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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-20
(45)【発行日】2023-09-28
(54)【発明の名称】車椅子
(51)【国際特許分類】
   A61G 5/10 20060101AFI20230921BHJP
   A61G 3/08 20060101ALI20230921BHJP
   A61G 5/12 20060101ALI20230921BHJP
   B60P 3/00 20060101ALI20230921BHJP
   B62D 25/20 20060101ALI20230921BHJP
【FI】
A61G5/10 703
A61G3/08
A61G5/12 704
B60P3/00 A
B62D25/20 F
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020043669
(22)【出願日】2020-03-13
(65)【公開番号】P2021142184
(43)【公開日】2021-09-24
【審査請求日】2022-05-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100176304
【弁理士】
【氏名又は名称】福成 勉
(72)【発明者】
【氏名】岩瀬 貴志
(72)【発明者】
【氏名】任田 功
(72)【発明者】
【氏名】安竹 昭
(72)【発明者】
【氏名】有永 剛
【審査官】井出 和水
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第09463121(US,B1)
【文献】米国特許第10434023(US,B1)
【文献】特開昭57-201778(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61G 1/00 - A61G 5/14
B60P 3/00
B62D 25/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車椅子利用者が着座する着座部と、
前記着座部を支持するボディフレームと、
前記ボディフレームに回転自在に軸支された車輪と、
車両の開口部を形成する車体部材に対して係合する第1係合部および第2係合部と、
を備え、
前記第1係合部と前記第2係合部とは、該車椅子の前後方向および幅方向の少なくとも一方の方向で前記車体部材への係合位置が異なるように設けられており、
前記第1係合部は、前記車両における前記車体部材を上方から係合し、
前記第2係合部は、前記車両における前記車体部材を下方から係合する、
車椅子。
【請求項2】
請求項1に記載の車椅子において、
前記車体部材は、上部が内装部材で覆われ、下部が外装部材で覆われており、
前記第1係合部は、当該第1係合部と前記車体部材との間に前記内装部材を挟んだ状態で前記車体部材を係合し、
前記第2係合部は、当該第2係合部と前記車体部材との間に前記外装部材を挟んだ状態で前記車体部材を係合する、
車椅子。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の車椅子において、
前記ボディフレームは、一対の第1ボディフレームおよび第2ボディフレームを有し、
前記第1ボディフレームは、前記車椅子の前後方向に延びるメインフレームと、当該メインフレームに接続され、前記メインフレームから前記車椅子の前方且つ下方に延びるサブフレームと、を有し、
前記第1係合部は、前記第1ボディフレームにおける前記メインフレームの前方部分に設けられており、
前記第2係合部は、前記第1ボディフレームにおける前記サブフレームの前方部分に設けられている、
車椅子。
【請求項4】
請求項1または請求項2に記載の車椅子において、
前記ボディフレームは、一対の第1ボディフレームおよび第2ボディフレームを有し、
前記第1ボディフレームは、前記車椅子の前後方向に延びるメインフレームと、当該メインフレームに接続され、前記メインフレームから前記車椅子の前方且つ下方に延びるサブフレームと、前記メインフレームに接続され、前記メインフレームよりも上方で前記車椅子の前後方向に延びるアームレストと、を有し、
前記第1係合部は、前記第1ボディフレームにおける前記アームレストの前方部分に設けられており、
前記第2係合部は、前記第1ボディフレームにおける前記サブフレームの前方部分に設けられている、
車椅子。
【請求項5】
車椅子利用者が着座する着座部と、
前記着座部を支持するボディフレームと、
前記ボディフレームに回転自在に軸支された車輪と、
車両の開口部を形成する車体部材に対して係合する第1係合部および第2係合部と、
を備え、
前記第1係合部と前記第2係合部とは、該車椅子の前後方向および幅方向の少なくとも一方の方向で前記車体部材への係合位置が異なるように設けられており、
前記ボディフレームは、一対の第1ボディフレームおよび第2ボディフレームを有し、
前記第1ボディフレームは、前記車椅子の前後方向に延びるメインフレームと、当該メインフレームに接続され、前記メインフレームから前記車椅子の前方且つ下方に延びるサブフレームと、を有し、
前記第1係合部は、前記第1ボディフレームにおける前記メインフレームの前方部分に設けられており、
前記第2係合部は、前記第1ボディフレームにおける前記サブフレームの前方部分に設けられている、
車椅子。
【請求項6】
車椅子利用者が着座する着座部と、
前記着座部を支持するボディフレームと、
前記ボディフレームに回転自在に軸支された車輪と、
車両の開口部を形成する車体部材に対して係合する第1係合部および第2係合部と、
を備え、
前記第1係合部と前記第2係合部とは、該車椅子の前後方向および幅方向の少なくとも一方の方向で前記車体部材への係合位置が異なるように設けられており、
前記ボディフレームは、一対の第1ボディフレームおよび第2ボディフレームを有し、
前記第1ボディフレームは、前記車椅子の前後方向に延びるメインフレームと、当該メインフレームに接続され、前記メインフレームから前記車椅子の前方且つ下方に延びるサブフレームと、前記メインフレームに接続され、前記メインフレームよりも上方で前記車椅子の前後方向に延びるアームレストと、を有し、
前記第1係合部は、前記第1ボディフレームにおける前記アームレストの前方部分に設けられており、
前記第2係合部は、前記第1ボディフレームにおける前記サブフレームの前方部分に設けられている、
車椅子。
【請求項7】
請求項1から請求項6の何れかに記載の車椅子において、
前記車両の開口部を形成する車体部材に対して係合する第3係合部を更に備え、
前記第3係合部は、該車椅子の前後方向および幅方向の少なくとも一方の方向で前記車体部材への係合位置が、前記第1係合部および前記第2係合部の少なくとも一方の係合部に対して異なるように設けられている、
車椅子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車椅子に関する。
【背景技術】
【0002】
車椅子は、高齢者や身体障害者(肢体不自由者)などが使用する。このような車椅子利用者も自動車等の車両に乗降する場合がある。このとき、介助者の介助を受けながら車両に乗降する場合や、車椅子利用者自身が自力で乗降する場合がある。
【0003】
車両への車椅子利用者の乗降をアシストするための構成の一例が特許文献1に開示されている。特許文献1では、車両のシートバックに軸支されたアームと、アームの先端に取り付けられた乗降板と、を備える乗降アシスト機構が開示されている。
【0004】
アームは、シートバックにおけるドア側のフレームに軸支されており、先端部の直線部分がシートバックの側面に沿う姿勢とシート座部の側面に沿う姿勢との間で回動できるようになっている。乗降板は、アームの先端部に対して回転自在となっており、開いた状態ではシート座部と略平行であって他端がドアの外に突出するようになっている。そして、乗降板の先端には、車椅子のフレームを係合するためのフックが設けられている。
【0005】
特許文献1に開示の乗降アシスト機構は、車椅子利用者が車両に乗降する際に乗降板を開いてフックを車椅子のフレームに係合させた上で、当該乗降板を介して車椅子の座部と車両のシート座部との間を移動することができるようにアシストする構成となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】実開平07-31456号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献1に開示された乗降アシスト機構は、間にアームと乗降板とを介して車両のシートと車椅子とを係合する構造のため、車椅子利用者の乗降に際して不安定になることが考えられる。即ち、シートバックとアームとが1点で支持され、乗降板と車椅子のフレームとがフックが設けられた箇所だけで係合されることになるため、車椅子利用者の乗降に際しての力が作用した際に、車椅子が平面視で回転するように動いてしまうことが考えられる。このような乗降時における車椅子の回転は、乗降しようとする車椅子利用者に不安を与えることとなり好ましくない。
【0008】
本発明は、上記のような課題の解決を図ろうとなされたものであって、車両との間での車椅子利用者の乗り移りに際して、車両に対して安定した状態で係合することができる車椅子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様に係る車椅子は、車椅子利用者が着座する着座部と、前記着座部を支持するボディフレームと、前記ボディフレームに回転自在に軸支された車輪と、車両の開口部を形成する車体部材に対して係合する第1係合部および第2係合部と、を備え、前記第1係合部と前記第2係合部とは、該車椅子の前後方向および幅方向の少なくとも一方の方向で前記車体部材への係合位置が異なるように設けられており、前記第1係合部は、前記車両における前記車体部材を上方から係合し、前記第2係合部は、前記車両における前記車体部材を下方から係合する。
【0010】
上記態様に係る車椅子では、第1係合部および第2係合部で車両の開口部(例えば、前ドア開口部、後ドア開口部、後ゲート開口部)を形成する車体部材に対して第1係合部および第2係合部を係合することができるようになっている。そして、第1係合部と第2係合部とは、車椅子の前後方向および左右方向の少なくとも一方向で車体部材への係合位置が互いに異なるように設けられている。このような構成を備える上記態様に係る車椅子では、第1係合部と第2係合部とを車両の車体部材に係合させることにより、車椅子が回転(上方からの平面視での車椅子の回転)するような動きを抑制することが可能である。
【0011】
即ち、仮に第1係合部と第2係合部とが前後方向および左右方向の両方向で同じ位置で、車体部材に対して係合する場合には、車椅子利用者が車椅子と車両との間で乗り移りの際に車椅子利用者の移動方向とは反対向きにかかる力により、車体部材における第1係合部および第2係合部の係合位置を中心に車椅子が回転してしまうことが考えられる。これに対して、車体部材に対して第1係合部と第2係合部の係合位置が異なるように設けることにより、車椅子利用者が車椅子と車両との間での乗り移りの際に車椅子に上記のような力がかかったとしても、平面視で車椅子が回転するような動きを抑制することができる。よって、車両に対する車椅子利用者の乗降に際して、車椅子を車両に対して係合させることができ、車椅子利用者が不安を感じずに車両への乗降が可能となる。
【0012】
また、上記態様に係る車椅子では、第1係合部が車体部材に対して上方から、第2係合部が車体部材に対して下方から、それぞれ係合するので、2つの係合部で車体部材を上下に挟んだ状態で係合することができ、車椅子等に上下方向の振動などが加わったとしても係合が不所望に外れるようなことが抑制される。よって、より強固に車椅子を車両に係合させることができる。
【0016】
上記態様に係る車椅子において、前記車体部材は、上部が内装部材で覆われ、下部が外装部材で覆われており、前記第1係合部は、当該第1係合部と前記車体部材との間に前記内装部材を挟んだ状態で前記車体部材を係合し、前記第2係合部は、当該第2係合部と前記車体部材との間に前記外装部材を挟んだ状態で前記車体部材を係合する、としてもよい。
【0017】
上記のように、第1係合部と車体部材との間に内装部材を挟んだ状態で第1係合部が車体部材に対して係合し、第2係合部と車体部材との間に外装部材を挟んだ状態で第2係合部が車体部材に対して係合する構成の場合にも、車両の開口部を形成するために比較的剛性が高い車体部材に対して第1係合部および第2係合部が係合することで、車椅子利用者の乗り移りに際しても車椅子の回転を抑制することができる。また、内装部材および外装部材で車体部材を覆うことで車両の高いデザイン性を損なわない。
【0018】
上記態様に係る車椅子において、前記ボディフレームは、一対の第1ボディフレームおよび第2ボディフレームを有し、前記第1ボディフレームは、前記車椅子の前後方向に延びるメインフレームと、当該メインフレームに接続され、前記メインフレームから前記車椅子の前方且つ下方に延びるサブフレームと、を有し、前記第1係合部は、前記第1ボディフレームにおける前記メインフレームの前方部分に設けられており、前記第2係合部は、前記第1ボディフレームにおける前記サブフレームの前方部分に設けられている、としてもよい。
【0019】
上記のように、第1係合部が第1ボディフレームにおけるメインフレームの前方部分に設けられ、第2係合部が第1ボディフレームにおけるサブフレームの前方部分に設けられていることとすれば、車椅子において比較的高い剛性を有する部位(ボディフレームの構成部位)にこれら第1係合部および第2係合部を設けることができ、車両に対しての車椅子の係合を高い剛性で行うことができ、車椅子利用者の乗り移りに際しての安定感をより高めることができる。
【0020】
上記態様に係る車椅子において、前記ボディフレームは、一対の第1ボディフレームおよび第2ボディフレームを有し、前記第1ボディフレームは、前記車椅子の前後方向に延びるメインフレームと、当該メインフレームに接続され、前記メインフレームから前記車椅子の前方且つ下方に延びるサブフレームと、前記メインフレームに接続され、前記メインフレームよりも上方で前記車椅子の前後方向に延びるアームレストと、を有し、前記第1係合部は、前記第1ボディフレームにおける前記アームレストの前方部分に設けられており、前記第2係合部は、前記第1ボディフレームにおける前記サブフレームの前方部分に設けられている、としてもよい。
【0021】
上記のように、第1係合部が第1ボディフレームにおけるアームレストの前方部分に設けられ、第2係合部が第1ボディフレームにおけるサブフレームの前方部分に設けられていることとすれば、比較的高い剛性を有する部位(ボディフレームの構成部位)にこれら第1係合部および第2係合部を設けることができ、車両に対しての車椅子の係合を高い剛性で行うことができ、車椅子利用者の乗り移りに際しての安定感をより高めることができる。
本発明の別態様に係る車椅子は、車椅子利用者が着座する着座部と、前記着座部を支持するボディフレームと、前記ボディフレームに回転自在に軸支された車輪と、車両の開口部を形成する車体部材に対して係合する第1係合部および第2係合部と、を備え、前記第1係合部と前記第2係合部とは、該車椅子の前後方向および幅方向の少なくとも一方の方向で前記車体部材への係合位置が異なるように設けられており、前記ボディフレームは、一対の第1ボディフレームおよび第2ボディフレームを有し、前記第1ボディフレームは、前記車椅子の前後方向に延びるメインフレームと、当該メインフレームに接続され、前記メインフレームから前記車椅子の前方且つ下方に延びるサブフレームと、を有し、前記第1係合部は、前記第1ボディフレームにおける前記メインフレームの前方部分に設けられており、前記第2係合部は、前記第1ボディフレームにおける前記サブフレームの前方部分に設けられている。
上記態様に係る車椅子では、第1係合部および第2係合部で車両の開口部(例えば、前ドア開口部、後ドア開口部、後ゲート開口部)を形成する車体部材に対して第1係合部および第2係合部を係合することができるようになっている。そして、第1係合部と第2係合部とは、車椅子の前後方向および左右方向の少なくとも一方向で車体部材への係合位置が互いに異なるように設けられている。このような構成を備える上記態様に係る車椅子では、第1係合部と第2係合部とを車両の車体部材に係合させることにより、車椅子が回転(上方からの平面視での車椅子の回転)するような動きを抑制することが可能である。
即ち、仮に第1係合部と第2係合部とが前後方向および左右方向の両方向で同じ位置で、車体部材に対して係合する場合には、車椅子利用者が車椅子と車両との間で乗り移りの際に車椅子利用者の移動方向とは反対向きにかかる力により、車体部材における第1係合部および第2係合部の係合位置を中心に車椅子が回転してしまうことが考えられる。これに対して、車体部材に対して第1係合部と第2係合部の係合位置が異なるように設けることにより、車椅子利用者が車椅子と車両との間での乗り移りの際に車椅子に上記のような力がかかったとしても、平面視で車椅子が回転するような動きを抑制することができる。よって、車両に対する車椅子利用者の乗降に際して、車椅子を車両に対して係合させることができ、車椅子利用者が不安を感じずに車両への乗降が可能となる。
また、上記態様に係る車椅子では、第1係合部が第1ボディフレームにおけるメインフレームの前方部分に設けられ、第2係合部が第1ボディフレームにおけるサブフレームの前方部分に設けられているので、車椅子において比較的高い剛性を有する部位(ボディフレームの構成部位)にこれら第1係合部および第2係合部を設けることができ、車両に対しての車椅子の係合を高い剛性で行うことができ、車椅子利用者の乗り移りに際しての安定感をより高めることができる。
本発明の更に別態様に係る車椅子は、車椅子利用者が着座する着座部と、前記着座部を支持するボディフレームと、前記ボディフレームに回転自在に軸支された車輪と、車両の開口部を形成する車体部材に対して係合する第1係合部および第2係合部と、を備え、前記第1係合部と前記第2係合部とは、該車椅子の前後方向および幅方向の少なくとも一方の方向で前記車体部材への係合位置が異なるように設けられており、前記ボディフレームは、一対の第1ボディフレームおよび第2ボディフレームを有し、前記第1ボディフレームは、前記車椅子の前後方向に延びるメインフレームと、当該メインフレームに接続され、前記メインフレームから前記車椅子の前方且つ下方に延びるサブフレームと、前記メインフレームに接続され、前記メインフレームよりも上方で前記車椅子の前後方向に延びるアームレストと、を有し、前記第1係合部は、前記第1ボディフレームにおける前記アームレストの前方部分に設けられており、前記第2係合部は、前記第1ボディフレームにおける前記サブフレームの前方部分に設けられている。
上記態様に係る車椅子では、第1係合部および第2係合部で車両の開口部(例えば、前ドア開口部、後ドア開口部、後ゲート開口部)を形成する車体部材に対して第1係合部および第2係合部を係合することができるようになっている。そして、第1係合部と第2係合部とは、車椅子の前後方向および左右方向の少なくとも一方向で車体部材への係合位置が互いに異なるように設けられている。このような構成を備える上記態様に係る車椅子では、第1係合部と第2係合部とを車両の車体部材に係合させることにより、車椅子が回転(上方からの平面視での車椅子の回転)するような動きを抑制することが可能である。
即ち、仮に第1係合部と第2係合部とが前後方向および左右方向の両方向で同じ位置で、車体部材に対して係合する場合には、車椅子利用者が車椅子と車両との間で乗り移りの際に車椅子利用者の移動方向とは反対向きにかかる力により、車体部材における第1係合部および第2係合部の係合位置を中心に車椅子が回転してしまうことが考えられる。これに対して、車体部材に対して第1係合部と第2係合部の係合位置が異なるように設けることにより、車椅子利用者が車椅子と車両との間での乗り移りの際に車椅子に上記のような力がかかったとしても、平面視で車椅子が回転するような動きを抑制することができる。よって、車両に対する車椅子利用者の乗降に際して、車椅子を車両に対して係合させることができ、車椅子利用者が不安を感じずに車両への乗降が可能となる。
また、上記態様に係る車椅子では、第1係合部が第1ボディフレームにおけるアームレストの前方部分に設けられ、第2係合部が第1ボディフレームにおけるサブフレームの前方部分に設けられているので、比較的高い剛性を有する部位(ボディフレームの構成部位)にこれら第1係合部および第2係合部を設けることができ、車両に対しての車椅子の係合を高い剛性で行うことができ、車椅子利用者の乗り移りに際しての安定感をより高めることができる。
上記態様に係る車椅子において、前記車両の開口部を形成する車体部材に対して係合する第3係合部を更に備え、前記第3係合部は、該車椅子の前後方向および幅方向の少なくとも一方の方向で前記車体部材への係合位置が、前記第1係合部および前記第2係合部の少なくとも一方の係合部に対して異なるように設けられている、としてもよい。
上記のように、第1係合部および第2係合部に加えて第3係合部を備える構成を採用し、少なくとも3つの係合部が車体部材と係合することとすれば、第1係合部および第2係合部の2つの係合部で車体部材に対して係合する場合に比べて更に安定して車椅子を車両に係合させることができる。また、車体部材に対する第3係合部の係合位置を第1係合部および第2係合部の少なくとも一方の係合位置に対して前後方向および左右方向の少なくとも一方の方向に異なる位置に設けられているので、平面視で車椅子が回転するような動きを更に効果的に抑制することができる。よって、上記構成を採用する場合には、車両に対する車椅子利用者の乗降に際して、車椅子利用者がより不安を感じずに車両への乗降が可能となる。
【発明の効果】
【0022】
上記の各態様に係る車椅子では、車両との間での車椅子利用者の乗り移りに際して、車両に対して安定した状態で係合することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の実施形態に係る車椅子の構成を示す斜視図である。
図2】車椅子の係合部の構成を示す平面図である。
図3】車椅子の係合部の可動形態を示す側面図である。
図4】車両に対して車椅子を近接させて係合した状態を示す平面図である。
図5】車両のサイドシルに対する係合部の係合形態を示す斜視図である。
図6】車両のサイドシルに対する係合部の係合形態を示す断面図である。
図7】(a)は、実施形態に係る車椅子の車両に対する係合状態を示す模式図であり、(b)は、参考例に係る車椅子の車両に対する係合状態を示す模式図である。
図8】変形例1に係る車椅子の構成を示す側面図である。
図9】変形例2に係る車椅子の構成を示す側面図である。
図10】変形例3に係る車椅子の構成を示す斜視図である。
図11】変形例4に係る車椅子の構成を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下では、本発明の実施形態について、図面を参酌しながら説明する。なお、以下で説明の形態は、本発明を例示的に示すものであって、本発明は、その本質的な構成を除き何ら以下の形態に限定を受けるものではない。
【0025】
[実施形態]
1.車椅子1の構成
図1は、本発明の実施形態に係る車椅子1の構成を示す斜視図である。
【0026】
図1に示すように、本実施形態に係る車椅子1は、ボディフレーム10と、後車輪13,14と、前車輪15,16と、フットレスト用フレーム17と、フットレスト18a,18bと、着座部19と、係合部20,21と、を備える。ボディフレーム10は、左ボディフレーム11と右ボディフレーム12とを有する。
【0027】
左ボディフレーム11は、メインフレーム111とサブフレーム112とを有する。メインフレーム111は、前後方向(X方向)に延びている。メインフレーム111とサブフレーム112とは、X方向における後側で接合されており、サブフレーム112は、メインフレーム111との接合箇所から前方且つ下方に延びている。左ボディフレーム11におけるメインフレーム111とサブフレーム112とは、Y方向からの側面視でV字形状をなすように設けられている。
【0028】
右ボディフレーム12も、メインフレーム121とサブフレーム122とを有する。右ボディフレーム12におけるメインフレーム121とサブフレーム122とについても、X方向の後側で接合されており、X方向の前側に行くに従って互いの間隔が広がっており、Y方向からの側面視でV字形状をなすように設けられている。
【0029】
着座部19は、左ボディフレーム11のメインフレーム111と右ボディフレーム12のメインフレーム121とによって支持されている。着座部19は、車椅子利用者が着座するシートクッション191を有している。なお、詳細な説明を省略するが、本実施形態に係る車椅子1では、ボディフレーム10に対して着座部19が着脱可能に構成されている。
【0030】
左後車輪13は、左ボディフレーム11に対して回転自在に軸支されている。右後車輪14は、右ボディフレーム12に対して回転自在に軸支されている。
【0031】
左前車輪15は、左ボディフレーム11におけるサブフレーム112の先端部分(X方向の前方部分)に回転自在に軸支されている。右前車輪16は、右ボディフレーム12におけるサブフレーム122の先端部分(X方向の前方部分)に回転自在に軸支されている。
【0032】
フットレスト用フレーム17は、左ボディフレーム11におけるサブフレーム112の先端部分と右ボディフレーム12におけるサブフレーム122の先端部分とを繋ぐようにY方向に向けて延びている。フットレスト18aとフットレスト18bとは、フットレスト用フレーム17に取り付けられ、Y方向に間隔を空けて並設されている。
【0033】
係合部20,21は、先端部(X方向の前方部分)が鏃状をしており、根元側(X方向の後方部分)である取付部20a,21aで右ボディフレーム12におけるサブフレーム122に取り付けられている。なお、係合部20が第2係合部に該当し、係合部21が第1係合部に該当する。
【0034】
2.係合部20,21の構成
図2は、車椅子1の係合部20,21の構成を示す平面図である。
【0035】
図2に示すように、係合部20は、サブフレーム122の前方部分122aにおいて、外側面122bに取付部20aが取り付けられている。係合部21は、同じくサブフレーム122の前方部分122aにおいて、内側面122cに取付部21aが取り付けられている。
【0036】
係合部20および係合部21のそれぞれは、X方向(前後方向)の前方に向けて延びており、各先端部分にフック部20b,21bを有する。
【0037】
ここで、係合部20の取付部20aと係合部21の取付部21aとは、X方向(前後方向)にG1だけ離間しており、Y方向(左右方向)にサブフレーム122の厚みに相当するG2だけ離間している。そして、係合部20のフック部20bと係合部21のフック部21bといついても、X方向およびY方向に離間するように設けられている。
【0038】
3.係合部20,21の可動形態
図3は、車椅子1の係合部20,21の可動形態を示す側面図である。
【0039】
図3に示すように、係合部20は、取付部20aを支点に矢印Aのように回動可能となっている。なお、図示および詳細説明を省略するが、係合部20は、車椅子利用者等の操作により、回動を規制することができるようになっている。
【0040】
係合部21も、取付部21aを支点に矢印Bのように回動可能となっている。係合部21についても、係合部20と同様に、車椅子利用者等の操作により、回動を規制することができるようになっている。
【0041】
4.車両500に対する車椅子1の係合
図4は、車両500に対して車椅子1を近接させて係合部20,21を係合させた状態を示す平面図である。図5は、車両500のサイドシル(構造部材)504に対して係合部20,21を係合させた状態を示す斜視図である。図6は、車両500のサイドシル504に対して係合部20,21を係合させた状態を示す断面図である。
【0042】
図4に示すように、車椅子利用者が車両500におけるシート502のシート座部503と車椅子1のシートクッション191との間で乗り移りを行う場合には、矢印Cで示すように車両500のドア(本実施形態では、一例として左ドア)501を開き、矢印Dで示すように乗降口(開口部)500aに車椅子1を近接させる。
【0043】
次に、車椅子利用者や介助者は、係合部20,21を車両500のサイドシル504に対して係合させ(矢印Eで示す部分)、さらに図示を省略している車椅子1のブレーキを掛ける。これにより、車両500に対して車椅子1が係合されることになる。
【0044】
図5に示すように、車両500のサイドシル504には、係合部21との係合のための凹部504aが設けられている。図6に示すように、係合部21は、フック部21bによりサイドシル504を上方から係合し、係合部20は、フック部20bによりサイドシル504を下方から係合する。
【0045】
ここで、図6に示すように、サイドシル504は、上部が内装トリム(内装部材)505で覆われており、下部がガーニッシュ(外装部材)506で覆われている。係合部21のフック部21bは、内装トリム505を間に挟んでサイドシル504を係合し、係合部20のフック部20bは、ガーニッシュ506を間に挟んでサイドシル504を係合する。
【0046】
なお、図5に示すように、サイドシル504に対する係合部20の係合位置(フック部20bの係合位置)と、サイドシル504に対する係合部21の係合位置(フック部21bの係合位置)と、は車両500の前後方向でG3だけ離間した位置に設定されている。
【0047】
5.車両500に対する車椅子1の係合に係る安定性
図7(a)は、本実施形態に係る車椅子1において、車両500に対して係合部20,21が係合した状態を示す模式図であり、図7(b)は、参考例に係る車椅子において、車両に対して係合部90,91が係合した状態を示す模式図である。
【0048】
図7(a)に示すように、車両500に対して係合部20,21が係合した状態の車椅子1を上方から見ると、X方向に互いの取付部20a,21aがG1だけ離間し、Y方向にG2だけ離間した位置に係合部20の取付部20aと係合部21の取付部21aとが設けられている。そして、本実施形態では、サイドシル504に対する係合部20の係合位置と係合部21の係合位置(フック部20b,21bの係合位置)も車両500の前後方向にG3だけ離間している。
【0049】
一方、図7(b)に示すように、車両500に対して係合部90,91が係合した状態の参考例に係る車椅子9を上方から見ると、係合部90の取付部90aと係合部1の取付部91aとが同じ位置に配置され、サイドシル504に対する係合部90の係合位置と係合部91の係合位置(フック部90,91bの係合位置)も同じ位置(車両の前後方向および左右方向の両方向で同じ位置)に配置されている。なお、図示の都合上、係合部90と係合部91とを少し離れた状態で示しているが、参考例に係る車椅子9では、上方からの平面視で係合部90と係合部91とは重なった状態でサイドシル504に対して係合されるようになっている。
【0050】
図7(b)に示す参考例の車椅子9では、車椅子利用者が車両500と車椅子9との間で乗り移りを行おうとした場合には、車椅子利用者の動きによって車椅子9に対してFのような回転力が作用する。この場合に、上方からの平面視でサイドシル504に対して係合部90と係合部91とが同じ位置に係合する参考例の場合には、箇所P2を中心に車椅子9が回転するように動くことが考えられる。
【0051】
また、参考例の場合には、取付部90aと取付部91aとが平面視で同じ位置に配置されているので、箇所P1を中心に車椅子9が回転するように動くことも考えられる。
【0052】
一方、本実施形態に係る車椅子1では、車両500のサイドシル504に対する係合部20による係合位置と係合部21による係合位置とが車両500の前後方向にG3だけ離間した位置となるようにしているので、サイドシル504に対する係合箇所を中心とするような車椅子1の回転するような動きも抑制される。
【0053】
また、本実施形態に係る車椅子1では、係合部20の取付部20aと係合部21の取付部21aとがX方向にG1、Y方向にG2だけ離間して配置されているので、車椅子利用者の乗り移りに際して車椅子1に力が掛かっても車椅子1の回転するような動きが抑制される。
【0054】
以上のように、本実施形態に係る車椅子1では、車両500との間での車椅子利用者の乗り移りに際して、車両500に対して安定した状態で係合することができる。
【0055】
[変形例1]
図8は、変形例1に係る車椅子2の構成を示す側面図である。なお、本変形例に係る車椅子2は、右ボディフレーム12における係合部22を設けている箇所が異なる点を除き、上記実施形態に係る車椅子1と同様の構造を有しているので、当該同様の構造部分についての説明を省略する。
【0056】
図8に示すように、本変形例に係る車椅子2においても、2つの係合部20,22を備える。係合部(第2係合部)20の取付部20aは、上記実施形態に係る車椅子1と同様に、右ボディフレーム12のサブフレーム122における前方部分122aに取り付けられている。そして、上記同様に、係合部20は取付部20aを中心に回動可能となっている。
【0057】
本変形例に係る車椅子2では、もう一方の係合部(第1係合部)22の取付部22aが、右ボディフレーム12のメインフレーム121の前方部分121aに取り付けられている。そして、係合部22についても、取付部22aを中心に回動可能となっている。
【0058】
ここで、車椅子2では、係合部20と係合部22とが、少なくともX方向(前後方向)に離間した状態で設けられている。具体的には、係合部20の取付部20aと係合部22の取付部22aとは、X方向に離間した位置に配置されている。
【0059】
なお、図8では、車両の開口部を形成する車体部材(例えば、サイドシル)に対する係合部20の係合位置と係合部22の係合位置との位置関係については図示をしていないが、上記実施形態と同様に、車両の前後方向および左右方向の少なくとも一方で異なる。
【0060】
以上のような構成を有する車椅子2でも、車体部材に対する係合部20の係合位置と係合部22の係合位置とが車両の前後方向および左右方向に異なる構成としているので、上記実施形態に係る車椅子1と同様の効果を得ることができる。
【0061】
また、本変形例に係る車椅子2では、係合部22が右ボディフレーム12におけるメインフレーム121に取り付けられている。即ち、車椅子2では、係合部22が着座部19に着座した車椅子利用者により近い箇所に設けられており、車体部材に対する係合部22の係合および解除を車椅子利用者がし易くなっている。
【0062】
[変形例2]
図9は、変形例2に係る車椅子3の構成を示す側面図である。なお、本変形例に係る車椅子3は、右ボディフレーム23における係合部24を設けている箇所が異なる点を除き、上記実施形態に係る車椅子1と同様の構造を有しているので、当該同様の構造部分についての説明を省略する。
【0063】
図9に示すように、本変形例に係る車椅子3のボディフレーム30は、右ボディフレーム23を備える。右ボディフレーム23は、上記同様にメインフレーム231およびサブフレーム232を有するのに加え、車椅子利用者が着座部19に着座した際に腕を載せることができるアームレスト233を有する。アームレスト233は、メインフレーム231のZ方向上方で、X方向(前後方向)に延びる延伸部分233aを有する。
【0064】
車椅子3において、係合部(第2係合部)20の取付部20aは、上記実施形態に係る車椅子1と同様に、右ボディフレーム23のサブフレーム232における前方部分232aに取り付けられている。そして、上記同様に、係合部20は取付部20aを中心に回動可能となっている。
【0065】
本変形例に係る車椅子3では、もう一方の係合部(第1係合部)24の取付部24aが、右ボディフレーム23のアームレスト233の前方部分233bに取り付けられている。そして、係合部24についても、取付部24aを中心に回動可能となっている。
【0066】
ここで、車椅子3でも、係合部20と係合部24とが、少なくともX方向(前後方向)に離間した状態で設けられている。具体的には、係合部20の取付部20aと係合部24の取付部24aとは、X方向に離間した位置に配置されている。
【0067】
なお、図9でも、車両の開口部を形成する車体部材(例えば、サイドシル)に対する係合部20の係合位置と係合部24の係合位置との位置関係については図示をしていないが、上記実施形態と同様に、車両の前後方向および左右方向の少なくとも一方で異なる。
【0068】
以上のような構成を有する車椅子3でも、車体部材に対する係合部20の係合位置と係合部24の係合位置とが車両の前後方向および左右方向に異なる構成としているので、上記実施形態に係る車椅子1と同様の効果を得ることができる。
【0069】
また、本変形例に係る車椅子3では、係合部24が右ボディフレーム23におけるアームレスト233に取り付けられている。即ち、車椅子3では、係合部24が着座部19に着座した車椅子利用者に更に近い箇所に設けられており、車体部材に対する係合部24の係合および解除を車椅子利用者がし易くなっている。
【0070】
[変形例3]
図10は、変形例3に係る車椅子4の構成を示す斜視図である。なお、本変形例に係る車椅子4は、ボディフレーム10における係合部25を設けている箇所が異なる点を除き、上記実施形態に係る車椅子1と同様の構造を有しているので、当該同様の構造部分についての説明を省略する。
【0071】
図10に示すように、本変形例に係る車椅子4においても、2つの係合部20,25を備える。係合部(第2係合部)20の取付部20aは、上記実施形態に係る車椅子1と同様に、右ボディフレーム12のサブフレーム122における前方部分122aに取り付けられている。そして、上記同様に、係合部20は取付部20aを中心に回動可能となっている。
【0072】
本変形例に係る車椅子4では、もう一方の係合部(第1係合部)25の取付部25aが、左ボディフレーム11のサブフレーム112の前方部分112aに取り付けられている。そして、係合部25についても、取付部25aを中心に回動可能となっている。
【0073】
ここで、車椅子4では、係合部20と係合部25とが、X方向(前後方向)およびY方向(左右方向)の両方向に離間した状態で設けられている。具体的には、係合部20の取付部20aと係合部25の取付部25aとは、X方向に離間した位置に配置されているとともに、Y方向に大きく離間した状態で設けられている。
【0074】
なお、図10でも、車両の開口部を形成する車体部材(例えば、サイドシルやドア)に対する係合部20の係合位置と係合部25の係合位置との位置関係については図示をしていないが、上記実施形態と同様に、車両の前後方向と左右方向のうち、少なくとも前後方向で異なる。
【0075】
係合部25については、車両500のサイドシル504に対して係合するようにしてもよいが、ドア(左ドア)501の所定の箇所(例えば、ドアポケット付近など)に対して係合するようにしてもよい。
【0076】
以上のような構成を有する車椅子4でも、車体部材に対する係合部20の係合位置と係合部25の係合位置とが車両の前後方向および左右方向のうちの少なくとも前後方向に異なる構成としているので、上記実施形態に係る車椅子1と同様の効果を得ることができる。
【0077】
また、本変形例に係る車椅子4では、車体部材に対する係合部20の係合位置と係合部25の係合位置とが、上記実施形態などと比べて車両の前後方向に大きく異なるようにしているので、車椅子利用者による車両500との間での乗り移りに際して、より安定して車両500に対して車椅子4を係合させることができる。
【0078】
[変形例4]
図11は、変形例4に係る車椅子の構成を示す斜視図である。なお、本変形例に係る車椅子5は、3つの係合部20,21,26を備える異なる点を除き、上記実施形態に係る車椅子1と同様の構造を有しているので、当該同様の構造部分についての説明を省略する。
【0079】
図11に示すように、本変形例に係る車椅子5では、係合部(第2係合部)20の取付部20aが、上記実施形態に係る車椅子1と同様に、右ボディフレーム12のサブフレーム122における前方部分に取り付けられている。そして、上記同様に、係合部20は取付部20aを中心に回動可能となっている。
【0080】
また、係合部(第1係合部)21の取付部22aも、上記実施形態に係る車椅子1と同様に、右ボディフレーム12のサブフレーム122における前方部分に取り付けられている。そして、係合部22についても、取付部22aを中心に回動可能となっている。
【0081】
係合部20と係合部21とは、上記実施形態で説明の通り、X方向およびY方向に互いに異なる位置に設けられている。そして、本変形例でも、車体部材に対する係合部20の係合位置と係合部21の係合位置とが、車両の前後方向および左右方向の少なくとも一方に異なるように構成されている。
【0082】
係合部(第3係合部)26の取付部26aは、上記変形例3の係合部25と同様に、左ボディフレーム11のサブフレーム112における前方部分に取り付けられている。そして、上記同様に、固定部26は取付部26aを中心に回動可能となっている。
【0083】
ここで、本変形例では、一例として、係合部20および係合部21は、車両500のサイドシル504に対して、車両500の前後方向に互いに離れた箇所を係合し、係合部26は、車両における前後方向および左右方向の一方で係合部20,21と異なる箇所、例えば、左ドア501の所定の箇所を係合するように設けられている。即ち、本変形例では、係合部26も、車体部材に対して係合可能となっている。
【0084】
以上のような構成を有する車椅子5では、3つの係合部20,21,26を備え、当該3つの係合部20,21,26が車両の前後方向および左右方向の少なくとも一方に異なる位置で車体部材に対して係合する構成としているので、車両に対しての係合において上記実施形態に係る車椅子1にも増して安定する。
【0085】
[その他の変形例]
上記実施形態では、右ボディフレーム12のサブフレーム122に2つの係合部20,21を設けることとしたが、本発明は、これに限定を受けるものではない。例えば、左ボディフレーム11のサブフレーム112に2つの係合部を設けることとしてもよい。また、左右のボディフレームの何れかのメインフレームに2つの係合部を設けることとしてもよい。
【0086】
上記実施形態および上記変形例1,2では、第1係合部21,22,24が開口部を形成する車体部材であるサイドシル504を上方から係合し、第2係合部20がサイドシル504を下方から係合することとしたが、本発明は、これに限定を受けるものではない。例えば、第1係合部および第2係合部が、ともに車体部材の上方または下方から係合することとしてもよい。
【0087】
上記実施形態および上記変形例1,2,3では、2つの係合部20,21,22,24,25を備えることとし、上記変形例4では、3つの係合部20,21,26を備えることとしたが、本発明は、4つ以上の係合部を備える構成を採用することもできる。係合部の数は、多ければ多いほど、車両に対する車椅子の係合をより安定させることができる。
【0088】
上記実施形態では、車両500の左ドア501を開けて車椅子利用者が乗り移ることとしたが、本発明は、これに限定を受けるものではない。例えば、右ドアを開けて車両との間を乗り移ることとしてもよいし、車両の後ドアを開けて車両との間を乗り移ることとしてもよい。さらに、後ゲートを開けて車両との間を乗り移ることとしてもよい。
【0089】
上記実施形態では、車両500の車体部材の一例としてサイドシル504を適用することとしたが、本発明は、これに限定を受けるものではない。例えば、シートフレームやドアなど、開口部を形成する車体部材など種々の部材を係合対象とすることが可能である。
【0090】
上記変形例4では、3つの係合部20,21,26を備え、これら係合部20,21,26の全てで車体部材に対して係合することとしたが、本発明では、3つ以上の係合部を備え、そのうちの一部である2つ以上の係合部を車両の車体部材に対して係合することとしてもよい。
【0091】
また、本発明では、複数の係合部の全部または一部を収納可能あるいは取り外し可能としてもよい。これにより、車両との間の乗り移り時以外のときには係合部を収納あるいは取り外すことで、車椅子利用者が車椅子に乗って移動する際などに邪魔になり難い。
【0092】
上記実施形態および上記変形例1,3,4では、アームレストを具備しないボディフレーム10を採用することとしたが、本発明では、これらのボディフレームにアームレストを具備することもできる。
【0093】
また、本発明は、上記実施形態および上記変形例1,2,3,4を適宜に組み合わせることも可能である。
【0094】
上記実施形態および上記変形例1,2,3,4では、係合部20,21,22,24,25の回動に係る軸心がY方向(左右方向)であるという構成を採用したが、本発明は、これに限定を受けるものではない。係合部の回動に係る軸心がX方向やZ方向、あるいは斜め方向である構成を採用することもできる。車両における被係合部となる車体部材の構成に応じて適宜に決めることができる。
【符号の説明】
【0095】
1,2,3,4,5 車椅子
10,30 ボディフレーム
13,14 車輪
19 着座部
20 係合部(第2係合部)
21,22,24,25 係合部(第1係合部)
26 係合部(第3係合部)
111,121,231 メインフレーム
112,122,232 サブフレーム
233 アームレスト
500 車両
500a 乗降口(開口部)
504 サイドシル(車体部材)
505 内装トリム(内装部材)
506 ガーニッシュ(外装部材)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11