(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-20
(45)【発行日】2023-09-28
(54)【発明の名称】感光性樹脂組成物、硬化膜、および該硬化膜を用いた表示装置
(51)【国際特許分類】
G03F 7/004 20060101AFI20230921BHJP
G03F 7/023 20060101ALI20230921BHJP
H10K 50/10 20230101ALI20230921BHJP
H05B 33/22 20060101ALI20230921BHJP
H05B 33/12 20060101ALI20230921BHJP
H05B 33/10 20060101ALI20230921BHJP
C08F 20/56 20060101ALI20230921BHJP
C08G 73/10 20060101ALI20230921BHJP
C08G 73/22 20060101ALI20230921BHJP
G09F 9/30 20060101ALI20230921BHJP
G09F 9/00 20060101ALI20230921BHJP
【FI】
G03F7/004 501
G03F7/004 505
G03F7/023
H05B33/14 A
H05B33/22 Z
H05B33/12 B
H05B33/10
C08F20/56
C08G73/10
C08G73/22
G09F9/30 349Z
G09F9/30 365
G09F9/00 338
(21)【出願番号】P 2019554953
(86)(22)【出願日】2019-10-02
(86)【国際出願番号】 JP2019038927
(87)【国際公開番号】W WO2020075592
(87)【国際公開日】2020-04-16
【審査請求日】2022-07-12
(31)【優先権主張番号】P 2018193187
(32)【優先日】2018-10-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】有本 真治
(72)【発明者】
【氏名】大西 啓之
(72)【発明者】
【氏名】亀本 聡
(72)【発明者】
【氏名】三好 一登
【審査官】塚田 剛士
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-122912(JP,A)
【文献】国際公開第2016/158863(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/143740(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/021331(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/004 - 7/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともアミド基またはウレタン基を有する撥液材(A)、アルカリ可溶性樹脂(B)および、感光剤(E)を含有する感光性樹脂組成物であって、
さらにフェノール樹脂およびポリヒドロキシスチレン樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種類の樹脂(C)を含有し、
アルカリ可溶性樹脂(B)がポリイミド、ポリベンゾオキサゾール、ポリアミドイミド、それらの前駆体およびそれらの共重合体からなる群から選ばれる少なくとも1種類のアルカリ可溶性樹脂を含み、
前記少なくともアミド基またはウレタン基を有する撥液材(A)は、下記一般式(2)で表される構造単位または下記一般式(13)で表される構造を有する化合物を含み、
前記感光剤(E)が(e-2)キノンジアジド化合物を含
み、
前記アルカリ可溶性樹脂(B)を100質量部に対して、前記フェノール樹脂およびポリヒドロキシスチレン樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種類以上の樹脂(C)の総和が10~100質量部である感光性樹脂組成物。
【化1】
(一般式(2)中、R
4は水素原子または炭素数1~4の1価の有機基、R
5は炭素数1~6の脂肪族基を表し、R
6は炭素数3~6のパーフルオロアルキル基を表す。)
【化2】
(一般式(13)中、Xは以下の構造式(a)~(e)より選ばれ、全てのXが同一構造でもよく、複数の構造がランダムに、または、ブロック状に存在してもよい。mは繰り返し単位数を表す1~100の整数である。)
【化3】
【請求項2】
前記少なくともアミド基またはウレタン基を有する撥液材(A)は、下記一般式(1)または下記一般式(11)で表される構造単位を有する化合物を含む請求項1記載の感光性樹脂組成物。
【化4】
(一般式(1)中、R
1、R
2およびR
3は、水素原子または炭素数1~4の1価の有機基を表し、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。)
【化5】
(一般式(11)中、R
18は水素原子または炭素数1~4の1価の有機基、R
19は炭素数1~6の脂肪族基を表す。Aは下記式(A-1)または(A-2)で表されるウレタン基を表す。)
【化6】
【請求項3】
前記少なくともアミド基またはウレタン基を有する撥液材(A)は、一般式(11)で表される構造単位および一般式(13)で表される構造を有する化合物を含む請求項2に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項4】
前記少なくともアミド基またはウレタン基を有する撥液材(A)は、一般式(1)または一般式(11)で表される構造単位の合計が該撥液材(A)を構成する構造単位全体の15~85モル%の範囲である請求項2または3に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項5】
前記少なくともアミド基またはウレタン基を有する撥液材(A)は、さらにエポキシ基を有する請求項1~4のいずれかに記載の感光性樹脂化合物。
【請求項6】
前記少なくともアミド基またはウレタン基を有する撥液材(A)の含有量は、前記アルカリ可溶性樹脂(B)100質量部に対して、0.1~10質量部である請求項1~5のいずれかに記載の感光性樹脂化合物。
【請求項7】
さらに熱架橋剤(D)を含有する請求項1~
6のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
【請求項8】
さらに着色剤(F)を含有する請求項1~
7のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
【請求項9】
請求項1~
8のいずれかに記載の感光性樹脂組成物の硬化物からなる硬化膜。
【請求項10】
基板上に形成された格子状の隔壁を有する表示装置であって、
該隔壁が
、感光性樹脂組成物の硬化物からなる硬化膜を含
み、
前記感光性樹脂組成物が、少なくともアミド基またはウレタン基を有する撥液材(A)、アルカリ可溶性樹脂(B)および、感光剤(E)を含有する感光性樹脂組成物であって、
アルカリ可溶性樹脂(B)がポリイミド、ポリベンゾオキサゾール、ポリアミドイミド、それらの前駆体およびそれらの共重合体からなる群から選ばれる少なくとも1種類のアルカリ可溶性樹脂を含み、
前記少なくともアミド基またはウレタン基を有する撥液材(A)は、下記一般式(2)で表される構造単位または下記一般式(13)で表される構造を有する化合物を含み、
前記感光剤(E)が(e-2)キノンジアジド化合物を含む表示装置。
【化7】
(一般式(2)中、R
4
は水素原子または炭素数1~4の1価の有機基、R
5
は炭素数1~6の脂肪族基を表し、R
6
は炭素数3~6のパーフルオロアルキル基を表す。)
【化8】
(一般式(13)中、Xは以下の構造式(a)~(e)より選ばれ、全てのXが同一構造でもよく、複数の構造がランダムに、または、ブロック状に存在してもよい。mは繰り返し単位数を表す1~100の整数である。)
【化9】
【請求項11】
前記基板上に形成された格子状の隔壁が、隔壁の長さ方向及び基板の表面に対して垂直に割断した横断面が台形状の第1隔壁部と、該第1隔壁部の上部に横断面が台形状の第2隔壁部とを有する段差形状であり、該横断面において、該第1隔壁部の上面の幅をA、該第2隔壁部の底面の幅をBとした場合、A>Bの関係を満たす請求項
10に記載の表示装置。
【請求項12】
前記隔壁の膜厚が0.5~5.0μmであり、且つ、前記第1隔壁部の膜厚が0.1~1.0μmである請求項
11に記載の表示装置。
【請求項13】
前記第1隔壁部と前記第2隔壁部が同一材料の硬化膜から形成されている請求項
11または請求項
12に記載の表示装置。
【請求項14】
請求項
10~
13のいずれかに記載の表示装置の隔壁で囲まれた領域内に、機能層を形成した表示装置。
【請求項15】
隔壁の長さ方向及び基板の表面に対して垂直に割断した横断面において、該機能層の端部が前記第2隔壁部の側面上に位置する請求項
14に記載の表示装置。
【請求項16】
請求項
14または請求項
15に記載の表示装置の機能層に有機EL発光材料、正孔注入材料、および正孔輸送材料からなる群から選ばれる少なくとも1種類を含む有機EL表示装置。
【請求項17】
下記(1)~(4)の工程をこの順に有する隔壁付基板の製造方法。
(1)第一電極を有する基板上に請求項1~
8のいずれかに記載された感光性樹脂組成物を塗布し感光性樹脂膜を形成する工程
(2)前記感光性樹脂膜を露光する工程
(3)露光した感光性樹脂膜を現像する工程
(4)現像した感光性樹脂膜を加熱処理することで隔壁を形成する工程
【請求項18】
下記(5)~(6)の工程をこの順に有する表示装置の製造方法。
(5)請求項1~
8のいずれかに記載の感光性樹脂組成物の硬化物を含む隔壁を有する隔壁付基板において、該隔壁で囲まれた領域内に機能性インクをインクジェットで塗布して機能層を形成する工程
(6)該機能層上に第2電極形成を形成する工程
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感光性樹脂組成物、硬化膜、および該硬化膜を用いた表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
スマートフォン、タブレットPC、テレビなど、薄型ディスプレイを有する表示装置において有機エレクトロルミネッセンス(以下、「有機EL」)発光素子を用いた製品が多く開発されている。一般に、有機EL発光素子は、基板上に、駆動回路、平坦化層、第一電極、絶縁層、発光層および第二電極を有し、対向する第一電極と第二電極との間に、電圧を印加することで発光することができる。これらのうち、平坦化層用材料および絶縁層用材料としては、紫外線照射によるパターニング可能な感光性樹脂組成物が一般に用いられている。中でもポリイミド系やポリベンゾオキサゾール系の樹脂を用いた感光性樹脂組成物は、樹脂の耐熱性が高く、硬化膜から発生するガス成分が少ないため、高耐久性の有機EL表示装置を与えることができる点で好適に用いられている(特許文献1)。
【0003】
近年は、発光層の形成に、インクジェット法に代表される印刷法が利用されるようになってきている。具体的には、例えば、基板上に隔壁パターンを形成した後に、隔壁間の開口部に、インクジェット法を用いて、発光材料、正孔輸送材料、電子輸送材料等の機能材料溶液を滴下し、機能層を有する有機EL発光素子を形成する方法が知られている。
【0004】
インクジェット法によって機能材料溶液を決められた隔壁パターンの区画内に滴下するためには、隔壁パターンに撥液性を発現させる必要がある。これを実現するために、基板上の隔壁パターンの上層面に、プラズマ照射によるフッ素化処理を施して撥液性を発現させる方法が検討されている(特許文献2)。
【0005】
また、他には撥液性を有する化合物を添加した感光性樹脂組成物により隔壁を形成する方法が検討されている。例えば、特定のフッ素系ポリマーを含むレジスト組成物(特許文献3)、シラン化合物を有するフッ素含有化合物とノボラック型フェノール樹脂を主成分とした感光性樹脂組成物(特許文献4)が検討されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2002-91343号公報
【文献】特許第4612773号公報
【文献】特開2012-220860号公報
【文献】特許第6098635号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、有機EL発光素子に対して駆動寿命の長寿命化などの高い耐久性の要求は年々厳しくなっており、高温、高湿、光照射といった加速条件での耐久性試験後でも発光素子としての性能維持が求められている。
【0008】
特許文献1の技術は形成した隔壁に撥液性を有さないため、インクジェット法により滴下された機能材料溶液が隔壁を越えて近傍の画素内に混入し、発光不良を生じるという問題がある。
【0009】
特許文献2の技術はフッ素化処理により隔壁間の開口部にも撥液成分が付着し、開口部のインク濡れ性が不十分になるという問題が生じていた。
【0010】
また、特許文献3および特許文献4の技術は、十分な撥液性を備え、感光性樹脂組成物としてパターン形成が可能であるが、主成分となる樹脂がフェノール化合物を使用しているため、隔壁パターンを構成する樹脂組成物からの脱ガス成分によって表示不良が発生しやすく、有機EL素子の駆動寿命を大幅に損ねるという問題を生じていた。
【0011】
そこで、本発明は上記のような従来技術に伴う問題点を解決し、開口部のインク濡れ性に優れ、硬化膜が十分な撥液性を有する感光性樹脂組成物を提供することを目的とする。また、本発明は、該感光性樹脂組成物の硬化膜を具備し、表示不良の発生が少なく、その後の熱処理に対する高耐久性を持つ表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するため、本発明は以下の構成を有する。すなわち、
本発明の感光性樹脂組成物の第一の態様は、少なくともアミド基またはウレタン基を有する撥液材(A)、アルカリ可溶性樹脂(B)および、感光剤(E)を含有する感光性樹脂組成物であって、アルカリ可溶性樹脂(B)がポリイミド、ポリベンゾオキサゾール、ポリアミドイミド、それらの前駆体およびそれらの共重合体からなる群から選ばれる少なくとも1種類のアルカリ可溶性樹脂を含む。
【0013】
また、本発明の硬化膜の第一の態様は、本発明の感光性樹脂組成物の第一の態様の硬化物からなる。
【0014】
また、本発明の表示装置の第一の態様は、基板上に形成された格子状の隔壁を有する表示装置であって、該隔壁が本発明の硬化膜の第一の態様を含む。
【0015】
また、本発明の隔壁付基板の製造方法の第一の態様は、下記(1)~(4)の工程をこの順に有する。
(1)第一電極を有する基板上に本発明の感光性樹脂組成物の第一の態様を塗布し感光性樹脂膜を形成する工程
(2)前記感光性樹脂膜を露光する工程
(3)露光した感光性樹脂膜を現像する工程
(4)現像した感光性樹脂膜を加熱処理することで隔壁を形成する工程。
【0016】
また、本発明の表示装置の製造方法の第一の態様は、下記(5)~(6)の工程をこの順に有する。
(5)本発明の感光性樹脂組成物の第一の態様の硬化物を含む隔壁を有する隔壁付基板において、該隔壁で囲まれた領域内に機能性インクをインクジェットで塗布して機能層を形成する工程
(6)該機能層上に第2電極形成を形成する工程。
【発明の効果】
【0017】
開口部のインク濡れ性に優れ、硬化膜が十分な撥液性を有する感光性樹脂組成物を提供することが可能である。また、本発明は、該感光性樹脂組成物の硬化膜を具備し、表示不良の発生が少なく、その後の熱処理に対する高耐久性を持つ表示装置を提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】基板上に形成された格子状の隔壁を、隔壁の長さ方向及び基板の表面に対して垂直に割断した横断面の一例である。
【
図2】実施例における評価に使用する基板の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0020】
本発明の感光性樹脂組成物の第一の態様は、少なくともアミド基またはウレタン基を有する撥液材(A)、アルカリ可溶性樹脂(B)および、感光剤(E)を含有する感光性樹脂組成物であって、アルカリ可溶性樹脂(B)がポリイミド、ポリベンゾオキサゾール、ポリアミドイミド、それらの前駆体およびそれらの共重合体からなる群から選ばれる少なくとも1種類のアルカリ可溶性樹脂を含む。
【0021】
本発明の感光性樹脂組成物の第一の態様は、硬化膜表面に撥液性を付与するために、少なくともアミド基またはウレタン基を有する撥液材(A)を含有する。なお、本発明の感光性樹脂組成物の第一の態様において、「少なくともアミド基またはウレタン基を有する撥液材(A)」を「(A)成分」または「撥液材(A)」と呼ぶ場合がある。(A)成分がアミド基またはウレタン基を有することで、後述するアルカリ可溶性樹脂(B)との相溶性を向上し、ハジキ等の欠点を低減させ、硬化膜の膜厚均一性を向上する効果があり、その結果として、表示装置の表示不良を低減する。特に、本発明の感光性樹脂組成物の第一の態様においては、アルカリ可溶性樹脂(B)がポリイミド、ポリベンゾオキサゾール、ポリアミドイミド、それらの前駆体およびそれらの共重合体からなる群から選ばれる少なくとも1種類のアルカリ可溶性樹脂を含むため、顕著に相溶性向上の効果を得ることができる。
【0022】
少なくともアミド基またはウレタン基を有する撥液材(A)は、下記一般式(1)または下記一般式(11)で表される構造単位を有する化合物を含むことが好ましい。
【0023】
【0024】
一般式(1)中、R1、R2およびR3は、水素原子または炭素数1~4の1価の有機基を表し、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。
【0025】
【0026】
一般式(11)中、R18は水素原子または炭素数1~4の1価の有機基、R19は炭素数1~6の脂肪族基を表す。Aは下記(A-1)または(A-2)のウレタン基を表す。
【0027】
【0028】
一般式(1)または一般式(11)で表される構造単位を有する化合物は、例えば、下記一般式(3)で表される(メタ)アクリルアミドモノマーまたは下記一般式(12)で表される(メタ)アクリレートモノマーを(共)重合することで得ることができる。
【0029】
【0030】
一般式(3)中、R1、R2およびR3は水素原子または炭素数1~4の1価の有機基を表し、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。
【0031】
【0032】
一般式(12)中、R18は水素原子または炭素数1~4の1価の有機基、R19は炭素数1~6の脂肪族基を表す。Aは下記式(A-1)または(A-2)で表されるウレタン基を表す。
【0033】
【0034】
一般式(3)で表される、(メタ)アクリルアミドモノマーの好ましい例としては、N,N-ジメチルアクリルアミド、N,N-ジエチルアクリルアミドなどが挙げられる。
【0035】
また、一般式(12)で表される、(メタ)アクリレートモノマーの好ましい例としては、下記の構造が挙げられる。
【0036】
【0037】
アルカリ可溶性樹脂(B)との相溶性が向上しやすいことから、一般式(1)または一般式(11)で表される構造単位の合計は、撥液材(A)を構成する構造単位全体の15モル%以上が好ましく、30モル%以上であることがより好ましい。また、撥液性をより向上させるためには、85モル%以下が好ましく、70モル%以下がさらに好ましい。
【0038】
本発明の感光性樹脂組成物の第一の態様において、少なくともアミド基またはウレタン基を有する撥液材(A)は、アルカリ溶解性向上の観点から、ウレタン基を有する化合物を含有することが好ましく、一般式(11)で表される構造単位を有する化合物を含有することが、より好ましい。アルカリ溶解性を向上させることで、アルカリ現像時に開口部の残渣が低減するため、開口部に塗布する機能性インクの濡れ性をより向上させることができる。結果として、機能性インクより形成される機能層の膜厚均一性が向上しやすくなり、表示装置の表示不良を低減させやすくなり、耐久性がより向上しやすくなる。
【0039】
少なくともアミド基またはウレタン基を有する撥液材(A)は、一般式(2)で表される構造単位または一般式(13)で表される構造を有する化合物を含むことが好ましい。一般式(2)で表される構造単位または一般式(13)で表される構造を有することで、硬化膜表面に撥液性を付与しやすくすることができる。
【0040】
【0041】
一般式(2)中、R4は水素原子または炭素数1~4の1価の有機基、R5は炭素数1~6の脂肪族基を表し、R6は炭素数3~6のパーフルオロアルキル基を表す。
【0042】
【0043】
一般式(13)中、Xは以下の構造式(a)~(e)より選ばれ、全てのXが同一構造でもよく、複数の構造がランダムに、または、ブロック状に存在してもよい。mは繰り返し単位数を表す1~100の整数である。
【0044】
【0045】
一般式(2)で表される構造単位または一般式(13)で表される構造を有する化合物は、例えば、一般式(4)で表される(メタ)アクリレートモノマー、または一般式(13)で表される構造を有するモノマーを(共)重合することで得ることができる。
【0046】
【0047】
一般式(4)中、R4は水素原子または炭素数1~4の1価の有機基、R5は炭素数1~6の脂肪族基を表し、R6は炭素数3~6のパーフルオロアルキル基を表す。
【0048】
一般式(4)で表される、パーフルオロアルキル基を有する(メタ)アクリレートモノマーの好ましい例としては、2-(パーフルオロブチル)エチル(メタ)アクリレート、2-(パーフルオロヘキシル)エチル(メタ)アクリレート、等が挙げられる。
【0049】
一般式(13)で表される構造を有するモノマーの好ましい例としては、下記の構造を有するモノマーなどが挙げられる。
【0050】
【0051】
【0052】
本発明の感光性樹脂組成物の第一の態様において、少なくともアミド基またはウレタン基を有する撥液材(A)は、アルカリ溶解性をより向上させる観点から、一般式(13)で表される構造を有する化合物を含有することが好ましい。アルカリ溶解性をより向上させることで、アルカリ現像時に開口部の残渣が低減するため、開口部に塗布する機能性インクの濡れ性をより向上させることができる。結果として、機能性インクより形成される機能層の膜厚均一性が向上し、表示装置の表示不良の低減、および、耐久性の向上を得られやすくすることができる。
【0053】
本発明の感光性樹脂組成物の第一の態様は、少なくともアミド基またはウレタン基を有する撥液材(A)は、ウレタン基および一般式(13)で表される構造を有する化合物を含む。かかる化合物を含むことにより、(A)成分のアルカリ溶解性がさらに向上しやすくなる。本発明の感光性樹脂組成物の第一の態様は、一般式(11)で表される構造単位および一般式(13)で表される構造を有する化合物を含むことが、より好ましい。
【0054】
ウレタン基および一般式(13)で表される構造を有する化合物であり、かつ、一般式(11)で表される構造単位および一般式(13)で表される構造を有する化合物を含む撥液材の市販品として、“メガファック(登録商標)”RS-72-K、RS-72-A、RS-75、RS-76-E、RS-76-NS、RS-78、RS-90(DIC株式会社製)が挙げられる。
【0055】
少なくともアミド基またはウレタン基を有する撥液材(A)は、さらにエポキシ基を有することが好ましい。エポキシ基を有することにより、アルカリ可溶性樹脂(B)と重縮合して発光素子としての耐久性をさらに向上させやすくなる。(A)成分は、さらに一般式(5)で表される構造単位を有することがより好ましい。一般式(5)で表される構造単位を有する成分(A)は、例えば、一般式(6)で表されるエポキシ基含有(メタ)アクリレートモノマーを共重合成分の一つとして共重合することで得ることができる。
【0056】
【0057】
【0058】
一般式(5)および(6)中、R7は水素原子または炭素数1~4の1価の有機基、R8はエポキシ基を有する炭素数2~16の1価の有機基を表す。
【0059】
一般式(6)で表されるエポキシ基含有(メタ)アクリレートモノマーの好ましい例としては、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、4-ヒドロキシブチルアクリレートグリシジルエーテル(4-HBAGE)、4-ヒドロキシブチルメタリレートグリシジルエーテル、脂環式エポキシ基を有するアクリレート、脂環式エポキシ基を有するメタリレートが挙げられる。
【0060】
さらに、一般式(5)で表される構造単位は、撥液材(A)を構成する構造単位全体の10モル%以上が好ましく、20モル%以上であることがより好ましい。この範囲であれば、感光性樹脂組成物の硬化膜を形成する際に、アルカリ可溶性樹脂(B)と重縮合し、耐熱性の高い硬化膜を形成し、感光性樹脂組成物の硬化膜の耐熱性が上がり、表示装置の耐久性が向上する。また、撥液性やアルカリ可溶性樹脂(B)との相溶性向上の効果を得るため、50モル%以下が好ましく、40モル%以下がさらに好ましい。
【0061】
少なくともアミド基またはウレタン基を有する撥液材(A)は、さらに異なる官能基置換(メタ)アクリルモノマーを共重合させた共重合物でもよい。さらに異なる官能基置換(メタ)アクリルモノマーを共重合させることにより、撥液性と溶解性のバランスをとりやすくすることができる。例えば、水酸基含有(メタ)アクリレート類、水酸基含有(メタ)アクリルアミド類、アルコキシ基含有(メタ)アクリレート類、ブロックイソシアネート基含有(メタ)アクリレート類、フェノキシ基含有(メタ)アクリレート類、アルキル(メタ)アクリレート類、ビニル基含有化合物類などが挙げられる。
【0062】
水酸基含有(メタ)アクリレート類は、例えば2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0063】
水酸基含有(メタ)アクリルアミド類は、例えばN-ヒドロキシメチルアクリルアミド等が挙げられる。
【0064】
アルコキシ基を有する(メタ)アクリレート類は、例えば、3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン等が挙げられる。
【0065】
ブロックイソシアネート基含有(メタ)アクリレート類は、例えば、メタクリル酸2-(0-[1’-メチルプロピリデンアミノ]カルボキシアミノ)エチル(カレンズMOI-BM:昭和電工株式会社製;登録商標)等が挙げられる。
【0066】
フェノキシ基含有(メタ)アクリレート類は、例えば、2-フェノキシベンジルアクリレート、3-フェノキシベンジルアクリレート等が挙げられる。
【0067】
アルキル(メタ)アクリレート類は、無置換、又はアミノ基、モノアルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、炭化水素芳香環、複素環の少なくとも何れかで置換され若しくはヒドロキシ基に酸無水物が開裂付加していてもよい直鎖状、分岐鎖状、及び/又は環状で炭素数1~12のアルキル基を有する無置換又は置換アルキル(メタ)アクリレートである希釈モノマー、例えば、アルキルアクリレート等が挙げられる。
【0068】
ビニル基含有化合物類は、例えばn-ブチルビニルエーテル等が挙げられる。
【0069】
少なくともアミド基またはウレタン基を有する撥液材(A)に含まれる化合物は、通常、(共)重合物である。撥液剤(A)に含まれる化合物としての(共)重合物は、公知の重合方法で得ることができる。(共)重合物は、例えば、ラジカル重合やアニオン重合等のようなイオン重合で得られてもよい。また、ランダム共重合体、ブロック共重合体、グラフト(共)重合体のいずれであってもよく、交互共重合体であってもよい。ここではラジカル(共)重合方法を例に挙げる。例えばジメチル(メタ)アクリルアミドの所定量と、所定量のフッ素含有(メタ)アクリレートモノマーと、必要に応じて、所定量のエポキシ基含有(メタ)アクリレート類、水酸基含有(メタ)アクリレート類、水酸基含有(メタ)アクリルアミド類、アルコキシ基含有(メタ)アクリレート類、ブロックイソシアネート基含有(メタ)アクリレート類、フェノキシ基含有(メタ)アクリレート類、アルキル(メタ)アクリレート類、ビニル基含有化合物類を、適宜溶媒中、ラジカル重合開始剤、必要に応じて連鎖移動剤の存在下でランダム共重合させることで、(A)成分を得ることができる。ラジカル重合開始剤としては、例えばtert-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエイトを用いることができる。連鎖移動剤としては、例えばドデシルメルカプタンを用いることができる。また、溶媒としては、例えばシクロヘキサノン等の不活性溶媒を用いることができる。
【0070】
少なくともアミド基またはウレタン基を有する撥液材(A)の重量平均分子量は、1500~50000の範囲であることが好ましい。この範囲内の分子量とすることにより、感光性樹脂組成物に用いられる溶媒へより容易に溶解することができる。また、この範囲内の分子量とすることにより、感光性樹脂組成物溶液の消泡性が高くなりやすい。
【0071】
少なくともアミド基またはウレタン基を有する撥液材(A)は、アルカリ可溶性樹脂(B)100質量部に対して、得られた硬化膜が撥液性を十分に発現しやすくなる観点から、0.1質量部以上が好ましく、0.3質量部以上がより好ましい。また、画素内に撥液性を生じさせにくく、高い耐久性が得られやすくなる観点から、10質量部以下が好ましく、5質量部以下がより好ましい。
【0072】
本発明の感光性樹脂組成物の第一の態様は、アルカリ可溶性樹脂(B)(以下、(B)成分と呼ぶ場合がある。)を含有する。本発明の感光性樹脂組成物の第一の態様において、アルカリ可溶性樹脂とは、以下に定義する溶解速度が50nm/分以上である樹脂をいう。詳細には、γ-ブチロラクトンに樹脂を溶解した溶液をシリコンウエハ上に塗布し、120℃で4分間プリベークを行って膜厚10μm±0.5μmのプリベーク膜を形成し、前記プリベーク膜を23±1℃の2.38質量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液に1分間浸漬した後、純水でリンス処理したときの膜厚減少から求められる溶解速度が50nm/分以上である樹脂をいう。
【0073】
本発明の感光性樹脂組成物の第一の態様において、アルカリ可溶性樹脂(B)は、アルカリ可溶性を付与するため、樹脂の構造単位中および/またはその主鎖末端にアルカリ可溶性基を有することが好ましい。アルカリ可溶性基とはアルカリと相互作用、または反応することによりアルカリ溶液に対する溶解性を増加させる官能基を指し、具体的には酸性基などが挙げられる。好ましいアルカリ可溶性基としてはカルボキシル基、フェノール性水酸基、スルホン酸基、チオール基などが挙げられる。
【0074】
本発明の第一の態様におけるアルカリ可溶性樹脂(B)は、ポリイミド、ポリベンゾオキサゾール、ポリアミドイミド、それらの前駆体およびそれらの共重合体からなる群から選ばれる少なくとも1種類のアルカリ可溶性樹脂を含む。これらのアルカリ可溶性樹脂は単独で用いてもよく、また複数のアルカリ可溶性樹脂を組み合わせて用いてもよい。これらのアルカリ可溶性樹脂は、耐熱性が高いため、表示装置に用いると、熱処理後の200℃以上の高温下におけるアウトガス量が少なくなり、表示装置の耐久性を高めることができる。
【0075】
アルカリ可溶性樹脂(B)として用いられるポリイミド、ポリベンゾオキサゾール、ポリアミドイミド、それらの前駆体およびそれらの共重合体についての好適な態様等は、後述の本発明の感光性樹脂組成物の第二の態様におけるアルカリ可溶性樹脂(B-I)についての説明のとおりである。
【0076】
本発明の感光性樹脂組成物の第一の態様は、さらにフェノール樹脂およびポリヒドロキシスチレン樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種類の樹脂(C)(以下、(C)成分と呼ぶ場合がある。)を含有することが好ましい。これらの樹脂は相溶化剤としての機能を持ち、これらを混合することで、(A)成分と(B)成分の相溶性をより向上させ、各成分の現像液への溶解性が安定化することに寄与し、パターンの直進性が向上しやすくなる。その結果として、表示装置の表示不良が低減することが期待される。また、後述する感光剤(E)としてポジタイプのものを用いる場合、(C)成分を含有することで、現像工程の膜べり量を低下させる事ができるため、(A)成分を現像後の膜表面に留めやすくする効果があり、良好な撥液性を得るためのプロセスマージンを向上させることができる。
【0077】
本発明の感光性樹脂組成物の第一の態様において、前記アルカリ可溶性樹脂(B)を100質量部に対して、前記フェノール樹脂およびポリヒドロキシスチレン樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種類以上の樹脂(C)の総和が10~100質量部であることが好ましい。(A)成分と(B)成分の相溶性を向上させてパターンの直進性を良好とし、表示装置の表示不良を低減させやすくする観点から、(C)成分の総和は、10質量部以上が好ましく、30質量部以上がさらに好ましい。また、感光性樹脂組成物の硬化膜の耐久性を低下しにくくする観点から、100質量部以下が好ましく、80質量部以下がさらに好ましい。
【0078】
フェノール樹脂およびポリヒドロキシスチレン樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種類の樹脂(C)の好適な態様等は、後述の本発明の感光性樹脂組成物の第二の態様におけるフェノール樹脂、ポリヒドロキシスチレン樹脂のいずれか少なくとも1種類以上の樹脂(C-I)についての説明のとおりである。
【0079】
本発明の感光性樹脂組成物の第一の態様は、さらに熱架橋剤(D)を含有することが好ましい。熱架橋剤(D)を含有することにより、表示装置の耐久性がより向上しやすくなる。熱架橋剤(D)の好適な態様等は、後述の本発明の感光性樹脂組成物の第二の態様における熱架橋剤(D-I)についての説明のとおりである。
【0080】
本発明の感光性樹脂組成物の第一の態様は、感光剤(E)を含有する。感光剤(E)は光によって硬化するネガタイプでも、光によって可溶化するポジタイプでも良い。感光剤(E)として、(e-1)重合性不飽和化合物および光重合開始剤、または、(e-2)キノンジアジド化合物などを好ましく含有することができる。本発明の感光性樹脂組成物の第一の態様では、後術する段差形状の隔壁をハーフトーン加工により1回のフォトリソグラフィで形成する観点から、ポジタイプが好ましい。感光剤(E)の好適な態様等は、後述の本発明の感光性樹脂組成物の第二の態様における感光剤(E-I)についての説明のとおりである。
【0081】
本発明の感光性樹脂組成物の第一の態様は、さらに着色剤(F)を含有することが好ましい。着色剤(F)の具体例としては、電子情報材料の分野で一般的に用いられる、公知の有機顔料、無機顔料または染料などが挙げられる。着色剤(F)は、好ましくは有機顔料および/または無機顔料であるとよい。着色剤(F)の好適な態様等は、後述の本発明の感光性樹脂組成物の第二の態様における着色剤(F-I)についての説明のとおりである。
【0082】
本発明の感光性樹脂組成物の第一の態様は、有機溶剤(G)を含有することが好ましい。有機溶剤(G)としては、例えば、エーテル類、アセテート類、エステル類、ケトン類、芳香族炭化水素類、アミド類又はアルコール類の化合物が挙げられる。有機溶剤(G)の好適な態様等は、後述の本発明の感光性樹脂組成物の第二の態様における有機溶剤(G-I)についての説明のとおりである。
【0083】
本発明の感光性樹脂組成物の第一の態様は、密着改良剤を含有することができる。密着改良剤の好適な態様等は、後述の本発明の感光性樹脂組成物の第二の態様における密着剤についての説明のとおりである。
【0084】
次に、本発明の感光性樹脂組成物を製造する方法について説明する。本発明の感光性樹脂組成物の第一の態様は、例えば、前記(A)成分~着色剤(F)を有機溶剤(G)に溶解させることにより得ることができる。溶解方法としては、撹拌や加熱などが挙げられる。加熱する場合、加熱温度は樹脂組成物の性能を損なわない範囲で設定することが好ましく、通常、20℃~80℃である。また、各成分の溶解順序は特に限定されず、例えば、溶解性の低い化合物から順次溶解させる方法がある。
【0085】
得られた感光性樹脂組成物は、濾過フィルターを用いて濾過し、ゴミや粒子を除去することが好ましい。濾過フィルターの好適な態様等は、後述の本発明の感光性樹脂組成物の第二の態様における濾過フィルターについての説明のとおりである。
【0086】
本発明の硬化膜の第一の態様は、本発明の感光性樹脂組成物の第一の態様の硬化物からなる。
【0087】
本発明の硬化膜の第一の態様を製造する方法の説明は、後述の本発明の感光性樹脂組成物の第二の態様の硬化膜の製造方法に対応する。
【0088】
本発明の硬化膜の第一の態様は、有機EL表示装置や半導体装置、多層配線板等の電子部品に使用することができる。具体的には、有機EL素子の隔壁、有機EL素子を用いた表示装置の駆動回路付き基板の平坦化層、半導体装置または半導体部品の再配線間の層間絶縁膜、半導体のパッシベーション膜、半導体素子の保護膜、高密度実装用多層配線の層間絶縁膜、回路基板の配線保護絶縁層、固体撮像素子のオンチップマイクロレンズや各種ディスプレイ・固体撮像素子用平坦化層などの用途に好適に用いられる。本発明の硬化膜の第一の態様を配置した表面保護膜や層間絶縁膜等を有する電子デバイスとしては、例えば、耐熱性の低い磁気抵抗メモリ(以下、MRAMという)などが挙げられる。すなわち、本発明の硬化膜の第一の態様は、MRAMの表面保護膜用として好適である。また、基板上に形成された第一電極と、前記第一電極に対向して設けられた第二電極とを含む表示装置、具体的には例えば、LCD、ECD、ELD、有機ELなどの表示装置の隔壁や絶縁層に用いることができる。さらに好ましくは、基板上に形成された格子状の隔壁で囲まれた領域(画素)内に機能性インクをインクジェットで塗布して機能層を形成する表示装置の隔壁として使用することができる。本発明の硬化膜の第一の態様は、良好な撥液性を有し、インクジェット方式で塗布されたインクが、隣接する画素内への浸入を防ぐことで、表示不良の発生が少なくなる。さらに、本発明の硬化膜の第一の態様は、高温下におけるアウトガス量が少ないため、機能層に有機EL発光材料、正孔注入材料、および正孔輸送材料からなる群から選ばれる少なくとも1種類以上を含む有機EL表示装置に好適に用いることができる。
【0089】
本発明の硬化膜の第一の態様は、JIS-R3258に準拠し、静滴法にてプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを滴下したときの硬化膜の表面の接触角が、30°以上であることが好ましく、40°以上であることがより好ましい。硬化膜の表面の接触角は、例えば、少なくともアミド基またはウレタン基を有する撥液材(A)の含有量を増やすと大きくなり、撥液材(A)の含有量を減らすと小さくなる。よって、例えば、少なくともアミド基またはウレタン基を有する撥液材(A)の含有量を調整することにより上記範囲とすることができる。
【0090】
本発明の表示装置の第一の態様は、基板上に形成された格子状の隔壁を有する表示装置であって、該隔壁が本発明の硬化膜の第一の態様を含む。本発明の硬化膜の第一の態様を含むことにより、表示装置の表示不良の発生を少なくすることができる。また、熱処理後の200℃以上の高温下におけるアウトガス量が少なくなり、表示装置の耐久性を高めることができる。さらに、本発明の硬化膜の第一の態様は、良好な撥液性を有するため、格子状の隔壁で囲われた画素内にインクジェット方式で塗布されたインクが、隣接する画素内への浸入を防ぐことで、表示不良の発生が少なくなる。
【0091】
本発明の表示装置の第一の態様では、前記基板上に形成された格子状の隔壁が、隔壁の長さ方向及び基板の表面に対して垂直に割断した横断面が台形状の第1隔壁部と、該第1隔壁部の上部に横断面が台形状の第2隔壁部とを有する段差形状であり、該横断面において、該第1隔壁部の上面の幅をA、該第2隔壁部の底面の幅をBとした場合、A>Bの関係を満たすことが好ましい。
図1に、基板上に形成された格子状の隔壁を、隔壁の長さ方向及び基板の表面に対して垂直に割断した横断面の概略図の一例を示す。隔壁は、第一電極2を有する基板8上に形成される。
図1の例では、隔壁が、第1隔壁部9の上部に横断面が台形状の第2隔壁部10とを有する段差形状であり、A>Bの関係を満たす。
【0092】
一般的に、基板上に形成された格子状の隔壁で囲まれた領域(画素)内に機能性インクをインクジェットで塗布して機能層を形成する場合、機能性インクの塗布後、機能性インクに含まれる溶媒を乾燥させて機能層を形成する。インク液滴の乾燥は、隔壁近傍から開始されるため、乾燥が進むにつれて、隔壁近傍のインクの粘度が高くなる傾向がある。このため、機能層の膜厚は、中心部と比較して端部が厚くなることが知られている。有機EL表示装置であれば、画素の中心部と外周部で輝度が異なるトラブルの原因となる。
【0093】
本発明の表示装置の第一の態様の前記段差形状を有する格子状の隔壁で囲われた領域に、インクジェットで機能性インクを塗布すると、膜厚が厚い機能層端部を第1隔壁部の上面に形成することができる。すなわち、基板と垂直方向に割断した面において、該機能層の端部が前記第2隔壁部の側面上に位置する形状を作ることができる。このような構造であれば、膜厚の厚い機能層端部は第1隔壁部により非発光とし、機能層の膜厚が均一なエリアのみを発光させることができる。結果として、画素の中心部と端部で輝度が異なるトラブルを解消することができる。
図1の隔壁の横断面の概略図の一例中に、機能層11と機能層の端部12を示す。
【0094】
本発明の表示装置の第一の態様では、隔壁の膜厚が0.5~5.0μmであることが好ましい。0.5μm以上であれば、機能性インクを画素内にとどめやすくできる。感光性樹脂組成物をフォトリソグラフィで加工しやすくする観点から、隔壁の膜厚が5.0μm以下が好ましい。また、前記第1隔壁部の膜厚が0.1~1.0μmであること好ましい。前記第1隔壁部の膜厚が0.1μm以上であれば、隔壁に求められる絶縁性を維持することができる。前記第1隔壁部の膜厚が1.0μm以下であれば、第一隔壁部の上部に膜厚が厚い機能層端部を形成することができる。本発明の表示装置の第一の態様において、前記隔壁の膜厚が0.5~5.0μmであり、且つ、前記第1隔壁部の膜厚が0.1~1.0μmであることが、より好ましい。
【0095】
本発明の表示装置の第一の態様では、前記第1隔壁部と前記第2隔壁部が同一材料の硬化膜から形成されていることが好ましい。本発明において「同一材料」とは同じ感光性樹脂組成物からできたものを指す。本発明の感光性樹脂組成物の第一の態様であれば、後術するハーフ露光により1回のフォトリソグラフィで、段差形状を容易に形成することができる。
【0096】
本発明の表示装置の第一の態様は、前記表示装置の隔壁で囲まれた領域内に、機能層を形成することが好ましい。例えば、透過光を着色する着色層を形成し、画素ごとに異なる色彩を有する複数色の着色層を配置することで、カラーフィルターとして用いることができる。または、有機EL発光材料、正孔注入材料、正孔輸送材料から選ばれる少なくとも1種類以上を含む有機EL発光層を形成することで、有機EL表示装置として用いることができる。
【0097】
本発明の表示装置の第一の態様は、隔壁の長さ方向及び基板の表面に対して垂直に割断した横断面において、該機能層の端部が前記第2隔壁部の側面上に位置することが好ましい。該機能層の端部が前記第2隔壁部の側面上に位置する構造であれば、膜厚の厚い機能層端部は第1隔壁部により非発光とし、機能層の膜厚が均一なエリアのみを発光させることができる。結果として、画素の中心部と端部で輝度が異なるトラブルを解消することができる。
【0098】
本発明の有機EL表示装置の第一の態様は、前記表示装置の機能層に有機EL発光材料、正孔注入材料、および正孔輸送材料からなる群から選ばれる少なくとも1種類を含む。機能層に有機EL発光材料、正孔注入材料、および正孔輸送材料からなる群から選ばれる少なくとも1種類を含むことで、有機EL発光層を形成することができる。
【0099】
本発明の有機EL表示装置の第一の態様は、基板上に、駆動回路、平坦化層、第1電極、隔壁、有機EL発光層および第2電極を有し、該隔壁が本発明の硬化膜の第一の態様からなる。アクティブマトリックス型の表示装置を例に挙げると、ガラスや樹脂フィルムなどの基板上に、TFTと、TFTの側方部に位置しTFTと接続された配線とを有し、その上に凹凸を覆うようにして平坦化層を有し、さらに平坦化層上に表示素子が設けられている。表示素子と配線とは、平坦化層に形成されたコンタクトホールを介して接続される。
【0100】
本発明の硬化膜の第一の態様を隔壁に用いることで、撥液性を有し、インクジェット方式に用いられる吐出液が、隣接する画素内への浸入を防ぐことで、表示不良の発生が少なく、耐久性に優れた有機EL表示装置を得ることができる。
【0101】
次に本発明の隔壁付基板の製造方法の第一の態様、および本発明の表示装置の製造方法の第一の態様を説明する。
【0102】
本発明の隔壁付基板の製造方法の第一の態様は、下記(1)~(4)の工程をこの順に有する。
(1)第一電極を有する基板上に本発明の感光性樹脂組成物の第一の態様を塗布し、感光性樹脂膜を形成する工程
(2)前記感光性樹脂膜を露光する工程
(3)露光した感光性樹脂膜を現像する工程
(4)現像した感光性樹脂膜を加熱処理することで隔壁を形成する工程。
【0103】
まず、(1)第一電極を有する基板に感光性樹脂組成物を塗布し、感光性樹脂膜を形成する工程を説明する。
【0104】
第一電極を有する基板に感光性樹脂組成物を塗布する方法として、スピンコート法、スリットコート法、ディップコート法、スプレーコート法、印刷法などが挙げられる。塗布に先立ち、感光性樹脂組成物を塗布する基板を予め前述した密着改良剤で前処理してもよい。例えば、密着改良剤をイソプロパノール、エタノール、メタノール、水、テトラヒドロフラン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、乳酸エチル、アジピン酸ジエチルなどの溶媒に0.5~20質量%溶解させた溶液を用いて、基材表面を処理する方法が挙げられる。基材表面の処理方法としては、スピンコート、スリットダイコート、バーコート、ディップコート、スプレーコート、蒸気処理などの方法が挙げられる。
【0105】
次に、例えば、塗布した感光性樹脂膜を必要に応じて減圧乾燥処理を施し、その後、ホットプレート、オーブン、赤外線などを用いて、50℃~180℃の範囲で1分間~数時間の熱処理を施すことで乾燥した感光性樹脂膜を得ることができる。
【0106】
次に、(2)前記感光性樹脂膜を露光する工程について説明する。
【0107】
感光性樹脂膜上に所望のパターンを有するフォトマスクを通して化学線を照射する。露光に用いられる化学線としては紫外線、可視光線、電子線、X線などがあるが、本発明では水銀灯のi線(365nm)、h線(405nm)、g線(436nm)を用いることが好ましい。化学線を照射した後、露光後ベークをしても構わない。露光後ベークを行うことによって、現像後の解像度向上又は現像条件の許容幅増大などの効果が期待できる。露光後ベークは、オーブン、ホットプレート、赤外線、フラッシュアニール装置又はレーザーアニール装置などを使用することができる。露光後ベーク温度としては、50~180℃が好ましく、60~150℃がより好ましい。露光後ベーク時間は、10秒~数時間が好ましい。露光後ベーク時間が上記範囲内であると、反応が良好に進行し、現像時間を短くできる場合がある。
【0108】
本発明では、「ハーフ露光」により、横断面が台形状の第1隔壁部と、該第1隔壁部の上部に横断面が台形状の第2隔壁部とを有する段差形状であり、該基板と垂直方向に割断した面において、該第1隔壁部の上面の幅をA、該第2隔壁部の底面の幅をBとした場合、A>Bの関係を満たす段差形状を、容易に形成することができる。
【0109】
「ハーフ露光」とは現像完了時に露光された部分の感光性樹脂膜の下地がある程度残るようにするプロセスのことをいう。言い換えれば、感光性樹脂膜の第1隔壁部が感光しないように露光を行うプロセスのことをいう。
【0110】
次に、(3)露光した感光性樹脂膜を現像する工程について説明する。
【0111】
露光した感光性樹脂膜を現像する現像工程では、露光した感光性樹脂膜を、現像液を用いて現像し、露光部以外を除去する。現像液としては、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、ジエタノールアミン、ジエチルアミノエタノール、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、トリエチルアミン、ジエチルアミン、メチルアミン、ジメチルアミン、酢酸ジメチルアミノエチル、ジメチルアミノエタノール、ジメチルアミノエチルメタクリレート、シクロヘキシルアミン、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンなどのアルカリ性を示す化合物の水溶液が好ましい。また場合によっては、これらのアルカリ水溶液にN-メチル-2-ピロリドン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、γ-ブチロラクトン、ジメチルアクリルアミドなどの極性溶媒、メタノール、エタノール、イソプロパノールなどのアルコール類、乳酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどのエステル類、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、イソブチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン類などを単独あるいは数種を組み合わせたものを添加してもよい。現像方式としては、スプレー、パドル、浸漬、超音波等の方式が可能である。
【0112】
次に、現像によって形成したパターンを蒸留水にてリンス処理をすることが好ましい。ここでもエタノール、イソプロピルアルコールなどのアルコール類、乳酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどのエステル類などを蒸留水に加えてリンス処理をしてもよい。
【0113】
次に、(4)現像した感光性樹脂膜を加熱処理することで隔壁を形成する工程について説明する。
【0114】
現像した感光性樹脂膜を加熱処理する工程により硬化膜を得る。本発明では、感光性樹脂組成物の硬化膜を有機EL表示装置の隔壁に好適に用いることができる。加熱処理により残留溶剤や耐熱性の低い成分を除去できるため、耐熱性および耐薬品性を向上させることができる。また、熱架橋剤(D)を含有する場合は、加熱処理により熱架橋反応を進行させることができ、耐熱性および耐薬品性を向上させることができる。この加熱処理は温度を選び、段階的に昇温するか、ある温度範囲を選び連続的に昇温しながら5分間~5時間実施する。一例としては、150℃、250℃で各30分ずつ熱処理する方法が挙げられる。あるいは、室温より300℃まで2時間かけて直線的に昇温する方法などが挙げられる。本発明においての加熱処理条件としては180℃以上が好ましく、200℃以上がより好ましく、230℃以上がさらに好ましく、250℃以上が特に好ましい。また加熱処理条件は、400℃以下が好ましく、350℃以下がより好ましく、300℃以下がさらに好ましい。
【0115】
本発明の表示装置の製造方法の第一の態様は、下記(5)~(6)の工程をこの順に有する。
(5)本発明の感光性樹脂組成物の第一の態様の硬化物を含む隔壁を有する隔壁付基板において、該隔壁で囲まれた領域内に機能性インクをインクジェットで塗布して機能層を形成する工程
(6)該機能層上に第2電極形成を形成する工程。
【0116】
まず、(5)本発明の感光性樹脂組成物の第一の態様の硬化物を含む隔壁を有する隔壁付基板において、該隔壁で囲まれた領域内に機能性インクをインクジェットで塗布して機能層を形成する工程を説明する。
【0117】
基板上に形成された格子状の隔壁で囲まれた領域(画素)内に機能性インクをインクジェットで塗布して機能層を形成する。例えば、有機EL表示装置の場合、有機EL発光材料、正孔注入材料、および正孔輸送材料からなる群から選ばれる少なくとも1種類を含む組成物を機能性インクとして画素内に滴下し、乾燥させることにより有機EL発光層を形成することができる。乾燥にはホットプレートやオーブンを用いて、150℃~250℃で0.5分から120分加熱することが好ましい。
【0118】
次に、(6)該機能層上に第2電極形成を形成する工程を説明する。
【0119】
隔壁及び機能層の全体を覆うように第2電極を形成する。第2電極の形成方法としては、スパッタ法や蒸着法等が挙げられる。尚、断線がなく、均一な層厚で第2電極を形成することが好ましい。
【0120】
本発明の表示装置の製造方法の第一の態様は、下記(1)~(6)の工程をこの順に有することが好ましい。
(1)第一電極を有する基板上に本発明の感光性樹脂組成物の第一の態様を塗布し感光性樹脂膜を形成する工程
(2)前記感光性樹脂膜を露光する工程
(3)露光した感光性樹脂膜を現像する工程
(4)現像した感光性樹脂膜を加熱処理することで隔壁を形成する工程
(5)該隔壁で囲まれた領域内に機能性インクをインクジェットで塗布して機能層を形成する工程
(6)該機能層上に第2電極形成を形成する工程。
【0121】
本発明の感光性樹脂組成物の第二の態様は、少なくとも一般式(1)と一般式(2)で表される構造単位を有する化合物(A-I)(以下、化合物(A-I)と呼ぶことがある。)と、ポリイミド、ポリベンゾオキサゾール、ポリアミドイミド、それらいずれかの前駆体およびそれらの共重合体から選ばれるアルカリ可溶性樹脂(B-I)とを含有する。本明細書において、本発明の感光性樹脂組成物の第二の態様における感光性樹脂組成物を感光性樹脂組成物(I)という場合がある。
【0122】
【0123】
一般式(1)中、R1、R2およびR3は水素原子または炭素数1~4の1価の有機基を表し、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。
【0124】
【0125】
一般式(2)中、R4は水素原子または炭素数1~4の1価の有機基、R5は炭素数1~6の脂肪族基を表し、R6は炭素数3~6のパーフルオロアルキル基を表す。
【0126】
化合物(A-I)は、少なくとも、一般式(3)で表される(メタ)アクリルアミドモノマーと、一般式(4)で表されるパーフルオロ基を有する(メタ)アクリレートモノマーとが共重合されたもので、感光性樹脂組成物(I)に相溶し、硬化膜表面に撥液性を付与するために添加される撥液材である。
【0127】
【0128】
一般式(3)中、R1、R2およびR3は水素原子または炭素数1~4の1価の有機基を表し、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。
【0129】
【0130】
一般式(4)中、R4は水素原子または炭素数1~4の1価の有機基、R5は炭素数1~6の脂肪族基を表し、R6は炭素数3~6のパーフルオロアルキル基を表す。
【0131】
一般式(3)で表される、(メタ)アクリルアミドモノマーの好ましい例としては、N,N-ジメチルアクリルアミド、N,N-ジエチルアクリルアミドが挙げられる。また、一般式(4)で表される、パーフルオロ基を有する(メタ)アクリレートモノマーの好ましい例としては、2-(パーフルオロブチル)エチル(メタ)アクリレート、2-(パーフルオロヘキシル)エチル(メタ)アクリレート、等が挙げられる。
【0132】
化合物(A-I)は、前記一般式(3)で表される(メタ)アクリルアミドモノマーを共重合して得られる、一般式(1)で表される構造単位を有する。一般式(1)で表される構造単位は、後述するアルカリ可溶性樹脂(B)との相溶性を向上し、ハジキ等の欠点を低減させ、硬化膜の膜厚均一性を向上する効果があり、その結果として、有機EL表示装置の表示不良が低減する。有機EL表示装置の表示不良を低減させる観点から、一般式(1)で表される構造単位は、化合物(A-I)を構成する構造単位全体の35モル%以上が好ましく、さらに、40モル%以上で、かつ、化合物(A-I)を構成する複数の構造単位のなかで最も多いモル比率であることがさらに好ましい。また、撥液性を付与するために、85モル%以下が好ましく、70モル%以下がさらに好ましい。
【0133】
化合物(A-I)は、感光性樹脂組成物(I)の硬化膜を形成する際に、アルカリ可溶性樹脂(B)と重縮合して発光素子としての耐久性をさらに向上させる目的で、一般式(5)で表される構造単位を有することが好ましく、一般式(6)で表される、エポキシ基含有(メタ)アクリレートモノマーと共重合された共重合物であることがより好ましい。
【0134】
【0135】
【0136】
一般式(5)および(6)中、R7は水素原子または炭素数1~4の1価の有機基、R8はエポキシ基を有する炭素数2~16の1価の有機基を表す。
【0137】
一般式(6)で表されるエポキシ基含有(メタ)アクリレートモノマーの好ましい例としては、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、4-ヒドロキシブチルアクリレートグリシジルエーテル(4-HBAGE)、脂環式エポキシ基を有するアクリレートモノマーが挙げられる。
【0138】
さらに、一般式(5)で表される構造単位は一般式(2)で表される構造単位と等モルまたはそれ以上のモル比率であれば、感光性樹脂組成物(I)の硬化膜を形成する際に、アルカリ可溶性樹脂(B)と重縮合し、耐熱性の高い硬化膜を形成し、感光性樹脂組成物(I)の硬化膜の耐熱性が上がり、有機EL表示装置の耐久性が向上することから、さらに好ましい。
【0139】
化合物(A-I)は、撥液性と溶解性のバランスをとる目的で、さらに異なる官能基置換(メタ)アクリルモノマーを共重合させた共重合物でもよい。例えば、水酸基含有(メタ)アクリレート類、水酸基含有(メタ)アクリルアミド類、アルコキシ基含有(メタ)アクリレート類、ブロックイソシアネート基含有(メタ)アクリレート類、フェノキシ基含有(メタ)アクリレート類、アルキル(メタ)アクリレート類、ビニル基含有化合物類が挙げられる。
【0140】
水酸基含有(メタ)アクリレート類は、例えば2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
水酸基含有(メタ)アクリルアミド類は、例えばN-ヒドロキシメチルアクリルアミド等が挙げられる。
アルコキシ基を有する(メタ)アクリレート類は、例えば、3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン等が挙げられる。
ブロックイソシアネート基含有(メタ)アクリレート類は、例えば、メタクリル酸2-(0-[1’-メチルプロピリデンアミノ]カルボキシアミノ)エチル(カレンズMOI-BM:昭和電工株式会社製;登録商標)等が挙げられる。
【0141】
フェノキシ基含有(メタ)アクリレート類は、例えば、2-フェノキシベンジルアクリレート、3-フェノキシベンジルアクリレート等が挙げられる。
【0142】
アルキル(メタ)アクリレート類は、無置換、又はアミノ基、モノアルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、炭化水素芳香環、複素環の少なくとも何れかで置換され若しくはヒドロキシ基に酸無水物が開裂付加していてもよい直鎖状、分岐鎖状、及び/又は環状で炭素数1~12のアルキル基を有する無置換又は置換アルキル(メタ)アクリレートである希釈モノマー、例えば、アルキルアクリレート等が挙げられる。
【0143】
ビニル基含有化合物類は、例えばn-ブチルビニルエーテル等が挙げられる。
【0144】
化合物(A-I)の共重合物は、ラジカル重合やアニオン重合等のようなイオン重合で得られてもよく、公知の重合方法で得ることができる。また、ランダム共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体のいずれであってもよく、交互共重合体であってもよい。ここではラジカル重合方法を例に挙げる。例えばジメチル(メタ)アクリルアミドの所定量と、所定量のフッ素含有(メタ)アクリレートモノマーと、必要に応じて、所定量のエポキシ基含有(メタ)アクリレート類、水酸基含有(メタ)アクリレート類、水酸基含有(メタ)アクリルアミド類、アルコキシ基含有(メタ)アクリレート類、ブロックイソシアネート基含有(メタ)アクリレート類、フェノキシ基含有(メタ)アクリレート類、アルキル(メタ)アクリレート類、ビニル基含有化合物類を、適宜溶媒中、ラジカル重合開始剤、必要に応じて連鎖移動剤の存在下でランダム共重合させることで、化合物(A-I)を得ることができる。ラジカル重合開始剤としては、例えばtert-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエイトを用いることができ、連鎖移動剤としては、例えばドデシルメルカプタンを用いることができる。また、溶媒としては、例えばシクロヘキサノン等の不活性溶媒を用いることができる。
【0145】
化合物(A-I)の重量平均分子量は、1500~50000の範囲であることが好ましく、この範囲内の分子量であれば、感光性樹脂組成物(I)に用いられる溶媒へ容易に溶解することができ、感光性樹脂組成物溶液の消泡性が高いことから好ましい。
【0146】
本発明における、化合物(A-I)は、後述するポリイミド、ポリベンゾオキサゾールもしくはポリアミドイミド、それらいずれかの前駆体およびそれらの共重合体から選ばれるアルカリ可溶性樹脂(B)100質量部に対して、得られた硬化膜が撥液性を十分に発現する観点から、0.1質量部以上が好ましく、さらに、0.3質量部以上であればさらに好ましい。また、画素内に撥液性を生じさせず、高い耐久性が得られる観点から、10質量部以下が好ましく、5質量部以下がさらに好ましい。なお、化合物(A-I)の適切な添加量は、感光性樹脂組成物(I)の硬化膜表面に対して、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを滴下した時の接触角を用いて判断することができ、JIS-R3258に準拠し、静滴法にて測定した際の接触角が、40°以上であることが好ましい。
【0147】
感光性樹脂組成物(I)は、ポリイミド、ポリベンゾオキサゾール、ポリアミドイミド、それらいずれかの前駆体およびそれらの共重合体から選ばれるアルカリ可溶性樹脂(B-I)(以下、(B-I)成分と呼ぶ場合がある。)を有する。また、ポリイミド、ポリベンゾオキサゾール、ポリアミドイミド、それらいずれかの前駆体から選ばれる2種以上含有してもよいし、これらの2種以上の繰り返し単位を有する共重合体を含有してもよい。
【0148】
本発明の感光性樹脂組成物の第二の態様におけるアルカリ可溶性とは、樹脂をγ-ブチロラクトンに溶解した溶液をシリコンウェハー上に塗布し、120℃で4分間プリベークを行って膜厚10μm±0.5μmのプリベーク膜を形成し、該プリベーク膜を23±1℃の2.38質量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液に1分間浸漬した後、純水でリンス処理したときの膜厚減少から求められる溶解速度が50nm/分以上であることをいう。
【0149】
ポリイミドは、例えば、テトラカルボン酸あるいはテトラカルボン酸二無水物、テトラカルボン酸ジエステルジクロリド等と、ジアミンあるいはジイソシアネート化合物、トリメチルシリル化ジアミン等とを反応させて得ることができる。ポリイミドは、テトラカルボン酸残基とジアミン残基を有する。また、ポリイミドは、例えば、テトラカルボン酸二無水物とジアミンを反応させて得られるポリイミド前駆体の1つであるポリアミド酸を、加熱処理により脱水閉環することにより得ることができる。この加熱処理時、m-キシレンなどの水と共沸する溶媒を加えることもできる。あるいは、カルボン酸無水物やジシクロヘキシルカルボジイミド等の脱水縮合剤やトリエチルアミン等の塩基などを閉環触媒として加えて、化学熱処理により脱水閉環することにより得ることもできる。または、弱酸性のカルボン酸化合物を加えて100℃以下の低温で加熱処理により脱水閉環することにより得ることもできる。
【0150】
ポリベンゾオキサゾールは、例えば、ビスアミノフェノール化合物と、ジカルボン酸あるいはジカルボン酸クロリド、ジカルボン酸活性エステル等とを反応させて得ることができる。ポリベンゾオキサゾールは、ジカルボン酸残基とビスアミノフェノール残基を有する。また、ポリベンゾオキサゾールは、例えば、ビスアミノフェノール化合物とジカルボン酸を反応させて得られるポリベンゾオキサゾール前駆体の1つであるポリヒドロキシアミドを、加熱処理により脱水閉環することにより得ることができる。あるいは、無水リン酸、塩基、カルボジイミド化合物などを加えて、化学処理により脱水閉環することにより得ることができる。
【0151】
ポリイミド前駆体としては、ポリアミド酸、ポリアミド酸エステル、ポリアミド酸アミド、ポリイソイミドなどを挙げることができる。例えば、ポリアミド酸は、テトラカルボン酸あるいはテトラカルボン酸二無水物、テトラカルボン酸ジエステルジクロリドなどとジアミンあるいはジイソシアネート化合物、トリメチルシリル化ジアミンを反応させて得ることができる。ポリイミドは、例えば、上記の方法で得たポリアミド酸を、加熱あるいは酸や塩基などの化学処理で脱水閉環することで得ることができる。
【0152】
ポリベンゾオキサゾール前駆体としては、ポリヒドロキシアミドなどを挙げることができる。例えば、ポリヒドロキシアミドは、ビスアミノフェノールと、ジカルボン酸あるいはジカルボン酸クロリド、ジカルボン酸活性エステルなどを反応させて得ることができる。ポリベンゾオキサゾールは、例えば、上記の方法で得たポリヒドロキシアミドを、加熱あるいは無水リン酸、塩基、カルボジイミド化合物などの化学処理で脱水閉環することで得ることができる。
【0153】
ポリアミドイミド前駆体は、例えば、トリカルボン酸、対応するトリカルボン酸無水物、トリカルボン酸無水物ハライドなどとジアミンやジイソシアネートを反応させて得ることができる。ポリアミドイミドは、例えば、上記の方法で得た前駆体を、加熱あるいは酸や塩基などの化学処理で脱水閉環することにより得ることができる。
【0154】
ポリイミド、ポリベンゾオキサゾール、ポリアミドイミドの共重合体としては、ブロック共重合、ランダム共重合、交互共重合、グラフト共重合のいずれかまたはそれらの組み合わせであってもよい。例えば、ポリヒドロキシアミドにテトラカルボン酸、対応するテトラカルボン酸二無水物、テトラカルボン酸ジエステルジクロリドなどを反応させてブロック共重合体を得ることができる。さらに、加熱あるいは酸や塩基などの化学処理で脱水閉環することもできる。
【0155】
(B-I)成分は、一般式(7)~(10)のいずれかで表される構造単位を有することが好ましく、(10)で表される構造単位を有することがより好ましい。これらの構造単位を有する2種以上の樹脂を含有してもよいし、2種以上の構造単位を共重合してもよい。(B-I)成分の樹脂は、一般式(7)~(10)のいずれかで表される構造単位を分子中に3~1000含むものが好ましく、20~200含むものがより好ましい。
【0156】
【0157】
一般式(7)~(10)中、R9およびR12は4価の有機基、R10、R11およびR14は2価の有機基、R13は3価の有機基、R15は2~4価の有機基、R16は2~12価の有機基を表す。R17は水素原子または炭素数1~20の1価の炭化水素基を表す。pは0~2の整数、qは0~10の整数を表す。nは0~2の整数を表す。
【0158】
R9~R16はいずれも芳香族環および/または脂肪族環を有するものが好ましい。
【0159】
一般式(7)~(10)中、R9はテトラカルボン酸誘導体残基、R11はジカルボン酸誘導体残基、R13はトリカルボン酸誘導体残基、R15はジ-、トリ-またはテトラ-カルボン酸誘導体残基を表す。R9、R11、R13、R15(COOR17)n(OH)pを構成する酸成分としては、ジカルボン酸の例として、テレフタル酸、イソフタル酸、ジフェニルエーテルジカルボン酸、ビス(カルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、ビフェニルジカルボン酸、ベンゾフェノンジカルボン酸、トリフェニルジカルボン酸など、トリカルボン酸の例として、トリメリット酸、トリメシン酸、ジフェニルエーテルトリカルボン酸、ビフェニルトリカルボン酸など、テトラカルボン酸の例として、ピロメリット酸、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸、2,3,3’,4’-ビフェニルテトラカルボン酸、2,2’,3,3’-ビフェニルテトラカルボン酸、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸、2,2’,3,3’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、1,1-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)エタン、1,1-ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)エタン、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)メタン、ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)メタン、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)スルホン、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)エーテル、1,2,5,6-ナフタレンテトラカルボン酸、2,3,6,7-ナフタレンテトラカルボン酸、2,3,5,6-ピリジンテトラカルボン酸、3,4,9,10-ペリレンテトラカルボン酸などの芳香族テトラカルボン酸や、ブタンテトラカルボン酸、1,2,3,4-シクロペンタンテトラカルボン酸などの脂肪族テトラカルボン酸などを挙げることができる。これらのうち、一般式(10)においては、トリカルボン酸、テトラカルボン酸のそれぞれ1つまたは2つのカルボキシル基がCOOR15基に相当する。これらの酸成分は、そのまま、あるいは酸無水物、活性エステルなどとして使用できる。また、これら2種以上の酸成分を組み合わせて用いてもよい。
【0160】
一般式(7)~(10)中、R10、R12、R14およびR16はジアミン誘導体残基を表す。R10、R12、R14、R16(OH)qを構成するジアミン成分の例としては、ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)メチレン、ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシ)ビフェニル、ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)フルオレンなどのヒドロキシル基含有ジアミン、3-スルホン酸-4,4’-ジアミノジフェニルエーテルなどのスルホン酸含有ジアミン、ジメルカプトフェニレンジアミンなどのチオール基含有ジアミン、3,4’-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、3,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、3,4’-ジアミノジフェニルスルホン、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、3,4’-ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’-ジアミノジフェニルスルフィド、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、ベンジン、m-フェニレンジアミン、p-フェニレンジアミン、1,5-ナフタレンジアミン、2,6-ナフタレンジアミン、ビス(4-アミノフェノキシフェニル)スルホン、ビス(3-アミノフェノキシフェニル)スルホン、ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス{4-(4-アミノフェノキシ)フェニル}エーテル、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、2,2’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、2,2’-ジエチル-4,4’-ジアミノビフェニル、3,3’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、3,3’-ジエチル-4,4’-ジアミノビフェニル、2,2’,3,3’-テトラメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、3,3’,4,4’-テトラメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-4,4’-ジアミノビフェニルなどの芳香族ジアミンや、これらの芳香族環の水素原子の一部を、炭素数1~10のアルキル基やフルオロアルキル基、ハロゲン原子などで置換した化合物、シクロヘキシルジアミン、メチレンビスシクロヘキシルアミンなどの脂環式ジアミンなどを挙げることができる。これらのジアミンは、そのまま、あるいは対応するジイソシアネート化合物、トリメチルシリル化ジアミンとして使用できる。また、これら2種以上のジアミン成分を組み合わせて用いてもよい。耐熱性が要求される用途では、芳香族ジアミンをジアミン全体の50モル%以上使用することが好ましい。
【0161】
一般式(7)~(10)のR9~R16は、その骨格中にフェノール性水酸基、スルホン酸基、チオール基などを含むことができる。フェノール性水酸基、スルホン酸基またはチオール基を適度に有する樹脂を用いることで、適度なアルカリ可溶性を有するポジ型感光性樹脂組成物となる。
【0162】
また、(B-I)成分の構造単位中にフッ素原子を有することが好ましい。フッ素原子により、アルカリ現像の際に膜の表面に撥水性が付与され、表面からのしみこみなどを抑えることができる。(B-I)成分中のフッ素原子含有量は、界面のしみこみ防止効果を充分得るために10質量%以上が好ましく、また、アルカリ水溶液に対する溶解性の点から20質量%以下が好ましい。
【0163】
また、樹脂組成物の保存安定性を向上させるため、(B-I)成分の樹脂は主鎖末端を公知のモノアミン、酸無水物、モノカルボン酸、モノ酸クロリド化合物、モノ活性エステル化合物などの末端封止剤で封止することが好ましい。末端封止剤として用いられるモノアミンの導入割合は、全アミン成分に対して、好ましくは0.1モル%以上、特に好ましくは5モル%以上であり、好ましくは60モル%以下、特に好ましくは50モル%以下である。末端封止剤として用いられる酸無水物、モノカルボン酸、モノ酸クロリド化合物またはモノ活性エステル化合物の導入割合は、ジアミン成分に対して、好ましくは0.1モル%以上、特に好ましくは5モル%以上であり、好ましくは100モル%以下、特に好ましくは90モル%以下である。複数の末端封止剤を反応させることにより、複数の異なる末端基を導入してもよい。
【0164】
一般式(7)~(9)のいずれかで表される構造単位を有する樹脂において、構造単位の繰り返し数は3以上200以下が好ましい。また、一般式(10)で表される構造単位を有する樹脂において、構造単位の繰り返し数は10以上1000以下が好ましい。この範囲であれば、厚膜を容易に形成することができる。
【0165】
(B-I)成分は、一般式(7)~(10)のいずれかで表される構造単位のみからなるものであってもよいし、他の構造単位との共重合体あるいは混合体であってもよい。その際、一般式(7)~(10)のいずれかで表される構造単位を樹脂全体の10質量%以上含有することが好ましく、30質量%以上がより好ましい。共重合あるいは混合に用いられる構造単位の種類および量は、最終加熱処理によって得られる薄膜の機械特性を損なわない範囲で選択することができる。
【0166】
感光性樹脂組成物(I)は、さらにフェノール樹脂、ポリヒドロキシスチレン樹脂のいずれか少なくとも1種類以上の樹脂(C-I)(以下、(C-I)成分と呼ぶ場合がある。)を含有することが好ましい。これらの樹脂は相溶化剤としての機能を持ち、これらを混合することで、化合物(A-I)と(B-I)成分の相溶性をより向上させ、各成分の現像液への溶解性が安定化することに寄与し、パターンの直進性が向上する。その結果として、有機EL表示装置の表示不良を低減することが期待される。また、後術する感光剤(E-I)がポジタイプの場合、(C-I)成分を含有することで、現像工程の膜べり量を低下させる事ができるため、化合物(A-I)を現像後の膜表面に留める効果があり、良好な撥液性を得るためのプロセスマージンを向上させることができる。
【0167】
フェノール樹脂は、ノボラックフェノール樹脂やレゾールフェノール樹脂があり、種々のフェノール類の単独あるいはそれらの複数種の混合物をホルマリンなどのアルデヒド類を用いて公知の方法で重縮合することにより得られる。
【0168】
ノボラックフェノール樹脂およびレゾールフェノール樹脂を構成するフェノール類としては、例えば、フェノール、p-クレゾール、m-クレゾール、o-クレゾール、2,3-ジメチルフェノール、2,4-ジメチルフェノール、2,5-ジメチルフェノール、2,6-ジメチルフェノール、3,4-ジメチルフェノール、3,5-ジメチルフェノール、2,3,4-トリメチルフェノール、2,3,5-トリメチルフェノール、3,4,5-トリメチルフェノール、2,4,5-トリメチルフェノール、メチレンビスフェノール、メチレンビスp-クレゾール、レゾルシン、カテコール、2-メチルレゾルシン、4-メチルレゾルシン、o-クロロフェノール、m-クロロフェノール、p-クロロフェノール、2,3-ジクロロフェノール、m-メトキシフェノール、p-メトキシフェノール、p-ブトキシフェノール、o-エチルフェノール、m-エチルフェノール、p-エチルフェノール、2,3-ジエチルフェノール、2,5-ジエチルフェノール、p-イソプロピルフェノール、α-ナフトール、β-ナフトールなどが挙げられ、これらは単独で、または、複数の混合物として用いることができる。また、アルデヒド類としては、ホルマリンの他、パラホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ベンズアルデヒド、ヒドロキシベンズアルデヒド、クロロアセトアルデヒドなどが挙げられ、これらは単独でまたは複数の混合物として用いることができる。
【0169】
ポリヒドロキシスチレン樹脂としては、ビニルフェノールのホモポリマー又はスチレンとの共重合体を使用することも可能である。
フェノール樹脂、ポリヒドロキシスチレン樹脂の好ましい重量平均分子量は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)によるポリスチレン換算で2,000~20,000、好ましくは3,000~10,000である。この範囲であれば、高濃度かつ低粘度な樹脂組成物を得ることができる。
【0170】
感光性樹脂組成物(I)におけるフェノール樹脂、ポリヒドロキシスチレン樹脂の含有量の総和は、(B-I)成分100質量部に対して、化合物(A-I)と(B-I)成分の相溶性を向上させてパターンの直進性が良好となり、有機EL表示装置の表示不良を低減させる観点から、20質量部以上が好ましく、30質量部以上がさらに好ましい。また、感光性樹脂組成物の硬化膜の耐久性を低下させない目的で、50質量部以下が好ましく、40質量部以下がさらに好ましい。
【0171】
感光性樹脂組成物(I)は、硬化膜を容易に得る目的で、さらに、熱架橋剤(D-I)を有することが好ましい。
熱架橋剤とは、メチロール基、アルコキシメチル基、エポキシ基、オキセタニル基をはじめとする熱反応性の官能基を分子内に少なくとも2つ有する化合物を指す。(D-I)熱架橋剤は(B-I)成分またはその他添加成分を架橋し、硬化膜の耐久性を高めることができる。
【0172】
アルコキシメチル基またはメチロール基を少なくとも2つ有する化合物の好ましい例としては、例えば、DML-PC、DML-PEP、DML-OC、DML-OEP、DML-34X、DML-PTBP、DML-PCHP、DML-OCHP、DML-PFP、DML-PSBP、DML-POP、DML-MBOC、DML-MBPC、DML-MTrisPC、DML-BisOC-Z、DML-BisOCHP-Z、DML-BPC、DML-BisOC-P、DMOM-PC、DMOM-PTBP、DMOM-MBPC、TriML-P、TriML-35XL、TML-HQ、TML-BP、TML-pp-BPF、TML-BPE、TML-BPA、TML-BPAF、TML-BPAP、TMOM-BP、TMOM-BPE、TMOM-BPA、TMOM-BPAF、TMOM-BPAP、HML-TPPHBA、HML-TPHAP、HMOM-TPPHBA、HMOM-TPHAP(以上、商品名、本州化学工業(株)製)、NIKALAC(登録商標)MX-290、NIKALAC MX-280、NIKALAC MX-270、NIKALAC MX-279、NIKALAC MW-100LM、NIKALAC MX-750LM(以上、商品名、(株)三和ケミカル製)が挙げられ、それぞれ前記各社から入手できる。
【0173】
エポキシ基またはオキセタニル基を有する化合物としては、一分子内にエポキシ基を2つ有するものとして“エピコート”(登録商標)807、“エピコート”828、“エピコート”1002、“エピコート”1750、“エピコート”1007、YX8100-BH30、E1256、E4250、E4275(以上商品名、ジャパンエポキシ(株)製)、“エピクロン”(登録商標)EXA-4880、“エピクロン”EXA-4822、“エピクロン”EXA-9583、HP4032(以上商品名、大日本インキ化学工業(株)製)、“エポライト”(登録商標)40E、“エポライト”100E、“エポライト”200E、“エポライト”400E、“エポライト”70P、“エポライト”200P、“エポライト”400P、“エポライト”1500NP、“エポライト”80MF、“エポライト”4000、“エポライト”3002(以上商品名、共栄社化学(株)製)、“デナコール”(登録商標)EX-212L、“デナコール”EX-214L、“デナコール”EX-216L、“デナコール”EX-252、“デナコール”EX-850L(以上商品名、ナガセケムテックス(株)製)、GAN、GOT(以上商品名、日本化薬(株)製)、“セロキサイド”(登録商標)2021P(商品名、(株)ダイセル製)、“リカレジン”(登録商標)DME-100、“リカレジン”BEO-60E(以上商品名、新日本理化(株)製)などが挙げられ、それぞれ各社から入手可能である。
【0174】
また、エポキシ基を3つ以上有するものとして、VG3101L(商品名、(株)プリンテック製)、“テピック”(登録商標)S、“テピック”G、“テピック”P(以上商品名、日産化学工業(株)製)、“エピクロン”N660、“エピクロン”N695、HP7200(以上商品名、大日本インキ化学工業(株)製)、“デナコール”EX-321L(商品名、ナガセケムテックス(株)製)、NC6000、EPPN502H、NC3000(以上商品名、日本化薬(株)製)、“エポトート”(登録商標)YH-434L(商品名、東都化成(株)製)、EHPE-3150(商品名、(株)ダイセル製)、オキセタニル基を2つ以上有する化合物としては、OXT-121、OXT-221、OX-SQ-H、OXT-191、PNOX-1009、RSOX(以上商品名、東亜合成(株)製)、“エタナコール”(登録商標)OXBP、“エタナコール”OXTP(以上商品名、宇部興産(株)製)などが挙げられ、それぞれ各社から入手可能である。
【0175】
(D-I)熱架橋剤としては、一分子中にフェノール性水酸基を有し、かつ前記フェノール性水酸基の両オルト位にメチロール基および/またはアルコキシメチル基を有するものが好ましい。メチロール基および/またはアルコキシメチル基がフェノール性水酸基に隣接することで、硬化膜の耐久性をさらに高めることできる。アルコキシメチル基としては、例えばメトキシメチル基、エトキシメチル基、プロポキシメチル基、ブトキシメチル基を挙げることができるが、これらに限定されない。
【0176】
(D-I)熱架橋剤の含有量は、(B-I)アルカリ可溶性樹脂100質量部に対して、5質量部以上が好ましく、10質量部以上がより好ましく、15質量部以上がさらに好ましい。また、50質量部以下が好ましく、40質量部以下がより好ましく、30質量部以下がさらに好ましい。(D-I)熱架橋剤の含有量を5質量部以上とすることで硬化膜の耐熱性が向上し、50質量部以下とすることで硬化膜の伸度低下を防ぐことができる。
【0177】
感光性樹脂組成物(I)は、感光剤(E-I)を含有することが好ましい。感光剤(E-I)は光によって硬化するネガタイプでも、光によって可溶化するポジタイプでも良く、(e-1)重合性不飽和化合物および光重合開始剤、または、(e-2)キノンジアジド化合物などが好ましく含有することができる。
【0178】
(e-1)中の重合性不飽和化合物としては、例えば、ビニル基、アリル基、アクリロイル基、メタクリロイル基等の不飽和二重結合官能基および/またはプロパルギル基などの不飽和三重結合官能基を有する化合物など公知のものが挙げられ、これらの中でも共役型のビニル基やアクリロイル基、メタクリロイル基が重合性の面で好ましい。またその官能基が含有される数としては安定性の点から1~4であることが好ましく、それぞれは同一の基でなくとも構わない。また、ここで言う化合物は、分子量30~800のものが好ましい。分子量が30~800の範囲であれば、ポリマーおよび反応性希釈剤との相溶性がよい。具体的には、1,9-ノナンジオールジメタクリレート、1,10-デカンジオールジメタクリレート、ジメチロール-トリシクロデカンジアクリレート、イソボルニルアクリレート、イソボルニルメタクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサメタクリレート、メチレンビスアクリルアミド、N,N-ジメチルアクリルアミド、N-メチロールアクリルアミド、2,2,6,6-テトラメチルピペリジニルメタクリレート、2,2,6,6-テトラメチルピペリジニルアクリレート、N-メチル-2,2,6,6-テトラメチルピペリジニルメタクリレート、N-メチル-2,2,6,6-テトラメチルピペリジニルアクリレート、エチレンオキシド変性ビスフェノールAジアクリレート、エチレンオキシド変性ビスフェノールAジメタクリレート、N-ビニルピロリドン、N-ビニルカプロラクタムなどが挙げられる。これらは単独で又は2種類以上を組み合わせて使用される。
【0179】
(e-1)中の光重合開始剤とは、紫外~可視光域の光が照射されることによって、主としてラジカルを発生することにより重合を開始するものを意味する。汎用の光源が使用できる点および速硬化性の観点から、アセトフェノン誘導体、ベンゾフェノン誘導体、ベンゾインエーテル誘導体、キサントン誘導体から選ばれる公知の光重合開始剤が好ましい。好ましい光重合開始剤の例としては、ジエトキシアセトフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、1-ヒドロキシ-シクロヘキシルフェニルケトン、イソブチルベンゾインエーテル、ベンゾインメチルエーテル、チオキサントン、イソプロピルチオキサントン、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノプロパン-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタノン-1などが挙げられるがこれらに限定されない。
【0180】
(e-2)のキノンジアジド化合物としては、ポリヒドロキシ化合物にキノンジアジドのスルホン酸がエステル結合したもの、ポリアミノ化合物にキノンジアジドのスルホン酸がスルホンアミド結合したもの、ポリヒドロキシポリアミノ化合物にキノンジアジドのスルホン酸がエステル結合および/またはスルホンアミド結合したものなど公知のものが挙げられる。これらポリヒドロキシ化合物、ポリアミノ化合物、ポリヒドロキシポリアミノ化合物の全ての官能基がキノンジアジドで置換されていなくてもよいが、平均して官能基全体の40モル%以上がキノンジアジドで置換されていることが好ましい。このようなキノンジアジド化合物を用いることで、一般的な紫外線である水銀灯のi線(波長365nm)、h線(波長405nm)、g線(波長436nm)に感光するポジ型の感光性樹脂組成物を得ることができる。
【0181】
ポリヒドロキシ化合物は、Bis-Z、BisP-EZ、TekP-4HBPA、TrisP-HAP、TrisP-PA、TrisP-SA、TrisOCR-PA、BisOCHP-Z、BisP-MZ、BisP-PZ、BisP-IPZ、BisOCP-IPZ、BisP-CP、BisRS-2P、BisRS-3P、BisP-OCHP、メチレントリス-FR-CR、BisRS-26X、DML-MBPC、DML-MBOC、DML-OCHP、DML-PCHP、DML-PC、DML-PTBP、DML-34X、DML-EP、DML-POP、ジメチロール-BisOC-P、DML-PFP、DML-PSBP、DML-MTrisPC、TriML-P、TriML-35XL、TML-BP、TML-HQ、TML-pp-BPF、TML-BPA、TMOM-BP、HML-TPPHBA、HML-TPHAP(以上、商品名、本州化学工業製)、BIR-OC、BIP-PC、BIR-PC、BIR-PTBP、BIR-PCHP、BIP-BIOC-F、4PC、BIR-BIPC-F、TEP-BIP-A、46DMOC、46DMOEP、TM-BIP-A(以上、商品名、旭有機材工業製)、2,6-ジメトキシメチル-4-t-ブチルフェノール、2,6-ジメトキシメチル-p-クレゾール、2,6-ジアセトキシメチル-p-クレゾール、ナフトール、テトラヒドロキシベンゾフェノン、没食子酸メチルエステル、ビスフェノールA、ビスフェノールE、メチレンビスフェノール、BisP-AP(商品名、本州化学工業製)、ノボラック樹脂などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0182】
ポリアミノ化合物は、1,4-フェニレンジアミン、1,3-フェニレンジアミン、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、4,4’-ジアミノジフェニルスルフィドなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0183】
また、ポリヒドロキシポリアミノ化合物は、2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、3,3’-ジヒドロキシベンジジンなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0184】
これらの中でも(e-2)キノンジアジド化合物が、フェノール化合物および5-ナフトキノンジアジドスルホニル基とのエステルを含むことがより好ましい。これによりi線露光で高い感度と、より高い解像度を得ることができる。
【0185】
(e-2)キノンジアジド化合物の含有量は、(B-I)成分の樹脂100質量部に対して、1~50質量部が好ましく、10~40質量部がより好ましい。キノンジアジド化合物の含有量をこの範囲とすることにより、より高感度化を図ることができ、撥液性を阻害することなく感光性を得ることができる。
【0186】
感光性樹脂組成物(I)は、着色剤(F-I)を含有することができる。着色剤(F-I)とは、電子情報材料の分野で一般的に用いられる、公知の有機顔料、無機顔料または染料をいう。着色剤(F-I)は、好ましくは有機顔料および/または無機顔料であるとよい。
【0187】
有機顔料としては、例えば、ジケトピロロピロール系顔料、アゾ、ジスアゾもしくはポリアゾ等のアゾ系顔料、銅フタロシアニン、ハロゲン化銅フタロシアニンもしくは無金属フタロシアニン等のフタロシアニン系顔料、アミノアントラキノン、ジアミノジアントラキノン、アントラピリミジン、フラバントロン、アントアントロン、インダントロン、ピラントロンもしくはビオラントロン等のアントラキノン系顔料、キナクリドン系顔料、ジオキサジン系顔料、ペリノン系顔料、ペリレン系顔料、チオインジゴ系顔料、イソインドリン系顔料、イソインドリノン系顔料、キノフタロン系顔料、スレン系顔料、ベンゾフラノン系、又は金属錯体系顔料が挙げられる。
【0188】
無機顔料としては、例えば、黒色酸化鉄、カドミウムレッド、べんがら、モリブデンレッド、モリブデートオレンジ、クロムバーミリオン、黄鉛、カドミウムイエロー、黄色酸化鉄、チタンイエロー、酸化クロム、ビリジアン、チタンコバルトグリーン、コバルトグリーン、コバルトクロムグリーン、ビクトリアグリーン、群青、紺青、コバルトブルー、セルリアンブルー、コバルトシリカブルー、コバルト亜鉛シリカブルー、マンガンバイオレット又はコバルトバイオレットが挙げられる。
【0189】
染料としては、例えば、アゾ染料、アントラキノン染料、縮合多環芳香族カルボニル染料、インジゴイド染料、カルボニウム染料、フタロシアニン染料、メチン又はポリメチン染料が挙げられる。
【0190】
赤色の顔料としては、例えば、ピグメントレッド9,48,97,122,123,144,149,166,168,177,179,180,192,209,215,216,217,220,223,224,226,227,228,240又は254が挙げられる(数値はいずれもカラーインデックス(以下、「CI」ナンバー))。
【0191】
橙色の顔料としては、例えば、ピグメントオレンジ13,36,38,43,51,55,59,61,64,65又は71が挙げられる(数値はいずれもCIナンバー)。
【0192】
黄色の顔料としては、例えば、ピグメントイエロー12,13,17,20,24,83,86,93,95,109,110,117,125,129,137,138,139,147,148,150,153,154,166,168又は185が挙げられる(数値はいずれもCIナンバー)。
【0193】
紫色の顔料としては、例えば、ピグメントバイオレット19,23,29,30,32,37,40又は50が挙げられる(数値はいずれもCIナンバー)。
青色の顔料としては、例えば、ピグメントブルー15,15:3,15:4,15:6,22,60又は64が挙げられる(数値はいずれもCIナンバー)。
緑色の顔料としては、例えば、ピグメントグリーン7,10,36又は58が挙げられる(数値はいずれもCIナンバー)。
【0194】
黒色の顔料としては、例えば、黒色有機顔料、および黒色無機顔料等が挙げられる。黒色有機顔料としては、例えば、カーボンブラック、ベンゾフラノン系黒色顔料(国際公開第2010/081624号記載)、ペリレン系黒色顔料、アニリン系黒色顔料、またはアントラキノン系黒色顔料が挙げられる。これらの中でも特にベンゾフラノン系黒色顔料またはペリレン系黒色顔料が、より感度に優れたネガ型感光性樹脂組成物を得られる点で好ましい。ベンゾフラノン系黒色顔料やペリレン系黒色顔料は、可視領域は低い透過率で高い遮光性を実現しながら、紫外領域の透過率が相対的に高く、これにより露光時の化学反応が効率よく進むためである。ベンゾフラノン系黒色顔料およびペリレン系黒色顔料は、共に含有することもできる。黒色無機顔料としては、例えば、グラファイト、あるいは、チタン、銅、鉄、マンガン、コバルト、クロム、ニッケル、亜鉛、カルシウムもしくは銀等の金属の微粒子、酸化物、複合酸化物、硫化物、窒化物又は酸窒化物が挙げられるが、高い遮光性を有する、カーボンブラック又はチタン窒化物が好ましい。
【0195】
染料としては、例えば、Sumilan、Lanyl(登録商標)シリーズ(以上、いずれも住友化学工業(株)製)、Orasol(登録商標)、Oracet(登録商標)、Filamid(登録商標)、Irgasperse(登録商標)、Zapon、Neozapon、Neptune、Acidolシリーズ(以上、いずれもBASF(株)製)、Kayaset(登録商標)、Kayakalan(登録商標)シリーズ(以上、いずれも日本化薬(株)製)、Valifast(登録商標) Colorsシリーズ(オリエント化学工業(株)製)、Savinyl、Sandoplast、Polysynthren(登録商標)、Lanasyn(登録商標)シリーズ(以上、いずれもクラリアントジャパン(株)製)、Aizen(登録商標)、Spilon(登録商標)シリーズ(以上、いずれも保土谷化学工業(株)製)、機能性色素(山田化学工業(株)製)、Plast Color、Oil Colorシリーズ(有本化学工業(株)製)などを挙げることができる。
【0196】
有機EL表示装置のコントラストを向上させる目的においては、着色剤の色は可視光を全波長域に渡って遮光できる黒色が好ましく、有機顔料、無機顔料、および染料から選ばれる少なくとも1種以上を用い、硬化膜とした時に黒色を呈するような着色剤を用いればよい。そのためには、上述の黒色有機顔料および黒色無機顔料を用いてもよいし、二種以上の有機顔料および染料を混合することで疑似黒色化してもよい。疑似黒色化する場合は、上述の赤色、橙色、黄色、紫色、青色、緑色などの有機顔料および染料から二種以上を混合することで得ることができる。なお、感光性樹脂組成物(I)自体は必ずしも黒色である必要はなく、加熱硬化時に色が変化することで硬化膜が黒色を呈するような着色剤を用いてもよい。
【0197】
これらのうち、高い耐熱性を確保できる観点においては、有機顔料および/または無機顔料を含有し、かつ硬化膜とした時に黒色を呈するような着色剤を用いることが好ましい。また、高い絶縁性を確保できる観点においては、有機顔料および/または染料を含有し、かつ硬化膜とした時に黒色を呈するような着色剤を用いることが好ましい。すなわち、高い耐熱性と絶縁性を両立できる点で、有機顔料を含有し、かつ硬化膜とした時に黒色を呈するような着色剤を用いることが好ましい。
【0198】
着色剤(F-I)の含有量は、(B-I)成分100質量部に対して、好ましくは10質量部以上、より好ましくは20重質量部以上、さらに好ましくは30質量部以上で、好ましくは300質量部以下、より好ましくは200質量部以下、さらに好ましくは150質量部以下である。着色剤の含有量を10質量部以上とすることで硬化膜に必要な着色性が得られ、300質量部以下とすることで保存安定性が良好となる。
【0199】
感光性樹脂組成物(I)は、着色剤(F-I)として顔料を用いる場合は分散剤を含有することが好ましい。分散剤を含有することで、着色剤を樹脂組成物中に均一かつ安定に分散させることができる。分散剤は、特に制限されるものではないが、高分子分散剤が好ましい。高分子分散剤としては、例えば、ポリエステル系高分子分散剤、アクリル系高分子分散剤、ポリウレタン系高分子分散剤、ポリアリルアミン系高分子分散剤又はカルボジイミド系分散剤が挙げられる。より具体的には、高分子分散剤とは、主鎖がポリアミノ、ポリエーテル、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアクリレート等からなり、側鎖または主鎖末端にアミン、カルボン酸、リン酸、アミン塩、カルボン酸塩、リン酸塩等の極性基を有する高分子化合物のことをいう。極性基が顔料に吸着し、主鎖ポリマーの立体障害により顔料の分散が安定化される役割を果たす。
【0200】
分散剤は、アミン価のみを有する(高分子)分散剤、酸価のみを有する(高分子)分散剤、アミン価及び酸価を有する(高分子)分散剤、又は、アミン価も酸価も有さない(高分子)分散剤に分類されるが、アミン価及び酸価を有する(高分子)分散剤、アミン価のみを有する(高分子)分散剤が好ましく、アミン価のみを有する(高分子)分散剤がより好ましい。
【0201】
アミン価のみを有する高分子分散剤の具体例としては、例えば、DISPERBYK(登録商標)102,160,161,162,2163,164,2164,166,167,168,2000,2050,2150,2155,9075,9077,BYK-LP N6919,BYK-LP N21116もしくはBYK-LP N21234(以上、いずれもビックケミー社製)、EFKA(登録商標)4015,4020,4046,4047,4050,4055,4060,4080,4300,4330,4340,4400,4401,4402,4403もしくは4800(以上、いずれもBASF社製)、アジスパー(登録商標)PB711(味の素ファインテクノ社製)又はSOLSPERSE(登録商標)13240,13940,20000,71000又は76500(以上、いずれもルーブリゾール社製)が挙げられる。
【0202】
着色剤に対する分散剤の割合は、耐熱性を維持しながら分散安定性を向上させるため、1質量%以上が好ましく、3質量%以上がより好ましい。また100質量%以下が好ましく、50質量%以下がより好ましい。
【0203】
感光性樹脂組成物(I)は有機溶剤(G-I)を含有することが好ましい。有機溶剤(G-I)としては、例えば、エーテル類、アセテート類、エステル類、ケトン類、芳香族炭化水素類、アミド類又はアルコール類の化合物が挙げられる。
【0204】
より具体的には、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノ-n-プロピルエーテル、エチレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノ-n-プロピルエーテル、ジエチレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノ-n-プロピルエーテル、プロピレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノ-n-プロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールメチル-n-ブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテルもしくはテトラヒドロフラン等のエーテル類、ブチルアセテート、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3-メトキシブチルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、シクロヘキサノールアセテート、プロピレングリコールジアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート(以下、「PGMEA」)、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート、3-メトキシ-3-メチル-1-ブチルアセテート、1,4-ブタンジオールジアセテート、1,3-ブチレングリコールジアセテートもしくは1,6-ヘキサンジオールジアセテート等のアセテート類、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、2-ヘプタノンもしくは3-ヘプタノン等のケトン類、2-ヒドロキシプロピオン酸メチルもしくは2-ヒドロキシプロピオン酸エチル等の乳酸アルキルエステル類、2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオン酸エチル、3-メトキシプロピオン酸メチル、3-メトキシプロピオン酸エチル、3-エトキシプロピオン酸メチル、3-エトキシプロピオン酸エチル、エトキシ酢酸エチル、ヒドロキシ酢酸エチル、2-ヒドロキシ-3-メチルブタン酸メチル、3-メトキシブチルアセテート、3-メチル-3-メトキシブチルアセテート、3-メチル-3-メトキシブチルプロピオネート、酢酸エチル、酢酸n-プロピル、酢酸i-プロピル、酢酸n-ブチル、酢酸i-ブチル、蟻酸n-ペンチル、酢酸i-ペンチル、プロピオン酸n-ブチル、酪酸エチル、酪酸n-プロピル、酪酸i-プロピル、酪酸n-ブチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、ピルビン酸n-プロピル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチルもしくは2-オキソブタン酸エチル等の他のエステル類、トルエンもしくはキシレン等の芳香族炭化水素類、N-メチルピロリドン、N,N-ジメチルホルムアミドもしくはN,N-ジメチルアセトアミド等のアミド類、又は、ブチルアルコール、イソブチルアルコール、ペンタノ-ル、4-メチル-2-ペンタノール、3-メチル-2-ブタノール、3-メチル-3-メトキシブタノールもしくはジアセトンアルコール等のアルコール類が挙げられる。
【0205】
着色剤(F-I)として顔料を用いる場合、顔料を分散安定化させるため、有機溶剤(G-I)としてアセテート類の化合物を用いることが好ましい。感光性樹脂組成物(I)が含有する全ての有機溶剤(G-I)に占めるアセテート類の化合物の割合は、50質量%以上が好ましく、70質量%以上がより好ましい。また100質量%以下が好ましく、90質量%以下がより好ましい。
【0206】
前記溶剤の使用量は、必要とする膜厚や採用する塗布方法に応じて変更するため特に限定されないが、(B-I)成分の樹脂100質量部に対して、50~2000質量部が好ましく、特に100~1500質量部が好ましい。
【0207】
感光性樹脂組成物(I)は、必要に応じて基板との濡れ性を向上させる目的で界面活性剤、乳酸エチルやプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどのエステル類、エタノールなどのアルコール類、シクロヘキサノン、メチルイソブチルケトンなどのケトン類、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエ-テル類を含有してもよい。
【0208】
感光性樹脂組成物(I)は、密着改良剤を含有することができる。密着改良剤としては、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、エポキシシクロヘキシルエチルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、p-スチリルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシランなどのシランカップリング剤、チタンキレート剤、アルミキレート剤、芳香族アミン化合物とアルコキシ基含有ケイ素化合物を反応させて得られる化合物などが挙げられる。これらを2種以上含有してもよい。これらの密着改良剤を含有することにより、感光性樹脂膜を現像する場合などに、シリコンウェハー、ITO、SiO2、窒化ケイ素などの下地基材との密着性を高めることができる。また、洗浄などに用いられる酸素プラズマ、UVオゾン処理に対する耐性を高めることができる。密着改良剤の含有量は、(B-I)成分100質量部に対して、0.1質量部以上が好ましく、0.3質量部以上がより好ましい。また10質量部以下が好ましく、5質量部以下がより好ましい。
【0209】
感光性樹脂組成物(I)は、必要に応じて基板との濡れ性を向上させる目的で界面活性剤を含有してもよい。界面活性剤は市販の化合物を用いることができ、具体的にはシリコーン系界面活性剤としては、東レダウコーニングシリコーン社のSHシリーズ、SDシリーズ、STシリーズ、ビックケミー・ジャパン社のBYKシリーズ、信越シリコーン社のKPシリーズ、東芝シリコーン社のTSFシリーズなどが挙げられ、フッ素系界面活性剤としては、大日本インキ工業社の“メガファック(登録商標)”シリーズ、住友スリーエム社のフロラードシリーズ、旭硝子社の“サーフロン(登録商標)”シリーズ、“アサヒガード(登録商標)”シリーズ、新秋田化成社のEFシリーズ、オムノヴァ・ソルーション社のポリフォックスシリーズなどが挙げられ、アクリル系および/またはメタクリル系の重合物からなる界面活性剤としては、共栄社化学社のポリフローシリーズ、楠本化成社の“ディスパロン(登録商標)”シリーズなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0210】
界面活性剤の含有量は(B-I)成分100質量部に対して、0.001質量部以上が好ましく、0.002質量部以上がより好ましい。また1質量部以下が好ましく、0.5質量部以下がより好ましい。
【0211】
次に、感光性樹脂組成物(I)の製造方法について説明する。例えば、前記(A-I)~(E-I)成分を有機溶剤(G-I)に溶解させることにより、感光性樹脂組成物(I)を得ることができる。溶解方法としては、撹拌や加熱が挙げられる。加熱する場合、加熱温度は樹脂組成物の性能を損なわない範囲で設定することが好ましく、通常、室温~80℃である。また、各成分の溶解順序は特に限定されず、例えば、溶解性の低い化合物から順次溶解させる方法がある。
【0212】
得られた感光性樹脂組成物(I)は、濾過フィルターを用いて濾過し、ゴミや粒子を除去することが好ましい。フィルター孔径は、例えば0.5μm、0.2μm、0.1μm、0.05μmなどがあるが、これらに限定されない。濾過フィルターの材質には、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ナイロン(NY)、ポリテトラフルオロエチエレン(PTFE)などがあるが、ポリエチレンやナイロンを用いて濾過することが好ましい。
【0213】
次に、感光性樹脂組成物(I)を用いた硬化膜の製造方法について詳しく説明する。
【0214】
硬化膜の製造方法は、
(1)該感光性樹脂組成物(I)を基板に塗布し、感光性樹脂膜を形成する工程、
(2)該感光性樹脂膜を乾燥するプリベーク工程、
(3)乾燥した感光性樹脂膜にフォトマスクを介して化学線を照射する露光工程、
(4)露光した感光性樹脂膜を現像する現像工程および
(5)現像した感光性樹脂膜を加熱し硬化膜を形成する工程
をこの順に含む。
【0215】
感光性樹脂膜を形成する工程では、感光性樹脂組成物(I)をスピンコート法、スリットコート法、ディップコート法、スプレーコート法、印刷法などで塗布し、感光性樹脂組成物(I)の感光性樹脂膜を得る。塗布に先立ち、感光性樹脂組成物(I)を塗布する基材を予め前述した密着改良剤で前処理してもよい。例えば、密着改良剤をイソプロパノール、エタノール、メタノール、水、テトラヒドロフラン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、乳酸エチル、アジピン酸ジエチルなどの溶媒に0.5~20質量%溶解させた溶液を用いて、基材表面を処理する方法が挙げられる。基材表面の処理方法としては、スピンコート、スリットダイコート、バーコート、ディップコート、スプレーコート、蒸気処理などの方法が挙げられる。
【0216】
感光性樹脂膜を乾燥するプリベーク工程では、塗布した感光性樹脂膜を必要に応じて減圧乾燥処理を施し、その後、ホットプレート、オーブン、赤外線などを用いて、50℃~180℃の範囲で1分間~数時間の熱処理を施すことで乾燥した感光性樹脂膜を得る。
【0217】
次に、乾燥した感光性樹脂膜にフォトマスクを介して露光する工程について説明する。感光性樹脂膜上に所望のパターンを有するフォトマスクを通して化学線を照射する。露光に用いられる化学線としては紫外線、可視光線、電子線、X線などがあるが、本発明では水銀灯のi線(365nm)、h線(405nm)、g線(436nm)を用いることが好ましい。化学線を照射した後、露光後ベークをしても構わない。露光後ベークを行うことによって、現像後の解像度向上又は現像条件の許容幅増大などの効果が期待できる。露光後ベークは、オーブン、ホットプレート、赤外線、フラッシュアニール装置又はレーザーアニール装置などを使用することができる。露光後ベーク温度としては、50~180℃が好ましく、60~150℃がより好ましい。露光後ベーク時間は、10秒~数時間が好ましい。露光後ベーク時間が上記範囲内であると、反応が良好に進行し、現像時間を短くできる場合がある。
【0218】
露光した感光性樹脂膜を現像する現像工程では、露光した感光性樹脂膜を、現像液を用いて現像し、露光部以外を除去する。現像液としては、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、ジエタノールアミン、ジエチルアミノエタノール、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、トリエチルアミン、ジエチルアミン、メチルアミン、ジメチルアミン、酢酸ジメチルアミノエチル、ジメチルアミノエタノール、ジメチルアミノエチルメタクリレート、シクロヘキシルアミン、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンなどのアルカリ性を示す化合物の水溶液が好ましい。また場合によっては、これらのアルカリ水溶液にN-メチル-2-ピロリドン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、γ-ブチロラクトン、ジメチルアクリルアミドなどの極性溶媒、メタノール、エタノール、イソプロパノールなどのアルコール類、乳酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどのエステル類、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、イソブチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン類などを単独あるいは数種を組み合わせたものを添加してもよい。現像方式としては、スプレー、パドル、浸漬、超音波等の方式が可能である。
【0219】
次に、現像によって形成したパターンを蒸留水にてリンス処理をすることが好ましい。ここでもエタノール、イソプロピルアルコールなどのアルコール類、乳酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどのエステル類などを蒸留水に加えてリンス処理をしてもよい。
【0220】
次に現像した感光性樹脂膜を加熱処理する工程により硬化膜を得る。加熱処理により残留溶剤や耐熱性の低い成分を除去できるため、耐熱性および耐薬品性を向上させることができる。また、熱架橋剤(D-I)を含有する場合は、加熱処理により熱架橋反応を進行させることができ、耐熱性および耐薬品性を向上させることができる。この加熱処理は温度を選び、段階的に昇温するか、ある温度範囲を選び連続的に昇温しながら5分間~5時間実施する。一例としては、150℃、250℃で各30分ずつ熱処理する。あるいは室温より300℃まで2時間かけて直線的に昇温するなどの方法が挙げられる。本発明においての加熱処理条件としては180℃以上が好ましく、200℃以上がより好ましく、230℃以上がさらに好ましく、250℃以上が特に好ましい。また加熱処理条件は、400℃以下が好ましく、350℃以下がより好ましく、300℃以下がさらに好ましい。
【0221】
次に、感光性樹脂組成物(I)から形成した感光性シートを用いた硬化膜の製造方法について説明する。なお、ここで、感光性シートは剥離性基材上に感光性樹脂組成物(I)を塗布し、乾燥して得られたシートと定義する。
【0222】
感光性樹脂組成物(I)から形成した感光性シートを用いる場合、前記感光性シートに保護フィルムを有する場合にはこれを剥離し、感光性シートと基板を対向させ、熱圧着により貼り合わせて、感光性樹脂膜を得る。感光性シートは、感光性樹脂組成物(I)を剥離性基材であるポリエチレンテレフタラート等により構成される支持フィルム上に塗布、乾燥させて得ることができる。
【0223】
熱圧着は、熱プレス処理、熱ラミネート処理、熱真空ラミネート処理等によって行うことができる。貼り合わせ温度は、基板への密着性、埋め込み性の点から40℃以上が好ましい。また、感光性シートが感光性を有する場合、貼り合わせ時に感光性シートが硬化し、露光・現像工程におけるパターン形成の解像度が低下することを防ぐために、貼り合わせ温度は140℃以下が好ましい。
【0224】
感光性シートを基板に貼り合せて得られた感光性樹脂膜は、上述の感光性樹脂膜を露光する工程、露光された感光性樹脂膜を現像する工程、および、加熱硬化をする工程にならって硬化膜を形成することができる。
【0225】
感光性樹脂組成物(I)または感光性シートを硬化した硬化膜(以下、本発明の硬化膜の第二の態様という場合がある)は、有機EL表示装置や半導体装置、多層配線板等の電子部品に使用することができる。具体的には、有機EL素子の絶縁層、有機EL素子を用いた表示装置の駆動回路付き基板の平坦化層、半導体装置または半導体部品の再配線間の層間絶縁膜、半導体のパッシベーション膜、半導体素子の保護膜、高密度実装用多層配線の層間絶縁膜、回路基板の配線保護絶縁層、固体撮像素子のオンチップマイクロレンズや各種ディスプレイ・固体撮像素子用平坦化層などの用途に好適に用いられる。本発明の硬化膜の第二の態様を配置した表面保護膜や層間絶縁膜等を有する電子デバイスとしては、例えば、耐熱性の低いMRAMなどが挙げられる。すなわち、本発明の硬化膜の第二の態様は、MRAMの表面保護膜用として好適である。また、基板上に形成された第一電極と、前記第一電極に対向して設けられた第二電極とを含む表示装置、具体的には例えば、LCD、ECD、ELD、有機ELなどの表示装置の絶縁層に用いることができる。以下、有機EL表示装置を例に説明する。
【0226】
感光性樹脂組成物(I)の硬化膜を具備する有機EL表示装置は、基板上に、駆動回路、平坦化層、第1電極、絶縁層、発光層および第2電極を有し、該絶縁層が本発明の硬化膜の第二の態様からなる。アクティブマトリックス型の表示装置を例に挙げると、ガラスや樹脂フィルムなどの基板上に、TFTと、TFTの側方部に位置しTFTと接続された配線とを有し、その上に凹凸を覆うようにして平坦化層を有し、さらに平坦化層上に表示素子が設けられている。表示素子と配線とは、平坦化層に形成されたコンタクトホールを介して接続される。
【0227】
感光性樹脂組成物(I)の硬化膜を具備する有機EL表示装置は、好ましくは該硬化膜に囲まれた画素内の少なくとも一部をインクジェット方式により形成する製造方法を用いる場合に好適に使用される。感光性樹脂組成物(I)または感光性樹脂シートを硬化した硬化膜を用いることで、撥液性を有し、インクジェット方式に用いられる吐出液が、隣接する画素内への浸入を防ぐことで、表示不良の発生が少なく、耐久性に優れた有機EL表示装置を得ることができる。
【実施例】
【0228】
以下、実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。なお、実施例15、実施例27はそれぞれ、参考例15、参考例27とする。まず、測定方法および評価方法について説明する。
【0229】
(1)平均分子量測定
実施例で用いた(a1)~(a8)および(c1)~(c2)の分子量は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)装置Waters2690-996(日本ウォーターズ(株)製)を用い、展開溶媒をテトラヒドロフラン(以降THFと呼ぶ)として測定し、ポリスチレン換算で重量平均分子量(Mw)を算出した。
【0230】
また、実施例で用いた(b1)~(b4)の分子量は、上述のGPC装置を用い、展開溶媒をN-メチル-2-ピロリドン(以降NMPと呼ぶ)として測定し、ポリスチレン換算で数平均分子量(Mn)を算出した。
【0231】
(2)膜厚測定
表面粗さ・輪郭形状測定機(SURFCOM1400D;(株)東京精密)を用いて、測定倍率を10,000倍、測定長さを1.0mm、測定速度を0.30mm/sとして、プリベーク後、現像後および硬化後の膜厚を測定した。
【0232】
(3)接触角の評価
接触角の測定には、後述の方法で基板上に形成された隔壁パターン上に、1μLのプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(以降PGMEAと呼ぶ)を滴下し接触角を測定した。測定には、接触角測定装置DMs-401(協和界面科学社製)を用いて、JIS-R3257に準拠し、23℃で静滴法にて測定した。
【0233】
硬化膜上のPGMEA接触角の測定結果を下記のように判定し、接触角が60°以上
(A+)、接触角が50°以上60°未満(A)および、接触角が40°以上50°未満(B)を優秀、接触角が30°以上40°未満(C)を良好とし、接触角が30°未満(D)を不良とした。
A+:接触角が60°以上
A:接触角が50°以上60°未満
B:接触角が40°以上50°未満
C:接触角が30°以上40°未満
D:接触角が30°未満。
【0234】
(4)開口部のインク濡れ性評価
後術する隔壁パターン5を形成した基板を用いて、正孔注入層として、安息香酸メチルを溶媒とした化合物(HT-1)のインキを、インクジェット装置(ULVAC社製Litlex142)を用いて、隔壁に囲まれた領域に滴下する際に、開口部全体に塗布するために必要なインクの液滴数をカウントした。この評価で用いたインクの1滴当たりの体積は15plであった。
【0235】
(5)表示不良発生率の評価
後述の方法で作製した有機EL表示装置を、10mA/cm2で直流駆動にて発光させ、画素の中心部に非発光領域などの表示不良がないかを観察し、20個の有機EL表示装置のうち、正常に発光する個数から表示不良発生率を算出した。
【0236】
下記のように判定し、表示不良発生率が30%以上40%未満(C)を合格、表示不良発生率が20%以上30%未満(B)を良好とし、表示不良発生率が20%未満(AおよびA+)を優秀とした。
A+:表示不良発生率が0%以上10%未満
A:表示不良発生率が10%以上20%未満
B:表示不良発生率が20%以上30%未満
C:表示不良発生率が30%以上40%未満
D:表示不良発生率が40%以上70%未満
E:表示不良発生率が70%以上100%未満
(6)耐久性の評価
後述の方法で作製した有機EL表示装置を、80℃で100時間保持した後、10mA/cm2で直流駆動にて発光させ、画素の中心部に非発光領域などの表示不良がないかを観察し、前記と同様に表示不良発生率を算出し、耐久性を判定した。
A+:表示不良発生率が0%以上10%未満
A:表示不良発生率が10%以上20%未満
B:表示不良発生率が20%以上30%未満
C:表示不良発生率が30%以上40%未満
D:表示不良発生率が40%以上70%未満
E:表示不良発生率が70%以上100%未満
実施例および比較例で用いた化合物について以下に示す。
【0237】
合成例1 化合物(A-I)および、撥液材(A)の合成
撹拌装置、還流冷却管、滴下ロート、温度計及び窒素ガス吹き込み口を備えた1000mLの反応容器に、シクロヘキサノンを100質量部加えて、窒素ガス雰囲気下で110℃に昇温した。シクロヘキサノンの温度を110℃に維持し、表1に示すモノマー混合溶液を滴下ロートにより2時間で等速滴下して、各モノマー溶液を調製した。滴下終了後、モノマー溶液を、115℃まで昇温させ、2時間反応させて共重合物(a1)~(a9)を得た。GPCを用いて重量平均分子量を求めた。その結果を表1に示す。
表1中の略称を下記に示す。
DMAA:N,N-ジメチルアクリルアミド
FAMAC-6:2-(パーフルオロヘキシル)エチルメタクリレート
GMA:グリシジルメタクリレート
カレンズMOI-BM:メタクリル酸2-(0-[1’-メチルプロピリデンアミノ]カルボキシアミノ)エチル
【0238】
【0239】
合成例2 ヒドロキシル基含有ジアミン化合物の合成
2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン(以降BAHFと呼ぶ)18.3g(0.05モル)をアセトン100mL、プロピレンオキシド17.4g(0.3モル)に溶解させ、-15℃に冷却した。ここに3-ニトロベンゾイルクロリド20.4g(0.11モル)をアセトン100mLに溶解させた溶液を滴下した。滴下終了後、-15℃で4時間反応させ、その後室温に戻した。析出した白色固体をろ別し、50℃で真空乾燥した。
【0240】
固体30gを300mLのステンレスオートクレーブに入れ、メチルセロソルブ250mLに分散させ、5%パラジウム-炭素を2g加えた。ここに水素を風船で導入して、還元反応を室温で行なった。約2時間後、風船がこれ以上しぼまないことを確認して反応を終了させた。反応終了後、濾過して触媒であるパラジウム化合物を除き、ロータリーエバポレーターで濃縮し、下記式で表されるヒドロキシル基含有ジアミン化合物を得た。
【0241】
【0242】
合成例3 アルカリ可溶性樹脂(b1)の合成
乾燥窒素気流下、3,3’,4,4’-ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物(以降ODPAと呼ぶ)62.0g(0.20モル)をN-メチル-2-ピロリドン(以降NMPと呼ぶ)500gに溶解させた。ここに合成例2で得られたヒドロキシル基含有ジアミン化合物96.7g(0.16モル)をNMP100gとともに加えて、20℃で1時間反応させ、次いで50℃で2時間反応させた。次に末端封止剤として3-アミノフェノール8.7g(0.08モル)をNMP50gとともに加え、50℃で2時間反応させた。その後、N,N-ジメチルホルムアミドジメチルアセタール47.7g(0.40モル)を投入した。投入後、50℃で3時間撹拌した。撹拌終了後、溶液を室温まで冷却した後、溶液を水5Lに投入して白色沈殿を得た。この沈殿を濾過で集めて、水で3回洗浄した後、80℃の真空乾燥機で24時間乾燥し、目的のポリイミド前駆体(b1)を得た。ポリイミド前駆体(b1)の数平均分子量は11000であった。
【0243】
合成例4 アルカリ可溶性樹脂(b2)の合成
乾燥窒素気流下、BAHF58.6g(0.16モル)、末端封止剤として3-アミノフェノール8.7g(0.08モル)をN-メチル-2-ピロリドン(NMP)300gに溶解した。ここにODPA62.0g(0.20モル)をNMP100gとともに加えて、20℃で1時間撹拌し、次いで50℃で4時間撹拌した。その後、キシレンを15g添加し、水をキシレンとともに共沸しながら、150℃で5時間撹拌した。撹拌終了後、溶液を水5Lに投入して白色沈殿を集めた。この沈殿をろ過で集めて、水で3回洗浄した後、80℃の真空乾燥機で24時間乾燥し、目的のポリイミド(b2)を得た。ポリイミド(b2)の数平均分子量は8200であった。
【0244】
合成例5 アルカリ可溶性樹脂(b3)の合成
乾燥窒素気流下、ジフェニルエーテル-4,4’-ジカルボン酸41.3g(0.16モル)、と1-ヒドロキシ-1,2,3-ベンゾトリアゾール43.2g(0.32モル)とを反応させて得られたジカルボン酸誘導体の混合物0.16モルとBAHF73.3g(0.20モル)をNMP570gに溶解させ、その後75℃で12時間反応させた。次にNMP70gに溶解させた5-ノルボルネン-2,3-ジカルボン酸無水物13.1g(0.08モル)を加え、更に12時間攪拌して反応を終了した。反応混合物を濾過した後、反応混合物を水/メタノール=3/1(容積比)の溶液に投入して白色沈殿を得た。この沈殿を濾過で集めて、水で3回洗浄した後、80℃の真空乾燥機で24時間乾燥し、目的のポリベンゾオキサゾール(PBO)前駆体(b3)を得た。PBO前駆体(b3)の数平均分子量は8500であった。
【0245】
合成例6 アルカリ可溶性樹脂(b4)の合成
公知の方法(特許第3120476号;実施例1)により、メチルメタクリレート/メタクリル酸/スチレン共重合体(質量比30/40/30)を合成した。該共重合体100質量部に対し、グリシジルメタクリレート40質量部を付加させ、精製水で再沈、濾過及び乾燥することにより、数平均分子量10000、酸価110(mgKOH/g)のラジカル重合性モノマーを含む重合体であるアクリル樹脂(b4)を得た。
【0246】
合成例7 フェノール樹脂(c1)の合成
乾燥窒素気流下、m-クレゾール108.0g(1.00モル)、37質量%ホルムアルデヒド水溶液75.5g(ホルムアルデヒド0.93モル)、シュウ酸二水和物0.63g(0.005モル)、メチルイソブチルケトン264gを仕込んだ後、油浴中に浸し、反応液を還流させながら、4時間重縮合反応を行った。その後、油浴の温度を3時間かけて昇温し、その後に、フラスコ内の圧力を4.0kPa~6.7kPaまで減圧し、揮発分を除去し、溶解している樹脂を室温まで冷却して、ノボラック型フェノール樹脂(c1)を得た。GPCから重量平均分子量は3,500であった。
【0247】
合成例8 キノンジアジド化合物(e2)の合成
乾燥窒素気流下、TrisP-PA(商品名、本州化学工業(株)製)21.22g(0.05モル)と5-ナフトキノンジアジドスルホニル酸クロリド36.27g(0.135モル)を1,4-ジオキサン450gに溶解させ、室温にした。ここに、1,4-ジオキサン50gと混合したトリエチルアミン15.18gを、系内が35℃以上にならないように滴下した。滴下後30℃で2時間撹拌した。トリエチルアミン塩を濾過し、ろ液を水に投入した。その後、析出した沈殿をろ過で集めた。この沈殿を真空乾燥機で乾燥させ、下記式で表されるキノンジアジド化合物(e2)を得た。
【0248】
【0249】
以下に、実施例で用いた成分の略称を示す。
<(A)撥液材>
“メガファック(登録商標)”RS-72-K(ウレタン基および一般式(13)で表される構造を有する化合物として下記化学式の重合体を含む撥液材、DIC(株)製))
【0250】
【0251】
<(D-I)および(D)熱架橋剤>
HMOM-TPHAP;(フェノール性水酸基を有し、かつ前記フェノール性水酸基の両オルト位に分子量40以上の置換基を有する、下記化学式に示す化合物、本州化学工業(株)製)
【0252】
【0253】
VG3101L;“テクモア”(登録商標)VG3101L(下記化学式に示す化合物、(株)プリンテック製)。
【0254】
【0255】
<溶剤>
PGMEA:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
PGME;プロピレングリコールモノメチルエーテル
GBL;γ-ブチロラクトン。
【0256】
実施例1~27、比較例1~7
図2に、評価に使用する基板の概略図を示す。まず、38×46mmの無アルカリガラス板1に、スパッタ法により、ITO透明導電膜10nmを無アルカリガラス板全面に形成し、第一電極2としてエッチングした。また、第二電極を取り出すため補助電極3も同時に形成した。得られた基板を“セミコクリーン”(登録商標)56(フルウチ化学(株)製)で10分間超音波洗浄してから超純水で洗浄し、乾燥して基板とした。
【0257】
次に、黄色灯下、表2および表3に示す配合比で各成分を混合し、室温にて十分攪拌を行い溶解させた。その後、得られた溶液を孔径1μmのフィルターでろ過し、感光性樹脂組成物W1~W34を得た。得られた感光性樹脂組成物を用い、この基板上に、スピンコート法により塗布し、120℃のホットプレート上で4分間プリベークして乾燥塗膜を形成した後、所定のパターンを有するフォトマスクを介してパターンニング露光した後、2.38%TMAH水溶液で60秒間または120秒間現像し、不要な部分を溶解させた後、純水でリンスし、基板上に幅70μm及び長さ260μmの開口部が中央に一カ所配置された隔壁パターン4を作成したものと、同様にして基板上に幅70μm及び長さ260μmの開口部が、幅方向にピッチ155μm及び長さ方向にピッチ465μmで配置され、それぞれの開口部が第一電極を露出せしめる形状の隔壁パターン5を形成したものをそれぞれ作成した。
【0258】
次に、開口部が中央に一カ所配置された隔壁パターン4、および、隔壁パターン5を形成した基板を、250℃でクリーンオーブン(光洋サーモシステム(株)社製)を用いて、窒素雰囲気下で1時間加熱して硬化させ、開口部が中央に一カ所配置された隔壁パターン4を形成した基板を用いて、(3)接触角の評価を行った。その結果を表4および表5に示す。
【0259】
次に、2.38%TMAH水溶液で60秒間現像し、隔壁パターン5を形成した基板を用いて、正孔注入層として、安息香酸メチルを溶媒とした化合物(HT-1)のインキを、インクジェット装置(ULVAC社製Litlex142)を用いて、隔壁に囲まれた領域に滴下し、(4)開口部のインク濡れ性評価を実施した。その後、200℃で焼成し、正孔注入層を形成した。次に、正孔輸送層として、4-メトキシトルエンを溶媒とした化合物(HT-2)を、インクジェット装置を用いて、隔壁に囲まれた領域に滴下したのち、190℃で焼成し、正孔輸送層を形成した。さらに、発光層として、4-メトキシトルエンを溶媒とした化合物(GH-1)と化合物(GD-1)の混合物を、インクジェット装置を用いて、隔壁に囲まれた領域に滴下したのち、130℃で焼成し、発光層を形成した。その後、電子輸送材料として、化合物(ET-1)と化合物(LiQ)を、体積比1:1で真空蒸着法によって順次積層し、有機EL層6を形成した。次に、化合物(LiQ)を2nm蒸着した後、MgとAgを体積比10:1で10nm蒸着して第二電極7とした。最後に、低湿窒素雰囲気下でエポキシ樹脂系接着剤を用いてキャップ状ガラス板を接着することで封止し、1枚の基板上に5mm四方の発光装置を4つ作製した。
【0260】
【0261】
上述の方法で作製した有機EL表示装置を10mA/cm2で直流駆動にて発光させ、(5)表示不良発生率の評価を行った。さらに、80℃で100時間保持し、再び10mA/cm2で直流駆動にて発光させ、発光特性に変化がないか確認する(6)耐久性の評価を実施した結果を表4および表5に示す。
【0262】
このように、表示不良の発生が少なく、加速条件での耐久性試験後でも発光素子としての性能が維持される、高い耐久性を持つ有機EL発光素子であることが確認された。
【0263】
【0264】
【0265】
【0266】
【0267】
実施例28~34
図2に、評価に使用する基板の概略図を示す。まず、38×46mmの無アルカリガラス板1に、スパッタ法により、ITO透明導電膜10nmを無アルカリガラス板全面に形成し、第一電極2としてエッチングした。また、第二電極を取り出すため補助電極3も同時に形成した。得られた基板を“セミコクリーン”(登録商標)56(フルウチ化学(株)製)で10分間超音波洗浄してから超純水で洗浄し、乾燥して基板とした。
【0268】
次に、感光性樹脂組成物W21を用い、この基板上に、スピンコート法により塗布し、120℃のホットプレート上で4分間プリベークして乾燥塗膜を形成した。その後、所定のパターンを有するフォトマスクを介してパターンニング露光した。この際、「ハーフ露光」により、横断面が台形状の第1隔壁部と、該第1隔壁部の上部に横断面が台形状の第2隔壁部とを有する段差形状であり、該基板と垂直方向に割断した面において、該第1隔壁部の上面の幅をA、該第2隔壁部の底面の幅をBとした場合、A>Bの関係を満たす段差形状になるように、露光を行った。
【0269】
次に、2.38%TMAH水溶液で60秒間現像し、不要な部分を溶解させた後、純水でリンスし、基板上に幅70μm及び長さ260μmの開口部が、幅方向にピッチ155μm及び長さ方向にピッチ465μmで配置され、それぞれの開口部が第一電極を露出せしめる形状の隔壁パターン5を形成したものを2枚ずつ作成した。作成した隔壁の膜厚を表6に示す。
【0270】
次に、隔壁パターン5を形成した基板を用いて、正孔注入層として、安息香酸メチルを溶媒とした化合物(HT-1)のインキを、インクジェット装置(ULVAC社製Litlex142)を用いて、隔壁に囲まれた領域に滴下した。この際に、開口部外へのインク漏れの有無を確認し、下記の様に評価した。
【0271】
A:インク漏れ無し
B:インク漏れあり
次に、200℃で焼成し、正孔注入層を形成した。その後、1枚目の基板を用いて開口部の横断面をSEM観察し、正孔注入層端部の位置を確認した。下記の様に評価した。
【0272】
A:正孔注入層端部が第2隔壁部側面上にある。
【0273】
B:正孔注入層端部が第1隔壁部側面上にある。
【0274】
次に、もう一方の基板に正孔輸送層として、4-メトキシトルエンを溶媒とした化合物(HT-2)を、インクジェット装置を用いて、隔壁に囲まれた領域に滴下したのち、190℃で焼成し、正孔輸送層を形成した。さらに、発光層として、4-メトキシトルエンを溶媒とした化合物(GH-1)と化合物(GD-1)の混合物を、インクジェット装置を用いて、隔壁に囲まれた領域に滴下したのち、130℃で焼成し、発光層を形成した。その後、電子輸送材料として、化合物(ET-1)と化合物(LiQ)を、体積比1:1で真空蒸着法によって順次積層し、有機EL層6を形成した。次に、化合物(LiQ)を2nm蒸着した後、MgとAgを体積比10:1で10nm蒸着して第二電極7とした。最後に、低湿窒素雰囲気下でエポキシ樹脂系接着剤を用いてキャップ状ガラス板を接着することで封止し、1枚の基板上に5mm四方の発光装置を4つ作製した。
【0275】
上述の方法で作製した有機EL表示装置を10mA/cm2で直流駆動にて発光させ、画素の中心部と外周部を比較し、画素内の輝度ムラの有無を観察し、評価を行った。
【0276】
A:画素の中心部と外周部を比較して、表示不良なし。
【0277】
B:画素の中心部と外周部を比較して、表示不良あり。
【0278】
【符号の説明】
【0279】
1 無アルカリガラス板
2 第一電極
3 補助電極
4 開口部が中央に一カ所配置された隔壁パターン
5 隔壁パターン
6 有機EL層
7 第二電極
8 基板
9 第一隔壁部
10 第二隔壁部
11 機能層
12 機能層端部