(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-19
(45)【発行日】2023-09-27
(54)【発明の名称】接着力および関連する引き剥がし応力を低減するための方法およびシステム
(51)【国際特許分類】
C09J 201/00 20060101AFI20230920BHJP
C09J 11/04 20060101ALI20230920BHJP
C09J 5/00 20060101ALI20230920BHJP
H01M 50/249 20210101ALI20230920BHJP
H01M 50/204 20210101ALI20230920BHJP
H01M 10/613 20140101ALI20230920BHJP
H01M 10/625 20140101ALI20230920BHJP
H01M 10/6556 20140101ALI20230920BHJP
【FI】
C09J201/00
C09J11/04
C09J5/00
H01M50/249
H01M50/204
H01M10/613
H01M10/625
H01M10/6556
(21)【出願番号】P 2022505587
(86)(22)【出願日】2020-07-31
(86)【国際出願番号】 US2020044432
(87)【国際公開番号】W WO2021022125
(87)【国際公開日】2021-02-04
【審査請求日】2022-01-27
(32)【優先日】2019-07-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】507381329
【氏名又は名称】ロード コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】フォーンズ,ティモシー
(72)【発明者】
【氏名】トリパティ,アヌロド
(72)【発明者】
【氏名】トンプソン,マイケル・シェーン
【審査官】上條 のぶよ
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/039584(WO,A1)
【文献】特開昭54-080383(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 201/00
C09J 11/04
C09J 5/00
H01M 50/249
H01M 50/204
H01M 10/613
H01M 10/625
H01M 10/6556
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の基板と第2の基板との分離中の引き剥がし応力を低減するために、前記第1の基板を前記第2の基板に接着結合するための方法であって、前記方法は、
前記第1の基板の結合エリアの第1の結合領域に、第1の接着剤を塗布することと、
前記第1の基板の前記結合エリアの第2の結合領域に、前記第1の接着剤の接着強度よりも低い接着強度を有する第2の接着剤を塗布することと、
前記第1の基板を前記第2の基板に押し付けることと、
前記第1の基板と前記第2の基板との間に、前記第1の接着剤および前記第2の接着剤を備える接着結合ラインを形成することとを備える、方法。
【請求項2】
前記結合エリアの前記第1の結合領域は、前記結合エリアの周囲であり、
前記結合エリアの前記第2の結合領域は、前記第1の結合領域によって形成される前記周囲内に位置し、前記周囲によって囲まれ、その結果、前記第2の接着剤は、前記周囲内の体積を少なくとも部分的に満たす、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第2の接着剤は、前記第2の結合領域における前記第1の基板と前記第2の基板との間の前記体積を完全に満たす、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記第1の接着剤は、前記結合エリアの前記周
囲に、連続的で途切れのない層を形成する、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記結合エリアの前記第2の結合領域は、前記結合エリアの周囲であり、
前記結合エリアの前記第1の結合領域は、前記第2の結合領域によって形成される前記周囲内に位置し、前記周囲によって囲まれ、その結果、前記第1の接着剤は、前記周囲内の体積を少なくとも部分的に満たす、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記第1の接着剤は、前記第1の結合領域における前記第1の基板と前記第2の基板との間の前記体積を完全に満たす、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記第2の接着剤は、前記結合エリアの前記周
囲に、連続的で途切れのない層を形成する、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記第1の接着剤および前記第2の接着剤は、同じ二成分接着剤配合物を備え、
前記第1の接着剤は、前記第2の接着剤とは異なるR:H(樹脂対硬化剤)比を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記第1の接着剤は、前記第2の接着剤よりも高い程度の架橋を有する、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記第2の接着剤は、非架橋材料を備える、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記架橋の程度が高いのは、前記R:H比が、前記第1の接着剤および前記第2の接着剤で異なるためである、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記第1の接着剤の前記R:H比
における硬化剤の割合は
、前記第2の接着剤の前記R:H比
における硬化剤の割合よりも
大きく、前記第2の接着剤の前記R:H比における樹脂の割合は、前記第1の接着剤のR:H比における樹脂の割合よりも大きい、請求項8に記載の方法。
【請求項13】
前記第1の接着剤および前記第2の接着剤のうちの少なくとも一方は、ウレタン、シリコン、アクリル、およびエポキシベースの材料のうちの少なくとも1つを備える、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記第1の基板は熱源を備え、前記第2の基板はヒートシンクを備えるか、または、
前記第2の基板は熱源を備え、前記第1の基板はヒートシンクを備える、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記熱源はバッテリモジュールを備え、および/または、前記ヒートシンクは冷却プレートを備える、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記バッテリモジュールは、電気自動車に電力を供給するように構成される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記熱源はマイクロプロセッサを備え、前記ヒートシンクは蓋および/またはヒートスプレッダを備える、請求項14に記載の方法。
【請求項18】
前記第1の接着剤および前記第2の接着剤のうちの少なくとも一方は、熱伝導性
である、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記第1の接着剤および前記第2の接着剤のうちの少なくとも一方は、熱伝導性ギャップ充填剤接着剤を備える、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
前記第1の接着剤および前記第2の接着剤によって形成される前記接着結合ラインを破壊することによって、前記第1の基板を前記第2の基板から分離することを備え、ここでは、前記第2の接着剤の接着強度が低いため、前記第1の基板と前記第2の基板とを分離するために必要とされる引き剥がし応力は、前記結合エリア全体が前記第1の接着剤で覆われている場合に、前記第1の基板と前記第2の基板とを分離するために必要とされる引き剥がし応力よりも小さい、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
前記第1の接着剤および前記第2の接着剤の前記接着強度は、前記第1の基板を前記第2の基板から分離するのに必要とされる前記引き剥がし応力と相関付けられる、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
光源に曝される前記第1の接着剤の少なくとも一部を解重合するために、紫外線(UV)光を備える前記光源を用いて、前記第1の接着剤の少なくとも一部を照射することを備え、その結果、前記第1の接着剤の前記接着強度は、前記光源に曝される前の前記第1の接着剤の前記接着強度と比較して減少する、請求項1に記載の方法。
【請求項23】
前記第1の接着剤および/または前記第2の接着剤が硬化された後、少なくとも前記第1の接着剤の前記接着強度を減少させるために、前記第1の接着剤および前記第2の接着剤を、所定の軟化温度を超える温度に曝すことを備え、前記第1の基板および前記第2の基板のうちの一方は、熱源を備え、前記軟化温度は、前記熱源の動作温度内にある、請求項1に記載の方法。
【請求項24】
第1の基板と第2の基板との分離中の引き剥がし応力を低減するために、前記第1の基板を前記第2の基板に接着結合するためのシステムであって、前記システムは、
前記第1の基板の結合エリアの第1の結合領域上に塗布される第1の接着剤と、
前記第1の基板の前記結合エリアの第2の結合領域上に塗布される、前記第1の接着剤の接着強度よりも低い接着強度を有する第2の接着剤とを備え、
前記第1の基板と前記第2の基板との間に前記第1の接着剤および前記第2の接着剤を備える接着結合ラインを形成するために、前記第1の基板および前記第2の基板が互いに押し付けられるように構成される、システム。
【請求項25】
前記結合エリアの前記第1の結合領域は、前記結合エリアの周囲であり、
前記結合エリアの前記第2の結合領域は、前記第1の結合領域によって形成される前記周囲内に位置し、前記周囲によって囲まれ、その結果、前記第2の接着剤は、前記周囲内の体積を少なくとも部分的に満たす、請求項24に記載のシステム。
【請求項26】
前記第2の接着剤は、前記第2の結合領域における前記第1の基板と前記第2の基板との間の前記体積を完全に満たす、請求項25に記載のシステム。
【請求項27】
前記第1の接着剤は、前記結合エリアの前記周
囲に、連続的で途切れのない層を形成する、請求項25に記載のシステム。
【請求項28】
前記結合エリアの前記第2の結合領域は、前記結合エリアの周囲であり、
前記結合エリアの前記第1の結合領域は、前記第2の結合領域によって形成される前記周囲内に位置し、前記周囲によって囲まれ、その結果、前記第1の接着剤は、前記周囲内の体積を少なくとも部分的に満たす、請求項24に記載のシステム。
【請求項29】
前記第1の接着剤は、前記第1の結合領域における前記第1の基板と前記第2の基板との間の前記体積を完全に満たす、請求項28に記載のシステム。
【請求項30】
前記第2の接着剤は、前記結合エリアの前記周
囲に、連続的で途切れのない層を形成する、請求項28に記載のシステム。
【請求項31】
前記第1の接着剤および前記第2の接着剤は、同じ二成分接着剤配合物を備え、
前記第1の接着剤は、前記第2の接着剤とは異なるR:H(樹脂対硬化剤)比を有する、請求項24に記載のシステム。
【請求項32】
前記第1の接着剤は、前記第2の接着剤よりも高い程度の架橋を有する、請求項31に記載のシステム。
【請求項33】
前記第2の接着剤は、非架橋材料を備える、請求項32に記載のシステム。
【請求項34】
前記架橋の程度が高いのは、前記R:H比が前記第1の接着剤および前記第2の接着剤で異なるためである、請求項32に記載のシステム。
【請求項35】
前記第1の接着剤の前記R:H比
における硬化剤の割合は
、前記第2の接着剤の前記R:H比
における硬化剤の割合よりも
大きく、前記第2の接着剤の前記R:H比における樹脂の割合は、前記第1の接着剤のR:H比における樹脂の割合よりも大きい、請求項31に記載のシステム。
【請求項36】
前記第1の接着剤および前記第2の接着剤のうちの少なくとも一方は、ウレタン、シリコン、アクリル、およびエポキシベースの材料のうちの少なくとも1つを備える、請求項24に記載のシステム。
【請求項37】
前記第1の基板は熱源を備え、前記第2の基板はヒートシンクを備えるか、または、
前記第2の基板は熱源を備え、前記第1の基板はヒートシンクを備える、請求項24に記載のシステム。
【請求項38】
前記熱源はバッテリモジュールを備え、および/または、前記ヒートシンクは冷却プレートを備える、請求項37に記載のシステム。
【請求項39】
前記バッテリモジュールは、電気自動車に電力を供給するように構成される、請求項38に記載のシステム。
【請求項40】
前記熱源はマイクロプロセッサを備え、前記ヒートシンクは蓋および/またはヒートスプレッダを備える、請求項37に記載のシステム。
【請求項41】
前記第1の接着剤および前記第2の接着剤のうちの少なくとも一方は、熱伝導性
である、請求項24に記載のシステム。
【請求項42】
前記第1の接着剤および前記第2の接着剤のうちの少なくとも一方は、熱伝導性ギャップ充填剤接着剤を備える、請求項24に記載のシステム。
【請求項43】
前記システムは、前記第1の接着剤および前記第2の接着剤によって形成された前記接着結合ラインを破壊することによって、前記第1の基板を前記第2の基板から分離するように構成され、
前記第2の接着剤の接着強度が低いため、前記第1の基板と前記第2の基板とを分離するために必要とされる引き剥がし応力は、前記結合エリア全体が前記第1の接着剤で覆われている場合に、前記第1の基板と前記第2の基板とを分離するために必要とされる引き剥がし応力よりも小さい、請求項24に記載のシステム。
【請求項44】
前記第1の接着剤および前記第2の接着剤の前記接着強度は、前記第1の基板を前記第2の基板から分離するのに必要とされる前記引き剥がし応力と相関付けられる、請求項37に記載のシステム。
【請求項45】
前記第1の接着剤の少なくとも一部は、紫外線(UV)光を備える光源を用いて照射されると、前記光源に曝される前記第1の接着剤の少なくとも一部を解重合するように構成され、その結果、前記第1の接着剤の前記接着強度は、前記光源に曝される前の前記第1の接着剤の前記接着強度と比較して減少する、請求項24に記載のシステム。
【請求項46】
前記システムは、前記第1の接着剤および/または前記第2の接着剤が硬化された後、所定の軟化温度を超える温度に曝されたときに、少なくとも前記第1の接着剤の前記接着強度を減少させるように構成され、
前記第1の基板および前記第2の基板のうちの一方は、熱源を備え、
前記軟化温度は、前記熱源の動作温度内にある、請求項24に記載のシステム。
【請求項47】
第1の基板と第2の基板との分離中の引き剥がし応力を低減するために、前記第1の基板を前記第2の基板に接着結合するための方法であって、前記方法は、
前記第1の基板の結合エリアに、第1の接着剤を塗布することと、
前記第1の基板の前記結合エリアに、第2の接着剤を塗布することと、
前記第1の基板を前記第2の基板に押し付けることと、
前記第1の基板と前記第2の基板との間に前記第1の接着剤および前記第2の接着剤を備える接着結合ラインを形成することとを備え、
前記接着結合ラインの接着強度は、前記第1の接着剤のみまたは前記第2の接着剤のみから完全に形成された接着結合ラインの接着強度よりも低い、方法。
【請求項48】
前記第1の接着剤および前記第2の接着剤は、実質的に同様の接着強度を有する、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
前記第1の基板が前記第2の基板に押し付けられたときに、前記第1の接着剤および前記第2の接着剤は、少なくとも部分的にともに混合される、請求項47に記載の方法。
【請求項50】
前記第1の接着剤および前記第2の接着剤によって形成された前記接着結合ラインを破壊することによって、前記第1の基板を前記第2の基板から分離することを備え、前記接着結合ラインの前記接着強度は、全体が前記第1の接着剤のみから、または前記第2の接着剤のみから形成されている接着結合ラインの接着強度よりも低いので、前記第1の基板と前記第2の基板とを分離するために必要とされる引き剥がし応力は、前記結合エリア全体が前記第1の接着剤のみで覆われている場合、または前記第2の接着剤のみで覆われている場合に、前記第1の基板と前記第2の基板とを分離するために必要とされる引き剥がし応力よりも小さい、請求項47に記載の方法。
【請求項51】
第1の基板と第2の基板との分離中の引き剥がし応力を低減するために、前記第1の基板を前記第2の基板に接着結合するためのシステムであって、前記システムは、
前記第1の基板の結合エリア上に塗布された第1の接着剤と、
前記第1の基板の前記結合エリア上に塗布された第2の接着剤とを備え、
前記システムは、前記第1の基板と前記第2の基板とが互いに押し付けられると、前記第1の接着剤および前記第2の接着剤を備える接着結合ラインが、前記第1の基板と前記第2の基板との間に形成されるように構成され、
前記接着結合ラインの接着強度は、前記第1の接着剤のみまたは前記第2の接着剤のみから全体が形成された接着結合ラインの接着強度よりも低い、システム。
【請求項52】
前記第1の接着剤および前記第2の接着剤は、実質的に同様の接着強度を有する、請求項51に記載のシステム。
【請求項53】
前記第1の基板が前記第2の基板に押し付けられたときに、前記第1の接着剤および前記第2の接着剤が、少なくとも部分的にともに混合される、請求項51に記載のシステム。
【請求項54】
前記システムは、前記第1の接着剤および前記第2の接着剤によって形成された前記接着結合ラインを破壊することによって、前記第1の基板を前記第2の基板から分離するように構成され、
前記接着結合ラインの前記接着強度は、全体が前記第1の接着剤のみから、または前記第2の接着剤のみから形成されている接着結合ラインの接着強度よりも低いので、前記第1の基板と前記第2の基板とを分離するために必要とされる引き剥がし応力は、前記結合エリア全体が前記第1の接着剤のみで覆われている場合、または前記第2の接着剤のみで覆われている場合に、前記第1の基板と前記第2の基板とを分離するために必要とされる引き剥がし応力よりも小さい、請求項51に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願への相互参照)
この出願は、2019年7月31日に出願された米国仮特許出願第62/880,701号の利益および優先権を主張し、その開示は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
本明細書で開示される主題は、接着剤で結合された基板の引き剥がし応力を低減するための方法およびシステムに関する。
【背景技術】
【0003】
接着剤で結合された基板の除去は、一般に、溶媒、熱、および/または大きな機械的力の使用を必要とする。しかしながら、電子車両におけるバッテリアセンブリなどの特定の用途では、設計上の制約(たとえば、アクセスできない結合ライン)および/または安全上の考慮事項(たとえば、バッテリアセンブリおよび/またはそのようなバッテリアセンブリ内のバッテリセルに対する物理的な変形および/または損傷)のいずれかによって、そのようなアプローチを使用することはできない。実際、バッテリアセンブリの表面から接着剤を除去するために現在利用されている技法は、少なくともいくつかの事例において、そのようなバッテリアセンブリに不可逆的に損傷を与えることが知られている。半導体用途の場合、接着剤または熱界面材料は、接着剤の強度が高く、損傷する傾向があるため、たとえば、シリコンダイまたはマイクロプロセッサのような部品の使用を禁止している。さらに、そのような接着剤は、接着剤/TIMと基板との間の熱膨張係数の違いにより、応力を吸収して部品の反りを低減するために必要な低弾性率を欠いていることがよくある。それに加えて、特定の用途の性能要件では、従来のイソシアネート含有ウレタン接着剤などの有毒な接着剤を使用する必要がある。バッテリアセンブリで一般的に利用されているような、そのような接着剤で結合された基板の、制限された保守性/再加工性、性能、および/または毒性は、接着剤で結合された表面の分離中に誘発される引き剥がし応力を低減する、安全で実用的な方法の緊急の必要性を明確に示している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示の主題は、環境的なサイクルを通じて、アセンブリの設計に変更を加えることなく、接着剤の配合物に変更があったとしても変更を最小限に抑えながら、従来の既知の方法と比較して、引き剥がし応力(たとえば、接着強度に直接相関する、2つの接着結合された基板の分離中に誘発される応力)を少なくとも20%低減する方法を備える。いくつかの実施形態では、方法は、2つの接着結合された基板の分離中の引き剥がし応力を、たとえば、少なくとも25%、少なくとも50%、少なくとも75%、または80%以上低減することができる。さらに、方法は、既存の産業設定を使用して展開可能である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
例示的な実施形態では、第1の基板と第2の基板との分離中の引き剥がし応力を低減するために、第1の基板を第2の基板に接着結合するための方法が提供され、方法は、第1の基板の結合エリアの第1の結合領域に、第1の接着剤を塗布することと、第1の基板の結合エリアの第2の結合領域に、第1の接着剤の接着強度よりも低い接着強度を有する第2の接着剤を塗布することと、第1の基板を第2の基板に押し付けることと、第1の基板と第2の基板との間に、第1の接着剤および第2の接着剤を備える接着結合ラインを形成することとを備える。
【0006】
いくつかの実施形態では、接着結合ラインは、少なくとも部分的に、第1の接着剤および/または第2の接着剤を所定の期間硬化させることによって形成される。
【0007】
方法のいくつかの実施形態では、結合エリアの第1の結合領域は、結合エリアの周囲であり、結合エリアの第2の結合領域は、第1の結合領域によって形成される周囲内に位置し、周囲によって囲まれ、その結果、第2の接着剤は、周囲内の体積を少なくとも部分的に満たす。
【0008】
方法のいくつかの実施形態では、第2の接着剤は、第2の結合領域における第1の基板と第2の基板との間の体積を完全に満たす。
【0009】
方法のいくつかの実施形態では、第1の接着剤は、結合エリアの周囲の周りに、連続的で途切れのない層を形成する。
【0010】
方法のいくつかの実施形態では、結合エリアの第2の結合領域は、結合エリアの周囲であり、結合エリアの第1の結合領域は、第2の結合領域によって形成される周囲内に位置し、周囲によって囲まれ、その結果、第1の接着剤は、周囲内の体積を少なくとも部分的に満たす。
【0011】
方法のいくつかの実施形態では、第1の接着剤は、第1の結合領域における第1の基板と第2の基板との間の体積を完全に満たす。
【0012】
方法のいくつかの実施形態では、第2の接着剤は、結合エリアの周囲の周りに、連続的で途切れのない層を形成する。
【0013】
方法のいくつかの実施形態では、第1の接着剤および第2の接着剤は、同じ二成分接着剤配合物を備え、第1の接着剤は、第2の接着剤とは異なるR:H(樹脂対硬化剤)比を有する。
【0014】
方法のいくつかの実施形態では、第1の接着剤は、第2の接着剤よりも高い程度の架橋を有する。
【0015】
方法のいくつかの実施形態では、第2の接着剤は、非架橋材料を備える。
【0016】
方法のいくつかの実施形態では、架橋の程度が高いのは、R:H比が第1の接着剤および第2の接着剤で異なるためである。
【0017】
方法のいくつかの実施形態では、第1の接着剤のR:H比は、第1の接着剤のR:H比よりも比較的大きな割合の樹脂を備える第2の接着剤のR:H比よりも、比較的大きな割合の硬化剤を備える。
【0018】
方法のいくつかの実施形態では、第1の接着剤および第2の接着剤のうちの少なくとも一方は、ウレタン、シリコン、アクリル、およびエポキシベースの材料のうちの少なくとも1つを備える。
【0019】
方法のいくつかの実施形態では、第1の基板は熱源を備え、第2の基板はヒートシンクを備えるか、または、第2の基板は熱源を備え、第1の基板はヒートシンクを備える。
【0020】
方法のいくつかの実施形態では、熱源はバッテリモジュールを備え、および/または、ヒートシンクは冷却プレートを備える。
【0021】
方法のいくつかの実施形態では、バッテリモジュールは、電気自動車に電力を供給するように構成される。
【0022】
方法のいくつかの実施形態では、熱源はマイクロプロセッサを備え、ヒートシンクは蓋および/またはヒートスプレッダを備える。
【0023】
方法のいくつかの実施形態では、第1の接着剤および第2の接着剤のうちの少なくとも一方は、熱伝導性充填樹脂組成を備える。
【0024】
方法のいくつかの実施形態では、第1の接着剤および第2の接着剤のうちの少なくとも一方は、熱伝導性ギャップ充填剤接着剤を備える。
【0025】
いくつかの実施形態では、方法は、第1の接着剤および第2の接着剤によって形成される接着結合ラインを破壊することによって第1の基板を第2の基板から分離することを備え、ここでは、第2の接着剤の接着強度が低いため、第1の基板と第2の基板とを分離するために必要とされる引き剥がし応力は、結合エリア全体が第1の接着剤で覆われている場合に、第1の基板と第2の基板とを分離するために必要とされる引き剥がし応力よりも小さい。
【0026】
方法のいくつかの実施形態では、第1の接着剤および第2の接着剤の接着強度は、第1の基板を第2の基板から分離するのに必要とされる引き剥がし応力と相関付けられる(たとえば、直接相関付けられる)。
【0027】
いくつかの実施形態では、方法は、光源に曝される第1の接着剤の少なくとも一部を解重合するために、紫外線(UV)光を備える光源を用いて、第1の接着剤の少なくとも一部を照射することを備え、その結果、第1の接着剤の接着強度は、光源に曝される前の第1の接着剤の接着強度と比較して減少する。
【0028】
いくつかの実施形態では、方法は、第1の接着剤および/または第2の接着剤が硬化された後、少なくとも第1の接着剤の接着強度を減少させるために、第1の接着剤および第2の接着剤を、所定の軟化温度を超える温度に曝すことを備え、第1の基板および第2の基板のうちの一方は、熱源を備え、軟化温度は、熱源の動作温度内にある。
【0029】
いくつかの実施形態では、少なくとも第1の結合領域における接着剤は、紫外線を用いた照射によって硬化される接着剤である。
【0030】
方法のいくつかの実施形態では、第1の結合領域における接着剤、および第2の結合領域における接着剤は、同等の接着強度を有するが、(たとえば、第1の結合領域と第2の結合領域との間の領域で)ともに混合されると、接着剤の接着強度を低くしたり、高くしたりする。
【0031】
方法のいくつかの実施形態では、結合エリア全体にわたる引き剥がし応力は、単一の接着剤が同じ領域上に(たとえば、第1の結合領域および第2の結合領域の両方にわたって)塗布された場合、優勢となる引き剥がし応力と比較して、少なくとも50%低減される。
【0032】
方法のいくつかの実施形態では、第1の結合エリアにおける接着剤および第2の結合エリアにおける接着剤は、異なる一成分接着剤または二成分接着剤(たとえば、ギャップ充填剤)である。
【0033】
方法のいくつかの実施形態では、第1の結合領域および/または第2の結合領域における接着剤は、溶媒が塗布された(たとえば、直接塗布された)ときに膨張するように構成される。
【0034】
別の例示的な実施形態では、第1の基板と第2の基板との分離中の引き剥がし応力を低減するために、第1の基板を第2の基板に接着結合するためのシステムが提供され、システムは、第1の基板の結合エリアの第1の結合領域上に塗布される第1の接着剤と、第1の基板の結合エリアの第2の結合領域上に塗布される、第1の接着剤の接着強度よりも低い接着強度を有する第2の接着剤とを備え、システムは、第1の基板と第2の基板との間に第1の接着剤および第2の接着剤を備える接着結合ラインを形成するために、第1の基板および第2の基板が互いに押し付けられるように構成される。
【0035】
いくつかの実施形態では、接着結合ラインは、少なくとも部分的に、第1の接着剤および/または第2の接着剤を所定の期間硬化させることによって形成される。
【0036】
システムのいくつかの実施形態では、結合エリアの第1の結合領域は、結合エリアの周囲であり、結合エリアの第2の結合領域は、第1の結合領域によって形成される周囲内に位置し、周囲によって囲まれ、その結果、第2の接着剤は、周囲内の体積を少なくとも部分的に満たす。
【0037】
システムのいくつかの実施形態では、第2の接着剤は、第2の結合領域における第1の基板と第2の基板との間の体積を完全に満たす。
【0038】
システムのいくつかの実施形態では、第1の接着剤は、結合エリアの周囲の周りに、連続的で途切れのない層を形成する。
【0039】
システムのいくつかの実施形態では、結合エリアの第2の結合領域は、結合エリアの周囲であり、結合エリアの第1の結合領域は、第2の結合領域によって形成される周囲内に位置し、周囲によって囲まれ、その結果、第1の接着剤は、周囲内の体積を少なくとも部分的に満たす。
【0040】
システムのいくつかの実施形態では、第1の接着剤は、第1の結合領域における第1の基板と第2の基板との間の体積を完全に満たす。
【0041】
システムのいくつかの実施形態では、第2の接着剤は、結合エリアの周囲の周りに、連続的で途切れのない層を形成する。
【0042】
システムのいくつかの実施形態では、第1の接着剤および第2の接着剤は、同じ二成分接着剤配合物を備え、第1の接着剤は、第2の接着剤とは異なるR:H(樹脂対硬化剤)比を有する。
【0043】
システムのいくつかの実施形態では、第1の接着剤は、第2の接着剤よりも高い程度の架橋を有する。
【0044】
システムのいくつかの実施形態では、第2の接着剤は、非架橋材料を備える。
【0045】
システムのいくつかの実施形態では、架橋の程度が高いのは、R:H比が第1の接着剤および第2の接着剤で異なるためである。
【0046】
システムのいくつかの実施形態では、第1の接着剤のR:H比は、第1の接着剤のR:H比よりも比較的大きな割合の樹脂を備える第2の接着剤のR:H比よりも、比較的大きな割合の硬化剤を備える。
【0047】
システムのいくつかの実施形態では、第1の接着剤および第2の接着剤のうちの少なくとも一方は、ウレタン、シリコン、アクリル、およびエポキシベースの材料のうちの少なくとも1つを備える。
【0048】
システムのいくつかの実施形態では、第1の基板は熱源を備え、第2の基板はヒートシンクを備えるか、または、第2の基板は熱源を備え、第1の基板はヒートシンクを備える。
【0049】
システムのいくつかの実施形態では、熱源はバッテリモジュールを備え、および/または、ヒートシンクは冷却プレートを備える。
【0050】
システムのいくつかの実施形態では、バッテリモジュールは、電気自動車に電力を供給するように構成される。
【0051】
システムのいくつかの実施形態では、熱源はマイクロプロセッサを備え、ヒートシンクは蓋および/またはヒートスプレッダを備える。
【0052】
システムのいくつかの実施形態では、第1の接着剤および第2の接着剤のうちの少なくとも一方は、熱伝導性充填樹脂組成を備える。
【0053】
システムのいくつかの実施形態では、第1の接着剤および第2の接着剤のうちの少なくとも一方は、熱伝導性ギャップ充填剤接着剤を備える。
【0054】
システムのいくつかの実施形態では、システムは、第1の接着剤および第2の接着剤によって形成された接着結合ラインを破壊することによって、第1の基板を第2の基板から分離するように構成され、第2の接着剤の接着強度が低いため、第1の基板と第2の基板とを分離するために必要とされる引き剥がし応力は、結合エリア全体が第1の接着剤で覆われている場合に、第1の基板と第2の基板とを分離するために必要とされる引き剥がし応力よりも小さい。
【0055】
システムのいくつかの実施形態では、第1の接着剤および第2の接着剤の接着強度は、第1の基板を第2の基板から分離するのに必要とされる引き剥がし応力と相関付けられる。
【0056】
システムのいくつかの実施形態では、第1の接着剤の少なくとも一部は、紫外線(UV)光を備える光源を用いて照射されると、光源に曝される第1の接着剤の少なくとも一部を解重合するように構成され、その結果、第1の接着剤の接着強度は、光源に曝される前の第1の接着剤の接着強度と比較して減少する。
【0057】
システムのいくつかの実施形態では、システムは、第1の接着剤および/または第2の接着剤が硬化された後、所定の軟化温度を超える温度に曝されたときに、少なくとも第1の接着剤の接着強度を減少させるように構成され、第1の基板および第2の基板のうちの一方は、熱源を備え、軟化温度は、熱源の動作温度内にある。
【0058】
システムのいくつかの実施形態では、第1の結合領域における接着剤、および第2の結合領域における接着剤は、同等の接着強度を有するが、(たとえば、第1の結合領域と第2の結合領域との間の領域で)ともに混合されると、接着剤の接着強度を低くしたり高くしたりする。
【0059】
システムのいくつかの実施形態では、結合エリア全体にわたる引き剥がし応力は、単一の接着剤が同じ領域上に(たとえば、第1の結合領域および第2の結合領域の両方にわたって)塗布された場合、優勢となる引き剥がし応力と比較して、少なくとも50%低減される。
【0060】
システムのいくつかの実施形態では、第1の結合エリアにおける接着剤および第2の結合エリアにおける接着剤は、異なる一成分または二成分接着剤(たとえば、ギャップ充填剤)である。
【0061】
システムのいくつかの実施形態では、第1の結合領域および/または第2の結合領域における接着剤は、溶媒が塗布された(たとえば、直接塗布された)ときに膨張するように構成される。
【0062】
別の例示的な実施形態では、第1の基板と第2の基板との分離中の引き剥がし応力を低減するために、第1の基板を第2の基板に接着結合するための方法が提供され、方法は、第1の基板の結合エリアに第1の接着剤を塗布することと、第1の基板の結合エリアに第2の接着剤を塗布することと、第1の基板を第2の基板に押し付けることと、第1の基板と第2の基板との間に第1の接着剤および第2の接着剤を備える接着結合ラインを形成することとを備え、接着結合ラインの接着強度は、第1の接着剤のみまたは第2の接着剤のみから完全に形成された接着結合ラインの接着強度よりも低い。
【0063】
方法のいくつかの実施形態では、第1の接着剤および第2の接着剤は、実質的に同様の接着強度を有する。
【0064】
方法のいくつかの実施形態では、第1の基板が第2の基板に押し付けられたときに、第1の接着剤および第2の接着剤は、少なくとも部分的にともに混合される。
【0065】
いくつかの実施形態では、方法は、第1の接着剤および第2の接着剤によって形成された接着結合ラインを破壊することによって、第1の基板を第2の基板から分離することを備え、接着結合ラインの接着強度は、全体が第1の接着剤のみから、または第2の接着剤のみから形成されている接着結合ラインの接着強度よりも低いので、第1の基板と第2の基板とを分離するために必要とされる引き剥がし応力は、結合エリア全体が第1の接着剤のみで覆われている場合、または第2の接着剤のみで覆われている場合に、第1の基板と第2の基板とを分離するために必要とされる引き剥がし応力よりも小さい。
【0066】
別の例示的な実施形態では、第1の基板と第2の基板との分離中の引き剥がし応力を低減するために第1の基板を第2の基板に接着結合するためのシステムが提供され、システムは、第1の基板の結合エリア上に塗布された第1の接着剤と、第1の基板の結合エリア上に塗布された第2の接着剤とを備え、システムは、第1の基板と第2の基板とが互いに押し付けられると、第1の接着剤および第2の接着剤を備える接着結合ラインが、第1の基板と第2の基板との間に形成されるように構成され、接着結合ラインの接着強度は、第1の接着剤のみまたは第2の接着剤のみから全体が形成された接着結合ラインの接着強度よりも低い。
【0067】
システムのいくつかの実施形態では、第1の接着剤および第2の接着剤は、実質的に同様の接着強度を有する。
【0068】
システムのいくつかの実施形態では、第1の基板が第2の基板に押し付けられたときに、第1の接着剤および第2の接着剤が、少なくとも部分的にともに混合される。
【0069】
システムのいくつかの実施形態では、システムは、第1の接着剤および第2の接着剤によって形成された接着結合ラインを破壊することによって、第1の基板を第2の基板から分離するように構成され、接着結合ラインの接着強度は、全体が第1の接着剤のみから、または第2の接着剤のみから形成されている接着結合ラインの接着強度よりも低いので、第1の基板と第2の基板とを分離するために必要とされる引き剥がし応力は、結合エリア全体が第1の接着剤のみで覆われている場合、または第2の接着剤のみで覆われている場合に、第1の基板と第2の基板とを分離するために必要とされる引き剥がし応力よりも小さい。
【0070】
本明細書で使用される場合、「接着剤」という用語は、少なくとも2つの基板を機械的および/または熱的に結合する(たとえば、おのおのと直接接触するなどして接続する)ために使用される架橋または非架橋材料を指すために使用できる。そのため、本明細書で言及される任意のすべての「接着剤」は、任意の結合剤、化合物、および/または材料と、結合剤、化合物、および/または材料と、熱硬化性剤、化合物、および/または材料と、接着剤、化合物、材料、および/または複合材料と、熱可塑性剤、化合物、および/または材料と、ホットメルト接着剤、化合物、および/または材料と、交配剤、化合物、および/または材料と、構造用接着剤、化合物、および/または材料と、シーラント剤、化合物、および/または材料と、接着フィルムと、界面材料と、界面パッドと、グリースとを含むことができるが、必ずしもこれらに限定されない。前述の列挙はさらに、おのおのの熱伝導性バージョンを含む。本明細書で使用される場合、「熱伝導性」という用語は、例として、限定されないが、少なくとも1.0ワット/メートルケルビン(W/mK)、好ましくは少なくとも2.0W/mK、少なくとも3.0W/mK、少なくとも4.0W/mK、少なくとも5.0W/mK、または少なくとも6.0W/mKの熱伝導率を有する物質を指す。さらに、「熱伝導性」という用語は、(たとえば、熱伝達を阻害することによって温度勾配を維持するために一般的に使用される)断熱材であると当業者が結論付ける材料を含まない。
【0071】
本明細書で使用される場合、「樹脂」および「硬化剤」という用語は、二成分系の部分成分(たとえば、接着剤であり得る二成分材料または化合物)を指すために使用され、部分成分を混合すると、二成分系が硬化する。
【0072】
本明細書で使用される場合、ギャップ充填剤という用語は、ともに結合される2つ以上の基板間のギャップを埋め、また2つ以上の基板間に接着結合を形成する接着剤として意図される。しかしながら、いくつかの事例では、「ギャップ充填剤」および「接着剤」という用語は、置換可能に使用され得る。
【0073】
本明細書で開示される例示的な方法およびシステムは、使用中のバッテリアセンブリへの損傷を大幅に低減すると同時に、従来の(たとえば、接着結合ラインの断面全体で連続的なR:H比を有する)パターン化されていない熱伝導性接着剤と比較して、使用中の信頼できる熱的性能を可能にする。本明細書では、シリコンベースのギャップ充填剤を用いて実証されているが、本明細書で開示される例示的な方法は、ウレタン(ポリオール/イソシアネート)、エポキシなどの代替のギャップ充填剤化学物質に適用可能である。本発明の実施形態では、本明細書で開示される方法は、結合エリアの第2の結合領域に塗布された接着剤におけるものとは異なる、結合エリアの第1の結合領域に塗布された接着剤における二成分の異なる比率を使用することによって、第1の接着剤および第2の接着剤のために任意の二成分接着剤を使用することを備える。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【
図1】
図1は、Tバー構造の表面上に塗布された接着剤の斜視図である。
【
図2】
図2は、
図1のTバー構造の表面に例示的なパターンで塗布された接着剤の底面図である。
【
図3】
図3は、画定された第1の結合領域および第2の結合領域を中に有する結合エリアの概略図である。
【
図4】
図4は、第1のTバー構造と第2のTバー構造との分離中に、これらTバー構造に加えられる引き剥がし力を測定するために、
図1に示すtバー構造が、第2のTバー構造の表面に結合された試験装置の斜視図である。
【
図5】
図5は、接着材料の様々な配合物および/または構成についての引き剥がし応力を測定するための経験的試験の結果を示す表である。
【
図6A】
図6Aは、
図4に示されるTバー構造間の結合面における接着材料の様々な配合物および/または構成の残存物を示す図である。
【
図6B】
図6Bは、
図4に示されるTバー構造間の結合面における接着材料の様々な配合物および/または構成の残存物を示す図である。
【
図6C】
図6Cは、
図4に示されるTバー構造間の結合面における接着材料の様々な配合物および/または構成の残存物を示す図である。
【
図6D】
図6Dは、
図4に示されるTバー構造間の結合面における接着材料の様々な配合物および/または構成の残存物を示す図である。
【
図7】
図7は、接着材料を周期的に加熱および冷却するように構成された加熱装置の例示的な実施形態の斜視図である。
【
図8】
図8は、
図7に示される加熱装置において1000回の加熱/冷却サイクルを受けた後の接着剤の残存物を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0075】
本明細書で開示される第1の例示的な実施形態では、少なくとも2つの基板間に接着結合を形成するための方法が提供され、基板が互いに分離される際に、基板を分離するために必要とされる引き剥がし応力(たとえば、結合表面積によって除された除去力として定義される)を低減する。方法は、結合エリア上に基板を接着結合することを備え、第1の結合領域は、第2の結合領域上に塗布される第2の接着剤とは異なる第1の接着剤を有し、第2の結合領域における第2の接着剤は、第1の結合領域における第1の接着剤の接着強度よりも低い接着強度を有する。本明細書で使用される場合、接着強度は、接着剤で結合された基板を分離するために必要とされる引き剥がし力と(たとえば、直接的に)相関付けられ、これは、高い接着強度を有する接着剤は、低い接着強度を有する接着剤で接着された基材を分離するのに必要な力よりも、接着剤で結合された基材を分離するために、より大きな引き剥がし力を必要とすることを意味する。いくつかの実施形態では、第1の接着剤および第2の接着剤は、同じ構成成分から構成されるが、異なる比率で混合される。いくつかの実施形態では、第1の接着剤および第2の接着剤は、異なる接着剤であり、異なる化学組成および/または分子組成を有する。
【0076】
第1の接着剤は、第1の基板の結合エリアの第1の結合領域に、および/または、その上に(たとえば、直接的に)塗布される。第2の接着剤は、第1の基板の結合エリアの第2の結合領域に、および/または、その上に(たとえば、直接的に)塗布される。第1の結合領域および第2の結合領域は、全体として、第1の基板および/または第2の基板の結合エリアの総表面積と同じか、またはそれより小さくすることができる。いくつかの実施形態では、第2の接着剤が第2の接着領域に塗布される前に、第1の接着剤が第1の接着領域に塗布される。いくつかの実施形態では、第1の接着剤が第1の接着領域に塗布される前に、第2の接着剤が第2の接着領域に塗布される。
【0077】
第2の接着剤は、第1の接着剤よりも低い接着強度を有する一方で、基板間の接触を維持し、また第2の接着剤が上に塗布される第2の接着領域に対応する基板間の体積の一部を実質的に(たとえば、少なくとも75%以上、少なくとも80%以上、少なくとも90%以上、少なくとも95%以上、または少なくとも99%以上)充填するのに十分な接着を提供する。第1の接着剤および第2の接着剤の組み合わされた接着強度は、結合された基板が、機械的および環境的影響を受ける(たとえば、使用中に入力として受け取る)ときに2つの基板間の接着結合を維持するのに十分な接着強度を提供する。
【0078】
いくつかの実施形態では、第1の接着剤および第2の接着剤は、異なる基板に塗布することができ、その結果、たとえば、第1の接着剤は、第1の基板または第2の基板における第1の結合領域に、および/または、上に塗布され、第2の接着剤は、第1の接着剤が塗布されていない第2の基板または第1の基板のいずれかの第2の結合領域に、および/または、上に塗布される。
【0079】
いくつかの実施形態では、第1の接着剤および第2の接着剤は、同じ二成分接着剤配合物を備えるが、硬化剤(H)に対する樹脂(R)の異なる比率で混合される。本明細書で使用される「二成分接着剤配合物」という用語は、第1の接着剤および第2の接着剤がおのおの同じ樹脂および同じ硬化剤を使用するが、第1の接着剤におけるR:H比は、第2の接着剤におけるR:H比とは異なることを意味する。第1の接着剤および第2の接着剤において異なるR:H比を使用することによって、第1の接着剤および第2の接着剤における樹脂/硬化剤の相互作用によって提供される硬化または架橋の程度の違いにより、第1の接着剤および第2の接着剤の接着強度は異なる。第1の接着剤および/または第2の接着剤の接着強度は、それらのR:H比を変えることによって変えることができる。
【0080】
いくつかの実施形態では、第1の接着剤および第2の接着剤は、用途に基づいて所定の接着強度を提供するように調整された実質的に異なる接着剤配合物を備える。そのため、第1の接着剤および第2の接着剤は、たとえば、異なる硬化性樹脂、硬化剤、充填剤などを使用することができるか、または、おのおの異なる接着剤配合物での硬化性樹脂、硬化剤、充填剤などのいずれかの異なる相対比率を含み得る。
【0081】
結合される2つの基板間のそれぞれの第1の結合領域および第2の結合領域上に塗布される第1の接着剤および第2の接着剤のパターンは、本明細書で開示される主題の範囲から逸脱することなく、本明細書に示されるものとは異なり得る。本明細書に示される例示的な実施形態では、結合領域は、基板がともに結合される表面領域である結合エリアの周囲について画定され、第2の結合領域は、第1の接着剤から形成された周囲内に画定される体積を、部分的または実質的に完全に満たすために、第1の結合領域内に(たとえば、同心円状に)画定される。第1の接着剤および第2の接着剤から形成される接着結合の複合接着強度(たとえば、基板間の接着結合の総接着強度)は、(たとえば、結合エリアの第1の結合領域および第2の結合領域の相対的な比率を変更することによって)第1の接着剤および第2の接着剤を比較的多くまたは少なく塗布することによって増加または減少される。たとえば、複合接着剤の強度は、第1の接着剤が塗布される第1の接着領域の割合を増やすことによって増加できる。複合接着剤の強度は、第1の接着剤が塗布される第1の接着領域の割合を減らすことによって減少できる。第1の接着剤が塗布される第1の接着領域の割合が増加して、接着強度が増加すると、第2の接着剤が塗布される第2の接着領域の割合が減少するか、または、第2の接着剤が、第1の接着剤によって形成された周辺内に画定された空間の全体を埋める訳ではない事例では、同じままである可能性がある。第1の接着剤が塗布される第1の接着領域の割合が減少して接着強度が低減する場合、第2の接着剤が塗布される第2の接着領域の割合は、同じままであるか、または増加して、第1の接着剤によって形成された周囲内に画定される第2の結合領域のより大きな割合を充填できる。
【0082】
別の例示的な実施形態では、第2の結合領域は、基板がともに結合される表面領域である結合エリアの周囲の周りに画定され、第1の結合領域は、(たとえば、第1の接着剤よりも低い接着強度を有する)第2の接着剤から形成された周囲内に画定される体積を、部分的または実質的に完全に満たすために、第2の結合領域内に(たとえば、同心円状に)画定される。第1の接着剤および第2の接着剤から形成される接着結合の複合接着強度(たとえば、基板間の接着結合の総接着強度)は、(たとえば、結合エリアの第1の結合領域および第2の結合領域の相対的な比率を変更することによって)第1の接着剤および第2の接着剤を比較的多くまたは比較的少なく塗布することによって増加または減少される。たとえば、複合接着剤の強度は、第1の接着剤が塗布される第1の結合領域(たとえば、第2の接着剤によって形成される周囲内の結合エリアの内部)の割合を増加させることによって増加できる。複合接着剤の強度は、第1の接着剤が塗布される第1の結合領域(たとえば、第2の接着剤によって形成される周囲内の結合エリアの内部)の割合を減少させることによって減少できる。
【0083】
方法のいくつかの実施形態では、第1の基板は、熱源(たとえば、バッテリアセンブリ、バッテリパックなど)を備え、第2の基板は、熱を熱源からヒートシンクに伝達するために、間に熱伝導性接着剤(たとえば、ギャップ充填剤または他の適切な熱界面材料)を必要とするヒートシンク(たとえば、冷却プレート、または他の適切な熱放散構造)を備える。例示的な実施形態では、第1の基板は、二成分熱伝導性(TC)ギャップ充填剤接着材料を介して、冷却プレートを備える第2の基板に接着結合されるバッテリモジュールを備える。別の例示的な実施形態は、マイクロプロセッサが保護用の熱拡散蓋またはヒートシンクに接着された予防的熱拡散蓋に接着されている半導体用途を備えることができる。
【0084】
方法のいくつかの実施形態では、第1の結合領域および第2の結合領域に塗布される接着剤は、(たとえば、第1の結合領域上に塗布される接着剤によって形成される周囲内で)第2の結合領域上に塗布される接着剤が、機能しなくなるように選択され得る。いくつかの実施形態では、第2の接着領域に塗布される接着剤は、接着剤のように機能しなくなるように選択できる。
【0085】
いくつかの実施形態では、方法は、結合エリアの断面全体にわたる接着剤のR:H比を(たとえば、段階的に)変化させ、比較的軽度に架橋されたR:H比を有する接着剤を含む、第2の結合領域に対して十分に架橋されたR:H比を有する接着剤を含む第1の結合領域を作成することによって、従来の方法と比較して、(たとえば、引き剥がし力の低減に対応する)除去または分離の応力の低減を達成することができる。接着剤は、結合エリアの断面全体でR:H比が変化するため、第1の接着領域と第2の接着領域とで異なる接着強度を有しながら、バッテリモジュールと冷却プレートとの間で熱を伝達し、また、通常の操作中に、バッテリモジュールと冷却プレートとの分離を阻止する能力を保持する。
【0086】
方法のいくつかの実施形態では、接着剤は、結合エリアの第1の結合領域および第2の結合領域内に塗布される2つの異なる接着剤配合物のために、接着剤の異なる部分を示差的に硬化させることによって、一成分または二成分接着剤となり、一方の接着剤配合物は、より高い接着強度および/または応力を提供し、第1の接着領域上に塗布され、第2の接着剤配合物は、より低い接着強度および/または応力を提供し、第2の接着領域上に塗布される。
【0087】
いくつかの実施形態では、第2の結合領域上に塗布される接着剤は、相変化材料または熱伝導性ギャップパッドを備える。
【0088】
いくつかの実施形態では、方法は、(たとえば、接着剥離剤が塗布された、または塗布される予定の結合エリアの一部に)接着剤を塗布する前に、少なくとも1つの基板(たとえば、バッテリモジュールおよび/または冷却プレート)の結合エリアの少なくとも一部(たとえば、本明細書の他の場所で説明されるような第2の結合領域)に接着剥離剤を塗布することを備える。少なくとも1つの基板の結合エリアのうちの、少なくとも第2の接着領域への接着剥離剤の塗布は、少なくとも接着剥離剤が塗布される、および/または、上に塗布される部分において、接着剤と、接着剥離剤が塗布される基板との間の接着保持力を低減する。いくつかの実施形態では、方法は、(たとえば、接着剥離剤が塗布されていない接着結合に対して)結合力がより低く低減された基板の結合エリアの一部(たとえば、第2の結合部分)における接着剥離剤をパターン化することによって接着剥離剤を塗布することを備え、したがって、結合エリア内に、低い引き剥がし応力の領域を形成するために、低減された引き剥がし力および/または応力が望まれる。いくつかの実施形態では、方法は、結合エリアの少なくとも一部(たとえば、第1の結合領域の一部またはすべて、および/または、第2の接着領域の一部またはすべて)に剥離剤を選択して塗布することを備え、剥離剤と接触している接着剤の化学組成と、塗布された剥離剤の化学組成とに応じて、離型剤は、離型剤が塗布される結合領域の部分内に塗布された接着剤内の架橋度を優先的に高める、および/または、低下させる。
【0089】
いくつかの実施形態では、方法は、ともに結合される2つの基板のうちの一方における結合エリアの第1の結合領域(たとえば、周囲の周り)に、一成分または二成分接着剤配合物の形態で、第1の接着剤を塗布することを備え、第1の接着剤は、高い接着強度および/または応力を提供し、第1の接着剤が硬化された後、基板の分離のために相応して高い引き剥がし力および/または応力を必要とする。方法は、たとえば、結合エリアの第2の結合領域(たとえば、第1の結合領域において第1の接着剤によって形成される周囲内)に、未硬化の熱可塑性プラスチックの形態で、第2の接着剤を塗布することを備え、第2の接着剤は、硬化された第1の接着剤によって提供されるものよりも低い接着強度、および/または、応力を提供し、したがって、第2の接着剤が塗布された結合エリアの一部に第1の接着剤が塗布された場合よりも、基板の分離のために、相応して低い引き剥がし力および/または応力を必要とする。
【0090】
いくつかの実施形態では、第1の接着剤および第2の接着剤は、たとえば、非架橋(たとえば、熱可塑性材料)となる同じまたは異なる接着剤である。そのような実施形態によれば、そのような非架橋接着剤は、たとえば、熱を使用して、または溶媒の適用によって塗布できる。いくつかのそのような実施形態では、1つまたは複数の溶媒含有熱可塑性材料が、第1の基板(たとえば、バッテリモジュールなどの熱源)の結合エリアの第1の結合領域および/または第2の結合領域内に適用される(たとえば、分配される)。いくつかの実施形態では、異なる溶媒含有熱可塑性材料が、第1の結合領域および第2の結合領域に適用される。溶媒含有熱可塑性材料が結合エリア上に塗布された後、溶媒含有熱可塑性材料が乾燥され、第1の基板が(たとえば、プレスおよび/またはクランプによって)第2の基板(たとえば、冷却プレートなどのヒートシンク)に対して位置し、その結果、溶媒含有熱可塑性材料は、第2の基板と接触する(たとえば、直接接触する)ようになる。溶媒含有熱可塑性材料が第2の基板と接触すると、(たとえば、第2の基板に熱を加えることによって)溶媒含有熱可塑性材料が加熱され、その結果、溶媒含有熱可塑性材料は、溶媒含有熱可塑性材料と接触している第2の基板の部分上で(たとえば、コンフォーマルコーティングを形成するために)濡れる。
【0091】
いくつかの実施形態では、方法は、高い接着力および/または応力を提供するために、結合エリアの(たとえば、周囲のまわりの)第1の結合領域に、および/または、その上に、一成分または二成分接着剤配合物の形態で、第1の接着剤を塗布することを備え、これは、第1の接着剤が硬化された後の基板の分離のために、相応する高い引き剥がし力および/または応力を必要とし、第1の接着剤によって提供される高い接着強度および/または応力は、第1の接着剤が所定の温度しきい値を超える温度に曝されたときに減少するように構成される。方法はまた、結合エリアの(たとえば、第1の結合領域によって形成される内部内の)第2の結合領域に、および/または、その上に、軽く架橋されたまたは非架橋の接着材料の形態で、第2の接着剤を塗布することを備える。そのため、結合エリアの周囲のまわりに塗布された第1の接着剤は、所定の温度しきい値を超える温度に曝されたときに劇的に低い(たとえば、50%以上、75%以上)接着強度を有する可能性があり、熱によって誘発された接着強度における減少は、少なくとも、所定の温度しきい値を超えて第1の接着剤を予熱せずに基板を分離するときに誘発される引き剥がし応力と比較して、接着結合ラインの分解をさらに助けるのに有利である。いくつかのそのような実施形態では、所定の温度しきい値は、第1の接着剤の接着強度が、結合エリアの(たとえば、周囲のまわりの)第1の結合領域上で劇的に(たとえば、50%以上、75%以上)低減する温度であるが、この所定の温度しきい値は、たとえば、バッテリモジュールにおいて、互いに接着剤で結合されている構成要素の使用温度の上限を下回っている。いくつかの実施形態では、接着剤の一方または両方の接着強度は、接着剤のpHを変えること、溶媒を塗布すること、光または音を照射することなどによって減少され得る。
【0092】
いくつかの実施形態では、方法は、高い接着強度および/または応力を提供するために、結合エリア(たとえば、周囲のまわり)の第1の結合領域内および/またはその上に、一成分または二成分接着剤配合物の形態で、第1の接着剤を塗布することを備え、これは、第1の接着剤が硬化された後の基板の分離のために、相応して高い引き剥がし力および/または応力を必要とする。この実施形態によれば、第1の接着剤は、第1の結合領域の露出部分(たとえば、結合エリアの周囲のまわりの第1の接着剤の、外部から見える部分)が、紫外線(UV)光に直接曝されるときに、解重合プロセスを受けるように構成され得る。本明細書で使用される場合、「直接曝される」という用語は、UV光を出力するデバイスが、デバイスからのUV光が、第1の結合領域における第1の接着剤の露出された部分に向けられ、入射する(たとえば、発光および/または照射する)ように構成されることを意味する。そのため、この例示的な方法によれば、結合エリアの第1の結合領域の少なくとも一部の上の第1の接着剤の接着強度は、UVによって誘発された解重合によって劇的に(たとえば、50%以上、75%以上)低減され、それにより、基板の分離中の結合ラインの分解をさらに助ける。この例示的な実施形態はさらに、比較的十分に架橋されていない、または非架橋の接着材料の形態で、少なくとも第2の結合領域上に(たとえば、第1の結合領域によって画定される周囲内に形成された結合エリアの内部領域内に)第2の接着剤を塗布することを備え、その結果、第2の接着剤は、より低い接着強度および/または応力を提供し、接着結合ラインにおいて基板を分離するために、対応するより低い引き剥がし力および/または応力を必要とするようになる。
【0093】
本発明の別の実施形態では、方法は、結合エリアの第1の結合領域上に一成分のUV硬化性接着剤を塗布することと、結合エリアの第2の結合領域上に第2の接着剤を塗布することと、接着結合ラインを形成するために、基板を互いに押し付けることと、周囲をUV光に曝して、UV硬化性接着剤を重合させることとを備える。
【0094】
いくつかの実施形態では、方法は、高い接着強度および/または応力を提供するために、結合エリアの周囲のまわりに塗布される一成分または二成分接着剤配合物の形態で、第1の接着剤を塗布することを備え、これは、第1の接着剤が硬化されるとき、基板の分離のために、相応して高い引き剥がし力および/または応力を必要とする。この実施形態によれば、熱伝導性の予め硬化されたギャップパッドの形態で、第2の接着剤が、第1の接着剤によって形成される周囲内の結合面の少なくとも一部の上に塗布され、その結果、第2の接着剤が、より低い接着強度および/または応力を提供し、接着結合ラインにおいて基板を分離するために、対応するより低い引き剥がし力および/または応力しか必要としなくなる。
【0095】
本明細書で開示される方法によれば、結合エリア全体にわたる引き剥がし応力は、同じ結合エリア上に形成された接着結合ラインにおいて基板を分離するために必要とされる引き剥がし応力と比較して、少なくとも20%(たとえば、20%以上、30%以上、40%以上、50%以上、75%以上、90%以上)低減されるが、本明細書で開示される方法の代わりに、第1の接着剤および第2の接着剤が塗布される結合エリアの一部に塗布される第1の接着剤のR:H比と同じR:H比の接着剤を有する。
【0096】
いくつかの実施形態では、第1の結合領域および第2の結合領域に同じ接着剤を使用するが、異なるR:H比を使用することによって、高い熱伝導性の結合ラインを維持しながら、可変の架橋密度、および相応して、結合エリアの外部から内部への可変の接着強度が生成される。同じ塩基化学であり、互いに適合性のある第1の結合領域および第2の結合領域に接着剤を使用することは、第1の結合領域と第2の結合領域との間の交点(たとえば、
図3の132を参照)での好ましい相互作用をもたらし得るので、有利であり得る。
【0097】
図1~
図8は、試験装置100の様々な態様および/または本明細書で開示される方法の有効性を検証するために使用される結果を示す。その例示的な態様が
図1~
図4に示されている試験装置100は、本明細書で開示される例示的な実施形態では、熱伝導性接着ギャップ充填剤130によって互いに接着結合されたアルミニウム基板(たとえば、Tバー構造110A、110B)を分離するために必要な引張引き剥がし応力を測定するために使用される。本明細書で開示される例示的な実施形態で使用されるアルミニウム基板は、多くの電気自動車(EV)用途で普及しているバッテリモジュール-冷却プレートアセンブリに存在する構造に対応する。
図1~
図4に示される試験装置100を使用して、本明細書で開示される方法の有効性を評価する際に、接着ギャップ充填剤の樹脂対硬化剤比(R:H比)は、接着結合エリアの異なる領域で系統的に変化する(たとえば、
図3を参照)。例示的な図に示され、使用されているように、「周囲」(Per)という用語は、第1の結合領域を示すために使用され、「中心」という用語は、第1の結合領域によって形成される結合エリアの周囲によって境界が定められる第2の結合領域を示すために使用される。
【0098】
図1~
図4の試験装置において、2つのTバー構造110A、110Bのうちの一方の結合エリア134上に接着剤が塗布された。1.0mmの繰り返し可能な接着結合ラインを形成するために、1.0mmの厚さを有するスペーサ140が、各Tバー構造110A、110Bの表面の間に配置され、スペーサ140は、Tバー構造110A、110Bが、1.0mmより薄い結合エリア134内で接着剤を圧縮することを防ぐために、(たとえば、Tバー構造110A、110Bの長さ方向に沿って)Tバー構造110A、110Bの領域の両端に配置される。
【0099】
本明細書に提示される第1の例示的な評価のために、二成分の、3.8W/mKの熱伝導性シリコンギャップ充填剤接着剤130(CoolTherm(登録商標)SC-1500、LORD社から入手可能)が、本明細書で開示される方法に記載されるように、第1の結合領域130Aおよび/または第2の結合領域130Bにおいて、一般に134と示される結合エリア内に塗布された。第1の結合領域130Aにおける接着剤は、1:1のR:H比を有するように混合され、(たとえば、ハンドヘルドディスペンサを使用して)Tバー構造110A、110Bのうちの1つに塗布され、その結果、
図2に見られるように、第1の結合領域130Aが、約5~6mmの幅および約1mmの厚さを有するように、結合エリア134の周囲に、第1の結合領域130Aを得た。(たとえば、
図5および
図6における)第1の例示的な実施形態について本明細書に示されるデータでは、第2の結合領域130Bによって画定される体積の実質的にすべて(たとえば、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも99%)は、空のままであるか、または異なるR:H比(たとえば、2:1または1:2)を有する例示的な第2の接着剤で充填される。
【0100】
1つの例示的な試験片では、制御結合エリアは、結合エリア134全体を、1:1のR:H比で混合され、約1mmの厚さを有するCoolTherm(登録商標)SC-1500で完全に充填することによって作成された。この例のデータは、
図5の表におけるデータの第1行に示される。
図5におけるデータの第2行および第3行は、約1mmの厚さの結合エリア134全体の上に塗布されたCoolTherm(登録商標)SC-1500の樹脂(R)成分のみ、または、硬化剤(H)成分のみを備える制御試験片である。
図5におけるデータの第4行に示される別の例示的な試験片では、第1の接着領域130Aは、1:1のR:H比で混合され、約1mmの厚さのCoolTherm(登録商標)SC-1500で充填され、第2の接着領域130BにおけるTバー構造110A、110B間の体積は空であるか、または周囲空気で満たされた。
図5におけるデータの第5行に示される別の例示的な試験片では、第1の接着領域130Aは、1:1のR:H比で混合され、約1mmの厚さのCoolTherm(登録商標)SC-1500で充填され、第2の接着領域130Bは、2:1のR:H比で混合され、約1mmの厚さのCoolTherm(登録商標)SC-1500で充填された。
図5におけるデータの第6行に示される、別の例示的な試験片では、第1の接着領域130Aは、1:1のR:H比で混合され、約1mmの厚さのCoolTherm(登録商標)SC-1500で充填され、第2の接着領域130Bは、1:2のR:H比で混合され、約1mmの厚さのCoolTherm(登録商標)SC-1500で充填された。
【0101】
直前に記載されたように、接着剤の後、または、樹脂のみまたは硬化剤のみが、結合エリア134の一部の上に塗布された制御の下で、接着剤が塗布されていないTバー構造110Bが、接着剤および/または樹脂または硬化剤が塗布されたTバー構造110Aの上に配置され、その結果、Tバー構造110A、110Bは、長さおよび幅方向に互いに実質的に整列され、Tバー構造110A、110Bは、結合エリア134の各長手方向端部に配置されたスペーサ140が、Tバー構造110A、110Bの表面と接触(たとえば、直接接触)し、結合エリア134内に塗布された接着剤から、所望された結合ライン厚さを形成するまで、ともに圧縮された。
【0102】
Tバー構造110A、110Bがともに圧縮されるとき、体積が、結合エリア134の内部のTバー構造110A、110B間の体積よりも大きい、任意の過剰な材料(たとえば、第1の接着剤、樹脂、および/または硬化剤)は、結合エリア134によって画定される体積の側面(たとえば、幅方向)から滲出する(たとえば、圧搾される)。次に、試験装置100が、約100℃(たとえば、温度を許容範囲内に維持するように、オーブンなどの一般にサーモスタット制御される加熱デバイスにおける変動を考慮して、+/-5℃)で1時間硬化された。硬化後、第1の結合領域130Aの露出した周囲を(たとえば、かみそりの刃を使用して)トリミングして、接着結合ラインを画定する体積から滲出された接着材料を除去し、スペーサ140の間であり、Tバー構造110A、110Bの幅によって画定される結合エリア134と実質的に同様(たとえば、10%以内、5%以内、1%以内)の外部寸法を有する第1の結合領域130Aを生成するが、たとえば、
図4に示されるように、その隅において、結合エリア134の寸法よりも小さな寸法を有するように、第1の結合領域130A内での接着を可能にする。
【0103】
図5に示される引き剥がし応力データは、試験装置100を試験フレーム内に配置し、増加する大きさの引張力を加えてTバー構造110を引き離し、それにより、Tバー構造110A、110Bが互いに分離されるように、結合エリア134内の接着結合ラインを破壊することによって製造された。ここに示されている例示的な試験データでは、Instron(登録商標)5969には、1キロニュートン(kN)の負荷セルが装備されており、12mm/分の変位速度に設定された。Tバー構造110A、110Bの分離中に記録された最大引き剥がし力は、
図1~
図4に示されるように、試験装置100を使用して準備された各試験片について記録された。最大引き剥がし力を、結合エリア134の表面積(たとえば、25.4mm×25.4mm)で除して、最大引き剥がし応力を計算した。ここに記載されている各試験片について、最低5回の測定が行われた。
【0104】
評価された6つの試験片から判定された引き剥がし応力は、接着剤の破損モード(すなわち、接着性、凝集性(coh)、および薄層凝集性(tlc))とともに
図5に示される表に列挙される。本明細書で使用される場合、接着剤の破損は、接着剤が、基板のうちの1つの基板からきれいに剥離し、基板の剥離された表面に残留物を残さない場合である。凝集破損モードは、接着材料内の別の破損モードであり、接着材料の一部は、接着結合の両側(たとえば、両方の基板)に付着したままである。薄層凝集破損モードは、材料内に別の破損が見られないという事実によって示されるが、接着材料の薄層が、1つの基板上に残り、接着材料の大部分(たとえば、重量で90%以上)が他の基板に残る。
【0105】
第1の例示的なSC-1500試験片では約1.0mmの厚さで、Tバー構造110A、110Bの結合エリア134全体を覆うために、1:1のR:H比を有するCoolTherm(登録商標)SC-1500が塗布された。第1の例示的なSC-1500試験片では、接着剤を、機械的に破損させ、接着結合ラインに沿ってTバー構造110A、110Bを分離させるために、平均して0.24メガパスカル(MPa)の圧力(引き剥がし応力)を必要とすると判定された。
【0106】
第2の例示的なSC-1500試験片では、CoolTherm(登録商標)SC-1500の樹脂(R)成分のみが、約1.0mmの厚さで、Tバー構造110A、110Bの結合エリア134全体を覆うように塗布された。第2の例示的なSC-1500試験片では、接着剤を、機械的に破損させ、接着結合ラインに沿ってTバー構造110A、110Bを分離させるために、平均して0.005メガパスカル(MPa)の圧力(引き剥がし応力)を必要とすると判定された。第3の例示的なSC-1500試験片では、CoolTherm(登録商標)SC-1500の硬化剤(H)成分のみが、約1.0mmの厚さで、Tバー構造110A、110Bの結合エリア134全体を覆うように塗布された。第3の例示的なSC-1500試験片では、接着剤を、機械的に破損させ、接着結合ラインに沿ってTバー構造110A、110Bを分離させるために、平均して0.003メガパスカル(MPa)の圧力(引き剥がし応力)を必要とすると判定された。100%Rまたは100%Hは拡散しやすいため、または結合ラインから外れ、熱的性能が低下するので、熱界面材料(TIM)として100%Rまたは100%Hを使用することは、バッテリモジュール-冷却プレートアセンブリにおける使用には実用的ではないことに留意されたい。
【0107】
第4の例示的なSC-1500試験片では、1:1のR:H比を有するCoolTherm(登録商標)SC-1500は、約1.0mmの厚さで、約5~6mmの幅で、結合エリア134の第1の結合領域130A内(たとえば、結合エリア134の周囲内)においてのみ塗布され、第2の結合領域130B(たとえば、結合エリア134の残りの表面領域)は空である(たとえば、周囲空気で満たされる)。この第4の例示的なSC-1500試験片では、引き剥がし応力は、平均して約0.14MPaであると判定され、第1の例示的なSC-1500試験片と比較して約41.7%低減した。
【0108】
第5の例示的なSC-1500試験片では、1:1のR:H比を有するCoolTherm(登録商標)SC-1500は、約1.0mmの厚さで、約5~6mmの幅で、結合エリア134の第1の結合領域130A内(たとえば、結合エリア134の周囲内)においてのみ塗布された。2:1のR:H比を有するCoolTherm(登録商標)SC-1500もまた、約1.0mmの厚さで、第2の結合領域130B(たとえば、結合エリア134の残りの表面領域)内においてのみ塗布された。この第5の例示的なSC-1500試験片では、引き剥がし応力は平均して約0.12MPaであると判定され、第1の例示的なSC-1500試験片と比較して約50%低減した。
【0109】
第6の例示的なSC-1500試験片では、1:1のR:H比を有するCoolTherm(登録商標)SC-1500は、約1.0mmの厚さで、約5~6mmの幅で、結合エリア134の第1の結合領域130A内(たとえば、結合エリア134の周囲内)においてのみ塗布された。1:2のR:H比を有するCoolTherm(登録商標)SC-1500もまた、約1.0mmの厚さで、第2の結合領域130B(たとえば、結合エリア134の残りの表面領域)内においてのみ塗布された。この第6の例示的なSC-1500試験片では、引き剥がし応力は平均して約0.46MPaであると判定された。この第6の例示的なSC-1500試験片が、第1の例示的なSC-1500試験片よりも高い引き剥がし応力を示したという結果は、第6の例示的なSC-1500試験片における第2の結合領域130B内に含まれる硬化剤の増加した比率(1:2であるR:H比)によると考えられ、その結果、第2の結合領域130Bにおける接着剤は、第1または第5の例示的なSC-1500試験片とは異なり、第6の例示的なSC-1500試験片における第1の結合領域130A内の接着剤(1:1であるR:H、OO80)よりも硬くなる(OO85)。
【0110】
図6A~
図6Dは、Tバー構造110A、110Bが強制的に分離された後(たとえば、接着結合ラインの機械的破損を引き起こすのに必要とされる引き剥がし力以上の張力で、Tバー構造110A、110Bが引っ張られた後)、それぞれのTバー構造110A、110B上の残留接着剤の画像を示す。第4の試験片が示される
図6Aに見られるように、まず、薄層凝集破損モードを示す。対照的に、第5の試験片は、薄層凝集破損モードと凝集破損モードとの両方を示し、これは
図6Bに見ることができる。薄層凝集破損モードと凝集破損モードとのこの組合せは、少なくとも部分的にその2:1のR:H比によって、完全に硬化せず、少なくとも部分的に粘性流体として残っている、第2の結合領域130B内の接着剤に起因すると考えられる。第6の試験片は、主に薄層凝集破損モードを示すものとして
図6Cに見ることができ、これは、一般に、第4の試験片について
図6Aに示される破損モードに類似している。第1の例示的なSC-1500試験片は、主に薄層凝集破損モードを示すものとして
図6Dに見ることができ、これは、一般に、第4および第6の例示的なSC-1500試験片についてそれぞれ
図6Aおよび
図6Cに示される破損モードに類似している。
【0111】
特定の「ソフト」接着ギャップ充填剤、特に軽くまたは非架橋である接着ギャップ充填剤は、熱サイクル中、接着結合ラインの端部におけるTバー構造110A、110Bの間から滲出する傾向がある。これは「ポンプアウト」と呼ばれ、周囲温度の変化、発熱の変化を引き起こす熱源の利用率などに起因するか否かに関わらず、電気自動車などの熱源の一般的な特性である。そのため、本明細書で開示される方法における「ポンプアウト」の可能性は、第5の試験片によれば、第1の結合領域130Aおよび第2の結合領域130B内で、異なるR:H比を有する接着剤の配置および塗布を使用して、
図7および
図8において一般に400と示される熱サイクル装置において評価された。そのため、第1の結合領域130Aは、1:1のR:H比を有するCoolTherm(登録商標)SC-1500を使用して充填され、第2の結合領域130Bは、2:1のR:H比を有するCoolTherm(登録商標)SC-1500を使用して実質的に完全に充填された。接着剤は、試験プレート420の上部の第1の結合領域および第2の結合領域内に堆積され、熱プレート410は、試験プレート420と熱プレート410との間に均一で一貫した接着結合ラインを生成する方式で(たとえば、スペーサを使用して)ファスナ430を使用して、試験プレート420の上方に取り付けられた。熱プレートは、流体が通過することを可能にするために埋め込まれた流体通路(たとえば、銅などの熱伝導性金属で作られたパイプ)を有し、試験プレート420と熱プレート410との間の結合エリアの実質的な等温加熱を提供する。熱サイクル試験を開始する前に、熱サイクル装置100を、少なくとも1時間、100℃の硬化温度に曝して、熱サイクル装置400の試験プレート420と熱プレート410との間の第1の接着剤および第2の接着剤を硬化させる。図示される熱サイクル装置400において、試験プレート420および熱プレート410は、
図7および
図8に示される熱サイクル装置400において、異なる熱伝導率を有する材料、鋼およびアルミニウムから作製される。熱サイクル装置400は、各温度において15分の滞留時間で、-40℃から80℃まで1000回サイクルされ、その後、試験プレート420が熱プレート410から分離されて、一般に440で示される接着結合ラインが検査された。ここでは、
図8に示されるように、未硬化および/または部分的に硬化された第2の接着剤が、第1の結合領域内に封入される。既知の従来の熱伝導性グリースとは異なり、結合エリア134内に塗布された接着剤は、熱サイクル試験が実行される前に、少なくとも、結合エリア134内に塗布された接着剤と比較して、熱サイクル後に実質的に変化しないため、接着剤のポンプアウトは熱サイクル装置400では観察されない。試験プレート420と熱プレート410とを分離して、未硬化または部分的に硬化されたサンプルが、第2の結合領域に残り、第1の結合領域において、硬化された接着剤内に封入されていることを確認した。
【0112】
例示的な試験片のさらなるセットが、指定された1:1のR:H比にしたがって、樹脂(R)成分を硬化剤(H)成分と混合することによって形成された、市販の二成分の2.0W/mKの熱伝導性ウレタンギャップ充填剤(CoolTherm(登録商標)UR-2002、LORD社から入手可能)を使って準備された。上述され、
図1~
図7Bに図示および説明されたシリコンギャップ充填剤の例示的な試験片と実質的に同一の、ウレタンギャップ充填剤の例示的なウレタン試験片が準備された。ウレタンギャップ充填剤の第1の例示的なウレタン試験片では、第1の結合領域130Aと第2の結合領域130Bとの両方は、1:1のR:H比で混合され、約1mmの厚さのCoolTherm(登録商標)UR-2002で、実質的に全体が充填された。この第1の例示的なウレタン試験片は、0.25MPaの引き剥がし応力をもたらし、95%信頼区間は0.02MPaであり、凝集結合ライン破損モードを示した。第2の例示的なウレタン試験片では、第1の結合領域130Aは、1:1のR:H比で混合され、約4mmの幅および約1mmの厚さのCoolTherm(登録商標)UR-2002で充填され、その結果、第1の結合領域130Aは、結合エリア134上のTバー構造110A、110B間の総表面積および/または体積の約30%を備える。第2の結合領域130Bは、2:1のR:H比で混合され、約1mmの厚さを有するCoolTherm(登録商標)UR-2002で充填され、その結果、第2の結合領域130Bは、結合エリア134上のTバー構造110A、110B間の総表面積および/または体積の約70%を備える。ウレタン接着剤は、第1の結合領域130Aおよび第2の結合領域130Bにおいて異なるR:H比で塗布されるので、可変の架橋密度、および相応して可変の強度が、高い熱伝導性結合ラインを維持しながら、結合ラインの外部から内部に生成される。第2の例示的なウレタンの例は、0.06MPaの引き剥がし応力をもたらし、95%信頼区間は0.02MPaであり、凝集結合破損モードを示した。そのため、第2の例示的なウレタン試験片では、第1の例示的なウレタン試験片と比較して、引き剥がし応力が約75%低減された。
【0113】
別の例示的な実施形態によれば、第1の結合領域130A内に市販の一成分の湿気硬化性シリコンシーラント(GE5010)を塗布することによって、第2の結合領域130B内に塗布された一成分の非反応性(熱可塑性)の3.9W/mKの熱伝導性のシリコングリースを囲む勾配ギャップ充填剤を形成するために、例示的な試験片のさらなるセットが準備された。第2の結合領域130B内に塗布されたシリコングリースは、重量パーセントで、13.22%のビニル終端されたPDMS(20cst)の熱可塑性樹脂マトリクスと、1.95%のヒドロキシル終端されたPDMS(10,000Da)の粘度低減界面活性剤と、47.75%のほぼ球形のアルミニウム(直径約10ミクロン)の熱伝導性充填剤と、37.08%の球状酸化亜鉛(直径約0.3ミクロン)の熱伝導性充填剤とを備える。上記のグリースの構成成分は、Hauschild DAC-800ミキサを使用して、真空下で1,200rpmで1分間混合された。結合ライン全体の熱伝導率は、ISO 22007-2にしたがって、Hot Disk Transient Plane Source(モデル2500 S)を使用して測定された。第1の例示的なシーラント試験片では、一成分の湿気硬化性シリコンシーラントが、結合エリア134全体に塗布され、約1mmの厚さで第1の結合領域および第2の結合領域130A、130B全体を実質的に覆う。この第1の例示的なシーラント試験片は、0.49MPaの引き剥がし応力をもたらし、95%信頼区間は0.02MPaであり、薄層凝集結合ライン破損モードを示した。第2の例示的なシーラント試験片では、第1の結合領域130Aは、約4mmの幅および約1mmの厚さの一成分の湿気硬化性シリコンシーラントで充填され、その結果、第1の結合領域130Aは、結合エリア134上のTバー構造110A、110B間の総表面積および/または体積の約30%を備える。第2の結合領域130Bは、直前に上述されたパーセンテージで混合された構成成分を有するシリコングリースで充填され、その結果、第2の結合領域130Bは、結合エリア134上のTバー構造110A、110B間の総表面積および/または体積の約70%を備え、約1mmの厚さを有する。第2の例示的なシーラントの例は、0.17MPaの引き剥がし応力をもたらし、95%信頼区間は0.03MPaであり、凝集結合破損モードを示した。そのため、引き剥がし応力は、第1の例示的なシーラント試験片と比較して第2の例示的なシーラント試験片において約65%低減され、結合エリアの大部分は熱伝導性であり、接着的に隣接する表面間の熱伝達が可能である。さらに、第1の結合領域130Aの幅は、結合エリア134のサイズが増加しても同じままであるため、第2の結合領域130Bによって構成される結合エリアの割合、したがって、熱伝導性である結合エリアの割合は、結合エリア134のサイズが大きくなるにつれて大きくなることに留意されたい。それに加えて、第2の例示的なシーラント試験片の破損モードは、本質的に主に凝集性であり、これは、熱輸送の観点から好ましい。
【0114】
さらに別の例示的な実施形態によれば、第1の結合領域130A内に市販の一成分の湿気硬化性ウレタンシーラント(Loctite(登録商標)PL Window Door&Siding Polyurethane Sealant)を塗布することによって、第2の結合領域130B内に塗布された一成分の非反応性(熱可塑性)の3.7W/mKの熱伝導性ウレタングリースを囲む勾配ギャップ充填剤を形成するために、例示的な試験片のさらなるセットが準備された。第2の結合領域130B内に塗布されたウレタングリースは、重量パーセントで、6.49%のポリプロピレングリコール(MW 425 Doltons)の熱可塑性樹脂マトリクスと、0.96%のリン酸塩ポリエステル湿潤剤の粘度低減界面活性剤と、56.94%の球状酸化アルミニウム(平均粒子サイズ、すなわち直径70ミクロン)の熱伝導性充填剤と、35.24%の球状酸化アルミニウム(平均粒子サイズ、すなわち直径7ミクロン)の熱伝導性充填剤と、0.37%のポリジメチルシロキサン処理ヒュームドシリカであるレオロジーチキソトロピー添加剤とを備える。上記に列挙されたウレタングリースの構成成分は、Hauschild DAC-800ミキサを使用して、真空下で1,200rpmで45秒間混合された。結合ライン全体の熱伝導率は、ISO 22007-2にしたがって、Hot Disk Transient Plane Source(モデル2500 S)を使用して測定された。第1の例示的なウレタンシーラント試験片では、一成分の湿気硬化性ウレタンシーラントが、結合エリア134上全体に塗布され、約1mmの厚さで、第1の結合領域130Aおよび第2の結合領域130B全体を実質的に覆う。この第1の例示的なウレタンシーラント試験片は、試験装置の試験限界である約0.6MPaを超える引き剥がし応力をもたらした。そのため、95%信頼区間も、結合ラインの故障モードも判定できなかった。第2の例示的なウレタンシーラント試験片では、第1の結合領域130Aは、幅約4mm、厚さ約1mmの一成分の湿気硬化性ウレタンシーラントで充填され、その結果、第1の結合領域130Aは、結合エリア134上のTバー構造110A、110B間の総表面積および/または体積の約30%を備える。第2の結合領域130Bは、直前に上述されたパーセンテージで混合された構成成分を有するウレタングリースで充填され、その結果、第2の結合領域130Bは、結合エリア134上に、約1mmの厚さで、Tバー構造110A、110B間の総表面積および/または体積の約70%を備える。第2の例示的なシーラントの例では、0.14MPaの引き剥がし応力をもたらし、95%信頼区間は0.03MPaであり、薄層凝集結合ライン破損モードを示した。そのため、第2の例示的なウレタンシーラント試験片では、少なくとも0.14MPaが、試験装置で測定できる最大応力である0.6MPaの25%未満である限り、引き剥がし応力は、少なくとも75%以上低減された。第1の例示的なウレタンシーラントの実施形態は、0.6MPaを著しく超える引き剥がし強度を有することが可能であるので、第2の例示的なウレタンシーラントの実施形態の引き剥がし強度の低減は、第1の例示的なシーラント試験片と比較して、少なくとも80%、少なくとも90%、または少なくとも95%であることが可能である。さらに、第1の例示的なウレタンシーラントの実施形態とは異なり、第2の例示的なウレタンシーラントの実施形態では、結合エリアの大部分は熱伝導性であり、接着的に隣接する表面間の熱伝達が可能である。
【0115】
各例示的な試験片について本明細書に提示されるデータを考慮する際に、第1の結合領域130Aの幅は、結合エリア134のサイズが増加しても同じままであるため、第2の結合領域130Bによって構成される結合エリアの割合、したがって、熱伝導性である結合エリアの割合は、結合エリアのサイズが大きくなるにつれて増加することにさらに留意されたい。そのような構成の例は、1インチ×1インチの結合エリア134を有するTバー構造110A、110Bの代わりに、長さ12インチおよび幅6インチであり、結合エリア上の空間によって画定される体積内に塗布され、所望の厚さ(たとえば、1.0mm)を有する二成分の3.8W/mKの熱伝導性シリコンギャップ充填剤接着剤(CoolTherm(登録商標)SC-1500)によってともに結合される結合構造を使用することによって評価された。
【0116】
第1の例示的なスケーリングされた試験片において、SC-1500接着剤は、本明細書で開示される例示的な方法に記載されるように、結合エリアの表面全体に塗布され、結合構造間で約1mmの所望の厚さに圧縮された。第1の例示的なスケーリングされた試験片による結合エリアにおける接着剤は、1:1のR:H比を有するように混合された。したがって、シリコンギャップ充填剤の第1の例示的なスケーリングされた試験片では、第1の結合領域および第2の結合領域の両方が、約1mmの厚さの、1:1のR:H比で混合されたCoolTherm(登録商標)SC-1500で実質的に完全に充填された。この第1の例示的なスケーリングされた試験片は、0.18MPaの引き剥がし応力をもたらし、凝集結合ライン破損モードを示した。第2の例示的なスケーリングされた試験片では、第1の結合領域が、1:1のR:H比で、幅が約5mm、厚さが約1mmで混合されたCoolTherm(登録商標)SC-1500で充填され、その結果、第1の結合領域は、結合エリアの総表面積の約20%を備える。第2の結合領域は、2:1のR:H比で混合され、約1mmの厚さを有するCoolTherm(登録商標)SC-1500で充填され、その結果、第2の結合領域は、結合エリアの総表面積の約80%を備える。SC-1500は、第1の結合領域および第2の結合領域において、異なるR:H比で塗布されるため、高熱伝導性の結合ラインを維持しながら、結合ラインの外側から内側に、可変架橋密度と、相応して可変強度とが生成される。第2の例示的なスケーリングされた試験片は、0.03MPaの引き剥がし応力を生じ、凝集結合ライン破損モードを示した。そのため、引き剥がし応力は、第1の例示的なスケーリングされた試験片と比較して、第2の例示的なスケーリングされた試験片で約83%低減された。