(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-20
(45)【発行日】2023-09-28
(54)【発明の名称】断熱パネル
(51)【国際特許分類】
E04B 2/74 20060101AFI20230921BHJP
E04B 1/76 20060101ALI20230921BHJP
【FI】
E04B2/74 551F
E04B1/76 500F
(21)【出願番号】P 2020009346
(22)【出願日】2020-01-23
【審査請求日】2022-07-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000198787
【氏名又は名称】積水ハウス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100168321
【氏名又は名称】山本 敦
(72)【発明者】
【氏名】湯 正明
(72)【発明者】
【氏名】東 忠雄
(72)【発明者】
【氏名】漆原 慎
【審査官】伊藤 昭治
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-266417(JP,A)
【文献】特開2017-008597(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/62 - 1/99
E04B 2/72 - 2/82
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外壁パネルの内側に設けられる断熱パネルであって、
4本の桟と、前記桟によって囲まれた開口部と、を有する枠体と、
前記開口部内に充填された第1の断熱材と、
前記枠体の一方の面に前記開口部を覆うように設けられた第1の防湿シートと、
前記第1の断熱材との間で前記第1の防湿シートを挟んだ状態で前記枠体に固定され、前記第1の断熱材よりも硬質の第2の断熱材と、を備え、
前記4本の桟のうちの1本である第1の桟は、前記第1の桟を挟んで前記開口部側の領域と前記開口部と反対側の領域とを連通するように前記第1の桟を貫く連通部を有する、断熱パネル。
【請求項2】
前記断熱パネルは、前記第1の防湿シートとの間で前記第1の断熱材を挟んだ状態で前記枠体の他方の面に設けられた第2の防湿シートを有する、請求項1に記載の断熱パネル。
【請求項3】
前記枠体は、前記第1の桟と平行に配置されるように前記桟のうちの前記第1の桟以外の2本の桟に架け渡されており、天井下地材を取り付け可能な被固定部をさらに有し、
前記被固定部は、前記第1の防湿シートとの間に隙間が形成されるように、前記第1の防湿シートと前記第2の防湿シートとの間に設けられている、請求項2に記載の断熱パネル。
【請求項4】
前記桟は、前記断熱パネルと隣接して配置される他の断熱パネルと対向する対向面を有し、
前記桟の前記第2の断熱材と接する部分および前記第2の断熱材の前記桟と接する部分の少なくとも一方は、前記対向面よりも前記開口部側に位置する退避面を有している、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の断熱パネル。
【請求項5】
前記第2の断熱材は、前記退避面よりも前記桟から離れた部分から、前記対向面よりも前記開口部と反対側の位置まで延びるとともに、弾性および断熱性を有する延伸部を有している、請求項4に記載の断熱パネル。
【請求項6】
前記連通部は、前記第1の桟の前記第1の防湿シート側の端面よりも離れた位置に位置する、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の断熱パネル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、断熱パネルに関する。
【背景技術】
【0002】
建造物の内部における居住性を高めるため、壁部材に断熱材を設け、建造物の内部を外部から断熱することが行われている。例えば、特許文献1には、枠体(内壁下地枠)と当該枠体の開口部に充填された第1の断熱材とを有する断熱パネルと、当該断熱パネルの外側に設けられたグラスウール等の軟質の繊維系断熱材からなる第2の断熱材と、当該断熱パネルと当該第2の断熱材との間に設けられた防湿シートと、を有する壁構造を備える建造物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の記載の建造物において、小屋裏等、室外から室内に配線等の設備(以下、単に「配線等」ともいう。)を導く場合、枠体と防湿シートとの隙間に配線等を配置することによって、防湿シートを破ることなく配線等を室外から室内に導くことができる。
【0005】
しかし、このとき、第1の断熱材に対し、その厚み方向に配線等を貫通させなければならず、断熱パネルに内外方向に延びる孔を形成することにより断熱性が低下するという問題があった。
【0006】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであり、配線等による断熱性の低下を抑制することが可能な断熱パネルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、種々検討した結果、上記目的は、以下の発明により達成されることを見出した。
【0008】
本発明の一局面に係る断熱パネルは、外壁パネルの内側に設けられる断熱パネルであって、4本の桟と、前記桟によって囲まれた開口部と、を有する枠体と、前記開口部内に充填された第1の断熱材と、前記枠体の一方の面に前記開口部を覆うように設けられた第1の防湿シートと、前記第1の断熱材との間で前記第1の防湿シートを挟んだ状態で前記枠体に固定され、前記第1の断熱材よりも硬質の第2の断熱材と、を備え、前記4本の桟のうちの1本である第1の桟は、前記第1の桟を挟んで前記開口部側の領域と前記開口部と反対側の領域とを連通するように前記第1の桟を貫く連通部を有する。
【0009】
上記の断熱パネルでは、軟質の断熱材に比べて断熱性に優れた硬質の第2の断熱材が外側に設けられており、断熱性が確保されている。また、配線等を枠体の第1の桟に設けられた連通部を通じて枠体内に導くことができるため、第1の防湿シートと配線等との間に第1の断熱材が位置するように配線等を配置することが可能であり、配線等が第1の断熱材を貫通することによる断熱性の低下を抑制することができる。
【0010】
上記の断熱パネルにおいて、前記断熱パネルは、前記第1の防湿シートとの間で前記第1の断熱材を挟んだ状態で前記枠体の他方の面に設けられた第2の防湿シートを有していてもよい。
【0011】
この態様では、上記の断熱パネルを、例えば第1の防湿シートが室外側、第2の防湿シートが室内側となるように設けた建造物において、夏季のように建造物の外部の温度および湿度が建造物1の室内の温度および湿度よりも高い場合には、第1の防湿シートにより、建造物の外部から第1の断熱材、枠体および第2の防湿シートへの湿度の高い空気の流入が抑制される。
【0012】
これにより、夏季において、室内の温度の影響によって第1の断熱材、枠体および第2の防湿シートが冷却されても、第1の防湿シートによってこれらの部材の周囲での湿度の上昇が抑制されている。そのため、第1の断熱材、枠体および第2の防湿シートにおける結露の発生が抑制される。
【0013】
一方、冬季のように建造物の室内の温度および湿度が建造物の外部の温度および湿度よりも高い場合には、第2の防湿シートにより、建造物の室内から第1の断熱材、枠体、第1の防湿シートおよび第2の断熱材への湿度の高い空気の流入が抑制される。第2の断熱材については、第1の防湿シートによっても室内からの湿度の高い空気の流入が抑制される。
【0014】
これにより、冬季において、外部の温度の影響によって第1の断熱材、枠体、第1の防湿シートおよび第2の断熱材が冷却されても、第2の防湿シートによってこれらの部材の周囲での湿度の上昇が抑制されている。そのため、第1の断熱材、枠体、第1の防湿シートおよび第2の断熱材における結露の発生が抑制される。第2の断熱材については、第1の防湿シートによっても結露の発生が抑制される。
【0015】
上記の断熱パネルにおいて、前記枠体は、前記第1の桟と平行に配置されるように前記桟のうちの前記第1の桟以外の2本の桟に架け渡されており、天井下地材を取り付け可能な被固定部をさらに有し、前記被固定部は、前記第1の防湿シートとの間に隙間が形成されるように、前記第1の防湿シートと前記第2の防湿シートとの間に設けられていてもよい。
【0016】
この態様では、被固定部が設けられているため、断熱パネルに天井下地材を固定することができる。また、被固定部と、第1の防湿シートとの間には、隙間が形成されているため、第1の桟に設けられた連通部から導入された配線等を、第1の防湿シートに沿って、連通部から第1の防湿シートと被固定部との隙間を通じて開口部の内部まで容易に導くことができる。
【0017】
上記の断熱パネルにおいて、前記桟は、前記断熱パネルと隣接して配置される他の断熱パネルと対向する対向面を有し、前記桟の前記第2の断熱材と接する部分および前記第2の断熱材の前記桟と接する部分の少なくとも一方は、前記対向面よりも前記開口部側に位置する退避面を有していてもよい。
【0018】
第2の断熱材の側端面を桟の対向面と同一平面上に配置されるように設けた場合、断熱パネルを他の断熱パネルと対向面同士が接するように隣接して配置することにより、第2の断熱材同士が接触し、第2の断熱材の断熱性が向上する。しかし、この場合、断熱パネルの側端面の厚さ方向には指を掛けることが難しい。そのため、断熱パネルを厚さ方向に掴みにくく、持ち上げたり、移動させたりすることが困難となり、断熱パネルの施工が困難となる。そこで、この態様では、桟および第2の断熱材の少なくとも一方に退避面を設け、当該退避面の臨む空間に指を入れて桟を厚さ方向に掴むことができるため、断熱パネルの施工を容易とすることができる。
【0019】
上記の断熱パネルにおいて、前記第2の断熱材は、前記退避面よりも前記桟から離れた部分から、前記対向面よりも前記開口部と反対側の位置まで延びるとともに、弾性および断熱性を有する延伸部を有していてもよい。
【0020】
第2の断熱材に退避面を設けた場合、断熱パネルを他の断熱パネルと対向面同士が接するように隣接して配置しても、第2の断熱材同士の間に退避面の臨む空間に相当する隙間が生じるため、第2の断熱材の断熱性が低下する。しかし、この態様では、第2の断熱材に延伸部を設けることにより、隣接する断熱パネルの第2の断熱材は延伸部同士で密着するため、退避面を設けることによる断熱パネルの断熱性の低下を抑制することができる。
【0021】
上記の断熱パネルにおいて、前記連通部は、前記第1の桟の前記第1の防湿シート側の端面よりも離れた位置に位置してもよい。
【0022】
この態様では、配線等を、枠体の開口部に導入した位置から、第1の断熱材の第1の防湿シート側の端面よりも内部の位置に配線することが可能となり、配線等から室外側に第1の断熱材を厚くすることができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、配線等による断熱性の低下を抑制することが可能な断熱パネルを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係る断熱パネルの分解斜視図である。
【
図2】
図2は、本発明の一実施形態に係る断熱パネルの右端部分の平面図である。
【
図3】
図3は、
図2のIII-III線に相当する部分での断面図である。
【
図4】
図4は、本発明の一実施形態に係る断熱パネルの枠体の正面図である。
【
図5】
図5は、本発明の一実施形態に係る断熱パネルの枠体の右上隅部分の正面図である。
【
図6】
図6は、本発明の一実施形態に係る断熱パネルを備える建造物の1階とその周辺部分の縦断面図である。
【
図7】
図7は、
図6のVII-VII線に相当する部分での断面図である。
【
図8】
図8は、本実施形態の一実施形態の変型例に係る断熱パネルの部分平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の一実施形態に係る断熱パネルについて図面に基づいて説明する。
【0026】
(断熱パネルの構成)
図1は、本実施形態に係る断熱パネルの分解斜視図である。
図2は当該断熱パネルの右端部分の平面図であり、
図3は
図2のIII-III線に相当する部分での断面図である。
図4は本実施形態に係る断熱パネルの枠体の正面図であり、
図5は当該枠体の右上隅部分の正面図である。
【0027】
本実施形態に係る断熱パネル10は、4本の桟(2本の縦桟11a、上桟11bおよび下桟11c)とこれらの桟によって囲まれた開口部11eとを有する枠体11と、開口部11e内に充填された第1の断熱材12と、枠体11の一方の面に開口部11eを覆うように設けられた第1の防湿シート13と、第1の断熱材12との間で第1の防湿シートを挟んだ状態で枠体11に固定され、第1の断熱材12よりも硬質の第2の断熱材15と、を備える。さらに、断熱パネル10は、第1の防湿シート13との間で第1の断熱材12を挟んだ状態で枠体11の他方の面に設けられた第2の防湿シート14を有する。
【0028】
枠体11は、
図4に示すように、上下方向に延びる2本の縦桟11aと、2本の縦桟11aの上端同士を接続する上桟11b(第1の桟)と、2本の縦桟11aの下端同士を接続する下桟11cと、2本の縦桟11aを上桟11bと下桟11cとの間で接続する5本の中桟11dと、を有する。複数の2本の縦桟11aと上桟11bおよび下桟11cは、開口部11eを形成し、開口部11eは、中桟11dによって6つの領域に区画されている。縦桟11a、上桟11b、下桟11cおよび中桟11dは同じ厚さであり、枠体11の第1の防湿シート13側の面においても、第2の防湿シート14側の面においても、縦桟11a、上桟11b、下桟11cおよび中桟11dは同一平面上に位置する。
【0029】
第1の断熱材12は、グラスウール等からなる断熱材であり、開口部11eの各領域に充填されている。
【0030】
第1の防湿シート13および第2の防湿シート14は、いずれも防湿性を有するフィルムからなる。第1の防湿シート13および第2の防湿シート14は、例えば粘着剤によって枠体11に固定されている。また、第1の防湿シート13の全面に接着剤からなる接着層を設け、当該接着層によって第1の防湿シート13を枠体11に固定するとともに第1の防湿シート13と第1の断熱材12とを接着してもよい。さらに、第2の防湿シート14には粘着剤および接着剤を設けず、枠体11の表面に再剥離可能な粘着剤を設け、当該粘着剤によって第2の防湿シート14を枠体11に固定してもよい。これにより、後述する
図6に記載の配線8を枠体11内の第1の断熱材12の内部に導入する等の目的で第2の防湿シート14を枠体11から剥がす際に、第2の防湿シート14および第1の断熱材12の破損を抑制することができる。また、第1の断熱材12と第1の防湿シート13とは接着されているため、第2の防湿シート14を剥がしても第1の断熱材12の枠体11からの脱落を抑制することができる。
【0031】
第2の断熱材15は、第1の防湿シート13を外側から覆う第1層15aと、第1の防湿シート13との間で第1層15aを挟むように設けられた第2層15bと、を有する。第1層15aは、第1の固定部材17によって枠体11に固定されており、第1層15aは、第2の固定部材18によってと第2層15bに固定されている。第1層15aおよび第2層15bは、成型されたポリウレタンフォーム等からなる板状の断熱材であり、第1の断熱材12よりも硬質の断熱材である。
【0032】
本実施形態に係る断熱パネル10において、開口部11eを形成する4本の桟のうちの1本である上桟11bは、上桟11bを挟んで開口部11e側の領域と、開口部11eと反対側の領域とを連通するように上桟11bを貫く2つの連通部11b1を有する。連通部11b1は、上桟11bの第1の防湿シート13側の端面および第2の防湿シート14側の端面から離れた位置に位置している(
図1~
図3参照)。
【0033】
複数の中桟11dも、それぞれ中桟11dを挟んで開口部11eの一方側の領域と、反対側の領域とを連通するように中桟11dを貫く連通部11d1を有する。それぞれの中桟11dの連通部11d1は、中桟11dの第1の防湿シート13側の端面および第2の防湿シート14側の端面から離れた位置に位置している。断熱パネル10を上から見て、それぞれの中桟11dの連通部11d1は、上桟11bの連通部11b1と同じ位置に設けられている(
図1、
図3および
図4参照)。
【0034】
本実施形態に係る断熱パネル10において、枠体11は、天井下地材を取り付け可能な被固定部11fをさらに有する。被固定部11fは、開口部11eを形成する4本の桟のうちの上桟11b以外の2本の桟(縦桟11a)に架け渡されており、第1の防湿シート13との間に隙間11f3が形成されるように、第1の防湿シート13と第2の防湿シート14との間に設けられている(
図1および
図3参照)。
【0035】
被固定部11fは、上桟11bの下方に設けられた第1部材11f1と、上桟11bと第1部材11f1との隙間を塞ぐように設けられた合板等からなる第2部材11f2と、を有する(
図3および
図4参照)。
【0036】
本実施形態に係る断熱パネル10において、縦桟11aは、
図2に示すように、断熱パネル10に隣接して配置される他の断熱パネル10と対向する対向面10aを有している。第2の断熱材15の縦桟11aの接する部分は、対向面10aよりも開口部11e側に位置する退避面10bを有している。
【0037】
さらに、第2の断熱材15は、退避面10bよりも縦桟11aから離れた部分から、対向面10aよりも開口部11eと反対側の位置まで延びる延伸部16を有している。延伸部16は、連続気泡ポリエチレンフォーム等からなる板状の断熱材であり、弾性および断熱性を有する。
【0038】
(建造物の構成)
図6は、本実施形態に係る断熱パネルを備える建造物の1階とその周辺部分の縦断面図、
図7は、
図6のVII-VII線に相当する部分での断面図である。
【0039】
図6および
図7を参照して、断熱パネル10を備える建造物1について説明する。
【0040】
図6に示すように、建造物1は、1階の床構成部20と、建造物1の躯体を構成する梁3と、梁3の上部に設けられた2階の床40と、床40の下方に設けられた1階の天井30と、梁3の外側に設けられた外壁パネル2と、外壁パネル2の内側に設けられた断熱パネル10と、断熱パネル10の内側に設けられた内装パネル4と、を有している。
【0041】
1階の床構成部20は、基礎21と、基礎21の外側に設けられた断熱材22と、基礎21の内側に設けられた断熱材23と、束27と、束27の上部に設けられた大引き26と、大引き26の上部に設けられた床下地材24と、床下地材24の上部に設けられた床仕上材25と、を有している。
【0042】
梁3は、H形鋼からなり、水平方向に並んで複数設けられている。2階の床40は、梁3の上部に設けられた床下地材41と、床下地材41の上部に設けられた床仕上材42と、を有している。
【0043】
外壁パネル2は、基礎21の上部に設けられている。断熱パネル10は、外壁パネル2の内側において床下地材24の上部に設けられている。断熱パネル10の上端部は、固定部材3aによって梁3の下側のフランジに固定されている。内装パネル4は、石膏ボードからなり、第2の防湿シート14を覆うように設けられている。
【0044】
1階の天井30は、天井下地材である野縁32と、野縁32の下部に設けられた天井板材33と、野縁の上部に設けられた断熱材34と、を有する。野縁32は、断熱パネル10の被固定部11fに固定部材35によって固定されている。1階の天井30と2階の床40との間には、いわゆる天井裏と呼ばれる空間36が設けられている。被固定部11fには、野縁32以外の部材を固定してもよい。
【0045】
空間36には、配線8が設けられており、配線8は、断熱パネル10の連通部11b1、隙間11f3および連通部11d1を通じて枠体11内の第1の断熱材12の内部に導入され、下桟11cに向かって延びている。
【0046】
図7に示すように、建造物1は、水平方向に並んで配置された複数の断熱パネル10を有する。隣り合う断熱パネル10は、互いに対向面10a同士で接するように設けられている。これにより、隣り合う断熱パネル10の間に退避面10bの臨む空間に相当する隙間が生じている。また、延伸部16は弾性を有するため、隣り合う断熱パネル10に設けられた延伸部16は互いに接触して横方向に圧縮され、退避面10bの臨む空間に相当する隙間を塞いでいる。
【0047】
(作用、効果)
本実施形態に係る断熱パネル10では、軟質の断熱材に比べて断熱性に優れた硬質の第2の断熱材15が外側に設けられており、断熱性が確保されている。また、配線8を枠体11の上桟11bに設けられた連通部11b1を通じて枠体11内に導くことができ、第1の防湿シート13と配線8との間に第1の断熱材12が位置するように配線8を配置することが可能である。そのため、配線8が第1の断熱材12を貫通することによる断熱性の低下を抑制することができる。
【0048】
また、本実施形態に係る断熱パネル10では、連通部11b1および連通部11d1は、上桟11bまたは中桟11dの第1の防湿シート13側の端面よりも離れた位置に位置しているため、配線8を、枠体11の開口部11eに導入した位置から、第1の断熱材12の第1の防湿シート13側の端面よりも内部の位置に配線することが可能となり、より確実に配線8が第1の断熱材12を貫通するのを抑制することができる。
【0049】
本実施形態に係る断熱パネル10では、夏季のように建造物1の外部の温度および湿度が建造物1の室内の温度および湿度よりも高い場合には、第1の防湿シート13により、建造物1の外部から第1の断熱材12、枠体11、第2の防湿シート14および内装パネル4への湿度の高い空気の流入が抑制される。内装パネル4については、第2の防湿シート14によっても湿度の高い空気の流入が抑制される。
【0050】
これにより、夏季において、室内の温度の影響によって第1の断熱材12、枠体11、第2の防湿シート14および内装パネル4が冷却されても、第1の防湿シート13によってこれらの部材の周囲での湿度の上昇が抑制されている。そのため、第1の断熱材12、枠体11、第2の防湿シート14および内装パネル4における結露の発生が抑制される。内装パネル4については、第2の防湿シート14によっても結露の発生が抑制される。
【0051】
一方、冬季のように建造物1の室内の温度および湿度が建造物1の外部の温度および湿度よりも高い場合には、第2の防湿シート14により、建造物1の室内から第1の断熱材12、枠体11、第1の防湿シート13および第2の断熱材15への湿度の高い空気の流入が抑制される。第2の断熱材15については、第1の防湿シート13によっても室内からの湿度の高い空気の流入が抑制される。
【0052】
これにより、冬季において、外部の温度の影響によって第1の断熱材12、枠体11、第1の防湿シート13および第2の断熱材15が冷却されても、第2の防湿シート14によってこれらの部材の周囲での湿度の上昇が抑制されている。そのため、第1の断熱材12、枠体11、第1の防湿シート13および第2の断熱材15における結露の発生が抑制される。第2の断熱材15については、第1の防湿シート13によっても結露の発生が抑制される。
【0053】
断熱パネル10には、被固定部11fが設けられているため、断熱パネル10に天井下地材である野縁32を固定することができる。また、被固定部11fと、第1の防湿シート13との間には、隙間11f3が形成されているため、上桟11bに設けられた連通部11b1から導入された配線8を、第1の防湿シート13に沿って、連通部11b1から第1の防湿シート13と被固定部11fとの隙間11f3を通じて開口部11eの内部まで容易に導くことができる。
【0054】
本実施形態に係る断熱パネル10は、第2の断熱材15に退避面10bを有する。これにより、退避面10bの臨む空間に指を入れて縦桟11aを厚さ方向に掴むことができるため、断熱パネル10の施工を容易とすることができる。
【0055】
本実施形態に係る断熱パネル10では、第2の断熱材15に延伸部16を設けており、隣接する断熱パネル10の第2の断熱材15は延伸部16同士で密着する。そのため、退避面10bを設けることにより第2の断熱材15同士の間に生じた退避面10bの臨む空間に相当する隙間を延伸部16で塞ぐことができ、断熱パネル10の断熱性の低下を抑制することができる。
【0056】
(変型例)
本実施形態に係る建造物1において、第2の断熱材15は、第1層15aと第2層15bとを有し、第1層15aは第2の固定部材18によってと第2層15bに固定されている構成としたが、第1層15aと第2層15bとを一体に形成してもよい。
【0057】
図8は、本実施形態の変型例に係る断熱パネルの部分平面図である。
図8に示すように、断熱パネル10において退避面10bを縦桟11aに設けてもよい。この場合も、退避面10bの臨む空間に指を入れて縦桟11aを厚さ方向に掴むことができるため、断熱パネル10の施工を容易とすることができる。
【0058】
本実施形態では、連通部11b1および連通部11d1は、上桟11bまたは中桟11dの第1の防湿シート13側の端面から離れた位置に位置しているが、連通部11b1、11d1は上桟11bまたは中桟11dの第1の防湿シート13側の端面に接した位置に設けられていてもよい。
【0059】
また、本実施形態では、枠体11の開口部11eを中桟11dによって6つの領域に区画しているが、中桟11dを設けず、開口部11eを2本の縦桟11aと上桟11bと下桟11cの4本の桟によった囲まれた1つの領域としてもよい。
【0060】
また、本実施形態では、被固定部11fは、第1部材11f1と第2部材11f2の2つの部材からなるものとしたが、第1部材と第2部材を一体に形成したものとしてもよい。
【符号の説明】
【0061】
1 建造物
2 外壁パネル
10 断熱パネル
10a 対向面
10b 退避面
11 枠体
11a 縦桟(桟)
11b 上桟(第1の桟)
11b1 連通部
11c 下桟(桟)
11e 開口部
11f 被固定部
11f3 隙間
12 第1の断熱材
13 第1の防湿シート
14 第2の防湿シート
15 第2の断熱材
16 延伸部