(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-20
(45)【発行日】2023-09-28
(54)【発明の名称】光吸収体プレハブ液体及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
C09K 3/00 20060101AFI20230921BHJP
B82Y 30/00 20110101ALI20230921BHJP
B82Y 40/00 20110101ALI20230921BHJP
C01B 32/174 20170101ALI20230921BHJP
【FI】
C09K3/00 105
B82Y30/00
B82Y40/00
C01B32/174
(21)【出願番号】P 2021068704
(22)【出願日】2021-04-14
【審査請求日】2021-04-14
(31)【優先権主張番号】202011470897.6
(32)【優先日】2020-12-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】598098331
【氏名又は名称】ツィンファ ユニバーシティ
(73)【特許権者】
【識別番号】500080546
【氏名又は名称】鴻海精密工業股▲ふん▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】HON HAI PRECISION INDUSTRY CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】66,Chung Shan Road,Tu-Cheng New Taipei,236(TW)
(74)【代理人】
【識別番号】110002848
【氏名又は名称】弁理士法人NIP&SBPJ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】金 元浩
(72)【発明者】
【氏名】李 群慶
(72)【発明者】
【氏名】▲ハン▼ 守善
【審査官】小野 久子
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-083755(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第102419212(CN,A)
【文献】特開2012-201589(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第106568215(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第112011232(CN,A)
【文献】特開2006-045034(JP,A)
【文献】国際公開第2010/008014(WO,A1)
【文献】特表2014-505650(JP,A)
【文献】国際公開第2005/110594(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K 3/00
B82Y 30/00
B82Y 40/00
C01B 32/174
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光吸収体プレハブ液体は、溶媒、複数のカーボンナノチューブ及び複数の炭素粒子
からなり、複数の前記カーボンナノチューブ及び複数の前記炭素粒子が前記溶媒中に配置され、複数の前記カーボンナノチューブが絡み合ってネット状構造を形成し、
複数の前記炭素粒子が前記ネット状構造の内部に配置されることを特徴とする光吸収体プレハブ液体。
【請求項2】
前記溶媒は、200mLであり、複数の前記カーボンナノチューブは、0.4gであり、複数の前記炭素粒子は、0.5gから7gであることを特徴とする請求項1に記載の光吸収体プレハブ液体。
【請求項3】
複数の前記カーボンナノチューブと複数の前記炭素粒子の重量比は、4:5~4:70であることを特徴とする請求項1に記載の光吸収体プレハブ液体。
【請求項4】
複数のカーボンナノチューブを提供するステップであって、複数の前記カーボンナノチューブを溶媒中に配置し、複数の前記カーボンナノチューブが絡み合ってネット状構造を形成するようにする凝集処理を行って、カーボンナノチューブの懸濁液を得るステップと、
複数の炭素粒子を前記カーボンナノチューブの懸濁液に置き、混合をするステップと、
を含むことを特徴とする光吸収体プレハブ液体の製造方法。
【請求項5】
複数の前記カーボンナノチューブと複数の前記炭素粒子の重量比は、4:5~4:70であることを特徴とする請求項
4に記載の光吸収体プレハブ液体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光吸収体プレハブ液体及びその製造方法に関し、特にカーボンナノチューブに基づく光吸収体プレハブ液体及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
赤外線は、可視光とマイクロ波の間の波長の電磁波であり、太陽の熱量が主に赤外線放射によって地球に伝達する。同時に、自然界のあらゆる物体は赤外線の光源であり、常に外部に赤外線を放射する。現在、赤外線は主に軍事や医療の分野で使用されており、例えば、敵の偵察や病気の診断などである。しかしながら、広範囲にわたる赤外線が十分に活用されていないため、赤外線を十分に吸収できる吸収体、及び赤外光を容易に利用することを検討する必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
また、生活の中で太陽光を吸収する必要がある場合もある。例えば、暑い夏には、屋外にいる人は、日傘を使って太陽光を遮ったり、吸収した太陽光を有効に活用したりしたいと考えている。従って、太陽光を十分に吸収できる吸収体を検討する必要がある。
【0004】
これによって、光吸収体プレハブ液体及びその製造方法を提供することが必要であり、光吸収体プレハブ液体が赤外線及び太陽光を吸収できる光吸収体を形成することができる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
光吸収体プレハブ液体は、溶媒、複数のカーボンナノチューブ及び複数の炭素粒子を含み、複数の前記カーボンナノチューブ及び複数の前記炭素粒子が前記溶媒中に配置され、複数の前記カーボンナノチューブがネット状構造を形成し、複数の前記炭素粒子が前記ネット状構造の内部に配置される。
【0006】
前記光吸収体プレハブ液体は、溶媒、複数の前記カーボンナノチューブ及び複数の前記炭素粒子からなる。
【0007】
前記溶媒は、200mLであり、複数の前記カーボンナノチューブは、0.4gであり、複数の前記炭素粒子は、0.5gから7gである。
【0008】
複数の前記カーボンナノチューブと複数の前記炭素粒子の重量比は、4:5~4:70である。
【0009】
光吸収体プレハブ液体の製造方法は、複数のカーボンナノチューブを提供するステップであって、複数の前記カーボンナノチューブを溶媒中に配置し、凝集処理を行って、カーボンナノチューブの懸濁液を得るステップと、複数の炭素粒子を前記カーボンナノチューブの懸濁液に置き、混合をするステップと、を含む。
【0010】
複数の前記カーボンナノチューブと複数の前記炭素粒子の重量比は、4:5~4:70である。
【発明の効果】
【0011】
従来技術と比べて、本発明は、カーボンナノチューブ及び炭素粒子を溶媒中に配置することによって、光吸収体プレハブ液体を形成する。光吸収体プレハブ液体を他の物体に噴きつけた後、赤外線及び太陽光を吸収できる光吸収体を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の第一実施例によるカーボンナノチューブをエタノール溶液に分散した透過型電子顕微鏡(TEM)写真である。
【
図2】本発明の第一実施例による直径が20マイクロメートルであるカーボンブラック粉末の走査型電子顕微鏡(SEM)写真である。
【
図3】本発明の第一実施例によるカーボンナノチューブの懸濁液に1gのカーボンブラック粉末を添加した光学写真である。
【
図4】本発明の第一実施例によるカーボンナノチューブの懸濁液に5gのカーボンブラック粉末を添加した光学写真である。
【
図5】本発明の第一実施例によるカーボンナノチューブの懸濁液に7gのカーボンブラック粉末を添加した光学写真である。
【
図6】本発明の第二実施例による光吸収体プレハブ液体を噴きつける前の玩具の光学写真である。
【
図7】本発明の第二実施例による光吸収体プレハブ液体を噴きつけた後の玩具の光学写真である。
【
図8】本発明の第二実施例による純粋なカーボンナノチューブ分散液で噴きつけたコーティング層のSEM写真である。
【
図9】本発明の第二実施例による光吸収体プレハブ液体をコーティングした後の石英基板のSEM写真である。
【
図10】本発明の第二実施例による純粋なカーボンナノチューブ分散液で噴きつけたコーティング層のSEM写真である。
【
図11】本発明の第二実施例による光吸収体のSEM写真である。
【
図12】本発明の第二実施例による純粋なカーボンナノチューブ分散液で噴きつけたコーティング層のもう一つのSEM写真である。
【
図13】本発明の第二実施例による光吸収体のもう一つのSEM写真である。
【
図14】本発明の第二実施例による光吸収体が可視光波長域での反射スペクトルを示す。
【
図15】本発明の第二実施例による光吸収体が近赤外波長域での反射スペクトルを示す。
【
図16】本発明の第二実施例による光吸収体が中赤外波長域での反射スペクトルを示す。
【
図17】本発明の第二実施例による入射角が15°である時、測定された光吸収体の反射スペクトルを示す。
【
図18】本発明の第二実施例による入射角が30°である時、測定された光吸収体の反射スペクトルを示す。
【
図19】本発明の第二実施例による入射角が45°である時、測定された光吸収体の反射スペクトルを示す。
【
図20】本発明の第二実施例による入射角が60°である時、測定された光吸収体の反射スペクトルを示す。
【
図21】本発明の第二実施例による5gの炭素粒子を含む光吸収体(シリコン基板に光吸収体プレハブ液体をコーティングすることによって形成される)の熱画像装置写真である。
【
図22】本発明の第二実施例による5gの炭素粒子を含む光吸収体(シリコン基板に光吸収体プレハブ液体をコーティングすることによって形成される)が太陽光に晒された時間-温度グラフである。
【
図23】本発明の第二実施例による石英基板に光吸収体プレハブ液体をコーティングした後の光学写真である。
【
図24】本発明の第二実施例による赤外線熱画像装置によってキャプチャされた熱画像である。
【
図25】本発明の第二実施例による水滴が光吸収体の表面に落下する光学写真である。
【
図26】本発明の第三実施例から提供する赤外線検出器の構造を示す図である。
【
図27】本発明の第三実施例から提供する赤外線イメージャーの構造を示す図である。
【
図28】本発明の第四実施例から提供する赤外線ステルス生地の構造を示す図である。
【
図29】本発明の第四実施例から提供する赤外線ステルス生地の光学写真である。
【
図30】本発明の第四実施例から提供する赤外線ステルス生地に覆われた手の光学写真である。
【
図31】本発明の第四実施例から提供する赤外線ステルス生地に覆われた手の熱画像写真である。
【
図32】本発明の第四実施例から提供する赤外線ステルス服装の構造を示す図である。
【
図33】本発明の第五実施例から提供する太陽熱集熱器の構造を示す図である。
【
図34】本発明の第五実施例から提供する太陽熱温水器の構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の具体的な実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0014】
以下、添付の図面及び具体的な実施形態を参照して、本発明による光吸収体プレハブ液体及びその製造方法をさらに詳細に説明する。
【0015】
本発明の第一実施形態は、溶媒、複数のカーボンナノチューブ及び複数の炭素粒子を含む光吸収体プレハブ液体を提供する。複数のカーボンナノチューブ及び複数の炭素粒子が溶媒中に配置される。光吸収剤のプレハブ液体は懸濁液である。
【0016】
複数のカーボンナノチューブは、溶媒中で綿毛構造を形成し、綿毛構造とは、複数のカーボンナノチューブが分子間力によって、互いに引き付け、絡み合い、ネット状構造に形成されることを指す。即ち、カーボンナノチューブは溶媒中に完全に分散されないが、溶媒中でネット状構造を形成する。カーボンナノチューブは、単層カーボンナノチューブ、二層カーボンナノチューブ、または多層カーボンナノチューブである。本実施形態において、カーボンナノチューブは、平均直径が20nm(ナノメートル)の多層カーボンナノチューブである。
【0017】
複数の炭素粒子がネット状構造の内部に配置され、各炭素粒子は、ネット状構造に挿入され、複数のカーボンナノチューブによって囲まれ、又は被覆される。具体的には、一部の炭素粒子の一部の表面がカーボンナノチューブと直接接触し、一部の表面が露出する。炭素粒子の種類は限定されず、例えば、カーボンブラックなどである。
【0018】
溶媒の種類は限定されず、例えば、有機溶媒などである。好ましくは、溶媒が揮発性有機溶媒である。
【0019】
本実施形態では、光吸収体プレハブ液体は、溶媒、複数のカーボンナノチューブ及び複数の炭素粒子からなり、炭素粒子はカーボンブラック粉末であり、溶媒はエタノールである。
【0020】
炭素粒子の重量が小さすぎると、光吸収体プレハブ液体で作られた光吸収体の吸収性能が低下する。炭素粒子の重量が多すぎると、光吸収体プレハブ液体を噴きつけることが困難になる。カーボンナノチューブと炭素粒子の重量比は次のとおりである。カーボンナノチューブと炭素粒子の重量比は4:5~4:70である。溶剤の含有量は、光吸収体プレハブ液体を確実に噴きつけることができるように、実際の条件に応じて調整することができる。光吸収体プレハブ液体において、溶媒が200mL(ミリリットル)であり、カーボンナノチューブが0.4g(グラム)である場合、炭素粒子の重量は0.5gから7gである。本実施形態では、エタノール溶媒は200mLであり、カーボンナノチューブは0.4gであり、炭素粒子は5gである。
【0021】
本発明の第一実施形態は、さらに、光吸収体プレハブ液体の製造方法を提供する。光吸収体プレハブ液体の製造方法は、以下のステップを含む。
【0022】
ステップS11、複数のカーボンナノチューブを提供する。
【0023】
ステップS12、複数のカーボンナノチューブを溶媒中に配置し、凝集処理を行って、カーボンナノチューブの懸濁液を得る。
【0024】
ステップS13、複数の炭素粒子をカーボンナノチューブの懸濁液に置き、混合をする。
【0025】
ステップS11において、カーボンナノチューブの製造方法は、限定されない。例えば、アーク放電法、レーザー蒸着法、又は化学蒸着法などである。本実施形態では、化学蒸着法を使用してカーボンナノチューブを製造する。
【0026】
化学蒸着法を使用してカーボンナノチューブを製造することは、以下のステップを含む。
【0027】
ステップS111、成長基板上にカーボンナノチューブアレイを成長させる。
【0028】
ステップS112、ブレード又は他のツールを使用して、カーボンナノチューブアレイを成長基板から削り取り、複数のカーボンナノチューブを得る。
【0029】
ステップS111において、カーボンナノチューブアレイにおける複数のカーボンナノチューブの長さは制限されない。好ましくは、カーボンナノチューブの長さは100μm(マイクロメートル)より長い。複数のカーボンナノチューブは、互いに基本的に平行であり、成長基板の表面に基本的に垂直である。本実施形態で提供されるカーボンナノチューブアレイは、単層カーボンナノチューブアレイ、二層カーボンナノチューブアレイ、及び多層カーボンナノチューブアレイの中の一種である。
【0030】
本実施形態では、カーボンナノチューブアレイの製造方法は、化学気相堆積法を採用する。該製造方法は、次のステップを含む。ステップ(a)では、平らな基材を提供し、該基材はP型のシリコン基材、N型のシリコン基材及び酸化層が形成されたシリコン基材のいずれか一種である。本実施例において、8インチのシリコン基材を選択することが好ましい。ステップ(b)では、基材の表面に、均一的に触媒層を形成する。該触媒層の材料は鉄、コバルト、ニッケル及びその2種以上の合金のいずれか一種である。ステップ(c)では、触媒層が形成された基材を700℃~900℃の空気で30分~90分間アニーリングする。ステップ(d)では、アニーリングされた基材を反応炉に置き、保護ガスで500℃~740℃の温度で加熱した後で、カーボンを含むガスを導入して、5分~30分間反応を行って、カーボンナノチューブアレイを成長させることができる。該カーボンナノチューブアレイの高さは100マイクロメートル以上である。該カーボンナノチューブアレイは、互いに平行であり、基材に垂直に生長する複数のカーボンナノチューブからなる。該カーボンナノチューブは、長さが長いため、部分的にカーボンナノチューブが互いに絡み合っている。生長の条件を制御することによって、カーボンナノチューブアレイは、例えば、アモルファスカーボン及び残存する触媒である金属粒子などの不純物を含まなくなる。本実施例において、カーボンを含むガスとしては、例えば、アセチレン、エチレン、メタンなどの活性な炭化水素が選択され、エチレンを選択することが好ましい。保護ガスは窒素ガスまたは不活性ガスであり、アルゴンガスが好ましい。
【0031】
ステップS12において、凝集処理は、超音波分散処理又は高強度攪拌などの方法によって実施することができる。好ましくは、本実施形態では、10分から30分の超音波分散処理を採用する。カーボンナノチューブは比表面積が非常に大きいため、絡み合ったカーボンナノチューブは分子間力が大きい。従って、凝集処理は、カーボンナノチューブ原料におけるカーボンナノチューブを溶媒中に完全に分散させることはできなく、カーボンナノチューブが分子間力によって互いに引き付け、絡み合ってネット状構造を形成する。ネット状構造は、綿状構造とも呼ばれる。
図1は、本実施形態のカーボンナノチューブをエタノール溶液に分散した透過型電子顕微鏡(TEM)写真である。
図1から、カーボンナノチューブが互いに接続され、ネット状構造が形成されることが分かる。
【0032】
ステップS12において、好ましくは、分散剤を添加することができる。本実施形態では、分散剤は、ポリビニールピロリドン(PVP)である。
【0033】
ステップS13において、混合の方法は限定されない。本実施形態では、超音波振動によって混合を行う。
図2は、本実施形態のカーボンブラック粉末の光学写真である。
【0034】
ステップS12及びステップS13において、カーボンナノチューブと炭素粒子の重量比は、次のとおりである。カーボンナノチューブと炭素粒子の重量比は4:5から4:70である。溶剤の含有量は、光吸収体プレハブ液体を確実に噴きつけることができるように、実際の条件に応じて調整することができる。好ましくは、溶媒は200mLであり、カーボンナノチューブは0.4gであり、炭素粒子は0.5gから7gである。
【0035】
光吸収体プレハブ液体は、カーボンナノチューブと炭素粒子を混合し、次にそれらを溶媒に分散させることによって製造することもできる。
【0036】
第一実施形態
高さが285マイクロメートルであるカーボンナノチューブアレイを8インチのシリコン基板に成長させ、カーボンナノチューブアレイをシリコン基板から剥き、エタノール溶媒に入れる。次に、PVPを加え(200mLのエタノール溶媒あたり0.1gのPVPを添加)、超音波セルディスラプターを使用して超音波凝集処理を行う。最後に、直径が10μmであるカーボンブラック粉末を添加し、超音波処理を0.5h(時間)行って、安定した光吸収体プレハブ液体を得る。第一実施形態では、カーボンナノチューブの懸濁液に1gのカーボンブラック粉末を添加した場合、
図3に示すように、カーボンナノチューブとカーボンブラック粉末との凝集効果は明らかではない。カーボンナノチューブの懸濁液に5gのカーボンブラック粉末を添加した場合、
図4に示すように、カーボンナノチューブとカーボンブラック粉末が一緒に凝集するが、依然としてスプレーガンで光吸収体プレハブ液体を噴きつけることができ、コーティングが均一である。しかしながら、カーボンナノチューブの懸濁液に7gのカーボンブラック粉末を添加した場合、カーボンナノチューブとカーボンブラック粉末が非常に激しく凝集し、ボトルの底部に沈殿物が形成され、
図5に示すように、上部の液体と明確に層状になる。
図5では、上部の液体は透明である。これは、カーボンナノチューブの含有量が非常に少ないことを表す。沈殿物はコロイド状物質であり、噴きつけることには使用できない。従って、200mlのエタノール溶媒と0.4gのカーボンナノチューブからなるカーボンナノチューブの懸濁液では、5gのカーボンブラック粉末を添加することが噴きつけることができる最適な比率である。
【0037】
光吸収体プレハブ液体及びその製造方法は、以下の利点がある。第一に、光吸収体プレハブ液体を他の物体に噴きつけ、赤外光及び太陽光を吸収することができる光吸収体を形成することができる。第二に、製造方法は簡単で大量生産することができる。
【0038】
本発明の第二実施形態は、複数のカーボンナノチューブ及び複数の炭素粒子を含む光吸収体を提供し、複数のカーボンナノチューブはネット状構造を形成し、複数の炭素粒子は、ネット状構造の内部に配置される。各炭素粒子は、ネット状構造に挿入され、複数のカーボンナノチューブに囲まれ、又は被覆され、炭素粒子はカーボンナノチューブと直接接触する。カーボンナノチューブネット状構造は、複数の炭素粒子を相互に接続する。
【0039】
さらに、光吸収体は、光吸収体を支持するための基板を含んでもよい。基板の種類、形状、厚さ等が限定されない。基板は、石英、ポリマー、金属、セラミック、生地などである。基板の表面は、平面、曲面又は不規則な表面である。本実施形態では、基板は石英である。
【0040】
本発明の第二実施形態は、更に光吸収体の製造方法を提供する。光吸収体の製造方法は、以下のステップを含む。
【0041】
ステップS21、光吸収体プレハブ液体を提供する。
【0042】
ステップS22、光吸収体プレハブ液体を基板に噴きつける。
【0043】
ステップS21において、光吸収体プレハブ液体は、第一実施形態で詳細に説明されており、ここでは繰り返されない。
【0044】
ステップS22において、噴きつける方法は限定されない。本実施形態では、スプレーガンで噴きつける。スプレーガンの直径は1mmであり、キャリアガスは圧力が0.3Mpaである窒素であり、有効噴霧範囲は約150mmであり、溶液消費量は100ml/分である。
【0045】
さらに、ステップS22の後、溶媒を除去するために、加熱などで乾燥する。本実施形態では、溶媒はエタノールであり、熱処理なしで、噴きつけた後数分以内に完全に乾燥される。
【0046】
図6は、光吸収体プレハブ液体を噴きつける前の玩具の光学写真であり、
図7は、光吸収体プレハブ液体を噴きつけた後の玩具の光学写真である。
図7から、光吸収体プレハブ液体が不規則な表面に均一に噴きつけることができることが分かる。
【0047】
本実施形態では、光吸収体プレハブ液体を石英基板に噴きつけ、光吸収体を形成する。
図8から
図23は、光吸収体の性能を示す。
【0048】
図8は、純粋なカーボンナノチューブ分散液でのコーティング層の走査型電子顕微鏡(SEM)写真である。純粋なカーボンナノチューブ分散液は、カーボンナノチューブのみを溶媒に分散し、溶質はカーボンナノチューブのみであることを意味する。
図9は、光吸収体プレハブ液体(光吸収体)を噴きつけた後の石英基板のSEM写真である。
図8及び
図9から、複数のカーボンナノチューブが複数の炭素粒子に効果的かつ均一に付着して、コーティング層を形成することが分かる。カーボンナノチューブの接続作用により、複数の炭素粒子が隙間を空けて積み重ねられ、それによって光吸収体は、複数の細孔を有する多孔質構造であり、光吸収を向上させる。
【0049】
図10は、純粋なカーボンナノチューブ分散液で噴きつけたコーティング層のSEM写真である。
図10では、純粋なカーボンナノチューブ分散液でのコーティング層の表面は、比較的平坦であり、平均表面粗さは数十マイクロメートルである。
図11は、光吸収体のSEM写真である。
図11では、光吸収体の表面は、純粋なカーボンナノチューブ分散液でのコーティング層の表面の起伏のある形態を維持し、炭素粒子が頂面に均一に分布する。
【0050】
図12は、純粋なカーボンナノチューブ分散液で噴きつけたコーティング層のもう一つのSEM写真であり、
図13は、光吸収体のもう一つのSEM写真である。
図12及び
図13から、光吸収体の表面粗さが、純粋なカーボンナノチューブ分散液でのコーティング層の表面粗さよりも大きいことが分かる。
【0051】
図10から
図13から、炭素粒子の導入は、光吸収体の表面粗さを増加させ、それにより、光線の光吸収体の表面での散乱及び吸収を高めることが分かる。
【0052】
図14から
図16は、光吸収体が垂直入射で偏光がない場合の反射スペクトルを示す。
図14は、光吸収体が可視光波長域(400nm~800nm)での反射スペクトルを示す。
図15は、光吸収体が近赤外波長域(800nm~2μm)での反射スペクトルを示す。
図16は、光吸収体が中赤外波長域(2μm~20μm)での反射スペクトルを示す。
【0053】
図14~
図16から、可視光(400nm)から中赤外(20μm)までの広いスペクトル範囲において、光吸収体の反射率は、炭素粒子含有量の増加とともに減少することが分かる。5gの炭素粒子を含む光吸収体は、可視光波長域で0.075%の反射率、近赤外波長域で0.05%の反射率、及び中赤外波長域で0.02%の反射率を有する。
図14から
図16では、CNTスプレーは、純粋なカーボンナノチューブ分散液でのコーティング層を指し、CNTアレイは、カーボンナノチューブアレイを指す。光吸収体の反射率は、純粋なカーボンナノチューブ分散液のコーティング層の反射率よりも低く、カーボンナノチューブアレイの反射率に近い。光吸収体の反射率が低いことは、光吸収体が優れた光吸収性能を持つことを表す。
【0054】
図17~
図20は、入射角が0°~60°である時、測定された可視波長域での光吸収体の反射スペクトルを示す。入射角は、光線と法線との間の角度を指し、法線が光吸収体の表面に垂直である。ここで、
図17は、入射角が15°である時、測定された光吸収体の反射スペクトルを示す。
図18は、入射角が30°である時、測定された光吸収体の反射スペクトルを示す。
図19は、入射角が45°である時、測定された光吸収体の反射スペクトルを示す。
図20は、入射角が60°である時、測定された光吸収体の反射スペクトルを示す。
図17~
図20から、光吸収体は、異なる入射角で依然としてほぼ同じ反射率を有することが分かる。これは、光吸収体の反射率が入射角とは何の関係もないことを説明する。これは、光吸収体が可視波長域で優れた全方向吸収性能を持つことを表す。「全方向吸収」とは、光吸収体が各入射角で比較的高い吸収率を有することを意味する。
【0055】
図20では、5gの炭素粒子を含む光吸収体は、60°の入射角で99.9%を超える吸収率を有し、これは、CNTアレイの吸収率とほぼ同じである。従って、光吸収体は、入射角と関係はなく、400nm~20μmの広い波長範囲で99.9%の全方向性の高い吸収効率を有する。
【0056】
図21は、5gの炭素粒子を含む光吸収体(シリコン基板に光吸収体プレハブ液体を噴きつけることによって形成される)の熱画像装置写真である。
図22は、5gの炭素粒子を含む光吸収体(シリコン基板に光吸収体プレハブ液体を噴きつけることによって形成される)が太陽光に晒された時間-温度グラフであり、日射下での光吸収体の昇温行為を研究することに用いられる。ソーラーシミュレーターは放射源として使用され、標準電力密度は1000W/m
2であり、光吸収体の温度は中赤外線熱画像装置によって監視される。
図21では、最初はサンプルを周囲の環境と区別できない。0.5s(秒)経った後、サンプルが太陽光を吸収し、温度が上昇し始める。このとき、周囲の環境からサンプルを明確に区別できる。時間が経つに伴って、サンプルの温度が安定するまで上昇する。
図22は、熱画像装置によって記録されたサンプルの温度の経時変化を示し、ここでは、純粋なカーボンナノチューブ分散液で形成されたコーティング層とシリコン基板を比較し、昇温速度と平衡温度の観点から、5gの炭素粒子を含む光吸収体が最適である。
【0057】
図23は、石英基板に光吸収体プレハブ液体を噴きつけた後の光学写真であり、
図24は、ソーラーシミュレーターの照射下で赤外線熱画像装置にキャプチャされた熱画像である。
図23及び
図24から、光吸収体は太陽光を吸収し、且つ太陽光の熱を収集できることが分かる。
図21~
図24は、光吸収体が優れた太陽熱収集性能を持つことを表す。
【0058】
図25は、水滴が光吸収体の表面に落下する際の光学写真である。
図25から、5gの炭素粒子を含む光吸収体と水滴との接触角が165°に達し、且つ水滴が転がりやすい。これは、光吸収体が優れた超疎水性を持ち、且つ濡れ性が安定で、光吸収体の表面を傷つけないことを表すということが分かる。水滴が光吸収体の表面から滑り落ちると、水滴とともにほこりや汚れが除去され、光吸収体が優れたセルフクリーニング性能を持つことを表す。
【0059】
光吸収体及びその製造方法には、以下の利点がある。第一に、湾曲した、不規則な形状又は不均一な表面に噴きつけるプロセスを実施することができる。第二に、光吸収体は、カーボンナノチューブと炭素粒子からなり、つまり、炭素材料のみで形成されるので、他の材料が太陽光及び赤外線を吸収することに対する影響を回避できる。第三に、炭素粒子の添加が、光吸収体の表面粗さを高め、光吸収率を高める。第四に、光吸収体は炭素材料のみで形成されるため、広い波長範囲(400nm~20μm)で良好な吸収性能を有し、吸収率が99.9%に達する。第五に、広い波長範囲(400nm~20μm)で、入射角と関係はなく、全方向に光を吸収できる。第六に、光吸収体は、優れた超疎水性と優れたセルフクリーニング性能を持つ。
【0060】
図26を参照すると、本発明の第三実施形態は、赤外線検出器100を提供する。赤外線検出器100は、赤外線吸収体110、熱変換器112及び電気信号検出器114を含む。赤外線吸収体110は、熱変換器112に配置され、熱変換器112と直接接触して配置される。熱変換器112及び赤外線吸収体110が積層して配置される時、赤外線吸収体110におけるカーボンナノチューブの長手方向は、熱変換器112と赤外線吸収体110との接触面と平行する。電気信号検出器114及び熱変換器112は、リード線によって電気的に接続され、電気信号検出器114と熱変換器112とが直列に接続され、熱変換器112の電気信号の変化を検出するための回路を形成する。
【0061】
赤外線吸収体110は、光吸収体プレハブ液体を熱変換器112に噴きつけることによって形成される。即ち、赤外線光吸収体110は、光吸収体と同じ構造及び性能を有するので、ここでは繰り返さない。
【0062】
赤外線吸収体110が赤外線を吸収した後、その温度が上昇するが、カーボンナノチューブの熱伝導率が高いため、赤外線吸収体110は、熱変換器112に熱を伝達することができる。熱変換器112が熱を吸収した後、熱変換器112の温度が上昇し、熱変換器112の電気性能に変化させる。
【0063】
熱変換器112は、ピロ電気素子、サーミスター又は熱電対素子などである。具体的には、ピロ電気素子は、チタン酸ジルコン酸鉛セラミック、タンタル酸リチウム、ニオブ酸リチウム、硫酸トリグリセリド等の熱電係数の高い材料である。サーミスターは、半導体サーミスター、金属サーミスター、合金サーミスターなどである。本実施形態では、熱変換器112は、チタン酸ジルコン酸鉛セラミックである。
【0064】
電気信号検出器114は、熱変換器112の電気信号の変化を検出するために使用されるので、電気信号検出器114のタイプは、熱変換器112に応じて変化する。一つの実施形態では、熱変換器112はピロ電気素子である。ピロ電気素子の温度上昇により、ピロ電気素子の両端に電圧又は電流が現れる。このとき、電気信号検出器114は、電流-電圧変換器である。電流-電圧変換器とピロ電気素子とが直列に接続され、回路を形成し、これによって、ピロ電気素子の電圧又は電流の変化を検出することができる。もう一つの実施形態では、熱変換器112はサーミスターであり、サーミスターの温度が上昇すると、抵抗が変化する。このとき、電気信号検出器114は、電源及び電流検出器を含み、電源、電流検出器及びサーミスターが直列に接続され、回路を形成し、電流検出器で電流変化を測定することによって、サーミスターの抵抗変化を検出する。もう一つの実施形態では、熱変換器112は熱電対であり、赤外光吸収体110を熱電対の一端に配置し、熱電対の両端間に温度差が生じる、即ち、熱電対の両端に電位差が生じる。このとき、電気信号検出器114は電圧検出器であり、電圧検出器と熱電対とが直列に接続され、回路を形成し、熱電対の電位の変化を検出することができる。
【0065】
赤外線検出器100の作動プロセスは、以下のとおりである。赤外線が赤外線吸収体110(即ち、光吸収体)に放射され、光吸収体が赤外線を吸収し、吸収された赤外線を熱に変換する。熱は熱変換器112に伝達される。熱変換器112が熱を吸収した後、その温度が上昇し、これにより、熱変換器112の抵抗、電流又は電圧などの電気性能が変化する。電気信号検出器114と熱変換器112の両端とが電気的に接続され、回路を形成する場合、電気信号検出器114は、熱変換器112の電気信号の変化を検出することができ、それにより、検出領域内で赤外線が存在することを検出することができる。
【0066】
本発明の第三実施形態によって提供される赤外線検出器100は、以下の利点を有する。第一に、赤外線吸収体110は、波長が2μm~20μmである近赤外線から中赤外線に対して良好な吸収効果を有するので、熱変換器112の応答性及び感度を高める。それによって、赤外線検出器100がより高い感度を有する。第二に、赤外線吸収体110は、全方向吸収性能を有するだけでなく、偏光と関係はなく、赤外線検出器100の使用範囲を拡大する。
【0067】
図27を参照すると、本発明の第三実施形態は、更に赤外線イメージャー200を提供する。赤外線イメージャー200は、赤外線受信機210、赤外線検出器アセンブリ220、信号プロセッサ230及び赤外線画像ディスプレイ240を含む。赤外線受信機210は、赤外線放射スペクトルを受信し、赤外線を赤外線検出器アセンブリ220に送信するために使用され、赤外線検出器アセンブリ220は、赤外線放射スペクトルを電気信号に変換し、電気信号を信号プロセッサ230に送信するために使用される。信号プロセッサ230は、電気信号を処理し、計算することによって、熱場分布データを取得するために使用される。赤外線画像ディスプレイ240は、熱場分布データによって、赤外線熱画像を表示するために使用される。
【0068】
赤外線受信機210は、物体から放射された赤外線放射スペクトル、即ち、物体から放射された赤外線を受信するために使用される。さらに、赤外線受信機210は、赤外線放射スペクトルを収束させることもできる。本実施形態では、赤外線受信機210は赤外線レンズである。具体的には、物体から放射された赤外線放射スペクトルは、赤外線レンズによって受信及び収束された後、赤外線検出器アセンブリ220に直接伝達される。赤外線受信機210も省略できることが理解できる。
【0069】
赤外線検出器アセンブリ220は、複数の第三実施形態の赤外線検出器100を含む。複数の赤外線検出器100は、2次元アレイに均一に分布され、且つ各赤外線検出器100は、赤外線放射スペクトルを電気信号に変換することができる。各赤外線検出器100は、一つのピクセルポイントに相当し、各赤外線検出器100は、その位置での赤外線放射スペクトルを電気信号に変換して、これによって、赤外線検出器アセンブリ220は、物体から放射される赤外線放射スペクトルに対する検出を実現することが、理解できる。任意の隣接する二つの赤外線検出器100間の距離は、熱画像の解像度要件によって選択することができる。
【0070】
信号プロセッサ230は、各赤外線検出器100の電気信号を処理し、計算するために使用され、物体の熱場分布を得る。具体的には、信号プロセッサ230は、各赤外線検出器100の電気信号の変化によって、対応する物体の表面の位置の温度データを計算する。即ち、信号プロセッサ230は、電気信号によって物体の熱場分布データを計算することができる。
【0071】
赤外線画像ディスプレイ240は、測定対象物の赤外線熱画像を表示するために使用される。赤外線画像ディスプレイ240の赤外線熱画像は、対象物の熱場分布データによって表示され、異なる温度が異なる色で表示される。従って、赤外線画像ディスプレイ240によって表示される赤外線熱画像は、物体の温度分布に対応し、物体の各位置の温度を反映するために使用される。例えば、赤外線イメージャー200が医療分野で使用される場合、人体全身に対して熱画像を実行してもよく、専門の医師が、熱画像によって人体の異なる部位の疾患の性質及び疾患の程度を判断することができ、臨床診断に根拠を提供する。
【0072】
赤外線イメージャー200が作動するとき、物体から放射された赤外線は、赤外線受信機210に受信される。赤外線受信機210は、赤外線を受信し、収束した後、赤外線を赤外線検出器アセンブリ220に送信する。アセンブリ220は、赤外線を電気信号に変換し、次に電気信号を信号プロセッサ230に送信する。信号プロセッサ230は、電気信号を処理し、計算して、物体の各位置の温度データを取得し、即ち、熱場分布データを取得し、赤外線画像ディスプレイ240は、計算して取得された熱場分布データによって、物体の赤外線熱画像を表示する。
【0073】
本発明の第三実施形態によって提供される赤外線イメージャー200は、以下の利点を有する。第一に、赤外線吸収体110は、波長が2μm~20μmである近赤外線から中赤外線に対して良好な吸収効果を有するので、熱変換器112の応答性及び感度を高める。これによって、赤外線イメージャー200はより高い感度を有する。第二に、赤外線吸収体110は、全方向吸収性能を有するだけでなく、偏光と関係はなく、赤外線イメージングの使用範囲を拡大する。
【0074】
図28を参照すると、本発明の第四実施形態は、赤外線ステルス生地300を提供する。赤外線ステルス生地300は、生地基板310と、生地基板310に配置された赤外線吸収体110とを含む。赤外線ステルス生地300は、光吸収体プレハブ液体を生地基板310に噴きつけることによって形成される。従って、赤外線光吸収体110は、光吸収体と同じ材料、構造及び性能を有し、ここでは省略される。赤外線吸収体110も、二つの生地基板310の間に配置されてもよく、サンドイッチ構造を形成する。複数のカーボンナノチューブは、生地基板310に近い赤外光吸収体110の表面と平行する。
【0075】
生地基板310は、赤外線吸収体110を生地基板310に懸架させるように、貫通穴が設置される。生地基板310の材料は限定されず、絶縁材料又は導電体であってもよく、可撓性材料又は非可撓性材料であってもよい。本実施形態では、生地基板310の材料は、限定されず、例えば、綿、ポリエステル、絹、羊毛布、麻、皮革などである。もう一つの実施形態では、赤外線吸収体110は、二層の生地の間に縫い付けられる。
【0076】
図29は、赤外線ステルス生地300の光学写真である。
図29から、赤外線ステルス生地300は、良好な柔軟性を有することが分かる。赤外線ステルス生地300は、3×10
-6g/mm
2の低密度を有し、超軽量である。宇宙又は軍事分野に応用することができる。
【0077】
図30は、赤外線ステルス生地300のステルス効果試験の光学写真である。
図31は、赤外線熱画像装置にキャプチャされた、赤外線ステルス生地300に覆われた手の熱画像写真である。
図30及び
図31から、赤外線ステルス生地300が手を覆うとき、手から放射された赤外線は、赤外線ステルス生地300に吸収され、赤外線ステルス生地300を通過せず、他の赤外線検出システムに検出されることができないことが分かる。従って、赤外線ステルス生地300は、良好なステルス効果を有する。
【0078】
図32を参照すると、本発明の第四実施形態は、更に赤外線ステルス服装を提供する。赤外線ステルス服装は、少なくとも一部が赤外線ステルス生地で作られる。即ち、赤外線ステルス服装は、全体が赤外線ステルス生地300で作られてもよく、一部がステルス生地300で作られてもよい。赤外線ステルス服装は、衣服に限定されず、手袋、マスクなどであってもよい。これらの衣服、手袋及びマスクは、まとめて赤外線ステルス服装と呼ばれる。赤外線ステルス服装は、服装本体を含み、服装本体の少なくとも一部の生地は、赤外線ステルス生地300である。
【0079】
本発明の第四実施形態によって提供される赤外線ステルス生地300及び赤外線ステルス服装は、以下の利点を有する:第一に、赤外線吸収体110は、波長が2μm~20μmである近赤外線から中赤外線に対して良好な吸収効果を有するので、赤外線ステルス生地300及び赤外線ステルス服装のステルス効果を高める。第二に、赤外線吸収体110は、全方向吸収性能を有するだけでなく、偏光と関係はなく、赤外線ステルス生地300及び赤外線ステルス服装の使用範囲を拡大し、更にそれらのステルス効果を高める。
【0080】
赤外線ステルス生地300における赤外線吸収体110(即ち、光吸収体)は、太陽光に対して、優れた吸収性能を有するので、赤外線ステルス生地300は、日傘などの日よけツールに用いることもできる。
【0081】
図33を参照すると、本発明の第五実施形態は、ボックス本体502、透明カバープレート504、保温材料506及び熱吸収プレート508を含む太陽熱集熱器500を提供する。ボックス本体502は開口部を有し、好ましくは、開口部がボックス本体502の頂部に設けられる。透明カバープレート504は、太陽光に透明カバープレート504を通過してボックス本体502に入らせるように、ボックス本体502の開口部に配置され、又はその開口部を覆う。保温材料506は、ボックス本体502の内部に配置され、保温空間を形成する。好ましくは、保温材料506は、保温空間をボックス本体502の内部に位置させるように、ボックス本体502の内側面に配置される。熱吸収プレート508は、保温空間内に配置される。熱吸収プレート508は、水などの流体を容易に通過させるように、複数の流体チャネル5084を含む。
【0082】
熱吸収プレート508は、ベース5080とコーティング5082とを含む。ベース5080の表面には、コーティング層5082が設置される。コーティング層5082は、第二実施形態における光吸収体であり、両方とも同じ構造及び性能を有する。即ち、コーティング層5082は、複数のカーボンナノチューブ及び複数の炭素粒子を含み、複数のカーボンナノチューブがネット状構造を形成し、複数の炭素粒子がネット状構造の内部に配置され、各炭素粒子は、ネット状構造に挿入され、複数のカーボンナノチューブによって囲まれ、又は被覆され、且つ炭素粒子がカーボンナノチューブと直接接触する。カーボンナノチューブのネット状構造は、複数の炭素粒子を相互に接続する。コーティング層5082は、ベース5080の表面全体に配置され、又は透明カバープレートに近いベース5080の表面に配置され、且つベース5080と直接接触する。コーティング層5082は、光吸収体プレハブ液体をベース5080に噴きつけることによって形成される。ベース5080は、複数の流体チャネル5084を含む。
【0083】
ボックス本体502の材料は限定されないが、好ましくは、ボックス本体502の材料が金属である。透明カバープレート504は、光透過率の高い材料で作ることができる。本実施形態では、透明カバープレート504はガラスカバープレートである。保温材料506は、アスベスト、発泡体などである。ベース5080の材料は、限定されず、例えば、金属、カーボンナノチューブフィルム、石英、シリカなどである。本実施形態では、ベース5080の材料は金属である。
【0084】
太陽熱集熱器500は、更に上記の各素子を一緒に固定するためのいくつかの部品を含み、これらの部品は、ねじ、ナットなどを含むことが理解できる。
【0085】
太陽光は、透明なカバープレート504を通して熱吸収プレート508を照射し、太陽放射エネルギーは、熱吸収プレート508に吸収され、熱エネルギーに変換され、流体チャネル5084の内部の流体に伝達され、且つ流体を加熱する。
【0086】
図34を参照すると、本発明の第五実施形態は、更に太陽熱温水器600を提供する。太陽熱温水器600は、太陽熱集熱器500、入水管602、出水管604及び貯水タンク606を含む。入水管602は、流体チャネル5084の一端に接続され、出水管604は、流体チャネル5084の他端に接続される。出水管604の一端は流体チャネル5084に接続され、他端は貯蔵タンク606に接続される。水などの流体は、入水管602から流体チャネル5084に流れ込んだ後、出水管604から流出し、水貯蔵タンク606に流れ込む。本実施形態では、ベース5080は、複数の流体チャネル5084を含み、各流体チャネル5084の一端は、入水管602に接続され、各流体チャネル5084の他端は、出水管604に接続される。
【0087】
貯水タンク606は、貯水タンク606の内部の水に流出させることができる出口(図に示せず)をさらに含む。
【0088】
さらに、出水管604と貯水タンク606の両方に、出水管604及び貯水タンク606を流れる温水又は熱水を保温するための保温層を設けることができる。保温層の材料は、保温材料506と同じである。
【0089】
太陽熱温水器600の作動プロセス:太陽光は、透明なカバープレート504を通して熱吸収プレート508を照射し、太陽光放射エネルギーは、熱吸収プレート508に吸収され、熱エネルギーに変換され、流体のチャネル5084に伝達される。このようにして、入水管602から流入する冷水は、流体チャネル5084で太陽エネルギーによって加熱され、温度が徐々に上昇して温水又は熱水になり、温水又は熱水が出水管604から貯水タンク606に流れ、使用されるのを待つ。
【0090】
太陽熱集熱器500及び太陽熱温水器600は、以下の利点を有する:第一に、コーティング層5082が全方向に光を吸収するので、熱収集性能を高めることができる。即ち、熱吸収率を高め、太陽光の熱損失を減少する。第二に、コーティング層5082は、優れた超疎水性特性及び良好なセルフクリーニング性能を有するので、太陽熱集熱器500及び太陽熱温水器600の使用寿命が延長される。
【0091】
また、当業者であれば、本発明の精神の範囲内で他の変更を行うことができる。もちろん、本発明の精神に従ってなされたこれらの変更は、いずれも本発明の保護請求する範囲に含まれるべきである。
【符号の説明】
【0092】
100 赤外線検出器
110 赤外線吸収体
112 熱変換器
114 電気信号検出器
200 赤外線イメージャー
210 赤外線受信機
220 赤外線検出器アセンブリ
230 信号プロセッサ
240 赤外線画像ディスプレイ
300 赤外線ステルス生地
310 生地基板
500 太陽熱集熱器
502 ボックス本体
504 透明カバープレート
506 保温材料
508 熱吸収プレート508
5080 ベース
5082 コーティング層
5084 流体チャネル
600 太陽熱温水器
602 入水管
604 出水管
606 貯蔵タンク