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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-20
(45)【発行日】2023-09-28
(54)【発明の名称】半金属用吸着材及び半金属元素除去方法
(51)【国際特許分類】
   B01J 20/26 20060101AFI20230921BHJP
   C02F 1/28 20230101ALI20230921BHJP
   C08F 8/14 20060101ALI20230921BHJP
   C08G 59/50 20060101ALI20230921BHJP
   C08G 73/04 20060101ALI20230921BHJP
   C08F 26/02 20060101ALI20230921BHJP
   B01J 20/28 20060101ALI20230921BHJP
【FI】
B01J20/26 C
C02F1/28 A
C08F8/14
C08G59/50
C08G73/04
C08F26/02
B01J20/28
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019170427
(22)【出願日】2019-09-19
(65)【公開番号】P2021045724
(43)【公開日】2021-03-25
【審査請求日】2022-08-29
(73)【特許権者】
【識別番号】591270556
【氏名又は名称】名古屋市
(74)【代理人】
【識別番号】100118706
【弁理士】
【氏名又は名称】青山 陽
(74)【代理人】
【識別番号】100179578
【弁理士】
【氏名又は名称】野村 和弘
(72)【発明者】
【氏名】松村 大植
(72)【発明者】
【氏名】中野 万敬
【審査官】瀧 恭子
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-123381(JP,A)
【文献】特開2009-233594(JP,A)
【文献】国際公開第2015/178458(WO,A1)
【文献】特開2019-063691(JP,A)
【文献】特開2011-212672(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0225817(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第112266496(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 20/00-20/28;20/30-20/34
B01J 20/281-20/292
G01N 30/00-30/96
C08C 19/00-19/44
C08F 6/00-246/00;301/00
C08G 59/00-59/72
C02F 1/28
C08G 73/00-73/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アミノ基で修飾された炭化水素骨格を有する化合物の前記アミノ基の一部が、少なくとも1つの水酸基を有するラクトンと開環反応した構造を有し、さらに残りの前記アミノ基の一部又は全部が架橋剤で架橋されることにより、水に投入した場合にろ過や静置によって母液から分離可能とされている半金属用吸着材(ただし、ホウ素化合物が吸着している半金属用吸着材を除く)
【請求項2】
前記アミノ基で修飾された炭化水素骨格を有する化合物は、ポリエチレンイミン、ポリアリルアミン、ジエチレントリアミン、テトラエチレンペンタミン及びトリス(2-アミノエチル)アミンのいずれかである請求項1に記載の半金属用吸着材。
【請求項3】
前記少なくとも1つの水酸基を有するラクトンは、ラクトン構造を有する単糖類及びアスコルビン酸のいずれかである請求項1又は2に記載の半金属用吸着材。
【請求項4】
前記架橋剤はエポキシ基を2つ以上有する化合物である請求項1乃至のいずれか1項に記載の半金属用吸着材。
【請求項5】
吸着材の質量に対する前記架橋剤の質量割合は0.05以上2.0以下である請求項1乃至のいずれか1項に記載の半金属用吸着材。
【請求項6】
(水を飽和に達するまで吸水させた場合の吸水した水の質量)/(乾燥状態における質量)で定義される吸水率が0.5以上10以下である請求項1乃至のいずれか1項に記載の半金属用吸着材。
【請求項7】
請求項1乃至のいずれか1項に記載の半金属用吸着材に、半金属元素を構成要素とするイオンを含有する水溶液を接触させることを特徴とする半金属元素除去方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホウ素やヒ素やセレン等の半金属を吸着することができる半金属用吸着材及びそれを用いた半金属元素除去方法に関する。
【0002】
金属元素と非金属元素の境界に位置する元素は、その両方の性質を示すことが知られており、半金属元素と呼ばれている。半金属元素は、その性質から幅広い分野において使用されているが、人体に有害な半金属元素もあるため、排水中の半金属を効率よく除去するための技術開発が望まれている。
【0003】
例えば、ホウ素化合物はガラス製造業、陶磁器製造業、電気機器製造業等、多くの産業界において使用されているが、ホウ素化合物が人体に及ぼす影響として、胃腸障害、皮膚紅疹、中枢神経症状等が知られている。このため、2001年に水質汚濁防止法が改正され、排水基準に「ホウ素及びその化合物」が追加された。しかしながら、水中のホウ素の効果的な除去方法は未だ確立されていないことから、業種別に暫定的な排水基準が設けられているにすぎないというのが現状である。
【0004】
従来から知られているホウ素排水処理技術としては、例えば、硫酸アルミニウムと消石灰とを加えて沈殿除去する方法が知られている。しかし、この沈殿除去法では、大量の汚泥が発生し、その処理が問題となる。
これに対して、キレート樹脂を用いてホウ素を吸着させる方法(例えば、特許文献1に記載のアンバーライト(登録商標)IRA-743等)では、排水をキレート樹脂塔に流すだけでホウ素が除去されるため、操作が簡単であり、吸脱着を繰り返すことにより、キレート樹脂をリサイクル使用することができるという利点もある。
【0005】
しかし、上記従来の吸着法に用いられているキレート樹脂では、吸水性が低く、ホウ素吸着は表面のみで行われ、バルク全体が吸着に利用されているわけではなかった。このため、吸着量の理論的な上限が小さくなるという問題があった。また、ホウ素以外の半金属についても、上記と同様の問題があった。
【0006】
このため、吸水性の付与が期待できるポリオール構造を有するアミド誘導体の半金属吸着材が開発されている(特許文献2、3)。しかし、特許文献2に記載の吸着材では、支持体の表面のみをポリオールで修飾するため、支持体自身の重量のため吸着材あたりの半金属吸着量は低くなってしまう。また、特許文献3に記載の吸着材は水溶性であり、そのままの使用では吸着材が溶出してしまうため、無機凝集剤等で沈殿させる必要があり、工程数が多くなる等の問題が生ずる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特公平3-10378号
【文献】特開2009-165972
【文献】国際公開第2008/146666
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであって、吸水性が高くて、水に溶出し難く、バルク全体で半金属を吸着させることが可能な半金属用吸着材及びそれを用いた半金属元素除去方法を提供することを課題とする(本明細書において「半金属」とは、ホウ素、ケイ素、ゲルマニウム、ヒ素、アンチモン、テルル、セレン及びビスマスの8元素をいう)。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、ホウ素がポリビニルアルコールのポリオール構造とキレートを形成することに着目し、様々な化合物にポリオール構造を導入した。そして、さらには、ポリオール構造を導入した化合物を架橋剤で架橋して、水への溶出を防止した化合物を調製し、半金属に対する吸着能について調べた。その結果、上記課題を解決できる半金属用吸着材を見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明の半金属用吸着材は、アミノ基で修飾された炭化水素骨格を有する化合物の前記アミノ基の一部が、少なくとも1つの水酸基を有するラクトン又は少なくとも1つの水酸基を有するエポキシ化合物と開環反応した構造を有し、さらに残りの前記アミノ基の一部又は全部が架橋剤で架橋されていることを特徴とする。
【0011】
本発明の半金属用吸着材では、アミノ基で修飾された炭化水素骨格を有する化合物の前記アミノ基の一部が、少なくとも1つの水酸基を有するラクトン又は少なくとも1つの水酸基を有するエポキシ化合物と開環反応した構造を有している。換言すれば、炭化水素骨格に結合した少なくとも1つの水酸基を有する置換基が結合している。このため、この吸着材に存在する多数の水酸基が半金属イオンとキレートを形成し、吸着されることとなる。また、この吸着材は水酸基の存在により親水性に富み、吸水率が高くなる。このため、表面のみならずバルク全体で半金属を吸着することができることから、従来の吸着材に対してより多くの半金属イオンを吸着することが期待できる。また、残りの前記アミノ基の一部又は全部が架橋剤で架橋されているため、吸着材が水で溶出し難くなる。このため、この吸着材を排液に直接投入した場合であっても、ろ過や静置による沈殿及びデカンテーション等の方法により容易に母液から分離することができ、取り扱いが簡便となる。
【0012】
本発明の吸着材において、アミノ基で修飾された炭化水素骨格を有する化合物としては、ポリエチレンイミン、ポリアリルアミン、ジエチレントリアミン、テトラエチレンペンタミン、トリス(2-アミノエチル)アミン等が挙げられる。
【0013】
また、少なくとも1つの水酸基を有するラクトンとしては、ラクトン構造を有する単糖類、アスコルビン酸及びアラボアスコルビン酸等が挙げられる。
ラクトン構造を有する単糖類としてはアルドン酸、ウロン酸、アルダル酸などの糖ラクトンが挙げられる。
アルドン酸のラクトンとしてはエリトロノラクトン、トレオノラクトン、リボノラクトン、アラビノノラクトン、キシロノラクトン、リキソノラクトン、アロノラクトン、アルトロノラクトン、グルコノラクトン、マンノラクトン、グロノラクトン、イドノラクトン、ガラクトノラクトン、タロノラクトン、グルコヘプトノラクトンなどが挙げられる。
ウロン酸のラクトンとしては、リブロノラクトン、アラビヌロノラクトン、キシルロノラクトン、リキスロノラクトン、アルロノラクトン、アルトルロノラクトン、グルクロノラクトン、マンヌロノラクトン、グルロノラクトン、イズロノラクトン、ガラクツロノラクトン、タルロノラクトンなどが挙げられる。
アルダル酸のラクトンとしてはリバロラクトン、アラバロラクトン、キシラロラクトン、リキサロラクトン、アラロラクトン、アルトラロラクトン、グルカロラクトン、マンナロラクトン、グラロラクトン、イダロラクトン、ガラクタロラクトン、タラロラクトンなどが挙げられる。
また、糖ラクトン以外の水酸基を有するラクトンとしては、アスコルビン酸やアラボアスコルビン酸などが挙げられる。
これらのラクトンの中でも、グルコノラクトンが比較的手に入れやすく、最も好ましい。また、二種以上のラクトンが構成要素とされていてもよい。
【0014】
さらに、少なくとも1つの水酸基を有するエポキシ化合物としては、例えばグリシドールが挙げられる。
【0015】
また、架橋剤としては、エポキシ基を2つ以上有する化合物とすることができる。こうであれば、エポキシ基が炭化水素骨格を有する化合物のアミノ基と反応し、確実に架橋構造を形成させることができる。エポキシ基を2つ以上有する化合物としては、エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、レゾルシノールジグリシジルエーテル、2,2-ジメチルプロパンジオールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル等が挙げられる。これらの架橋剤は単独であってもよいし、複数種類からなる架橋剤であってもよい。入手が容易であるという観点からはエポキシ系の架橋剤が好適であるが、カルボジイミド系、アリジン系、ウレタン系などの他の水溶性架橋剤を用いても良い。
【0016】
吸着材全体の質量に対する前記架橋剤の質量割合は、吸着材の溶出を防ぐという観点から0.05以上が好ましく、また、吸水率を高めて吸着を迅速に行わせるという観点から2.0以下であることが好ましい。
【0017】
また、(水を飽和に達するまで吸水させた場合の吸水した水の質量)/(乾燥状態における質量)で定義される吸水率は0.5以上10以下であることが好ましい。吸水率が0.5以上であれば、半金属を含む水溶液が吸着材内部により速く浸透するため、半金属を迅速に吸着させることができる。また、吸着材の機械強度を高くし、壊れ難く、ハンドリングも容易にするという観点から、吸水率は10以下であることが好ましい。より好ましくは吸水率が1.0以上8.0以下である。
【0018】
本発明の半金属用吸着材は、単に半金属元素を構成要素とするイオンを含有する水溶液と接触させることによって半金属元素を除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の半金属用吸着材の化学構造を模式的に示した図である(アミノ基で修飾された炭化水素骨格1を有する化合物のアミノ基の一部が、少なくとも1つの水酸基を有するラクトンと開環反応してアミド結合を有する置換基部分2となり、架橋剤によって架橋部3が形成された場合)。
図2】本発明の半金属用吸着材の化学構造を模式的に示した図である(アミノ基で修飾された炭化水素骨格1を有する化合物のアミノ基の一部が、少なくとも1つの水酸基を有するエポキシ化合物と開環反応して置換基部分4となり、架橋剤によって架橋部3が形成された場合)。
図3】本発明の半金属用吸着材に存在する水酸基がホウ酸イオンとキレート形成を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
<本発明の半金属用吸着材の化学構造>
図1は、本発明の半金属用吸着材の化学構造を模式的に示したものである。すなわち、図1は、アミノ基で修飾された炭化水素骨格1を有する化合物のアミノ基の一部が、少なくとも1つの水酸基を有するラクトンと開環反応してアミド結合を有する置換基部分2となり、さらに残りの前記アミノ基の一部又は全部が架橋剤によって架橋部3が形成された本発明の吸着材を示している。
また、図2は、アミノ基で修飾された炭化水素骨格1を有する化合物のアミノ基の一部が、少なくとも1つの水酸基を有するエポキシ化合物と開環反応して置換基部分4となり、さらに残りの前記アミノ基の一部又は全部が架橋剤によって架橋部3が形成された本発明の吸着材を示している。
【0021】
<半金属イオンの吸着メカニズム>
図1及び図2に示す本発明の半金属用吸着材は、いずれも多くの水酸基を有しているため、半金属イオンを含む排水中に投じられた場合、吸着材に存在している多数の水酸基が半金属イオンとキレートを形成し(例えば、ホウ酸イオンのキレート形成を示す図3参照)、半金属イオンが吸着される。また、多数の水酸基の存在によって親水性に優れ、吸水率が高くなる。このため、半金属イオンは吸着材の内部まで浸透してバルク全体で半金属を吸着することができる。さらに、この吸着材は、残りの前記アミノ基の一部又は全部が架橋剤で架橋されているため、水に溶出されにくくなる。
【0022】
<本発明の半金属用吸着材の使用方法>
本発明の半金属用吸着材は、単に半金属元素を構成要素とするイオンを含有する水溶液と接触させることによって半金属元素を除去することができる。接触させる方法としては特に限定はないが、例えば、被処理液に吸着材を投入したり、吸着材を充填したカラムに被処理液を流したりしてもよい。さらには、粉末状でもよく、膜状にして流通経路等に設置してもよい。
【0023】
本発明の半金属用吸着材による半金属の吸着は、幅広いpH範囲において適用できるが、吸着量を多くするという観点から、好ましくはpH1以上13以下であり、さらに好ましいのはpH3以上8以下である。
【0024】
また、本発明の半金属用吸着材は、再生することができる。すなわち、半金属を吸着した吸着材からホウ素等の半金属を脱離させるために塩酸水溶液や硫酸水溶液等の酸性水溶液に浸漬させる。その後、純水で洗浄し、水酸化ナトリウム水溶液や炭酸水素ナトリウム水溶液等の塩基性水溶液中に浸漬し、撹拌することによって容易に吸着材を再生することができる。
【0025】
本発明における半金属回収用吸着材の形態は、用途によって様々なものとすることができる。例えば、粉末状、膜状、ビーズ状、板状などの形態で使用できる。さらに、これらの吸着材を通水性のある容器に入れて使用してもよい。
【0026】
本発明の半金属回収用吸着材における発明の効果を阻害することのない範囲において、添加剤を配合することができる。このような添加剤としては、着色剤、紫外線吸収剤、光安定剤、防カビ剤などが例示される。
【0027】
本発明の吸着材が多孔質体に担持された吸着材-多孔質複合体とすることもできる。吸着材と多孔質体との複合化により、吸着材の機械的強度を格段に向上させることができ、取り扱いがさらに容易になる。このため、半金属含有溶液から吸着材-多孔質複合体を回収したり、カラムに詰めて半金属回収用の吸着塔としたりする場合のハンドリングが極めて容易となる。
【0028】
多孔質体としては特に制限はないが、例えば、発泡高分子、不織布・織物、樹脂焼結多孔体、多孔質セラミック、多孔質ガラス、多孔質金属等があげられる。
【0029】
以下、本発明を具体化した実施例について説明する。ただし、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0030】
<吸着材の合成>
(実施例1~5、比較例1)
以下に示す実施例1~実施例5の吸着材を合成した。
ポリエチレンイミン(平均分子量1800、富士フイルム和光純薬株式会社製、以下同様)及びグルコノラクトン(東京化成工業株式会社製、以下同様)を、下記表1に示す仕込み重量だけ秤取り、水3mL中に投入し、室温で24時間反応させた。ここで、ポリエチレンイミンが、アミノ基で修飾された炭化水素骨格を有する化合物であり、グルコノラクトンが、少なくとも1つの水酸基を有するラクトンである。その後、架橋剤としてエチレングリコールジグリシジルエーテル(富士フイルム和光純薬株式会社製、以下同様)を表1に示す仕込み重量だけ秤取り、上記反応液に添加し、撹拌後、さらに一晩静置させた。その後、生成物を水洗し、80℃で加熱乾燥し、実施例1~5の吸着材を得た。
【0031】
また、比較例1として、グルコノラクトンを添加することなく、ポリエチレンイミンを下記表1に示す仕込み重量だけ秤取り、水3mL中に投入し、室温で24時間撹拌した。その後、エチレングリコールジグリシジルエーテルを表1に示す仕込み重量だけ秤取り、上記反応液に添加し、撹拌後、さらに一晩静置させた。その後、生成物を水洗し、80℃で加熱乾燥し、比較例1の吸着材を得た。
【0032】
上記のようにして得た実施例1~5及び比較例1の吸着材の重量を測定した後、純水中に24時間浸し、取り出した後に表面に付着している水滴を拭き取り吸水した吸着材の重量を測定した。乾燥前後の重量の差から吸水量を算出し、吸水率を求めた。結果を表1に示す。
【0033】
【表1】
【0034】
(実施例6~8、比較例2)
以下に示す実施例6~実施例8の吸着材を合成した。
ポリアリルアミン20%溶液(ニットーボーメディカル株式会社製)と、グルコノラクトンとを、表2に示す仕込み重量だけ秤取り、水0.5mL中に投入し、90℃で3時間反応させた。ポリアリルアミンが、アミノ基で修飾された炭化水素骨格を有する化合物である。その後、室温まで下げ、架橋剤としてエチレングリコールジグリシジルエーテルを表2に示す仕込み重量だけ秤取り、上記の反応液に添加し、撹拌後、一晩静置させた。得られた生成物を水洗し、80℃で加熱乾燥し、実施例6~8の吸着材を得た。
【0035】
また、比較例2として、グルコノラクトンを添加することなく、ポリアリルアミン20%溶液(ニットーボーメディカル株式会社製)を、表2に示す仕込み重量だけ秤取り、水0.5mL中に投入し、90℃で3時間反応させた。その後、室温まで下げ、エチレングリコールジグリシジルエーテルを表2に示す仕込み重量だけ秤取り、上記の反応液に添加し、撹拌後、一晩静置させた。得られた生成物を水洗し、80℃で加熱乾燥し、比較例2の吸着材を得た。また、実施例1~5の場合と同様の方法により吸水率を求めた。結果を表2に示す。
【0036】
【表2】
【0037】
(実施例9)
グリシドール(関東化学株式会社製)0.592gと、エチレングルコールジグリシジルエーテル0.174gとを混合した後、ポリアリルアミン20%溶液2.28gを入れて室温で3時間撹拌した後、生成物を水洗し、80℃で乾燥させて、実施例9の吸着材を得た。ここで、グリシドールが少なくとも1つの水酸基を有するエポキシ化合物である。また、実施例1~5の場合と同様の方法により吸水率を求めた。結果を表3に示す。
【0038】
【表3】
【0039】
(実施例10)
ジエチレントリアミン(米山薬品工業株式会社製)0.26gと、グルコノラクトン0.45gとを、水1mL中に投入し、90℃で3時間反応させた。ここで、ジエチレントリアミンがアミノ基で修飾された炭化水素骨格を有する化合物ある。その後、室温まで下げ、架橋剤としてエチレングリコールジグリシジルエーテルを0.65g投入し、撹拌後、一晩静置させた。生成物を水洗し、80℃で加熱乾燥し、実施例10の吸着材を得た。また、実施例1~5の場合と同様の方法により吸水率を求めた。結果を表4に示す。
【0040】
【表4】
【0041】
(実施例11)
テトラエチレンペンタミン(関東化学株式会社製)0.47gと、グルコノラクトン0.445gとを、水1mL中に投入し、90℃で3時間反応させた。ここで、テトラエチレンペンタミンがアミノ基で修飾された炭化水素骨格を有する化合物である。その後、室温まで下げ、架橋剤としてエチレングリコールジグリシジルエーテルを0.65g投入し、撹拌後、一晩静置させた。生成物を水洗し、80℃で加熱乾燥し、実施例11の吸着材を得た。また、実施例1~5の場合と同様の方法により吸水率を求めた。結果を表5に示す。
【0042】
【表5】
【0043】
(実施例12)
トリス(2-アミノエチル)アミン(東京化成工業株式会社製)0.73gと、グルコノラクトン0.29gとを、水2.5mL中に投入し、90℃で3時間反応させた。ここで、トリス(2-アミノエチル)アミンがアミノ基で修飾された炭化水素骨格を有する化合物である。その後、室温まで下げ、架橋剤としてエチレングリコールジグリシジルエーテルを0.58g投入し、撹拌後、一晩静置させた。生成物を水洗し、80℃で加熱乾燥し、実施例12の吸着材を得た。また、実施例1~5の場合と同様の方法により吸水率を求めた。結果を表6に示す。
【0044】
【表6】
【0045】
(実施例13)
ポリエチレンイミン(平均分子量1800、富士フイルム和光純薬株式会社製)0.48gと、アスコルビン酸0.247gとを、水3mL中に投入し、室温で24時間反応させた。ここで、アスコルビン酸が少なくとも1つの水酸基を有するラクトンである。その後、室温まで下げ、架橋剤としてエチレングリコールジグリシジルエーテルを0.37g投入し、撹拌後、一晩静置させた。水洗し、80℃で加熱乾燥し、実施例13の吸着材を得た。また、実施例1~5の場合と同様の方法により吸水率を求めた。結果を表7に示す。
【0046】
【表7】
【0047】
(実施例14)
ポリエチレンイミン(平均分子量1800、富士フイルム和光純薬株式会社製)0.48gと、グロノラクトン0.25gとを、水3mL中に投入し、室温で24時間反応させた。ここで、グロノラクトンが少なくとも1つの水酸基を有するラクトンである。その後、室温まで下げ、架橋剤としてエチレングリコールジグリシジルエーテルを0.37g投入し、撹拌後、一晩静置させた。生成物を水洗し、80℃で加熱乾燥し、実施例14の吸着材を得た。また、実施例1~5の場合と同様の方法により吸水率を求めた。結果を表8に示す。
【0048】
【表8】
【0049】
-評 価-
<吸水率>
表1~表8に示す結果から、実施例1~14の吸着材の吸水率は高く、バルク内部まで水を浸透させることが可能であることが分かった。また、架橋剤の質量割合を小さくすれば吸水率が高くなり、架橋剤の質量割合を大きくすれば吸水率が小さくなることから、架橋剤の仕込み割合を適宜調整することにより、吸水率を容易に制御できることが分かった。
【0050】
<ホウ素吸着試験>
試験液としてホウ素濃度100ppmに調製したホウ酸水溶液を用意し、この試験液25mLに対し、上記のようにして調製した実施例及び比較例の吸着材を約0.3gまたは約0.05gを入れ、24時間撹拌した。その後、試験液から吸着材をろ別し、ICP-AES(エスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社製SEIKO SPS3520)を用いてろ液中のホウ素の定量分析を行った。
【0051】
実施例1~14及び比較例1、2の吸着材に対する結果を表9に示す。
この表から、水酸基を有する置換基が結合している実施例1~14の吸着材の1g当たりのホウ素吸着量は、水酸基を有する置換基が結合していない比較例1及び比較例2に比べて、顕著に高くなることが分かった。これは、試験液中のホウ酸イオンが水酸基とキレートを形成して、吸着材に吸着されるからである(図3参照)。
【0052】
【表9】
【0053】
<ホウ素以外の半金属の吸着試験>
ホウ素以外の半金属(すなわち、ヒ素、ビスマス、ゲルマニウム、アンチモン、セレン、ケイ素、テルル)に関しても、ホウ素の吸着試験と同様の方法で吸着試験を行った。比較例として、半金属以外の金属(カルシウム、チタン)も同様の方法で吸着試験を行った。各元素を100ppmに調整した試験液を用意し、この試験液25mLに対し、実施例1の吸着材を約0.3g入れて24時間撹拌した。その後、吸着材をろ別し、ICP-AES(エスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社製SEIKO SPS3520)を用いてろ液中の分析を行った。結果を表10に示す。この表から、ヒ素、ビスマス、ゲルマニウム、アンチモン、セレン、ケイ素及びテルルにおいて吸着効果が確認された。これらの元素の中でもセレン、ビスマス、ゲルマニウム及びヒ素については特に高い吸着効果を示した。また、半金属ではないカルシウム、チタンについてはほとんど吸着能がないことが確認された。
【0054】
【表10】
【0055】
<リサイクル試験>
吸着材についてのリサイクル使用の可能性を調べるために、以下のリサイクル試験を行った。
実施例1の吸着材について、前述したホウ素吸着試験を行った後の吸着材を取り出し、0.1Mの塩酸水溶液中に加え、2時間撹拌した。その後、吸着材をろ別し、純水で洗浄した後、0.1Mの水酸化ナトリウム水溶液で1時間撹拌し、吸着材に吸着していたホウ素を脱離させ、吸着材を再生した。
こうして再生させた吸着材に対して再度、同様の方法でホウ素吸着試験を行った。その結果、再生前の結果とほぼ同様のホウ素吸着能を示しており、リサイクル使用が十分可能であることが分かった。
【0056】
<吸着試験におけるpHの影響>
吸着材のホウ素吸着量におけるpHの影響を調べるために、塩酸または水酸化ナトリウム水溶液を用いてpHを1~13に調整したホウ素濃度100ppm試験液を用いて吸着実験を行った。吸着実験の方法については、pH調整すること以外は前述した吸着実験方法と同じである。結果を表11に示す。この表から、広いpH範囲で、ホウ素を吸着できることが分かった。特に好適なpH範囲は、2以上10以下であり、さらに好適なのは3以上9以下であり、最も好適なのは3以上8以下であった。
【0057】
【表11】
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明の吸着材を半金属含有溶液に浸漬するだけで、効率的に半金属を吸着させることができる。このため、工場排水等の排水中の半金属除去に利用することができる。
【符号の説明】
【0059】
1…炭化水素骨格、2,4…置換基部分、3…架橋部
図1
図2
図3