(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-20
(45)【発行日】2023-09-28
(54)【発明の名称】眼屈折力測定装置
(51)【国際特許分類】
A61B 3/103 20060101AFI20230921BHJP
【FI】
A61B3/103
(21)【出願番号】P 2020541217
(86)(22)【出願日】2019-09-02
(86)【国際出願番号】 JP2019034495
(87)【国際公開番号】W WO2020050233
(87)【国際公開日】2020-03-12
【審査請求日】2022-07-28
(31)【優先権主張番号】P 2018166448
(32)【優先日】2018-09-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000135184
【氏名又は名称】株式会社ニデック
(72)【発明者】
【氏名】滝井 通浩
(72)【発明者】
【氏名】大森 豊
【審査官】増渕 俊仁
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-38498(JP,A)
【文献】特開2015-223518(JP,A)
【文献】国際公開第2019/111788(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 3/00-3/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検眼の眼屈折力を測定する眼屈折力測定装置であって、
被検眼の眼屈折力を測定する測定光学系と、
装置本体側に設けられた矯正光学系を介して被検眼に視標を呈示する視標呈示光学系と、
前記眼屈折力測定装置を制御する制御手段と、を備え、
前記制御手段は、
屈折矯正器具を装用した装用状態での眼屈折力であるオーバーレフ値を測定するオーバーレフモードと、
前記矯正光学系を制御し、前記オーバーレフ値に基づいて矯正された状態と、前記装用状態に対して前記矯正光学系による追加的な矯正を行わない非矯正状態と、を切り換えることによって、被検者に前記視標の見え方を比較させる比較モードと、
を実行することを特徴とする眼屈折力測定装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記矯正光学系を制御し、前記装用状態において加入度を加えた状態と、非加入状態と、を切り換えることによって、被検者に前記視標の見え方を比較させる加入度比較モードを実行することを特徴とする請求項1の眼屈折力測定装置。
【請求項3】
前記屈折矯正器具の屈折度数である矯正器具度数を取得する度数取得手段をさらに備えることを特徴とする請求項1または2の眼屈折力測定装置。
【請求項4】
前記制御手段は、前記比較モードにおいてさらに、前記矯正光学系を制御することによって前記矯正器具度数を相殺した状態である仮想的な裸眼状態に切り換えることを特徴とする請求項3の眼屈折力測定装置。
【請求項5】
前記制御手段は、前記屈折矯正器具を外した裸眼状態で測定した眼屈折力である裸眼レフ値と、前記矯正器具度数と、前記オーバーレフ値と、に基づいて、前記屈折矯正器具の異常を検知することを特徴とする請求項3または4の眼屈折力測定装置。
【請求項6】
前記制御手段は、前記裸眼レフ値と前記矯正器具度数との差分と、前記オーバーレフ値と、の比較結果に基づいて、前記屈折矯正器具の異常を検知することを特徴とする請求項5の眼屈折力測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、被検眼の眼屈折力を測定する眼屈折力測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
被検眼の眼屈折力を測定する眼屈折力測定装置としては、眼鏡装用状態で眼屈折力を測定することを想定した装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【0004】
ところで、従来の屈折力測定装置は、屈折矯正器具を装用した状態での測定データをどのように用いるかという点が確立されていなかった。例えば、新しい屈折矯正器具の必要性を被検者に感じさせることができていなかった。
【0005】
本開示は、屈折矯正器具を装用した状態での眼屈折力の測定に際し、従来技術の少なくとも1つの問題点を解決可能な眼屈折力測定装置を提供することを技術課題とする。
【0006】
上記課題を解決するために、本開示は以下のような構成を備えることを特徴とする。
【0007】
被検眼の眼屈折力を測定する眼屈折力測定装置であって、被検眼の眼屈折力を測定する測定光学系と、装置本体側に設けられた矯正光学系を介して被検眼に視標を呈示する視標呈示光学系と、前記眼屈折力測定装置を制御する制御手段と、を備え、前記制御手段は、屈折矯正器具を装用した装用状態での眼屈折力であるオーバーレフ値を測定するオーバーレフモードと、前記矯正光学系を制御し、前記オーバーレフ値に基づいて矯正された状態と、前記装用状態に対して前記矯正光学系による追加的な矯正を行わない非矯正状態と、を切り換えることによって、被検者に前記視標の見え方を比較させる比較モードと、を実行することを特徴とする。
【0008】
本開示によれば、屈折矯正器具を装用した状態での眼屈折力の測定データを有効に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本実施例に係る眼屈折力測定装置の外観構成の一例を示す図である。
【
図2】本実施例に係る眼屈折力測定装置の光学系の一例を示す図である。
【
図3】本実施例に係る眼屈折力測定装置の動作の一例を示すフローチャートである。
【
図4】本実施例に係る測定画面の一例を示す図である。
【
図5】仮枠眼鏡を撮影した画像の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<実施例>
以下、図面を参照しつつ、本開示に係る実施例を説明する。以下の実施例では、一例として、被検眼Eの眼屈折力を他覚的に測定する眼屈折力測定装置1を例示する。なお、眼屈折力測定装置としては、例えば、オートレフラクトメータ、眼収差計などが含まれる。
【0011】
まず、
図1を参照して、眼屈折力測定装置1の外観構成の一例を示す。
図1に示す眼屈折力測定装置1は、いわゆる据え置き型の装置である。眼屈折力測定装置1は、主に、測定部8を有する。詳細は後述するが、測定部8には、眼特性を測定する際に利用される光学系が少なくとも設けられている。なお、眼屈折力測定装置1は、手持ち型の装置であってもよい。
【0012】
また、
図1の例において、眼屈折力測定装置1は、基台2と、顔支持ユニット4と、移動台6と、駆動部7と、ジョイスティック9と、表示部70と、を更に有する。
【0013】
移動台6は、基台2によって支持されている。移動台6は、ジョイスティック9の操作により、基台2上を上下方向(Y方向)及び前後方向(Z方向)に移動される。また、基台2には、顔支持ユニット4が固定されている。顔支持ユニット4は、
図1に示すように、被検眼Eを測定部8に対向させた状態で被検者の顔を支持するために利用される。駆動部7は、測定部8を、被検眼Eに対して左右方向(X方向)、上下方向(Y方向)及び前後方向(Z方向)に移動させる。ジョイスティック9に設けられた回転ノブ9aを、検者が回転することによって、測定部8は駆動部7によってY方向に移動される。また、ジョイスティック9の頂部には、スイッチ9bが設けられている。表示部70は、測定部8において撮影された被検眼Eの観察像および測定部8による被検眼Eの測定結果等、の各種情報が表示される。
【0014】
次に、
図2を参照して、眼屈折力測定装置1の測定部8が有する光学系を説明する。測定部8は、例えば、測定光学系10と、観察光学系(撮像光学系)50と、視標呈示光学系30と、リング指標投影光学系45と、作動距離指標投影光学系46と、照明光源48と、を備える。
【0015】
図2に示す測定光学系10は、被検眼の眼屈折力を測定するために用いられる。測定光学系10の測定軸は、光軸L1である。測定光学系10は、投光光学系10aと、受光光学系10bと、を有する。投光光学系10aは、被検眼Eの瞳孔を介して被検眼Eの眼底Erに測定光束を投影する。また、受光光学系10bは、測定光束による眼底反射光をリング状の眼底反射像として二次元撮像素子22(検出器の一例)で撮像する。リング像は、連続的なリング像であってもよいし、間欠的なリング像(例えば、複数の点による間欠的なリング像)であってもよい。
【0016】
例えば、投光光学系10aは、測定光源11と、リレーレンズ12と、ホールミラー13と、対物レンズ14と、を含む。受光光学系10bは、ホールミラー13と、対物レンズ14と、を投光光学系10aと共用している。また、受光光学系10bは、リレーレンズ16と、全反射ミラー17と、受光絞り18と、コリメータレンズ19と、リングレンズ20と、二次元撮像素子22(以下、「撮像素子22」と称す)と、を含む。これらの測定光学系10は、
図2の例では、ビームスプリッタ29の透過方向に設けられている。
【0017】
受光光学系10bのリングレンズ20は、眼底反射光をリング状に整形するための光学素子である。リングレンズ20は、リング状に形成されたレンズ部と、レンズ部以外の領域に遮光用のコーティングを施した遮光部と、を有している。また、リングレンズ20は、被検眼Eの瞳孔と光学的に共役な位置関係となっている。リングレンズ20を介したリング状の眼底反射光(即ち、二次元パターン像)は、撮像素子22で受光される。撮像素子22は、受光した二次元パターン像の画像情報を、制御部80に出力する。これによって、二次元パターン像を表示部70に表示させたり、二次元パターン像に基づいて被検眼Eの屈折力を算出させたりすることが可能となる。なお、撮像素子22としては、エリアCCD等の受光素子を用いることができる。
【0018】
なお、測定光学系10は、上記のものに限られるものではなく、眼屈折力を他覚的に測定するための構成として、種々の周知の構成が用いられてもよい。また、眼屈折力を他覚的に測定する測定光学系10としては、被検眼の高次収差を含めて測定可能な眼収差測定光学系であってもよく、例えば、シャックハルトマンセンサーを備えた構成であってもよい。もちろん、他の測定方式の装置が利用されてもよい(例えば、スリットを投影する位相差方式の装置)。
【0019】
対物レンズ14とホールミラー13との間には、ビームスプリッタ29が配置されている。ビームスプリッタ29は、後述の視標呈示光学系30からの光束を被検眼Eに導き、被検眼Eの前眼部からの反射光を観察光学系50に導く。また、ビームスプリッタ29は、光源11から出射され、眼底Erで反射された眼底反射光の一部を反射し、観察光学系50へ導くと共に、他の眼底反射光を透過し、受光光学系10bへと導く。
【0020】
視標呈示光学系30は、被検眼Eに視標を呈示するための光学系である。視標呈示光学系30は、観察光学系50の対物レンズ14が共用され、ビームスプリッタ29により光軸L1と同軸にされた光軸L5上に配置されたLED等の光源31,視標板32,リレーレンズ33、反射ミラー36を含む。また、視標呈示光学系30は被検眼の屈折力を矯正するための矯正光学系60と共用される。
【0021】
視標板32には、他覚屈折力測定時に被検眼Eに雲霧を行うための視標(固視標)32aと、自覚屈折力測定時に使用される視力検査用視標を含む複数の視標32bが同心円上に配置されている。視力検査視標は、視力値毎の視標(視力値0.1、0.3、・・・、1.5)が用意されている。視標板32はモータ37によって回転され、視標32a,32bが視標呈示光学系30の光軸L5上に切換え配置される。光源31によって照明された視標32a,32bの視標光束は、リレーレンズ33からビームスプリッタ29までの光学部材を介して被検眼Eに向かう。
【0022】
被検眼Eの光源31及び視標板32(視標32a,32b)は、駆動部62により光軸L5の方向に一体的に移動される。光源31及び視標32a,32bが移動されることにより、視標の呈示位置(呈示距離)が遠用距離から近用距離まで光学的に変えられる。これにより、他覚屈折力測定時には被検眼Eに雲霧が掛けられ、また、自覚屈折力測定時には被検眼の球面屈折力が矯正される。すなわち、対物レンズ14、リレーレンズ33、光源31及び視標板32の移動により、球面度数の矯正光学系61が構成される。球面度数の矯正光学系61は、光軸方向に移動可能なリレーレンズを視標呈示光学系に追加する構成でも可能である。
【0023】
乱視矯正光学系63は、反射ミラー36とリレーレンズ33との間に配置されている。乱視矯正光学系63は、焦点距離の等しい、2枚の正の円柱レンズ64(64a,64b)から構成される。円柱レンズ64a,64bは、それぞれ回転機構65a、65bの駆動により、光軸L5を中心に各々独立して回転される。2枚の円柱レンズ64a,64bが回転されることによって、被検者の乱視を矯正した状態にすることができる。なお、矯正光学系60は、矯正レンズを視標呈示光学系の光路に出し入れする構成でもよい。
【0024】
被検眼Eの前眼部の前方には、アライメント指標投影光学系の一例である、リング指標投影光学系45および作動距離指標投影光学系46が配置されている。リング指標投影光学系45は、被検眼角膜の中心領域にリング指標を投影するために利用される。リング指標投影光学系45は、例えば、被検眼にマイヤーリングを投影する投影光学系であってもよい。
【0025】
本実施例において、リング指標投影光学系45は、角膜Ecに対して赤外光(例えば、近赤外光)をリング状に投影する。その結果として、リング指標像が角膜Ec上に形成される。角膜頂点(略角膜頂点)がリング像の中心位置として検出される。
【0026】
角膜に投影されるリング指標は、被検眼に対してアライメントを行うためのアライメント指標として用いられてもよい。また、リング指標は、角膜形状測定用の指標として用いられてもよい。なお、リング指標投影光学系45は、被検眼Eの前眼部を照明する前眼部照明として用いられてもよい。
【0027】
作動距離指標投影光学系46は、例えば、作動距離方向のアライメントを行うための指標を投影するために用いられる。角膜に投影されたアライメント指標は、被検眼に対する位置合わせ(例えば、自動アライメント、アライメント検出、手動アライメント、等)に用いられる。投影光学系46aは、被検眼Eの角膜Ecに有限遠指標を投影するための光学系であり、投影光学系46bは、被検眼Eの角膜Ecに無限遠指標を投影するための光学系である。作動距離指標投影光学系46は、例えば、赤外光(例えば、近赤外光)が用いられる。本実施例では、作動距離指標投影光学系46は、リング指標から外れた位置に形成されているが、これに限定されず、例えば、リング指標投影光学系45の切れ目部分に無限遠指標を投影する投影光学系を設け、リング指標と無限遠指標とを用いて作動距離方向のアライメントが行われてもよい。
【0028】
照明光源48は、例えば、屈折矯正器具を装用した状態の被検眼前眼部を照明するための光源として用いられてもよい。照明光源48は、照明光による眼鏡レンズからの反射光が前眼部像に含まれることを回避できるように設定された位置に配置されることで、眼鏡等を装用した状態であっても、被検眼に対するアライメントをスムーズに行うことができる。照明光源48は、赤外光源であってもよいし、可視光源であってもよい。
【0029】
この場合、例えば、照明光源48は、測定光学系10の測定光軸L1に対して30°以上傾斜した位置に配置されてもよい。これによって、照明光源48による眼鏡レンズからの反射像は、測定光軸L1から離れた位置に形成されるので、当該反射像は、前眼部画像に含まれない、あるいは、前眼部像に含まれたとしても前眼部画像の周辺部に形成される。この結果として、被検眼に対してアライメントを行う際のアーチファクトが軽減される。なお、前眼部画像の周辺部にアーチファクトが形成される場合、前眼部画像の中心部にはアーチファクトが含まれず、角膜中心、瞳孔中心等へのアライメントが容易となる。
【0030】
観察光学系(撮像光学系)50は、被検眼Eの前眼部の正面画像を撮像する撮像素子52を有する。本実施形態において観察光学系50は、対物レンズ14と、ビームスプリッタ29と、を視標呈示光学系30と共用している。また、観察光学系50は、ハーフミラー53と、撮像レンズ51と、二次元撮像素子52(以下、「撮像素子52」と称す)と、を含む。撮像素子52は、被検眼Eの前眼部と略共役な位置に配置された撮像面を持つ受光素子である。この撮像素子52によって、被検眼Eの前眼部の正面画像が撮像される。撮像素子52からの出力は、制御部80に入力される。その結果、撮像素子52によって撮像される正面画像のライブ画像が、観察画像として表示部70上に表示される。なお、本実施形態では、観察光学系50が、指標投影光学系45,46によって被検眼Eの角膜Ecに形成されるアライメント指標像(本実施形態では、リング指標および無限遠指標)を検出する光学系を兼ねている。撮像素子52によるアライメント指標像の撮像結果に基づいてアライメント指標像の位置が検出される。なお、観察光学系50は、照明光源48によって照明された装用状態の被検眼前眼部の正面像を撮像可能である。
【0031】
次に、
図2を参照して、眼屈折力測定装置1の制御系について説明する。眼屈折力測定装置1は、制御部80によっての各部の制御が行われる。制御部80は、各部の制御処理と、演算処理とを行う電子回路を有する処理装置(プロセッサ)である。制御部80は、CPU(Central Processing Unit)およびメモリ等で実現される。制御部80は、光源11,31、撮像素子22,52、移動台6および駆動部7、ジョイスティック9、表示部70、操作部90、メモリ105のそれぞれに電気的に接続されている。
【0032】
メモリ105は、書き換え可能な不揮発性の記憶装置であってもよい。メモリ105には、制御部80に測定動作を実行させるためのプログラムが少なくとも格納されてもよい。
【0033】
制御部80は、操作部90から出力される操作信号に基づいて、眼屈折力測定装置1の各部材を制御する。操作部90は、タッチパネルやマウスなどのポインティングデバイスであってもよいし、キーボード等であってもよい。
【0034】
本実施例において、制御部80は、裸眼状態の眼屈折力を測定するための裸眼レフモードと、屈折矯正器具を装用した状態での眼屈折力を測定するためのオーバーレフモードと、を自動又手動にて切換可能であってもよい。例えば、制御部80は、操作部90からの操作信号に基づいて測定モードを切り換えてもよい。
【0035】
なお、制御部80は、上記のように検出されたアライメント状態の検出結果に基づいて駆動部7を制御することによって、被検眼に対する測定部8の自動アライメントを行ってもよい。また、制御部80は、上記のように検出されたアライメント状態の検出結果を検者に報知するようにしてもよい(例えば、検出結果が表示部70に電子的に表示されてもよい)。
【0036】
<装置の動作>
以上のような構成を備える装置の動作の一例について説明する。
図3は本実施例に係る装置の動作について説明するフローチャートである。以下の説明では、屈折矯正器具が装用されていない裸眼状態における被検眼の屈折力を測定する場合と、屈折矯正器具が装用された装用状態における被検眼の屈折力を測定する場合と、について説明する。ここで、装用状態とは、例えば、眼鏡フレームを介して眼前に眼鏡レンズが配置された状態、またはコンタクトレンズが眼前に配置された状態などである。
【0037】
(S1:裸眼モード)
まず、制御部80は、屈折構成器具を装用していない裸眼状態の被検眼を測定する。この場合、検者は、操作部90を操作し、裸眼モード(通常モード)に設定する。裸眼モードでは、例えば、リング指標投影光学系45によるリング指標と作動距離指標投影光学系46による指標とが被検眼に投影される。リング指標は、前眼部照明、アライメント検出に用いられる。
【0038】
検者は、被検者の顔を顔支持ユニット4に固定させると共に、被検者に対して視標板32の固視標32aを固視するよう指示する。次に、被検眼に対する測定部8のX,Y及びZ方向のアライメントが行われる。検者は、表示部70を観察しながらジョイスティック9及び回転ノブ9aを操作し、ラフなアライメントを行う。なお、ラフなアライメントについて、被検者の顔を広範囲に撮影可能なカメラ等を用いて自動アライメントが行われてもよい。
【0039】
制御部80は、観察光学系50を介して撮像される前眼部の観察画像を、随時表示部70に表示させる(
図4参照)。つまり、表示部70には、略リアルタイムに撮影される前眼部の正面画像(ライブ画像)が表示される。なお、レチクルマークLTは、測定部8における測定軸の位置(本実施例では、測定光学系10の測定光軸L1)を示す。
【0040】
ラフなアライメントが行われ、リング指標投影光学系45によるリング指標像、作動距離指標投影光学系46による無限遠指標、有限遠指標が撮像素子52により撮像される状態になると、制御部8090は、撮像素子52からの撮像信号に基づいて駆動部7の駆動を制御することによって、測定部8をXY方向又はZ方向に移動させ、被検眼に対する測定部8の詳細なアライメントを行う。
【0041】
制御部80は、撮像素子52によって検出されたリング指標像の中心位置の座標を算出することにより被検眼に対する上下左右方向のアライメント状態を求める。なお、リング指標像の中心位置を検出することによって、角膜中心位置を求めることができる。
【0042】
制御部80は、測定部8が被検眼に対してZ(作動距離)方向にずれた場合に、無限遠指標の像間隔がほとんど変化しないのに対して、有限遠指標の像間隔が変化するという特性を利用して、被検眼に対する作動距離方向のアライメント状態を求める(詳しくは、特開平6-46999号参照)。なお、Z方向のアライメント検出のための構成及び検出手法は、上記に限定されず、例えば、リング指標像のボケ具合等が利用されてもよい。
【0043】
その後、アライメントが完了したら、レフ測定が行われる。この場合、測定光源11からの測定光は、測定光学系10を介して眼底に投影され、測定光による眼底反射光は、測定光学系10を介して撮像素子22によって受光される。この場合、まず、眼屈折力の予備測定が行われる。そして、予備測定の結果に基づいて、光源31及び視標板32が光軸L5方向に移動されることにより、被検眼に対して雲霧がかけられる。その後、雲霧がかけられた被検眼に対して眼屈折力の測定が行われる。
【0044】
眼屈折力の測定(および予備測定)において、制御部80は、撮像素子22からの出力信号を処理することで、眼屈折力を得る。撮像素子22からの出力信号は、画像データ(測定画像)としてメモリ105に記憶される。その後、制御部80は、メモリ105に記憶された画像データに基づいてリングの経線毎にリング像の位置を特定する。次に、制御部80は、特定されたリング像の像位置に基づいて、最小二乗法等を用いて楕円を近似する。そして、制御部80は、近似した楕円の形状から各経線方向の屈折誤差が求め、これに基づいて被検眼Eの眼屈折値(S(球面度数)、C(柱面度数)およびA(乱視軸角度))を演算する。そして、測定結果を表示部70に表示する。また、制御部80は、眼屈折値等の測定結果を、メモリ105に記憶してもよい。この場合、制御部80は、裸眼状態の被検眼を測定したことを示す判別表示71を、測定結果と共に表示するようにしてもよい。
【0045】
なお、制御部80は、裸眼状態の被検眼の眼屈折力を測定する際、さらに、リング指標に基づいて被検眼の角膜形状を測定すると共に、角膜形状の測定結果を表示部70に表示するようにしてもよい。
【0046】
(S2:オーバーレフモード)
屈折矯正器具を装用した状態の被検眼を測定する場合、検者は、操作部90を操作し、オーバーレフモードに設定する。オーバーレフモードでは、例えば、リング指標投影光学系45によるリング指標と作動距離指標投影光学系46による指標の投影が制限され、照明光源48による照明光が被検眼に投光される。この場合、リング指標の投影のみが制限されてもよい。照明光源48による照明光は、例えば、前眼部像の観察に用いられ、前眼部像を用いた被検眼に対するアライメントが行われる。なお、以下の説明において、裸眼モードと同一の部分については、特段の説明を省略する。
【0047】
ラフなアライメントが行われ、被検眼の瞳孔が撮像素子52により撮像される状態になると、制御部8090は、撮像素子52からの撮像信号に基づいて駆動部7の駆動を制御することによって、測定部8をXY方向又はZ方向に移動させ、被検眼に対する測定部8の詳細なアライメントを行う。
【0048】
制御部80は、撮像素子52によって撮像された瞳孔を画像処理にて解析し、瞳孔の位置を算出することにより被検眼に対する上下左右方向のアライメント状態を求める。
【0049】
制御部80は、測定部8が被検眼に対してZ(作動距離)方向にずれた場合に、前眼部画像(例えば、瞳孔部)がぼけてしまうという特性を利用して、被検眼に対する測定部8の作動距離方向のアライメント状態を求めてもよい。例えば、制御部80は、測定部8をZ方向に移動させると共に、各Z位置にて前眼部画像のエッジ(ボケ具合)の評価値を取得し、評価値が高い位置を適正位置として測定部8を移動させてもよい。
【0050】
その後、アライメントが完了したら、レフ測定が行われる。この場合、測定光源11からの測定光は、測定光学系10及び屈折矯正器具MLを介して眼底に投影され、測定光による眼底反射光は、屈折矯正器具ML及び測定光学系10を介して撮像素子22によって受光される。この場合、眼屈折力の予備測定が行われ、その後、雲霧がかけられた被検眼に対して眼屈折力の測定が行われる。
【0051】
制御部80は、撮像素子22の撮像結果に基づいて被検眼の眼屈折値を演算し、測定結果を表示部70に表示する。また、制御部80は、眼屈折値の測定結果を、メモリ105に記憶してもよい。この場合、制御部80は、屈折矯正器具を装用した状態の被検眼を測定したことを示す判別表示72を、測定結果と共に表示するようにしてもよい。これによって、オーバーレフモードと裸眼モードとで測定値を取り違えることを防止できる。
【0052】
<装用状態の自動判定>
なお、上記説明においては、操作部90からの操作信号に基づいて測定モードを切り換えたが、これに限定されず、自動的に測定モードが切り換えられてもよい。例えば、制御部80は、観察光学系50から出力される撮像信号に基づいて、測定モードを切り換えてもよい。ここで、制御部80は、観察光学系50から出力される撮像信号に基づいて屈折矯正器具の装用の有無を判別し、判別結果に基づいて測定モードを切り換えてもよい。
【0053】
この場合、例えば、リング指標投影光学系45からのリング指標を眼鏡装用状態の被検眼に対して投影するとき、観察光学系50の撮像素子52に眼鏡レンズからの反射光が多く入射され、裸眼状態よりも前眼部画像全体の輝度値が高くなることを利用してもよい。ここで、制御部80は、前眼部画像において所定の閾値を超える画素の面積が許容範囲を上回った場合、眼鏡レンズありと判別し、オーバーレフモードに設定し、前眼部画像において所定の閾値を超える画素の面積が許容範囲を下回った場合、眼鏡レンズなしと判別し、裸眼モードに設定してもよい。また、撮像素子52によって撮影された前眼部画像からコンタクトレンズのエッジを検出し、エッジの有無に基づいてコンタクトレンズの有無を判定してもよい。もちろん、屈折矯正器具の装用の有無の判別手法は、これに限定されず、例えば、制御部80は、アライメントの際、撮像素子52によって撮像される眼鏡フレームの有無を画像処理によって判別し、判別結果に基づいて測定モードを切り換えてもよい。また、制御部80は、撮像素子52によって撮像される撮像画像の中心領域においてレンズ反射の有無を判別するようにしてもよい。また、例えば、被検者の両眼を含む顔を撮影可能な顔撮影部によって眼鏡フレームを検出し、被検眼の装用状態を判定してもよい。
【0054】
制御部80は、裸眼レフ値(裸眼モードで測定されたレフ値)と、オーバーレフ値(オーバーレフモードで測定されたレフ値)とを表示部70に比較表示してもよい。例えば、制御部80は、
図4に示すように、各測定モードによって測定された球面度数(S)、乱視度数(C)、乱視軸(A)をそれぞれ表示してもよい。これによって、制御部80は、屈折矯正器具の装用状態が適正か否かの指針を示すことができる。例えば、適正な屈折矯正器具を装着していればオーバーレフ値は0D(ディオプター)になるはずである。したがって、制御部80は、オーバーレフ値が0Dでない場合、またはオーバーレフ値がある閾値より大きい場合、屈折矯正器具の度数が合っていないことを検者に報知するようにしてもよい。例えば、制御部80は、表示部70等に警告表示してもよい。この場合、検者は、屈折矯正器具の度数を変更するように被検者に提案する。検者に報知するときのオーバーレフ値の閾値は、検者があらかじめ設定できるようにしてもよい。
【0055】
なお、検眼が装用している屈折矯正器具の屈折度数である矯正器具度数75が取得されている場合、制御部80は、裸眼レフ値73と、オーバーレフ値74と、矯正器具度数75と、を表示部70の画面に並べて表示してもよい。制御部80は、検者の操作部90への入力に基づいて矯正器具度数75を取得してもよいし、レンズメータなどの外部装置から転送されることによって取得してもよい。また、仮枠眼鏡VMを装用して測定する場合は、制御部80は、仮枠眼鏡VMに書いてある屈折度数をカメラで認識することによって取得してもよい。この場合、制御部80は、観察光学系50の撮像素子52、または被検者の両眼を含む顔画像500を撮影する顔撮影部5等を用いて仮枠眼鏡VMに書かれた屈折度数510を認識してもよい(
図5参照)。このように、制御部80は、矯正器具度数75を取得する度数取得手段として機能してもよい。
【0056】
矯正器具度数75が取得されている場合、制御部80は、裸眼レフ値73、オーバーレフ値74、矯正器具度数75を比較することによって、現在装用している屈折矯正器具が適正か否かを判定してもよい。例えば、制御部80は、裸眼レフ値73と矯正器具度数75との差分Kと、差分Kとオーバーレフ値74との差分Qに基づいて、屈折矯正器具の異常を検知してもよい。通常であれば、被検眼と屈折矯正器具をそれぞれ測定した度数(裸眼レフ値73および矯正器具度数75)の差分Kと、オーバーレフモードにおいて被検眼と屈折矯正器具を同時に測定した度数(オーバーレフ値)は同じになるため、差分Qは0Dになるはずである。したがって、制御部80は、差分Qが0Dでない場合、または差分Qがある閾値より大きい場合、眼鏡等のフィッティングが悪い可能性があることを検者に報知してもよい。例えば、制御部80は、表示部70に警告表示してもよい。この場合、例えば、検者は、眼鏡の鼻あてまたはテンプルを調整する。検者に報知するときのオーバーレフ値の閾値は、検者があらかじめ設定できるようにしてもよい。
【0057】
なお、矯正器具度数75が取得されていない場合であっても、制御部80は、裸眼レフ値73とオーバーレフ値74との差分を矯正器具度数75として表示してもよい。これによって、検者は、現在装用している屈折矯正器具の屈折度数の目安を知ることができる。
【0058】
(S3:比較モード)
制御部80は、オーバーレフモードにおいて、比較モードを実行する。比較モードは、現在装用している屈折矯正器具での見え方と、適正な屈折矯正器具を装用したときの見え方とを被検者に比較させるモードである。例えば、制御部80は、オーバーレフ値に基づいた矯正状態となるように、矯正光学系60を制御する。例えば、制御部80は、オーバーレフ値の球面度数(
図4の例では-0.25D)で矯正された状態となる位置に固視標32aを移動させ、オーバーレフ値の乱視度数(
図4の例では-0.25D)および乱視軸(
図4の例では180度)で補正された状態となるように円柱レンズ64を回転させる。これによって、被検者は適正な矯正屈折器具を装用した状態での視標の見え方を体感することができる。検者が操作部90の比較ボタン90aを押すと、固視標32aが比較モードの基準位置(矯正状態が0D=無限遠又は遠用距離5m)、すなわち非矯正状態となるように駆動部62が制御される。また、乱視矯正光学系63の乱視度数が0Dとなるように、円柱レンズ64が駆動される。これによって、被検者は現在の屈折矯正器具を装用している状態での視標の見え方を体感できる。制御部80は、検者によって比較ボタン90aが押されるたびに、オーバーレフ値に基づいて矯正光学系60によって矯正された状態と、矯正光学系60による矯正を解除した非矯正状態(つまり、屈折矯正器具による矯正状態に対して矯正光学系60による追加的な矯正を行っていない状態)と、を交互に切り換える。これによって、被検者は、適正な屈折矯正器具での見え方と、現在装用している屈折矯正器具での見え方と、を比較できる。
【0059】
以上のように、オーバーレフモードによって測定された装用状態での眼屈折力に基づいて、現在装用している屈折矯正器具での見え方と、適正な屈折矯正器具での見え方を比較することによって、被検者に適正な屈折矯正器具の必要性を確認させることができる。つまり、本実施例の眼屈折力測定装置は、オーバーレフモードによって測定された、屈折矯正器具を装用した状態で測定されたオーバーレフ値を有効に活用することができる。
【0060】
なお、制御部80は、被検者が屈折矯正器具を装用した状態において、種々の測定を行ってもよい。例えば、制御部80は、屈折矯正器具を装用した状態で自覚測定を行ってもよい。この場合、制御部80は、装用状態の被検眼に対して視標呈示光学系の視標を呈示する。例えば、制御部80は、被検眼に対してランドルト環等の視力検査視標32bを呈示する。検者は操作部90を操作し、被検者の見え具合を確認しながら視標の視力値を切り換え、被検者の最高視力を求める。なお、他覚測定と同様に、制御部80は、装用状態における被検眼を測定したことを示す判別表示を、測定結果と共に表示してもよい。
【0061】
また、制御部80は、屈折矯正器具を装用した状態で被検眼の調節力を測定してもよい。この場合、制御部80は、他覚的、または自覚的に調節力を測定する。他覚的に測定する場合、例えば制御部80は、矯正光学系60によって視標の呈示位置を徐々に近づけながら測定光学系10によって屈折力を測定する。この測定結果に基づいて現在の屈折矯正器具での調節力を解析することで、目の疲れなどの指針を示すことができる。また、自覚的に測定する場合、制御部80は、近方の視標を提示し、また度数を変更することで疲れない度数を体感することができる。
【0062】
また、制御部80は、屈折矯正器具を装用した状態で加入度比較モードを実行してもよい。加入度比較モードは、例えば、加入度を付加した状態と、付加していない非加入状態と、を切り換えることによって、被検者に加入度の有無による見え方の違いを確認させる測定モードである。例えば、制御部80は、屈折矯正器具を装用した被検者に対して近方の呈示位置(例えば、35cmの呈示位置)で視標32aを呈示し、オーバーレフ値に基づく矯正状態と、さらにそれに所定の加入度数が加えられた状態とに、視標呈示光学系の移動によって視標32aの呈示位置が切換えられる。加入度数は、操作部90への入力に基づいて変更されてもよい。加入度を設定した後、比較ボタン90aを押すと、加入度を加えた状態と、加入度を加えていない状態とが切換えられる。これによって、被検者は加入度の入った多焦点レンズや累進レンズの有用性を確認できる。なお、加入度は、調節力測定などの他覚測定結果に基づいて設定されてもよい。
【0063】
また、制御部80は、屈折矯正器具を装用した状態で調節緊張パラメータを測定してもよい。これによって、制御部80は、現在装用している屈折矯正器具の快適度を数値化してもよい。例えば、制御部80は、視標の呈示位置を遠方から近方まで段階的に変化させ、視標の各呈示位置での屈折力を短い周期(例えば、12Hz)で測定し、そのときの屈折力の揺らぎを測定する。正常(快適)であれば揺らぎは少ないが、眼精疲労のある状態では屈折度数の揺らぎが発生する。したがって、制御部80は、この揺らぎを数値化することによって、現在装用している屈折矯正器具の快適具合を示すことができる。具体的な方法は、例えば、特開2005-177354号公報を参照されたい。なお、制御部80は、矯正光学系60の制御によって矯正状態を変更し、被検者の装用している屈折矯正器具とは異なる屈折度数で矯正された状態を作り、調節緊張パラメータを測定してもよい。
【0064】
なお、矯正器具度数75が取得されている場合、制御部80は、比較モードにおいて裸眼での見え方を比較させてもよい。例えば、制御部80は、現在装用している屈折矯正器具での見え方と、適正な屈折矯正器具での見え方と、裸眼での見え方と、の3つの見え方を比較できるように矯正光学系60を制御してもよい。この場合、制御部80は、非矯正状態と、オーバーレフ値に基づいて矯正した状態と、矯正器具度数75を差し引いた(相殺した)状態と、に矯正状態を切り換える。これによって、被検者は、裸眼での見え方に対する現在の屈折矯正器具での見え方との差と、裸眼での見え方に対する適正な屈折矯正器具での見え方との差を、屈折矯正器具を外すことなく仮想的に体感することができる。
【0065】
なお、制御部80は、被検者の装用している屈折矯正器具に遮光機能があるか否かを判定してもよい。この場合、制御部80は、顔撮影部5、観察光学系50、測定光学系10などによって取得された画像を解析することによって、遮光機能の有無を判定してもよい。例えば、顔撮影部5によって撮影された顔画像を用いる場合、顔画像上の被検眼の周辺領域の輝度、コントラストまたはエッジなどに基づいて遮光機能の有無を判定してもよい。被検眼の周辺領域とは、例えば、遮光機能を有する眼屈折矯正器具のレンズを通過した部分である。例えば、制御部80は、被検眼の周辺領域の輝度、コントラストまたはエッジが所定条件を満たすか否かに基づいて、遮光機能の有無を判定してもよい。例えば、制御部80は、顔画像における被検眼の周辺領域の輝度、コントラストまたはエッジが所定値よりも小さい場合、屈折矯正器具に遮光機能があると判定し、コントラストまたはエッジが所定値よりも大きい場合、屈折矯正器具に遮光性能がないと判定してもよい。また、観察光学系50によって撮影された前眼部画像を用いる場合も同様に、制御部80は、前眼部画像の輝度、コントラストまたはエッジが所定条件を満たすか否かに基づいてサングラスか否かを判定してもよい。
【0066】
また、測定光学系10によって撮影された測定画像(リング像)を用いる場合も同様に、制御部80は、リング像の輝度、コントラストまたはエッジが所定条件を満たすか否かに基づいて、屈折矯正器具に遮光機能があるか否かを判定してもよい。例えば、被検者がサングラスを掛けている場合、リング像の輝度、コントラストまたはエッジなどが小さくなる。したがって、制御部80は、リング像の輝度、コントラストまたはエッジが所定値よりも小さい場合、矯正屈折器具に遮光機能があると判定してもよい。
【0067】
なお、制御部80は、赤外線カットレンズまたはブルーライトカットレンズなどが用いられた屈折矯正器具を装用しているか否かを判定してもよい。赤外線カットレンズまたはブルーライトカットレンズは、赤外線カットまたはブルーライトカット等の遮光機能を有する。赤外線カットレンズまたはブルーライトカットレンズなどによって特定の波長の光がカットされる場合も、顔画像、前眼部画像、測定画像などの輝度が低下する。したがって、制御部80は、前述の遮光機能の判定と同様に、被検者の顔画像、前眼部画像、測定画像などの輝度情報に基づいて、屈折矯正器具に赤外線カットレンズまたはブルーライトカットレンズが用いられているか否かを判定してもよい。
【0068】
なお、制御部80は、被検者の装用する屈折矯正器具に遮光機能があると判定した場合、測定光またはアライメント光などの光量を増加させてもよい。例えば、被検者がサングラスを装用している場合、アライメント光または測定光がサングラスによって遮られ、前眼部画像または測定画像の輝度が小さくなる。このため、制御部80は、アライメント光または測定光がサングラスによって遮られることを考慮し、アライメント光または測定光の光量を大きくしてもよい。これによって、アライメント光または測定光がサングラスなどによって遮られても、前眼部画像または測定画像の解析に支障が出ないようにしてもよい。
【0069】
なお、測定光の波長によって、屈折矯正器具を通過するときの屈折度合いが異なる。したがって、制御部80は、測定光の波長を考慮して測定結果を修正してもよい。例えば、制御部80は、波長の長い測定光によって測定する場合、波長の短い測定光によって測定する場合に比べて、屈折度数が大きくなるように補正してもよい。
【0070】
なお、比較ボタン90aを被検者側にも配置し、被検者自身が操作できるようにしてもよいし、ボタン操作でなく一定時間ごとに自動的に切り換わるようにしてもよい。さらに、切り換わったことが分かるように被検眼から見える位置に色違いのLED等を点灯させてもよいし、音声ガイドにて被検者に説明するようにしてもよい。
【0071】
<他の装置への適用>
また、上記説明においては、眼屈折力測定装置として、被検眼の眼屈折力を他覚的に測定する眼屈折力測定装置を例示したが、これに限定されず、被検眼の眼屈折力を自覚的に測定する眼屈折力測定装置においても、本実施形態の適用は可能である。また、特開2018-38788号公報に開示されるような両眼開放型の検眼装置においても本実施例の適用は可能である。
【符号の説明】
【0072】
1 眼屈折力測定装置
45 リング指標投影光学系
48 照明光源
50 観察光学系
80 制御部