(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-20
(45)【発行日】2023-09-28
(54)【発明の名称】後方車両接近警報装置
(51)【国際特許分類】
G08G 1/16 20060101AFI20230921BHJP
【FI】
G08G1/16 C
(21)【出願番号】P 2020022244
(22)【出願日】2020-02-13
【審査請求日】2022-04-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000213
【氏名又は名称】弁理士法人プロスペック特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】皆見 貴幸
(72)【発明者】
【氏名】小原 崇弘
【審査官】武内 俊之
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-243069(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
障害物との衝突を回避するための衝突回避制
御として、自動制動制御及び自動操舵回避制御の少なくとも一つを実行可能に構成さ
れた車両の後方を走行する後方車両に関する情報である後方車両情報を取得する情報取得装置と、
前記後方車両の接近を報知する後方車両接近警報を行う報知装置と、
前記報知装置を制御する制御ユニットと、
を備え、
前記制御ユニットは、
前記後方車両情報に基づいて、前記後方車両が前記車両に接近することを判定するための所定の警報条件が成立すると判定した場合、前記報知装置が前記後方車両接近警報を実行するように前記報知装置を制御し、
前記衝突回避制御が実行中であるとの条
件が成立した場合、前記所定の警報条件が成立すると判定した場合であっても、前記報知装置が前記後方車両接近警報を実行しないように前記報知装置を制御するように構成された、
後方車両接近警報装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自車両に後方から接近する後方車両を検知した場合に、警報を実行する後方車両接近警報装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載の車両制御装置は、車両の後方に存在する後続車両のあおり運転が発生した場合、後続車両が存在する車両の後方への注意を車両の運転者に促すために、表示部にメッセージ等の画像を表示することにより警報を行う(特許文献1を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【0004】
しかしながら、車両の状況によっては、運転者は、車両の後方に注意を払うより、車両の後方以外の周囲の状況に注意を払うことを優先するべき場合がある。この場合においても、警報が行われると、車両の後方以外の周囲(例えば、前方)に注意が必要な状況においても、車両の後方への注意を運転者に促してしまうので、好ましくない。
【0005】
本発明は上述した課題に対処するためになされた。即ち、本発明の目的の一つは、車両の後方以外の周囲に注意が必要な状況において、警報によって車両の後方への注意を車両の運転者に促してしまう可能性を低下できる後方車両接近警報装置(以下、「本発明装置」とも称呼する。)を提供することにある。
【0006】
本発明装置は、衝突回避制御を実行可能に構成された車両(SV)の後方を走行する後方車両に関する情報である後方車両情報を取得する情報取得装置(13L、13R)と、前記後方車両の接近を報知する後方車両接近警報を行う報知装置(32)と、前記報知装置を制御する制御ユニット(10)と、を備える。
前記制御ユニットは、前記後方車両情報に基づいて、前記後方車両が前記車両に接近することを判定するための所定の警報条件が成立すると判定した場合(ステップ420にて「Yes」との判定、ステップ425にて「Yes」)、前記報知装置が前記後方車両接近警報を実行するように前記報知装置を制御し(ステップ430)、前記衝突回避制御が実行中であるとの条件が成立した場合(ステップ510にて「Yes」との判定)、前記所定の警報条件が成立すると判定した場合であっても(ステップ420にて「Yes」との判定)、前記報知装置が前記後方車両接近警報を実行しないように前記報知装置を制御する(ステップ425にて「No」との判定)ように構成される。
【0007】
本発明装置は、車両の後方以外の周囲に注意が必要な状況において、警報によって車両の後方への注意を車両の運転者に促してしまう可能性を低下できる。
【0008】
上記説明においては、本発明の理解を助けるために、後述する実施形態に対応する発明の構成に対し、その実施形態で用いた名称及び/又は符号を括弧書きで添えている。しかしながら、本発明の各構成要素は、前記名称及び/又は符号によって規定される実施形態に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態に係る後方車両接近警報装置の概略構成図である。
【
図2】
図2は、後側方レーダセンサの検知範囲を示した平面図である。
【
図3】
図3は、電子インナーミラーの構成例を示す概略図である。
【
図4】
図4は、後方警報ECUのCPUが実行するルーチンを表すフローチャートである。
【
図5】
図5は、後方警報ECUのCPUが実行するルーチンを表すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態に係る後方車両接近警報装置(以下、「本実施装置」と称呼される。)について説明する。なお、実施形態の全図において、同一又は対応する部分には同一の符号を付す。
【0011】
<構成>
本実施装置は車両(自動車)に適用される。本実施装置が適用される車両は、他車両と区別するために「自車両」と称呼される場合がある。本実施装置は、
図1に示すように、後方警報ECU10、メータECU20、ミラーECU30、運転支援ECU40、及び、これらが接続されているCAN(Controller Area Network)50を備えている。なお、CAN50には、図示しない、エンジンECU、ブレーキECU、ステアリングECU等、各種の車両制御を実施するECUが接続されているが、それらについての記載が省略されている。
【0012】
これらのECUは、マイクロコンピュータを主要部として備える制御ユニット(電気制御装置(Electric Control Unit))であり、CAN50を介して相互に情報を送信可能及び受信可能に接続されている。従って、特定のECUに接続されたセンサ(スイッチを含む。)の検出値等は他のECUにも送信されるようになっている。
【0013】
マイクロコンピュータは、CPU、ROM、RAM、不揮発性メモリ及びインターフェースI/F等を含む。CPUはROMに格納されたインストラクション(プログラム、ルーチン)を実行することにより各種機能を実現するようになっている。
【0014】
後方警報ECU10は、車両状態センサ11に接続されて、車両状態センサ11が検出したセンサ情報を取得する。車両状態センサ11は、
図2に示した自車両SVの状態を検出する複数種類のセンサを含む。車両状態センサ11は、自車両SVの走行速度を検出する車速センサ、車輪速を検出する車輪速センサ、自車両SVの前後方向の加速度を検出する前後加速度センサ、自車両SVの横方向の加速度を検出する横加速度センサ、及び、自車両SVのヨーレートを検出するヨーレートセンサ等を含む。
【0015】
後方警報ECU10は、ブレーキペダル操作量センサ12に接続され、ブレーキペダル操作量センサ12が検出した自車両SVのブレーキペダル12aの操作量を取得する。
【0016】
後方警報ECU10は、更に、左後側方レーダセンサ13L及び右後側方レーダセンサ13Rに接続されている。
図2に示すように、左後側方レーダセンサ13Lは、自車両SVのリアバンパーの左コーナー部であり、自車両SVの前後方向に延びる中心軸より左側の部分に配設されている。右後側方レーダセンサ13Rは、自車両SVのリアバンパーの右コーナー部であり、自車両SVの前後方向に延びる中心軸より右側の部分に配設されている。左後側方レーダセンサ13L及び右後側方レーダセンサ13Rは、検出領域が互いに異なる点を除き互いに同じ構成を有する。以下、左後側方レーダセンサ13Lと右後側方レーダセンサ13Rとを区別する必要がない場合、これらは単に「後側方レーダセンサ13」と称呼される。
【0017】
左後側方レーダセンサ13Lの立体物の検出領域L1は、自車両SVの車体左後コーナー部から左斜め後方に向けた中心軸CLに対して左右方向にそれぞれ所定角度αだけ広がる範囲である。立体物の検出領域L1は、左後側方レーダセンサ13Lが立体物の物標情報(後述)を取得できる範囲である。右後側方レーダセンサ13Rの立体物の検出領域R1は、自車両SVの車体右後コーナー部から右斜め後方に向けた中心軸CRに対して左右方向にそれぞれ所定角度αだけ広がる範囲である。立体物の検出領域R1は、右後側方レーダセンサ13Rが立体物の物標情報(後述)を取得できる範囲である。
【0018】
左後側方レーダセンサ13Lの検出領域L1と右後側方レーダセンサ13Rの検出領域R1とは、自車両SVの後方側でオーバーラップ(重複)している。従って、自車両SVの後方の立体物(例えば、他車両)は、左右両方の後側方レーダセンサ13により検出可能となっている。後側方レーダセンサ13の検出距離は、例えば、数十メートルである。
【0019】
後側方レーダセンサ13は、レーダ波送受信部と処理部とを備えている。レーダ波送受信部は、例えば、ミリ波帯の電波(以下、「ミリ波」と称呼する。)を少なくとも自車両SVの後方領域を含む検出領域に放射する。更に、レーダ波送受信部は、放射したミリ波が立体物の部分(即ち、反射点)によって反射されることにより生成される反射波を受信する。なお、後側方レーダセンサ13はミリ波帯以外の周波数帯の電波(レーダ波)を用いるレーダセンサであってもよい。
【0020】
後側方レーダセンサ13の処理部は、送信したミリ波と受信した反射波との位相差、反射波の減衰レベル及びミリ波を送信してから反射波を受信するまでの時間等により、反射点の自車両SVに対する相対位置及び相対速度等を表す「反射点情報」を算出する。なお、反射点は、一般に、一つの物標から複数得られる。
【0021】
後側方レーダセンサ13の処理部は、後方警報ECU10と通信可能となるように接続されている。後側方レーダセンサ13の処理部は、後方警報ECU10に、「反射点情報」を含む「レーダセンサ検出情報」を送信する。
【0022】
具体的に述べると、左後側方レーダセンサ13Lの処理部は、左後側方レーダセンサ13Lによって検出されたレーダセンサ検出情報(以下、「左レーダセンサ検出情報」と称呼される。)を送信する。右後側方レーダセンサ13Rの処理部は、右後側方レーダセンサ13Rによって検出されたレーダセンサ検出情報(以下、「右レーダセンサ検出情報」と称呼される。)を送信する。
【0023】
後方警報ECU10は、左後側方レーダセンサ13Lの処理部から「反射点情報」を含む「左レーダセンサ検出情報」を受信する。右後側方レーダセンサ13Rの処理部から「反射点情報」を含む「右レーダセンサ検出情報」を受信する。
【0024】
後方警報ECU10は、受信した「反射点情報」に基づいて、1つの立体物を検出している可能性が高い「複数の反射点」をグルーピングし、グルーピングできた反射点の群を一つの物標として認識する。後方警報ECU10は、認識できた物標に対する反射点の反射点情報に基づいて、物標の相対位置及び自車両SVと物標との相対速度等(物標情報)を演算する。
【0025】
なお、後方警報ECU10は、予め規定されたx-y座標に基づいてこれらの値を取得する。x軸は、自車両SVの前後方向に沿って自車両SVの前端部の車幅方向中心位置を通るように伸び、前方を正の値として有する座標軸である。y軸は、x軸と直交し、自車両SVの左方向を正の値として有する座標軸である。x軸の原点及びy軸の原点は、自車両SVの前端部の幅方向中心位置である。
【0026】
後方警報ECU10は、自車両SVの後方を走行する後方車両の接近を、運転者に注意喚起するために、次のように作動する。後方警報ECU10は、後側方レーダセンサ13から受信されるレーダセンサ検出情報に基づいて、自車両SVの後方から自車両SVに接近する後方車両(物標)を検出する。更に、後方警報ECU10は、検出した後方車両が自車両SVに接近すると判定したときに、CAN50を介してミラーECU30に後方警報指令を送信する。
【0027】
本例において、条件1及び条件2の何れかが成立した場合に、後方車両が自車両SVに接近すると判定する。
条件1:条件1は、以下に述べる衝突予測時間TTCが閾値時間以下である場合に成立する条件である。
条件2:条件2は、後方車両と自車両SVとの間の車間距離Drが閾値距離以下である場合に成立する条件である。
【0028】
(衝突予測時間)
後方警報ECU10は、自車両SVに対する後方車両の相対速度Vr、自車両SVと後方車両との間の車間距離Drに基づいて、現時点から後方車両が自車両SVに衝突するまでに要する予測時間である衝突予測時間(TTC:Time To Collision)を計算する。
【0029】
具体的に述べると、後方警報ECU10は、後方車両の衝突予測時間TTCを、車間距離Drを相対速度Vrにて割る(車間距離Dr/相対速度Vr)ことにより算出する。なお、後方車両の衝突予測時間TTCは、例えば、自車両SVに対して後方車両が接近する加減速度を考慮して算出されてもよい。後方車両の衝突予測時間TTCは、後方車両が自車両SVに衝突する可能性の指標である。衝突予測時間TTCが小さいほど、後方車両が自車両SVに衝突する可能性が高い状態であると推定することができる。
【0030】
メータECU20は、左右のターンシグナルランプ21と表示器22に接続されている。
【0031】
メータECU20は、ランプ駆動回路(図示略)を備えており、図示しないハザードランプスイッチからの信号及び他のECUからの指示等に応じて、左右のターンシグナルランプ21の両方(即ち、ハザードランプ)を同時に点滅させる。
【0032】
メータECU20は、図示しないウインカー駆動回路を介して、図示しないウインカーレバースイッチからの信号及び他のECUからの指示等に応じて左又は右のターンシグナルランプ21を点滅させる。例えば、メータECU20は、図示しないウインカーレバーが左回り操作方向の所定位置に維持されていることを示す信号をウインカーレバースイッチが出力しているとき、左のターンシグナルランプ21を点滅させる。更に、メータECU20は、図示しないウインカーレバーが右回り操作方向の所定位置に維持されていることを示す信号をウインカーレバースイッチが出力しているとき、右のターンシグナルランプ21を点滅させる。
【0033】
表示器22は、運転席の正面に設けられたマルチインフォメーションディスプレイである。表示器22は、車速及びエンジン回転速度等の計測値に加えて、各種の情報を表示する。メータECU20は、所定の画面(画像)を表示器22に表示できるようになっている。
【0034】
ミラーECU30は、後方カメラ31及び電子インナーミラー32に接続されている。後方カメラ31は、自車両SVの後方領域を撮像し、撮像した後方撮像画像(画像データ)を取得する撮像装置である。電子インナーミラー32は、画像を表示するモニタ部32a(ディスプレイ)を含む。モニタ部32aは、必要に応じて、枠状の周端部32a1が発光できるようになっている(
図3を参照。)。ミラーECU30は、後方カメラ31から取得した画像データを画像処理し、画像処理した画像を電子インナーミラー32のモニタ部32aに表示する。
【0035】
ミラーECU30は、後方警報指令を受信した場合、電子インナーミラー32を用いて、後方車両の接近を報知する(即ち、電子インナーミラー32に後方車両の接近を報知する後方車両接近警報を実行させる。)。
【0036】
後方車両の接近の報知の一例としては、例えば、
図3に示したように、後方車両の画像G1aを含む後方撮像画像G1が表示されているモニタ部32aの枠状の周端部32a1を光らせることが挙げられる。ミラーECU30は、電子インナーミラー32に表示されている後方車両の画像G1aに枠線等を重ね合わせるように画像処理した画像を、モニタ部32aに表示することにより、後方車両の接近を報知するようにしてもよい。このように電子インナーミラー32は、報知機能を有するので、「報知装置」とも称呼される。
【0037】
運転支援ECU40は、自車両SVの車速、加速度及びヨーレート等の自車両SVの状態及び自車両SVの周囲に存在する立体物(物標)を検出するために、図示している又は図示していない各種センサに接続され、これらの各種センサが検出する検出値を受信する。更に、運転支援ECU40は、図示しない各種ECU(エンジンECU、ブレーキECU及び電動パワーステアリングECU(EPS・ECU)等)と接続され、これらのECUに指令を送出することにより、自車両SVの動作を制御することができる。
【0038】
即ち、運転支援ECU40は、これらの各種ECUに指令を送出し、これらの各種ECUに接続された図示しないアクチュエータを制御することにより、図示しないエンジン(内燃機関)、電動パワーステアリング及びブレーキ等の作動を制御する。これにより、運転支援ECU40は、自車両SVの操舵、自車両SVの駆動力及び自車両SVの制動力等を変更することにより、自車両SVの運動を制御することができる。
【0039】
更に、運転支援ECU40は、衝突回避制御(「PCS制御」ともいう。)を実行するPCS機能を有する。PCS制御は、自車両SVと衝突する可能性が高い立体物である障害物(物標)が存在すると判定した場合に、当該障害物との衝突を回避するために実行される周知な制御である。PCS制御は、例えば、運転者に注意喚起を行うための周知の警報制御及び障害物との衝突を回避するための周知な衝突回避制御(自動制動制御、自動操舵回避制御)等の少なくとも一つを含む
【0040】
<作動の概要>
運転者が自車両SVを運転している場合において、後方車両に注意を払うより、自車両SVの後方以外の周囲の状況に注意を払うことを優先するべき場合がある。この場合においても、後方車両の接近を報知する後方車両接近警報を行うと、自車両SVの後方以外の周囲に注意が必要な状況においても、後方(後方車両)への注意を促してしまうので、好ましくない。
【0041】
そこで、本実施装置は、自車両SVに後方車両が接近すると判定した場合であっても、所定の特定条件を満たす場合、後方車両接近警報の実行を禁止する(後方車両接近警報を実行しない。)。所定の特定条件は、自車両SVの後方以外に注意が必要な状況であるとの判定に適した条件が設定される。なお、この条件の具体的な内容は、後述する。
【0042】
<具体的作動>
次に、後方警報ECU10のCPU(以下、単に「CPU」と称呼される。)の具体的作動について説明する。CPUは、イグニッション・キー・スイッチがオン位置にある場合、所定時間が経過する毎に
図4及び
図5にフローチャートにより示したルーチンのそれぞれを実行するようになっている。
【0043】
CPUは、所定のタイミングになると、
図4のステップ400から処理を開始してステップ405に進み、後側方レーダセンサ13(左後側方レーダセンサ13L及び右後側方レーダセンサ13R)から送信されるレーダセンサ検出情報を取得する。
【0044】
その後、CPUはステップ410に進み、ステップ405にて取得したレーダセンサ検出情報に基づいて、自車両SVの後方の所定の範囲内に後方車両が検出(認識)されているか否かを判定する。より具体的に述べると、CPUは、レーダセンサ検出情報に基づいて物標(他車両)を特定し、その物標の過去時点の位置及び相対速度と、その物標の現時点の位置及び相対速度と、に基づいて、その物標が自車両SVの後端部に接近してくるか否かを判定する。その物標が自車両SVの後端部に接近してくる場合、CPUはその物標を後方車両として認識する。なお、CPUは、自車両SVの後方の所定の範囲に存在する車両を後方車両として認識するようにしてもよい。
【0045】
後方車両が検出されていない場合、CPUはステップ410にて「No」と判定してステップ495に進み、本ルーチンを一旦終了する。
【0046】
これに対して、後方車両が検出されている場合、CPUはステップ410にて「Yes」と判定してステップ415に進み、自車両SVと後方車両との間の車間距離Drを算出し、更に、車間距離Dr及び自車両SVに対する後方車両の相対速度Vrに基づいて、衝突予測時間TTC(=Dr/Vr)を算出する。
【0047】
その後、CPUはステップ420に進み、警報条件が成立しているか否かを判定する。警報条件は、上述した下記の条件1及び条件2の何れかが成立している場合に成立する条件である。
条件1:条件1は、衝突予測時間TTCが閾値時間以下である場合に成立する条件である。
条件2:条件2は、後方車両と自車両SVとの間の車間距離Drが閾値距離以下である場合に成立する条件である。
【0048】
警報条件が成立していない場合、CPUはステップ420にて「No」と判定してステップ495に直接進み、本ルーチンを一旦終了する。従って、後方車両接近警報は行われない。
【0049】
これに対して、警報条件が成立する場合、CPUはステップ420にて「Yes」と判定してステップ425に進み、警報禁止フラグFの値が「0」であるか否かを判定する。なお、警報禁止フラグFは、後述する
図5のルーチンによって、その値が「0」及び「1」の何れかに設定される。警報禁止フラグFは、後方車両接近警報を行うべき状況ではない場合には「1」に設定され、そうでない場合には「0」に設定される。更に、警報禁止フラグFは、自車両SVのイグニッション・キー・スイッチ(図示省略)がオフ位置からオン位置へと変更されたときにCPUが実行する初期化ルーチンにおいて「0」に設定される。
【0050】
警報禁止フラグFの値が「0」である場合、CPUはステップ425にて「Yes」と判定してステップ430に進み、後方車両接近警報指令をミラーECU30に送信する。これにより、CPUは、ミラーECU30を介して、電子インナーミラー32に後方車両接近警報を実行させる。
【0051】
これに対して、警報禁止フラグFの値が「0」ではない場合(「1」である場合)、CPUはステップ425にて「No」と判定してステップ495に直接進み、本ルーチンを一旦終了する。従って、後方車両接近警報が行われない(後方車両接近警報が禁止される。)。
【0052】
CPUは、所定のタイミングになると、
図5のステップ500から処理を開始してステップ505に進み、特定条件が成立しているか否かを判定する。
【0053】
特定条件は、以下に述べる条件3乃至条件6のうちの少なくとも一つが成立しているときに成立する条件である。なお、特定条件は、条件3乃至条件6の何れか一つが成立しているときに成立する条件であってもよい。
条件3:条件3は、PCS制御を実行している場合に成立する条件である。
条件4:条件4は、自車両SVが備えるブレーキペダル12aが操作されているときに成立する条件である。
条件5:条件5は、ターンシグナルランプ21が消灯状態ではないときに成立する条件である。
条件6:条件6は、自車両SVが曲線路(道路のカーブ区間)を走行中(カーブ中)であるときに成立する条件である。なお、自車両SVが曲線路を走行中であるか否かの判定は、周知な種々の方法により行うことができる(例えば、図示しない自車両SVが備えるナビゲーション装置から取得した自車両SVの位置情報及び地図情報等に基づいて判定するなど)。
【0054】
条件3乃至条件6のうちの少なくとも一つが成立している場合、CPUはステップ505にて「Yes」と判定してステップ510に進み、警報禁止フラグFの値を「1」に設定する。
【0055】
この場合、上述したように、
図4のルーチンにおいて、警報条件が成立している場合においても、後方車両接近警報が行われない。その後、CPUはステップ595に進み、本ルーチンを一旦終了する。
【0056】
これに対して、上記条件3乃至条件6の総てが成立していない場合、CPUはステップ505にて「No」と判定してステップ515に進み、警報禁止フラグFの値を「0」に設定する。この場合、CPUは、上述したように、
図4のルーチンにおいて、警報条件が成立している場合、後方車両接近警報が行われる。その後、CPUはステップ595に進み、本ルーチンを一旦終了する。
【0057】
<効果>
以上説明した本実施装置は、次のような効果を有する。即ち、本実施装置は、自車両SVの運転者が自車両SVの後方以外の周囲に注意が必要な状況において、警報によって自車両SVの後方への注意を自車両SVの運転者に促してしまう可能性を低下できる。
【0058】
以上、本発明の実施形態について具体的に説明したが、本発明は、上述の実施形態に限定されず、本発明の範囲内において、本発明の技術的思想に基づく各種の変形例を採用し得る。例えば、上述の実施形態において、表示器22を、報知装置として用いて、表示器22に注意喚起用のマーク(例えば、ウォーニングランプ)を点灯させたり、後方車両の接近を報知する画像を表示させたり、警告メッセージを表示させたりすることによって、後方車両の接近を報知してもよい。更に、上述の実施形態において、図示しないブザー及びスピーカを報知装置として用いて、ブザーの鳴動及び音声等によって、後方車両の接近を報知してもよい。上述の実施形態において、電子インナーミラー32に代えて、自車両SVが備える他の表示装置を用いてもよい。
【符号の説明】
【0059】
10…後方警報ECU、13L…左後側方レーダ、13R…右後側方レーダ、20…メータECU、21…ターンシグナルランプ、30…ミラーECU、31…後方カメラ、32…電子インナーミラー、40…運転支援ECU、SV…自車両