(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-20
(45)【発行日】2023-09-28
(54)【発明の名称】眼科画像処理方法および眼科画像処理プログラム
(51)【国際特許分類】
A61B 3/10 20060101AFI20230921BHJP
【FI】
A61B3/10 100
(21)【出願番号】P 2019180051
(22)【出願日】2019-09-30
【審査請求日】2022-08-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000135184
【氏名又は名称】株式会社ニデック
(72)【発明者】
【氏名】柴 涼介
(72)【発明者】
【氏名】樋口 幸弘
【審査官】小野 健二
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-150409(JP,A)
【文献】国際公開第2016/017664(WO,A1)
【文献】特開2012-075640(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 3/00-3/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンピュータによって行われる眼科画像処理方法であって、
被検眼の
組織が撮影されたOCTデータを取得する取得ステップと、
撮影の結果予めメモリに記憶されている前記OCTデータにおけるゼロディレイ位置から一方向側のデータ
のうち一部の深さ領域を抽出領域として設定する設定ステップであって、前記OCTデータ毎の前記組織の像位置
に応じて前記組織の像位置を含む深さ領域を前記抽出領域として設定する設定ステップと、
撮影が完了した画像が表示されるビュワー画面上において予め定められた表示領域に、前記抽出領域に対応する抽出OCTデータを前記OCTデータから抽出し
て表示させる、表示制御ステップと、を含む、
眼科画像処理方法。
【請求項2】
前記設定ステップでは、前記OCTデータにおける前記組織の像位置が検出され、前記ゼロディレイ位置と、前記抽出領域の上端および下端の少なくとも一方と、の距離が、検出された前記像位置に基づいて調整される、請求項1記載の眼科画像処理方法。
【請求項3】
前記OCTデータに対する前記抽出領域の深さ位置および範囲の少なくとも一方を変更するための指示を受け付け、前記指示に基づいて前記抽出領域の深さ位置および範囲の少なくとも一方を変更する変更ステップを、更に含み、
前記表示制御ステップでは、前記指示に基づいて前記抽出領域の深さ位置および範囲の少なくとも一方が変更された場合に、前記表示領域に表示される前記抽出OCTデータを変更後の前記抽出領域と対応するものへ切り換える請求項1又は2に記載の眼科画像処理方法。
【請求項4】
前記表示制御ステップでは、前記指示に基づいて前記抽出領域の深さ位置および範囲の少なくとも一方が変更された場合に、前記
ビュワー画面上における前記抽出OCTデータの表示態様を、変更後の前記抽出領域に応じて変更する請求項3記載の眼科画像処理方法。
【請求項5】
前記取得ステップでは、前記被検眼において互いに異なる位置ある複数の組織の像を含んだ前記OCTデータを取得し、
前記表示制御ステップでは、前記抽出OCTデータにおいて含まれる前記像の種別に応じて前記表示態様を変更する請求項4記載の眼科画像処理方法。
【請求項6】
前記取得ステップでは、予め定められた複数の走査線のそれぞれに対する複数の前記OCTデータを取得し、
前記設定ステップでは、複数の前記OCTデータの間で前記被検体の像位置に対する前記抽出領域の位置を一致させ、
前記表示制御ステップでは、複数のOCTデータ毎の前記抽出OCTデータを、前記表示領域において順次表示させる、請求項1から5の何れかに記載の眼科画像処理方法。
【請求項7】
前記OCTデータにおいて、前記抽出領域以外の領域のデータを削減する削減ステップを更に実行する、請求項1から6のいずれかに記載の眼科画像処理方法。
【請求項8】
前記コンピュータのプロセッサによって実行されることによって、請求項1から7の何れかに記載の眼科画像処理方法が前記コンピュータによって実行される眼科画像処理プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、被検眼の組織のOCTデータを処理する眼科画像処理方法および眼科画像処理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、眼科分野では、被検眼の組織の断層画像を撮影する装置である、光干渉断層計(Optical Coherence Tomography:OCT)が注目を集めている。
【0003】
眼科に比較的普及しているSD-OCTでは、深さ方向に関して有効な撮影範囲は、OCTデータにおける原点位置(ゼロディレイ位置)から2mm~3mm程度の範囲である。このような装置で撮影されるOCTデータを表示させる場合、撮影範囲全体がそのまま表示される(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
一方、OCTデータにおける深達性を改善する(つまり、深さ方向の撮影範囲を拡大する)種々の試みが行われている。
【0005】
近年では、光源の改良等によって、撮影範囲を著しく改善できることが非特許文献1等によって報告されている。非特許文献1では、例えば、VCSELと呼ばれる、コヒーレンス長の長い光を出射する光源を、OCT光源として採用することが、深達性の改善に有効であると、報告されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【非特許文献】
【0007】
【文献】Ireneusz Grulkowski. et al. (2013) High-precision, high-accuracy ultralong-range swept-source optical coherence tomography using vertical cavity surface emitting laser light source, Opt Lett. 2013 Mar 1; 38(5): 673-675.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
OCTデータにおける深達性がより高いものであるほど(深さ方向に関する撮影範囲がより広いほど)、相対的に、OCTデータにおいて被検体の像は狭い範囲で描写されるようになる。従って、特許文献1と同様の表示方法が採用された場合、組織を観察し難くなってしまう。
【0009】
本開示は、従来技術の問題点に基づいてなされたものであり、深達性の高いOCTデータにおいて、所望の組織を良好に観察可能な、眼科画像処理方法および眼科画像処理プログラムを提供すること、を技術課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示の第1態様に係る眼科画像処理方法は、コンピュータによって行われる眼科画像処理方法であって、被検眼の組織が撮影されたOCTデータを取得する取得ステップと、撮影の結果予めメモリに記憶されている前記OCTデータにおけるゼロディレイ位置から一方向側のデータのうち一部の深さ領域を抽出領域として設定する設定ステップであって、前記OCTデータ毎の前記組織の像位置に応じて前記組織の像位置を含む深さ領域を前記抽出領域として設定する設定ステップと、撮影が完了した画像が表示されるビュワー画面上において予め定められた表示領域に、前記抽出領域に対応する抽出OCTデータを前記OCTデータから抽出して表示させる、表示制御ステップと、を含む、眼科画像処理方法。
【0012】
本開示の第2態様に係る眼科画像処理プログラムは、コンピュータのプロセッサによって実行されることによって、第1態様に係る眼科画像処理方法が前記コンピュータによって実行される。
【発明の効果】
【0013】
本開示によれば、深達性の高いOCTデータにおいて、所望の組織を良好に観察しやすい。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】実施例に係るOCTシステムの概略構成を示した図である。
【
図6】
図5に対し、抽出領域が変更された状態のビュワー画面を示した図である。
【
図7】前眼部OCTが表示されるときのビュワー画面の一例を示した図である。
【
図8】変形例に係る抽出OCTデータの表示態様を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
「概要」
本開示の実施形態を説明する。なお、以下の<>にて分類された項目は、独立または関連して利用されうる。
【0016】
<全体構成>
以下、本開示における1つの実施形態を説明する。初めに、実施形態に係るOCTシステムを説明する。OCTシステムは、被検眼を撮影し、撮影結果であるOCTデータを表示するために利用される。
【0017】
本実施形態において、OCTシステムは、OCT光学系、画像処理器、および、コンピュータ、を少なくとも含む(
図1参照)。実施形態に係る眼科用画像処理プログラムは、コンピュータのプロセッサによって読み出し可能な、不揮発性メモリに格納されている。OCT光学系、画像処理器、および、コンピュータは、OCT装置として一体化されていてもよい(例えば、実施例を参照)。また、OCT光学系、画像処理器、および、コンピュータの一部は、他の一部と別体であってもよい。
【0018】
<OCT光学系>
OCT光学系(
図2参照)は、被検眼のOCTデータを撮影するために利用される。OCT光学系は、被検眼の組織に導かれる測定光と、参照光と、のスペクトル干渉信号を検出する。
【0019】
本実施形態では、深達性の高いOCTデータの取得に適したOCT光学系が利用されてもよい。例えば、OCT光学系は、波長掃引式OCT(SS-OCT)光学系であってもよい。この場合、OCT光学系は、測定光および参照光の光源であるOCT光源として、波長掃引光源(波長走査型光源)を備えてもよい。波長掃引光源は、出射波長を時間的に高速で変化させる。例えば、VCSEL式波長掃引光源は、コヒーレンス長が長いことから、OCT光源として利用されることで、深さ方向に関してより広い撮影範囲が享受される。例えば、10mm程度またはそれ以上の撮影範囲が実現され得る。これにより、被検眼において互いに異なる深さ位置にある複数の組織を1回的に撮影できるようになる。具体例として、眼底と透光体との両方が1回的に撮影され得る。また、波長掃引光源は、いわゆる1μm帯で波長掃引を行う(約1050nmを中心に、波長掃引を行う)ことが好ましい。いわゆる1μm帯は、他の波長帯と比べて、被検眼の組織に対してより高い深達性を示すことが知られている。
【0020】
また、OCT光学系は、光分割部、走査部(光スキャナともいう)、検出器のうち少なくともいずれかを備えてもよい。光分割部は、OCT光源からの光を測定光と参照光とに分割する。走査部は、被検眼の組織上で測定光を走査するためのデバイスである。走査部は、例えば、走査方向が互いに異なる2つの光スキャナの組み合わせであってもよい。検出器は、被検眼に導かれた測定光と、参照光と、を受光することによって、スペクトル干渉信号を出力する。OCT光学系は、被検眼の組織上であらかじめ定められた複数のスキャンラインに沿って、測定光を走査し、複数のスキャンラインのそれぞれのOCTデータを撮影してもよい。スキャンラインは、検者からの指示に基づいて任意の位置に設定されてもよい。また、あらかじめ定められた複数のスキャンパターンのうちいずれかが選択されることで、スキャンパターンと対応するスキャンラインが設定されてもよい。スキャンパターンとしては、ライン、クロス、マルチ、マップ、ラジアル、サークル、等の種々のものが知られている。
【0021】
<画像処理器>
画像処理器は、OCT光学系から出力されるスペクトル干渉信号を処理して被検眼のOCTデータを取得する。画像処理器は、OCT装置における装置全体の動作を司る制御部によって兼用されていてもよいし、制御部とは別体の画像処理装置であってもよい。
【0022】
<OCTデータ>
OCTデータは、信号データであってもよいし、視覚化された画像データであってもよい。例えば、OCTデータは、被検眼の反射強度特性を示す断層画像データ、被検眼のOCTアンジオデータ(例えば、OCTモーションコントラストデータ)、被検眼のドップラー特性を示すドップラーOCTデータ、被検眼の偏光特性を示す偏光特性データ、等の少なくともいずれかであってもよい。
【0023】
また、OCTデータは、Bスキャンデータ(例えば、Bスキャン断層画像データ、二次元OCTアンジオデータ、等)、正面(En face)データ(例えば、OCT正面データ、正面モーションコントラストデータ、等)、三次元データ(例えば、三次元断層画像データ、三次元OCTアンジオデータ、等)、等の少なくともいずれかであってもよい。
【0024】
<コンピュータ>
コンピュータは、画像処理器が生成する被検眼のOCTデータを取得し、モニタ上に表示させる。コンピュータは、少なくとも、プロセッサ(演算制御部)を備える。演算制御部は、CPU、RAM、および、ROM等によって構成されてもよい。プロセッサが眼科用画像観察プログラムを実行することによって、コンピュータが後述の各ステップを実行する。眼科用画像観察プログラムは、演算制御部からアクセス可能な不揮発性の記憶媒体に記憶されていてもよい。
【0025】
<取得ステップ>
まず、OCT光学系を介して被検眼が撮影され、撮影の結果として、画像処理器が被検眼のOCTデータを生成する。その後、画像処理器によって生成されるOCTデータが、コンピュータ1によって取得される。ここでいう「取得」は、プロセッサからアクセス可能なメモリに、対象のデータ(ここでは、OCTデータ)が保存されること、である。
【0026】
<設定ステップ>
設定ステップでは、OCTデータにおける一部の深さ領域に対し、抽出領域が設定される。
【0027】
ここで、
図3を用いて、本実施形態における抽出領域を説明する。
図3には、視覚化されたOCTデータの一例である断層画像の画像データGが示されている。画像データGは、ゼロディレイ位置Zより奥側に対応する第1の画像データG1と、ゼロディレイ位置Zより手前側に対応する第2の画像データG2からなり、ゼロディレイ位置Zに関して互いに対称な画像となっている。詳細には、眼底の像の実像と虚像とが、ゼロディレイ位置Zに関して互いに対称に形成される。
【0028】
設定ステップでは、ゼロディレイ位置Zから一方向側のデータ(
図3では、第1の画像データG1および第2の画像データG2のいずれか)に対して、抽出領域が設定される。その際、組織の像位置を含む深さ領域が、抽出領域として設定される。換言すれば、抽出領域の上端と下端との間に組織の像位置が含まれるように、抽出領域の上端および下端の一方または両方と、ゼロディレイ位置との距離が調整される。
【0029】
ここで、設定ステップでは、OCTデータにおける組織の像位置が検出されてもよい。この場合、抽出領域の上端および下端の一方または両方とゼロディレイ位置との距離が、検出された像位置に基づいて調整されてもよい。この場合、例えば、抽出領域における基準位置と、OCTデータにおける組織の像位置との関係が調整されることで、結果的に、抽出領域における上端および下端の一方または両方とゼロディレイ位置との距離が調整されてもよい。
【0030】
眼底中心部(黄斑―乳頭間)の網膜表面から脈絡膜までを観察するうえで、深さ方向の撮影範囲が、数ミリ(例えば、2mm~3mm)程度あれば足りるのに対し、波長掃引式OCTでは、その2倍以上の撮影範囲(ゼロディレイ位置から一方向側の撮影範囲)が実現され得る。この場合、眼底中心部が抽出OCTデータにおいて表示する場合に、抽出元となるOCTデータの撮影範囲に対し、抽出領域の深さ方向の長さは半分以下であることが好ましい。
【0031】
<フルレンジ化技術の適用>
OCTデータには、フルレンジ化技術が適用されてもよい。OCTデータにおいて虚像を除去する種々の手法が、フルレンジ化技術と呼ばれる。本実施形態では、いずれかのフルレンジ化技術を適用してもよく、これによって、虚像が選択的に除去された更に広範囲のOCTデータが取得可能であってもよい。この場合、第1の画像データG1および第2の画像データG2を合わせた領域から、任意の深さ位置に抽出領域を設定できる。
【0032】
なお、フルレンジ化技術の一例としては、追加のハードウェアにより虚像(鏡像ともいう)を除去する技術(例えば、非特許文献2参照)、追加のハードウェアを用いずにソフトウェアで補正する技術(例えば、特許文献2参照)等を挙げることができる。
【文献】Wojtkowski, M. et al. (2002) Full range complex spectral optical coherence tomography technique in eye imaging, Optics Letters, 27(16), p. 1415.
【文献】特表2015-506772号公報 また、本出願人による出願(特願2019-014771号)では、スペクトル干渉信号を検出する際の光路長が異なる複数のOCTデータに基づいて、OCTデータにおける実像と虚像との重複領域に対して少なくとも補完処理を行い、補完処理が施されたOCTデータを生成する、更に別のフルレンジ化技術が提案されており、これを本実施形態において適用してもよい。
【0033】
<表示制御ステップ>
表示制御ステップでは、抽出領域に対応する抽出OCTデータが、OCTデータから抽出され、モニタ上において予め定められた表示領域に表示される。よって、本実施形態では、深達性の高いOCTデータが取得された場合であっても、OCTデータ全体ではなく、OCTデータから組織の像位置を含む深さ領域が抽出されて表示される。従って、予め定められた表示領域に対して、被検眼の組織の像がより拡大して表示される。その結果、抽出OCTデータを介して、被検眼の組織の状態が良好に把握されやすくなる。
【0034】
<抽出領域の位置を示す情報の表示>
また、表示制御ステップでは、抽出元となったOCTデータに対する抽出領域の位置関係を示す情報を、抽出OCTデータと共に、モニタ上に表示させてもよい。このような情報が表示されることで、例えば、抽出OCTデータに含まれる被検眼の組織の位置が把握されやすくなる。
【0035】
抽出元となったOCTデータに対する抽出領域の位置関係を示す情報は、例えば、グラフィックとして表示されてもよいし、テキストとして表示されてもよいし、両者の組み合わせとして表示されてもよい。グラフィックは、抽出元となったOCTデータのサムネイル画像であってもよいし、その他であってもよい。OCTデータのサムネイル画像が表示される場合は、更に、サムネイル画像上において抽出領域が強調表示されてもよい。また、グラフィックは、抽出元となったOCTデータに含まれる組織と、抽出領域との位置関係を示してもよい(例えば、
図8参照)。更に、グラフィックは、例えば、次のようなインジケータであってもよい。インジケータは、OCTデータの撮影範囲を示すバーや数直線であって、抽出領域と対応する範囲が、他の範囲に対して識別可能な態様で強調される。また、抽出元となったOCTデータに含まれる組織と、抽出領域との位置関係を色によって示す、インジケータであってもよい。例えば、抽出領域に組織が含まれている場合は緑色に、含まれていない場合は赤色に、インジケータの色が変化されてもよい。
【0036】
<変更ステップ>
変更ステップでは、OCTデータに対する抽出領域の深さ位置および範囲の少なくとも一方を変更するための操作入力が受け付けられる。また、操作入力に基づいて抽出領域の深さ位置および範囲の少なくとも一方が変更される。
【0037】
操作入力は、コンピュータに接続される各種の入力インターフェースを介して入力されてもよい。
【0038】
抽出領域の位置を示すグラフィックが、変更ステップにおいて操作入力を受け付けるためのウィジェットとして利用されてもよい。この場合、抽出領域を変更するための操作入力が、上述のグラフィックを介して入力されてもよい。1つの具体例として、サムネイル画像上またはインジケータ上における強調箇所を移動させる操作が、抽出領域を変更するための操作入力として入力可能であってもよい。なお、ここでいうウィジェットは、GUIのインターフェース部品(UIパーツ)の総称であり、コントロールとも称する。ウィジェットの具体例としては、ボタン、スライダー、チェックボックス、テキストボックス、等、多用なものが知られている。
【0039】
変更ステップによって、抽出領域の深さ位置および範囲の少なくとも一方が変更された場合には、その後の表示制御ステップにおいて、所定の表示領域に表示される抽出OCTデータが、変更後の抽出領域と対応するものへと切り換えられる。
【0040】
これにより、OCTデータに含まれる組織であって、所望の深さ位置にある組織を、モニタ上で観察可能となる。
【0041】
また、変更ステップによって、抽出領域の深さ位置および範囲の少なくとも一方が変更された場合には、その後の表示制御ステップにおいて、モニタ上における抽出OCTデータの表示態様が、変更後の抽出領域に応じて変更されてもよい。
【0042】
本実施形態において、表示態様の変更は、例えば、モニタ上における抽出OCTデータのレイアウトが変更されることによって実現されてもよい。この場合、抽出OCTデータが表示される表示領域の位置、大きさ、形状、のいずれかが変更されることによって、レイアウトが変更されてもよい。また、抽出領域に応じて表示領域内の抽出OCTデータの縮尺、および、縦横比の少なくともいずれかが変更されることによって、表示態様が変更されてもよい。また、抽出領域に応じて表示領域内の座標系が変更されることによって、表示態様が変更されてもよい。この場合、座標系にあわせて抽出OCTデータが変換(変形)される。更には、上記の例の幾つかを組み合わせてもよい。
【0043】
本実施形態では、取得ステップにおいて、被検眼において互いに異なる深さ位置にある複数の組織の像を含んだOCTデータが取得されてもよい。この場合、表示制御ステップでは、抽出領域に含まれる組織の種別に応じて、抽出OCTデータの表示態様が変更されてもよい。例えば、少なくとも、抽出領域に眼底組織のみが含まれる場合と、抽出領域に透光体が含まれる場合と、の間で、表示態様が変更されてもよい。また、抽出領域に含まれる組織の種別の数に応じて、表示態様が変更されてもよい。
【0044】
<複数スキャンラインのOCTデータによる順次表示>
取得ステップでは、予め定められた複数のスキャンラインのそれぞれに対する複数のOCTデータが取得されてもよい。複数のOCTデータを撮影するために、OCT光学系によって、複数のスキャンラインが連続的にスキャンされていてもよい。複数のスキャンラインは、ラスタースキャンによって互いに近接した位置(例えば、略1画素分ずつ離れた位置)に設定されてもよい。
【0045】
この場合、設定ステップでは、被検体の像位置に対する抽出領域の位置が、複数のOCTデータの間で一致されるように、各々のOCTデータに対する抽出領域の設定処理が行われてもよい。また、表示制御ステップでは、複数のOCTデータのそれぞれから抽出される抽出OCTが、表示領域において順次表示されてもよい。このとき、抽出OCTデータによって表示される組織上の位置が、一方向に遷移するように、複数の抽出OCTデータが切り換え表示されてもよい。これによって、表示領域での複数の抽出OCTデータの順次表示において、組織の像の位置が表示領域に対して維持される。
【0046】
但し、必ずしもこれに限られるものではない。設定ステップでは、抽出領域の深さ位置が、複数のOCTデータの間で一致されるように、各々のOCTデータに対する抽出領域の設定処理が行われてもよい。抽出OCTデータによって表示される組織上の位置が、一方向に遷移するように、複数の抽出OCTデータが切り換え表示された場合、表示領域内で組織の像位置が変位する。結果、順次表示において組織の立体形状が順次表示において把握されやすくなる。
【0047】
<リアルタイム表示>
OCT光学系を介して新たなOCTデータが撮影される都度、逐次、上記の順次表示によって、リアルタイムな抽出OCTデータが表示されてもよい。
この場合、例えば、取得ステップでは、OCT光学系によって各々のスキャンラインが走査されることによってOCTデータが画像処理器によって生成される都度、そのOCTデータが新たなOCTデータとして随時取得される。また、新たなOCTデータに抽出領域が設定されて、抽出領域と対応する抽出OCTデータが、表示領域においてリアルタイムに表示される。
【0048】
<フォローアップ表示>
また、走査線の位置が互いに一致し、撮影日が互いに異なる、複数のOCTデータを用いた経過観察(フォローアップ)のために、次のような処理が行われてもよい。
【0049】
例えば、取得ステップでは、走査線の位置が互いに一致し、撮影日が互いに異なる、複数のOCTデータを取得してもよい。
【0050】
また、設定ステップでは、複数のOCTデータの間で被検体の像位置に対する前記抽出領域の位置が一致されるように、各々のOCTデータに対する抽出領域の設定処理が行われてもよい。また、表示制御ステップでは、複数のOCTデータのそれぞれから抽出される抽出OCTが、表示領域において順次表示(切り換えて表示)されてもよい。表示領域において、撮影日が互いに異なる抽出OCTデータが、組織の像の位置を略一致させて切り換えて表示されるので、検者が注目する組織における、経時変化を観察しやすい。
【0051】
<合成OCTデータの表示>
抽出領域が設定されるOCTデータは、合成OCTデータのであってもよい。合成OCTデータは、深さ位置が互いに異なる複数のOCTデータを合成することによって生成される(例えば、本出願人による下記の特許文献3を参照)。合成OCTデータには、少なくとも前眼部と眼底のOCTデータが含まれていてもよい。また、更に、赤道部のOCTデータが含まれていてもよい。
【文献】特開2012-75640号公報 合成OCTデータにおいても、個別の組織が観察し難くなるので、所望の領域に抽出領域を設定し、該領域をあらかじめ定められた表示領域において拡大表示させてもよい。
【0052】
<抽出領域以外のデータの削減>
より深達性の高いOCTデータでは、OCTデータのデータ容量が肥大化し得る。一方、深達性の高いOCTデータにおいて、被検眼の組織が占める深さ領域は、従前と変わらない場合が考えられる。そこで、本実施形態では、抽出領域が設定されることにより、抽出領域以外の領域のデータがOCTから削減(削除または圧縮)されてもよい。その結果、抽出領域のデータ(つまり、抽出OCTデータ)が元のOCTデータの代わりにメモリに保存されてもよい。
【0053】
「実施例」
以下、実施例として、
図1,2に示すOCTシステム(光コヒーレンストモグラフィーシステム)を説明する。
【0054】
図1に示すように、実施例に係るOCTシステムは、光学ユニット10と、本実施例のコンピュータに相当する制御ユニット50と、を少なくとも含む。本実施例において、光学ユニット10と、制御ユニット50と、は、OCT装置として、一体化されている。本実施例に係るOCTシステム(OCT装置)は、波長掃引式OCT(SS-OCT)を基本的構成としている。
【0055】
光学ユニット10は、OCT光学系100(
図2参照)を備える。また、制御ユニット50は、本実施例におけるコンピュータであり、OCTシステムの全体を制御する演算制御部(プロセッサ)70を少なくとも備える。演算制御部(以下、単に制御部という)70は、例えば、CPUおよびメモリなどによって構成される。一例として、本実施例では、制御部70が、OCTシステムにおける画像処理器を兼用している。
【0056】
その他、OCTシステムには、記憶部(メモリ)72、入力インターフェース(操作部)75、モニタ80、等が設けられてもよい。各部は、制御部70に接続される。
【0057】
OCT装置の動作を制御するための各種プログラム、初期値等は、メモリ72に記憶されてもよい。例えば、ハードディスクドライブ、フラッシュROM、および、OCT装置に着脱可能に装着されるUSBメモリ等をメモリ72として使用することができる。また、メモリ72には、OCTデータから生成されるOCT画像の他、撮影に関する各種情報が記憶されてもよい。モニタ80は、OCTデータ(OCT画像)を表示してもよい。
【0058】
<OCT光学系>
次に、
図2を参照し、本実施例におけるOCT光学系100を説明する。OCT光学系100は、導光光学系150によって測定光を被検眼Eに導く。OCT光学系100は、参照光学系110に参照光を導く。OCT光学系100は、被検眼Eによって反射された測定光と参照光との干渉、によって取得される干渉信号光を検出器(受光素子)120に受光させる。なお、OCT光学系100は、図示無き筐体(装置本体)内に搭載され、ジョイスティック等の操作部材を介して周知のアライメント移動機構により眼Eに対して筐体を3次元的に移動させることによって被検眼に対するアライメントが行われてもよい。
【0059】
本実施例において、OCT光学系100には、SS-OCT方式が用いられる。この場合、OCT光学系100は、OCT光源102として、波長掃引光源を有する。また、OCT光学系100は、検出器120として、点検出器を有する。
【0060】
波長掃引光源は、出射波長が時間的に掃引される。OCT光源102は、VCSEL式波長掃引光源であってもよい。VCSEL式波長掃引光源は、レーザ発振を担うVCSELと、高速走査を実現するMEMSと、を含む。
【0061】
本実施例において検出器120は、複数(例えば、2つ)の検出器を用いて平衡検出を行う平衡検出器である。制御部70は、波長掃引光源による出射波長の変化に応じて参照光と測定光の戻り光の干渉信号をサンプリングし、サンプリングによって得られた各波長での干渉信号に基づいて被検眼のOCTデータを得る。
【0062】
カップラ(スプリッタ)104は、第1の光分割器として用いられ、光源102から出射された光を測定光路と参照光路に分割する。カップラ104は、例えば、光源102からの光を測定光路側の光ファイバー152に導光すると共に、参照光路側の参照光学系110に導光する。
【0063】
<導光光学系>
導光光学系150は、測定光を眼Eに導くために設けられる。導光光学系150には、例えば、光ファイバー152、コリメータレンズ153、フォーカシングレンズ155、光スキャナ156、及び、対物レンズ系158(本実施例における対物光学系)が順次設けられてもよい。この場合、測定光は、光ファイバー152の出射端から出射され、コリメータレンズ153によって平行ビームとなる。その後、フォーカシングレンズ155を介して、光スキャナ156に向かう。フォーカシングレンズ155は、図示なき駆動部によって光軸に沿って変位可能であり、眼底での集光状態を調整するために利用される。光スキャナ156を通過した光は、対物レンズ系158を介して、眼Eに照射される。対物レンズ系158に関して光スキャナ156と共役な位置に、第1の旋回点P1が形成される。この旋回点P1に前眼部が位置することで、測定光はケラレずに眼底に到達する。また、光スキャナ156の動作に応じて測定光が眼底上で走査される。このとき、測定光は、眼底の組織によって散乱・反射される。
【0064】
光スキャナ156は、眼E上でXY方向(横断方向)に測定光を走査させてもよい。光スキャナ156は、例えば、2つのガルバノミラーであり、その反射角度が駆動機構によって任意に調整される。光源102から出射された光束は、その反射(進行)方向が変化され、眼底上で任意の方向に走査される。光スキャナ156としては、例えば、反射ミラー(ガルバノミラー、ポリゴンミラー、レゾナントスキャナ)の他、光の進行(偏向)方向を変化させる音響光学素子(AOM)等が用いられてもよい。
【0065】
測定光による眼Eからの散乱光(反射光)は、投光時の経路を遡って、光ファイバー152へ入射され、カップラ104に達する。カップラ104は、光ファイバー152からの光を、検出器120に向かう光路へと導く。
【0066】
<参照光学系>
参照光学系110は、測定光の眼底反射光と合成される参照光を生成する。参照光学系110を経由した参照光は、カップラ148にて測定光路からの光と合波されて干渉する。参照光学系110は、マイケルソンタイプであってもよいし、マッハツェンダタイプであってもよい。
【0067】
図2に示す参照光学系110は、一例として、透過光学系によって形成されている。この場合、参照光学系110は、カップラ104からの光を戻さず透過させることにより検出器120へと導く。これに限らず、参照光学系110は、例えば、反射光学系によって形成され、カップラ104からの光を反射光学系により反射することにより検出器120に導いてもよい。本実施例において、カップラ104から検出器120までの光路上には、光路長差調整部145、および、偏波調整部147、が配置されている。
【0068】
光路長差調整部145は、測定光と参照光との光路長差を調整するために利用される。本実施例では、参照光路上に、直交した2つの面を持つミラー145aが設けられている。このミラー145aがアクチュエータ145bによって矢印方向に移動されることによって、参照光路の光路長を増減することができる。勿論、測定光と参照光との光路長差が調整する構成は、これに限られるものではない。例えば、導光光学系150において、コリメータレンズ153とカップラとが一体的に移動されることで、測定光の光路長が調整され、結果として、測定光と参照光との光路長差が調整されてもよい。
【0069】
本実施例において、偏波調整部147は、参照光の偏光を調整する。偏波調整部は測定光路上に配置されていてもよい。
【0070】
<深さ情報の取得>
制御部70は、検出器120によって検出されたスペクトル信号を処理(フーリエ解析)し、被検眼のOCTデータを得る。
【0071】
スペクトル信号(スペクトルデータ)は、波長λの関数として書き換えられ、波数k(=2π/λ)に関して等間隔な関数I(k)に変換されてもよい。あるいは、初めから波数kに関して等間隔な関数I(k)として取得されてもよい(K―CLOCK技術)。演算制御器は、波数k空間でのスペクトル信号をフーリエ変換することにより深さ(Z)領域におけるOCTデータを得てもよい。
【0072】
さらに、フーリエ変換後の情報は、Z空間での実数成分と虚数成分を含む信号として表されてもよい。制御部70は、Z空間での信号における実数成分と虚数成分の絶対値を求めることによりOCTデータを得てもよい。
【0073】
なお、参照光路調整部145を制御し、測定光路と参照光路との光路長差であって、被検眼Eの眼軸長に関する光路長差を、事前に調整しておく必要がある。本実施例では、例えば、予め定められた調整範囲でミラー145aを移動させると共に、各位置での干渉信号を取得し、干渉信号の強度が最も高くなる位置を基準として、ミラー145aの位置を定めるようにしてもよい。参照光路調整部145における光路長の調整範囲が、第1分岐光路と第2分岐光路との間における光路長差)に対して十分小さい場合は、参照光路調整部145の調整範囲において、干渉信号の強度ピークとなる位置は、一義的に特定されうる。
【0074】
なお、挿入状態において、眼底周辺部からの測定光の眼底反射光は、眼底中心部からの反射光に対して微弱になるので、測定光路と参照光路とのゼロディレイ位置が、眼底周辺部において所期する眼底組織(例えば、網膜、脈絡膜、強膜等)と重なるように、測定光路と参照光路との光路長差が参照光路調整部145によって調整されてもよい。
【0075】
<ソフトウェアによる分散補正>
なお、本実施例において、制御部70は、検出器120から出力されるスペクトルデータに対しソフトウェアによる分散補正処理を施してもよい。制御部70は、分散補正後のスペクトルデータに基づいてOCTデータを得る。このため、実像と虚像との間で画質において差異が生じる(
図3参照)。
【0076】
つまり、本実施例において、測定光路と参照光路との間における光学系の分散量の違いは、信号処理的に補正される。詳細には、予めメモリ72に記憶された補正値を、上記のスペクトル信号の処理において適用することによって行われる。
【0077】
制御部70は、検出器120から出力される受光信号に基づいて光のスペクトル強度を取得し、波長λの関数として書き換える。次に、スペクトル強度I(λ)を波数k(=2π/λ)に関して等間隔な関数I(k)に変換する。
【0078】
測定光と参照光との分散(dispersion)ミスマッチによる影響は、干渉成分の位相をシフトさせ、各波長の合波信号のピークを下げ、信号に拡がりを持たせる(解像度が下がる)。そこで、分散補正では、波長毎にシフトした位相を戻してやることで、干渉信号の低下による解像度の低下を補正する。この場合、波数kの関数としての位相ずれ量φ(k)を求めておき、I(k)・exp-iφ(k)によってkの値毎に位相のずれを戻す。ここで、分散補正すべき位相φ(k)は、キャリブレーションによって予め求めることもできるし、取得された断層画像に対応する位相φ(k)を求めるようにしてもよい。そして、メモリ72には、分散補正用のパラメータ(例えば、位相φ(k))が記憶される。
【0079】
その後、制御部70は、設定された分散補正データによって補正された分散補正後のスペクトル強度I(k)をフーリエ変換することにより、OCTデータが得られる。
【0080】
例えば、実像に対する分散の影響を補正するための分散補正値として第1の分散補正値(正像用)をメモリ72から取得し、検出器120から出力されるスペクトルデータを第1の分散補正値を用いて補正し、補正されたスペクトル強度データをフーリエ変換してOCTデータを形成する。実像Rは、高感度・高解像度の画像にて取得され、虚像M(ミラーイメージ)は、分散補正値の違いにより低解像度のぼけた画像にて取得される。
【0081】
これにより、第1の画像領域G1において実像が取得されたとき、その実像は、高感度・高解像度の画像にて取得され、その虚像(ミラーイメージ)は、第2画像領域G2において、分散補正値の違いにより低解像度のぼけた画像にて取得される。一方、第2の画像領域G2において実像が取得されたとき、その虚像は、第1画像領域G1において、分散補正値の違いにより低解像度のぼけた画像にて取得される。
【0082】
もちろん、これに限定されず、虚像Mに対するソフトウェア分散補正が行われても良い。この場合、虚像Mが、高感度・高解像度の画像にて取得され、実像Rが低解像度のぼけた画像にて取得される。
【0083】
なお、上記のようにソフトウェアによって分散補正を行う手法の詳細については、米国特許第6980299号公報、特表2008-501118号公報、等を参考にされたい。また、特開2010-29648号公報を参考にされたい。
【0084】
ソフトウェアによる分散補正処理が行われる場合において、眼底中心部でのOCTデータを得る際、例えば、制御部70は、実像と虚像の画像データのうち、感度及び解像度が高い方の画像データを抽出すればよい。
【0085】
<動作説明>
次に、
図4に示すフローチャートに沿って、実施例のOCTシステムで実行される眼科用画像処理方法を説明する。フローチャートの各処理は、眼科用画像処理プログラムに基づいて、制御部70によって実行されてもよい。本実施例では、フローチャートの各処理が実行されることによって、
図5~
図6で示すような態様で、少なくとも抽出OCTデータが表示される。
【0086】
図5~
図6に示した画面を、便宜上、ビュワー画面と称し、撮影が完了した後、OCTデータが表示されることを前提とする。更に、便宜上、以下の説明におけるOCTデータは、いずれもBスキャンデータである。また、スキャンラインと対応するOCTデータを、スライスともいう。
【0087】
<S1:取得ステップ>
まず、OCT光学系100の各種調整を経て、被検眼のOCTデータが撮影される。あらかじめ定められた複数のスキャンパターンのうちいずれかで、OCTデータが撮影されてもよい。
【0088】
撮影されたOCTデータは、スキャン位置、および、撮影日時を示す識別情報と対応付けて装置のメモリへ記憶(保存)されてもよい。これによって、撮影されたOCTデータが、撮影画像として制御部70によって取得される(S1)。一度に複数枚のスライスが撮影されたときは、各々のスライスがS1のステップにおいて取得されてもよい。
【0089】
このとき、本実施例では、ゼロディレイ位置Zを挟む第1の画像領域G1と第2の画像領域G2とのうち、予め定められた一方が抽出され、撮影画像として取得される。このとき、撮影画像として取得される一方の画像領域には、上記の分散補正の結果として、他方の画像領域と比べてより高感度・高解像度に描写される被検眼の像が、含まれている。
【0090】
<S2:表示対象の選択>
次に、複数枚のスライスが取得される場合は、
図5~
図6に示す画面において最初に表示されるスライスが選択される。最初に表示されるスライスは、スキャンパターンごとに、予め定められていてもよい。
【0091】
一例として、
図5~
図6の例では、「マルチ」のスキャンパターンによって撮影されたスライスの表示例を示している。この場合、各々のスライスは、水平方向のスキャンに基づいて取得される。各々のスライスと対応するスキャンライン231~233は、上下方向に関して互いに異なるように設定される。この場合、
図5~
図6に示すように、中心窩を通るスキャンライン231と対応するスライスが、最初に表示されるスライスとして選択されるよう、予め定められていてもよい。
【0092】
<S3:抽出領域の自動設定(本実施例の設定ステップ)>
次に、表示対象として選択されたスライスにおける抽出領域が設定される(S3)。本実施例では、スライスに含まれる眼底の像が、画像処理によって検出されてもよく、眼底の像の検出位置を基準として、抽出領域が設定されてもよい。
【0093】
眼底の像は、例えば、OCTデータの深さ方向に関する信号の強度分布に基づいて検出されてもよいし、画像の特徴量に基づいて検出されてもよいし、その他の検出手法によって検出されてもよい。
【0094】
S2のステップにおいて設定される抽出領域のサイズは、予め定められていてもよい。この場合、検出された像位置が、抽出領域の上端と下端との間に含まれるように、ゼロディレイ位置と抽出領域との距離が調整される。
【0095】
<S4:抽出OCTデータの表示>
抽出領域の設定後、抽出OCTデータの表示が開始される。一例として、
図5~
図6で示すような態様で表示が行われる。
【0096】
図5~
図6に示すように、ビュワー画面において予め定められた第1表示領域210に対して、抽出OCTデータが表示される。
【0097】
図5~
図6に示したビュワー画面では、第1表示領域210とは異なる位置に、第2表示領域220が設けられている。第2表示領域220は、サムネイル表領域ともいう。抽出OCTデータの抽出元となったスライス全体が、サムネイルとして、第2表示領域220に表示される。つまり、本実施例では、抽出OCTデータと、抽出OCTデータの抽出元となったOCTデータとが、互いに異なる表示領域において、同時に表示される。このとき、抽出OCTデータは、サムネイルに対して拡大表示される。
【0098】
第2表示領域220には、サムネイルと共に、選択枠221が表示される。抽出OCTデータの抽出位置が、選択枠221によって、グラフィカルに示される。本実施例では、選択枠221によって、抽出元となったOCTデータに対する抽出領域の位置関係が示される。
【0099】
また、ビュワー画面上には、抽出領域の深さ位置を示すテキスト情報が、表示されてもよい。テキスト情報は、抽出領域の位置を、原点位置(ゼロディレイ位置)を基準として示すものであってもよく、例えば、抽出領域のZ座標であってもよいし、原点位置から抽出領域までの光路長であってもよい。
【0100】
追加的に、ビュワー画面には、眼底の正面画像が、第3表示領域230に表示されてもよい。正面画像上には、スキャンラインが重畳されてもよい。
図5~
図6では、表示中のスライスと対応するスキャンライン231と、表示中のスライスから切り換えて表示可能な他のスライスと対応するスキャンライン232,233と、がそれぞれ正面画像上に表示される。
【0101】
<S5:各種操作入力の受付>
ビュワー画面が表示された状態で、制御部70は、各種の指示を、入力インターフェース75に対する操作入力に基づいて受け付け可能である(S5)。例えば、入力インターフェース75を介してポインタCを移動させ、各種ウィジェットを選択可能であってもよい。各種のウィジェットを介して、各種の操作入力が入力される。
【0102】
<抽出領域の変更>
本実施例では、ビュワー画面が表示された状態で、制御部70は、表示対象となるスライスを維持したままで抽出領域を変更するための変更指示を受け付けてもよい。抽出領域の変更指示は、上述の選択枠221(ウィジェットの一例)を介した操作入力に基づいて受け付けてもよい。抽出領域の変更指示を受け付け得た場合(S6:Yes)、指示に応じて抽出領域が更新(新たに設定)される(S7)。
【0103】
例えば、抽出領域の位置が、指示に基づいて変更可能であってもよい。この場合、選択枠221が、入力インターフェースを介した操作に基づいて、画面上で上下方向に移動可能であってもよい。選択枠221を移動させる操作が入力されることによって、選択枠221の大きさ、形状を維持したまま、OCTデータにおける抽出領域の位置が変更されてもよい。
【0104】
また、例えば、抽出領域のサイズが、指示に基づいて変更可能であってもよい。この場合、画面上で、選択枠221の各制御点に対する操作入力に基づいて、選択枠221のサイズが変更可能であってもよい。
【0105】
抽出領域の位置を変更するための操作入力と、抽出領域のサイズを変更するための操作入力とは、異なっていてもよい。このとき、抽出領域(換言すれば、選択枠221の内側領域)と、選択枠221そのものとが、操作対象として個別に選択可能(指定可能)なウィジェットとして設定されていることで、上記2種類の操作入力を個別に入力可能であってもよい。
【0106】
抽出領域の変更指示に応じて抽出領域が更新(新たに設定)されると(S7)、更新後の抽出領域と対応する抽出OCTデータが、新たに第1表示領域210に表示される(S4)。その結果、深さ方向に長いOCTデータからでも、検者が所望する一部分を、第1表示領域210において拡大して観察できる。
【0107】
一例として、
図5に対し、OCTデータにおける抽出領域の深さ位置を、より深い位置に変更させることで、
図6のような画面が新たに表示されるようになる。
【0108】
なお、抽出領域のサイズが変更される場合、変更後のサイズにあわせて画面上での第1表示領域210のレイアウトが調整されてもよい。例えば、画面上で第1表示領域210が占める範囲が調整されてもよい。また、画面上で第1表示領域210が占める範囲は一定であって、第1表示領域210の形状にあわせて抽出OCTデータの縦横の縮尺が個別に変更されてもよい。
【0109】
抽出領域の位置が変更された場合、変更後の抽出領域とS3の処理で設定された抽出領域と、の変位量が、メモリ72に記憶されてもよい。また、抽出領域のサイズが変更された場合、変更後のサイズを特定する情報が、メモリ72に記憶されてもよい。
【0110】
<表示対象となるOCTデータの変更>
本実施例では、ビュワー画面が表示された状態で、制御部70は、新たなスライスを表示対象として選択するための変更指示を受け付けてもよい。本実施例では、正面画像上において新たなスライスと対応するスキャンラインを選択する操作入力、および、送りボタン211~214に対する操作入力、に基づいて、OCTデータの変更指示を受け付けてもよい。
【0111】
スライスの変更指示を受け付けた場合(S8:Yes)、指示に応じた新たなスライスが、表示対象として選択される(S9)。
【0112】
次に、新たなスライス(OCTデータ)に対して抽出領域が設定される。その際、本実施例では、予め、チェックボックスとして
図5~
図6で示しているAutoボタン219のOn/Offに応じて、抽出領域の設定方法が異なる。
【0113】
Autoボタン219が予めOnされている場合(S10:Yes)、眼底の像位置に対する抽出領域の位置が、変更前後のスライス間で一致されるように、新たなスライスに対する抽出領域の設定処理が行われる(S3)。
【0114】
詳細には、Autoボタン219が予めOnされている場合(S10:Yes)、新たなOCTデータにおける眼底の像の像位置に基づいて、抽出領域が自動的に設定される。
【0115】
このとき、本実施例では、直前の(表示中の)OCTデータにおける抽出領域が、抽出領域の変更指示に基づいて、当初の設定位置から変更されている場合が考えられる。この場合、S7のステップにおいてメモリに保存されている、変更前後における抽出領域の変位量を考慮して、新たなOCTデータに対する抽出領域の位置が設定されてもよい。例えば、新たなOCTデータにおける眼底の像の像位置に対して、S7の処理において記憶された変位量に応じてオフセットされた位置に、抽出領域が設定されてもよい。
【0116】
また、直前のOCTデータと、新たなOCTデータとの間で、マッチング処理を行うことで、変位量を求め、この変位量に基づいて新たなOCTデータに対する抽出領域を設定してもよい。
【0117】
これにより、抽出OCTデータによって拡大観察される部位が、表示対象となるOCTデータの変更前後で維持されるので、特定の部位を集中的に観察しやすい。
【0118】
一方、あらかじめAutoボタン219がOffされている場合(S10:No)、抽出領域の深さ位置が、変更前後のスライス間で一致されるように、新たなスライスに対する抽出領域の設定処理が行われる(S11)。直前の(表示中の)OCTデータにおける抽出領域の深さ位置(例えば、抽出領域のZ座標、または、原点位置から抽出領域までの光路長)が、新たなOCTデータにおける抽出領域の深さ位置として引き継がれる。その結果、スライスの変更前後において、抽出OCTデータにおける眼底の像の出現位置が実際の眼底形状に応じて変化し得る。これにより、検者が、眼底組織の立体形状を、抽出OCTデータにおける眼底の像の出現位置から把握しやすい。
【0119】
<表示終了>
また、例えば、本実施例では、ビュワー画面の表示を終了させるための指示を受け付けてもよい。当該指示を受け付けた場合(S12:Yes)、制御部70は、ビュワー画面の表示を終了させる。
【0120】
「変容例」
以上、実施形態および実施例に基づいて本開示を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、種々の変形が許容される。
【0121】
例えば、上記実施例では、撮影が完了した後、OCTデータが表示される場合において、抽出OCTデータを表示する場合について説明した。しかし、必ずしもこれに限定されるものではない。例えば、OCTデータの撮影中に、或いは、撮影に際したOCT光学系100の調整中に、抽出OCTデータの表示が、リアルタイムに取得されるOCTデータに基づいて実行されてもよい。
【0122】
また、上記実施例では、OCT光学系100を介して眼底のOCTデータが撮影されるものとして説明した。しかし、必ずしもこれに限定されるものではない。実施例で示した深達性の高い(深さ方向の撮影範囲が広い)OCTでは、1台の装置で、切り換えて、又は、同時に、撮影されることが考えられる。
【0123】
この場合、
図7に示すように、前眼部に関する抽出OCTデータが表示可能であってもよい。抽出元となる前眼部OCTデータに対して設定される抽出領域の深さ範囲(上下方向の幅)は、眼底のOCTデータに対して設定される抽出領域とは異なっていてもよい。また、前眼部に関する抽出OCTデータは、眼底とは異なる縮尺で、第1表示領域210において表示されてもよい。このように、OCTデータに含まれる被検眼の部位に応じて自動的に抽出領域が設定されることで、各部位を良好に観察しやすくなる。
【0124】
また、操作入力において、必ずしもポインタCを移動は必要とされない。例えば、マウスホイールのスクロール操作によって、OCTデータに対する抽出領域の設定位置や、表示対象となるスライスが変更されてもよい。
【0125】
また、上記実施例においては、抽出元となったOCTデータのサムネイル(第2表示領域220に表示される画像)を介して、抽出元となったOCTデータに対する抽出領域の位置関係が示されている。但し、必ずしもこれに限られるものではなく、サムネイルを用いることなく、抽出元となったOCTデータに対する抽出領域の位置関係が画面上で示されてもよい。一例として、
図8に示すように、第1表示領域210に表示されるグラフィック240によって、抽出元となったOCTデータに対する抽出領域の位置関係が示されてもよい。
図8では、抽出元となったOCTデータに、前眼部および眼底の像が含まれている場合において、抽出領域は、前眼部と眼底との間に設定されている。この場合において、グラフィック240として示される矢印およびテキストによって、抽出領域の上下方向に存在する組織が示される。この場合、抽出領域内に組織の像が含まれていなくても、抽出領域の位置を検者が把握できる。結果、所望の組織を第1表示領域210に表示されるように、抽出領域の位置を検者が調整することが容易になる。
【0126】
なお、本実施例では、被検眼EのOCTデータを撮影するための眼科撮影装置を例に挙げて説明したがこれに限定されない。例えば、被検物のOCTデータを撮影するための装置において本実施形態が適用されてもよい。例えば、被検物は、眼、皮膚、血管等の生体であってもよいし、樹脂体等の生体以外の試料であってもよい。
【符号の説明】
【0127】
50 制御ユニット
70 制御部
80 モニタ
102 OCT光源
100 OCT光学系
120 検出器
210 第1表示領域