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特許7352155コア、インダクタ部品およびコアの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-20
(45)【発行日】2023-09-28
(54)【発明の名称】コア、インダクタ部品およびコアの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01F 27/24 20060101AFI20230921BHJP
   H01F 27/32 20060101ALI20230921BHJP
   H01F 17/04 20060101ALI20230921BHJP
   H01F 41/02 20060101ALI20230921BHJP
【FI】
H01F27/24 Q
H01F27/32 140
H01F17/04 F
H01F17/04 A
H01F41/02 D
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019170637
(22)【出願日】2019-09-19
(65)【公開番号】P2021048320
(43)【公開日】2021-03-25
【審査請求日】2022-06-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100132252
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 環
(72)【発明者】
【氏名】杉山 郁乃
【審査官】秋山 直人
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-153772(JP,A)
【文献】特開2016-207941(JP,A)
【文献】特開平08-138948(JP,A)
【文献】特開2015-099902(JP,A)
【文献】実開昭53-071736(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 27/24
H01F 27/32
H01F 17/04
H01F 41/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状のコア本体部と、
前記コア本体部を覆う絶縁膜と
を備え、
前記コア本体部は、径方向外側の第1側面と、径方向内側の第2側面と、前記コア本体部の中心軸方向に対向する第1端面および第2端面と、前記第1側面と前記第1端面の間に設けられた第1角部と、前記第1側面と前記第2端面の間に設けられた第2角部と、前記第2側面と前記第1端面の間に設けられた第3角部と、前記第2側面と前記第2端面の間に設けられた第4角部とを有し、
前記絶縁膜は、前記第1角部を覆う第1角部分と、前記第2角部を覆う第2角部分と、前記第3角部を覆う第3角部分と、前記第4角部を覆う第4角部分と、前記第1側面における前記コア本体部の中心軸方向の中央に位置する第1中央部を覆う第1中央部分と、前記第2側面における前記コア本体部の中心軸方向の中央に位置する第2中央部を覆う第2中央部分とを有し、
前記第1から前記第4角部分のそれぞれの厚みの少なくとも一つの厚みは、前記第1と前記第2中央部分のそれぞれの厚みの少なくとも一つの厚みよりも厚
前記絶縁膜は、前記コア本体部の少なくとも前記第1側面および前記第2側面を覆う樹脂層と、前記コア本体部の前記第1端面と前記第2端面の少なくとも一方の面を覆う樹脂シートとを備え、
前記絶縁膜は、前記コア本体部に接触する前記樹脂層と前記樹脂層に接触する前記樹脂シートとの2層から構成される、コア。
【請求項2】
環状のコア本体部と、
前記コア本体部を覆う絶縁膜と
を備え、
前記コア本体部は、径方向外側の第1側面と、径方向内側の第2側面と、前記コア本体部の中心軸方向に対向する第1端面および第2端面と、前記第1側面と前記第1端面の間に設けられた第1角部と、前記第1側面と前記第2端面の間に設けられた第2角部と、前記第2側面と前記第1端面の間に設けられた第3角部と、前記第2側面と前記第2端面の間に設けられた第4角部とを有し、
前記絶縁膜は、前記第1角部を覆う第1角部分と、前記第2角部を覆う第2角部分と、前記第3角部を覆う第3角部分と、前記第4角部を覆う第4角部分と、前記第1側面における前記コア本体部の中心軸方向の中央に位置する第1中央部を覆う第1中央部分と、前記第2側面における前記コア本体部の中心軸方向の中央に位置する第2中央部を覆う第2中央部分とを有し、
前記第1から前記第4角部分のそれぞれの厚みの少なくとも一つの厚みは、前記第1と前記第2中央部分のそれぞれの厚みの少なくとも一つの厚みよりも厚
前記絶縁膜は、前記コア本体部の少なくとも前記第1側面および前記第2側面を覆う樹脂層と、前記コア本体部の前記第1端面と前記第2端面の少なくとも一方の面を覆う樹脂シートとを備え、
前記絶縁膜の前記第1から前記第4角部分の少なくとも一つは、前記樹脂層に設けられた傾斜面を含む、コア。
【請求項3】
環状のコア本体部と、
前記コア本体部を覆う絶縁膜と
を備え、
前記コア本体部は、径方向外側の第1側面と、径方向内側の第2側面と、前記コア本体部の中心軸方向に対向する第1端面および第2端面と、前記第1側面と前記第1端面の間に設けられた第1角部と、前記第1側面と前記第2端面の間に設けられた第2角部と、前記第2側面と前記第1端面の間に設けられた第3角部と、前記第2側面と前記第2端面の間に設けられた第4角部とを有し、
前記絶縁膜は、前記第1角部を覆う第1角部分と、前記第2角部を覆う第2角部分と、前記第3角部を覆う第3角部分と、前記第4角部を覆う第4角部分と、前記第1側面における前記コア本体部の中心軸方向の中央に位置する第1中央部を覆う第1中央部分と、前記第2側面における前記コア本体部の中心軸方向の中央に位置する第2中央部を覆う第2中央部分とを有し、
前記第1から前記第4角部分のそれぞれの厚みの少なくとも一つの厚みは、前記第1と前記第2中央部分のそれぞれの厚みの少なくとも一つの厚みよりも厚
前記絶縁膜は、前記コア本体部の少なくとも前記第1側面および前記第2側面を覆う樹脂層と、前記コア本体部の前記第1端面と前記第2端面の少なくとも一方の面を覆う樹脂シートとを備え、
前記絶縁膜の前記第1から前記第4角部分の少なくとも一つは、前記樹脂シートに設けられた凸面を含む、コア。
【請求項4】
前記絶縁膜は、前記コア本体部に接触する前記樹脂シートの1層から構成される、請求項2又は3に記載のコア。
【請求項5】
請求項1からの何れか一つに記載のコアと、
前記コアに巻回されたコイルと
を備える、インダクタ部品。
【請求項6】
前記コイルは、複数のピン部材が接続されてなる、請求項に記載のインダクタ部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コア、インダクタ部品およびコアの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、インダクタ部品としては、実開平4-67309号公報(特許文献1)に記載されたものがある。このインダクタ部品は、環状のコアと、コアに巻回されたコイルとを備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】実開平4-67309号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、前記従来のようなインダクタ部品では、コアは、コア本体部と、コア本体部を覆う絶縁膜とを有する。通常、絶縁膜は、コア本体部に樹脂材料を塗布し乾燥し硬化させることで、形成される。
【0005】
コア本体部は、外周面と、内周面と、コア本体部の中心軸方向に対向する第1端面および第2端面とを有する。外周面および内周面と第1端面および第2端面との間に、角部が設けられている。
【0006】
そして、コア本体部に樹脂材料を塗布する際、コア本体部の角部には、樹脂材料が留まりにくいため、絶縁膜のうちコア本体部の角部を覆う角部分は、その厚みが薄くなるおそれがある。
【0007】
このため、コアに巻回したコイルが絶縁膜の角部分に接触すると、絶縁膜の角部分が欠けてコア本体部の角部が露出するおそれがある。これにより、コア本体部が導電性を有する場合、コイルとコア本体部が通電するおそれがあり、一方、コア本体部が導電性を有さない場合、コイルがコア本体部の角部に接触することでコイルが磨耗するおそれがある。
【0008】
そこで、本開示は、絶縁膜の角部分の欠けを低減できるコア、コアを有するインダクタ部品、および、コアの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するため、本開示の一態様であるコアは、
環状のコア本体部と、
前記コア本体部を覆う絶縁膜と
を備え、
前記コア本体部は、径方向外側の第1側面と、径方向内側の第2側面と、前記コア本体部の中心軸方向に対向する第1端面および第2端面と、前記第1側面と前記第1端面の間に設けられた第1角部と、前記第1側面と前記第2端面の間に設けられた第2角部と、前記第2側面と前記第1端面の間に設けられた第3角部と、前記第2側面と前記第2端面の間に設けられた第4角部とを有し、
前記絶縁膜は、前記第1角部を覆う第1角部分と、前記第2角部を覆う第2角部分と、前記第3角部を覆う第3角部分と、前記第4角部を覆う第4角部分と、前記第1側面における前記コア本体部の中心軸方向の中央に位置する第1中央部を覆う第1中央部分と、前記第2側面における前記コア本体部の中心軸方向の中央に位置する第2中央部を覆う第2中央部分とを有し、
前記第1から前記第4角部分のそれぞれの厚みの少なくとも一つの厚みは、前記第1と前記第2中央部分のそれぞれの厚みの少なくとも一つの厚みよりも厚い。
【0010】
前記態様によれば、コアにコイルを巻回してインダクタ部品を製造する際、コイルが絶縁膜の角部分に接触しても、絶縁膜の角部分の厚みは、絶縁膜の中央部分の厚みよりも厚いので、絶縁膜の角部分の欠けを低減できる。これにより、コア本体部の角部の露出を低減し、コア本体部が導電性を有する場合、コイルとコア本体部の通電を低減し、一方、コア本体部が導電性を有さない場合、コイルがコア本体部の角部に接触することによるコイルの磨耗を低減できる。
【0011】
また、コアの一実施形態では、前記絶縁膜は、前記コア本体部の少なくとも前記第1側面および前記第2側面を覆う樹脂層と、前記コア本体部の前記第1端面と前記第2端面の少なくとも一方の面を覆う樹脂シートとを備える。
【0012】
前記実施形態によれば、樹脂層と樹脂シートに絶縁性の機能を持たせることで、コアの絶縁性を確保できる。樹脂シートに平坦性の機能を持たせることで、コアの第1端面および第2端面の少なくとも一方の面を平坦にでき、コアにコイルを巻回する際にコイルの巻乱れを防止できる。
【0013】
また、コアの一実施形態では、前記絶縁膜は、前記コア本体部に接触する前記樹脂層と前記樹脂層に接触する前記樹脂シートとの2層から構成される。
【0014】
前記実施形態によれば、絶縁膜は、2層から構成されるので、コアの第1端面および第2端面の少なくとも一方の面の絶縁性を十分に確保できる。
【0015】
また、コアの一実施形態では、前記絶縁膜は、前記コア本体部に接触する前記樹脂シートの1層から構成される。
【0016】
前記実施形態によれば、絶縁膜は、1層から構成されるので、コアの中心軸方向の寸法を小さくできる。
【0017】
また、コアの一実施形態では、前記絶縁膜の前記第1から前記第4角部分の少なくとも一つは、前記樹脂層に設けられた傾斜面を含む。
【0018】
また、コアの一実施形態では、前記絶縁膜の前記第1から前記第4角部分の少なくとも一つは、前記樹脂シートに設けられた凸面を含む。
【0019】
また、インダクタ部品の一実施形態では、
前記コアと、
前記コアに巻回されたコイルと
を備える。
【0020】
前記実施形態によれば、絶縁膜の角部分の欠けを低減できるコアを有するインダクタ部品を実現できる。
【0021】
また、インダクタ部品の一実施形態では、前記コイルは、複数のピン部材が接続されてなる。
【0022】
前記実施形態によれば、コイルは、複数のピン部材から構成されるので、コイルの剛性が大きくなるが、絶縁膜の角部分の欠けを低減できる。
【0023】
また、コアの製造方法の一実施形態では、
コア本体部の第1側面、第2側面および第1端面に樹脂層を塗布する工程と、
樹脂シートを準備する工程と、
前記コア本体部の前記第1端面側を前記樹脂シートに載せる工程と
を備える。
【0024】
前記実施形態によれば、コア本体部に樹脂層および樹脂シートを形成することで、コア本体部を樹脂層および樹脂シートから構成される絶縁膜で覆うことができる。これにより、コア本体部の第1端面と第1、第2側面との間の角部を絶縁膜により確実に覆うことができる。したがって、コアにコイルを巻回してインダクタ部品を製造する際、コイルが絶縁膜の角部分に接しても、絶縁膜の角部分の欠けを低減できる。
【0025】
また、コア本体部の側面に塗布した樹脂層は、重力により、コア本体部の第1端面側に垂れ流れる。これにより、樹脂層の厚みは、コア本体部の第1端面側ほど厚くなる。したがって、コア本体部の角部を覆う樹脂層の厚みを厚くできる。さらに、コア本体部の第1端面側を樹脂シートで覆うため、樹脂シートでもコア本体部の角部を覆うことができる。
【0026】
また、コアの製造方法の一実施形態では、前記コア本体部を前記樹脂シートに載せる工程では、前記コア本体部を前記樹脂シートに押し付ける。
【0027】
前記実施形態によれば、コア本体部を樹脂シートに押し付けるので、樹脂シートがコア本体部の角部で盛り上がってコア本体部の角部を覆うことができる。
【発明の効果】
【0028】
本開示の一態様であるコア、インダクタ部品およびコアの製造方法によれば、絶縁膜の角部分の欠けを低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】本発明の一実施形態のインダクタ部品を示す上方斜視図である。
図2】インダクタ部品の下方斜視図である。
図3】インダクタ部品の内部を示す上方斜視図である。
図4】インダクタ部品の分解斜視図である。
図5】インダクタ部品の平面図である。
図6】インダクタ部品の断面図である。
図7】コアの断面図である。
図8】コアの拡大断面図である。
図9A】コアの製造方法を説明する説明図である。
図9B】コアの製造方法を説明する説明図である。
図9C】コアの製造方法を説明する説明図である。
図9D】コアの製造方法を説明する説明図である。
図9E】コアの製造方法を説明する説明図である。
図10】マスクの平面図である。
図11】コアの拡大画像図である。
図12】第2実施形態のコアの拡大断面図である。
図13】第3実施形態のコアの拡大断面図である。
図14】第1実施形態のコアを製造する他の方法を説明する説明図である。
図15】コイルの折曲ピン部材をコアに巻き付けたときの状態を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本開示の一態様であるインダクタ部品を図示の実施の形態により詳細に説明する。なお、図面は一部模式的なものを含み、実際の寸法や比率を反映していない場合がある。
【0031】
(第1実施形態)
(インダクタ部品の構成)
図1は、本発明の一実施形態のインダクタ部品1を示す上方斜視図である。図2は、インダクタ部品1の下方斜視図である。図3は、インダクタ部品1の内部を示す上方斜視図である。図4は、インダクタ部品1の分解斜視図である。
【0032】
図1から図4に示すように、インダクタ部品1は、ケース2と、ケース2内に収納された環状のコア3と、コア3に巻回された第1コイル41および第2コイル42と、ケース2に取り付けられ、第1コイル41および第2コイル42に接続された第1~第4電極端子51~54とを有する。インダクタ部品1は、コモンモードチョークコイルである。
【0033】
ケース2は、底板部21と、底板部21を覆う箱状の蓋部22とを有する。ケース2は、難燃性を有する材料から構成され、例えば、ポリフェニレンサルファイド樹脂(PPS)またはポリフタルアミド樹脂(PPA)などの樹脂、または、セラミックスから構成される。底板部21には、コア3の中心軸が直交するように、コア3が設置されている。コア3の中心軸とは、コア3の内径孔部の中心軸をいう。ケース2(底板部21および蓋部22)の形状は、コア3の中心軸方向からみて、矩形である。この実施形態では、ケース2の形状は、長方形である。ここで、ケース2の短手方向をX方向とし、ケース2の長手方向をY方向とし、ケース2の高さ方向をZ方向とする。
【0034】
第1~第4電極端子51~54は、底板部21に取り付けられている。第1電極端子51と第2電極端子52は、底板部21のY方向に対向する2つの隅に位置し、第3電極端子53と第4電極端子54は、底板部21のY方向に対向する2つの隅に位置している。第1電極端子51と第3電極端子53は、X方向に対向し、第2電極端子52と第4電極端子54は、X方向に対向している。
【0035】
コア3の形状(つまり、コア3の内周面および外周面の形状)は、中心軸方向からみて、長円形(トラック形状)である。コア3は、中心軸方向からみて、長軸に沿って延在し短軸方向に対向する一対の長手部分31と、短軸に沿って延在し長軸方向に対向する一対の短手部分32とを含む。なお、コア3の形状は、長方形または楕円形であってもよい。
【0036】
コア3は、例えば、フェライトなどのセラミックコア、または、金属系コアから構成される。コア3は、中心軸方向に対向する2つの端面を有する。第1端面(底面)は、底板部21の内面に対向する。第2端面(上面)は、蓋部22の内面に対向する。コア3は、コア3の長軸方向がY方向に一致するように、ケース2に収納される。
【0037】
第1コイル41は、第1電極端子51と第2電極端子52との間で、コア3に巻回されている。第1コイル41の一端は、第1電極端子51に接続される。第1コイル41の他端は、第2電極端子52に接続される。
【0038】
第2コイル42は、第3電極端子53と第4電極端子54との間で、コア3に巻回されている。第2コイル42の一端は、第3電極端子53に接続される。第2コイル42の他端は、第4電極端子54に接続される。
【0039】
第1コイル41および第2コイル42は、コア3の短軸方向に対向するように、長軸方向に沿って巻回される。つまり、第1コイル41は、コア3の一方の長手部分31に巻回され、第2コイル42は、コア3の他方の長手部分31に巻回される。第1コイル41の巻回軸と第2コイル42の巻回軸は、並走する。第1コイル41および第2コイル42は、コア3の長軸に対して、対称となる。
【0040】
第1コイル41の巻数と第2コイル42の巻数とは、同じである。第1コイル41のコア3に対する巻回方向と第2コイル42のコア3に対する巻回方向とは、逆方向となる。つまり、第1コイル41の第1電極端子51から第2電極端子52に向かう巻回方向と、第2コイル42の第3電極端子53から第4電極端子54に向かう巻回方向とは、逆方向となる。
【0041】
そして、コモンモードの電流は、第1コイル41において第1電極端子51から第2電極端子52に向かって流れ、第2コイル42において第3電極端子53から第4電極端子54に向かって流れる。コモンモードの電流が第1コイル41に流れると、コア3内には、第1コイル41による第1磁束が発生する。コモンモードの電流が第2コイル42に流れると、コア3内には、第1磁束と同じ方向に第2磁束が発生する。このため、第1コイル41とコア3、および、第2コイル42とコア3は、インダクタンス成分として働き、コモンモード成分のノイズが除去される。
【0042】
第1コイル41は、複数のピン部材が、例えばレーザ溶接やスポット溶接、はんだ接合等により接続されてなる。複数のピン部材は、プリント配線や導線でなく、棒状部材である。ピン部材は、剛性を有し、導線よりも折り曲げにくい。
【0043】
複数のピン部材は、略U字状に折り曲げられた折曲ピン部材410と、略直線状に延在された直線ピン部材411,412とを含む。第1コイル41は、一端から他端に順に、第1直線ピン部材411と、複数組の折曲ピン部材410および第2直線ピン部材412と、第1直線ピン部材411とを含む。第1直線ピン部材411と第2直線ピン部材412の長さは、異なる。
【0044】
折曲ピン部材410および第2直線ピン部材412は、例えばレーザ溶接やスポット溶接、はんだ接合等により交互に接続される。折曲ピン部材410の一端に第2直線ピン部材412の一端を接続し、第2直線ピン部材412の他端を他の折曲ピン部材410の一端に接続する。これを繰り返すことにより、複数の折曲ピン部材410および第2直線ピン部材412は、コア3に螺旋状に巻回される。つまり、1組の折曲ピン部材410および第2直線ピン部材412によって、1ターンの単位要素が構成される。
【0045】
第1電極端子51は、一方の第1直線ピン部材411に接続され、この第1直線ピン部材411は、この第1直線ピン部材に隣接する折曲ピン部材410の一端に接続される。第2電極端子52は、他方の第1直線ピン部材411に接続され、この第1直線ピン部材411は、この第1直線ピン部材411に隣接する第2直線ピン部材412の一端に接続される。
【0046】
第2コイル42は、第1コイル41と同様に、複数のピン部材から構成される。つまり、第2コイル42は、一端から他端に順に、第1直線ピン部材421と、複数組の折曲ピン部材420および第2直線ピン部材422と、第1直線ピン部材421とを含む。コア3には、折曲ピン部材420および第2直線ピン部材422が交互に接続されて巻回されている。
【0047】
第3電極端子53は、一方の第1直線ピン部材421に接続され、この第1直線ピン部材421は、この第1直線ピン部材421に隣接する折曲ピン部材420の一端に接続される。第4電極端子54は、他方の第1直線ピン部材421に接続され、この第1直線ピン部材421は、この第1直線ピン部材421に隣接する第2直線ピン部材422の一端に接続される。
【0048】
図5は、インダクタ部品1の平面図である。図6は、インダクタ部品1のY方向の中心を通過するXZ断面図である。図5図6に示すように、第1コイル41および第2コイル42(ピン部材410~412,420~422)は、それぞれ、導体部と導体部を覆う被膜とを含む。導体部は、例えば、銅線であり、被膜は、例えば、ポリアミドイミド樹脂である。被膜の厚みは、例えば、0.02~0.04mmである。
【0049】
具体的に述べると、第1直線ピン部材411,421は、被膜のない導体部411a,421aから構成される。第2直線ピン部材412,422は、被膜のない導体部412a,422aから構成される。折曲ピン部材410,420は、導体部410a,420aと被膜410b,420bから構成される。
【0050】
折曲ピン部材410,420の一端および他端において、導体部410a,420aは、被膜410b,420bから露出している。つまり、第1直線ピン部材411,421、第2直線ピン部材412,422および折曲ピン部材410,420は、互いに、露出している導体部411a,421a,412a,422a,410a,420aにおいて接合されている。そして、ピン部材410~412,420~422の接合後に、ピン部材410~412,420~422の被膜のない部分(接合部分も含む)は、コート材によって覆われる。コート材は、例えば、ポリアミドイミド樹脂である。なお、コート材は、ピン部材410,420の被膜410b,420bの一部に、付着されてもよい。
【0051】
インダクタ部品1は、さらに、第1コイル41の一部および第2コイル42の一部を覆う絶縁樹脂体60を有する。絶縁樹脂体60の材料としては、例えば、熱硬化性のエポキシ系の樹脂を用いることができる。具体的に述べると、絶縁樹脂体60は、第1コイル41における絶縁膜から露出する導体部411a,412a,410aの少なくとも一部と第2コイル42における絶縁膜から露出する導体部421a,422a,420aの少なくとも一部を覆う。
【0052】
コア3は、フェライトなどのコア本体部300と、コア本体部300を覆う樹脂などの絶縁膜310とを有する。コア本体部300は、フェライトの材料によって、導電性を有する場合がある。この場合であっても、絶縁膜310は、第1、第2コイル41,42とコア本体部300との通電を防止する。一方、コア本体部300が導電性を有さない場合、絶縁膜310は、コイル41,42がコア本体部300に接触することによるコイル41,42の磨耗を低減する。
【0053】
図7は、コア3の周方向に直交する断面図である。図7に示すように、コア本体部300は、径方向外側の外周面としての第1側面301と、径方向内側の内周面としての第2側面302と、コア本体部300の中心軸方向(Z方向)に対向する第1端面303および第2端面304とを有する。第1端面303は、コア3をケース2に収納した際、底板部21側の底面となる。第2端面304は、コア3をケース2に収納した際、上面となる。
【0054】
第1側面301と第1端面303の間には、第1角部305aが設けられ、第1側面301と第2端面304の間には、第2角部305bが設けられ、第2側面302と第1端面303の間には、第3角部305cが設けられ、第2側面302と第2端面304の間には、第4角部305dが設けられている。第1~第4角部305a~305dは、凸曲面である。具体的に述べると、コア本体部300の周方向に直交する断面において、第1~第4角部305a~305dは、凸曲面の全体をいう。なお、第1~第4角部305a~305dの少なくとも一つの形状は、傾斜面、または、直線や曲線などの稜線であってもよい。
【0055】
絶縁膜310は、例えば、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂もしくはビニール樹脂などの樹脂材料から構成される。絶縁膜310は、コア本体部300の角部305a~305dを覆う角部分310a~310dと、コア本体部300の中心軸方向(Z方向)の中央に位置する中央部301a,302aを覆う中央部分310e,310fとを含む。
【0056】
第1角部分310aは、第1角部305aを覆い、第2角部分310bは、第2角部305bを覆い、第3角部分310cは、第3角部305cを覆い、第4角部分310dは、第4角部305dを覆う。第1中央部分310eは、第1中央部301aを覆い、第2中央部分310fは、第2中央部302aを覆う。第1中央部301aは、第1側面301におけるコア本体部300のZ方向の中央に位置し、第2中央部302aは、第2側面302におけるコア本体部300のZ方向の中央に位置する。
【0057】
第1~第4角部分310a~310dのそれぞれの厚みは、第1、第2中央部分310e,310fのそれぞれの厚みよりも厚い。厚みとは、コア本体部300の表面に直交する方向の厚みをいう。具体的に述べると、第1中央部分310eの厚みt1は、第1中央部301aの表面に直交する方向の厚みをいう。第1角部分310aの厚みT1は、第1角部305aの表面に直交する方向の平均厚みをいう。図7では、第1角部分310aの厚みT1は、わかりやすくするために、最大厚みを示している。なお、第1~第4角部分310a~310dの少なくとも一つの厚みは、第1、第2中央部分310e,310fの少なくとも一つの厚みよりも厚ければよい。
【0058】
これによれば、コア3にコイル41,42を巻回してインダクタ部品1を製造する際、コイル41,42が絶縁膜310の角部分310a~310dに接触しても、絶縁膜310の角部分310a~310dの厚みは、絶縁膜310の中央部分310e,310fの厚みよりも厚いので、絶縁膜310の角部分310a~310dの欠けを低減できる。これにより、コア本体部300の角部305a~305dの露出を低減し、コア本体部300が導電性を有する場合、コイル41,42とコア本体部300の通電を低減し、一方、コア本体部300が導電性を有さない場合、コイル41,42がコア本体部300の角部305a~305dに接触することによるコイル41,42の磨耗を低減できる。
【0059】
図8は、コア3の拡大断面図である。図7図8に示すように、絶縁膜310は、コア本体部300の少なくとも側面301,302を覆う樹脂層311と、コア本体部300の第1端面303および第2端面304の少なくとも一方の面を覆う樹脂シート312とを備える。この実施形態では、樹脂層311は、コア本体部300の全面を覆い、樹脂シート312は、コア本体部300の第1端面303および第2端面304を覆う。なお、本実施形態では、樹脂層311と樹脂シート312の間には、境界が存在しているが、樹脂層311と樹脂シート312は、材料によって一体化され、明確な境界が存在しなくてもよい。
【0060】
これによれば、樹脂層311と樹脂シート312に絶縁性の機能を持たせることで、コア3の絶縁性を確保できる。樹脂シート312に平坦性の機能を持たせることで、コア3の第1端面および第2端面を平坦にでき、コア3にコイル41,42を巻回する際にコイル41,42の巻乱れを防止できる。特に、コイル41,42が複数のピン部材から構成される場合、ピン部材は、凹凸に適合した形状を取ることができずに影響を受けやすいが、コア3の第1端面および第2端面は平坦であるので、そのような問題もない。
【0061】
コア本体部300の第1端面303および第2端面304の少なくとも一方の面において、絶縁膜310は、コア本体部300に接触する樹脂層311と樹脂層311に接触する樹脂シート312との2層から構成される。この実施形態では、コア本体部300の第1端面303および第2端面304において、絶縁膜310は、コア本体部300に接触する樹脂層311と樹脂層311に接触する樹脂シート312との2層から構成される。
【0062】
これによれば、コア本体部300の第1端面303および第2端面304において、絶縁膜310は、2層から構成されるので、コア3の第1端面および第2端面の絶縁性を十分に確保できる。樹脂シート312の幅は、好ましくは、コア本体部300の幅よりも大きく、樹脂層311に加えて、樹脂シート312も、コア本体部300の角部305aを覆うことができ、絶縁膜310の角部分310aの厚みを厚くできる。
【0063】
絶縁膜310の第1角部分310aは、樹脂層311に設けられた傾斜面311aを含む。傾斜面311aは、樹脂層311の厚みがZ方向の両端側(図8では下側)ほど連続的に厚くなるように、形成されている。これによれば、簡単な構成で、第1角部分310aの厚みを厚くできる。第1~第4角部分310a~310dの少なくとも一つが、傾斜面311aを含んでいればよい。なお、絶縁膜310の第1角部分310aの周辺は、凹面を含んできてもよい。凹面は、樹脂層311の厚みがZ方向の両端側(図8では下側)ほど連続的に厚くなるように、形成されている。
【0064】
前記インダクタ部品1によれば、前記コア3を有するので、コイル41,42が絶縁膜310の角部分310a~310dに接触しても、絶縁膜310の角部分310a~310dの厚みは、絶縁膜310の中央部分310e,310fの厚みよりも厚いので、絶縁膜310の角部分310a~310dの欠けを低減できる。これにより、コア本体部300の角部305a~305dの露出を低減し、コイル41,42とコア本体部300の通電を低減できる。
【0065】
また、コイル41,42は、複数のピン部材から構成されるので、コイル41,42の剛性が大きくなる。このため、コイル41,42がコア本体部300の角部305a~305dに接触すると、ピン部材は曲がり難く、コイル41,42とコア本体部300の衝撃を吸収し難くなり、ピン部材は摩耗するおそれがある。しかし、絶縁膜310の角部分310a~310dの欠けを低減できるため、コア本体部300の角部305a~305dの露出を低減し、コイル41,42の磨耗を低減できる。
【0066】
(コアの製造方法)
次に、コア3の製造方法について説明する。
【0067】
図9Aは、コア本体部300の側面301,302および第1端面303に樹脂層311を塗布する工程を示す。図9Aに示すように、コア本体部300の第1端面303を下向きにして、コア本体部300を樹脂槽70に浸漬する。樹脂槽70には、液体状の第1樹脂71が入っている。第1樹脂71は、熱硬化性樹脂である。樹脂槽70は、ホットプレートなどの加熱装置80に載せられている。
【0068】
そして、図9Bに示すように、コア本体部300を樹脂槽70から引き上げ、コア本体部304の側面301,302および第1端面303に樹脂層311を塗布する。コア本体部300に付着した余分な樹脂層311をエッチングプレート75により除去してもよい。このとき、樹脂層311の状態は、「未乾燥」である。
【0069】
ここで、樹脂の状態としては、塗布した状態の「未乾燥」と、樹脂硬化温度以下で加熱して溶剤のみを揮発した状態の「乾燥済(未硬化)」と 、樹脂硬化温度以上で加熱した状態の「硬化済」とがある。
【0070】
図9Cは、樹脂シート312を準備する工程を示す。図9Cに示すように、基板77上にマスク78を載せ、第2樹脂72をマスク78越しにスキージ76で均一に塗り伸ばす。第1樹脂71は、熱硬化性樹脂である。そして、図9Dに示すように、マスク78を基板77から取り外して、樹脂シート312を準備する。このとき、樹脂シート312は、加熱され、樹脂シート312の状態は、「乾燥済」または「硬化済」である。
【0071】
図9Eは、コア本体部300の第1端面303側を樹脂シート312に載せる工程を示す。図9Eに示すように、樹脂シート312をエッチングプレート75上に載せ、コア本体部300の第1端面303側を樹脂シート312に載せる。つまり、コア本体部300の第1端面303に塗布された樹脂層311を樹脂シート312に載せる。このとき、樹脂層311の状態は、「未乾燥」であるため、コア本体部300の側面301,302に塗布した樹脂層311は、重力により、コア本体部300の第1端面303側に垂れ流れる。これにより、樹脂層311の厚みは、コア本体部300の第1端面303側ほど厚くなり、樹脂層311に傾斜面311aを形成することができる。したがって、コア本体部300の角部305a,305cを覆う樹脂層311の厚みを厚くできる。
【0072】
好ましくは、樹脂層311(第1樹脂71)の粘度は、樹脂シート312(第2樹脂72)の粘度よりも小さい。これにより、樹脂層311に傾斜面311aを一層形成し易くなる。粘度は、例えば、フィラー含有量により調整でき、粘度は、フィラー含有量が多いほど、大きくなる。樹脂層311のフィラー含有量は、例えば、10vol%以上60vol%以下であり、樹脂シート312のフィラー含有量は、例えば、60vol%以上80vol%以下である。
【0073】
その後、オーブンにて樹脂層311および樹脂シート312を乾燥し硬化させる。さらに、コア本体部300の第1端面303側と同様に、コア本体部300の第2端面304側にも、樹脂層311および樹脂シート312を形成する。つまり、コア本体部300の側面301,302および第2端面304に樹脂層311を塗布し、樹脂シート312を準備し、コア本体部300の第2端面304側を樹脂シート312に載せる。これにより、コア3を製造する。
【0074】
これによれば、コア本体部300に樹脂層311および樹脂シート312を形成することで、コア本体部300を樹脂層311および樹脂シート312から構成される絶縁膜310で覆うことができる。これにより、コア本体部300の角部を絶縁膜310により確実に覆うことができる。つまり、絶縁膜310の角部分310a~310dの厚みを厚くできる。したがって、コア3にコイル41,42を巻回してインダクタ部品1を製造する際、コイル41,42が絶縁膜310の角部分310a~310dに接触しても、絶縁膜310の角部分310a~310dの欠けを低減できる。さらに、樹脂シート312を樹脂層311と別に作製するため、製品完成までの過程で樹脂層311に加わる熱ダメージを最小限に抑えることができる。つまり、通常、樹脂の厚みを厚くする方法として、塗布を重ねて厚くする方法も考えられるが、その場合は、塗布のたびに加熱が必要になるため、樹脂層に熱ダメージが蓄積される。一方で、樹脂シート312を別に作成しておけば、一度の加熱で製造できるため、熱ダメージを最小限におさえることができる。
【0075】
図10は、図9Cで用いたマスク78の平面図である。図10に示すように、マスク78は、複数の孔部78aを有している。孔部78aは、コア本体部300の第1端面303および第2端面304の外形に対応した形状である。孔部78aに、第2樹脂72を塗布することで、樹脂シート312を作製できる。つまり、マスク78では、4枚の樹脂シート312を同時に作製できる。樹脂シート312は、乾燥後または硬化後に、コア本体部300の内周面に対応した部分をくりぬかれ、コア本体部300の第1端面303および第2端面304に対応した形状となる。
【0076】
図11は、コア3の拡大画像図である。図11では、樹脂シート312に対して垂直な断面について、ホイールソーで切断し、まわりを樹脂で補強した状態で切断面を自動研磨機で研磨し、SEMの低真空観察モードで200倍の倍率で確認した。図11に示すように、樹脂層311と樹脂シート312の間の境界を確認することができた。これは、樹脂シート312のフィラー含有量が樹脂層311のフィラー含有量よりも多いことによるものである。
【0077】
図11では、SEMにより観察したが、蛍光フィルタにより観察してもよい。具体的に述べると、樹脂シートに対して垂直な断面をホイールソーで切断し、まわりを樹脂で補強した状態で切断面を自動研磨機で研磨して平坦な状態とし、工業用顕微鏡で光源を水銀ランプ、フィルタを蛍光フィルタ、ND=4で観察して、樹脂シートと樹脂層の境界を確認してもよい。なお、他の方法により、樹脂シートと樹脂層の境界を確認するようにしてもよい。
【0078】
(コアの実施例)
次に、コアの実施例について説明する。
【0079】
樹脂シートの材料は、例えば、熱硬化型エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂などである。樹脂層の材料は、例えば、熱硬化型エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂などである。樹脂層の材料の粘度は、樹脂シートの材料の粘度よりも低い。コア本体部の材料は、例えば、フェライトコア、金属系コアなどである。
【0080】
樹脂シートの厚みは、50μm~200μmであり、好ましくは、40μm~80μmである。コア本体部の第1端面側の樹脂層の厚みは、10μm~100μmであり、好ましくは、10μm~20μmである。コア本体部の第1端面側の絶縁膜(樹脂シートと樹脂層)の厚みは、60μm~300μmであり、好ましくは、50μm~100μmである。
【0081】
コア本体部の幅について、コア本体部がMnZnコアである場合、3.3mm~3.7mmであり、コア本体部が箔帯コアである場合、2.5mm~3.6mmである。樹脂シートの幅は、コア本体部の幅に等しいか、少し大きいと望ましいが、コア本体部の幅よりも小さくてもよい。
【0082】
絶縁膜の中央部分(コア本体部の側面の中央部を覆う樹脂層)の厚みは、5μm~150μmであり、好ましくは、20μm~100μmである。絶縁膜の角部分(コア本体部の側面の角部を覆う樹脂層および樹脂シート)の厚みは、絶縁膜の中央部分の厚みよりも厚く、10μm~300μmである。
【0083】
(第2実施形態)
図12は、第2実施形態のコアの拡大断面図である。第2実施形態は、第1実施形態とは、絶縁膜の角部分の構成が相違する。この相違する構成のみを以下に説明する。その他の構成は、第1実施形態と同じ構成であり、その説明を省略する。
【0084】
図12に示すように、第2実施形態のコア3Aでは、絶縁膜310の角部分310aは、樹脂シート312に設けられた凸面312aを含む。凸面312aは、樹脂シート312の厚みがZ方向の両端側(図12では下側)ほど連続的に厚くなるように、形成されている。樹脂層311の厚みは、コア本体部300の角部305aにおいて、薄くなっていてもよい。樹脂シート312の厚みは、コア本体部300の第1端面303から角部305aに渡って厚くなる。これにより、絶縁膜310の角部分310aの厚みは、絶縁膜310の中央部分310eの厚みよりも厚くなり、絶縁膜310の角部分310aの欠けを防止できる。
【0085】
次に、コア3Aの製造方法について説明する。第1実施形態のコア3の製造方法と異なる部分のみ説明する。
【0086】
図9Bにおいて、樹脂層311の状態を「硬化済」とする。これにより、樹脂層311には、傾斜面311aが形成されず、樹脂層311の厚みは、コア本体部300の角部305aにおいて、薄くなっていてもよい。図9Dにおいて、樹脂シート312の状態を「未乾燥」または「乾燥済」とする。図9Eにおいて、コア本体部300を樹脂シート312に載せる際、コア本体部300を樹脂シート312に押し付ける。このようにすることで、樹脂シート312の状態は「硬化済」でないので、樹脂シート312がコア本体部300の角部305aで盛り上がってコア本体部300の角部305aを覆う。そして、樹脂シート312に凸面312aを形成することができる。
【0087】
(第3実施形態)
図13は、第3実施形態のコアの拡大断面図である。第3実施形態は、第2実施形態とは、絶縁膜の角部分の構成が相違する。この相違する構成のみを以下に説明する。その他の構成は、第2実施形態と同じ構成であり、その説明を省略する。
【0088】
図13に示すように、第3実施形態のコア3Bでは、コア本体部300の第1端面303および第2端面304の少なくとも一方の面において、絶縁膜310は、コア本体部300に接触する樹脂シート312の1層から構成される。この実施形態では、コア本体部300の第1端面303および第2端面304において、絶縁膜310は、コア本体部300に接触する樹脂シート312の1層から構成される。これによれば、コア本体部300の第1端面303および第2端面304において、絶縁膜310は、1層から構成されるので、コア3の中心軸方向の寸法を小さくできる。
【0089】
次に、コア3Bの製造方法について説明する。第2実施形態のコア3の製造方法と異なる部分のみ説明する。
【0090】
図9Bにおいて、コア本体部300の第1端面303および角部305aに付着した樹脂層311をエッチングプレート75により除去する。これにより、図9Eにおいて、コア本体部300を樹脂シート312に載せ、コア本体部300を樹脂シート312に押し付けると、樹脂シート312がコア本体部300の角部305aで盛り上がってコア本体部300の角部305aを覆う。そして、樹脂シート312に凸面312aを形成することができる。
【0091】
(第4実施形態)
図14は、第1実施形態のコアを製造する他の方法を説明する説明図である。第1実施形態のコアの製造方法と異なる部分のみ説明する。図9Eにおいて、加熱装置80に代えて土台81を用いる。土台81は、溝81aを有する。
【0092】
図14に示すように、コア本体部300の第1端面303に塗布された樹脂層311を樹脂シート312に載せる。このとき、樹脂層311の状態は、「未乾燥」であるため、コア本体部300の側面301,302に塗布した樹脂層311は、重力により、コア本体部300の第1端面303側に垂れ流れ、さらに、土台81の溝81aに排出される。このように、溝81aを設けることで、余分な樹脂層311を排出することができる。このように、余分な樹脂層311を排出することができるので、絶縁膜310の厚みが大きくなりすぎず、コア3の大型化を防止できる。なお、土台81は、加熱機能を有するようにしてもよい。
【0093】
(コイルの折曲ピン部材のばね指数)
コイルの折曲ピン部材のばね指数について説明する。図15は、折曲ピン部材410をコア3に巻き付けたときの状態を示す。図15に示すように、ばね指数Ks=折曲ピン部材の曲率半径R1、R2/折曲ピン部材の線径rである。曲率半径R1は、コア3の外周面の角部に位置する曲率半径をいい、曲率半径R2は、コア3の内周面の角部に位置する曲率半径をいう。折曲ピン部材410のばね指数Ksは、何れの曲率半径R1、R2においても、3.6よりも小さい。一方、通常の巻線工法では、ばね指数は、3.6以上であることが実験的に分かっている。
【0094】
なお、本開示は上述の実施形態に限定されず、本開示の要旨を逸脱しない範囲で設計変更可能である。例えば、第1から第4実施形態のそれぞれの特徴点を様々に組み合わせてもよい。ケースの形状やコアの形状は、本実施形態に限定されず、設計変更可能である。また、コイルの数量は、本実施形態に限定されず、設計変更可能である。コイルは、複数のピン部材から構成しているが、導線から構成してもよい。
前記第1実施形態において、樹脂層311が「未乾燥」または「乾燥済」である(つまり、「硬化済」でない)場合、樹脂シート312がなくても、樹脂層311を平面に押し当てることにより、樹脂層311に傾斜面311aを形成するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0095】
1 インダクタ部品
2 ケース
21 底板部
22 蓋部
3,3A,3B コア
300 コア本体部
301 第1側面(外周面)
301a 第1中央部
302 第2側面(内周面)
302a 第2中央部
303 第1端面(底面)
304 第2端面(上面)
305a~305d 第1~第4角部
310 絶縁膜
310a~310d 第1~第4角部分
310e,310f 第1、第2中央部分
311 樹脂層
311a 傾斜面
312 樹脂シート
312a 凸面
41 第1コイル
410 折曲ピン部材
411、412 第1、第2直線ピン部材
42 第2コイル
420 折曲ピン部材
421、422 第1、第2直線ピン部材
51~54 第1~第4電極端子
60 絶縁樹脂体
70 樹脂槽
71 第1樹脂
72 第2樹脂
78 マスク
80 加熱装置
81 土台
81a 溝
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9A
図9B
図9C
図9D
図9E
図10
図11
図12
図13
図14
図15