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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-20
(45)【発行日】2023-09-28
(54)【発明の名称】固体電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/117 20210101AFI20230921BHJP
   H01M 10/0562 20100101ALI20230921BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20230921BHJP
   H01M 10/0585 20100101ALI20230921BHJP
   H01M 50/131 20210101ALI20230921BHJP
   H01M 50/11 20210101ALI20230921BHJP
【FI】
H01M50/117
H01M10/0562
H01M10/052
H01M10/0585
H01M50/131
H01M50/11
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021550632
(86)(22)【出願日】2020-09-18
(86)【国際出願番号】 JP2020035563
(87)【国際公開番号】W WO2021070600
(87)【国際公開日】2021-04-15
【審査請求日】2022-03-17
(31)【優先権主張番号】P 2019187900
(32)【優先日】2019-10-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100132263
【弁理士】
【氏名又は名称】江間 晴彦
(72)【発明者】
【氏名】吉岡 充
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 彰佑
(72)【発明者】
【氏名】大嶋 賢二
(72)【発明者】
【氏名】坂東 賢一
【審査官】井上 能宏
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/123319(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/179580(WO,A1)
【文献】特開2007-005279(JP,A)
【文献】特開2013-077486(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固体電解質層を介して積層された正極層と負極層を含む電池素体と、前記電池素体の表面を覆う外装材とを備え、
前記外装材は、ガラス質の材料と少なくとも2種の結晶質の材料とを含む焼結体であって、前記ガラス質の材料と前記結晶質の材料が、少なくとも1種の共通の元素を含む、固体電池。
【請求項2】
前記共通の元素は、Zn、Al、Si、およびMgからなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1記載の固体電池。
【請求項3】
前記少なくとも2種の結晶質の材料は、第1の結晶質の材料と第2の結晶質の材料を含み、前記第1の結晶質の材料の平均粒径は、前記第2の結晶質の材料の平均粒径よりも大きい、請求項1または2記載の固体電池。
【請求項4】
前記第1の結晶質の材料は多結晶であり、前記第2の結晶質の材料は、前記多結晶の粒界、および/または前記第1の結晶質の材料と前記ガラス質の材料との界面に存在する、請求項3記載の固体電池。
【請求項5】
前記ガラス質の材料は、ZnまたはAlを含むホウケイ酸塩系ガラスであり、前記結晶質の材料は、アルミナ、酸化マグネシウム、酸化ケイ素、二酸化ケイ素、ガーナイト、およびフォルステライトからなる群から選択される少なくとも2種である、請求項1または2記載の固体電池。
【請求項6】
前記ガラス質の材料は、ZnまたはAlを含むホウケイ酸塩系ガラスであり、前記結晶質の材料は、アルミナおよびガーナイトである、請求項5記載の固体電池。
【請求項7】
前記電池素体は、積層方向の最上層と最下層に配置され、前記外装材と接合する接続層を含み、前記接続層は、ポリアニオン系化合物を含む固体電解質を含む、請求項1~6のいずれか1項に記載の固体電池。
【請求項8】
前記電池素体は、積層方向の最上層と最下層に配置され、前記外装材と接合する接続層を含み、前記接続層は、前記少なくとも1種の共通の元素を含む固体電解質を含む、請求項1~6のいずれか1項に記載の固体電池。
【請求項9】
前記固体電解質層、前記正極層および前記負極層は前記少なくとも1種の共通の元素を含む、請求項1~6および8のいずれか1項に記載の固体電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体電池に関する。より具体的には、本発明は、電池構成単位を構成する各層が積層して成る積層型固体電池に関する。
【背景技術】
【0002】
従前より、繰り返しの充放電が可能な二次電池は様々な用途に用いられている。例えば、二次電池は、スマートフォンおよびノートパソコン等の電子機器の電源として用いられたりする。
【0003】
二次電池においてはイオンを移動させるための媒体として有機溶媒等の液体の電解質(電解液)が従来より使用されている。しかしながら、電解液を用いた二次電池においては、電解液の漏液等の問題がある。そのため、液体の電解質に代えて固体電解質を有して成る固体電池の開発が進められている。
【0004】
一方、固体電池の発電要素である電池素体を被覆する外装材としては、樹脂材料を用いたものが提案されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2006-351326号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、樹脂材料を用いた外装材は、電池素体への周囲雰囲気中の水蒸気の浸入を抑制する効果(以下、水蒸気バリア性という)が十分でないという問題がある。水蒸気バリア性が低いと、電池素体の内部に水分が浸入し、正極層、負極層、および固体電解質層が水分を吸収することで、電池性能が低下する。これに対し、本発明者らは、ガラス材料を用いた外装材について検討を行ったが、樹脂材料を用いた外装材に比べて水蒸気バリア性は向上するものの、実用化のためには依然として不十分であり、また機械的強度も不十分であった。
【0007】
そこで、本発明は、水蒸気バリア性と機械的強度に優れた外装材を備えた固体電池を提供することを目的とした。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明の一態様に係る固体電池は、固体電解質層を介して積層された正極層と負極層を含む電池素体と、前記電池素体の表面を覆う外装材とを備え、前記外装材は、ガラス質の材料と少なくとも2種の結晶質の材料とを含む焼結体であって、前記ガラス質の材料と前記結晶質の材料が、少なくとも1種の共通の元素を含むことを特徴とする。
【0009】
また、本発明の別の態様に係る固体電池は、固体電解質層を介して積層された正極層と負極層を含む電池素体と、前記電池素体の表面を覆う外装材とを備え、前記外装材は、ガラス質の材料と少なくとも1種の結晶質の材料とを含む焼結体であって、前記結晶質の材料の前記焼結体に対する体積分率が、40体積%以上99体積%以下であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、水蒸気バリア性と機械的強度に優れた外装材を備えた固体電池を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施の形態1に係る固体電池の構造の一例を示す一部切り欠き模式斜視図である。
図2】本発明の実施の形態1に係る固体電池の外装材の構造の一例を示す模式断面図である。
図3】本発明の実施の形態1に係る固体電池の外装材に含まれる結晶質の材料の構造の一例を示す模式断面図である。
図4】本発明の実施の形態1に係る固体電池の外装材に含まれる結晶質の材料の構造の別の例を示す模式断面図である。
図5】本発明の実施の形態1に係る固体電池の外装材に含まれる結晶質の材料の構造の別の例を示す模式断面図である。
図6】本発明の実施の形態1に係る固体電池の製造工程の一例を示す分解斜視図である。
図7】本発明の実施の形態2に係る固体電池の外装材の構造の一例を示す模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の「固体電池」を詳細に説明する。必要に応じて図面を参照して説明を行うものの、図示する内容は、本発明の理解のために模式的かつ例示的に示したにすぎず、外観や寸法比などは実物と異なり得る。
【0013】
本発明でいう「固体電池」は、広義にはその構成要素が固体から構成されている電池を指し、狭義にはその電池構成要素(特に好ましくは全ての電池構成要素)が固体から構成されている全固体電池を指している。ある好適な態様では、本発明における固体電池は、電池構成単位を成す各層が互いに積層するように構成された積層型固体電池であり、好ましくはそのような各層が焼結体から成っている。なお、「固体電池」は、充電および放電の繰り返しが可能な、いわゆる「二次電池」のみならず、放電のみが可能な「一次電池」をも包含する。本発明のある好適な態様に従うと「固体電池」は二次電池である。「二次電池」は、その名称に過度に拘泥されるものでなく、例えば、蓄電デバイスなども包含し得る。
【0014】
本明細書でいう「平面視」とは、固体電池を構成する各層の積層方向に基づく厚み方向に沿って対象物を上側または下側から捉えた場合の形態に基づいている。また、本明細書でいう「断面視」とは、固体電池を構成する各層の積層方向に基づく厚み方向に対して略垂直な方向から捉えた場合の形態(端的にいえば、厚み方向に平行な面で切り取った場合の形態)に基づいている。本明細書で直接的または間接的に用いる“上下方向”および“左右方向”は、それぞれ図中における上下方向および左右方向に相当する。特記しない限り、同じ符号または記号は、同じ部材・部位または同じ意味内容を示すものとする。ある好適な態様では、鉛直方向下向き(すなわち、重力が働く方向)が「下方向」に相当し、その逆向きが「上方向」に相当すると捉えることができる。
【0015】
本明細書で言及する各種の数値範囲は、特段の説明が付されない限り、下限および上限の数値そのものを含むことを意図している。つまり、例えば1~10といった数値範囲を例にとれば、特段の説明の付記がない限り、下限値の“1”を含むと共に、上限値の“10”をも含むものとして解釈され得る。
【0016】
実施の形態1
本実施の形態に係る固体電池は、固体電解質を介して積層された正極層と負極層を含む電池素体と、電池素体の表面を覆う外装材とを備え、外装材は、ガラス質の材料と少なくとも2種の結晶質の材料とを含む焼結体であって、ガラス質の材料と結晶質の材料が、少なくとも1種の共通の元素を含むことを特徴とするものである。
【0017】
図1は、実施の形態1に係る固体電池1の構造の一例を示す、一部切り欠き模式斜視図である。固体電池1は、電池素体2と、外装材3と、正極端子4と、負極端子5とを備えている。電池素体2は、正極層11と負極層12が固体電解質層13を介して積層された積層体構造を有している。また、電池素体2は、互いに反対側に位置する第1端面(不図示)および第2端面(不図示)と、第1端面および第2端面との間に配置される周面を有しており、第1端面には正極層11の端面が露出し、第2端面には負極層12の端面が露出している。外装材3は、電池素体2の周面を覆うように設けられている。また、正極端子4は、電池素体2の第1端面を覆うとともに、外装材3を介して電池素体2の周面の第1端面側を覆い、正極層11と電気的に接続している。また、負極端子5は、電池素体2の第2端面を覆うとともに、外装材3を介して電池素体2の周面の第2端面側とを覆い、負極層12と電気的に接続している。なお、第1端面と第2端面には、それぞれ電極分離部14が設けられており、第1端面では正極端子4と負極層12とが直接接触することを防止し、第2端面では負極端子5と正極層11とが直接接触することを防止している。なお、図中、Tは固体電池1の高さ方向、Lは固体電池1の長さ方向、Wは固体電池1の幅方向を示す。
【0018】
本実施の形態に係る固体電池は、正極層、負極層、およびそれらの間に介在する固体電解質層からなる電池構成単位を積層方向に沿って少なくとも1つ備える電池素体(以下、固体電池積層体ともいう)と、電池素体の表面を被覆する外装材とを備えている。
【0019】
固体電池は、それを構成する各層が焼成によって形成されるところ、正極層、負極層および固体電解質などが焼結層を構成している。好ましくは、正極層、負極層および固体電解質は、それぞれが互いに一体焼成されており、それゆえ固体電池積層体が一体焼結体を構成している。
【0020】
正極層は、少なくとも正極活物質を含んで成る電極層である。正極層は、更に固体電解質を含んでもよい。例えば、正極層は、正極活物質粒子と固体電解質粒子とを少なくとも含む焼結体から構成されている。好ましい1つの態様では、正極層が、正極活物質粒子および固体電解質粒子のみを実質的に含む焼結体から構成されている。一方、負極層は、少なくとも負極活物質を含んで成る電極層である。負極層は、更に固体電解質を含んでもよい。例えば、負極層は、負極活物質粒子と固体電解質粒子とを少なくとも含む焼結体から構成されている。好ましい1つの態様では、負極層が、負極活物質粒子および固体電解質粒子のみを実質的に含む焼結体から構成されている。
【0021】
正極活物質および負極活物質は、固体電池において電子の受け渡しに関与する物質である。固体電解質を介してイオンは正極層と負極層との間で移動(伝導)して電子の受け渡しが行われることで充放電がなされる。正極層および負極層は、イオンとしてナトリウムイオンまたはリチウムイオン、好ましくはリチウムイオンを吸蔵放出可能な層であることが好ましい。つまり、固体電池は、固体電解質を介してナトリウムイオンまたはリチウムイオンが正極層と負極層との間で移動して電池の充放電が行われる全固体型二次電池であることが好ましい。
【0022】
(正極活物質)
リチウムイオンを吸蔵放出可能な正極活物質としては、例えば、ナシコン型構造を有するリチウム含有リン酸化合物、オリビン型構造を有するリチウム含有リン酸化合物、リチウム含有層状酸化物、および、スピネル型構造を有するリチウム含有酸化物等から成る群から選択される少なくとも一種が挙げられる。ナシコン型構造を有するリチウム含有リン酸化合物の一例としては、Li(PO等が挙げられる。オリビン型構造を有するリチウム含有リン酸化合物の一例としては、LiFePO、LiMnPO等が挙げられる。リチウム含有層状酸化物の一例としては、LiCoO、LiCo1/3Ni1/3Mn1/3等が挙げられる。スピネル型構造を有するリチウム含有酸化物の一例としては、LiMn、LiNi0.5Mn1.5等が挙げられる。
【0023】
また、ナトリウムイオンを吸蔵放出可能な正極活物質としては、ナトリウム含有リン酸化合物として、Na(PO、NaCoFe(PO、Na2NiFe(PO、NaFe(PO、NaFeP、NaFe(PO(P)、およびナトリウム含有層状酸化物としてNaFeOから成る群から選択される少なくとも一種が挙げられる。
【0024】
(負極活物質)
リチウムイオンを吸蔵放出可能な負極活物質としては、例えば、Ti、Si、Sn、Cr、Fe、NbおよびMoから成る群より選ばれる少なくとも一種の元素を含む酸化物、黒鉛-リチウム化合物、リチウム合金、ナシコン型構造を有するリチウム含有リン酸化合物、オリビン型構造を有するリチウム含有リン酸化合物、ならびに、スピネル型構造を有するリチウム含有酸化物等から成る群から選択される少なくとも一種が挙げられる。リチウム合金の一例としては、Li-Al等が挙げられる。ナシコン型構造を有するリチウム含有リン酸化合物の一例としては、Li(PO、LiTi(PO等が挙げられる。オリビン型構造を有するリチウム含有リン酸化合物の一例としては、LiCuPO等が挙げられる。スピネル型構造を有するリチウム含有酸化物の一例としては、LiTi12等が挙げられる。
【0025】
また、ナトリウムイオンを吸蔵放出可能な負極活物質としては、ナトリウム含有リン酸化合物、ならびに遷移金属酸化物等から成る群から選択される少なくとも一種が挙げられる。
【0026】
正極層および/または負極層は、導電助剤を含んでいてもよい。正極層および負極層に含まれる導電助剤として、銀、パラジウム、金、プラチナ、アルミニウム、銅およびニッケル等の金属材料、ならびに炭素などから成る少なくとも1種を挙げることができる。
【0027】
さらに、正極層および/または負極層は、焼結助剤を含んでいてもよい。焼結助剤としては、リチウム酸化物、ナトリウム酸化物、カリウム酸化物、酸化ホウ素、酸化ケイ素、酸化ビスマスおよび酸化リンから成る群から選択される少なくとも1種を挙げることができる。
【0028】
正極層および負極層の厚みは特に限定されず、例えば、それぞれ独立して、2μm以上50μm以下、特に5μm以上30μm以下であってもよい。
【0029】
(固体電解質)
固体電解質は、ナトリウムイオンまたはリチウムイオンが伝導可能な物質である。特に固体電池で電池構成単位を成す固体電解質は、正極層と負極層との間においてナトリウムイオンまたはリチウムイオンが伝導可能な層を成している。なお、固体電解質は、正極層と負極層との間に少なくとも設けられていればよい。つまり、固体電解質は、正極層と負極層との間からはみ出すように当該正極層および/または負極層の周囲においても存在していてもよい。リチウムイオンが伝導可能な固体電解質としては、例えば、ナシコン構造を有するリチウム含有ポリアニオン系化合物、ペロブスカイト構造を有する酸化物、ガーネット型またはガーネット型類似構造を有する酸化物等が挙げられる。ナシコン構造を有するリチウム含有ポリアニオン系化合物としては、例えば、リチウム含有リン酸化合物である、Li(PO(1≦x≦2、1≦y≦2、Mは、Ti、Ge、Al、GaおよびZrから成る群から選ばれた少なくとも一種)が挙げられる。ナシコン構造を有するリチウム含有リン酸化合物の一例としては、例えば、Li1.2Al0.2Ti1. (PO等が挙げられる。ペロブスカイト構造を有する酸化物の一例としては、La0.55Li0.35TiO等が挙げられる。ガーネット型またはガーネット型類似構造を有する酸化物の一例としては、LiLaZr12等が挙げられる。また、ナトリウムイオンが伝導可能な固体電解質としては、例えば、ナシコン構造を有するナトリウム含有リン酸化合物が挙げられる。ナシコン構造を有するナトリウム含有リン酸化合物としては、Na(PO(1≦x≦4、1≦y≦2、Mは、ZrとTi、Ge、Al、GaおよびFe等から成る群から選ばれた少なくとも一種、Pの一部はSiやS等で置換されても良い)が挙げられる。
【0030】
固体電解質層は、焼結助剤を含んでいてもよい。固体電解質層に含まれる焼結助剤は、例えば、正極層および/または負極層に含まれ得る焼結助剤と同様の材料から選択されてもよい。
【0031】
固体電解質層の厚みは特に限定されず、例えば、1μm以上15μm以下、特に1μm以上5μm以下であってもよい。
【0032】
(外装材)
外装材は、一般に固体電池の最外側に形成されるもので、電気的、物理的および/または化学的に保護するためのものである。本実施の形態に係る固体電池に用いる、外装材は、ガラス質の材料と少なくとも2種の結晶質の材料とを含む焼結体であって、ガラス質の材料と結晶質の材料が、少なくとも1種の共通の元素を含んでいる。ガラス質の材料のみからなる焼成体は機械的または化学的に結晶質の材料に比べて強いものを得るのは困難である。本発明では、共通の元素を含むことで結晶質の材料とガラス質の材料とが強く接合し、ガラス単体に比べてより緻密な焼成体を形成しやすくなり、更に尚且つ、焼成体の機械的強度や化学的安定性が向上する。これにより、外装材の水蒸気バリア性と機械的強度を向上させることが可能となる。
【0033】
ガラス質の材料と結晶質の材料に含まれる共通の元素としては、Zn、Al、Si、およびMgからなる群から選択される少なくとも1種であり、好ましくはZnまたはAlである。
【0034】
また、ガラス質の材料としては、例えば、Zn、Al、Si、およびMgからなる群から選択される少なくとも1種を含むホウケイ酸塩ガラスを挙げることができる。好ましくは、Znおよび/またはAlを含むホウケイ酸塩ガラスである。
【0035】
また、結晶質の材料としては、アルミナ(Al)、酸化マグネシウム(MgO)、酸化ケイ素(SiO)、二酸化ケイ素(SiO)、ガーナイト(ZnAl)、フォルステライト(MgSiO)、ウラストナイト(CaSiO)、アノーサイト(CaAlSi)、カヤナイト(AlSiO)、シリマナイト(AlSiO)、およびアンダルサイト(AlSiO)からなる群から選択される少なくとも2種を挙げることができる。好ましくは、アルミナ(Al)、ガーナイト(ZnAl)、フォルステライト(MgSiO)、酸化マグネシウム(MgO)、酸化ケイ素(SiO)、二酸化ケイ素(SiO)からなる群から選択される少なくとも2種である。さらに好ましくは、アルミナ(Al)とガーナイト(ZnAl)、またはアルミナ(Al)とフォルステライト(MgSiO)である。ここで、共通の元素として、アルミナはAl、酸化マグネシウムはMg、酸化ケイ素と二酸化ケイ素はSi、ガーナイトはZnとAl、フォルステライトはSiとMg、ウラストナイトはSi、アノーサイトはAlとSi、カヤナイトとシリマナイトとアンダルサイトはAlとSiを有している。
【0036】
本実施の形態で用いる焼結体は、ガラス質の材料と結晶質の材料とを所定の混合比で混合し、有機材料および溶剤を加えて混合してペーストとし、所定の基材に塗布して焼成することで調製できる。また、焼成によりガラス質の材料と結晶質の材料となる原料粉を用いてペーストを調製することもできる。ガラス質の材料と結晶質の材料となる原料粉としては、例えば結晶化ガラス粉を用いることができる。また、結晶化ガラス粉に必要に応じて結晶質の材料を混合したものを原料粉として用いてもよい。
【0037】
また、結晶質の材料は、粒子状を有している。結晶質の材料の粒子(以下、結晶質粒子ともいう)は、ガラス質の材料に分散していることが好ましい。結晶質粒子の平均粒径は、10μm以下であることが好ましい。ここで、結晶質粒子の平均粒径は、以下の方法で求めることができる。まず、イオンミリング等により外装材の断面を作製し、断面SEM像を撮影する。次に、断面SEM像から、無作為に100個の結晶質粒子を選び、これらの粒子の粒径を測定し、算術平均して平均粒径を算出する。なお、粒子が球形でない場合には、粒子の輪郭に接するように、あらゆる角度から引いた2本の平行線間の距離のうち最大のもの(いわゆる最大フェレ径)を粒子の粒径とする。
【0038】
また、外装材中のガラス質の材料の体積分率は、焼結体の緻密性を確保する観点から、1体積%以上、好ましくは1体積%以上60体積%以下である。ここで、ガラス質の材料の体積分率は以下の方法で求めることができる。まず、イオンミリング等により外装材の断面を作製し、断面SEM像を撮影する手順を繰り返して、三次元のSEM像を得る。次に、三次元のSEM像から、外装材の厚さ程度の高さの立方体中におけるガラス質の材料の体積分率を算出する。
【0039】
また、本実施の形態では、結晶質の材料は、2種以上の結晶質の材料がガラス質の材料中に分散している。図2は、本実施の形態における外装材の断面構造の一例を示す模式図であり、粒子形状を有する2種の結晶質の材料を含む例を示している。ガラス質の材料21の中に、第1の結晶質の材料23と第2の結晶質の材料24が分散している。第1の結晶質の材料23の平均粒径は、第2の結晶質の材料24の平均粒径よりも大きい。また、第1の結晶質の材料23は多結晶である。また、第2の結晶質の材料24は多結晶の粒界および/または第1の結晶質の材料23とガラス質の材料21との界面に存在している。
【0040】
図3~5は、第1の結晶質の材料23の構造の例を示す模式図である。図3は、結晶質の材料22が、第1の結晶質の材料23をコアとし、第2の結晶質の材料24をシェルとするコアシェル構造を有する例を示している。また、図4は、第1の結晶質の材料23の表面に第2の結晶質の材料24が担持されている例を示している。図5は、図3および図4の両方の構造を含む例であり、結晶質の材料22がコアシェル構造を有し、さらに、そのシェルの表面に第2の結晶質の材料24が担持されている例を示している。ここで、コアシェル構造が得られる材料の組み合わせとしては、例えば、ガラス質の材料がホウケイ酸塩ガラスであり、第1の結晶質の材料がアルミナ(Al)で第2の結晶質の材料がガーナイト(ZnAl)である場合を挙げることができ、結晶質の材料は、アルミナ粒子をコア部とし、ガーナイトをシェル部とするコアシェル構造を有する。シェル部のガーナイトがガラス質の材料と強く接合することで、焼結体の緻密性をさらに向上させることができる。なお、第1の結晶質の材料は、アルミナ(Al)、酸化マグネシウム(MgO)、酸化ケイ素(SiO)、二酸化ケイ素(SiO)等であり、第2の結晶質の材料は、ガーナイト(ZnAl)、フォルステライト(MgSiO)等である。
【0041】
また、外装材の水分透過率は、水蒸気バリア性を確保する観点から、1×10-4g/m/day以下、好ましくは1×10-5g/m/day以下、より好ましくは1×10-6g/m/day以下である。ここで、外装材の水分透過率は、以下の方法で求めることができる。まず、イオンミリングや研磨等により外装材の一部を矩形の小片として取り出す。次に、外装材の水蒸気透過率(23℃、90%RH)をJIS K7129-C(ISO15106-4)に準じて測定する。
【0042】
外装材は、固体電池の短絡を抑制する観点から絶縁性であることが好ましく、具体的には、イオン伝導率が、1×10-7S/cm以下、好ましくは1×10-10S/cm以下である。また、電子伝導率は、1×10-7S/cm以下、好ましくは1×10-10S/cm以下である。
【0043】
また、外装材は、電池素体の周面と、焼結体同士の一体焼結をなしていることが好ましい。ここで、外装材が一体焼結する電池素体の周面とは、電池素体の最上層と最下層、および正極端子と負極端子が形成される第1端面と第2端面を除く側面である。電池素体の最上層と最下層は、正極層または負極層でもよく、あるいは、外装材と接合する接続層を設けてもよい。接続層が外装材と接合することで、電池素体と外装材との一体化が容易となる。接続層には、ポリアニオン系化合物を含む固体電解質層を用いることが好ましい。ここで、ポリアニオン系化合物を含む固体電解質としては、例えば、リチウムイオン伝導体としてはリチウム含有リン酸化合物、ナトリウムイオン伝導体としてはナトリウム含有リン酸化合物を挙げることができる。また、接続層には、上記の共通の元素を少なくとも1種含む固体電解質層を用いることもできる。ここで、上記の共通の元素を少なくとも1種含む固体電解質層とは、Zn、Al、Si、およびMgからなる群から選択される少なくとも1種の元素を含む固体電解質層であり、例えば、Li1.5Al0.5Ge1.5(PO、Li1.2Al0.2Ti1.8(PO,Li1.4Mg0.2Ti1.8(PO、を挙げることができる。
【0044】
また、一体焼結するという観点から、電池素体を構成する、正極層、負極層および固体電解質層が、上記の共通の元素を少なくとも1種含んでいてもよい。そのような例として、正極層には、正極活物質と固体電解質に加えてAl、SiO、MgO等を添加したものを挙げることができ、また負極層には、負極活物質と固体電解質に加えてAl、SiO、MgO等を添加したものを挙げることができ、固体電解質層には、固体電解質に加えてAl、SiO、MgO等を添加したものを挙げることができる。
【0045】
また、外装材の厚さは、水蒸気バリア性と機械的強度を確保する観点から、平均厚みは、500μm以下1μm以上、好ましくは100μm以下5μm以上である。ここで、外装材の平均厚みは、外装材の上面部分、下面部分および側面部分の100箇所の厚みから算出した平均厚みを用いている。
【0046】
(端子)
固体電池には、一般に端子(例えば外部端子)が設けられている。特に、電池素体の互いに反対側に位置する第1端面および第2端面に正極端子と負極端子が設けられている。より具体的には、正極層と接続された正極端子と、負極層と接続された負極端子とが設けられている。そのような端子は、導電率が大きい材料を用いることが好ましい。端子の材質としては、特に制限するわけではないが、銀、金、プラチナ、アルミニウム、銅、スズおよびニッケルから成る群から選択される少なくとも一種を挙げることができる。
【0047】
[固体電池の製造方法]
以下、本発明の実施の形態1に係る固体電池の製造方法について説明する。
【0048】
実施の形態1に係る固体電池は、グリーンシートを用いるグリーンシート法、スクリーン印刷法等の印刷法、およびディッピング法を組み合わせて製造することができる。一態様では、グリーンシート法により固体電解質層を形成し、スクリーン印刷により正極層と負極層を形成し、積層した積層体の周面にディッピング法により外装材を設けることにより、本発明の一実施形態に係る固体電池を製造することができる。なお、以下では、当該態様を前提として説明するが、これに限定されることなく、グリーンシート法やスクリーン印刷法により所定の積層体を形成してもよい。
【0049】
(未焼成積層体の形成工程)
まず、基材(例えばPETフィルム)上に固体電解質層用ペーストを塗工する。また、正極層用ペースト、負極層用ペースト、電極分離部用ペースト、および外装材用ペーストを調製する。
【0050】
各ペーストは、正極活物質、負極活物質、導電性材料、固体電解質材料、絶縁性物質材料、および焼結助剤から成る群から適宜選択される各層の所定の構成材料と、有機材料を溶剤に溶解した有機ビヒクルとを湿式混合することによって作製することができる。正極層用ペーストは、正極活物質、導電材料、固体電解質材料、有機材料および溶剤を含む。負極層用ペーストは、負極活物質、導電材料、固体電解質材料、有機材料および溶剤を含む。固体電解質層用ペーストは、固体電解質材料、焼結助剤、有機材料および溶剤を含む。電極分離部用ペーストは、絶縁性物質材料(例えば、固体電解質材料)、焼結助剤、有機材料および溶剤を含む。外装材用ペーストは、ガラス質の材料、結晶質の材料、有機材料および溶剤を含む。
【0051】
湿式混合ではメディアを用いることができ、具体的には、ボールミル法またはビスコミル法等を用いることができる。一方、メディアを用いない湿式混合方法を用いてよく、サンドミル法、高圧ホモジナイザー法またはニーダー分散法等を用いてもよい。
【0052】
支持基材は、未焼成積層体を支持可能な限り特に限定されず、例えば、ポリエチレンテレフタレート等の高分子材料から成る基材を用いることができる。未焼成積層体を基材上に保持したまま焼成工程に供する場合には、基材は焼成温度に対して耐熱性を呈するものを用いてよい。
【0053】
固体電解質層用ペーストに含まれる固体電解質材料としては、上述のようにナシコン構造を有するリチウム含有リン酸化合物、ペロブスカイト構造を有する酸化物、および/またはガーネット型またはガーネット型類似構造を有する酸化物からなる粉末を用いてよい。
【0054】
正極層用ペーストに含まれる正極活物質材としては、例えば、ナシコン型構造を有するリチウム含有リン酸化合物、オリビン型構造を有するリチウム含有リン酸化合物、リチウム含有層状酸化物、およびスピネル型構造を有するリチウム含有酸化物等から成る群から少なくとも一種を用いてよい。
【0055】
負極層用ペーストに含まれる負極活物質材としては、例えば、Ti、Si、Sn、Cr、Fe、Nb、および、Moから成る群から選ばれる少なくとも一種の元素を含む酸化物、ナシコン型構造を有するリチウム含有リン酸化合物、オリビン型構造を有するリチウム含有リン酸化合物、およびスピネル型構造を有するリチウム含有酸化物等から成る群から少なくとも一種から選択される負極活物質材、上記の固体電解質ペーストに含まれる材料、および導電材等を用いてよい。
【0056】
ペーストに含まれる有機材料は特に限定されないが、ポリビニルアセタール樹脂、セルロース樹脂、ポリアクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂およびポリビニルアルコール樹脂などから成る群から選択される少なくとも一種の高分子材料を用いることができる。溶剤は上記有機材料を溶解可能な限り特に限定されず、例えば、トルエンおよび/またはエタノールなどを用いてよい。
【0057】
焼結助剤としては、リチウム酸化物、ナトリウム酸化物、カリウム酸化物、酸化ホウ素、酸化ケイ素、酸化ビスマス、および酸化リンから成る群から選択される少なくとも一種を用いてよい。
【0058】
塗工したペーストを、30℃以上50℃以下に加熱したホットプレート上で乾燥させることで、基材(例えばPETフィルム)上に所定厚みを有する固体電解質層シートを形成する。
【0059】
(電池素体の積層工程)
図6は、電池素体2の積層工程の一例を示す固体電池の分解斜視図である。固体電解質層シート13を基材から剥離する。固体電解質層シート13の上にスクリーン印刷により正極層11を形成し、正極層11の周囲には電極分離部14をスクリーン印刷により形成して正極層一体化固体電解質層シートを作製する。また、固体電解質層シート13の上にスクリーン印刷により負極層12を形成し、負極層12の周囲には電極分離部14をスクリーン印刷により形成して、負極層一体化固体電解質シートを作製する。この正極層一体化固体電解質層シートと負極層一体化固体電解質シートを固体電解質層13が介在するように交互に積層し、最上層と最下層に接続層として固体電解質層13が配置された電池素体2を得る。次いで、所定圧力(例えば約50以上約100MPa以下)による熱圧着と、これに続く所定圧力(例えば約150以上約300MPa以下)での等方圧プレスを実施することが好ましい。以上により、所定の電池素体2を作製することができる。次いで、電池素体2の最上面と最下面を外装材用ペーストにディッピングすることで、外装材3を形成する。また、正極層と負極層の端面が露出していない、電池素体2の側面についても、外装材用ペーストにディッピングすることで、外装材3を形成する。
【0060】
(焼成工程)
焼成工程では、未焼成積層体を焼成する。あくまでも例示にすぎないが、焼成は、酸素ガスを含む窒素ガス雰囲気中または大気中で、例えば500℃にて有機材料を除去した後、窒素ガス雰囲気中または大気中で例えば550℃以上1000℃以下で加熱することで実施する。焼成は、積層方向(場合によっては積層方向および当該積層方向に対する垂直方向)で未焼成積層体を加圧しながら行ってよい。なお、焼成は、電池素体に外装材を設けた後、一度に行ってもよく(同時焼成)、あるいは、電池素体を焼成した後、外装材を設け、さらに焼成を行ってもよい(逐次焼成)。
【0061】
次いで、得られた積層体に端子をつける。端子は正極層と負極層にそれぞれ電気的に接続可能に設けられる。例えば、金属ペースト等へのディッピングにより端子を形成することが好ましい。特に限定されるものではないが、端子としては、銀、金、プラチナ、アルミニウム、銅、スズ、およびニッケルから選択される少なくとも一種から構成されることが好ましい。
【0062】
なお、上記の製造方法では、固体電池がリチウムイオン二次電池である場合について説明したが、ナトリウムイオンを吸蔵放出可能な負極活物質や正極活物質、およびナトリウムイオンが伝導可能な固体電解質を用いることで、ナトリウムイオン二次電池である固体電池も製造することができる。
【0063】
本実施の形態によれば、外装材の水蒸気バリア性と機械的強度を向上させることが可能となる。
【0064】
実施の形態2
本実施の形態に係る固体電池は、固体電解質層を介して積層された正極層と負極層を含む電池素体と、電池素体の表面を覆う外装材とを備え、外装材は、ガラス質の材料と少なくとも1種の結晶質の材料とを含む焼結体であって、結晶質の材料の焼結体に対する体積分率が、40体積%以上99体積%以下であることを特徴とするものである。
【0065】
本実施の形態に係る固体電池は、外装材が、ガラス質の材料と少なくとも1種の結晶質の材料とを含む焼結体であって、結晶質の材料の焼結体に対する体積分率が、40体積%以上99体積%以下であること以外は、実施の形態1に係る固体電池と同様の構成を有している。
【0066】
本実施の形態では、結晶質の材料の焼結体に対する体積分率が、40体積%以上99体積%以下である。好ましくは、結晶質の材料の焼結体に対する体積分率が、50体積%以上60体積%以下である。焼結体中のガラス質の材料は結晶質の材料同士を接合して緻密性を向上させるが、ガラス質の材料の体積分率が大きくなると、焼結体の機械的強度が低下する。本実施の形態では、結晶質の材料の焼結体に対する体積分率を40体積%以上99体積%以下とすることで、焼結体の機械的強度の低下を抑制しながら、焼結体の緻密性を向上させることが可能となる。
【0067】
本実施の形態では、ガラス質の材料は、特に限定されず、例えば、ソーダ石灰ガラス、カリガラス、ホウ酸塩ガラス、ホウケイ酸塩ガラス、ホウケイ酸バリウムガラス、ホウ酸亜鉛ガラス、ホウ酸バリウムガラス、ホウケイ酸ビスマス塩ガラス、ホウ酸ビスマス亜鉛ガラス、ビスマスケイ酸塩ガラス、リン酸塩ガラス、アルミノリン酸塩ガラス、および、リン酸亜鉛ガラスから成る群から選択される少なくとも一種を挙げることができる。好ましくは、ホウケイ酸塩ガラスである。また、結晶質の材料としては、アルミナ(Al)やガーナイト(ZnAl)を挙げることができる。なお、実施の形態1に記載した、共通の元素としては、Zn、Al、Si、およびMgからなる群から選択される少なくとも1種を含むガラス質の材料と結晶質の材料は、本実施の形態でも必要に応じて用いることができる。
【0068】
図7は、本実施の形態における外装材の断面構造の一例を示す模式図である。本実施の形態では、ガラス質の材料21に分散した結晶質の材料25同士が接合することで緻密な焼結体が得られる。また、2種以上の結晶質の材料を含む場合、2種以上の結晶質粒子がそれぞれ別々にガラス質の材料に分散していてもよい。
【0069】
なお、結晶質の材料の焼結体に対する体積分率が40体積%以上99体積%以下であれば、結晶質の粒子の粒径は特に限定されない。
【0070】
また、本実施の形態では、外装材の可視光の正反射率が6%以下、好ましくは3%以下である。実装等のため固体電池をチップマウンター等を用いて吸着移動させる場合があるが、外装材の反射率が高すぎると、チップマウンターの撮像素子が固体電池の位置を正確に認識できない場合がある。そのような場合、外装材の反射率を低くすることで、正確に固体電池の位置を認識できるようになる。また、反射率を小さくすることで、固体電池の外観検査も容易となる。ここで、外装材の可視光の正反射率は、例えば、光沢計GM-060(コニカミノルタ社製)を用いて30°入射光の正反射率を測定することで求めることができる。
【0071】
本実施の形態によっても、実施の形態1の場合と同様に、外装材の水蒸気バリア性と機械的強度を向上させることが可能となる。
【0072】
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、あくまでも典型例を例示したに過ぎない。従って、本発明はこれに限定されず、本発明の要旨を変更しない範囲において種々の態様が考えられることを当業者は容易に理解されよう。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明の一実施形態に係る固体電池は、蓄電が想定される様々な分野に利用することができる。あくまでも例示にすぎないが、本発明の一実施形態に係る固体電池は、モバイル機器などが使用される電気・情報・通信分野(例えば、携帯電話、スマートフォン、ノートパソコンおよびデジタルカメラ、活動量計、アームコンピューター、電子ペーパーなどのモバイル機器分野)、家庭・小型産業用途(例えば、電動工具、ゴルフカート、家庭用・介護用・産業用ロボットの分野)、大型産業用途(例えば、フォークリフト、エレベーター、湾港クレーンの分野)、交通システム分野(例えば、ハイブリッド車、電気自動車、バス、電車、電動アシスト自転車、電動二輪車などの分野)、電力系統用途(例えば、各種発電、ロードコンディショナー、スマートグリッド、一般家庭設置型蓄電システムなどの分野)、医療用途(イヤホン補聴器などの医療用機器分野)、医薬用途(服用管理システムなどの分野)、ならびに、IoT分野、宇宙・深海用途(例えば、宇宙探査機、潜水調査船などの分野)などに利用することができる。
【符号の説明】
【0074】
1 固体電池
2 電池素体
3 外装材
4 正極端子
5 負極端子
11 正極層
12 負極層
13 固体電解質層
14 電極分離部
21 ガラス質の材料
22、25 結晶質の材料
23 第1の結晶質の材料
24 第2の結晶質の材料
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7