(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-20
(45)【発行日】2023-09-28
(54)【発明の名称】衝撃試験装置、及び衝撃試験方法
(51)【国際特許分類】
G01N 3/30 20060101AFI20230921BHJP
G01M 7/08 20060101ALI20230921BHJP
【FI】
G01N3/30 Z
G01M7/08 Z
(21)【出願番号】P 2019201423
(22)【出願日】2019-11-06
【審査請求日】2022-07-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100175802
【氏名又は名称】寺本 光生
(74)【代理人】
【識別番号】100134359
【氏名又は名称】勝俣 智夫
(74)【代理人】
【識別番号】100188592
【氏名又は名称】山口 洋
(72)【発明者】
【氏名】大岡 数則
(72)【発明者】
【氏名】吉田 博司
(72)【発明者】
【氏名】安福 大輔
(72)【発明者】
【氏名】高橋 祐衣
【審査官】野田 華代
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-190586(JP,A)
【文献】特開2013-003142(JP,A)
【文献】特開2008-286679(JP,A)
【文献】特開2006-258477(JP,A)
【文献】特開平04-244943(JP,A)
【文献】特開2011-232118(JP,A)
【文献】特開2014-85249(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 3/00-3/62
G01M 7/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
試験体に衝撃を与える衝撃試験装置であって、
前記試験体に向かって運動する台車と、
打ち出し装置によって打ち出される単一の錘体と、を備え、
前記台車は、
前端部に取り付けられる前車軸と、後端部に取り付けられる後車軸と、を有し、
前記前車軸は、ガイドレールにより、上下方向への運動を規制される上下規制前車輪を軸支する水平前車軸と、横方向への運動を規制される横規制前車輪を軸支する鉛直前車軸と、を含み、
前記後車軸は、ガイドレールにより、上下方向への運動を規制される上下規制後車輪を軸支する水平後車軸と、横方向への運動を規制される横規制後車輪を軸支する鉛直後車軸と、を備え、
前記錘体は、
前記台車に接した状態で着脱自在に取り付けられる
ことを特徴とする衝撃試験装置。
【請求項2】
前記衝撃試験装置と前記試験体との接触点から前記水平前車軸の中心までの前後方向における第1距離と、前記接触点から前記鉛直前車軸の中心までの前後方向における第2距離とは等しく、
前記接触点から前記水平後車軸の中心までの前後方向における第3距離と、前記接触点から前記鉛直後車軸の中心までの前後方向における第4距離とは等しい
ことを特徴とする請求項1に記載の衝撃試験装置。
【請求項3】
前記鉛直前車軸は、前記水平前車軸と前記台車とによって支持され、
前記鉛直後車軸は、前記水平後車軸と前記台車とによって支持される
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の衝撃試験装置。
【請求項4】
前記錘体は、前記台車の前後方向からみて、前記打ち出し装置が前記錘体を打ち出す打点と一致する位置に重心を有する
ことを特徴とする請求項1
から請求項3のいずれか1項に記載の衝撃試験装置。
【請求項5】
前記錘体は、前記台車の前後方向からみて、前記衝撃試験装置の重心が前記打点を含む前記打点より下の位置になるような位置に重心を有する
ことを特徴とする請求項
4に記載の衝撃試験装置。
【請求項6】
前記錘体は、前記試験体に直接接触するヘッドを着脱自在に備える
ことを特徴とする請求項1から請求項
5のいずれか1項に記載の衝撃試験装置。
【請求項7】
前記錘体は、中空構造である
ことを特徴とする請求項1から請求項
6のいずれか1項に記載の衝撃試験装置。
【請求項8】
前記錘体と前記台車とは、前記台車の前後方向及び横方向において、互いに嵌合している
ことを特徴とする請求項1から請求項
7のいずれか1項に記載の衝撃試験装置。
【請求項9】
請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の衝撃試験装置を用いて試験体に衝撃を与える衝撃試験方法であって、
前記試験体に向かって運動する台車に対して単一の錘体を取り付ける錘体取付工程と、
前記台車とともに前記錘体を前記試験体に向かって運動させて前記錘体を前記試験体に衝突させる衝突工程と、を備える
ことを特徴とする衝撃試験方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衝撃試験装置、及び衝撃試験方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、試験体に衝撃を与える衝撃試験装置があった。
【0003】
しかしながら、従来の衝撃試験装置は、衝撃エネルギーの調節のため、ウェイトに、別のウェイトを更に積み重ねることで重量を変えていた。そのため、必要な衝撃エネルギーに応じて衝撃試験装置の挙動又は姿勢が不安定となっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記背景技術の問題点に鑑み、挙動又は姿勢の安定した衝撃試験装置、衝撃試験システム及び衝撃試験方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の要旨は以下の通りである。
【0007】
(1)本発明の一態様に係る衝撃試験装置は、試験体に衝撃を与える衝撃試験装置であって、前記試験体に向かって運動する台車と、打ち出し装置によって打ち出される単一の錘体と、を備え、前記台車は、前端部に取り付けられる前車軸と、後端部に取り付けられる後車軸と、を有し、前記前車軸は、ガイドレールにより、上下方向への運動を規制される上下規制前車輪を軸支する水平前車軸と、横方向への運動を規制される横規制前車輪を軸支する鉛直前車軸と、を含み、前記後車軸は、ガイドレールにより、上下方向への運動を規制される上下規制後車輪を軸支する水平後車軸と、横方向への運動を規制される横規制後車輪を軸支する鉛直後車軸と、を備え、前記錘体は、前記台車に接した状態で着脱自在に取り付けられる。
(2)上記(1)において、前記衝撃試験装置と前記試験体との接触点から前記水平前車軸の中心までの前後方向における第1距離と、前記接触点から前記鉛直前車軸の中心までの前後方向における第2距離とは等しく、前記接触点から前記水平後車軸の中心までの前後方向における第3距離と、前記接触点から前記鉛直後車軸の中心までの前後方向における第4距離とは等しくてよい。
(3)上記(1)または(2)において、前記鉛直前車軸は、前記水平前車軸と前記台車とによって支持され、前記鉛直後車軸は、前記水平後車軸と前記台車とによって支持されてよい。
(4)上記(1)から(3)のいずれかにおいて、前記錘体は、前記台車の前後方向からみて、前記打ち出し装置が前記錘体を打ち出す打点と一致する位置に重心を有してよい。
(5)上記(4)において、前記錘体は、前記台車の前後方向からみて、前記衝撃試験装置の重心が前記打点を含む前記打点より下の位置になるような位置に重心を有してよい。
(6)上記(1)から(5)のいずれかにおいて、前記錘体は、前記試験体に直接接触するヘッドを着脱自在に備えてよい。
(7)上記(1)から(6)のいずれかにおいて、前記錘体は、中空構造であってよい。
(8)上記(1)から(7)のいずれかにおいて、前記錘体と前記台車とは、前記台車の前後方向及び横方向において、互いに嵌合していてよい。
(9)本発明の一態様に係る衝撃試験方法は、上記(1)から(8)のいずれか1項に記載の衝撃試験装置を用いて試験体に衝撃を与える衝撃試験方法であって、前記試験体に向かって運動する台車に対して単一の錘体を取り付ける錘体取付工程と、前記台車とともに前記錘体を前記試験体に向かって運動させて前記錘体を前記試験体に衝突させる衝突工程と、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、挙動又は姿勢の安定した衝撃試験装置、衝撃試験システム及び衝撃試験方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施形態に係る衝撃試験装置を含む衝撃試験システムを示す説明図である。
【
図2】実施形態に係る衝撃試験装置の組み立てを説明する説明図である。
【
図3】実施形態に係る衝撃試験装置の斜視図である。
【
図4】実施形態に係る衝撃試験装置の側面図である。
【
図8】実施形態に係る衝撃試験システムの断面図である。
【
図9】実施形態に係る台車及び前車軸の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
衝撃試験の条件となる衝撃エネルギーを調節するため、試験体に直接的に衝突して作用する衝撃試験装置の速度を変える場合がある。
また、衝撃試験の条件となる衝撃エネルギーの調節のため、試験体に直接的に衝突して作用する衝撃試験装置の速度ではなく、質量(又は重量)を変える場合がある。この場合、台車に既に載せられた錘体(ウェイト)に、さらに別の錘体を積み重ねることで衝撃エネルギーの調節ができる。しかしながら、このようにすると、打ち出し装置によって衝撃試験装置を打ち出す打ち出し位置(打点)が固定であれば、衝撃エネルギーの調節のために変える質量に応じて、錘体の重心と打点との偏心が大きくなってしまい、衝撃試験装置(インパクタ)に作用する、衝撃試験装置がガイドレールから浮き上がるようなピッチング方向のモーメント、又は、衝撃試験装置がガイドレールから横に外れるようなヨーイング方向のモーメントが大きくなる。この結果、衝撃試験装置の挙動又は姿勢は不安定となって、試験体に所望の衝撃を与えることができなかったり、衝撃試験装置の一部が損傷したりする原因となる。
【0011】
本発明の衝撃試験装置は、試験体に向かって運動する台車と、打ち出し装置によって打ち出される単一の錘体と、を備えている。そして、錘体は、台車に接した状態で着脱自在に取り付けられている。これにより、必要な衝撃エネルギーに応じて、錘体を丸ごと交換できるようになる。したがって、衝撃試験装置の質量を変えた場合でも、錘体の重心と打点とが近接して偏心が小さいままになる。よって、挙動又は姿勢の安定した衝撃試験装置を提供できる。
以下、本発明の実施形態を説明する。
【0012】
(実施形態)
図1は、実施形態に係る衝撃試験装置10を含む衝撃試験システム100を示す説明図である。
図2は、実施形態に係る衝撃試験装置10の組み立てを説明する説明図である。
図3は、実施形態に係る衝撃試験装置10の斜視図である。
図4は、実施形態に係る衝撃試験装置10の側面図である。
図5は、実施形態に係る錘体12の斜視図である。
図6は、実施形態に係る台車11を示す斜視図である。
図7は、実施形態に係る前車軸15を示す斜視図である。
図8は、実施形態に係る衝撃試験システム100の断面図である。
図9は、実施形態に係る台車11及び前車軸の正面図である。なお、特に説明のない限り、衝撃試験装置10が試験体200に対して相対的に運動する運動方向を前後方向といい、衝撃試験装置10を基準として試験体200の側を前方といい、衝撃試験装置10を基準として打ち出し装置20の側を後方といい、前後方向に見たときの水平方向を横方向といい、前後方向に見たときの横方向と直行する方向又は重力方向(鉛直方向)を上下方向という。
【0013】
図1に示すように、衝撃試験システム100は、試験体200に衝撃を与える衝撃試験装置10と、衝撃試験装置10を試験体200に向けて打ち出す打ち出し装置20と、衝撃試験装置10を案内するガイドレール30と、を備えている。
【0014】
打ち出し装置20によって打ち出された衝撃試験装置10は、ガイドレール30に沿って運動し、試験体200に衝突する。なお、衝撃試験システム100は、衝撃試験装置10が衝突する際の試験体200のひずみ、荷重、形状、音、温度等の物理量の変化を測定する撮像装置等の測定器(不図示)を、適宜備えてよい。
【0015】
試験体200は、衝撃が与えられた際のひずみ、荷重、形状、音、温度等の物理量の変化を測定する対象となるものである。試験体200は、例えば、車体のセンターピラーを模擬したものである。例えば、車体に側方から他の車体が衝突した際のセンターピラーの変形能力を確認する場合、試験体200として車体のセンターピラーを模擬したものを採用して衝撃試験を行う。なお、試験体200は、車体に限らず、機械構造、構造物等の他の構造体であってよい。
【0016】
打ち出し装置20は、衝撃試験装置10の後端部を打撃することにより、衝撃試験装置10に、試験体200に与える衝撃エネルギーに応じた運動エネルギーを伝達するものである。打ち出し装置20は、例えば、シリンダに対して進退自在に挿通されたピストンロッドを含む油圧アクチュエータである。
【0017】
打ち出し装置20のピストンロッドは、進退方向に中心軸を有している。
ピストンロッドの中心軸は、衝撃試験装置10の前後方向に沿うように設定されている。これにより、ピストンロッドによって衝撃試験装置10を打ち出した際の力の作用方向と、前後方向とが一致(以下、「一致」は実質的に一致を含む。)するので、衝撃試験装置10前後方向以外の方向への力が作用しないようにできる。よって、衝撃試験装置10の挙動又は姿勢を安定させることができる。
【0018】
ガイドレール30は、衝撃試験装置10が試験体200に向かうように案内する。ガイドレール30は、衝撃試験装置10が横方向又は上下方向に傾くことなく所定の姿勢を維持したまま、試験体200に向けて運動するように、衝撃試験装置10の前後方向への移動を規制せず、横方向又は上下方向への移動を規制する構造を有している。
【0019】
詳細には、
図8に示すように、ガイドレール30は、前後方向に平行で横方向に対向する一対の横方向規制面31と、前後方向に平行で上下方向に対向する一対の上下方向規制面32と、を有している。なお、
図8においてハッチングされた部分は、ガイドレール30を示す。
【0020】
図2及び
図3に示すように、衝撃試験装置10は、試験体200に向かって運動する台車11と、打ち出し装置20によって打ち出される単一の錘体12と、を備えている。衝撃試験装置10は、適宜、錘体12の前端部に取り付けられ、試験体200に直接的に作用するヘッド13を備えている。
【0021】
衝撃試験装置10は、台車11と、錘体12と、適宜のヘッド13と、締結構造C等のその他の各質量を合計した所望の質量を有している。衝撃試験装置10は、挙動又は姿勢の安定のため、横方向に対称な、形状又は質量分布を有することが好ましい。衝撃試験装置10は、打ち出し装置20から伝達されたエネルギーに相当する運動エネルギーを伴って、所定の速度で試験体200に衝突する。そのため、衝撃試験装置10は、打ち出し装置20による打ち出しの際における衝撃力及び衝突の際における衝撃力のいずれにも耐え得る所定の剛性を有している。
【0022】
(台車11)
図1に示すように、台車11は、上方に錘体12を載せた状態で試験体200に向かって運動するものである。
図2に示すように、台車11は、上方に、単一の錘体12と接した状態で、錘体12を着脱自在に取り付けることができるように、締結構造Cの一部である締結孔hを有している。締結構造Cは、例えば、台車11の前後方向に沿って並ぶ締結孔hと、締結孔hに対して下から上に向けて挿通されて台車11のねじ孔fと、ねじ孔fにねじ込まれて台車11と錘体12とを締結するボルトbと、から構成されている。なお、
図2において、締結孔h、ボルトb及びねじ孔fは、複数ある締結構造Cのうちの一組を代表している。
【0023】
図6に示すように、台車11は、錘体12に接した状態で錘体12の重量を受けるため、錘体12の形状に沿って、前後方向に細長い形状の基体111を有している。
【0024】
台車11は、基体111の下方に、車軸と、車軸に取り付けられた車輪とを備えている。
台車11は、台車11の前端部に取り付けられる前車軸15と、台車11の後端部に取り付けられる後車軸16と、を有している。
図1に示すように、前車軸15及び後車軸16は、それぞれ、車輪を介して、前後方向の移動を自由にされ、上下方向及び横方向の移動を規制された状態で、ガイドレール30に係止されている。よって、ガイドレール30に係止された前車軸15及び後車軸16により、打ち出し装置20による衝撃試験装置10の打ち出しの際に、衝撃試験装置10に生じるモーメントに抵抗できる。また、ガイドレール30に係止された前車軸15及び後車軸16により、衝撃試験装置10による試験体200への衝突の際に、衝撃試験装置10に生じるモーメントに抵抗できる。
【0025】
図7から
図9に示すように、前車軸15は、衝撃試験装置10の上下方向への運動を規制する上下規制前車輪152を軸支する水平前車軸151と、衝撃試験装置10の横方向への運動を規制する横規制前車輪154を軸支する鉛直前車軸153と、を含んでいる。なお、
図7から
図9は、前車軸15を代表して示している。
図6に示すように、後車軸16は、前車軸15と同じ(以下、「同じ」は実質的に同じを含む。)構造であってよく、衝撃試験装置10の上下方向への運動を規制する上下規制後車輪162を軸支する水平後車軸161と、衝撃試験装置10の横方向への運動を規制する横規制後車輪164を軸支する鉛直後車軸163と、を含んでいる。
【0026】
そして、
図4に示すように、衝撃試験装置10の前端部の接触点Tから水平前車軸151の中心151cまでの前後方向における第1距離D1と、接触点Tから鉛直前車軸153の中心153cまでの前後方向における第2距離D2とは等しく、接触点Tから水平後車軸161の中心161cまでの前後方向における第3距離D3と、接触点Tから鉛直後車軸163の中心163cまでの前後方向における第4距離D4とは等しくなっている。言い換えると、水平前車軸151の中心151c及び鉛直前車軸153の中心153cは、前後方向に垂直な同じ平面内において交差しており、同様に、水平後車軸161の中心161c及び鉛直後車軸163の中心163cは、前後方向に垂直な同じ平面内において交差している。このように、衝撃試験装置10は、前後方向の寸法の限界の中で、第1距離D1及び第2距離D2をできるだけ小さく、第3距離D3及び第4距離D4をできるだけ大きく確保している。よって、このような構造によれば、特に、衝突時において、衝撃試験装置10を回転させようとするモーメントに対して、ピッチング方向及びヨーイング方向のいずれに対しても同等に、効率良く抵抗できる。したがって、衝突時において、衝撃試験装置10が跳ね返る際の挙動又は姿勢を安定させることができる。よって、衝撃試験装置10の損傷を抑制できる。
【0027】
(錘体12)
図2に示すように、錘体12は、錘体12の前後方向を長手方向とする細長い立方体形状である。錘体12は、試験体200に与える衝撃エネルギーに応じて、反力として受ける衝撃荷重に対して自らが耐えることができるための所定の剛性を有し、所定の質量を有している。
図4及び
図5に示すように、錘体12は、前後方向の略中心における前後方向に対して垂直な断面において、略図心に相当する位置に、重心G0を有している。
また、錘体12は、錘体12の前後方向に対して垂直な各断面における重心Gを前後方向に繋げた線(以下、「重心線GW」という場合がある。)を有していることが好ましい。
錘体12は、例えば、鋼、鉛等の材質からなる。錘体12は、一様な質量分布であることが好ましく、材質が均質であることが好ましい。錘体12は、中実な立方体形状の塊であってよい。錘体12は、鋼板等の板面によって6面を覆った、内部空間を有する立方体形状の箱状の中空構造であってもよい。錘体12は、複数の材質を組み合わせて形成された構造体であってもよい。錘体12は、中空の内部を有する立方体形状の箱状の錘体12において、中空の内部に適宜の物体を配置して錘体12の全体の質量を調節したものであってもよい。
錘体12は、中空構造であることにより、台車11に対する位置決めをしやすいことに加えて、内部空間に適宜の質量を有する物体を配置することで簡単に質量調節ができる。中空構造の錘体12は、同じ容積(外寸法)の中実構造の錘体12に比べて、重心G0又は重心線GWの位置を変えることなく質量の小さい錘体12とすることができる。中空構造の錘体12は、6面を覆う板材の板厚又は内部空間に配置される質量調節のための物体の配置等を変えて、密度を変えることで、重心G0又は重心線GWの位置を変えることなく質量の異なる錘体12とすることができる。
【0028】
図4に示すように、錘体12は、台車11の前後方向(矢視A参照)からみて、打ち出し装置20が錘体12を打ち出す打点U(打ち出し装置20が錘体12を打ち出す方向の作用力の合力の作用線RUと衝撃試験装置10との交点)と一致する位置に重心G0を有している。言い換えると、錘体12の重心G0は、打ち出し装置20が錘体12を打ち出す作用力の合力の作用線RUの上に位置している。これにより、打ち出し装置20から錘体12への作用力の合力の作用線RUが、錘体12の重心G0から逸れることを抑制できるので、打ち出し時における衝撃試験装置10の姿勢を安定させることができる。よって、衝撃試験装置10の姿勢を安定した状態で走行させることができる。
【0029】
錘体12は、台車11の前後方向(矢視A参照)からみて、衝撃試験装置10の重心GG0が打点Uより下の位置になるような位置に重心G0を有することが好ましい。これにより、打ち出し装置20から錘体12への作用力の合力の作用線RUが、衝撃試験装置10の重心GG0より少なくとも上方に位置させることができるので、打ち出し時において衝撃試験装置10の前端部が上方に浮き上がることを抑制でき、台車11又はガイドレール30等に加わる過度の負荷を抑制でき、打ち出し時における衝撃試験装置10の姿勢を安定させることができる。よって、衝撃試験装置10の姿勢を安定した状態で走行させることができる。
【0030】
錘体12は、台車11の前後方向(矢視A参照)からみて、衝撃試験装置10の前後方向に対して垂直な各断面における重心GGを前後方向に繋げた線(以下、「重心線GS」という場合がある。)が打点Uより下の位置になるような位置に、重心線GWを有することがより好ましい。これにより、打ち出し装置20から錘体12への作用力の合力の作用線RUが、衝撃試験装置10の重心線GSより少なくとも上方に位置させることができるので、打ち出し時において衝撃試験装置10の前端部が上方に浮き上がることを抑制でき、台車11又はガイドレール30等に加わる過度の負荷を抑制でき、打ち出し時における衝撃試験装置10の姿勢を安定させることができる。よって、衝撃試験装置10の姿勢を安定した状態で走行させることができる。
【0031】
錘体12の重心線GWは、直線状であることが好ましい。すなわち、錘体12を前後方向からみたとき、重心Gは一点となっていることが好ましい。これにより、錘体12の前後方向、すなわち、錘体12が台車11と一体となる衝撃試験装置10の前後方向に対して、錘体12の重心線GWが沿うようになる。よって、衝撃試験装置10において最も慣性モーメントへの寄与度の大きい錘体12の挙動又は姿勢を安定させることができるので、衝撃試験装置10の挙動又は姿勢を安定させることができる。
【0032】
図2に示すように、錘体12は、台車11を基準とする同じ位置(例えば、台車11からの距離が同じ位置での横方向における中心位置)に重心線GWを有し、異なる質量を有する第1錘体12a、第2錘体12b、第3錘体12c等の選択群の中から一つを選択されたものであってよい。これにより、錘体12の質量を変えるために別の錘体12に交換しても、重心線GWの位置を同じ位置に維持できる。なお、錘体12の選択群におけるそれぞれの錘体12は、重心G0の位置が揃っていれば(台車11と錘体12の重心G0との位置関係が同じであれば)、外形状又は体積が異なっていてもよい。
【0033】
衝撃試験装置10は、単一の錘体12を有している。単一の錘体12は、台車11に接した状態で着脱自在に取り付けられている。すなわち、複数の錘体12のうちいずれかの錘体12は、台車11に直接的に接することなく他の錘体12に接した状態で取り付けられるものではない。このように、錘体12は単一であるので、衝撃試験装置10が、試験体200に与える衝撃エネルギーに応じた質量となるように、あらかじめ用意された異なる質量を有する錘体12の選択群の中から、一つを選択し、台車に対して取り付けることで、衝撃試験装置10の質量を簡単に変更できる。また、錘体12は単一であるので、従来のように、ある錘体の上に別の錘体を載置して取り付けることによって、重心G0の位置がずれることがなく、ある錘体12から別の質量の錘体12に変更しても、重心G0の位置を同じに維持できる。よって、打ち出し時及び衝突時において、衝撃試験装置10の挙動又は姿勢を安定させることができる。さらに、錘体12は単一であるので、従来のように、ある錘体に別の錘体を取り付けるための取付部(ボルト等)が損傷するおそれがない。よって、耐久性の高い衝撃試験装置10を提供できる。
【0034】
錘体12は、台車11に接した状態で着脱自在に取り付けられている。これにより、
図2に示すように、衝撃試験装置10が、試験体200に与える衝撃エネルギーに応じた質量となるように、あらかじめ用意された異なる質量を有する錘体12の選択群(第1錘体12a,第2錘体12b,第3錘体12c,・・・)の中から、一つを選択し、台車に対して取り付けることができる。よって、衝撃試験装置10の質量を簡単に変更できる。また、錘体12を、台車11に対して、確実に位置決めできる。よって、錘体12の重心G0の位置が決まっており、台車11に対する錘体12の位置関係が決まっているので、錘体12を台車11から取り外し、その後で他の錘体12を取り付けても、衝撃試験装置10の重心GG0を同じ位置にできる。
【0035】
図4に示すように、錘体12は、台車11の前後方向(矢視B参照)からみて、衝撃試験装置10が試験体200から受ける反力の合力の作用線RTと衝撃試験装置10(ヘッド13)との交点である接触点Tと一致する位置に重心G0を有している。言い換えると、錘体12の重心G0は、試験体200から衝撃試験装置10への作用力の合力の作用線RTの上に位置している。これにより、試験体200から衝撃試験装置10への作用力の合力の作用線RTが、錘体12の重心G0から逸れることを抑制できるので、衝突時における衝撃試験装置10の姿勢を安定させることができる。
【0036】
錘体12は、台車11の前後方向(矢視B参照)からみて、衝撃試験装置10の重心GG0が接触点Tより下の位置になるような位置に重心G0を有することが好ましい。これにより、試験体200から衝撃試験装置10への作用力の合力の作用線RUが、衝撃試験装置10の重心GG0より少なくとも上方に位置させることができるので、衝突時において衝撃試験装置10の後端部が上方に浮き上がることを抑制でき、台車11又はガイドレール30等に加わる過度の負荷を抑制でき、衝突時における衝撃試験装置10の姿勢を安定させることができる。
【0037】
錘体12は、台車11の前後方向(矢視B参照)からみて、衝撃試験装置10の重心線GSが接触点Tより下の位置になるような位置に、重心線GWを有することがより好ましい。これにより、試験体200から衝撃試験装置10への作用力の合力の作用線RTが、衝撃試験装置10の重心線GSより少なくとも上方に位置させることができるので、衝突時において衝撃試験装置10の後端部が上方に浮き上がることを抑制でき、台車11又はガイドレール30等に加わる過度の負荷を抑制でき、打ち出し時における衝撃試験装置10の姿勢を安定させることができる。
【0038】
錘体12は、試験体200に直接接触するヘッド13を着脱自在に備えている。これにより、衝撃試験が模擬する実際の状態に応じて、錘体12を台車11から着脱することなく、錘体12に対してヘッド13を着脱できる。よって、衝撃試験が模擬する実際の状態に応じて、衝撃試験装置10の組み立て及び段取りを効率的にできる。
【0039】
錘体12と台車11とは、台車11の前後方向及び横方向において、互いに嵌合している。すなわち、錘体12と台車11とは、互いに接しており、台車11の前後方向及び横方向において、互いに遊び(隙間)なく係止し合う嵌合部を有している。これにより、打ち出し時及び衝突時において、台車11と錘体12との間に、台車11の前後方向又は横方向に互いにずれるような力が作用しても、台車11と錘体12とがずれることなく両者の一体的な状態を維持できる。よって、衝撃試験装置10は、所望の衝撃エネルギーを確実に試験体200に対して伝達できる。また、打ち出し時及び衝突時において、台車11と錘体12との間に、台車11の前後方向又は横方向に互いにずれるような力が作用しても、その力を嵌合部が先に受けるので、錘体12と台車11とを締結する締結構造Cにかかる負担を軽減できる。よって、耐久性の高い衝撃試験装置10を提供できる。
【0040】
例えば、
図2から
図6に示すように、嵌合部の例として、台車11及び錘体12のいずれか一方は、横方向係止部113を有し、他方は横方向被係止部123を有している。また、台車11及び錘体12のいずれか一方は、前後方向被係止部114を有し、他方は前後方向係止部124を有している。
【0041】
具体的には、
図6に示すように、台車11は、横方向係止部113を有している。横方向係止部113は、錘体12を横方向の両側から挟むような位置に、基体111から上方に突出して設けられている。
一方、
図5に示すように、錘体12は、台車11の横方向係止部113に対して横方向に係止される横方向被係止部123を有している。横方向被係止部123は、台車11の横方向係止部113の横方向の間隔と同じ横方向の外寸法Dを有している。
横方向係止部113は、台車11の前端部及び後端部にそれぞれ設けられている。これにより、台車11と錘体12との横方向の相対運動のみならず、ヨーイング方向の相対運動を効果的に規制できる。
【0042】
また、
図5に示すように、錘体12は、前後方向係止部124を有している。前後方向係止部124は、台車11を前後方向の両側から挟むような位置に、錘体12の下部から下方に突出して設けられている。
一方、
図6に示すように、台車11は、前後方向係止部124に対して前後方向に係止される前後方向被係止部114を有している。前後方向被係止部114は、錘体12の前後方向係止部124の前後方向の間隔と同じ前後方向の外寸法Eを有している。
前後方向被係止部114は、台車11の前端部及び後端部のそれぞれに設けられている。これにより、台車11と錘体12との前後方向の相対運動のみならず、ピッチング方向の相対運動を効果的に規制できる。
【0043】
(ヘッド13)
図1に示すように、ヘッド13は、試験体200に直接的に接触して、試験体200に衝撃試験装置10の運動エネルギーを伝達するためのものである。ヘッド13は、衝撃試験装置10の前端部に備えられる。ヘッド13は、錘体12に対して着脱自在に固定されている。ヘッド13は、台車11に対して着脱自在に固定されていてもよい。これにより、錘体12のバリエーションとヘッド13のバリエーションとの多様な組み合わせに対応できる。
【0044】
図2及び
図3に示すように、ヘッド13は、試験体200に直接的に接触して、試験体200に衝撃試験装置10の運動エネルギーを伝達するための接触部131と、接触部131を錘体12に対して接続して着脱自在に固定する接続部132と、を備えている。
【0045】
ヘッド13は、模擬される構造体(車体等)と、想定される構造体への衝撃の形態(作用する荷重の位置、方向、大きさ等)との関係に応じて、異なる形状を有する第1ヘッド13a、第2ヘッド13b、第3ヘッド13c等の選択群の中から一つを選択されたものであってよい。これにより、模擬される構造体と、想定される構造体への衝撃の形態との関係に応じて、錘体12又は台車11を交換することなく、ヘッド13を交換することで対応できる。
第1ヘッド13aは、例えば、車体が走行する路面から鉛直に設けられた電柱等の支柱に向けて、車体が相対的に衝突する状況を模擬するような衝撃試験に用いられる。そのため、第1ヘッド13aの接触部131aは、前方に膨出し、鉛直軸を中心とする円弧状の断面を有する曲面を備えている。
【0046】
第2ヘッド13bは、例えば、車体側面に車が衝突する状況を模擬するような衝撃試験に用いられる。そのため、第2ヘッド13bの接触部131bは、前方に膨出し、横方向に沿う横軸を中心とする円弧状の断面を有する曲面を備えている。なお、
図2においては、第2ヘッド13bの接触部131bは、互いに平行な二つの横軸のそれぞれを中心とする円弧状の断面を有する二つの曲面を備えている。なお、曲面は、例えば、模擬する衝突変形形状に応じて、単一の曲面であっても、三つ以上の複数であってもよい。
【0047】
第3ヘッド13cは、例えば、車体側面に車が衝突する状況を模擬するような衝撃試験に用いられる。第3ヘッド13cの接触部131cは、前後方向に対して傾斜する傾斜面を備えている。これにより、衝突変形形状に作用するような状況を模擬できる。
【0048】
ヘッド13は、その重心GHが、衝突時における試験体200からの反力の合力の作用線RT上に位置するような形状であることが好ましい。これにより、衝突時において、衝撃試験装置10に対して偏心した荷重(反力の合力)が作用するのを抑制でき、衝突時における衝撃試験装置10の挙動又は姿勢を安定させることができる。
【0049】
ヘッド13の重心GHは、錘体12の重心線GWの延長線上に位置することが好ましい。また、ヘッド13の重心GHは、衝撃試験装置10の重心線GSの延長線上に位置することがより好ましい。すなわち、衝撃試験装置10の重心線GSは、直線状であることが好ましい。これにより、打ち出し時及び衝突時において、衝撃試験装置10の挙動又は姿勢を安定させることができる。また、ヘッド13を別の形状のヘッド13に交換しても、重心線GSの位置を同じ位置に維持できる。
【0050】
(衝撃試験システム)
図1に示すように、試験体200に衝撃を与える衝撃試験システム100は、試験体200に向けて運動する衝撃試験装置10と、衝撃試験装置10を案内するガイドレール30を備えている。
【0051】
衝撃試験装置10は、
図2に示すように、前端部に取り付けられる前車軸15と、後端部に取り付けられる後車軸16と、を有している。
前車軸15は、ガイドレール30により、上下方向への運動を規制される上下規制前車輪152を軸支する水平前車軸151と、横方向への運動を規制される横規制前車輪154を軸支する鉛直前車軸153と、を含んでいる。
後車軸16は、ガイドレール30により、上下方向への運動を規制される上下規制後車輪162を軸支する水平後車軸161と、横方向への運動を規制される横規制後車輪164を軸支する鉛直後車軸163と、を含んでいる。
このように、衝撃試験装置10は、それぞれ車輪を有する前車軸15及び後車軸16を有しているので、衝撃試験装置10をガイドレール30に沿って運動する際の抵抗を抑制できる。
【0052】
また、
図4に示すように、衝撃試験装置10と試験体200(不図示)との接触点Tから水平前車軸151の中心151cまでの前後方向における第1距離D1と、接触点Tから鉛直前車軸153の中心153cまでの前後方向における第2距離D2とは等しくなっている。そして、接触点Tから水平後車軸161の中心161cまでの前後方向における第3距離D3と、接触点Tから鉛直後車軸163の中心163cまでの前後方向における第4距離D4とは等しくなっている。衝撃試験装置10は、このような関係で、水平前車軸151、鉛直前車軸153、水平後車軸161、鉛直後車軸163を配置していることにより、衝撃試験装置10を前後方向にみたときの接触点Tが、錘体12の重心G0又は衝撃試験装置10の重心GG0からずれていることによって生じる、衝突時における衝撃試験装置10を上下方向、横方向、ピッチング方向又はヨーイング方向に運動させるモーメント等の力に対して、いずれかの方向への力に対する抵抗性が比較的脆弱であるというような偏った抵抗性を有することなく、いずれの方向への力に対しても満遍なく抵抗できる。よって、衝突時における衝撃試験装置10の挙動又は姿勢を安定させることができる。
【0053】
さらに、打ち出し装置20(不図示)から衝撃試験装置10への打点Uから水平前車軸151の中心151cまでの前後方向における距離と、打点Uから鉛直前車軸153の中心153cまでの前後方向における距離とは等しくなっている。そして、打点Uから水平後車軸161の中心161cまでの前後方向における距離と、打点Uから鉛直後車軸163の中心163cまでの前後方向における距離とは等しくなっている。衝撃試験装置10は、このような関係で、水平前車軸151、鉛直前車軸153、水平後車軸161、鉛直後車軸163を配置していることにより、衝撃試験装置10を前後方向にみたときの打点Uが、錘体12の重心G0又は衝撃試験装置10の重心GG0からずれていることによって生じる、打ち出し時における衝撃試験装置10を上下方向、横方向、ピッチング方向又はヨーイング方向に運動させる力に対して、満遍なく抵抗できる。よって、打ち出し時における衝撃試験装置10の挙動又は姿勢を安定させることができる。
【0054】
図9は、実施形態に係る台車11及び前車軸15の正面図である。
図9に示すように、前車軸15において、鉛直前車軸153は、水平前車軸151と台車11とによって支持されている。同様に、前車軸15と同じ構造を有する後車軸16(不図示)において、鉛直後車軸163は、水平後車軸161と台車11とによって支持されている。
このように、鉛直前車軸153は、水平前車軸151と台車11とによって支持されているので、水平前車軸151と鉛直前車軸153とを交差させて近接して配置できるようになる。同様に、鉛直後車軸163は、水平後車軸161と台車11とによって支持されているので、水平後車軸161と鉛直後車軸163とを交差させて近接して配置できるようになる。
これにより、台車11の基体111に対して水平前車軸151を支持する支持部の機能に、鉛直前車軸153の機能を兼ねさせることができる。同様に、台車11の基体111に対して水平後車軸161を支持する支持部の機能に、鉛直後車軸163の機能を兼ねさせることができる。したがって、前車軸15及び後車軸16の構造をコンパクトにできる。よって、台車11の構造をコンパクトにできる。
【0055】
(衝撃試験方法)
次に、衝撃試験方法について説明する。
(1)試験体200に付与する所望の衝撃エネルギーに応じた質量を有する単一の錘体12を選択群の中から選択する。
(2)台車11に対して、締結構造Cにより、その単一の錘体12を取り付ける(錘体取付工程)。錘体12は、台車11の前後方向からみて、打ち出し装置20が錘体12を打ち出す打点Uと一致する位置に重心G0を有している。
(3)適宜、錘体12の前端部に、試験体200に作用する所望の形状を有するヘッド13を取り付ける。
(4)台車11をガイドレール30に据え付ける。具体的には、ガイドレール30の溝に、台車11の車輪を収める。
(5)打ち出し装置20により、錘体12の後端部を打撃して打ち出すことにより、台車11とともに錘体12を試験体200に向かって運動させて、錘体12を試験体200に衝突させる(衝突工程)。
このようにして、衝撃試験を行う。錘体12の重心G0は打点Uと一致しているので、打ち出し時の衝撃試験装置10の挙動又は姿勢を安定させて衝撃試験を行うことができる。
【0056】
(その他の実施形態)
上述の実施形態では、衝撃試験装置10、衝撃試験システム100、衝撃試験方法が略水平な同一平面上で用いられる場合で説明したが、これに限らず、傾斜面上又は鉛直面上で用いられてもよい。この場合、重力を利用して、試験体200に衝撃エネルギーを付与できる。
【符号の説明】
【0057】
10 衝撃試験装置
100 衝撃試験システム
11 台車
111 基体
113 横方向係止部
114 前後方向被係止部
12 錘体
12a 第1錘体
12b 第2錘体
12c 第3錘体
123 横方向被係止部
124 前後方向係止部
13 ヘッド
13a 第1ヘッド
13b 第2ヘッド
13c 第3ヘッド
131 接触部
131a 接触部
131b 接触部
131c 接触部
132 接続部
15 前車軸
151 水平前車軸
151c 水平前車軸の中心
152 上下規制前車輪
153 鉛直前車軸
153c 鉛直前車軸の中心
154 横規制前車輪
16 後車軸
20 打ち出し装置
30 ガイドレール
161 水平後車軸
161c 水平後車軸の中心
162 上下規制後車輪
163 鉛直後車軸
163c 鉛直後車軸の中心
164 横規制後車輪
200 試験体
A 矢視A
b ボルト
B 矢視B
C 締結構造
D 外寸法
D1 第1距離
D2 第2距離
D3 第3距離
D4 第4距離
E 外寸法
f 孔
G0 錘体の重心
GG0 衝撃試験装置の重心
GH ヘッドの重心
GS 衝撃試験装置の重心線
GW 錘体の重心線
h 締結孔
RT 作用線
RU 作用線
T 接触点
U 打点