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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-19
(45)【発行日】2023-09-27
(54)【発明の名称】温調ユニット
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/373 20060101AFI20230920BHJP
   H01L 23/36 20060101ALI20230920BHJP
   D04H 1/4234 20120101ALI20230920BHJP
【FI】
H01L23/36 M
H01L23/36 Z
D04H1/4234
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2022509367
(86)(22)【出願日】2021-02-09
(86)【国際出願番号】 JP2021004692
(87)【国際公開番号】W WO2021192669
(87)【国際公開日】2021-09-30
【審査請求日】2022-06-24
(31)【優先権主張番号】P 2020058974
(32)【優先日】2020-03-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000153591
【氏名又は名称】株式会社巴川製紙所
(74)【代理人】
【識別番号】100131842
【弁理士】
【氏名又は名称】加島 広基
(72)【発明者】
【氏名】森内 英輝
(72)【発明者】
【氏名】石原 一樹
(72)【発明者】
【氏名】西浦 一翔
【審査官】伊藤 寿美
(56)【参考文献】
【文献】特公昭47-024327(JP,B1)
【文献】米国特許第03127668(US,A)
【文献】特開平05-156385(JP,A)
【文献】特開2001-123386(JP,A)
【文献】実開昭57-036495(JP,U)
【文献】中国特許出願公開第102305564(CN,A)
【文献】国際公開第2020/054752(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D04H 1/00-18/04
B32B 1/00-43/00
H01L 23/34-23/473
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の断面における金属短繊維の存在率に対する、前記第1の断面に直交する第2の断面における金属短繊維の存在率の割合が0.85~1.15の範囲内の大きさであり、前記金属短繊維の長さは0.01~1.00mmの範囲内の大きさであり、前記金属短繊維は、銅繊維、ステンレス繊維、ニッケル繊維、アルミニウム繊維およびこれらの合金繊維のうち少なくとも1種の繊維であり、前記金属短繊維の占積率は42.1~68.4%の範囲内である、金属繊維成形体と、
前記金属繊維成形体を支持する支持体と、
を備えた、温調ユニット。
【請求項2】
前記金属繊維成形体は受け部上に集積された複数の前記金属短繊維を焼結させることにより生成される、請求項1記載の温調ユニット。
【請求項3】
前記金属繊維成形体は円柱形状であり、複数の前記金属繊維成形体が格子線の各交点上に配置されている、請求項1または2記載の温調ユニット。
【請求項4】
複数の前記金属繊維成形体の間には空隙が形成されている、請求項1~3のいずれか1項記載の温調ユニット。
【請求項5】
前記支持体はパイプを含み、前記パイプの外周面に板状の前記金属繊維成形体が湾曲した状態で巻かれ、湾曲した板状の前記金属繊維成形体にフィン状の前記金属繊維成形体が取り付けられている、請求項1~4のいずれか1項記載の温調ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属繊維から成形される金属繊維成形体を備えた温調ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、電気機器、電子機器および半導体機器等において、発熱に弱い回路等を保護するために温調ユニットが用いられている。より詳細には、電気機器等が使用する電力が大きくなると発熱量も多くなるため、発生した熱を温調ユニットによって冷却することにより電気機器等の内部の温度を調整していた。このような温調ユニットにおいて、金属繊維から成形される金属繊維成形体が用いられる場合がある。
【0003】
金属繊維成形体の製造方法として、例えば特開平6-279809号公報(JPH06-279809A)等に開示されるものが従来から知られている。特開平6-279809号公報(JPH06-279809A)に開示される金属繊維成形体の製造方法では、まず、金属繊維を含む分散液中に成形用の型を浸漬し、この型の吸引面に金属繊維を吸着させる。次に、型の吸引面に金属繊維を吸着させながらこの型を分散液中から引き上げる。分散液中から型を引き上げた後もこの型の吸引面に金属繊維を吸着させるようにする。このような動作を何度も繰り返すことにより、所望の厚さの金属繊維が型の吸引面に吸着される。その後、型の吸引面に吸着されている金属繊維を、金属繊維の融点を超えない温度で焼結する。このことにより、金属繊維成形体が生成される。
【0004】
また、温調ユニットにおいて、金属繊維成形体ではなく金属の粉末を焼結することにより生成される金属粉末焼結体や金属バルクが用いられる場合もある。
【発明の概要】
【0005】
特開平6-279809号公報(JPH06-279809A)に開示される製造方法により製造された金属繊維成形体は、主として面方向に金属繊維が配向しているため、このような金属繊維成形体を有する温調ユニットでは、金属繊維が配向している面に沿った熱伝導性は優れるものの、金属繊維が配向している面と直交する方向における熱伝導性が劣るという問題がある。一方、金属の粉末を焼結することにより生成される金属粉末焼結体や金属バルクを有する温調ユニットでは、金属繊維成形体と比較して温度が変化したときの伸縮性が劣るため、温調ユニットが取り付けられた被伝熱物が伸縮したときにこの被伝熱物の伸縮に温調ユニットが追随することができず、温調ユニットが被伝熱物から外れたり破壊されたりするという問題がある。
【0006】
本発明は、このような点を考慮してなされたものであり、どの方向でも熱伝導性が優れるとともに温度が変化したときの伸縮性に優れた金属繊維成形体を備えた温調ユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の金属繊維成形体は、第1の断面における金属繊維の存在率に対する、前記第1の断面に直交する第2の断面における金属繊維の存在率の割合が0.85~1.15の範囲内の大きさであるものである。
【0008】
本発明の金属繊維成形体は、受け部上に集積された複数の金属短繊維を焼結させることにより生成されたものである。
【0009】
本発明の温調ユニットは、受け部上に集積された複数の金属短繊維を焼結させることにより生成された金属繊維成形体と、前記金属繊維成形体を支持する支持体と、を備えたものである、
【0010】
本発明の金属繊維成形体の製造方法は、複数の金属短繊維を受け部上に集積させる工程と、前記受け部上に集積された複数の前記金属短繊維を焼結させることにより金属繊維成形体を生成する工程と、を備えている。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1A】複数の金属短繊維に物理的な衝撃を与えるカッターミルの構成を示す側面図である。
図1B図1Aに示すカッターミルのM-M矢視による断面図である。
図2】受け部上に集積された複数の金属短繊維を焼結させることにより金属繊維成形体を生成する動作を示す図である。
図3図2に引き続く、受け部上に集積された複数の金属短繊維を焼結させることにより金属繊維成形体を生成する動作を示す図である。
図4】本発明の実施の形態による金属繊維成形体を備えた温調ユニットの構成の一例を示す断面図である。
図5図4に示す温調ユニットのA-A矢視による断面図である。
図6】本発明の実施の形態による金属繊維成形体を備えた温調ユニットの構成の他の例を示す断面図である。
図7図6に示す温調ユニットのB-B矢視による断面図である。
図8】本発明の実施の形態による金属繊維成形体を備えた温調ユニットの構成の更に他の例を示す断面図である。
図9図8に示す温調ユニットのC-C矢視による断面図である。
図10】本発明の実施の形態による金属繊維成形体を備えた温調ユニットの構成の更に他の例を示す断面図である。
図11図10に示す温調ユニットのD-D矢視による断面図である。
図12図10に示す温調ユニットのE-E矢視による断面図である。
図13】本発明の実施の形態による金属繊維成形体を備えた温調ユニットの構成の更に他の例を示す断面図である。
図14図13に示す温調ユニットのF-F矢視による断面図である。
図15図13に示す温調ユニットのG-G矢視による断面図である。
図16】本発明の実施の形態による金属繊維成形体を備えた温調ユニットの構成の更に他の例を示す断面図である。
図17】本発明の実施の形態による金属繊維成形体を備えた温調ユニットの製造方法の変形例を示す図である。
図18】金属繊維成形体や金属成形体の切断面を示すための説明図である。
図19】第1実施例に係る金属繊維成形体を図18のP断面で切断したときの切断面を示す写真である。
図20】第1実施例に係る金属繊維成形体を図18のQ断面で切断したときの切断面を示す写真である。
図21】第2実施例に係る金属繊維成形体を図18のP断面で切断したときの切断面を示す写真である。
図22】第2実施例に係る金属繊維成形体を図18のQ断面で切断したときの切断面を示す写真である。
図23】第1比較例に係る従来の金属繊維成形体を図18のP断面で切断したときの切断面を示す写真である。
図24】第1比較例に係る従来の金属繊維成形体を図18のQ断面で切断したときの切断面を示す写真である。
図25】第2比較例に係る従来の金属成形体を図18のP断面で切断したときの切断面を示す写真である。
図26】第2比較例に係る従来の金属成形体を図18のQ断面で切断したときの切断面を示す写真である。
図27】第3比較例に係る従来の金属成形体を図18のP断面で切断したときの切断面を示す写真である。
図28】第3比較例に係る従来の金属成形体を図18のQ断面で切断したときの切断面を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。図1Aおよび図1Bは、複数の金属短繊維に物理的な衝撃を与えるカッターミルの構成を示す図である。また、図2および図3は、本実施の形態による金属繊維成形体の製造方法を示す図である。また、図4乃至図16は、本実施の形態による金属繊維成形体の温調ユニットの様々な構成例を示す図である。また、図17は、本実施の形態による金属繊維成形体を備えた温調ユニットの製造方法の変形例を示す図である。また、図18は、金属繊維成形体や金属成形体の切断面を示すための説明図であり、図19乃至図28は、実施例や比較例に係る金属繊維成形体や金属成形体の断面図である。
【0013】
まず、図1A図1B図2および図3を用いて本実施の形態による金属繊維成形体の製造方法について説明する。本実施の形態による金属繊維成形体の製造方法では、水等の媒体を使用せずに金属短繊維を均一に集積させ、集積された複数の金属短繊維を焼結させることにより金属繊維成形体を形成している。
【0014】
より詳細に説明すると、最初に、カッターミル10の内部に複数の金属短繊維30を投入する。カッターミル10の構成について図1Aおよび図1Bを用いて説明する。図1Aおよび図2Bに示すように、カッターミル10の内部には、複数(例えば、4つ)の回転刃12が取り付けられたロータ14が設けられており、ロータ14は軸14aを中心として回転するようになっている。また、ロータ14の周囲には固定刃16が位置固定で設けられている。また、ロータ14の下方にはスクリーン18が設けられている。
【0015】
カッターミル10の上部開口11からカッターミル10の内部に投入された複数の金属短繊維30は、軸14aを中心として回転しているロータ14に取り付けられた各回転刃12と固定刃16との間で剪断されることにより破砕される。また、ロータ14が回転することにより、カッターミル10の内部で複数の金属短繊維30同士が衝突したり、金属短繊維30と固定刃16または回転刃12とが衝突したりすることにより、金属短繊維30が摩耗および変形する。具体的には、金属短繊維30は曲げられたり折られたりすることにより金属短繊維30の表面が滑らかなものとなる。また、このような動作により金属短繊維30の表面のバリを取ることができる。このようにして剪断、摩耗、変形した金属短繊維30はスクリーン18の見開きから下方に落下する。そして、スクリーン18の見開きから下方に落下した金属短繊維30が回収される。
【0016】
カッターミル10以外にも金属短繊維30に物理的な衝撃を与えることにより変形させることができる装置であればいずれのものも用いることができる。このような装置としては、例えば、石臼状粉砕機(マスコロイダー)、ボールミル等が挙げられる。
【0017】
カッターミル10の内部に投入される金属短繊維30は、銅繊維、ステンレス繊維、ニッケル繊維、アルミニウム繊維およびこれらの合金繊維のうち少なくとも1種の繊維である。とりわけ、金属短繊維30として銅繊維を用いることが好ましい。銅繊維は、剛直性、塑性変形性、伝熱性とコストとのバランスに優れるからである。また、物理的に衝撃が与えられた金属短繊維30の長さは0.01~1.00mmの範囲内の大きさであることが好ましく、0.05~0.50mmの範囲内の大きさであることがより好ましく、0.10~0.40mmの範囲内の大きさであることが更に好ましい。金属短繊維30の長さは、金属繊維成形体40の写真(SEM、光学顕微鏡等)観察により実測することで確認することができる。金属短繊維30の長さが0.01~1.00mmであると、受け部への金属短繊維30の集積が容易となり、金属繊維成形体40の第1の断面における金属繊維の存在率に対する、第1の断面に直交する第2の断面における金属繊維の存在率の割合を0.85~1.15の範囲内としやすくなる。
【0018】
その後、物理的な衝撃が与えられることにより変形させられた複数の金属短繊維30がカッターミル10のスクリーン18の目開きから下方に落下する。そして、このスクリーン18の目開きから下方に落下した複数の金属短繊維30をグラファイト板20上に集積させる(図2参照)。より詳細には、グラファイト板20に予め複数の貫通穴が形成されている型枠22が載せられ、この型枠22の貫通穴に複数の金属短繊維30が入れられる。このことにより、型枠22の貫通穴の内部で複数の金属短繊維30がグラファイト板20上に集積される。その後、図2に示すような状態で複数の金属短繊維30を焼結させ、焼結後にプレスする。そして、図3に示すようにグラファイト板20から型枠22を取り外すと、グラファイト板20上に金属繊維成形体40が形成される。
【0019】
このような方法で製造された金属繊維成形体40は、第1の断面(例えば、図18におけるP断面)における金属繊維の存在率に対する、第1の断面に直交する第2の断面(例えば、図18におけるQ断面)における金属繊維の存在率の割合が0.85~1.15の範囲内の大きさとなる。すなわち、グラファイト板20等の受け部上に複数の金属短繊維30を集積させ、その後に焼結することにより、金属繊維は面方向だけではなく面方向に直交する方向(すなわち、金属繊維成形体40の厚み方向(図18におけるZ方向))にも配向する(図19乃至図22参照)。なお、従来技術のように、金属繊維を含む分散液中に成形用の型を浸漬し、この型の吸引面に金属繊維を吸着させることによって得られる金属繊維成形体は、主として面方向に金属繊維が配向する(図23および図24参照)。このため、第1の断面(例えば、図18におけるP断面)における金属繊維の存在率に対する、第1の断面に直交する第2の断面(例えば、図18におけるQ断面)における金属繊維の存在率の割合は0.85より小さくなるか1.15よりも大きくなる。このように、本実施の形態に係る金属繊維成形体40は、金属繊維は面方向(すなわち、図18におけるX方向およびY方向)だけではなく面方向に直交する方向(すなわち、図18におけるZ方向)にも配向しているため、どの方向でも熱伝導性が優れたものとなる。このような金属繊維成形体40の性質等については後述する。
【0020】
次に、このような金属繊維成形体40を備えた温調ユニットの様々な構成例について図4乃至図16を用いて説明する。なお、本実施の形態による金属繊維成形体を備えた温調ユニットは、例えば発熱する電気部品や電子部品等の被伝熱物に取り付けられることにより、これらの被伝熱物から放熱を行うものである。
【0021】
まず、温調ユニットの第1の構成例について図4および図5を用いて説明する。図4および図5に示す温調ユニット50は、枠状の外装部品52(支持体)と、外装部品52の内部空間において互いに離間して配置される複数の金属繊維成形体40とを有している。外装部品52は伝熱性を有する材料から形成されている。また、外装部品52は液体や気体を透過させないような材料から形成されている。一方、金属繊維成形体40を構成する金属繊維の間には空隙が形成されているため、液体や気体を透過させることができる。なお、図5に示すように各金属繊維成形体40として円柱形状のものが用いられる。また、円柱形状の各金属繊維成形体40は格子線の各交点上に配置されている。また、各金属繊維成形体40の間には、流体が通過する空間54が形成されている。このような空間54に液体の冷媒が流されることにより、温調ユニット50が取り付けられた電気部品や電子部品等の被伝熱物から放熱を行うことができる。また、温調ユニット50の他の用途として、冷却されるべき高温の流体が空間54に流されることにより、この空間54を流れる流体から放熱が行われてもよい。
【0022】
また、図4および図5に示す温調ユニット50の外装部品52の表面にめっき処理が例えば溶射により施されてもよい。あるいは、外装部品52の表面の仕上げ研磨や研削が行われてもよい。あるいは、外装部品52の表面が樹脂により包埋されてもよい。これらの処理が行われた場合には、外装部品52の表面の保護が行われるようになるため外装部品52の摩耗等を抑制することができるようになる。
【0023】
次に、温調ユニットの第2の構成例について図6および図7を用いて説明する。図6および図7に示す温調ユニット60は、枠状の外装部品62(支持体)と、外装部品62の内部空間において互いに離間して配置される複数の金属繊維成形体40と、各金属繊維成形体40の間の空間に配置される従来の金属繊維成形体64とを有している。従来の金属繊維成形体64は以下のような方法で製造される。まず、金属繊維等の繊維状物を水中分散等して抄造スラリーを作製する。抄造スラリーから水を濾して湿体シートを得る。湿体シートを更に脱水させる。脱水後のシートを乾燥させて乾燥シートを得る。その後、乾燥シートを金属繊維の融点を超えない温度で結着させる。このことにより、従来の金属繊維成形体64が生成される。このような従来の金属繊維成形体64は、後述する第1比較例に係る金属繊維成形体と略同一の性質を有したものとなる。
【0024】
外装部品62は伝熱性を有する材料から形成されている。また、外装部品62は液体や気体を透過させないような材料から形成されている。一方、金属繊維成形体40や従来の金属繊維成形体64を構成する金属繊維の間には空隙が形成されているため、液体や気体を透過させることができる。なお、図7に示すように各金属繊維成形体40として円柱形状のものが用いられる。また、円柱形状の各金属繊維成形体40は格子線の各交点上に配置されている。また、各金属繊維成形体40の間に従来の金属繊維成形体64が配置されているため外装部品62の内部には空間が存在しない。このような温調ユニット60でも、電気部品や電子部品等の被伝熱物に取り付けられることにより被伝熱物から放熱を行うことができる。金属繊維成形体40と金属繊維成形体64の密度を変えることで、液体や気体などの媒体の通過しやすさを制御することもできる。好ましくは、金属繊維成形体40の密度よりも金属繊維成形体64の密度が低い態様である。
【0025】
次に、温調ユニットの第3の構成例について図8および図9を用いて説明する。図8および図9に示す温調ユニット70は、枠状の金属繊維成形体40と、この枠状の金属繊維成形体40の内部空間において互いに離間して配置される複数の金属繊維成形体40とを有している。枠状の金属繊維成形体40の内部空間に配置される各金属繊維成形体40として円柱形状のものが用いられる。また、円柱形状の各金属繊維成形体40は格子線の各交点上に配置されている。上述したように、金属繊維成形体40を構成する金属繊維の間には空隙が形成されているため、液体や気体を透過させることができる。また、円柱形状の各金属繊維成形体40の間には、流体が通過する空間72が形成されている。なお、枠状の金属繊維成形体40には空隙が形成されており液体を透過させることができるため、空間72に液体を流すと液漏れが生じるおそれがある。このため、空間72を流れる流体は気体であることが望ましい。このような温調ユニット70でも、電気部品や電子部品等の被伝熱物に取り付けられることにより被伝熱物から放熱を行うことができる。
【0026】
次に、温調ユニットの第4の構成例について図10乃至図12を用いて説明する。図10乃至図12に示す温調ユニット80は、枠状の外装部品82(支持体)と、外装部品82の内部空間において互いに離間して配置される複数の金属繊維成形体40(図11参照)と、各金属繊維成形体40を接続するための平板状の金属繊維成形体40(図12参照)を有している。外装部品82は伝熱性を有する材料から形成されている。また、外装部品82は液体や気体を透過させないような材料から形成されている。一方、金属繊維成形体40を構成する金属繊維の間には空隙が形成されているため、液体や気体を透過させることができる。なお、図11に示すように、外装部品82の内部空間において互いに離間して配置される各金属繊維成形体40として円柱形状のものが用いられる。また、円柱形状の各金属繊維成形体40は格子線の各交点上に配置されている。また、各金属繊維成形体40の間には、流体が通過する空間84が形成されている。このような空間84に液体の冷媒が流されることにより、温調ユニット80が取り付けられた電気部品や電子部品等の被伝熱物から放熱を行うことができる。また、温調ユニット80の他の用途として、冷却されるべき高温の流体が空間84に流されることにより、この空間84を流れる流体から放熱が行われてもよい。
【0027】
次に、温調ユニットの第5の構成例について図13乃至図15を用いて説明する。図13乃至図15に示す温調ユニット90は、枠状の外装部品92(支持体)と、外装部品92の内部空間において互いに離間して配置される複数の金属繊維成形体40とを有している。外装部品92は伝熱性を有する材料から形成されている。また、外装部品92は液体や気体を透過させないような材料から形成されている。一方、金属繊維成形体40を構成する金属繊維の間には空隙が形成されているため、液体や気体を透過させることができる。なお、図13に示すように各金属繊維成形体40として円柱形状のものが用いられる。なお、図13乃至図15に示す温調ユニット90では、円柱形状の各金属繊維成形体40は格子線の各交点上に配置されていない。また、各金属繊維成形体40の間には、流体が通過する空間94が形成されている。このような空間94に液体の冷媒が流されることにより、温調ユニット90が取り付けられた電気部品や電子部品等の被伝熱物から放熱を行うことができる。また、温調ユニット90の他の用途として、冷却されるべき高温の流体が空間94に流されることにより、この空間94を流れる流体から放熱が行われてもよい。
【0028】
次に、温調ユニットの第6の構成例について図16を用いて説明する。図16に示す温調ユニット100は、被伝熱物として用いられる銅製のパイプ102の外周面に板状の金属繊維成形体40(支持体)を湾曲させて巻き、さらにこの湾曲した板状の金属繊維成形体40にフィン状の金属繊維成形体40をロウ付けしたものである。この際に、金属繊維成形体40は複数の金属短繊維30を含むため柔軟性があり、パイプ102の外周面の曲面に沿って金属繊維成形体40を曲げることができ、よって金属繊維成形体40とパイプ102との間に隙間が生じることを抑制することができる。このため、十分な伝熱性を維持することができる。このような温調ユニット100によれば、パイプ102の内部領域104を通過する高温の媒体を冷却することができる。また、パイプ102の内部領域104に冷媒を流した場合には、温調ユニット100の周囲の環境から熱を奪って冷却することができる。
【0029】
次に、フィン状の温調ユニットを製造する方法について図17を用いて説明する。まず、カッターミル10等によって物理的な衝撃が与えられることにより変形させられた複数の金属短繊維30をグラファイト板110上に集積させる(図17(a)参照)。より詳細には、グラファイト板110に予め複数の貫通穴が形成されている型枠114が載せられ、この型枠114の貫通穴に複数の金属短繊維30が入れられる。このことにより、型枠114の貫通穴の内部で複数の金属短繊維30がグラファイト板110上に集積される。その後、図17(a)に示すような状態で複数の金属短繊維30を焼結させ、焼結後にプレスする。このことにより、型枠114の貫通穴の内部に金属繊維成形体112が形成される。そして、グラファイト板110を取り外し、金属繊維成形体112の端部にナノ銀116を印刷する。その後、図17(c)に示すように、型枠114における、金属繊維成形体112にナノ銀116が印刷された側の面を基板120の表面に接触させる。そして、金属繊維成形体112が貫通穴の内部に形成されている型枠114に対してポストウェット処理(図17(c)に示す型枠114の上面にシンナをまんべんなく塗布する処理)を行い、その後に例えば300℃で加熱焼結する。この際に基板120に対して型枠114を加圧する。このことにより、ナノ銀116によって各金属繊維成形体112が基板120に接着する。その後、図17(d)に示すように型枠114を取り外す。このことにより、フィン状の複数の金属繊維成形体112が取り付けられた基板120が得られるようになる。このような基板120およびフィン状の複数の金属繊維成形体112の組合せ体も温調ユニットとして用いられる。
【0030】
以上のような構成からなる、受け部(具体的には、グラファイト板20)上に集積された複数の金属短繊維30を焼結させることにより生成された、金属繊維成形体40は、どの方向でも熱伝導性が優れるとともに温度が変化したときの伸縮性に優れている。より詳細には、従来技術のような、金属繊維を含む分散液中に成形用の型を浸漬し、この型の吸引面に金属繊維を吸着させることによって得られる金属繊維成形体は、主として面方向に金属繊維が配向しているため、このような金属繊維成形体を有する温調ユニットでは、金属繊維が配向している面に沿った熱伝導性は優れるものの、金属繊維が配向している面と直交する方向における熱伝導性が劣ったものとなる。これに対し、本実施の形態の金属繊維成形体40は、グラファイト板20等の受け部上に複数の金属短繊維30を集積させ、その後に焼結することにより、金属繊維は面方向だけではなく面方向に直交する方向(すなわち、金属繊維成形体40の厚み方向)にも配向する。このため、どの方向でも熱伝導性が優れるようになる。また、金属繊維成形体40は金属繊維を含むため、金属繊維成形体40の内部に隙間が形成される。このため、金属の粉末を焼結することにより生成される金属粉末焼結体や金属バルクと比較して、金属繊維成形体40は伸縮性に優れたものとなる。
【実施例
【0031】
以下、本発明について実施例および比較例を用いてより詳細に説明する。
【0032】
<第1実施例>
平均繊維長0.114mm、平均繊維径0.021mmの銅短繊維1kgをカッターミル(ホーライ社製:型式BO-360)に投入し、0.5mmのスクリーンを用いて銅短繊維を処理した。次に、カッターミルから取り出した銅短繊維を高純度アルミナ板(京セラ社製)上に集積させた。より詳細には、高純度アルミナ板に予め複数の貫通穴(縦5mm、横5mm、高さ500μm)が形成されている型枠が載せられ、この型枠の貫通穴に銅短繊維を入れた。このことにより、型枠の貫通穴の内部で銅短繊維が高純度アルミナ板上に集積された。その後、型枠の貫通穴の内部で銅短繊維が集積された高純度アルミナ板を真空焼結炉(中外炉工業社製)に入れ、この真空焼結炉内で窒素ガス使用のもと、圧力10Torr、焼結温度1000℃の条件で2hr焼結した。その後、型枠から焼結体を取り出し、所望の厚みとなるようにスペーサーを設置した上で、圧力100kNでプレスした。このようにして作製された金属繊維成形体の厚さは415μm、坪量は300g/m2であった。
【0033】
第1実施例に係る金属繊維成形体を図18のP断面で切断したときの切断面は図19に示す写真となった。また、第1実施例に係る金属繊維成形体を図18のQ断面で切断したときの切断面は図20に示す写真となった。なお、これらの写真は、ニコン社製の走査電子顕微鏡(SEM)により撮影したものである。図19および図20において、白地の部分が金属繊維の存在する箇所を示し、黒地の部分が金属繊維間の空隙を示している。図19および図20に示すように、第1実施例に係る金属繊維成形体は、金属繊維が面方向(すなわち、図18におけるX方向およびY方向)だけではなく面方向に直交する方向(すなわち、図18におけるZ方向)にも配向している。ここで、図19に示す断面において金属繊維の存在率は0.672であり、図20に示す断面において金属繊維の存在率は0.626であった。このため、第1の断面(図19に示す断面)における金属繊維の存在率に対する、第1の断面に直交する第2の断面(図20に示す断面)における金属繊維の存在率の割合は0.931であった。
【0034】
<第2実施例>
平均繊維長0.085mm、平均繊維径0.037mmの銅短繊維1kgをカッターミル(ホーライ社製:型式BO-360)に投入し、0.5mmのスクリーンを用いて銅短繊維を処理した。次に、カッターミルから取り出した銅短繊維を高純度アルミナ板(京セラ社製)上に集積させた。より詳細には、高純度アルミナ板に予め複数の貫通穴(縦5mm、横5mm、高さ500μm)が形成されている型枠が載せられ、この型枠の貫通穴に銅短繊維を入れた。このことにより、型枠の貫通穴の内部で銅短繊維が高純度アルミナ板上に集積された。その後、型枠の貫通穴の内部で銅短繊維が集積された高純度アルミナ板を真空焼結炉(中外炉工業社製)に入れ、この真空焼結炉内で窒素ガス使用のもと、圧力10Torr、焼結温度1000℃の条件で2hr焼結した。その後、型枠から焼結体を取り出し、所望の厚みとなるようにスペーサーを設置した上で、圧力100kNでプレスした。このようにして作製された金属繊維成形体の厚さは204μm、坪量は1000g/m2であった。第2実施例に係る金属繊維成形体は、第1実施例に係る金属繊維成形体よりも緻密なものである。
【0035】
第2実施例に係る金属繊維成形体を図18のP断面で切断したときの切断面は図21に示す写真となった。また、第2実施例に係る金属繊維成形体を図18のQ断面で切断したときの切断面は図22に示す写真となった。なお、これらの写真は、ニコン社製の走査電子顕微鏡(SEM)により撮影したものである。図21および図22において、白地の部分が金属繊維の存在する箇所を示し、黒地の部分が金属繊維間の空隙を示している。図21および図22に示すように、第2実施例に係る金属繊維成形体は、金属繊維が面方向(すなわち、図18におけるX方向およびY方向)だけではなく面方向に直交する方向(すなわち、図18におけるZ方向)にも配向している。ここで、図21に示す断面において金属繊維の存在率は0.651であり、図22に示す断面において金属繊維の存在率は0.730であった。このため、第1の断面(図21に示す断面)における金属繊維の存在率に対する、第1の断面に直交する第2の断面(図22に示す断面)における金属繊維の存在率の割合は1.121であった。
【0036】
<第3~第6実施例>
表1に示す平均繊維長、平均繊維径の銅短繊維を用い、高純度アルミナ板の貫通穴の大きさを適宜変更したこと以外は、第1実施例と同様の方法により第3~第6実施例の金属繊維成形体を作製した。各物性値は表1に示す通りである。
【0037】
<第1比較例>
平均繊維長2.875mm、繊維径0.019mmの銅短繊維3gおよび水中溶解温度70℃であるPVA繊維(商品名”フィブリボンドVPB105-1”、クラレ社製)11gを2%濃度となるように水中に入れ、ノニオン系界面活性剤(商品名”デスグランB”、大和化学工業(株)製)0.33gを加えて攪拌して分散した。この分散液を直径60cm、容積120リットルの容器中に入れ、さらに製紙用ポリアクリルアミド系分散粘剤溶液(固形分濃度0.08%、商品名”アクリパ-ズPMP”、ダイヤブロック社製)1.5リットルを加え、さらに水を加えて100リットルとし攪拌・分散し、抄造スラリーを作製した。この抄造スラリーを120メッシュの金網を巻き付けた成形用型(直径5cm、長さ15cm)に投入し、真空ポンプで吸引しながら、脱水して湿体シートを得た。その後湿体シートを、温度100℃の乾燥機に入れ、120分間乾燥させた。乾燥後のシートを真空焼結炉内で窒素ガス使用のもと、圧力10Torr、焼結温度1000℃の条件で2hr焼結した。その後、焼結体を取り出し、所望の厚みとなるようにスペーサーを設置した上で、圧力100kNでプレスした。このようにして作製された金属繊維成形体の厚さは145μm、坪量は299g/m2であった。
【0038】
第1比較例に係る金属繊維成形体を図18のP断面で切断したときの切断面は図23に示す写真となった。また、第1比較例に係る金属繊維成形体を図18のQ断面で切断したときの切断面は図24に示す写真となった。なお、これらの写真は、ニコン社製の走査電子顕微鏡(SEM)により撮影したものである。図23および図24において、白地の部分が金属繊維の存在する箇所を示し、黒地の部分が金属繊維間の空隙を示している。図23および図24に示すように、第1比較例に係る金属繊維成形体は、金属繊維が主に面方向(すなわち、図18におけるX方向およびY方向)に配向しており、面方向に直交する方向(すなわち、図18におけるZ方向)にはあまり配向していない。ここで、図23に示す断面において金属繊維の存在率は0.363であり、図24に示す断面において金属繊維の存在率は0.225であった。このため、第1の断面(図23に示す断面)における金属繊維の存在率に対する、第1の断面に直交する第2の断面(図24に示す断面)における金属繊維の存在率の割合は0.620であった。
【0039】
<第2比較例>
平均直径0.040mmの球形の銅粉を高純度アルミナ板(京セラ社製)上に集積させた。より詳細には、高純度アルミナ板に予め複数の貫通穴(縦5mm、横5mm、高さ500μm)が形成されている型枠が載せられ、この型枠の貫通穴に銅粉を投入した。このことにより、型枠の貫通穴の内部で銅粉が高純度アルミナ板上に集積された。その後、型枠の貫通穴の内部で銅粉が集積された高純度アルミナ板を真空焼結炉(中外炉工業社製)に入れ、この真空焼結炉内で窒素ガス使用のもと、圧力10Torr、焼結温度1000℃の条件で2hr焼結した。その後、型枠から焼結体を取り出した。このようにして作製された銅製の金属成形体の厚さは494μm、坪量は3403g/m2であった。このことにより、銅製の金属成形体を製造した。
【0040】
第2比較例に係る銅製の金属成形体を図18のP断面で切断したときの切断面は図25に示す写真となった。また、第2比較例に係る銅製の金属成形体を図18のQ断面で切断したときの切断面は図26に示す写真となった。なお、これらの写真は、ニコン社製の走査電子顕微鏡(SEM)により撮影したものである。図25および図26において、白地の部分が金属の存在する箇所を示し、黒地の部分が金属間の空隙を示している。図25に示す断面において金属の存在率は0.759であり、図26に示す断面において金属の存在率は0.804であった。このため、第1の断面(図25に示す断面)における金属の存在率に対する、第1の断面に直交する第2の断面(図26に示す断面)における金属の存在率の割合は1.060であった。
【0041】
<第3比較例>
不定形の銅粉(三井金属製:MA-CC(平均粒子径40μm))を高純度アルミナ板(京セラ社製)上に集積させた。より詳細には、高純度アルミナ板に予め複数の貫通穴(縦5mm、横5mm、高さ500μm)が形成されている型枠が載せられ、この型枠の貫通穴に不定形銅粉を投入した。このことにより、型枠の貫通穴の内部で不定形銅粉が高純度アルミナ板上に集積された。その後、型枠の貫通穴の内部で不定形銅粉が集積された高純度アルミナ板を真空焼結炉(中外炉工業社製)に入れ、この真空焼結炉内で窒素ガス使用のもと、圧力10Torr、焼結温度1000℃の条件で2hr焼結した。その後、型枠から焼結体を取り出した。このようにして作製された銅製の金属成形体の厚さは315μm、坪量は2066g/m2であった。このことにより、銅製の金属成形体を製造した。
【0042】
第3比較例に係る金属繊維成形体を図18のP断面で切断したときの切断面は図27に示す写真となった。また、第3比較例に係る金属繊維成形体を図18のQ断面で切断したときの切断面は図28に示す写真となった。なお、これらの写真は、ニコン社製の走査電子顕微鏡(SEM)により撮影したものである。図27および図28において、白地の部分が金属の存在する箇所を示し、黒地の部分が金属間の空隙を示している。図27に示す断面において金属の存在率は0.725であり、図28に示す断面において金属の存在率は0.756であった。このため、第1の断面(図27に示す断面)における金属の存在率に対する、第1の断面に直交する第2の断面(図28に示す断面)における金属の存在率の割合は1.043であった。
【0043】
<第4比較例>
第4比較例に係る金属として厚さ1004μmの銅板を用いた。各物性値は表2に示す通りである。
【0044】
<第5比較例>
表2に示す平均繊維長、平均繊維径の銅短繊維を用いたこと、高純度アルミナ板の貫通穴の大きさを適宜変更したこと以外は、第1比較例と同様の方法により第5比較例の金属繊維成形体を作製した。各物性値は表2に示す通りである。
【0045】
<第6比較例>
表2に示す平均繊維長、平均繊維径の銅短繊維を用いたこと、高純度アルミナ板の貫通穴の大きさを適宜変更したこと、および分散液を作製する際に攪拌を実施しなかったこと以外は第1比較例と同様の方法により第6比較例の金属繊維成形体を作製した。各物性値は表2に示す通りである。
【0046】
<第7比較例>
平均繊維長0.210mm、繊維径0.003mmの銅短繊維3gおよび水中溶解温度70℃であるPVA繊維(商品名”フィブリボンドVPB105-1”、クラレ社製)11gを2%濃度となるように水中に入れ、ノニオン系界面活性剤(商品名”デスグランB”、大和化学工業(株)製)0.33gを加えて攪拌して分散した。この分散液を直径60cm、容積120リットルの容器中に入れ、さらに製紙用ポリアクリルアミド系分散粘剤溶液(固形分濃度0.08%、商品名”アクリパ-ズPMP”、ダイヤブロック社製)1.5リットルを加え、さらに水を加えて100リットルとし攪拌・分散し、抄造スラリーを作製した。この抄造スラリーを120メッシュの金網を巻き付けた成形用型(直径5cm、長さ15cm)に投入し、真空ポンプで吸引しながら、脱水して湿体シートを得た。その後湿体シートを、温度100℃の乾燥機に入れ、120分間乾燥させて乾燥シートを得た。乾燥シートに酸化マグネシウム粒子が水に分散したスラリーを含侵し、温度100℃の乾燥機に入れ、120分間乾燥させた。乾燥後のシートを真空焼結炉内で窒素ガス使用のもと、圧力10Torr、焼結温度1000℃の条件で2hr焼結した。その後、焼結体を取り出し、焼結体を希塩酸に浸漬させて酸化マグネシウム粒子を溶解除去した後に洗浄を実施した。その後、所望の厚みとなるようにスペーサーを設置した上で、圧力100kNでプレスした。このようにして作製された金属繊維成形体の厚さは296μm、坪量は1307g/m2であった。各物性値は表2に示す通りである。
【0047】
<評価>
第1~第6実施例に係る金属繊維成形体、第1比較例および第5~第7比較例に係る金属繊維成形体、第2比較例および第3比較例に係る金属成形体(金属粉末焼結体)、ならびに第4比較例に係る金属体(金属バルク)について金属の存在率の比率、厚さ、占積率、熱伝導率、伸び率、CTE緩和性および通気性を調査した。調査結果を以下の表1および表2に示す。
【0048】
【表1】
【表2】
【0049】
表1等において、金属の存在率の比率とは、実施例および比較例に係る金属繊維成形体や金属成形体等において、第1の断面における金属の存在率に対する、第1の断面に直交する第2の断面における金属の存在率の割合のことをいう。また、占積率は、実施例および比較例に係る金属繊維成形体や金属成形体等の単位体積の、金属が占める割合のことをいう。また、熱伝導率は、金属繊維成形体や金属成形体等の厚み方向(図18におけるZ方向(上下方向))の熱伝導率を定常法熱伝導率測定装置(アドバンス理工社製)を用いて定常法によって測定した。また、伸び率は、金属繊維成形体や金属成形体等の面方向(図18におけるX方向またはY方向)の伸び率をISO 6892-1:2009,Metallic materials-Tensile testing-Part 1: Method of test at room temperature(MODに準拠した方法でテンシロン万能材料試験機(エー・アンド・ディ社製)を用いて測定した。伸長量500ppm以上の伸長で試験片が破断したものを◎、伸長量500ppm未満~200ppm以上試験片が破断したものを○、伸長量200ppm未満で試験片が破断したもの×と判定した。
【0050】
また、CTE緩和性は、実施例および比較例に係る金属繊維成形体や金属成形体等を無機接着剤によりアルミナ板等の対象物に接着させ、熱を与えた時や冷却した時の対象物の膨張や収縮に金属繊維成形体や金属成形体等が追随するかを調べた。具体的には、金属繊維成形体や金属成形体等が接着されたアルミナ板等の対象物が膨張や収縮を行っても金属繊維成形体や金属成形体等が追随することにより反り、剥がれ、割れ等が生じなかった場合には、CTE緩和性において「◎」、若干の反りは生じたものの、剥がれや割れ等が生じなかった場合には「○」の評価を行った。一方、金属繊維成形体や金属成形体等が接着されたアルミナ板等の対象物が膨張や収縮を行ったときに金属繊維成形体や金属成形体等に反り、剥がれ、割れ等が生じた場合には、CTE緩和性において「△」「×」の評価を行った。また、通気性は、ガーレー式デンソメーター(東洋精機製作所製)の透気度試験機によりガーレー試験機法(ISO5636-5)を用いて金属成形体等に対する空気100ccの通過時間を調べ、この通過時間に基づいて評価を行った。通過時間が10秒未満であったものを◎、10秒以上、20秒未満であったものを○、20秒以上、30秒未満であったものを△、30秒以上であったものを×とした。
【0051】
第1~第6実施例に係る金属繊維成形体は、第1および第5~第7比較例に係る金属繊維成形体と比較して、厚み方向(図18におけるZ方向(上下方向))の熱伝導率が優れたものとなった。第1および第5~第7比較例に係る金属繊維成形体は、主として面方向に金属繊維が配向しているため、金属繊維が配向している面に沿った熱伝導性は優れるものの、金属繊維が配向している面と直交する方向(すなわち、厚み方向)における熱伝導性が劣ってしまう。これに対し、第1~第6実施例に係る金属繊維成形体は、第1の断面における金属の存在率に対する、第1の断面に直交する第2の断面における金属の存在率の割合が0.85~1.15の範囲内にあり、金属繊維は面方向および厚み方向の両方向に配向するため、金属繊維が配向している面と直交する方向(すなわち、厚み方向)における熱伝導性が優れたものとなる。
【0052】
また、第1~第6実施例に係る金属繊維成形体は、第2~第4比較例に係る金属成形体等と比較して、伸び率、CTE緩和性および通気性が優れたものとなった。金属の粉末を焼結することにより生成される金属粉末焼結体や金属バルクは、金属繊維成形体と比較して温度が変化したときの伸縮性が劣る。このため、金属粉末焼結体や金属バルクを備えた温調ユニットが取り付けられた被伝熱物が伸縮したときにこの被伝熱物の伸縮に温調ユニットが追随することができず、温調ユニットが被伝熱物から外れたり破壊されたりするという問題がある。これに対し、第1~第6実施例に係る金属繊維成形体は、伸び率およびCTE緩和性が優れるため、このような問題が発生することを抑制することができる。
図1A
図1B
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
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