(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-20
(45)【発行日】2023-09-28
(54)【発明の名称】棒状化粧料繰り出し容器
(51)【国際特許分類】
A45D 40/04 20060101AFI20230921BHJP
【FI】
A45D40/04 Z
(21)【出願番号】P 2020204704
(22)【出願日】2020-12-10
【審査請求日】2023-01-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000140915
【氏名又は名称】株式会社カツシカ
(72)【発明者】
【氏名】垂水 博士
【審査官】宮部 愛子
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-194227(JP,A)
【文献】実開平5-48815(JP,U)
【文献】特開平11-225823(JP,A)
【文献】特表2019-532705(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A45D 40/02-40/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
棒状化粧料(1)を保持し、下部側壁に突子(23)を径方向に突設した保持筒(2)と、
該保持筒(2)を摺動自在に内装し、下部側壁に保持筒(2)の突子(23)が貫通する案内溝(32)を軸線と平行に穿設し、該案内溝(32)より上方に第1突リブ(34)及び第2突リブ(35)を周方向にそれぞれ突設したスリーブ(3)と、
該スリーブ(3)下部に回動自在に保持し、内周壁に前記案内溝(32)を貫通した保持筒(2)の突子(23)が螺合するラセン溝(41)を螺設し、上端に連結部(42)を設け、該連結部(42)の内側壁に前記スリーブ(3)の第1突リブ(34)と回動自在に脱落不能に係合したラセン筒(4)と、
該ラセン筒(4)の連結部(42)先端とスリーブ(3)の第2突リブ(35)の間に保持したOリング(5)と、
前記ラセン筒(4)が挿入され、回動不能に保持したハカマ筒(7)と、
該ハカマ筒(7)の上端に止着され、前記ラセン筒(4)を脱落不能に保持し、上端に嵌合部(82)を設け、内側壁に前記スリーブ(3)の第2突リブ(35)が当接してスリーブ(3)を回動自在に脱落不能に保持する段部(83)を設け、更に前記Oリング(5)が弾性を有して摺接する中筒(8)と、
該中筒(8)の嵌合部(82)に着脱自在に嵌合し、前記スリーブ(3)上部を覆うキャップ(6)と、
から成ることを特徴とする棒状化粧料繰り出し容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器自体のガタ付きを少なくし、かつ棒状化粧料の繰り出し操作感を向上させた口紅、スティックファンデーションなどの棒状化粧料繰り出し容器の改良に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、棒状化粧料を保持した保持筒と、この保持筒を上下摺動自在に収納したスリーブと、このスリーブ外周に回動自在に配置し保持筒を上下動させるラセン筒とが主な構成要素となる棒状化粧料繰り出し機構を備えた容器は、保持筒に上方向ばかりでなく、下方向からもアクセスできることから、棒状化粧料の上方直接充填方法及び後方直接充填方法に対応する容器として数多く利用されていた。
【0003】
上記繰り出し機構に関して特許文献1に於いては、突子(係合ピン7)を設けた保持筒(皿部材4)と、この保持筒を上下摺動自在に収納し下部側壁に前記突子が貫通する案内溝(切欠部3)を穿設したスリーブ(筒部材1)と、このスリーブの下部に回動自在に保持し内側壁に案内溝を貫通した保持筒の突子が螺合するラセン溝(螺旋溝10)を螺設したラセン筒(螺旋部材8)とより成り、前記スリーブは突リブ(係止片2)を周方向に突設し案内溝を下端に開溝させ、ラセン筒は上端にスリーブの突リブと回動自在に係合する複数の舌片(係合片12)を設けラセン溝を上端に開溝させた棒状化粧料容器が提案されている。
【0004】
また、特許文献2に於いては、突子(突起15)を設けた保持筒(中皿体13)と、この保持筒を上下摺動自在に収納し中程に突リブ(摺動部5)を周方向に突設し下部側壁に前記突子が貫通する案内溝(摺動孔4)を穿設したスリーブ(本体3)と、このスリーブの突リブと回動自在に係合する舌片(作用部17)を設け内側壁に案内溝を貫通した保持筒の突子が螺合するラセン溝(螺旋溝11)を螺設したラセン筒(外筒体9)とより成り、前記舌片の外側壁にリブ(リブ19)を突設し、外装体(中具7)の内側壁に弾性を有して摺接させた棒状化粧料容器が提案されている。
【0005】
また、特許文献3に於いては、突子(係合ピン14)を設けた保持筒(皿部材12)と、この保持筒を上下摺動自在に収納し中程に突リブ(環状凸部2)を周方向に突設し下部側壁に前記突子が貫通する案内溝(切り割り溝3)を穿設したスリーブ(内筒部材1)と、このスリーブの突リブと回動自在に係合する舌片(係止突片6)を設け内側壁に案内溝を貫通した保持筒の突子が螺合するラセン溝(ラセン溝5)を螺設したラセン筒(ラセン部材4)とより成り、軟質材より成形されラセン筒の外周に弾性を有して摺接する摺接部材(摺動部材8)を前記ラセン筒の舌片に嵌合した棒状化粧料容器が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平8-47421号公報
【文献】特開平8-266331号公報
【文献】特開2007-175285号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に於いては、組み立て時突子を案内溝に挿入する際、及びラセン溝に挿入する際、案内溝はスリーブ下端に開溝しており、ラセン溝はラセン筒上端に開溝しているため、スリーブ下端より保持筒を挿入して、突子を案内溝に突入させた後、スリーブ下端をラセン筒上端より挿入して、保持筒の突子をラセン溝に突入させる。そして、スリーブの突リブにラセン筒の舌片を係合させて、スリーブとラセン筒を回動自在に脱落不能に連結できる。その結果、保持筒の突子は、スリーブの案内溝の上端に当接して保持筒の上昇限となり、ラセン筒のラセン溝下端に当接して保持筒の下降限となっていた。
【0008】
しかし、特許文献1の構成は、筒体の組み合わせにより成り立っているため、各部材間に少なからずガタツキが生じていた。その結果、繰り出し操作感も各部材間の擦れ合いによる摺動抵抗に依存しており、個体ごとにバラツキが生じ、均一性がなかった。
【0009】
特許文献2に於いては、ラセン筒の舌片にリブを設け、このリブを外装体の内壁に弾性を有して当接させることにより、スリーブの突リブとラセン筒の舌片の係合が、弾性を有して接触した係合となっていた。この弾性を有した係合により、各部材間のガタツキが吸収され、相対回転時に摺動抵抗が生じ良好な繰り出し操作感に調整していた。
【0010】
しかし、舌片は合成樹脂製であり、常時応力を加えて弾発力を発生させているため、継時によってクリープが発生し、弾性が失われてしまう。その結果、摺動抵抗が失われ、良好な繰り出し操作感が失われてしまった。
【0011】
特許文献3に於いては、ラセン筒の舌片に軟質材より成形され、弾性を有した摺接部材を嵌合し、この摺接部材をスリーブ外周に摺接させていた。この弾性を有した摺接によって、各部材間のガタ付きが吸収され、相対回転時に摺動抵抗が生じ良好な繰り出し操作感に調整していた。この摺接部材は、軟質材であるNBRゴム等を利用すれば、クリープ性が低く、半永久的に弾性を利用することができた。
【0012】
しかし、この摺接部材は専用の形状をしているため、専用の金型が必要であった。また、軟質材を成形する関係から、生産性があまり高くなく、部品コストが高くなってしまった。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の棒状化粧料繰り出し容器は、保持筒2と、スリーブ3と、ラセン筒4と、Oリング5と、ハカマ筒7と、中筒8と、キャップ6とより構成する。
【0014】
棒状化粧料1を保持する保持筒2は、下部側壁に突子23を径方向に突設する。この保持筒2を摺動自在に内装するスリーブ3は、下部側壁に保持筒2の突子23が貫通する案内溝32を軸線と平行に穿設し、この案内溝32より上方に第1突リブ34及び第2突リブ35を周方向にそれぞれ突設する。このスリーブ3の下部に回動自在に保持するラセン筒4は、内周壁に前記案内溝32を貫通した保持筒2の突子23が螺合するラセン溝41を螺設し、上端に連結部42を設け、この連結部42の内側壁に前記スリーブ3の第1突リブ34と回動自在に脱落不能に係合する。Oリング5は、このラセン筒4の連結部42の先端とスリーブ3の第2突リブ35の間に保持する。ハカマ筒7は、前記ラセン筒4が挿入され、回動不能に保持する。このハカマ筒7の上端に止着する中筒8は、前記ラセン筒4を脱落不能に保持し、上端に嵌合部82を設け、内周壁に前記スリーブ3の第2突リブ35が当接してスリーブ3を回動自在に脱落不能に保持する段部83を設け、更に内側壁に前記Oリング5が弾性を有して摺接する。キャップ6は、この中筒8の嵌合部82に着脱自在に嵌合し、前記スリーブ3の上部を覆う。
【発明の効果】
【0015】
本発明の棒状化粧料繰り出し容器を組み立てる場合、(1)スリーブ3外周の第1突リブ34と第2突リブ35の間にOリング5をセットする。(2)スリーブ3の下方より保持筒2をセットし、保持筒2の突子23をスリーブ3の案内溝32に係合させる。(3)スリーブ3の下部にラセン筒4をセットし、ラセン筒4の連結部42とスリーブ3の第1突リブ34を回動自在に係合させ、ラセン筒4のラセン溝41に保持筒2の突子23を螺合させる。Oリング5がスリーブ3の第2突リブ35とラセン筒3の連結部42先端の間に位置決めされる。(4)ラセン筒4をハカマ筒7にセットし、回動不能に係合させる。(5)ハカマ筒7の上端に中筒8を止着し、中筒8の段部83にスリーブ3の第2突リブ35を当接させ、ラセン筒4がハカマ筒7の底面に当接する事によりスリーブ3を回動自在に保持する。同時に、中筒8の内面にOリング5を弾性を有して摺接させる。(6)棒状化粧料1充填後、中筒8の嵌合部82にキャップ6を嵌合する。以上で、容器が完成する。
【0016】
以上のように本発明棒状化粧料繰り出し容器が組み立てられる。このうち、前述した工程(1)~(3)によって棒状化粧料1の繰り出し機構部分を組み立てているが、すべてスリーブ3の下方よりの組み付けによって行われる。従って、繰り出し機構部分の組み立ての自動化が容易に行えるようになっている。
【0017】
また、スリーブ3は、第1突リブ34がラセン筒4の連結部42に回動自在に連結し、加えて第2突リブ35が中筒8の段部83に当接し、ラセン筒3の下端がハカマ筒7の底面に当接して、スリーブ3を回動自在に保持している。その結果、スリーブ3は、第1突リブ34及び第2突リブ35により2重に係合保持されており、保持筒2、スリーブ3、ラセン筒4、中筒8、及びハカマ筒7のガタツキを最小限にすることができる。
【0018】
更に、摺動抵抗を発生させる弾性部材に汎用性の高いOリング5を使用したため、既製品も多く存在し、既製品の中から選択すれば、金型代などのイニシャルコストを削減できる。また、汎用品の利用により部品代などのランニングコストも低減できる。また、Oリング5を利用する事による所定位置にセットする困難さも、第1突リブ34と第2突リブ35の間にOリング5をセットしておけば、スリーブ3にラセン筒4をセットする過程で簡単に所定位置に固定されるようになっている。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明実施例の棒状化粧料繰り出し容器の棒状化粧料収納時(保持筒の下降限時)の正面断面図である。
【
図2】本発明実施例1の棒状化粧料繰り出し容器の棒状化粧料繰り出し時(保持筒の上昇限時)の正面断面図である。
【
図3】
図1の状態のスリーブと保持筒の状態説明図である。
【
図4】
図2の状態のスリーブと保持筒の状態説明図である。
【
図5】本発明実施例の棒状化粧料繰り出し容器のラセン筒の正面断面図である。
【
図6】本発明実施例の棒状化粧料繰り出し容器の、スリーブと保持筒の組み立て時の斜視図である。
【
図7】本発明実施例の棒状化粧料繰り出し容器の保持筒の斜視図である。
【実施例】
【0020】
本発明実施例を
図1~7によって説明する。本説明は、特に記載のない限り、本発明棒状化粧料繰り出し容器を正立させた時、棒状化粧料1が出没する側を「上」、反対側を「下」として説明する。
【0021】
保持筒2は保持皿21及び脚筒22より成っている。保持皿21は、棒状化粧料1の下端を収嵌保持し、下端より脚筒22を垂下している。この脚筒22の下部外側壁には、突子23を径方向に突設している。
【0022】
この棒状化粧料1及び保持筒2は、スリーブ3内に摺動自在に収納され、スリーブ3の先端31より棒状化粧料1が出没するようになっている。このスリーブ3は、金属製のパイプ製で、下部側壁には、保持筒2の突子23が貫通して保持筒2をスリーブ3内で回動不能に上下摺動自在に案内するスリット状の案内溝32を軸線方向に長く穿設している。この案内溝32の上端は上部当接部321、下端は下部当接部322となっている。この下部当接部322より連続して、スリーブ3の下端に達する誘導溝33を設け、この誘導溝33により、スリーブ3の下端が切り欠かれた状態となっている。この誘導溝33の溝幅は、前記案内溝32よりも幅狭になっており、誘導溝33の両側に下降限ストッパー235が残存している。
【0023】
保持筒2の突子23は
図7に示したように、突入突部231、螺合突部232、回り止め突部233及びスロープ234を組み合わせ、平面略凸字形状に一体に成形されている。突入突部231は、前記スリーブ3の肉厚とほぼ同じ高さで、誘導溝33の溝幅よりも僅かに幅狭で平面略矩形状に突出している。この突入突部231の径方向側壁に、螺合突部232を突設している。さらに、突入突部231の周方向の両側面に下方に片寄って、一対の回り止め突部233が突出している。この回り止め突部233の高さは、前記突入突部231と同じか僅かに低く、両先端間の幅は前記スリーブ3の案内溝32よりも僅かに幅狭く構成している。なお、この回り止め突部223の下面と突入突部231の下面は一致した同一面となっている。この回り止め突部223の上がわ側面には、それぞれ上方より径方向に傾斜したくさび状をした同一形状のスロープ234を設けている。
【0024】
本発明の保持筒2は前述した構成のため、スリーブ3が単体の状態で、スリーブ3の下端より保持筒2を挿入すると、保持筒2の突子23の突入突部231がスリーブ3下端の誘導溝33の端部に侵入した状態、つまり位置決めされた状態で、突子23のスロープ234がスリーブ3の下端に当接する。ここで保持筒2に少し力を加えて押し込むと、スリーブ3の下端が誘導溝34により切り欠かれているため、スロープ234がスリーブ3の下端を押し広げて回り止め突部233が潜り込み、スリーブ3の下端を乗り越え、案内溝32に係合し組付けが完了する。(
図6参照)
【0025】
保持筒2は、突子23の回り止め突部233がスリーブ3の案内溝32に係合しているため、
図6に示したように、回動不能な状態で上下摺動可能となっている。そして、突子23の突入突部231の上端が、案内溝32の上部当接部321に当接して上昇限となる上昇限ストッパー235となり、突子23の回り止め突部233の下端面が、案内溝32の下部当接部322に当接して下降限となる下降限ストッパー236となり、保持筒2の上下摺動を規制している。また、突子23の螺合突部232は、スリーブ3の外壁よりも外方向に突出している。
【0026】
スリーブ3の案内溝32の上方側壁には、第1突リブ34及び第2突リブ35を、上下に間隔を開けて、下側に第1突リブ34を、上側に第2突リブ35を周方向に突出して設けている。第2突リブ35の位置は、保持筒2が下降限の時、保持筒2の保持皿21の上端よりも僅かに下になるよう設けている。そしてこのスリーブ3内の保持皿21の上方が棒状化粧料1を収容する収容部36となっている。
【0027】
このスリーブ3の、第1突リブ34より下方は、ラセン筒4上方より挿入されている。このラセン筒4内周壁の、スリーブ3の案内溝32に相対した部位にはラセン溝41を螺設している。このラセン溝41は、ラセン筒4の下端に開溝しており、上端411は案内溝32の上部当接部321と相対する位置に達している。このラセン溝41には、前記スリーブ3を貫通した保持筒2の突子23の螺合突部232が螺合している。また、ラセン筒4の外周壁全周には、軸線と平行に縦リブ44を等間隔で複数条設けている。このスリーブ3にラセン筒4を装着する事により、スリーブ3下端の変形が抑えられ、突子23が案内溝32より乗り越え脱落不能になる(
図5参照)。
【0028】
このラセン筒4の、ラセン溝41を螺設した部位より上方は、連結部42となっている。この連結部42の上端よりは、全周に上下に切り欠いた複数の切り欠き421を等間隔で設け、切り欠き421の間に舌片422を構成している。この切り欠き421の一部は、前記ラセン溝41の上端411に相対した位置に設けている。このラセン溝41の上端411と相対した位置に設けられた切り欠き421の下端には、前記ラセン溝41の上端411付近に開溝する侵入溝412を開溝して設けている。その結果、保持筒2の突子23の螺合突部232が侵入溝412よりラセン溝41に螺合可能となり、保持筒2を組み込んだスリーブ3をラセン筒4の上方より装着可能となっている。
【0029】
また、舌片422の内周壁には、スリーブ3の第1突リブ34に回動自在に係合する凹溝423を刻設している(
図5参照)。このラセン筒4の凹溝423とスリーブ3の第1突リブ34が係合した際、スリーブ3の下端よりラセン筒4の下端のほうが僅かに下方に突出した状態で保持させる(
図1,2参照)。この舌片422の上端とスリーブ3の第2突リブの間には隙間があり、Oリング5を脱落不能に保持する保持部43を構成している。この保持部43の上下方向の幅(スリーブ3の第2突リブ35下面とラセン筒4の舌片422上端の間隔)は、Oリング5に対して余裕があり、何ら応力が加わっていない。
【0030】
以上、保持筒2、スリーブ3、ラセン筒4及びOリング5により、繰り出し構造部Aを構成している。この繰り出し構造部Aは、スリーブ3を保持してラセン筒4を回転操作すると、保持筒2の突子23がスリーブ3の案内溝32を貫通して回転しない状態で、回転するラセン筒4のラセン溝41に螺合しているため、螺合作用により保持筒2及びこの保持筒2に保持された棒状化粧料1が上部当接部321と下部当接部322の範囲で上下摺動する。そして、棒状化粧料1がスリーブ3の先端31より出没する。
【0031】
次に、前記繰り出し構造部Aを装着する外装体Bについて説明する。外装体Bは、キャップ6、ハカマ筒7及び中筒8とより成っている。この外装体Bは、合成樹脂により成形され、商品を差別化するための独自のデザイン、加飾が施されている。
【0032】
このハカマ筒7の上端よりは、繰り出し構造部Aのラセン筒4が挿入されている。ハカマ筒7の内側壁全周には、前記ラセン筒4外周の縦リブ44と回動不能に係合する縦溝71が、縦リブ44に対応して軸線と平行に複数条刻設している。その結果、ハカマ筒7内でラセン筒4は回動不能に保持され、ハカマ筒7の回転をラセン筒4に伝達できるようになっている。このハカマ筒7の上端には、中筒8を超音波溶着、アンダーカット係合、接着などの手法により止着している。
【0033】
この中筒8は、下部がハカマ筒7上端内壁に止着される止着部81となり、上部はハカマ筒8より突出してキャップ6が抜脱可能に嵌合する嵌合部82となっている。この中筒8の嵌合部82より繰り出し構造部Aのスリーブ3が外部に突出している。この中筒8の内周壁には、前記繰り出し構造部Aのスリーブ3の第2突リブ35が当接する段部83を設けている。その結果、スリーブ3の第2突リブ35と中筒8の段部83が当接し、ラセン筒4下端がハカマ筒7底面に当接する事によって、外装体B内で繰り出し構造部Aが保持されている。しかも、繰り出し構造部Aのラセン筒4は前述したように外装体B内に回動不能に保持されており、スリーブ3はラセン筒4及び外装体Bの中筒8に回動自在に保持されているため、スリーブ3を保持してハカマ筒7を回転操作する事により棒状化粧料1を繰り上げ下げ可能になっている。また、Oリング5は、中筒8の内壁に当接し、スリーブ3外壁と中筒8の間で弾性を有して当接しているため、繰り出し操作時にスリーブ3と中筒8が相対回転する事により良好な摺動抵抗を付与する。
【0034】
次に、本発明実施例の棒状化粧料繰り出し容器の組み立て方法について説明する。まず、スリーブ3の第1突リブ34と第2突リブ35の間にOリング5を装着する。そして、スリーブ3の下端より保持筒2の保持皿21を挿入し、脚筒22の突子23の突入突部231の上端を、スリーブ3の下端の誘導溝33開溝部分に合わせて押し込む。その結果、保持筒2は誘導溝33と突入突部231が係合して位置合わせされた状態で突子23のスロープ234がスリーブ3下端を押し広げ、回り止め突部233がスリーブ3下端より潜り込み、案内溝32に係合させ、スリーブ3と保持筒2の組付けが完了する。
【0035】
上記保持筒2を組付けたスリーブ3の下端を、ラセン筒4の上端より挿入する。この時点でスリーブ3の広がりがラセン筒4の内壁により押さえられ、保持筒2の突子23の誘導溝33への再突入、保持筒2の脱落を防げる。スリーブ3の外側壁より突出した保持筒2の突子23の螺合突部232を、ラセン筒4上部の連結部42の切り欠き421から、侵入溝412を通ってラセン溝41に螺合させる。ラセン筒4の連結部42の舌片422の凹溝423と、スリーブ3の第1突リブ34を係合する。この時点で、ラセン筒4とスリーブ3の上下位置が固定する。そして、保持筒2は、案内溝32の範囲で上下摺動可能となり、突子23の螺合突部232の侵入溝412への再侵入、ラセン溝41からの脱落を防げる。Oリング5は、ラセン筒4先端に押され、スリーブ3の第2突リブ35とラセン筒4先端の間の保持部43に収まる。以上で、繰り出し構造部Aが完成する。
【0036】
この繰り出し機構部Aのラセン筒4をハカマ筒7の上方より挿入、ラセン筒4の縦リブ44とハカマ筒7の縦溝71を係合させる。ハカマ筒7の上端に中筒8を止着すると、中筒8内壁の段部83が、スリーブ3の第2突リブ35に当接して、繰り出し機構部Aを外装体B内に脱落不能にする。同時に、Oリング5の外周が中筒8の内壁に弾性を有して摺接し、結果その摺動抵抗が良好な回転操作感に調整する。中筒8の嵌合部82にキャップ6を嵌合させて、本発明実施例棒状化粧料繰り出し容器が完成する。
【産業上の利用可能性】
【0037】
実施例に於いて、ラセン筒4の連結部42に、切り欠き421を設けて舌片422を構成し、この舌片422に凹溝423を設けて、スリーブ3の第2突リブ35に回動自在に係合させている構成を説明した。この構成以外にも、連結部42に直接凹溝423を設けてスリーブ3の第2突リブ35に回動自在に係合させることも可能である。
【符号の説明】
【0038】
1 棒状化粧料
2 保持筒
3 スリーブ
4 ラセン筒
5 Oリング
6 キャップ
7 ハカマ筒
8 中筒
23 突子
32 案内溝
34 第1突リブ
35 第2突リブ
41 ラセン溝
42 連結部
82 嵌合部
83 段部