングネットワーク602は、行スイッチ604および列スイッチ606-1~606-Mを含む。
【0097】
行スイッチ604は、入力信号120-1~120-Lのいずれかをバス導波路204-1~204-MxPのうちの異なる1つに案内するために作動するLx(MxP)個のスイッチである。
【0098】
列スイッチ506-1~506-Mの各々は、P個の行導波路204の各々の上で受信された光信号をN個のカプラ112のいずれかに案内することができるPxN個の光スイッチである。列スイッチ606-1は、行導波路204(1,1)~204(1,P)の各々の上で受信する光信号をカプラ112(1,1)~112(1,N)のうちのいずれか1つに案内し、列スイッチ606-2は、行導波路204(2,1)~204(2,P)の各々の上で受信する光信号をカプラ112(2,1)~112(2,N)のうちの1つに案内し、以下同様である。
【0099】
言い換えれば、カプラ112の各行は、P個の導波路およびPxN個のスイッチ606を通してLx(MxP)個のスイッチ604に接続される。その結果、P個の入力信号のいずれも、同じ行の中の格子カプラに同時にアクセスすることができる。
【0100】
図7は、本開示による、代替ビーム誘導システムの概略側面図を示す。ビーム誘導システム700は、ビーム誘導システム100に類似するが、ビーム誘導システム700は、従来の垂直格子カプラであるカプラを含むカプラ配列702を含む。
【0101】
カプラ配列702は、スイッチングネットワーク110と、垂直カプラ704(1,1)~704(M,N)(カプラ704と総称する)とを含む。
【0102】
カプラ704は、カプラ112に類似するが、図示の例では、カプラ704は、焦点面FP1に実質的に垂直である伝搬方向に沿って伝搬する比較的小発散角の(small-divergence)光信号としてそれらの自由空間放射(すなわち、光信号706)を直接供給するように構成された、従来の垂直格子カプラである。その結果、光信号706は、レンズ102の開口部の比較的小さい部分とだけ相互作用する。
【0103】
レンズ102は光信号706を受信し、それを出力ビーム708としてコリメートし、それが光軸A3に沿って伝搬するように出力ビームを方向転換させる。図1A図1Dに関して上記で説明したように、光軸A1に対する出力軸A3の角度は、カプラ配列702の中のカプラ704(i、j)の位置に依存する。
【0104】
本開示は、例示的実施形態の一例だけを教示しており、本発明の多くの変形形態は、この開示を読んだ後の当業者によって容易に考案され得、本発明の範囲は、以下の特許請求の範囲によって決定されるべきであることを理解されたい。
【符号の説明】
【0105】
100 ビーム誘導システム
100A ビーム誘導システム
102 レンズ
104 プログラマブル垂直カプラ配列
106 コントローラ
108 出力ビーム
108(1,1) 出力ビーム
108(3,3) 出力ビーム
110 スイッチングネットワーク
112 カプラ
112(1,1) カプラ
112(1,2) カプラ
112(1,N) カプラ
112(2,1) カプラ
112(2,2) カプラ
112(2,N) カプラ
112(M,1) カプラ
112(M,2) カプラ
112(M,N) カプラ
112(i,j) カプラ
112A カプラ
112A(1,1) カプラ
112A(2,2) カプラ
112A(3,3) カプラ
114 基板
116 行スイッチ
118 列スイッチ
120 光信号
120’ 光信号
120-1 光信号
120-L 光信号
120’(1,1) 光信号
120’(3,3) 光信号
120’(i,j) 光信号
202 バス導波路
202-1 バス導波路
202-L バス導波路
204 行導波路
204-1 行導波路
204-2 行導波路
204-M 行導波路
204(1,1) 行導波路
204(1,P) 行導波路
204(M,1) 行導波路
204(M,P) 行導波路
206 MEMS光スイッチ
206-1 MEMS光スイッチ
206-2 MEMS光スイッチ
206-M MEMS光スイッチ
208 列スイッチ配列
208-1 列スイッチ配列
208-2 列スイッチ配列
208-N 列スイッチ配列
210 MEMS光スイッチ
212 MEMS制御垂直カプラ
212A MEMS制御垂直カプラ
212B MEMS制御垂直カプラ
214 スイッチ
302 シャント導波路
304 MEMSアクチュエータ
306 端部
306-1 端部
306-2 端部
308 導波路部
308-1 導波路部
308-2 導波路部
310-1 第1の指向性カプラ
310-2 第2の指向性カプラ
402 カプラ導波路
404 MEMSアクチュエータ
406-1 可動端部
406-2 固定端部
408 垂直結合要素、格子素子
410 アンカー
412 支柱
414 電極
416 テザー
418 突出部
420 指向性カプラ
422 プラットフォーム
424 カプラ導波路
426 指向性カプラ
500 カプラ配列
502 スイッチングネットワーク
504 行スイッチ
506 列スイッチ
506-1 列スイッチ
506-2 列スイッチ
506-M 列スイッチ
600 プログラマブルカプラ配列
604 行スイッチ、スイッチングネットワーク
606 列スイッチ
606-1 列スイッチ
606-2 列スイッチ
606-M 列スイッチ
700 ビーム誘導システム
702 カプラ配列
704 垂直カプラ
704(1,1) 垂直カプラ
704(M,N) 垂直カプラ
706 光信号
708 出力ビーム
図1A
図1B
図1C
図1D
図2
図3A
図3B
図3C
図4A
図4B
図4C
図4D
図4E
図4F
図4G
図5
図6
図7