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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-19
(45)【発行日】2023-09-27
(54)【発明の名称】ヒト化抗VEGFモノクローナル抗体
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/13 20060101AFI20230920BHJP
   A61K 31/7088 20060101ALI20230920BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20230920BHJP
   A61K 47/61 20170101ALI20230920BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20230920BHJP
   A61P 1/00 20060101ALI20230920BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20230920BHJP
   C07K 16/22 20060101ALI20230920BHJP
   C07K 16/46 20060101ALI20230920BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20230920BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20230920BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20230920BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20230920BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20230920BHJP
   C12P 21/08 20060101ALI20230920BHJP
【FI】
C12N15/13
A61K31/7088
A61K39/395 C
A61K39/395 D
A61K39/395 E
A61K39/395 L
A61K39/395 N
A61K39/395 T
A61K39/395 Y
A61K47/61
A61K48/00
A61P1/00
A61P35/00
C07K16/22 ZNA
C07K16/46
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12N15/63 Z
C12P21/08
【請求項の数】 32
(21)【出願番号】P 2022503865
(86)(22)【出願日】2020-07-17
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-29
(86)【国際出願番号】 CN2020102622
(87)【国際公開番号】W WO2021013080
(87)【国際公開日】2021-01-28
【審査請求日】2022-03-18
(31)【優先権主張番号】201910657497.7
(32)【優先日】2019-07-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】521271439
【氏名又は名称】神州細胞工程有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】▲謝▼ 良志
(72)【発明者】
【氏名】▲孫▼ 春▲ユン▼
(72)【発明者】
【氏名】汪 瑞
(72)【発明者】
【氏名】▲張▼ ▲瀟▼
【審査官】西澤 龍彦
(56)【参考文献】
【文献】特表2022-537072(JP,A)
【文献】特表2013-502445(JP,A)
【文献】国際公開第2017/119435(WO,A1)
【文献】特表2007-526756(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第105820245(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N
C07K
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
UniProt/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号30で示されるアミノ酸配列を有する重鎖CDR1領域、配列番号31で示されるアミノ酸配列を有する重鎖CDR2領域、及び配列番号32で示されるアミノ酸配列を有する重鎖CDR3領域を有する重鎖可変領域、並びに
配列番号27で示されるアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1領域、配列番号28で示されるアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2領域、及び配列番号29で示されるアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3領域を有する軽鎖可変領域
を含む、単離された抗VEGF抗体又はその抗原結合断片。
【請求項2】
配列番号39で示されるアミノ酸配列又は配列番号39に対して少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有する重鎖可変領域、及び
配列番号40で示されるアミノ酸配列又は配列番号40に対して少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域
を含む、請求項1に記載の抗VEGF抗体又はその抗原結合断片。
【請求項3】
軽鎖定常領域及び重鎖定常領域を更に含む、請求項1又は2に記載の抗VEGF抗体又はその抗原結合断片。
【請求項4】
前記軽鎖定常領域が、配列番号42で示されるアミノ酸配列又は配列番号42に対して少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有する軽鎖定常領域であり、且つ/或いは
前記重鎖定常領域が、配列番号41で示されるアミノ酸配列又は配列番号41に対して少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有するIgG1重鎖定常領域である、
請求項3に記載の抗VEGF抗体又はその抗原結合断片。
【請求項5】
ヒト化抗体又はキメラ抗体である、請求項1から4のいずれか一項に記載の抗VEGF抗体又はその抗原結合断片。
【請求項6】
モノクローナル抗体である、請求項1から5のいずれか一項に記載の抗VEGF抗体又はその抗原結合断片。
【請求項7】
IgG抗体である、請求項1から6のいずれか一項に記載の抗VEGF抗体又はその抗原結合断片。
【請求項8】
IgG1抗体である、請求項7に記載の抗VEGF抗体又はその抗原結合断片。
【請求項9】
ヒトVEGF165タンパク質の細胞外領域に対する前記抗VEGF抗体又はその抗原結合断片の結合親和性KDが、1~100pMであり、前記細胞外領域が、配列番号1に示されるアミノ酸配列からなる、請求項1から8のいずれか一項に記載の抗VEGF抗体又はその抗原結合断片。
【請求項10】
ヒトVEGF165タンパク質の前記細胞外領域に対する前記抗VEGF抗体又はその抗原結合断片の結合親和性KDが、5~50pMである、請求項9に記載の抗VEGF抗体又はその抗原結合断片。
【請求項11】
ヒトVEGF165タンパク質の前記細胞外領域に対する前記抗VEGF抗体又はその抗原結合断片の結合親和性KDが、19.5pMである、請求項9に記載の抗VEGF抗体又はその抗原結合断片。
【請求項12】
前記抗原結合断片が、Fv、Fab'、Fab'-SH、F(ab')2、Fd断片、Fd'断片、単鎖抗体分子、又は単一ドメイン抗体である、請求項1から11のいずれか一項に記載の抗VEGF抗体又はその抗原結合断片。
【請求項13】
前記単鎖抗体分子が、scFv、ジ-scFv、トリ-scFv、ダイアボディ、又はscFabである、請求項12に記載の抗VEGF抗体又はその抗原結合断片。
【請求項14】
請求項1から13のいずれか一項に記載の抗VEGF抗体又はその抗原結合断片及びさらなる治療剤を含む、抗体-薬物コンジュゲート。
【請求項15】
前記抗VEGF抗体又はその抗原結合断片が、リンカーを介してさらなる治療剤と結合している、請求項14に記載の抗体-薬物コンジュゲート。
【請求項16】
配列番号16で示されるアミノ酸配列を有する重鎖CDR1領域、及び配列番号17で示されるアミノ酸配列を有する重鎖CDR2領域、及び配列番号18で示されるアミノ酸配列を有する重鎖CDR3領域を有する重鎖可変領域、並びに、
配列番号13で示されるアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1領域、配列番号14で示されるアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2領域、及び配列番号15で示されるアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3領域を有する軽鎖可変領域
を含む、単離された抗VEGF抗体又はその抗原結合断片。
【請求項17】
配列番号25で示されるアミノ酸配列又は配列番号25に対して少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有する重鎖可変領域、及び
配列番号26で示されるアミノ酸配列又は配列番号26に対して少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域
を含む、請求項16に記載の抗VEGF抗体又はその抗原結合断片。
【請求項18】
ヒト化抗体又はキメラ抗体である、請求項16又は17に記載の抗VEGF抗体又はその抗原結合断片。
【請求項19】
モノクローナル抗体である、請求項16から18のいずれか一項に記載の抗VEGF抗体又はその抗原結合断片。
【請求項20】
前記抗原結合断片が、Fv、Fab、Fab'、Fab'-SH、F(ab')2、Fd断片、Fd'断片、単鎖抗体分子、又は単一ドメイン抗体である、請求項16から19のいずれか一項に記載の抗VEGF抗体又はその抗原結合断片。
【請求項21】
前記単鎖抗体分子が、scFv、ジ-scFv、トリ-scFv、ダイアボディ、又はscFabである、請求項20に記載の抗VEGF抗体又はその抗原結合断片。
【請求項22】
請求項1から13、16から21のいずれか一項に記載の抗VEGF抗体又はその抗原結合断片をコードする核酸。
【請求項23】
配列番号7で示されるヌクレオチド配列及び/若しくは配列番号8で示されるヌクレオチド配列、又は
配列番号23で示されるヌクレオチド配列及び/若しくは配列番号24で示されるヌクレオチド配列、又は
配列番号47で示されるヌクレオチド配列及び/若しくは配列番号48で示されるヌクレオチド配列
を含む、請求項22に記載の核酸。
【請求項24】
請求項22又は23に記載の核酸を含む発現ベクター。
【請求項25】
請求項22若しくは23に記載の核酸又は請求項24に記載の発現ベクターを含む宿主細胞。
【請求項26】
請求項25に記載の宿主細胞を抗体発現に適した条件下で培養する工程、及び発現した抗体を培養培地から採取する工程を含む、請求項1から13、16から21のいずれか一項に記載の抗VEGF抗体又はその抗原結合断片を産生するための方法。
【請求項27】
請求項1から13、16から21のいずれか一項に記載の抗VEGF抗体若しくはその抗原結合断片、又は請求項14若しくは15に記載の抗体-薬物コンジュゲート、又は請求項22若しくは23に記載の核酸、又は請求項24に記載の発現ベクター、及び薬学的に許容可能な担体を含む、医薬組成物。
【請求項28】
結腸直腸がんの治療において使用するための、請求項1から13、16から21のいずれか一項に記載の抗VEGF抗体若しくはその抗原結合断片、又は請求項14若しくは15に記載の抗体-薬物コンジュゲート、又は請求項27に記載の医薬組成物。
【請求項29】
結腸直腸がんを治療するための医薬の調製における、請求項1から13、16から21のいずれか一項に記載の抗VEGF抗体若しくはその抗原結合断片、又は請求項14若しくは15に記載の抗体-薬物コンジュゲート、又は請求項27に記載の医薬組成物の使用。
【請求項30】
請求項1から13、16から21のいずれか一項に記載の抗VEGF抗体若しくはその抗原結合断片、又は請求項14若しくは15に記載の抗体-薬物コンジュゲート、又は請求項27に記載の医薬組成物、及び1つ又は複数のさらなる治療剤を含む、薬学的組み合わせ物。
【請求項31】
請求項1から13、16から21のいずれか一項に記載の抗VEGF抗体若しくは抗原結合断片、又は請求項14若しくは15に記載の抗体-薬物コンジュゲート、又は請求項27に記載の医薬組成物、又は請求項30に記載の薬学的組み合わせ物を含む、キット。
【請求項32】
投与のためのデバイスを更に含む、請求項31に記載のキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、腫瘍免疫療法の分野に関するものであり、具体的には、VEGFに結合するヒト化モノクローナル抗体に関する。
【背景技術】
【0002】
血管系の発生は、多くの生理学的及び病理学的プロセスの基礎である。血管内皮増殖因子(VEGF)は、内皮細胞の有糸分裂及び抗アポトーシス促進し、血管の浸透性を増大させ、且つ細胞の移動を促進する、重要な血管新生促進活性を有する増殖因子の群である。ヒトVEGF遺伝子は、染色体6p21.3上に位置し、ジスルフィド結合によって連結して二量体を形成するVEGFをコードするVEGF/PDGFスーパー遺伝子ファミリーに属する。ヒトにおいて、VEGFファミリーには、機能が異なる複数のメンバー:VEGFA(いくつかの異なるスプライシング変異体を伴うVEGF)、VEGFB、VEGFC、VEGFD、VEGFE、VEGFF、及び胎盤増殖因子(PIGF)が含まれる。最近は、内分泌腺由来血管内皮増殖因子(EG-VEGF)もまた、このファミリーに含まれている(Samson Mら、J Clin Endocrinol Metab. 2004; 89(8):4078~4088)。VEGFは、ヒトの組織及び器官に広く分布しており、とりわけ、眼の網膜色素上皮細胞、血管内皮細胞、神経細胞等に発現している(Goel H Lら、Nat Rev Cancer. 2013; 13(12): 871)。3つのタイプのVEGF受容体:VEGFR1、VEGFR2、及びVEGFR3が存在する。受容体細胞外ドメインへのVEGFの結合は、受容体の二量化を引き起こし、細胞内ドメインにおけるチロシン残基の自己リン酸化を促進し、これによって、下流シグナルが活性化され、これが細胞の増殖、移動、抗アポトーシス、及び血管の浸透性の増大を促進する。VEGFR1及びVEGFR2は血管内皮細胞において主に発現し、一方、VEGFR3はリンパ管内皮細胞において主に発現する。
【0003】
VEGFは、正常な及び病理学的な血管新生の調節において重要な役割を有することが確認されている(Melincovici C Sら、Rom J Morphol Embryol. 2018; 59(2):455~467)。VEGFは、悪性腹水を生じさせ得る様々な腫瘍において過剰発現しており、腫瘍におけるVEGFの発現は、腫瘍細胞の移動能力と相関している。胃腸がん、卵巣がん、乳がん、及び肺がん等の生存率が低い充実性腫瘍を有する患者におけるVEGFの濃度は、疾患の病期と正の相関をしている(Sebastian、Kら、Oncologist. 2009; 14(12):1242~1251)。腫瘍微小環境における低酸素条件は、核内への腫瘍細胞転写因子HIF-1aの侵入を誘導し、連続的に、HIF-1aはVEGFAのHREエレメントに結合し、これによって、VEGFAの転写レベルが上方調節され、腫瘍細胞による腫瘍微小環境への大量のVEGFの分泌が促進される。一方、高濃度のVEGFは血管内皮細胞のVEGFRに作用し、多数の新血管形成を誘導し、血液供給を増強させ、また腫瘍細胞の増殖のための十分な栄養を提供する。成長の早い腫瘍細胞からは、より多くのVEGFが分泌され、このVEGFは血管内皮細胞の増殖及び移動を更に促進し、腫瘍の転移を誘導する。更に、VEGFはまた、腫瘍組織内の単球を刺激してM2サプレッサーマクロファージに変換させ、これは、よりネガティブな免疫因子を産生し、また同時にTreg細胞を上方調節し、これによって、T細胞の殺傷能力が相乗的に低減する。
【0004】
VEGFと内皮細胞表面受容体VEGFR2及びVEGFR1との相互作用を阻害することによって、VEGFモノクローナル抗体薬は、下流のシグナル伝達経路を遮断し、内皮細胞の増殖及び新血管形成を阻害し、腫瘍組織への血液供給を奪い、そして腫瘍の内部栄養供給を制御し、こうして、腫瘍の増殖を制限し、最終的には抗がん有効性を達成する。アバスチン(ベバシズマブ、2009に承認された)は、腫瘍血管新生を阻害することが承認された最初の抗体薬であり、乳がん、子宮頸がん、結腸直腸がん、膠芽腫、グリオーマ、非小細胞肺がん、卵巣がん、及び腎細胞癌の治療に主に使用されている。アバスチンは様々ながんを治療するために使用されているが、より優れたVEGF阻害及びより高い有効性を有する、より強力な抗体が、当技術分野において依然として必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】米国特許第5,500,362号
【文献】米国特許第5,821,337号
【文献】米国特許第6,737,056号
【文献】米国特許第6,194,551号
【文献】WO1999/51642
【文献】米国特許第4,816,397号
【文献】米国特許第5,168,062号
【文献】米国特許第4,510,245号
【文献】米国特許第4,968,615号
【文献】米国特許第4,399,216号
【文献】米国特許第4,634,665号
【文献】米国特許第5,179,017号
【非特許文献】
【0006】
【文献】Samson Mら、J Clin Endocrinol Metab. 2004; 89(8):4078~4088
【文献】Goel H Lら、Nat Rev Cancer. 2013; 13(12): 871
【文献】Melincovici C Sら、Rom J Morphol Embryol. 2018; 59(2):455~467
【文献】Sebastian、Kら、Oncologist. 2009; 14(12):1242~1251
【文献】Kabatら、Sequences of Proteins of Immunological Interest、第5版、Public Health Service、National Institutes of Health、Bethesda、MD. 1991
【文献】Chothia及びLesk、J MolBiol 196:901~917(1987)
【文献】Kabatら: Sequences of Proteins of Immunological Interest、第5版、US Department of Health and Human Services、PHS、NIH、NIH Publication 第91~3242、1991
【文献】Altschulら、1990、J. Mol. Biol. 215: 403~410
【文献】Guyerら、Journal of Immunology 117: 587 (1976)
【文献】Kimら、Journal of Immunology 24: 249 (1994)
【文献】Gazzano-Santoroら、J. Immunol Methods 202: 163 (1996)
【文献】Sambrookら、Molecular Cloning: A Laboratory Manual、第2版、Cold Spring Harbor Press、Cold Spring Harbor、N. Y.、1989
【文献】Ausubel, F. M.、Brent, R.、Kingston, R. E.、Moore, D. D.、Sedman, J. G.、Smith, J. A.、及びStruhl, K.編(1995). Current Protocols in Molecular Biology. New York: John Wiley and Sons
【文献】Ausubel, F. M.ら(編) Current Protocols in Molecular Biology, Greene Publishing Associates, (1989)
【文献】Urlaub及びChasin、(1980) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 77:4216~4220
【文献】R.J. Kaufman及びP.A. Sharp (1982) Mol. Biol. 159:601-621
【文献】Colligan, Current Protocols in Immunology, or Current Protocols in Protein Science、John Wiley & Sons, NY、N.Y.、 (1997~2001)
【文献】Barbas C Fら、CSHL Press. 2004
【文献】Jones S Tら、Bio/technology. 1991、9(1): 88
【文献】O'Brien, PM及びAitken, R. (編)、Springer Science & Business Media. 2002、ISBN: 9780896037113
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、結腸直腸がんを治療するための新規なヒトVEGF抗体を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一態様において、本発明は、配列番号30で示されるアミノ酸配列を有する重鎖CDR1領域、配列番号31で示されるアミノ酸配列を有する重鎖CDR2領域、及び配列番号32で示されるアミノ酸配列を有する重鎖CDR3領域を有する重鎖可変領域、並びに配列番号27で示されるアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1領域、配列番号28で示されるアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2領域、及び配列番号29で示されるアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3領域を有する軽鎖可変領域を含む、単離された抗VEGF抗体又はその抗原結合断片を提供する。
【0009】
一実施形態において、前記抗VEGF抗体又はその抗原結合断片は、配列番号39で示されるアミノ酸配列又は配列番号39に対して少なくとも90%、92%、95%、98%、若しくは99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有する重鎖可変領域、及び配列番号40で示されるアミノ酸配列又は配列番号40に対して少なくとも90%、92%、95%、98%、若しくは99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域を有する。
【0010】
一実施形態において、前記抗体は、軽鎖定常領域及び重鎖定常領域を更に含み、好ましくは、軽鎖定常領域は、配列番号42で示されるアミノ酸配列又は配列番号42に対して少なくとも90%、92%、95%、98%、若しくは99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有する軽鎖定常領域であり、且つ/或いは、重鎖定常領域は、配列番号41で示されるアミノ酸配列又は配列番号41に対して少なくとも90%、92%、95%、98%、若しくは99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有するIgG1重鎖定常領域である。
【0011】
一実施形態において、前記抗VEGF抗体又はその抗原結合断片は、IgG抗体、好ましくはIgG1抗体である。
【0012】
一実施形態において、前記抗VEGF抗体又はその抗原結合断片は、モノクローナル抗体である。
【0013】
一実施形態において、組換えヒトVEGF165タンパク質に対する前記抗VEGF抗体又はその抗原結合断片の結合親和性KDは、1~100pM、好ましくは5~50pM、及び更に好ましくは19.5pMである。
【0014】
一実施形態において、前記抗原結合断片は、Fv、Fab、Fab'、Fab'-SH、F(ab')2、Fd断片、Fd'断片、単鎖抗体分子、又は単一ドメイン抗体であり、単鎖抗体分子は、好ましくはscFv、ジ-scFv、トリ-scFv、ダイアボディ、又はscFabである。
【0015】
別の態様において、本発明は、本明細書において記載される抗VEGF抗体又はその抗原結合断片及びさらなる治療剤を含む、抗体-薬物コンジュゲートを提供し、好ましくは、前記抗VEGF抗体又はその抗原結合断片は、コネクターを介してさらなる治療剤と結合している。
【0016】
一態様において、本発明は、配列番号16で示されるアミノ酸配列を有する重鎖CDR1領域、及び配列番号17で示されるアミノ酸配列を有する重鎖CDR2領域、及び配列番号18で示されるアミノ酸配列を有する重鎖CDR3領域を有する重鎖可変領域、並びに、配列番号13で示されるアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1領域、配列番号14で示されるアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2領域、及び配列番号15で示されるアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3領域を有する軽鎖可変領域を含む、単離された抗VEGF抗体又はその抗原結合断片を提供する。
【0017】
一実施形態において、前記抗VEGF抗体又はその抗原結合断片は、配列番号25で示されるアミノ酸配列又は配列番号25に対して少なくとも90%、92%、95%、98%、若しくは99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有する重鎖定常領域、及び配列番号26で示されるアミノ酸配列又は配列番号26に対して少なくとも90%、92%、95%、98%、若しくは99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域を含む。
【0018】
一実施形態において、前記抗VEGF抗体又はその抗原結合断片は、ヒト化抗体又はキメラ抗体である。
【0019】
別の態様において、本発明は、本明細書において記載される抗VEGF抗体又はその抗原結合断片をコードする核酸を提供する。
【0020】
一実施形態において、前記核酸は、配列番号7で示されるヌクレオチド配列及び/若しくは配列番号8で示されるヌクレオチド配列を含むか、又は配列番号23で示されるヌクレオチド配列及び/若しくは配列番号24で示されるヌクレオチド配列を含むか、又は配列番号47で示されるヌクレオチド配列及び/若しくは配列番号48で示されるヌクレオチド配列を含む。
【0021】
別の態様において、本発明は、本明細書において記載される核酸を含む発現ベクターを提供する。
【0022】
別の態様において、本発明は、本明細書において記載される核酸又は本明細書において記載される発現ベクターを含む宿主細胞を提供する。
【0023】
別の態様において、本発明は、本明細書において記載される宿主細胞を抗体発現に適した条件下で培養する工程、及び発現した抗体を培養培地から採取する工程を含む、本明細書において記載される抗VEGF抗体又はその抗原結合断片を生産するための方法を提供する。
【0024】
別の態様において、本発明は、本明細書において記載される抗VEGF抗体若しくはその抗原結合断片、又は本明細書において記載される抗体-薬物コンジュゲート、又は本明細書において記載される核酸、又は本明細書において記載される発現ベクター、及び薬学的に許容可能な担体を含む、医薬組成物を提供する。
【0025】
一実施形態において、本発明は、結腸直腸がんの治療において使用するための、本明細書において記載される抗VEGF抗体若しくはその抗原結合断片、又は本明細書において記載される抗体-薬物コンジュゲート、又は本明細書において記載される医薬組成物を提供する。
【0026】
別の態様において、本発明は、必要とする対象に、治療有効量の本明細書において記載される抗VEGF抗体若しくはその抗原結合断片、又は本明細書において記載される抗体-薬物コンジュゲート、又は本明細書において記載される医薬組成物を投与する工程を含む、結腸直腸がんを治療するための方法を提供する。
【0027】
別の態様において、本発明は、結腸直腸がんを治療するための医薬の調製における、本明細書において記載される抗VEGF抗体若しくはその抗原結合断片、又は本明細書において記載される抗体-薬物コンジュゲート、又は本明細書において記載される医薬組成物の使用を提供する。
【0028】
別の態様において、本発明は、本明細書において記載される抗VEGF抗体若しくはその抗原結合断片、又は本明細書において記載される抗体-薬物コンジュゲート、又は本明細書において記載される医薬組成物、及び1つ又は複数のさらなる治療剤を含む、薬学的組み合わせ物を提供する。
【0029】
別の態様において、本発明は、本明細書において記載される抗VEGF抗体若しくは抗原結合断片、又は本明細書において記載される抗体-薬物コンジュゲート、又は本明細書において記載される医薬組成物を含み、好ましくは、投与のためのデバイスを更に含む、キットを提供する。
【0030】
本発明は、以下の添付の図面と組み合わせて説明される。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】ウサギ抗体VEGF165が、VEGFR2タンパク質へのVEGF165の結合を遮断することを示す図である。
図2】ウサギ抗体VEGF165が、VEGF165誘導性のHUVEC増殖を中和することを示す図である。
図3】ELISAによって検出される、VEGF165へのヒト化抗体VEGF165-H988の結合を示す図である。
図4】ELISAによって検出される、mVEGF164へのヒト化抗体VEGF165-H988の結合を示す図である。
図5】抗体VEGF-H988が、ELISAによって検出される、VEGFR2タンパク質へのVEGF165の結合を遮断することを示す図である。
図6】異なる濃度のVEGF165の中和における抗体VEGF-H988の効果を示す図である。
図7】VEGF165、VEGFC、及びVEGFD誘導性のHUVEC細胞増殖の中和に対するVEGF-H988の効果を示す図である。
図8】VEGF-H988(50mg/kg)を腹腔内注射されたG2群のマウスの平均血中濃度-時間曲線を示す図である。
図9】VEGF-H988(50mg/kg)を腹腔内注射されたG4群のマウスの平均血中濃度-時間曲線を示す図である。
図10】VEGF-H988(50mg/kg)を腹腔内注射されたG2群及びG4群のマウスの平均血中濃度-時間曲線を示す図である。
図11】ヒト結腸直腸がん細胞系HCT-116異種移植片腫瘍モデルにおけるVEGF-H988及びコントロール薬物の有効性の比較を示す図である。
図12】ヒト結腸直腸がん細胞系HCT-116異種移植片腫瘍モデルにおけるVEGF-H988及びコントロール薬物の有効性の比較を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本発明の様々な態様は、単離された抗VEGF抗体又はその抗原結合断片、前記抗体又はその抗原結合断片を含む抗体-薬物コンジュゲート、前記抗体又はその抗原結合断片をコードする核酸及び発現ベクター、並びに前記核酸又は発現ベクターを有する宿主細胞、前記抗VEGF抗体又はその抗原結合断片を生産するための方法、前記抗VEGF抗体又はその抗原結合断片を含む医薬組成物、並びに結腸直腸がんを治療するための前記抗VEGF抗体又はその抗原結合断片の使用方法に関する。
【0033】
定義
別段の記載がない限り、本明細書において使用される全ての技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって通常理解されている意味を有する。本発明の目的では、以下の用語は、当技術分野において一般に理解される意味と一貫するように定義されている。
【0034】
本明細書及び添付の特許請求の範囲において使用される場合、単数形「1つの」、「a/an」、「別の」、及び「前記」は、文脈から別段のことが明らかに示されない限り、対象物の複数形の指定を含む。
【0035】
用語「抗体」は、免疫グロブリン分子を指し、また、所望の生物学的活性を示すあらゆる形態の抗体を指す。これらとしては、限定はしないが、モノクローナル抗体(完全長モノクローナル抗体を含む)、ポリクローナル抗体及び多重特異的抗体(例えば二重特異的抗体)、並びに更には抗体断片が含まれる。典型的には、完全長抗体の構造は、好ましくは、ジスルフィド結合によって典型的に相互接続されている、4つのポリペプチド鎖、2つの重(H)鎖、及び2つの軽(L)鎖を含む。各重鎖は、重鎖可変領域及び重鎖定常領域を有する。各軽鎖は、軽鎖可変領域及び軽鎖定常領域を有する。この典型的な完全長抗体構造に加えて、構造はまた、他の誘導体形態も含む。
【0036】
前記重鎖可変領域及び軽鎖可変領域は、これらに点在する、より保存的な領域(フレームワーク領域(FR)と呼ばれる)及び超可変領域(相補性決定領域(CDR)と呼ばれる)に更に分けることができる。
【0037】
用語「相補性決定領域」(CDR、例えば、CDR1、CDR2、及びCDR3)は、その存在が抗原の結合に必要な、抗体の可変領域内のアミノ酸残基を指す。各可変領域は、CDR1、CDR2、及びCDR3と同定されている3つのCDR領域を典型的に有する。各相補性決定領域は、Kabatによって定義されている「相補性決定領域」のアミノ酸残基(Kabatら、Sequences of Proteins of Immunological Interest、第5版、Public Health Service、National Institutes of Health、Bethesda、MD. 1991)及び/又は「高可変ループ」のアミノ酸残基(Chothia及びLesk、J MolBiol 196:901~917(1987))を有し得る。
【0038】
用語「フレームワーク」又は「FR」残基は、本明細書において定義されるCDR残基以外の可変領域内の残基である。
【0039】
各重鎖可変領域及び軽鎖可変領域は、3つのCDR及び最大4つのFRを典型的に有し、前記CDR及びFRは、以下の順序で、例えば、FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、及びFR4の順序で、アミノ末端からカルボキシル末端まで配列している。
【0040】
所与の抗体の相補性決定領域(CDR)及びフレームワーク領域(FR)は、Kabatシステム(Kabatら: Sequences of Proteins of Immunological Interest、第5版、US Department of Health and Human Services、PHS、NIH、NIH Publication 第91~3242、1991)を使用して同定することができる。
【0041】
用語「定常領域」は、抗原への抗体の結合に直接的には関与しないが抗体依存性の細胞傷害性等の様々なエフェクター機能を示す、抗体の軽鎖及び重鎖内のアミノ酸配列を指す。
【0042】
抗体の重鎖は、その定常領域のアミノ酸配列の抗原性の違いに従って、α、δ、ε、γ、及びμという5つのクラスに分類することができる。重鎖が軽鎖と完全な抗体を形成する場合、これはIgA、IgD、IgE、IgG、及びIgMという5つのクラスに分類することができ、これらは更にIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA、及びIgA2等のサブクラス(アイソタイプ)に分類することができる。抗体の軽鎖は、その定常ドメインのアミノ酸配列に基づいて、κ及びλに分類することができる。
【0043】
「抗体の抗原結合断片」は、親抗体の結合特異性の少なくとも一部を保持し、親抗体の抗原結合領域又は可変領域(例えば1つ又は複数のCDR)の少なくとも一部を典型的に含む、無傷抗体分子の一部を含む。抗原結合断片の例としては、限定はしないが、Fv、Fab、Fab'、Fab'-SH、F(ab')2、Fd断片、Fd'断片、単鎖抗体分子(例えば、scFv、ジ-scFv、若しくはトリ-scFv、ダイアボディ、又はscFab)、単一ドメイン抗体が含まれる。
【0044】
用語「抗体断片」は、「抗原結合断片」として上記で記載したものに加えて、限定はしないがFc断片を含む、親抗体の生物学的特性の少なくとも一部を保持する、無傷ではない抗体分子を指す。
【0045】
用語「抗体-薬物コンジュゲート」又は「ADC」は、場合によって治療剤又は細胞傷害剤であり得る化学的薬物(本明細書において作用剤とも呼ばれる)の1つ又は複数に化学的に連結している、抗体又はその抗原結合断片等の結合タンパク質を指す。好ましい実施形態において、ADCは、抗体、細胞傷害薬又は治療薬、及び薬物を抗体に連結又はコンジュゲートさせ得るリンカーを含む。ADCは、2、4、6、又は8つの装薬物質を含む、抗体にコンジュゲートした1~8のいずれかの値の薬物を通常有する。ADCに含まれ得る薬物の非限定的な例は、有糸分裂阻害剤、抗腫瘍抗生物質、免疫調節剤、遺伝子療法のためのベクター、アルキル化剤、抗血管形成剤、代謝拮抗剤、ホウ素を含有する作用剤、化学療法保護剤、ホルモン、抗ホルモン剤、コルチコステロイド、光活動性治療剤、オリゴヌクレオチド、放射性核種剤、トポイソメラーゼ阻害剤、チロシンキナーゼ阻害剤、及び放射線増感剤である。
【0046】
用語「キメラ抗体」は、重鎖及び/又は軽鎖の一部が特定の由来源又は種に由来し、残りの部分が異なる由来源又は種に由来する、抗体を指す。「キメラ抗体」はまた、上記に定義した機能的断片でもあり得る。「ヒト化抗体」は、「キメラ抗体」のサブセットである。
【0047】
用語「ヒト化抗体」又は「ヒト化抗原結合断片」は、本明細書において、(i)非ヒト由来源(例えば、異種免疫系を有するトランスジェニックマウス)に由来し、ヒト生殖系配列に基づく、抗体若しくは抗体断片、又は(ii)可変領域が非ヒト由来のものであり定常領域がヒト由来のものであるキメラ抗体である、抗体若しくは抗体断片、又は(iii)可変領域のCDRが非ヒト由来のものであり、可変領域の1つ若しくは複数のフレームワーク領域がヒト由来のものであり、且つ、定常領域が存在する場合にはヒト由来のものである、CDR移植体である、抗体若しくは抗体断片、として定義される。「ヒト化」の目的は、考えられる最大の親和性を保持しながら、ヒト体内において、非ヒト由来抗体の免疫原性を排除することである。非ヒト由来源抗体のフレームワーク配列に最も類似しているヒトフレームワーク配列をヒト化のための鋳型として選択することが有利である。一部のケースにおいて、親和性の低下を避けるために、ヒトフレームワーク配列内の1つ又は複数のアミノ酸を非ヒト構築物内の対応する残基で置き換えることが必要である場合がある。
【0048】
用語「モノクローナル抗体」は、実質的に均質な抗体集団に由来する抗体を指し、すなわち、集団に含まれる全ての単一の抗体は、非常にわずかな量で存在し得る考えられる突然変異(例えば天然の突然変異)を除いて同一である。用語「モノクローナル」は、したがって、問題となっている抗体の性質を指し、すなわち、関連のない抗体の混合物ではない。異なるエピトープに対する異なる抗体を通常含むポリクローナル抗体調製物とは対照的に、モノクローナル抗体調製物中の各モノクローナル抗体は、抗原上の単一のエピトープに対して向けられている。モノクローナル抗体調製物は、その特異性に加えて、他の抗体によって通常は汚染されていないという利点を有する。用語「モノクローナル」は、任意の特定の方法による前記抗体の産生を要するとは理解されない。
【0049】
抗体は、腫瘍関連ペプチド抗原標的(このケースではPD-1)等の標的抗原に「特異的に結合」し、すなわち、前記抗原を発現する細胞又は組織を標的化する治療剤として前記抗体を使用することを可能にするために十分な親和性で前記抗原を結合し、また、他のタンパク質と顕著には交差反応しないか、又は、上記の標的タンパク質のホモログ及びバリアント(例えば、突然変異形態、スプライスバリアント、若しくはタンパク質加水分解トランケート形態)以外のタンパク質と顕著には交差反応しない。
【0050】
用語「結合親和性」は、分子の個々の結合部位とその結合パートナーとの間の非共有結合相互作用を合わせたものの強度を指す。別段の記載がない限り、「結合親和性」は、本明細書において使用される場合、結合対のメンバー(例えば抗体及び抗原)間の1:1の相互作用を反映する、内因性の結合親和性を指す。本明細書において使用される場合、用語「KD」は、抗体-抗原相互作用の平衡解離定数を指す。本明細書において使用される場合、用語「kon」は、抗体が抗原に結合する速度定数を指す。本明細書において使用される場合、用語「koff」は、抗体が抗体/抗原複合体から解離する速度定数を指す。「KD」、「結合速度定数kon」、及び「解離速度定数koff」は、分子(例えば抗体)とその結合パートナー(例えば抗原)との間の親和性を説明するために一般に使用される。親和性は、すなわち、リガンドが特定のタンパク質を結合する緊密性の程度である。結合親和性は、2つの分子の間の水素結合、静電気的相互作用、疎水性力、及びファンデルワールス力等の非共有結合性の分子間相互作用の影響を受ける。更に、リガンドとその標的分子との間の結合親和性は、他の分子の存在の影響を受け得る。親和性は、本明細書において記載されるELISAを含む、当技術分野において公知の従来の方法によって解析することができる。
【0051】
用語「エピトープ」には、抗体又はT細胞受容体に特異的に結合するあらゆるタンパク質決定基クラスターが含まれる。エピトープ決定基クラスターは、典型的には、分子の化学的に活性な表面基(例えば、アミノ酸又は糖側鎖又はこれらの組み合わせ)からなり、特異的な三次元構造の特徴及び特異的な電荷の特徴を有することが多い。
【0052】
用語「単離された」抗体は、抗体が発現している細胞の成分から同定及び単離されている抗体である。単離された抗体には、前記抗体の天然環境における少なくとも1つの成分が不在の組換え細胞内部のin situ抗体が含まれる。しかし、通常は、単離された抗体は、少なくとも1つの精製工程を介して調製される。
【0053】
2つのポリペプチド又は核酸配列の間の「配列同一性」は、前記配列間で同一の残基の数を、残基の総数に対するパーセンテージとして示し、小さい方の比較対象分子のサイズに基づいて計算される。同一性パーセンテージを計算する場合、アラインされる配列は、配列間のマッチが最大となるような方法でマッチされ、マッチ内のギャップ(存在する場合)は、特定のアルゴリズムによって解決される。2つの配列の間の同一性を決定するための好ましいコンピュータプログラム方法としては、限定はしないが、GAP、BLASTP、BLASTN、及びFASTAを含む、GCGプログラムパッケージが含まれる(Altschulら、1990、J. Mol. Biol. 215: 403~410)。上記の手順は、International Center for Biotechnology Information(NCBI)及び他のソースから公開されている。周知のスミス・ウォーターマンアルゴリズムもまた、同一性を決定するために使用することができる。
【0054】
用語「Fc受容体」又は「FcR」は、抗体のFc領域に結合する受容体を指す。天然配列のヒトFcR、好ましくは、FcγRI、FcγRII、及びFcγRIIIアイソフォームを含む、IgG抗体に結合する受容体(ガンマ受容体)、並びにこれらの受容体のバリアントが好ましい。全ての他のFcRが、用語「FcR」に含まれる。この用語にはまた、胎児への母親のIgGの輸送に関与する新生児受容体(FcRn)も含まれる(Guyerら、Journal of Immunology 117: 587 (1976)、及びKimら、Journal of Immunology 24: 249 (1994))。
【0055】
用語「新生児Fc受容体」は、「FcRn」と省略されるが、IgG抗体のFc領域に結合する。新生児Fc受容体(FcRn)は、インビボでのIgG様抗体の代謝運命において重要な役割を有する。FcRnは、IgGをリソソーム分解経路から守るように機能し、これによって、血清中でのそのクリアランスを低減させ、その半減期を延ばす。したがって、IgGのインビトロでのFcRn結合特性/特徴は、循環におけるそのインビボでの薬物動態学的特性の指標である。
【0056】
用語「エフェクター機能」は、抗体のFc領域に起因し得る生物学的活性を指し、このFc領域はアイソタイプごとに変化する。抗体のエフェクター機能の例としては、C1q結合及び補体依存性細胞傷害性(CDC)、Fc受容体結合、抗体依存性細胞介在性細胞傷害性(ADCC)、抗体依存性細胞食作用(ADCP)、サイトカイン分泌、免疫複合体介在性の抗原提示細胞による抗原の取り込み、細胞表面受容体の下方調節(例えばB細胞受容体)、並びにB細胞活性化が含まれる。
【0057】
用語「エフェクター細胞」は、1つ又は複数のFcRを発現し、エフェクター機能を実行する、細胞を指す。一態様において、前記エフェクター細胞は、少なくともFcγRIIIを発現し、ADCCエフェクター機能を実行する。ADCCを仲介するヒト細胞の例としては、末梢血単核球(PBMC)、ナチュラルキラー(NK)細胞、単球、細胞傷害性T細胞、及び好中球が含まれる。エフェクター細胞は、天然由来源、例えば血液から単離することができる。エフェクター細胞は通常、エフェクター相に関連するリンパ球であり、サイトカインを産生するために機能するか(ヘルパーT細胞)、病原体に感染した細胞を殺傷するか(細胞傷害性T細胞)、又は抗体を分泌する(分化型B細胞)。
【0058】
「免疫細胞」には、造血系に由来し、免疫応答において役割を有する、細胞が含まれる。免疫細胞としては、B細胞及びT細胞等のリンパ球、ナチュラルキラー細胞、並びに、単球、マクロファージ、好酸球、マスト細胞、好塩基球、及び顆粒球等の骨髄細胞が含まれる。
【0059】
「抗体依存性細胞介在性細胞傷害性」又は「ADCC」は、分泌されたIgが、ある特定の細胞傷害性細胞(例えば、NK細胞、好中球、及びマクロファージ)に存在するFcγ受容体に結合して、これらの細胞傷害性エフェクター細胞が抗原を有する標的細胞に特異的に結合し、次いで例えば細胞毒を使用して前記標的細胞を殺傷することを可能にする、細胞傷害性の形態を指す。標的抗体のADCC活性を評価するために、米国特許第5,500,362号又は米国特許第5,821,337号又は米国特許第6,737,056号(Presta)において記載されているインビトロADCCアッセイ等の、インビトロADCCアッセイを行うことができる。このようなアッセイにおいて使用するための有用なエフェクター細胞としては、PBMC及びNK細胞が含まれる。
【0060】
「補体依存性細胞傷害性」又は「CDC」は、補体の存在下での標的細胞の溶解を指す。補体活性化の従来の経路は、補体系の第1の成分(C1q)を、その対応する抗原に結合する抗体(適切なサブクラスの)に結合させることによって開始される。補体活性化を評価するために、Gazzano-Santoroら、J. Immunol Methods 202: 163 (1996)において記載されているCDCアッセイ等の、CDCアッセイを行うことができる。例えば、米国特許第6,194,551号及びWO1999/51642において、Fc領域のアミノ酸配列が改変されたポリペプチドバリアント(バリアントFc領域を有するポリペプチド)、及びC1q結合が増強又は低減しているポリペプチドバリアントが記載されている。
【0061】
本発明の抗体のアミノ酸配列及びヌクレオチド配列
本発明は、組換えヒトVEGF165タンパク質を使用してウサギを免疫化し、次いで、ファージディスプレイライブラリースクリーニングによって、組換えヒトVEGF165タンパク質に特異的に結合する抗体クローンVEGF-R859、VEGF-R988、VEGF-R613、及びVEGF-R812を得た。VEGFR2-MK19 scFv抗体の重鎖及び軽鎖可変領域をコードするヌクレオチド配列を次いで、ウサギIgG1定常領域又はウサギカッパ定常領域をコードするヌクレオチド配列を有するpSTEP2ベクターに、PCRによって挿入し、そして、培養して発現させた。高純度の抗体が、タンパク質A精製カラムを使用して精製された。ELISAは、前記ウサギ抗体がVEGFR2タンパク質へのVEGF165タンパク質の結合を遮断し得ること、並びにVEGF-R988及びVEGF-R613がVEGF165のHUVEC増殖促進能力を効果的に低減させ得ること、並びにVEGF-R988がより高い最大阻害率を示すことを示した。
【0062】
次いで、ヒト化CDRの移植のための従来の方法を使用して、その配列がウサギ軽鎖又は重鎖可変領域の配列に近いヒト抗体の軽鎖又は重鎖可変領域を鋳型として選択し、ウサギ抗体軽鎖又は重鎖の3つのCDRの各々(Table 1(表3))を前記ヒト抗体の可変領域に挿入することによって、ヒト化軽鎖可変領域(VL)配列及び重鎖可変領域(VH)配列を得た。ウサギフレームワーク領域の重要な部位はCDR活性の安定性の維持に必須であるため、この重要な部位を、ウサギ抗体の対応する配列に復帰突然変異させた。VEGF-H988-10軽鎖/重鎖発現ベクターを全遺伝子合成によって得、HEK-293細胞にトランスフェクトし、培養して発現させ、そして、タンパク質A精製カラムを使用して培養上清を精製して、高純度の抗体を得た。VEGF-H988-10の親和性を向上させるために、重鎖及び軽鎖可変領域のCDR領域のSDMライブラリー(LCDR1、LCDR3、HCDR2、及びHCDR3を含む)を構築し、そして、4つの突然変異体ライブラリーをscFv形態で構築し、svFv-gIII融合タンパク質としてファージベクターにクローニングした。各CDRについて、可溶性抗原VEGFへの最適な結合能力を有するCDRクローンをスクリーニングし、最後に、CDR親和性及び安定性が最適化された抗体VEGF-H988を得た。
【0063】
本発明の核酸
本発明はまた、本発明の抗体又はその一部分をコードする核酸分子にも関する。これらの核酸分子の配列には、限定はしないが、配列番号11、19~20、23~24、43~51、及び53~54が含まれる。
【0064】
本発明の核酸分子は、本明細書において開示されている配列に限定されず、これらのバリアントも含む。本発明におけるバリアントは、ハイブリダイゼーションにおけるそれらの物理的特性を参照して記載され得る。当業者には、核酸ハイブリダイゼーション技術を使用して、核酸が、それらの補体及びそれらの同等物又はホモログを同定するために使用され得ることが認識されよう。また、ハイブリダイゼーションが100%未満の相補性で行われ得ることも認識されよう。しかし、条件が適切に選択されれば、ハイブリダイゼーション技術を使用して、特定のプローブに対するDNA配列の構造的関連性に基づいて前記DNA配列を区別することができる。このような条件についてのガイダンスについては、Sambrookら、Molecular Cloning: A Laboratory Manual、第2版、Cold Spring Harbor Press、Cold Spring Harbor、N. Y.、1989、並びにAusubel, F. M.、Brent, R.、Kingston, R. E.、Moore, D. D.、Sedman, J. G.、Smith, J. A.、及びStruhl, K.編(1995). Current Protocols in Molecular Biology. New York: John Wiley and Sonsを参照されたい。
【0065】
組換えベクター及び発現
本発明はまた、本発明の1つ又は複数のヌクレオチド配列を含む組換え構築物も提供する。本発明の組換え構築物は、本発明の抗体をコードする核酸分子をプラスミド、ファージミド、ファージ、又はウイルスベクター等のベクターに挿入することによって構築される。
【0066】
本明細書において提供される抗体は、軽鎖及び重鎖又はこれらの一部分をコードするヌクレオチド配列を宿主細胞において組換え発現させることによって調製することができる。抗体を組換え発現させるために、宿主細胞に軽鎖及び/又は重鎖又はこれらの一部分をコードするヌクレオチド配列を有する1つ又は複数の組換え発現ベクターをトランスフェクトして、前記軽鎖及び重鎖を前記宿主細胞において発現させることができる。標準的な組換えDNA法が、重鎖及び軽鎖をコードする核酸を調製する及び/又は得るため、これらの核酸を組換え発現ベクターに組み込むため、並びに前記ベクターを宿主細胞に導入するために使用される。例えば、Sambrook、Fritsch、及びManiatis (編), Molecular Cloning; A Laboratory Manual、第2版、Cold Spring Harbor, N.Y.、(1989)、Ausubel, F. M.ら(編) Current Protocols in Molecular Biology, Greene Publishing Associates, (1989)、並びに、Bossらによる米国特許第4,816,397号において記載されているもの。
【0067】
適切な宿主細胞は、原核細胞及び真核細胞である。原核宿主細胞の例は細菌であり、真核宿主細胞の例は、酵母細胞、昆虫細胞、又は哺乳動物細胞である。調節配列の選択を含む、発現ベクターの設計が、宿主細胞の選択、所望のタンパク質の発現レベル、及び発現が構成的であるか誘導性であるか等の多くの因子によって決定されることが理解されるべきである。
【0068】
細菌発現
所望の抗体をコードする構造的DNA配列を、適切な翻訳開始シグナル及び翻訳終結シグナル及び機能的プロモーターと共に、作動可能なリーディングフレームに挿入することによって、細菌において使用するための発現ベクターが構築される。ベクターは、1つ又は複数の表現型選択マーカー、及び、ベクターの維持を確実にし、必要に応じて宿主内で増殖させるための、複製起点を有する。形質転換のための適切な原核生物宿主としては、大腸菌(E. coli)、枯草菌(Bacillus subtilis)、ネズミチフス菌(Salmonella typhimurium)、並びにシュードモナス属(Pseudomonas)、ストレプトマイセス属(Streptomyces)、及びスタフィロコッカス属(Staphylococcus)の複数の種が含まれる。
【0069】
細菌ベクターは、例えば、ファージベース、プラスミドベース、又はファージミドベースであり得る。これらのベクターは、選択マーカー、及び周知のクローニングベクターpBR322(ATCC 37017)のエレメントを通常有する市販されているプラスミドに由来する細菌複製起点を有し得る。適切な宿主株を形質転換し、宿主株を適切な細胞密度まで増殖させた後、選択されたプロモーターを適切な方法(例えば、温度変化又は化学的誘導)によって抑制解除/誘導し、そして細胞をさらなる時間にわたり培養する。細胞は通常、遠心分離によって採取され、物理的又は化学的方法によって破壊され、そして、得られた租抽出物はさらなる精製のために保持される。
【0070】
細菌系において、様々な発現ベクターを、発現させるタンパク質の使用目的に従って、有利に選択することができる。例えば、多くのこのようなタンパク質が抗体産生又はペプチドライブラリースクリーニングのために産生される場合には、例えば、精製が容易な融合タンパク質産物の高レベルの発現を指示するベクターが望ましい場合がある。
【0071】
哺乳動物での発現及び精製
哺乳動物宿主細胞における発現のための好ましい調節配列としては、哺乳動物細胞における高レベルのタンパク質発現を指示するウイルスエレメント、例えば、サイトメガロウイルス(CMV)に由来するプロモーター及び/又はエンハンサー(例えば、CMVプロモーター/エンハンサー)、シミアンウイルス40(SV40)のプロモーター及び/又はエンハンサー(例えば、SV40プロモーター/エンハンサー)、アデノウイルスのプロモーター及び/又はエンハンサー(例えば、アデノウイルス主要後期プロモーター(AdMLP))、並びにポリオーマウイルスのプロモーター及び/又はエンハンサーが含まれる。ウイルス調節エレメント及びこれらの配列のさらなる記載については、例えば、Stinskiによる米国特許第5,168,062号、Bellらによる米国特許第4,510,245号、及びSchaffnerらによる米国特許第4,968,615号を参照されたい。組換え発現ベクターはまた、複製起点及び選択マーカー(例えば、Axelらによる米国特許第4,399,216号、米国特許第4,634,665号、及び米国特許第5,179,017号を参照されたい)も含む。適切な選択マーカーは、G418、ハイグロマイシン、又はメトトレキサート等の薬物に対する耐性をベクターが導入されている宿主細胞に付与する遺伝子を含む。例えば、ジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)遺伝子はメトトレキサートに対する耐性を付与し、一方、neo遺伝子はG418に対する耐性を付与する。
【0072】
宿主細胞への発現ベクターのトランスフェクションは、エレクトロポレーション、リン酸カルシウム沈殿、及びDEAE-デキストラントランスフェクション等の標準的な技術を使用して行うことができる。
【0073】
本明細書において提供される抗体を発現させるための適切な哺乳動物宿主細胞としては、チャイニーズハムスター卵巣(CHO細胞)[Urlaub及びChasin、(1980) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 77:4216~4220において記載されているdhfr-CHO細胞を含み、例えばR.J. Kaufman及びP.A. Sharp (1982) Mol. Biol. 159:601-621において記載されているDHFR選択マーカーが利用される]、NSO骨髄腫細胞、COS細胞、並びにSP2細胞が含まれる。
【0074】
本発明の抗体は、限定はしないが、硫酸アンモニウム又はエタノール沈殿、酸抽出、タンパク質Aアフィニティークロマトグラフィー、タンパク質Gアフィニティークロマトグラフィー、陰イオン又は陽イオン交換クロマトグラフィー、リン酸セルロースクロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー、及びレクチンクロマトグラフィーを含む公知の方法によって、組換え細胞培養物から回収及び精製することができる。高性能液体クロマトグラフィー(「HPLC」)も、精製に使用することができる。例えば第1、4、6、8、9、及び10章の各々が参照によってその全体が本明細書に組み込まれる、Colligan, Current Protocols in Immunology, or Current Protocols in Protein Science、John Wiley & Sons, NY、N.Y.、(1997~2001)を例えば参照されたい。
【0075】
本発明の抗体の特徴及び機能
本発明のヒト化抗体VEGF-H988の特徴解析及び機能解析を行った。この解析は、本発明の抗体が以下の利点を有することを示した:(1)VEGF-H988のVEGF165タンパク質結合能力は、アバスチンのそれよりもわずかに良好である、(2)VEGF165-H988の、組換えヒトVEGF165タンパク質への結合親和性は、アバスチンのそれよりもわずかに高く、アバスチンの約1.5倍である、(3)VEGF165-H988は、組換えヒトVEGF165タンパク質に特異的に結合し、組換えマウスmVEGF164タンパク質に交差結合する、(4)抗体VEGF-H988は、VEGF165タンパク質へのVEGFR2タンパク質の結合を効果的に阻害し得、その阻害能力はEYLEAよりも弱いが、アバスチンよりも良好である、(5)抗体VEGF-H988は、VEGF165のHUVEC増殖促進能力を効果的に低減させ得る、(6)抗体VEGF-H988は、異なるVEGFアイソフォーム(VEGF165、VEGFC、VEGFD)がHUVEC細胞に対して同時に作用しているケースでは、アバスチンよりも強力な中和効果を有する、(7)マウスにおける反復薬物投与毒性試験は、抗体VEGF-H988で顕著な薬物関連毒性反応が見られないことを示した、及び(8)HCT-116異種移植片腫瘍モデルの腫瘍抑制試験は、VEGF-H988がアバスチンよりも良好な腫瘍阻害効果を有することを示した。
【0076】
使用
本発明の抗体は、結腸直腸がんを治療するために使用することができる。本発明の抗体はまた、前記障害を治療するための薬剤を調製するためにも使用することができる。
【0077】
医薬組成物
本発明の抗体は、本発明の抗体及び1つ又は複数の薬学的に許容可能な担体、希釈剤、又は賦形剤を含む医薬組成物を形成するために、少なくとも1つの他の作用剤(例えば、安定な化合物)と共に調製することができる。場合によって、医薬組成物は、さらなる治療剤を含有し得る。
【0078】
キット
本発明はまた、前述の本発明の医薬組成物を含有する1つ又は複数の容器を含む薬学的パッケージ及びキットにも関する。このような容器には、医薬品又は生物製剤の製造、使用、又は販売を管理している政府機関によって規定された形態の仕様書が添付されていてよく、これは、前記医薬品又は生物製剤を製造、使用、又は販売している上記機関によるヒト投与についての承認を反映している。
【0079】
調製及び保存
本発明の医薬組成物は、当技術分野において公知の様式で、例えば、従来の混合方法、溶解方法、造粒方法、トローチ調製方法、製粉方法、乳化方法、カプセル化方法、包埋方法、又は凍結乾燥方法によって調製することができる。
【0080】
許容可能な担体に配合された本発明の化合物を含む医薬組成物が既に調製されていたら、適応状態の治療のために、これらを適切な容器に入れ、ラベル付けしてよい。このようなラベルは、薬物の量、頻度、及び投与経路を含む。
【0081】
組み合わせ物
上記の本発明の抗体を含む医薬組成物はまた、抗新生物剤等の1つ又は複数の他の治療剤と組み合わされ、この場合、得られた組み合わせ物は、許容できない副作用を生じさせない。
【0082】
以下の実施例は、本発明のより良好な理解を助けるが、本発明を限定することを意図したものではない。以下の実施例における実験方法は、別段の特定がない限り、全て従来の方法である。以下の実施例で使用される実験材料は、別段の特定がない限り、従来の生化学的試薬の販売者から購入した。
【実施例
【0083】
(実施例1)
抗体ファージディスプレイライブラリーを使用する、VEGFR1/VEGFR2へのVEGF165の結合を遮断するウサギ抗体のスクリーニング
1.1 ウサギの免疫化
組換えヒトVEGF165タンパク質(Sino Biological, Inc社から入手、カタログ番号11066-HNAH)を使用して、ウサギを免疫化した。ヒトVEGF165タンパク質の細胞外領域Met1~Arg191のアミノ酸配列(UniProt P15692-4)は、配列番号1である。
【0084】
詳細な方法は以下の通りであった:組換えヒトVEGF165タンパク質をフロイントアジュバントと混合し、ウサギを当該混合物で、それぞれ3週間、2週間、及び2週間の間隔で4回、各回500μgの用量で、皮下で免疫化した。4回目の免疫化から、免疫化の4日後に、眼の内眼角網状組織を介して血液を回収した。ウサギ抗VEGF165の血清力価を、被覆された組換えヒトVEGF165タンパク質を使用して、ELISAによって測定した。5回目の免疫化による血清の力価は1:250000に達し、ウサギを、5回目の免疫化の9週間後に、25μgの組換えヒトVEGF165タンパク質で、静脈内でブーストした。7日後、マウスを屠殺し、脾臓組織を取り出し、液体窒素中で凍結した。
【0085】
1.2 抗体ファージディスプレイライブラリーのスクリーニング
TriPure単離試薬(Roche社から入手、カタログ番号11 667 165 001)を使用してRNAをウサギ脾臓組織から抽出し、逆転写キット(Invitrogen社から入手、カタログ番号18080-051)を使用してRNAを逆転写することによってcDNAを得た。ウサギ抗体の軽鎖可変領域の配列を増幅するために10対のプライマーを設計し、重鎖可変領域の配列を増幅するために4対のプライマーを設計した(Barbas C Fら、CSHL Press. 2004)。伸長PCRをオーバーラップさせることによって、ウサギ抗体の軽鎖及び重鎖可変領域をコードする配列を、scFvをコードするヌクレオチド配列にアセンブルし、以下のリンカーによって軽鎖及び重鎖可変領域を連結させた(Jones S Tら、Bio/technology. 1991、9(1): 88)。
TCTAGTGGTGGCGGTGGTTCGGGCGGTGGTGGAGGTGGTAGTTCTAGATCTTCC(SSGGGGSGGGGGGSSRSS)(配列番号2)、
【0086】
次いで、制限エンドヌクレアーゼSfi I(Fermentas社から入手)によってファージベクターpComb3x(Sino Biological, Inc.社から入手)に酵素的にライゲーションし、コンピテントX-Blueに電気的形質転換して、ウサギファージディスプレイscFv抗体ライブラリーを構築した。組換えヒトVEGF165タンパク質をELISAプレートに被覆し、抗VEGF165陽性抗体に富むファージライブラリーを、ファージ抗体パンニングプロセス(O'Brien, PM及びAitken, R. (編)、Springer Science & Business Media. 2002、ISBN: 9780896037113)のプロセスに従ってスクリーニングした。単一コロニーファージを、発現のために、富んだライブラリーから選択し、組換えヒトVEGF165タンパク質へのこれらの結合をELISAによって検出した。組換えヒトVEGF165に特異的に結合するscFv抗体クローンを選択し、シーケンシングのためにシーケンシングサービス会社に送って、抗体のヌクレオチド配列を得、このうち、いくつかのscFv抗体クローンを、実施例1.3で記載する方法によってVEGF-R859、VEGF-R988、VEGF-R613、VEGF-R812に誘導した。これらのscFV抗体クローンのヌクレオチド配列は、配列番号3、配列番号4、配列番号5、及び配列番号6である。
【0087】
1.3 VEGF165を標的化するウサギ抗体の産生
VEGF-R988を例に取ると、VEGF-R988のscFv抗体の重鎖可変領域をコードするヌクレオチド配列をPCR増幅し、Sca I+Kpn I(Fermentas社)で消化した、重鎖シグナルペプチド(配列番号45)及びウサギIgG1定常領域(配列番号9)をコードするヌクレオチド配列を有するpSTEP2ベクターに、in-fusion方法によって挿入し、こうして、重鎖(配列番号53)を発現するベクターを得た。VEGF-R988のscFv抗体の軽鎖可変領域をコードするヌクレオチド配列をPCR増幅し、Sca I+BamH I(Fermentas社)で消化した、軽鎖シグナルペプチド(配列番号46)及びウサギカッパ定常領域(配列番号10)をコードするヌクレオチド配列を有するpSTEP2ベクターに、in-fusion方法によって挿入し、こうして、軽鎖(配列番号54)を発現するベクターを得た。組換えプラスミドを抽出し、HEK-293細胞にトランスフェクトし、発現のために7日間培養し、そして、培養上清をタンパク質A精製カラムによって精製して、高純度の抗体を得た。
【0088】
【表1】
【0089】
【表2】
【0090】
1.4 VEGF165を標的化するウサギ抗体の機能解析
1.4.1 ウサギ抗体は、VEGFR2-hisへのVEGF165の結合を遮断する
1μg/mLの濃度のVEGF165タンパク質(SinoBiological, Inc.社から入手した)を、100μL/ウェルで一晩、4℃で、96ウェルプレートに被覆した。翌日、プレートを洗浄し、室温で1時間遮断させた。5μg/mLのVEGFR2-ビオチンタンパク質(SinoBiological, Inc.社から入手した)100μL、及びVEGF165を標的化する異なる濃度の前記ウサギ抗体を添加し、共インキュベートした。プレートを洗浄して未結合の抗体を除去し、ストレプトアビジン/HRP(Beijing ZSGB-Bio Co., Ltd.社から入手した)とインキュベートし、次いで、繰り返し洗浄し、そして、色素生成性基質溶液を添加して発色させた。発色が止まった後、OD450を測定した。VEGF165を標的化するウサギ抗体の濃度を水平座標として取り、阻害率PI%を垂直座標として取って、graphPad Prism 6.0ソフトウェアをデータ解析及び曲線チャートの作成に使用した。阻害率(%)=(ODブランク-ODサンプル)/ODブランク×100%であり、式中、ODブランクは、VEGFR2-ビオチンのみが添加され、ウサギ抗体は添加されていないウェルのOD値を指し、ODサンプルは、VEGFR2-ビオチン及びウサギ抗体の両方が添加されたウェルのOD値を指す。
【0091】
図1に示すように、VEGFR2タンパク質は、被覆されたVEGF165タンパク質に効果的に結合し得、ウサギ抗体VEGF-R859、VEGF-R988、VEGF-R613、VEGF-R812は、VEGFR2タンパク質へのVEGFR165タンパク質の結合を効果的に阻害し得る。
【0092】
抗体は、臍帯静脈内皮細胞に対するVEGF165の増殖効果を阻害する。
【0093】
1.4.2 ウサギ抗体は、HUVECの増殖を阻害する
前記ウサギ抗体の、VEGF165によって誘導される臍帯静脈内皮細胞増殖の中和効果を、WST-8法を使用して検出した。ヒト臍帯静脈内皮細胞HUVECを、4×103個細胞/ウェルで96ウェルプレートに接種し、10%FBS及び5%L-Glnを含有するM199培地中で4時間培養し、次いで、異なる濃度のウサギ抗体を50μL/ウェルで添加し、次いで、最終濃度10ng/mLのVEGF-165を10μL/ウェルで添加し、96ウェルプレートを、37℃、5%CO2の細胞インキュベーターで3日間インキュベートし、そしてブランクウェルB(細胞なし)、ネガティブコントロールM(細胞接種あり、抗体サンプルなし、VEGF-165の添加あり)、並びにM'(細胞接種あり、抗体サンプルなし、及びVEGF-165なし)を使用した。インキュベーション後、10μL/ウェルのWST-8色素生成溶液を添加し、96ウェルプレートをCO2インキュベーターでインキュベートして発色させ、発色が安定化した後、OD450及びOD630をマイクロプレートリーダーで測定した。各ウェルで、読み取り値は(OD450-OD630)であり、各群のOD値をその群の読み取り値マイナスブランクウェルBの読み取り値として定義して抗体の中和率を計算し、中和率%=(ネガティブコントロールMのOD値-サンプルのOD値)/(ネガティブコントロールMのOD値-M'のOD値)×100%であった。標準曲線を、抗体サンプル濃度を水平座標として取り、中和率を垂直座標として取って、統計ソフトウェアGraphPad Prismの自動解析機能を使用して計算し、4パラメータロジスティック回帰方程式を使用して、標準的な「S」曲線を当てはめて、抗体サンプルの半数最大効果濃度(EC50)を計算した。
【0094】
図2に示す結果は、VEGF-R988及びVEGF-R613がVEGF165のHUVEC増殖促進能力を効果的に低減させ、VEGF-R988がより高い最大阻害率を示し、VEGF-R812は阻害能力を基本的に有さず、一方、VEGF-R859は阻害能力を全く有さないことを示している。
【0095】
(実施例2)
ウサギ抗体VEGF-R988のヒト化、修飾、及び産生
実施例1におけるウサギ抗体の機能的解析の結果に基づいて、VEGF-R988をヒト化及び産生に選択した。
【0096】
2.1 ウサギ抗体VEGF-R988の軽鎖及び重鎖のCDRの決定
実施例1.2で決定されたVEGF-R988 scFv抗体のヌクレオチド配列に基づいて、VEGF-R988 scFvの重鎖及び軽鎖可変領域のアミノ酸配列を推定した。配列番号11/12を参照されたい。
【0097】
Kabatインデックス及びIMGTナンバリングシステムを参照して、ウサギ抗体VEGF-R988-scFvの軽鎖及び重鎖の3つのCDRの各々のアミノ酸配列を決定した。Table 1(表3)を参照されたい。次の工程で、軽鎖及び重鎖の前述のそれぞれの3つのCDRを、ヒト化抗体VEGF-R988-scFvに移植した。実施例2.2を参照されたい。
【0098】
【表3】
【0099】
2.2 ウサギ抗体VEGF-R988のCDR移植
ウサギ抗体のヒト化を、CDR移植の従来のヒト化方法を使用して行った。その配列がウサギ軽鎖又は重鎖可変領域の配列に近い、ヒト抗体の軽鎖又は重鎖可変領域を、鋳型として選択し、ウサギ軽鎖又は重鎖の3つのCDR(Table 1(表3))の各々をヒト抗体の可変領域に挿入して、ヒト化軽鎖可変領域(VL)又はヒト化重鎖可変領域(VH)配列をそれぞれ得た。VEGF-R988の軽鎖可変領域のヒト鋳型は、VEGF-R988の軽鎖に65.30%相同なIGKV1-27*01であり、重鎖可変領域のヒト鋳型は、VEGF-R988の重鎖に53.20%相同なIGHV4-4*08である。
【0100】
2.3 ヒト化可変領域のフレームワーク領域での復帰突然変異
ウサギ由来のフレームワーク領域内の一部の重要なアミノ酸はCDR活性の維持に必須であるため、これら重要なアミノ酸を、対応するウサギ抗体アミノ酸配列に復帰突然変異させ、以下の部位を復帰突然変異させた: 軽鎖では、1位をEに復帰突然変異させ、2位をLに復帰突然変異させ、4位をLに復帰突然変異させ、そして63位をKに復帰突然変異させた。一方、重鎖では、3位をVに復帰突然変異させ、37位をVに復帰突然変異させ、47位をYに復帰突然変異させ、78位をVに復帰突然変異させ、79位をDに復帰突然変異させ、そして91位をFに復帰突然変異させた。全ての上記の部位は、Kabatのナンバリングスキームを参照することによってナンバリングした。ヒト化抗体VEGF-H988-10を、CDRヒト化移植及びフレームワーク領域の復帰突然変異によって得た。
【0101】
2.4 ヒト化モノクローナル抗体VEGF-H988-10の産生及びCDR親和性の修飾
VEGF-H988-10の重鎖可変領域(配列番号23)を全遺伝子合成方法によって得、次いで、Sca I+Nhe I(Fermentas社)で消化した、重鎖シグナルペプチドをコードするヌクレオチド配列(配列番号45)及びヒトIgG1定常領域をコードするヌクレオチド配列(配列番号49)を有するpSTEP2ベクターに、in-fusion方法によって挿入して、VEGF-H988-10重鎖(配列番号19)を発現するベクターを得た。VEGF-H988-10の軽鎖可変領域(配列番号24)を全遺伝子合成方法によって得、次いで、Sca I+BsiW I(Fermentas社)で消化した、軽鎖シグナルペプチドをコードするヌクレオチド配列(配列番号46)及びヒトカッパ定常領域をコードするヌクレオチド配列(配列番号50)を有するpSTEP2ベクターに、in-fusion方法によって挿入して、VEGF-H988-10軽鎖(配列番号20)を発現するベクターを得た。プラスミドを抽出し、HEK-293細胞にコトランスフェクトし、細胞を7日間培養した。培養上清をタンパク質A精製カラムで精製して、高純度の抗体を得た。
【0102】
【表4】
【0103】
【表5】
【0104】
VEGF-H988-10の親和性を向上させるために、重鎖及び軽鎖可変領域のCDR領域のSDMライブラリー(3つの飽和突然変異ライブラリーLCDR1、LCDR3、及びHCDR2を含む)を構築した。一方、抗体の化学的安定性を向上させるためには、脱アミド化又は異性化を受け得るアミノ酸残基を別のアミノ酸残基に修飾するべきである。アスパラギンの脱アミド化は、NG、NS、NA、NT等で生じ得、抗体の安定性又は生物学的機能に影響するイソアスパラギン酸残基を生成させる。VEGF-H988の可変領域HCDR3は脱アミド化感受性部位を有しており、したがって、SDMライブラリーを構築して、抗体の化学的安定性及び生物学的機能を向上させた。上記の4つの突然変異体ライブラリーはscFv形態で構築し、scFv- gIII融合タンパク質としてファージベクターにクローニングした。各CDRについて、可溶性抗原VEGFに対して最適な結合能力を有するCDRクローンをスクリーニングし、最後に、CDRの親和性及び安定性が最適化された抗体VEGF-H988を得た。VEGF-H988軽鎖及び重鎖CDRの配列をTable 2(表6)に示す。
【0105】
【表6】
【0106】
2.5 ヒト化モノクローナル抗体VEGF-H988の産生
順に結合された、軽鎖シグナルペプチドをコードするヌクレオチド配列(配列番号46)、ヒト化抗体軽鎖可変領域をコードするヌクレオチド配列(配列番号48)、及びヒト抗体カッパ軽鎖定常領域をコードするヌクレオチド配列(配列番号50)を有する、前述の抗体VEGF-H988軽鎖及びシグナルペプチドをコードするヌクレオチド配列(配列番号44)をPCR増幅し、自社開発のpGSベクター(Kpn I+Xba I)にin-fusion方法によって挿入し、正確なプラスミドをシーケンシングによって確認した。順に結合された、重鎖シグナルペプチドをコードするヌクレオチド配列(配列番号45)、ヒト化抗体重鎖可変領域をコードするヌクレオチド配列(配列番号47)、及びヒト抗体カッパ重鎖定常領域をコードするヌクレオチド配列(配列番号49)を有する、前述の抗体VEGF-H988重鎖及びシグナルペプチドをコードするヌクレオチド配列(配列番号43)をPCR増幅し、軽鎖を正確に有することが確認されているpGSベクター(Nhe I+Not I)に、in-fusion方法によって挿入し、VEGF-R988の軽鎖及び重鎖の両方を発現する正確なベクターを、シーケンシングによって確認した。これら発現ベクターは、選択マーカーとしてのGS遺伝子、並びに抗体軽鎖及び重鎖の発現エレメントを有する、真核性の発現ベクターである。これら発現ベクターをCHO-K1-GS-欠損細胞にトランスフェクトし、VEGF-H988高発現細胞系をMSXスクリーニングによって得た。抗体発現が高いクローンをELISAアッセイによって選択し、高発現細胞系を、細胞の増殖状態及び抗体薬のための重要な質的特徴の両方を考慮することによって選択した。無血清懸濁液培養を使用して、VEGF-H988を産生するCHO細胞系を培養して、純度及び質の高いVEGF-H988抗体を得た。
【0107】
(実施例3)
ヒト化抗体VEGF-H988の特徴解析
3.1 VEGF165へのヒト化抗体VEGF-H988の結合の特徴解析
3.1.1 ヒト化抗体VEGF-H988はVEGF165に特異的に結合する
異なる濃度の(0.15ng/mL、0.46ng/mL、1.37ng/mL、4.12ng/mL、12.35ng/mL、37.04ng/mL、111.11ng/mL、333.33ng/mL、1000ng/mL、及び3000ng/mL)組換えヒトVEGF165タンパク質(SinoBiological, Inc.社から入手した)を、100μL/ウェルで一晩、4℃で、96ウェルプレートに被覆した。翌日、プレートを洗浄し、室温で1時間遮断させた。100μLの、1μg/mLのVEGF165-H988、アバスチン(Roche社から入手した)、又はネガティブコントロール抗体H7N9-R1とそれぞれインキュベートした後、プレートを洗浄して未結合の抗体を除去し、次いで、ヤギF(ab')2抗ヒトIgG F(ab')2/HRP(Jackson ImmunoResearch Laboratories, Inc.社から入手した)とインキュベートし、繰り返し洗浄し、そして、色素生成性基質溶液を添加して発色させた。発色が止まった後、OD450を測定した。組換えヒトVEGF165タンパク質の濃度を水平座標として取り、OD450値を垂直座標として取って、graphPad Prism 6.0ソフトウェアを使用して「S」曲線チャートを当てはめ、組換えヒトVEGF165タンパク質への抗体の結合を解析した。
【0108】
図3に示す結果は、組換えヒトVEGF165に特異的に結合するヒト化分子VEGF165-H988のEC50値が2.42ng/mLであり、R2=0.999であること、組換えヒトVEGF165に結合するアバスチンのEC50値が2.77ng/mLであり、R2=1.000であることを示している。これは、VEGF165-H988の組換えヒトVEGF165タンパク質への結合能力がアバスチンのそれよりもわずかに良好であることを示している。ネガティブコントロール抗体H7N9-R1は、組換えヒトVEGF165タンパク質への結合能力を有さない。
【0109】
3.1.2 組換えVEGF165タンパク質に対するヒト化抗体VEGF-H988の結合親和性のアッセイ
VEGF165-H988及びアバスチン(Roche社から入手した)の親和性を、ストレプトアビジンで被覆されたセンサー及び固定されたビオチン標識VEGF165タンパク質を使用して、複数の濃度で測定した。
【0110】
組換えヒトVEGF165タンパク質をまず、以下のプロセスの通りに、1:2のモル比で、ビオチンで標識した:組換えVEGFタンパク質バッファー(20mMのTris、150mMのNaCl、pH8.0)を、5000MWの限外濾過遠沈管での限外濾過を介してPBSと置き換え、UV定量によって測定すると567.57μgのタンパク質が得られ、そして、得られたタンパク質を20mMのビオチン溶液と1:2のモル比で混合し、30分間、室温で、暗所でインキュベートし、次いで、5000MWの限外濾過遠沈管で再び濾過して、未標識のビオチンを除去した。UV定量した後、ビオチン標識タンパク質を、等容積のグリセロール及び最終濃度0.1%のBSAを添加することによって得た。UVによって検出したところ、VEGF165タンパク質の濃度は2.08mg/mLであった。
【0111】
次いで、異なる濃度のVEGF165-H988及びアバスチンの、ビオチン化された組換えヒトVEGFタンパク質との親和性を測定し、得られたKD値が最終親和性であった。
【0112】
Table 3(表7)に示す結果は、組換えヒトVEGF165タンパク質に対するVEGF165-H988の結合親和性KDの値が19.5pMであったこと、結合定数konの値が3.44E+05M-1s-1であったこと、及び解離定数kdisの値が6.70E-06s-1であったことを示している。Table 3(表7)に示すように、VEGFタンパク質へのアバスチンの結合親和性KDの値は29.2E-11pMであり、結合定数konの値は1.87E+05M-1s-1であり、解離定数kdisの値は5.46E-06s-1であった。この結果から、VEGF165-H988の親和性がアバスチンのそれよりわずかに高い、すなわちアバスチンの親和性の約1.5倍高いと結論付けることができる。
【0113】
【表7】
【0114】
3.1.3 ヒト化抗体VEGF165-H988の種間交差反応性の決定
組換えヒトVEGF165タンパク質又は組換えマウスmVEGF164タンパク質を0.1μg/mL、1μg/mL、及び10μg/mLまでそれぞれ希釈し、100μL/ウェルで一晩、4℃で、96ウェルプレートに被覆した。翌日、プレートを洗浄し、室温で1時間遮断させた。100μLのVEGF165-H988、アバスチン(Roche社から入手した)又はネガティブコントロール抗体H7N9-R1を1μg/mLの濃度でそれぞれ添加し、そして1時間インキュベートした。プレートを洗浄して未結合の抗体を除去した。プレートをヤギF(ab')2抗ヒトIgG F(ab')2/HRP(Jackson ImmunoResearch Laboratories, Inc.社)とインキュベートし、次いで、繰り返し洗浄し、そして色素生成性基質溶液を添加して発色させた。発色が止まった後、OD450を測定した。タンパク質濃度を水平座標として取り、OD450値を垂直座標として取って、graphPad Prism 6.0ソフトウェアを使用して棒チャートを作成した。
【0115】
図4に示す結果は、VEGF165-H988が組換えヒトVEGF165タンパク質に特異的に結合し、組換えマウスmVEGF164タンパク質との交差結合を示すことを示している。
【0116】
3.2 ヒト化抗体VEGF-H988の受容体遮断特性
1μg/mLの濃度のVEGF165タンパク質(SinoBiological, Inc.社から入手した)を、100μL/ウェルで一晩、4℃で、96ウェルプレートに被覆した。翌日、プレートを洗浄し、室温で1時間遮断させた。2μg/mLのVEGFR2-hisタンパク質(SinoBiological, Inc.社から入手した)100μLを各ウェルに添加し、異なる濃度の抗体VEGF-H988、EYLEA、アバスチン(Roche社から入手した)、又はネガティブコントロール抗体H7N9-R1をそれぞれ添加し、そして共インキュベートした。プレートを洗浄して未結合の抗体を除去した。プレートをC-his-R023/HRPとインキュベートし、次いで繰り返し洗浄し、そして、色素生成性基質溶液を添加して発色させた。発色が安定化した後、OD450を測定し、各群について2回ずつ試験した。抗体の濃度を水平座標として取り、阻害率PI%を垂直座標として取って、graphPad Prism 6.0ソフトウェアをデータ解析及び曲線チャートの作成に使用して、IC50値を計算した。阻害率(%)=(ODブランク-ODサンプル)/ODブランク×100%であり、式中、ODブランクは、VEGFR2-hisのみが添加され、ヒト抗体は添加されていないウェルのOD値を指し、ODサンプルは、VEGFR2-his及びヒト化抗体の両方が添加されたウェルのOD値を指す。
【0117】
図5に示すように、VEGFR2タンパク質は、被覆されたVEGF165タンパク質に効果的に結合し得、抗体VEGF-H988は、VEGFR165タンパク質へのVEGFR2タンパク質の結合を、EYLEAよりも比較的弱いがアバスチンよりも優れた阻害能力で、効果的に阻害し得、ネガティブコントロール抗体は、阻害効果を有さない。
【0118】
3.3 ヒト化抗体によるHUVEC細胞増殖の阻害
3.3.1 ヒト化抗体VEGF-H988による異なる濃度のVEGF165の中和効果
VEGF-H988の、VEGF165によって誘導されるHUVEC細胞増殖の中和効果を、WST-8法を使用することによって検出した。HUVEC細胞を、4×103個細胞/ウェルで96ウェルプレートに接種し、10%FBS及び5%L-Glnを含有するM199培地中で4時間培養し、次いで、異なる濃度のVEGF-H988、EYLEA、又はアバスチン(Roche社から入手した)を50μL/ウェルで添加し、次いで、最終濃度1000ng/mL、100ng/mL、又は10ng/mLのVEGF-165を10μL/ウェルで添加し、96ウェルプレートを、37℃、5%CO2の細胞インキュベーターで3日間インキュベートし、ブランクウェルB(細胞なし)、ネガティブコントロールM(細胞接種あり、抗体サンプルの添加なし、VEGF-165の添加あり)、及びM'(細胞接種あり、抗体サンプルの添加なし、及びVEGF-165の添加なし)を使用した。インキュベーション後、10μL/ウェルのWST-8色素生成溶液を添加し、96ウェルプレートをCO2インキュベーターでインキュベートして発色させ、発色が安定化した後、OD450及びOD630をマイクロプレートリーダーで測定した。各ウェルで、読み取り値は(OD450-OD630)であり、各群のOD値をその群の読み取り値マイナスブランクウェルBの読み取り値として定義して抗体の中和率を計算し、中和率%=(ネガティブコントロールMのOD値-サンプルのOD値)/(ネガティブコントロールMのOD値-M'のOD値)×100%であった。標準曲線を、抗体サンプル濃度を水平座標として取り、中和率を垂直座標として取って、統計ソフトウェアGraphPad Prismの自動解析機能を使用して計算し、4-パラメータロジスティック回帰方程式を使用して、標準的な「S」曲線を当てはめて、抗体サンプルの半数最大効果濃度(EC50)を計算した。
【0119】
図6及び図7に示すように、抗体VEGF-H988は、VEGF165のHUVEC増殖促進能力を効果的に低減させ得る。VEGF-H988の中和能力は、異なる濃度の組換えヒトVEGF165で、EYLEA及びアバスチンのそれよりも強力であった。また、中和能力の差は、VEGF165濃度が高いほど大きかった。VEGF165が高濃度である条件下では、VEGF-H988は低い中和EC50を依然として有し、最大中和率を依然として維持し得るが、EYLEA及びアバスチンの中和EC50は徐々に増大し、それに伴って、最大中和率が低下した。異なる濃度のVEGF165中和抗体の半数最大効果濃度(EC50)及び最大中和率をTable 4(表8)にまとめる。
【0120】
【表8】
【0121】
3.3.2 ヒト化抗体VEGF-H988による、様々なサブタイプのVEGFの中和効果
VEGF-H988の、様々なVEGFサブタイプ(VEGF165、VEGFC、及びVEGFD)によって誘導されるHUVEC細胞増殖の中和効果を、WST-8法を使用して検出した。HUVEC細胞を4×103個細胞/ウェルで96ウェルプレートに接種し、10%FBS及び5%L-Glnを含有するM199培地中で4時間培養し、次いで、異なる濃度のVEGF-H988又はアバスチン(Roche社から入手した)を50μL/ウェルで添加し、次いで、VEGF-165、VEGFC、及びVEGFD混合物(最終濃度はそれぞれ25ng/mL、1000ng/mL、6000ng/mLであった)を10μL/ウェルで添加し、96ウェルプレートを、37℃、5%CO2の細胞インキュベーターで3日間インキュベートし、そして、ブランクウェルB(細胞なし)、ネガティブコントロールM(細胞接種あり、抗体サンプルの添加なし、VEGFの添加あり)、及びM'(細胞接種あり、抗体サンプルなし、及びVEGFなし)を使用した。インキュベーション後、10μL/ウェルのWST-8色素生成溶液を添加し、96ウェルプレートをCO2インキュベーターでインキュベートして発色させ、発色が安定化した後、OD450及びOD630をマイクロプレートリーダーで測定した。各ウェルで、読み取り値は(OD450-OD630)であり、各群のOD値をその群の読み取り値マイナスブランクウェルBの読み取り値として定義して抗体の中和率を計算し、中和率%=(ネガティブコントロールMのOD値-サンプルのOD値)/(ネガティブコントロールMのOD値-M'のOD値)×100%であった。標準曲線を、抗体サンプル濃度を水平座標として取り、中和率を垂直座標として取って、統計ソフトウェアGraphPad Prismの自動解析機能を使用して計算し、4-パラメータロジスティック回帰方程式を使用して、標準的な「S」曲線を当てはめて、抗体サンプルの半数最大効果濃度(EC50)を計算した。
【0122】
図8に示すように、HUVEC細胞に同時に作用する様々なVEGFサブタイプ(VEGF165、VEGFC、VEGFD)のケースでは、抗体VEGF-H988は、アバスチンよりも強力な中和効果を有する。0.016~4.000nMの濃度範囲では、VEGF-H988はアバスチンよりも小さいEC50を有し、それぞれ0.26nM及び0.77nMであった。そして、VEGF-H988はアバスチンよりも高い中和率を有し、それぞれ86.1%及び58.5%であった。VEGF-H988及びアバスチンの、様々なVEGFサブタイプを中和する半数最大効果濃度(EC50)及び最大中和率をTable 5(表9)にまとめる。
【0123】
【表9】
【0124】
(実施例4)
マウスにおける抗体VEGF-H988の反復投与毒性研究
高齢群(35週齢)及び正常群(9週齢)のそれぞれにおいて8頭の、半分がオスで半分がメスの、CD-1マウスを使用した。マウスを完全ランダム化法に従って4つの群(G1~G4)に分け、各群、半分がオスで半分がメスの4頭のマウスであった。具体的なグループ化は以下の通りであった:G1:高齢マウス溶媒コントロール群、G2:高齢マウス研究群、G3:正常マウス溶媒コントロール群、G4:正常マウス研究群。VEGF-H988抗体を研究群に反復投与し、コントロール群には等容積の溶媒を投与した。用量は50mg/kgであり、各投与の容積はそれぞれ5mL/kg(1回目から8回目の投与)及び10mL/kg(9回目から16回目の投与)であった。投与態様は腹腔内注射であり、週に2回の頻度であった。薬物動態学的アッセイ及び免疫原性アッセイのために、全てのマウスで、初回投与の前、及び0.5時間後、2時間後、4時間後、6時間後、24時間後、48時間後、72時間後、並びに全ての他の投与の前及び1時間後に、眼窩血液採取を行った。マウスの体重を測定し、各投与の前に記録した。詳細な投与レジメンをTable 6(表10)に示す。
【0125】
【表10】
【0126】
抗体VEGF-H988群におけるマウスの体重は、対応する溶媒コントロール群の体重に類似しており、このことは、抗体VEGF-H988がマウスの体重に対する影響を有さなかったことを示している。研究の間、抗体VEGF-H988群において臨床的異常が観察された。全てのマウスで肉眼的な剖検を行い、組織及び器官において可視的な異常はなかった。組織病理学的検査は、全てのマウスが肝臓、肺、及び腎臓において静脈性うっ血を有していたが、コントロール群と研究群との間で有意差はなかったことを示した。わずかな個々のマウスが、脾臓におけるピンク色の漿液又は赤血球の停滞、及び腎臓における炎症性細胞浸潤を示していたが、これは、個体差であり薬物投与には関連しないとみなされた。初回投与の後のマウスの毒物動態学的パラメータを、Table 7(表11)にまとめる。
【0127】
【表11】
【0128】
図9図11の血中薬物濃度-時間曲線で示されるように、各群のオス動物とメス動物との間で血中濃度変化の傾向に有意差はなかった。両群において、複数の投与の後に有意な蓄積はなく、このことは、より高い用量を投与された群が飽和レベルに達していることに関連し得る。G2群(高齢)及びG4群(正常)におけるピーク血中濃度は基本的に同一であり、高齢群におけるトラフ濃度はわずかに低く、これは、群内での大きな個体差に関連し得る。
【0129】
各群のマウスは、投与の1時間後に血中薬物濃度の有意な増大を示さず、又は更にはある程度の低下を示したが、これは、免疫原性とあまり相関していなかった(免疫原性試験データについてのTable 8(表12)を参照されたい)。更に、投与の1時間後の異常な血中薬物濃度もまた、インビボでの薬物分布速度及び個体差に関連し得る。
【0130】
免疫原性試験の結果は対象の一部で陽性を示したが、SNRと閾値SCPとの間の差はわずかであり、実際のところこれらは非常に近く、したがって強力な陽性は示されておらず、前述の陽性の結果はおそらく偽陽性であったと考えられる。Table 8(表12)は、マウスにおける抗体VEGF-H988の反復投与の毒性研究の免疫原性の結果をまとめている。
【0131】
【表12】
【0132】
マウスにおける反復投与毒性試験は、抗体VEGF-H988を50mg/kgの用量で週に2回、腹腔内注射を介して高齢CD-1マウス及び正常CD-1マウスに16回反復投与した場合に有意な薬物関連毒性効果は見られなかったことを示した。
【0133】
(実施例5)
ヒト結腸直腸がん細胞系HCT-116異種移植片腫瘍モデルにおける有効性研究
メスBalb/c-nuヌードマウスは、Beijing Vital River Laboratory Animal Technology Co., Ltd.から入手した(Animal productionライセンス番号第SCXK(北京)2016-0006号、品質証明番号第11400700373019号)。HCT116腫瘍塊を、自社開発のHCT116細胞系を接種したマウスから得た。6週齢のメスのBalb/c-nuマウスにおよそ2×2×2(mm3)のサイズのHCT116腫瘍塊を皮下接種し、腫瘍容積がおよそ300mm3に達したら、群内のマウスに、1mg/kgのVEGF-H988又はアバスチン(SinoCelltech Co., Ltd.社から入手した)又は対応する溶媒をそれぞれ、週に2回、腹腔内注射で投与した。腫瘍容積を週に2回測定して、アバスチンと比較したVEGF-H988の抗腫瘍有効性を評価した。
【0134】
図12に示すように、約300mm3の、より大きな開始腫瘍容積及びより低い用量(1mg/kg)のケースでは、腫瘍増殖速度は、投与後7日目から、非投与コントロール群と比較して、VEGF-H988処置群において徐々に低減した。腫瘍増殖に対するアバスチンの阻害効果は、投与後11日目に始まり、これは、等用量のVEGF-H988で処置した群におけるよりも遅かった。HCT-116異種移植片腫瘍モデルにおける腫瘍阻害アッセイは、腫瘍増殖に対するVEGF-H988の阻害効果がアバスチンのそれよりも優れていることを示した。
【0135】
【表13A】
【0136】
【表13B】
【0137】
【表13C】
【0138】
【表13D】
【0139】
【表13E】
【0140】
【表13F】
【0141】
【表13G】
【0142】
【表13H】
【0143】
【表13I】
【0144】
【表13J】
【0145】
【表13K】
【0146】
【表13L】
【0147】
【表13M】
【0148】
【表13N】
【0149】
【表13O】
【0150】
【表13P】
【0151】
【表13Q】
【0152】
【表13R】
【0153】
【表13S】
【0154】
【表13T】
【0155】
【表13U】
【0156】
【表13V】
【0157】
【表13W】
【0158】
【表13X】
【0159】
【表13Y】
【0160】
【表13Z】
【0161】
【表13AA】
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
【配列表】
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