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特許7352166車載通信システム、車載通信装置及び車両用通信方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-20
(45)【発行日】2023-09-28
(54)【発明の名称】車載通信システム、車載通信装置及び車両用通信方法
(51)【国際特許分類】
   H04L 12/28 20060101AFI20230921BHJP
【FI】
H04L12/28 200Z
H04L12/28 100A
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019199092
(22)【出願日】2019-10-31
(65)【公開番号】P2021072568
(43)【公開日】2021-05-06
【審査請求日】2022-06-28
(73)【特許権者】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】咸 元俊
(72)【発明者】
【氏名】萩原 剛志
(72)【発明者】
【氏名】真下 誠
(72)【発明者】
【氏名】小林 伸行
(72)【発明者】
【氏名】川内 偉博
(72)【発明者】
【氏名】泉 達也
(72)【発明者】
【氏名】岩田 章人
(72)【発明者】
【氏名】山本 祐輔
【審査官】安藤 一道
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-255034(JP,A)
【文献】特開2014-046777(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L 12/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
イーサネット(登録商標)に係る所定通信プロトコルにて互いに信号を送受信する第1の車載通信装置及び第2の車載通信装置を備える車載通信システムであって、
前記第1の車載通信装置は、
前記所定通信プロトコルにおけるスレーブであり、
信号が入出力されるポートと、
該ポートを介して信号を送受信する第1の通信回路を有する第1のPHY部と、
前記第2の車載通信装置がリンクダウンしたスリープ状態にあるか否かを判定する判定処理部と
を備え、
前記第1のPHY部は、
前記判定処理部にて前記第2の車載通信装置がスリープ状態にあると判定された場合、前記ポートを介して前記第2の車載通信装置へ所定信号を出力するようにしてあり、
前記第2の車載通信装置は、
前記所定通信プロトコルにおけるマスタであり、
信号が入出力されるポートと、
該ポートを介して信号を送受信する第2の通信回路を有する第2のPHY部と、
前記ポートに入力される前記所定信号を検出する検出回路と、
該検出回路が前記所定信号を検出した場合、前記第2の通信回路をウェイクアップさせる電源回路と
を備える車載通信システム。
【請求項2】
前記所定通信プロトコルは100Base-T1である
請求項1に記載の車載通信システム。
【請求項3】
前記所定信号は、
前記所定通信プロトコルにおけるアイドル信号と略同一のパターン信号である
請求項2に記載の車載通信システム。
【請求項4】
前記判定処理部は、
前記第2の車載通信装置から第1所定時間の間、信号を受信しなかった場合、前記第2の車載通信装置がスリープ状態にあると判定し、
前記第1のPHY部は、
前記検出回路による前記所定信号の受信に係る第2所定時間の間、前記所定信号を出力する
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の車載通信システム。
【請求項5】
前記第1の車載通信装置は中継装置である
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の車載通信システム。
【請求項6】
前記第2の車載通信装置は、
前記第2のPHY部を複数備え、
前記電源回路は、
前記検出回路が一の前記第2のPHY部の前記ポートに入力される前記所定信号を検出した場合、一の前記第2のPHY部及び他の一又は複数の前記第2のPHY部の前記通信回路をウェイクアップさせる
請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の車載通信システム。
【請求項7】
イーサネット(登録商標)に係る所定通信プロトコルにおけるスレーブであり、該所定通信プロトコルにて信号を送受信する車載通信装置であって、
信号が入出力されるポートと、
前記ポートを介して信号を送受信する通信回路を有するPHY部と、
該ポートに接続される、前記所定通信プロトコルにおけるマスタである外部の車載通信装置がリンクダウンしたスリープ状態にあるか否かを判定する判定処理部と
を備え、
前記PHY部は、
前記判定処理部にて、前記外部の車載通信装置がスリープ状態にあると判定された場合、前記ポートを介して前記外部の車載通信装置へ所定信号を出力するようにしてある
車載通信装置。
【請求項8】
イーサネット(登録商標)に係る所定通信プロトコルにて互いに信号を送受信する第1の車載通信装置及び第2の車載通信装置を用いた車両用通信方法であって、
前記第1の車載通信装置は、
前記第1の車載通信装置は前記所定通信プロトコルにおけるスレーブであり、
前記第2の車載通信装置がリンクダウンしたスリープ状態にあるか否かを判定し、
前記第2の車載通信装置がスリープ状態にあると判定された場合、前記第2の車載通信装置へ所定信号を出力し、
前記第2の車載通信装置は、
前記第2の車載通信装置は前記所定通信プロトコルにおけるマスタであり、
入力される前記所定信号を検出し、
前記所定信号が検出された場合、前記第2の車載通信装置の通信回路をウェイクアップさせる
車両用通信方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車載通信システム、車載通信装置及び車両用通信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車載イーサネット(イーサネットは登録商標)が注目されている。イーサネット通信を行う車載通信装置は、ポートを介して信号を送受信するPHY部を備える。100BaseT1(IEEE802.3bw)に準拠したPHY部は、送信回路及び受信回路とは別に、ポートに入力されたアイドル信号を検出する検出回路を備える。
【0003】
100BaseT1においてはマスタとスレーブがあり、マスタの車載通信装置は、リンクアップする前にアイドル信号を出力する。スレーブの車載通信装置は、PHY部がリンクダウンしたスリープ状態にある場合、マスタから出力されたアイドル信号を検出回路によって検出すると、PHY部をスリープ状態からウェイクアップさせることができる(非特許文献1)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【文献】“OPEN Sleep/Wake-up Specification”、[online]、2017年2月21日、[令和1年9月11日検索]、インターネット(URL:Sleep/Wake-up specification for Automotive ... - Open Alliance)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、マスタの車載通信装置がスリープ状態にある場合、スレーブの車載通信装置からはアイドル信号が出力されないため、マスタの車載通信装置をウェイクアップさせることができないという問題があった。
【0006】
本開示の目的は、イーサネットに係る所定通信プロトコルに準拠したスレーブの車載通信装置から、スリープ状態にあるマスタの車載通信装置をウェイクアップさせることができる車載通信システム、車載通信装置及び車両用通信方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本態様に係る車載通信システムは、イーサネット(登録商標)に係る所定通信プロトコルにて互いに信号を送受信する第1の車載通信装置及び第2の車載通信装置を備える車載通信システムであって、前記第1の車載通信装置は、信号が入出力されるポートと、該ポートを介して信号を送受信する第1の通信回路を有する第1のPHY部と、前記第2の車載通信装置がリンクダウンしたスリープ状態にあるか否かを判定する判定処理部とを備え、前記第1のPHY部は、前記判定処理部にて前記第2の車載通信装置がスリープ状態にあると判定された場合、前記ポートを介して前記第2の車載通信装置へ所定信号を出力するようにしてあり、前記第2の車載通信装置は、信号が入出力されるポートと、該ポートを介して信号を送受信する第2の通信回路を有する第2のPHY部と、前記ポートに入力される前記所定信号を検出する検出回路と、該検出回路が前記所定信号を検出した場合、前記第2の通信回路をウェイクアップさせる電源回路とを備える。
【0008】
本態様に係る車載通信装置は、車載通信装置であって、信号が入出力されるポートと、前記ポートを介して信号を送受信する通信回路を有するPHY部と、該ポートに接続される外部の車載通信装置がリンクダウンしたスリープ状態にあるか否かを判定する判定処理部とを備え、前記PHY部は、前記判定処理部にて、前記外部の車載通信装置がスリープ状態にあると判定された場合、前記ポートを介して前記外部の車載通信装置へ所定信号を出力するようにしてある。
【0009】
本態様に係る車両用通信方法は、イーサネット(登録商標)に係る所定通信プロトコルにて互いに信号を送受信する第1の車載通信装置及び第2の車載通信装置を用いた車両用通信方法であって、前記第1の車載通信装置は、前記第2の車載通信装置がリンクダウンしたスリープ状態にあるか否かを判定し、前記第2の車載通信装置がスリープ状態にあると判定された場合、前記第2の車載通信装置へ所定信号を出力し、前記第2の車載通信装置は、入力される前記所定信号を検出し、前記所定信号が検出された場合、前記第2の車載通信装置の通信回路をウェイクアップさせる。
【発明の効果】
【0010】
上記によれば、イーサネットに係る所定通信プロトコルに準拠したスレーブの車載通信装置から、スリープ状態にあるマスタの車載通信装置をウェイクアップさせることができる車載通信システム、車載通信装置及び車両用通信方法を提供することが可能となる。
【0011】
なお、本願は、このような特徴的な処理部を備える車載通信システム及び車載通信装置として実現することができるだけでなく、上記の通り、かかる特徴的な処理をステップとする車両用通信方法として実現したり、かかるステップをコンピュータに実行させるためのプログラムとして実現したりすることができる。また、車載通信システムの一部又は全部を実現する半導体集積回路として実現したり、車載通信システムを含むその他のシステムとして実現したりすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は実施形態1に係る車載通信システムの構成例を示すブロック図である。
図2図2は実施形態1に係るマスタのウェイクアップ方法を示すフローチャートである。
図3図3は所定信号の出力タイミングを示すタイミング図である。
図4図4は実施形態2に係る車載通信システムの構成例を示すブロック図である。
図5図5は実施形態2に係るマスタのウェイクアップ方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。また、以下に記載する実施形態の少なくとも一部を任意に組み合わせてもよい。
【0014】
(1)本態様に係る車載通信システムは、イーサネット(登録商標)に係る所定通信プロトコルにて互いに信号を送受信する第1の車載通信装置及び第2の車載通信装置を備える車載通信システムであって、前記第1の車載通信装置は、信号が入出力されるポートと、該ポートを介して信号を送受信する第1の通信回路を有する第1のPHY部と、前記第2の車載通信装置がリンクダウンしたスリープ状態にあるか否かを判定する判定処理部とを備え、前記第1のPHY部は、前記判定処理部にて前記第2の車載通信装置がスリープ状態にあると判定された場合、前記ポートを介して前記第2の車載通信装置へ所定信号を出力するようにしてあり、前記第2の車載通信装置は、信号が入出力されるポートと、該ポートを介して信号を送受信する第2の通信回路を有する第2のPHY部と、前記ポートに入力される前記所定信号を検出する検出回路と、該検出回路が前記所定信号を検出した場合、前記第2の通信回路をウェイクアップさせる電源回路とを備える。
【0015】
本態様によれば、第1の車載通信装置は、判定処理部によって、第2の車載通信装置のPHY部がスリープ状態にあるか否かを判定することができる。第2の車載通信装置のPHY部がスリープ状態にある場合、第1の車載通信装置のPHY部は、所定信号を第2の車載通信装置へ出力する。第2の車載通信装置のPHY部がスリープ状態に無い場合に所定信号を第2の車載通信装置へ送信すると不具合が生ずるおそれがあるため、第2の車載通信装置のPHY部がスリープ状態にあるか否かを判定する必要がある。
第2の車載通信装置は、第1の車載通信装置から出力された所定信号を検出回路にて検出することができ、当該所定信号が検出された場合、電源回路はPHY部の通信回路に電力を供給してウェイクアップさせる。
従って、第1の車載通信装置は、第2の車載通信装置の通信回路がスリープ状態にあるか否かを確認した上で、所定信号を送信し、第2の車載通信装置の通信回路をウェイクアップさせることができる。
【0016】
(2)前記所定通信プロトコルは100Base-T1であり、前記第1の車載通信装置は前記所定通信プロトコルにおけるスレーブ、前記第2の車載通信装置は前記所定通信プロトコルにおけるマスタである構成が好ましい。
【0017】
本態様によれば、第1の車載通信装置と、第2の車載通信装置は、100Base-T1に準拠した通信を行う。スレーブの車載通信装置は、スリープ状態にあるマスタの車載通信装置の通信回路をウェイクアップさせることができる。
【0018】
(3)前記所定信号は、前記所定通信プロトコルにおけるアイドル信号と略同一のパターン信号である構成が好ましい。
【0019】
本態様によれば、スレーブの車載通信装置は、マスタ側から送信されるべきアイドル信号と略同一のパターン信号を、所定信号として、マスタの車載通信装置へ出力し、当該マスタの通信回路をウェイクアップさせることができる。
マスタの車載通信装置が備える検出回路は、当該車載通信装置がスレーブとして動作した際、マスタ側から送信されるアイドル信号を検出するためのものである。従って、当該検出回路は、アイドル信号と略同一の所定信号を確実に検出することができる。よって、アイドル信号と略同一の所定信号を用いることによって、マスタの車載通信装置は、スレーブから送信される所定信号をより確実に検出してマスタの通信回路をウェイクアップさせることができる。
【0020】
(4)前記判定処理部は、前記第2の車載通信装置から第1所定時間の間、信号を受信しなかった場合、前記第2の車載通信装置がスリープ状態にあると判定し、前記第1のPHY部は、前記検出回路による前記所定信号の受信に係る第2所定時間の間、前記所定信号を出力する構成が好ましい。
【0021】
本態様によれば、第1の車載通信装置は、第1所定時間の間、第2の車載通信装置の状態を監視し、第2の車載通信装置から送信される信号を受信しなかった場合、第2の車載通信装置がスリープ状態にあると判定する。第1所定時間はリンクアップしているPHY部が信号を送信しない最長の時間である。
第1の車載通信装置は、第2所定時間の間、所定信号を第2の車載通信装置へ出力する。第2所定時間は、検出装置が所定信号を確実に検出するために要する時間である。
【0022】
(5)前記第1の車載通信装置は中継装置である構成が好ましい。
【0023】
本態様によれば、第1の車載通信装置は中継装置であり、第2の車載通信装置は中継装置に接続された通信装置である。従って、中継装置側から、当該中継装置に接続された第2の車載通信装置の通信回路をウェイクアップさせることができる。
【0024】
(6)前記第2の車載通信装置は、前記第2のPHY部を複数備え、前記電源回路は、前記検出回路が一の前記第2のPHY部の前記ポートに入力される前記所定信号を検出した場合、一の前記第2のPHY部及び他の一又は複数の前記第2のPHY部の前記通信回路をウェイクアップさせる構成が好ましい。
【0025】
本態様によれば、第2の車載通信装置は、一のPHY部へ出力された所定信号が検出された場合、当該一のPHY部のみならず、他の一又は複数のPHY部の通信回路をウェイクアップさせることができる。従って、第2の車載通信装置が備える複数のPHY部の通信回路それぞれを個別にウェイクアップさせる必要は無く、まとめて複数のPHY部をウェイクアップさせることができる。
【0026】
(7)本態様に係る車載通信装置は、車載通信装置であって、信号が入出力されるポートと、前記ポートを介して信号を送受信する通信回路を有するPHY部と、該ポートに接続される外部の車載通信装置がリンクダウンしたスリープ状態にあるか否かを判定する判定処理部とを備え、前記PHY部は、前記判定処理部にて、前記外部の車載通信装置がスリープ状態にあると判定された場合、前記ポートを介して前記外部の車載通信装置へ所定信号を出力するようにしてある。
【0027】
本態様によれば、車載通信装置は、ポートに接続される他の車載通信装置がスリープ状態にあるか否かを確認した上で、所定信号を送信し、当該他の車載通信装置の通信回路をウェイクアップさせることができる。
【0028】
(8)本態様に係る車両用通信方法は、イーサネット(登録商標)に係る所定通信プロトコルにて互いに信号を送受信する第1の車載通信装置及び第2の車載通信装置を用いた車両用通信方法であって、前記第1の車載通信装置は、前記第2の車載通信装置がリンクダウンしたスリープ状態にあるか否かを判定し、前記第2の車載通信装置がスリープ状態にあると判定された場合、前記第2の車載通信装置へ所定信号を出力し、前記第2の車載通信装置は、入力される前記所定信号を検出し、前記所定信号が検出された場合、前記第2の車載通信装置の通信回路をウェイクアップさせる。
【0029】
本態様によれば、態様1同様、第1の車載通信装置は、第2の車載通信装置の通信回路がスリープ状態にあるか否かを確認した上で、所定信号を送信し、第2の車載通信装置の通信回路をウェイクアップさせることができる。
【0030】
[本開示の実施形態の詳細]
本開示の実施形態に係る車載通信システムを、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0031】
以下、本開示をその実施形態を示す図面に基づいて具体的に説明する。
(実施形態1)
図1は実施形態1に係る車載通信システムの構成例を示すブロック図である。図1中、太線は給電線を示し、細線は信号線を示している。
本実施形態1に係る車載通信システムは、車両に搭載される中継装置1と、複数のECU(Electronic Control Unit)2とを備える。複数のECU2は車内通信線によって中継装置1に接続され、車載イーサネットを構成している。なお、車載通信システムは、イーサネット通信と合わせてCAN通信を行う構成であっても良い。
【0032】
中継装置1は、中継処理部10と、複数のポート1aと、各ポート1aを介して信号を送受信する複数のPHY部11とを備える。中継装置1は、100BaseT1(IEEE802.3bw)に準拠した通信を行う第1の車載通信装置であり、スレーブとして機能する。
【0033】
PHY部11は通信回路11aと、検出回路11bとを備える。中継装置1が備える複数のPHY部11の構成は同様であるため、以下では一のPHY部11の構成を説明し、他のPHY部11の詳細な説明は省略する。
【0034】
通信回路11aは、100Base-T1の通信プロトコルに準拠した通信を行うトランシーバとして機能する送信回路及び受信回路を有する。送信回路は、中継処理部10から与えられた送信データを3レベルの信号に変換し、ポート1aへ出力する。当該信号はポート1aを通じて、当該ポート1aに接続されたECU2へ送信される。また、送信回路は、ECU2から送信され、ポート1aに入力された信号を受信データに変換し、変換された受信データを中継処理部10に与える。本実施形態1に係るスレーブ側のPHY部11は、リンクダウンしたマスタ側のPHY部11をウェイクアップするための所定信号Aを出力する機能を有する。所定信号Aは、例えば、100BaseT1におけるマスタがリンクアップする際に当該マスタから出力するべきアイドル信号と略同一のパターン信号である。なお、当該パターン信号は所定信号Aの一例であり、マスタの検出回路21bが検出可能な信号であれば、他の任意波形の信号であっても良い。
【0035】
検出回路11bは、マスタの車載通信装置、例えばECU2から送信されたアイドル信号がポート1aを介してPHY部11に入力された場合、当該アイドル信号を検出する。検出回路11bは、アイドル信号を検出した場合、スリープ状態にある通信回路21aをウェイクアップさせるための信号を出力する。本実施形態1では、マスタであるECU2側の検出回路21bの動作が重要であるため、スレーブ側の検出回路11bの詳細は省略する。
【0036】
中継処理部10には複数のECU2が接続されており、送信データ及び受信データを中継するイーサネットスイッチ及びL2スイッチとしての機能を有する。中継処理部10は、例えば図示しないマイコン、記憶部、PHY部11が接続される入出力インタフェース、計時部等を備え、送信データの中継処理を実行する。
また、中継処理部10は、ECU2から送信される信号を監視し、当該ECU2がスリープ状態にあるか否かを判定する機能を有する。
【0037】
ECU2は、制御回路20と、ポート2aと、当該ポート2aを介して信号を送受信するPHY部21と、電源回路22を備える。ECU2は、100BaseT1(IEEE802.3bw)に準拠した通信を行う第2の車載通信装置であり、マスタとして機能する。
【0038】
PHY部21は、通信回路21aと、検出回路21bとを備える。
通信回路21aは、100Base-T1の通信プロトコルに準拠した通信を行うトランシーバとして機能する送信回路及び受信回路を有する。送信回路は、制御回路20から与えられた送信データを3レベルの信号に変換し、ポート2aへ出力する。当該信号はポート2aに接続された中継装置1を通じて他のECU2へ送信される。また、送信回路は、中継装置1を介して他のECU2から送信され、ポート2aに入力された信号を受信データに変換し、変換された受信データを制御回路20に与える。
【0039】
検出回路21bは、スレーブの中継装置1から送信された所定信号Aがポート2aを介してPHY部21に入力された場合、当該所定信号Aを検出する。検出回路21bは、スレーブである中継装置1から出力された所定信号Aを検出した場合、所定の給電指示信号を電源回路22へ出力する。
【0040】
電源回路22は制御回路20、通信回路21a、検出回路21bへ電力を供給する回路である。電源回路22から検出回路21bへの給電経路は、制御回路20及び通信回路21aへの給電経路とは異なる。電源回路22は、制御回路20から給電停止命令を受けた場合、PHY部21の通信回路21aへの給電を停止させ、通信回路21aをリンクダウンさせる。なお、電源回路22は、通信回路21aと共に制御回路20への給電を停止させても良い。ただし、電源回路22は、通信回路21aへの給電を停止させた場合であっても、検出回路21bへの給電は停止させず、継続的に給電を行う。つまり、検出回路21bは、常時動作しており、中継装置1から出力される所定信号Aを常時検出することができる状態にある。
電源回路22は、通信回路21aへの給電を停止させている場合、検出回路21bから上記所定の給電指示信号が出力された場合、通信回路21aへの給電を開始する。電源回路22から給電された通信回路21aはウェイクアップし、リンクアップ処理を行い、マスタとして通信を開始する。
【0041】
なお、ECU2の機能は特に限定されるものでは無いが、以下のようなものがある。
認知系のドメインに属するECU2は、例えば、車載カメラ、LIDAR、超音波センサ、ミリ波センサ等のセンサと接続している。当該ECU2は、当該センサから出力された出力値を例えばデジタル変換し、中継装置1を介して判断系ドメインのECU2へ送信する。
判断系のドメインに属するECU2は、例えば、認知系ドメインに属するECU2から送信されたデータを受信する。判断系ドメインのECU2は、受信したデータに基づき、車両の自動運転機能を発揮するためのデータを生成し、又はデータを加工する処理を行う。
判断系ドメインのECU2は、当該生成等したデータを、中継装置1を介して操作系ドメインのECU2へ送信する。
操作系のドメインに属するECU2は、例えば、モータ、エンジン又はブレーキ等のアクチュエータと接続している。操作系のドメインのECU2は、判断系ドメインのECU2から送信されたデータを受信し、受信したデータに基づき当該アクチュエータの動作を制御して、車両の走行、停止又は操舵等の操作を行い、自動運転機能を発揮する。
【0042】
図2は実施形態1に係るマスタのウェイクアップ方法を示すフローチャート、図3は所定信号Aの出力タイミングを示すタイミング図である。
【0043】
スレーブである中継装置1の中継処理部10は、一のポート1aにマスタであるECU2が接続されているか否かを判定する(ステップS11)。
【0044】
当該ポート1aにECU2が接続されていないと判定した場合(ステップS11:NO)、中継処理部10は、処理を終える。
【0045】
ポート1aにマスタであるECU2が接続されていると判定した場合(ステップS11:YES)、中継処理部10は計時を開始する(ステップS12)。中継処理部10は計時を開始してから第1所定時間T1が経過したか否かを判定する(ステップS13)。第1所定時間T1はリンクアップしているPHY部21が信号を送信しない最長の時間である。つまり、中継処理部10は、マスタであるECU2がリンクダウンしたスリープ状態にあるか印加を判定する。
なお、ステップS11及びステップS13の処理を実行する中継処理部10は、第2の車載通信装置であるECU2がリンクダウンしたスリープ状態にあるか否かを判定する判定処理部として機能する。
【0046】
第1所定時間T1が経過していないと判定した場合(ステップS13:NO)、中継処理部10は処理をステップS13へ戻し待機する。第1所定時間T1が経過したと判定した場合(ステップS13:YES)、つまりECU2がスリープ状態にあることが確認された場合、図3に示すように、中継処理部10は、中継装置1のPHY部11に所定信号Aの出力を開始させる(ステップS14)。所定信号Aは、ポート1aを通じてECU2のPHY部21に入力される。
【0047】
中継処理部10は、所定信号Aの出力を開始してから第2所定時間T2が経過したか否かを判定する(ステップS15)。第2所定時間T2は、マスタ側の検出装置が所定信号Aを確実に検出するために要する時間である。第2所定時間T2が経過していないと判定した場合(ステップS15:NO)、中継処理部10は処理をステップS15へ戻し待機する。
【0048】
第2所定時間T2が経過したと判定した場合(ステップS15:YES)、中継処理部10は、図3に示すように所定信号Aの出力を停止させ(ステップS16)、処理を終える。
【0049】
一方、ECU2の検出回路21bは、スレーブの中継装置1から出力された所定信号Aを検出する(ステップS21)。検出回路21bが所定信号Aを検出した場合、所定の給電指示信号が電源回路22に出力される。電源回路22は、通信回路21aに電力の供給を開始する(ステップS22)。ECU2の通信回路21aは、給電によりウェイクアップし(ステップS23)、リンクアップする(ステップS24)。その後、ECU2はマスタの車載通信装置として、所要の通信を開始する。
【0050】
このように構成された実施形態によれば、イーサネットに係る100Base-T1に準拠したスレーブの中継装置1から、スリープ状態にあるマスタのECU2をウェイクアップさせることができる。
【0051】
スレーブの中継装置1は、マスタ側から送信されるアイドル信号と略同一のパターン信号を、所定信号Aとして、マスタのECU2へ出力してPHY部21をウェイクアップさせる構成である。検出回路21bはアイドル信号を検出するように構成されているため、当該検出回路21bは、アイドル信号と略同一の所定信号Aを確実に検出することができる。よって、アイドル信号と略同一の所定信号Aを用いることによって、マスタのECU2は、スレーブから送信される所定信号Aをより確実に検出してマスタのPHY部21をウェイクアップさせることができる。
【0052】
図3に示すように、中継装置1は、第1所定時間T1が経過し、ECU2がスリープ状態にあることが確認されるまでは、所定信号AをECU2へ出力しないように構成されている。従って、リンクアップしているECU2へ所定信号Aを出力することによる不測の不具合が生ずることを避けることができる。
【0053】
図3に示すように、中継装置1は、ECU2がスリープ状態にあることを確認した場合、第2所定時間T2、所定信号Aを出力することによって、ECU2のPHY部21を確実にウェイクアップさせることができる。
【0054】
(実施形態2)
図4は実施形態2に係る車載通信システムの構成例を示すブロック図である。実施形態2に係る車載通信システムは、実施形態1と同様の中継装置1と、複数のECU2とを備える。実施形態2に係るECU2は、複数のPHY部21を備える点が実施形態1と異なる。なお図4中、ECU2のPHY部21に接続される他のECU2等の車載通信装置は作図の便宜上、図示していない。電源回路22は複数のPHY部21に電力を供給する。
【0055】
図5は実施形態2に係るマスタのウェイクアップ方法を示すフローチャートである。マスタである中継装置1の処理内容は実施形態1と同様である。
【0056】
一方、ECU2の検出回路21bは、スレーブの中継装置1から出力された所定信号Aを検出する(ステップS221)。検出回路21bが所定信号Aを検出した場合、所定の給電指示信号が電源回路22に出力される。電源回路22は、所定信号Aを検出したPHY部21の通信回路21aと、他の一又は複数のPHY部21の通信回路21aとに電力の供給を開始する(ステップS222)。ECU2の各通信回路21aは、給電によりウェイクアップし(ステップS223)、リンクアップする(ステップS224)。その後、ECU2はマスタの車載通信装置として、所要の通信を開始する。
なお、電源回路22は、ECU2の全てのPHY部21の通信回路21aへ給電を開始し、ウェイクアップさせても良いし、一部の通信回路21aをウェイクアップさせても良い。電源回路22は、所定信号Aが入力されたPHY部21に応じて、異なる他の一又は複数の通信回路21aをウェイクアップさせるように構成しても良い。この場合、所定信号Aが入力されるPHY部21と、ウェイクアップさせる一又は複数の通信回路21aとを対応付けたテーブルを備えると良い。電源回路22は、テーブルに従って、通信回路21aをウェイクアップさせることができる。
【0057】
このように構成された実施形態によれば、ECU2は、中継装置1から出力された所定信号Aを検出した場合、所定信号Aが入力されたPHY部21の通信回路21aのみならず、他の一又は複数のPHY部21の通信回路21aもまとめてウェイクアップさせることができる。従って、ECU2が備える複数のPHY部21の通信回路21aそれぞれを個別にウェイクアップさせる必要は無く、まとめて複数のPHY部21をウェイクアップさせることができる。
【符号の説明】
【0058】
1 中継装置
1a ポート
2 ECU
2a ポート
10 中継処理部
11 PHY部
11a 通信回路
11b 検出回路
20 制御回路
21 PHY部
21a 通信回路
21b 検出回路
22 電源回路
A 所定信号
図1
図2
図3
図4
図5