(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-20
(45)【発行日】2023-09-28
(54)【発明の名称】搬送ヘッドおよび搬送装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/677 20060101AFI20230921BHJP
B24B 41/06 20120101ALI20230921BHJP
B24B 37/08 20120101ALI20230921BHJP
B23Q 7/04 20060101ALI20230921BHJP
H01L 21/304 20060101ALI20230921BHJP
【FI】
H01L21/68 A
B24B41/06 A
B24B37/08
B23Q7/04 K
B23Q7/04 C
H01L21/304 621A
H01L21/304 622L
(21)【出願番号】P 2019201199
(22)【出願日】2019-11-06
【審査請求日】2022-09-21
(73)【特許権者】
【識別番号】390004581
【氏名又は名称】三益半導体工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】519368781
【氏名又は名称】株式会社オーテック
(73)【特許権者】
【識別番号】519368828
【氏名又は名称】株式会社永和
(74)【代理人】
【識別番号】100102532
【氏名又は名称】好宮 幹夫
(74)【代理人】
【識別番号】100194881
【氏名又は名称】小林 俊弘
(72)【発明者】
【氏名】加邉 克博
【審査官】内田 正和
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-74120(JP,A)
【文献】特開2015-179754(JP,A)
【文献】特開2002-187060(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/29724(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/677
B24B 41/06
B24B 37/08
B23Q 7/04
H01L 21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウェーハを搬送する搬送装置の搬送ヘッドであって、
前記ウェーハを吸着して保持する吸着パッドと、該吸着パッドに前記ウェーハを真空吸着する吸着ラインを備えており、
前記搬送ヘッドのウェーハ吸着面側において、前記搬送ヘッドの中心部に主バルーンが配置されており、外周部に1つ以上の補助バルーンが配置されており、
該主バルーンおよび補助バルーンは、エアーの供給により加圧されて前記吸着パッドの吸着面よりも突出するように膨張可能であり、前記エアーの吸引により減圧されて前記吸着パッドの吸着面よりも引っ込むように収縮可能なものであることを特徴とする搬送ヘッド。
【請求項2】
前記主バルーンおよび前記補助バルーンの間に、前記吸着パッドに保持された前記ウェーハに対して剥離用エアーを供給するパージラインをさらに備えたものであることを特徴とする請求項1に記載の搬送ヘッド。
【請求項3】
前記吸着パッドは二重のリング形状であり、
該吸着パッドよりも中心側に前記主バルーンが配置されており、前記吸着パッドよりも外周側に前記補助バルーンが配置されており、
前記吸着パッドの二重のリング同士の間に前記吸着ラインが備えられており、該吸着ラインは前記パージラインの機能を兼ね備えているものであることを特徴とする請求項2に記載の搬送ヘッド。
【請求項4】
ウェーハ加工装置の上下定盤間に配置されるキャリアのホールにウェーハを搬送する搬送装置であって、
前記ウェーハを保持する搬送ヘッドと、該搬送ヘッドが取り付けられており回動可能なアームを有しており、
前記搬送ヘッドが、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の搬送ヘッドであることを特徴とする搬送装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウェーハを搬送する搬送装置の搬送ヘッドおよび搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば半導体基板等のウェーハの両面を研磨する装置として、複数の円形穴状のホールを有するキャリアをサンギヤ(太陽歯車)とインターナルギヤ(内歯歯車)に噛合させ、ホール内にウェーハをセットし、このウェーハの両面を上定盤と下定盤で挟み込むように保持するとともに、サンギヤ等によってキャリアを遊星歯車運動させ、同時に上定盤と下定盤を相対方向に回転させることによってウェーハの両面を同時に研磨するような装置が知られている(特許文献1)。
【0003】
このような両面研磨装置においては、搬送ハンドに吸着されたウェーハを両面研磨装置のキャリアのホール内に置くための搬送装置が設けられている。そして該搬送装置ではウェーハの反転やキャリアのホール内にウェーハをズレ無くセットするために多軸ロボットを使用している。多軸ロボットは、ウェーハを剥がす際にウェーハを斜めにするなどして正確にウェーハを剥離・装填している。
【0004】
また、
図8に示すウェーハを吸着して搬送する従来の搬送ヘッドにおいては、ウェーハ吸着面側の中心部に、キャリアのホール内へのウェーハの剥離・装填のためのバルーンが設けられている。バルーンが膨張することで搬送ヘッドからウェーハが剥離し易いようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、多軸ロボットは高価で大型のために全ての装置に設置するのは難しい。本発明者は安価で省スペースな搬送装置にするためモーターとシリンダーの組み合わせで検討したが、多軸ロボットのようにウェーハを傾けることが出来ないためにウェーハの剥離・装填がうまくいかない。両面研磨装置はウェットの状態にあるため安定した剥離・装填が難しい。
図8の従来の搬送ヘッドでも安定した剥離や装填は難しく、ウェーハがキャリアのホールからズレてしまうことがあった。
そして、このような事情は、装置の機構が両面研磨装置とほとんど同じである両面ラップ装置においても同じである。
【0007】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであって、特には両面研磨装置や両面ラップ装置等のウェーハ加工装置におけるキャリアのホールに、ウェーハを安価に搬送し、かつ、安定してウェーハを剥離して装填することができる搬送ヘッドおよび搬送装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明は、ウェーハを搬送する搬送装置の搬送ヘッドであって、
前記ウェーハを吸着して保持する吸着パッドと、該吸着パッドに前記ウェーハを真空吸着する吸着ラインを備えており、
前記搬送ヘッドのウェーハ吸着面側において、前記搬送ヘッドの中心部に主バルーンが配置されており、外周部に1つ以上の補助バルーンが配置されており、
該主バルーンおよび補助バルーンは、エアーの供給により加圧されて前記吸着パッドの吸着面よりも突出するように膨張可能であり、前記エアーの吸引により減圧されて前記吸着パッドの吸着面よりも引っ込むように収縮可能なものであることを特徴とする搬送ヘッドを提供する。
【0009】
このようなものであれば、ウェーハを吸着パッドに吸着して保持可能であるとともに、多軸ロボット無しでも簡便に安定してウェーハを剥離することが可能である。このため、特には両面研磨装置等のウェーハ加工装置のキャリアのホールへ正確に精度高くウェーハを装填することができ、ウェーハ装填のズレが生じにくい。しかも多軸ロボットに比べて安価であるし、修理費用も低コスト化できる。さらにはコンパクトで省スペースなものである。
【0010】
このとき、前記主バルーンおよび前記補助バルーンの間に、前記吸着パッドに保持された前記ウェーハに対して剥離用エアーを供給するパージラインをさらに備えたものとすることができる。
【0011】
このようなものであれば、搬送ヘッドからのウェーハの剥離を、より確実にスムーズに行うことが可能なものとなる。
【0012】
また、前記吸着パッドは二重のリング形状であり、
該吸着パッドよりも中心側に前記主バルーンが配置されており、前記吸着パッドよりも外周側に前記補助バルーンが配置されており、
前記吸着パッドの二重のリング同士の間に前記吸着ラインが備えられており、該吸着ラインは前記パージラインの機能を兼ね備えているものとすることができる。
【0013】
このようなものであれば、吸着ラインがパージラインの機能を兼ね備えているので、構成がより簡易なものとなり、一層省スペースなものとすることができる。
また、二重のリング形状の吸着パッドに対し、中心側、二重のリング同士の間、外周側に、主バルーン、パージライン、補助バルーンが配置されているため、より確実かつ安定してウェーハの剥離を行うことができる。
【0014】
また本発明は、ウェーハ加工装置の上下定盤間に配置されるキャリアのホールにウェーハを搬送する搬送装置であって、
前記ウェーハを保持する搬送ヘッドと、該搬送ヘッドが取り付けられており回動可能なアームを有しており、
前記搬送ヘッドが、上記の搬送ヘッドであることを特徴とする搬送装置を提供する。
【0015】
このようなものであれば、キャリアのホールへのウェーハの安定した搬送、剥離、装填が可能な、安価でコンパクトな搬送装置となる。
【発明の効果】
【0016】
以上のように、本発明の搬送ヘッドおよび搬送装置であれば、ウェーハの搬送の際に使用されていた多軸ロボットが無くとも、主バルーンおよび補助バルーンにより、コンパクトで簡便かつ安定して、特には両面研磨装置等のウェーハ加工装置のキャリアのホールへのウェーハの搬送、剥離、装填を安価に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の搬送装置の一例を示す概略図である。
【
図4】本発明の搬送ヘッドの一例であり、ウェーハ吸着状態を示す概略図である。
【
図5】ウェーハ吸着面側から見た搬送ヘッドの平面図である。
【
図6】本発明の搬送ヘッドの一例であり、ウェーハ剥離状態を示す概略図である。
【
図8】従来の搬送ヘッドの一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明について図面を参照して実施の形態を説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
図1に本発明における搬送装置の一例を示す。なお、両面研磨装置も一緒に図示している。ここではウェーハ加工装置として両面研磨装置を例に挙げて説明するが、代わりに両面ラップ装置とすることもできる。
本発明の搬送装置1は、例えば半導体基板としてのシリコンウエーハなどのウェーハの両面を研磨する両面研磨装置2に対して、従来のような高価で大型な多軸ロボットを必要とせずに、本発明の搬送ヘッド3を用いて、加工中にウェーハを保持しておくキャリアの円形穴状のホール内に正確にウェーハを装填してセットすることができる安価で省スペースな装置である。
【0019】
まず本発明の搬送装置1を適用可能な両面研磨装置2について説明する。
図7に両面研磨装置の縦断面図の一例を示す。
図7に示すように、上定盤UTと下定盤LTとの間にキャリアCが載置される。このキャリアCを遊星歯車運動させるためのサンギヤSG及びインターナルギヤIGを備えており、キャリアCの外周部には、これらサンギヤSG及びインターナルギヤIGに噛合するための外歯が設けられるとともに、キャリアCの内部には、ウェーハWを嵌入せしめて保持する円形穴状のホールHが設けられている。
なお、キャリアCのホールHの内周縁は、キャリア母材そのものからなるものとすることもできるし、キャリア母材に対して樹脂等からなるインサートを配置したものとすることもできる。また、上下定盤UT、LTには、互いに対向する面に、ウェーハWを研磨するための研磨布PPが貼り付けられている。
このようにキャリアCを備える両面研磨装置2自体は、例えば従来と同様のものを用いることができる。
【0020】
なお両面研磨する際には、キャリアCのホールH内にウェーハWを搬送した後、水平方向に揺動可能な上定盤UTをスイング移動させてウェーハWを下定盤LTと上定盤UTで挟持する。サンギヤSG等を回転させることでキャリアCを遊星歯車運動させると同時に挟持面に研磨液を供給しつつ、下定盤LTと上定盤UTを相対方向に回転させ、ウェーハWの両面を各定盤の挟持面側の研磨布PPで研磨するようにしている。
【0021】
このような両面研磨装置2に対し、キャリアCのホールHにウェーハを搬送するための本発明の搬送装置1では、ウェーハWを保持する本発明の搬送ヘッド3と、該搬送ヘッド3が取り付けられており回動可能なアーム4を有している。また、該アーム4の位置を制御する制御手段5も有している。
ここで
図2にアーム4の一例を示す(平面図)。また、
図3にアーム4の別の一例を示す(斜視図)。
これらの
図2、
図3に示すアーム4は搬送ヘッド3がその先端に取り付けられており、搬送ヘッド3を自在に回動可能である。回動機構自体は特に限定されないが、コスト面を考慮して簡易な構造のものとすることができる。後述する搬送ヘッド3の機能により吸着したウェーハを精度良く安定して剥離することができるので、高価で大掛かりな多軸ロボット式のものは不要である。
このアーム4および搬送ヘッド3は制御手段5によりその動きを制御可能である。特には、ウェーハカセット6から取り出したウェーハWをキャリアCのホールH内へ搬送できるよう、アーム4を介して搬送ヘッド3の位置調整等ができるものである。
【0022】
次に、本発明の搬送ヘッド3について詳述する。
図4は本発明の搬送ヘッド3の一例である。ここではウェーハWを吸着した状態である。また、
図5はウェーハ吸着面側から見た搬送ヘッド3の平面図である。なお、
図4は
図5の線A-Aの断面図である。
図4、5に示すように搬送ヘッド3は、ウェーハを吸着する側(ウェーハ吸着面側)にウェーハWを吸着して保持する吸着パッド7を備えており、該吸着パッド7にウェーハWを真空吸着する吸着ライン8を備えている。なお、
図5から分かるように吸着ライン8は線A-A上にないが、説明のため、
図4では真空吸着の仕組みが分かりやすいように線A-A上にあるものとして記載している。
吸着パッド7の材質は特に限定されず、その吸着面9で接触するウェーハWの表面にキズをつけにくいものを選択することができ、例えば、ポリウレタンゴム、ニトリルゴム、シリコンゴム、フッ素ゴムなど、従来と同様のものを用いることができる。
吸着ライン8は、例えば、ウェーハ吸着面側から反対側へ搬送ヘッド3の本体を貫通するように設けられており、ウェーハ吸着面側の開口部は吸着パッド7で囲まれた領域に形成されている。したがって、ウェーハWの上方から搬送ヘッド3の吸着パッド7を接触させ、吸着ライン8を作動させてエアーを吸引すれば、ウェーハWを吸着パッド7に真空吸着して保持可能である。吸着ライン8の本数は限定されず、ウェーハWを真空吸着できるよう各種条件に応じて本数を決めることができる。
【0023】
また、ウェーハ吸着面側には、平面視において、搬送ヘッド3の中心部に主バルーン10が配置されており、外周部に1つ以上の補助バルーン11が配置されている。
主バルーン10や補助バルーン11は、各々、不図示のエアーのラインを備えており、内部にエアーを供給したり、内部のエアーを吸引することができるようになっている。エアーの供給により内部が加圧されて膨張することができ、反対にエアーの吸引により内部が減圧されて収縮することもできる。
【0024】
収縮状態および膨張状態の一例を示す。
まず、収縮状態の例としては、
図4に示すような搬送ヘッド3がウェーハWを吸着している場合が挙げられる。主バルーン10および補助バルーン11は減圧されて収縮している。収縮状態では、吸着パッド7の吸着面9よりも引っ込むように萎むことが可能である。吸着面9よりも引っ込んでいるため、吸着面9でのウェーハWの吸着を邪魔しない。
【0025】
また膨張状態の例としては、搬送ヘッド3がウェーハWを剥離するときの場合が挙げられる。このウェーハWを剥離するときの状態を
図6に示す。主バルーン10および補助バルーン11は加圧されて膨張している。膨張状態では、吸着パッド7の吸着面9よりも突出するように膨らむことが可能である。吸着面9よりも突出しているため、吸着面9で吸着保持されているウェーハWを内側から外側へ向けて押すことになり、それにより吸着面9からウェーハWをより確実に離して剥離可能である。
【0026】
図8の従来の搬送装置のように中心部に1つのバルーンがあるだけではウェーハの剥離およびキャリアのホールへの装填が不安定で、ウェーハがホールからズレてしまうことがあった。
しかしながら本発明の搬送ヘッド3(および搬送装置1)のように、中心部の主バルーン10の他に、さらに外周部に補助バルーン11を備えていれば、この簡便な仕組みでウェーハの剥離やホールHへの装填を従来装置よりも高精度に制御し易く、安定して行うことができる。このため、ホールHへのウェーハの装填時にズレが生じにくくなる。
また多軸ロボットを有する従来の搬送装置の場合は、大型となり場所をとる上に高価であるため、全ての両面研磨装置に対して配設するのは難しい。しかしながら本発明であれば比較的低コストであり、かつ、小型で省スペースのものとすることができ、より多くの両面研磨装置や両面ラップ装置等のウェーハ加工装置に対して配設し易い。修理費用も多軸ロボット故障時に比べて抑えることができる。
【0027】
なお、主バルーン10および補助バルーン11は、例えば同じエアーのラインを共有しており同時に膨張・収縮可能な構造とすることもできるし、別々のエアーのラインを備え、別個独立して膨張・収縮を制御可能な構造とすることもできる。さらには、補助バルーン11が複数の場合、その全ての膨張・収縮を同時制御可能なものとすることもできるし、別個独立して制御可能なものとすることもできる。
別個独立制御可能なものであれば、ウェーハWの剥離をより高精度で制御し易い。
【0028】
また、主バルーン10や補助バルーン11に加え、吸着パッド7に保持されたウェーハWに対して剥離用エアーを供給するパージライン12を備えたものとすることができる。パージライン12を備えていれば、ウェーハWに対して主バルーン10や補助バルーン11による外側への押圧の他に、空気圧による外側への押圧を加えることができるため、より確実にスムーズなウェーハWの剥離が可能である。パージライン12の本数は適宜決定することができる。
【0029】
なお、
図4-6の例では、吸着ライン8はパージライン12と同じラインを共有している。言い換えると吸着ライン8はパージライン12の機能を兼ね備えている。このようにエアーの吸引と剥離用エアーの供給が同一のラインで可能なものであれば、搬送ヘッド3をよりコンパクトで簡単な構造のものとすることができ、更なる低コスト化を図ることができる。
ただしこれに限定されず、パージライン12と吸着ライン8を別々に配設しておくことも可能である。
【0030】
また、この例での吸着パッド7は二重のリング形状となっている。ウェーハ吸着面側における搬送装置1の中心を中心として2つのリングが同心円状に配置されている。内側のリングよりも中心側に主バルーン10が配設されており、外側のリングよりも外側に4つの補助バルーン11が外側のリングに沿って等間隔で配置されている。また、内側と外側の二重のリング同士の間に3つの吸着ライン8(上記のようにパージライン12でもある)が等間隔で配置されている。このような配置により、ウェーハWを一層安定して真空吸着して保持することができ、また、ウェーハWの剥離をより確実に安定して行うことができる。
なお、これらの吸着パッド7、1つ以上の補助バルーン11、吸着ライン8、パージライン12は、主バルーン10(または搬送装置1の中心)を中心とする点対称の配置であると、ウェーハWの真空吸着や剥離を一層バランス良く行うことができる。
【0031】
また制御手段5は例えばコンピュータとすることができる。この制御手段5により、アーム4の回動、搬送ヘッド3における主バルーン10や補助バルーン11の膨張および収縮、吸着ライン8のエアーの吸引、パージライン12の剥離用エアーの供給などの制御を自動的に行うことができる。
【0032】
このような搬送装置1を用いてウェーハWを搬送する方法について説明する。
まず、制御手段5によりアーム4を回動させて、ウェーハカセット6から取り出されたウェーハWの上方に搬送ヘッド3を位置させる。このとき、搬送ヘッド3の主バルーン10および補助バルーン11の全てはエアーの吸引による減圧で吸着パッド7の吸着面9よりも引っ込むように収縮させておく。
次に、搬送ヘッド3の吸着パッド7の吸着面9をウェーハWの表面に接触させ、吸着ライン8を作動させてエアー吸引をする。これによりウェーハWが搬送ヘッド3のウェーハ吸着面側に真空吸着されて保持される。
ウェーハWを真空吸着して保持したまま、アーム4を回動させて両面研磨装置2のキャリアCのホールHの上方に搬送ヘッド3を移動させる。
【0033】
次に、吸着ライン8でのエアーの吸引を止める。エアーの吸引を止めても、ウェーハWは吸着パッド7の吸着面9に貼り付いたままになっている。
そして、搬送ヘッド3において、主バルーン10にエアーを供給して加圧し、吸着パッド7の吸着面9よりも突出するように膨張させる。これにより、ウェーハWの中心部がホールHの中心に向けて僅かに押し出される状態になる。
主バルーン10を膨張させたまま、補助バルーン11にエアーを供給して加圧し、吸着パッド7の吸着面9よりも突出するように膨張させる。また、パージライン12(ここでは吸着ライン8と同ライン)から剥離用エアーを供給する。これにより、ウェーハWを吸着面9から完全に剥離させ、キャリアCのホールH内にズレなく装填することができる。
【0034】
また、上記のようにしてキャリアCのホールH内にウェーハWを装填した後は、主バルーン10や補助バルーン11を用いてホールH内の水抜きを行うのが好ましい。この水抜きをしてから両面研磨を行うと良い。この水は、両面研磨装置2の洗浄に使用してホールH内に残存している水や、両面研磨後に別のウェーハWを装填するときにホールH内に残存している研磨液などである。水抜きの具体的な手順を以下に述べる。
【0035】
前述したように、ウェーハW装填時において主バルーン10および補助バルーン11は膨張されるわけだが、装填後はそれらの主バルーン10と補助バルーン11を収縮することができる。このとき収縮した場合は、まず、キャリアCのホールH内に装填されたウェーハWに対し、主バルーン10を吸着面9よりも突出するように再度膨張してウェーハWの中心部を押圧する。これにより、ホールH内のウェーハWの中心部付近の下に存在する水はウェーハWの外周部側へ向かって押し出される。次に、主バルーン10を膨張させたまま、補助バルーン11を再度膨張させてウェーハWの外周部を押圧する。これにより、水はウェーハWの外側、つまりはホールHの外へと押し出され、ホールHから水抜きをすることができる。
一方、ウェーハW装填後に主バルーン10や補助バルーン11を収縮させなかった場合は、ウェーハWを装填した時の状態(膨張状態)から、主バルーン10、補助バルーン11の順でさらに大きく膨張させるなどして、装填されたウェーハWを押圧してホールHの水抜きを行うことができる。
【0036】
両面研磨等のウェーハ加工を施す前に主バルーン10等を用いて上記水抜き作業を行っておくことで、抜けていない水が原因で加工中にウェーハWが外れてクラッシュするのを効果的に防ぐことができ、クラッシュによる、ウェーハWの割れ、キャリアCの破損、研磨布PPのキズ、加工装置の故障(装置のギア破損、ギア曲がり、定盤軸精度ブレ)が生じるのをより確実に防ぐことができる。
【0037】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【符号の説明】
【0038】
1…本発明の搬送装置、 2…両面研磨装置、 3…本発明の搬送ヘッド、
4…アーム、 5…制御手段、 6…ウェーハカセット、
7…吸着パッド、 8…吸着ライン、 9…吸着パッドの吸着面、
10…主バルーン、 11…補助バルーン、 12…パージライン、
C…キャリア、 H…キャリアのホール、 UT…上定盤、 LT…下定盤、
SG…サンギヤ、 IG…インターナルギヤ、 PP…研磨布、
W…ウェーハ。