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  • 特許-土台構造および土台施工方法 図1
  • 特許-土台構造および土台施工方法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-20
(45)【発行日】2023-09-28
(54)【発明の名称】土台構造および土台施工方法
(51)【国際特許分類】
   E02D 27/00 20060101AFI20230921BHJP
   E02D 27/34 20060101ALI20230921BHJP
【FI】
E02D27/00 C
E02D27/34 B
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020002300
(22)【出願日】2020-01-09
(65)【公開番号】P2021110142
(43)【公開日】2021-08-02
【審査請求日】2022-08-02
(73)【特許権者】
【識別番号】308031887
【氏名又は名称】スモリホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095359
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100143834
【弁理士】
【氏名又は名称】楠 修二
(72)【発明者】
【氏名】須森 明
【審査官】佐久間 友梨
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3093003(JP,U)
【文献】特開2005-351433(JP,A)
【文献】特開2014-080801(JP,A)
【文献】特開2008-291562(JP,A)
【文献】特開2006-316478(JP,A)
【文献】特開昭56-135650(JP,A)
【文献】特開昭61-196038(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 27/00-27/52
E04B 1/00-1/99
E04G 23/00-23/08
E04H 9/00-9/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基礎と、アンカーボルトと、土台とを有し、
前記アンカーボルトは下部が前記基礎に挿入固定され、
前記土台は前記アンカーボルトの径より大きい内径の貫通孔を有し、前記貫通孔に前記アンカーボルトの上部を挿入させて前記基礎の上部で支持され、前記アンカーボルトと螺合するナットで前記基礎に固定され、
前記貫通孔の前記土台と前記アンカーボルトとの間隙に前記アンカーボルトの振動を吸収可能な弾性材が充填固化されていることを、
特徴とする土台構造。
【請求項2】
前記ナットは締付け側への回転とともに前記土台を掘削可能な掘削刃を下面に有することを、特徴とする請求項1記載の土台構造。
【請求項3】
前記弾性材はシリコン樹脂にホウ酸を混合して成ることを特徴とする請求項1または2記載の土台構造。
【請求項4】
前記弾性材は前記ナットを被覆していることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の土台構造。
【請求項5】
前記貫通孔は前記土台の上面側開口部および下面側開口部に曲面状に拡径した湾曲面を有していることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の土台構造。
【請求項6】
基礎に下部が固定されたアンカーボルトの上部を、前記アンカーボルトの径より大きい内径の貫通孔を有する土台の前記貫通孔に挿入させて、前記土台を前記基礎の上部で支持した後、前記貫通孔の前記土台と前記アンカーボルトとの間隙に前記アンカーボルトの振動を吸収可能な弾性材を充填し、次に、前記アンカーボルトにナットを螺合させて前記土台を前記基礎に固定し前記弾性材を固化させることを、特徴とする土台施工方法。
【請求項7】
前記ナットは締付け側への回転とともに前記土台を掘削可能な掘削刃を下面に有し、前記アンカーボルトに前記ナットを螺合させて前記土台を前記基礎に固定するとき、前記掘削刃により前記土台を掘削し前記掘削刃を前記土台に食い込ませることを、特徴とする請求項6記載の土台施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築物の土台構造および土台施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
建築物において地震等の揺れを緩和するため、土台に挿入したアンカーボルトの上部に弾性素材の固定用環体を嵌合し、上端部に固定ナットを螺着した土台構造が開示されている(例えば、特許文献1参照)。この土台構造では、弾性素材の固定用環体によって、アンカーボルトの横方向の振動が土台に伝わるのを吸収緩和するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-76243号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の土台構造では、土台の所定の位置に形成した貫通孔をアンカーボルトが貫通するよう、アンカーボルトの施工精度を高める必要があり、土台の施工に熟練を要するとともに施工に時間がかかるという課題があった。アンカーボルトは正確に垂直となるよう高い精度で施工する必要があるが、現場施工のため、高い精度で施工することは極めて難しかった。
【0005】
本発明は、このような課題に着目してなされたもので、熟練者でなくても施工が容易で施工時間を短縮可能な土台構造および土台施工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明に係る土台構造は、基礎と、アンカーボルトと、土台とを有し、前記アンカーボルトは下部が前記基礎に挿入固定され、前記土台は前記アンカーボルトの径より大きい内径の貫通孔を有し、前記貫通孔に前記アンカーボルトの上部を挿入させて前記基礎の上部で支持され、前記アンカーボルトと螺合するナットで前記基礎に固定され、前記貫通孔の前記土台と前記アンカーボルトとの間隙に前記アンカーボルトの振動を吸収可能な弾性材が充填固化されていることを、特徴とする。
【0007】
本発明に係る土台施工方法は、基礎に下部が固定されたアンカーボルトの上部を、前記アンカーボルトの径より大きい内径の貫通孔を有する土台の前記貫通孔に挿入させて、前記土台を前記基礎の上部で支持した後、前記貫通孔の前記土台と前記アンカーボルトとの間隙に前記アンカーボルトの振動を吸収可能な弾性材を充填し、次に、前記アンカーボルトにナットを螺合させて前記土台を前記基礎に固定し前記弾性材を固化させることを、特徴とする。
【0008】
本発明に係る土台構造および土台施工方法では、貫通孔は内径がアンカーボルトの径より大きいため、アンカーボルトの施工誤差を吸収し、アンカーボルトを貫通孔に挿入させやすく、熟練者でなくても施工が容易で施工時間を短縮可能である。また、貫通孔の土台とアンカーボルトとの間隙の弾性材が地震の横揺れなどによるアンカーボルトの振動を吸収可能なため、地震による振動や車両などの走行による振動を抑えることができる。
【0009】
本発明に係る土台構造および土台施工方法において、前記ナットは締付け側への回転とともに前記土台を掘削可能な掘削刃を下面に有することが好ましい。
この場合、前記アンカーボルトに前記ナットを螺合させて前記土台を前記基礎に固定するとき、前記掘削刃により前記土台を掘削し前記掘削刃を前記土台に食い込ませることが好ましい。これにより、土台を基礎にしっかりと固定することができる。
【0010】
前記弾性材はシリコン樹脂にホウ酸を混合して成ることが好ましい。
この場合、シリコン樹脂に混合されたホウ酸が貫通孔から土台に徐々に浸透し、土台にホウ酸による防虫効果、防カビ効果、シロアリ予防効果を付与することができる。ホウ酸は、水に溶けて流れやすいが、シリコン樹脂に混合することにより、防カビ等の効果を長期間、発揮することができる。
前記弾性材は前記ナットを被覆していてもよい。
この場合、ナットを腐食しにくくすることができる。また、ナットを弛みにくくすることができる。
前記貫通孔は前記土台の上面側開口部および下面側開口部に曲面状に拡径した湾曲面を有していることが好ましい。
この場合、土台の上下にかかわらず、アンカーボルトを貫通孔に挿入させやすい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、熟練者でなくても施工が容易で施工時間を短縮可能な土台構造および土台施工方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施の形態の土台構造を示す断面図である。
図2図1に示す土台構造で用いられるナットの(A)上側斜視図、(B)下側斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面に基づき、本発明の各種実施の形態について説明する。
図1は、本発明の実施の形態の土台構造を示している。
図1に示すように、土台構造は、基礎1と、アンカーボルト2と、土台3とを有している。アンカーボルト2は、基礎1を造る際に下部が基礎1に挿入されてコンクリートで固定される。アンカーボルト2の上部は、基礎1の上端から垂直に、鉛直方向に突出している。一例で、アンカーボルト2の径は12ミリである。アンカーボルト2は、上端部におねじ部2aを有し、下部が直角に折れ曲がっている。基礎1の上端には、アンカーボルト2の周囲または全体に板状の基礎パッキンを設けてもよい。
【0014】
土台3は、断面が四角形の細長い木材から成り、下面および上面を貫通する貫通孔31を有している。貫通孔31は、内径がアンカーボルト2の径より大きくなっている。一例で、貫通孔31の内径は、18~21ミリである。貫通孔31の内径は、アンカーボルト2の径の1.3~2倍が好ましい。貫通孔31は、土台3の上面側開口部および下面側開口部に曲面状に拡径した湾曲面32を有している。土台3は、貫通孔31にアンカーボルト2の上部を挿入させて基礎1の上部で支持されている。土台3は、アンカーボルト2と螺合するナット4で基礎1に固定されている。
【0015】
図2(A),(B)に示すように、ナット4は、頭部4aと首部4bとを一体的に有している。頭部4aは円板状をなし、首部4bは円筒状をなして一端が頭部4aに同軸で結合している。頭部4aおよび首部4bには、中心を貫通するねじ孔4cが形成されている。頭部4aは、首部4b側の下面に、締付け側への回転とともに土台3を掘削可能な複数の掘削刃4dを有している。頭部4aには、回転工具の突起と係合してナットを回転させるための複数の係合孔4eが形成されている。複数の係合孔4eは、頭部4aの厚さ方向に貫通している。
【0016】
貫通孔31の土台3とアンカーボルト2との間隙には、弾性材5が充填固化されている。弾性材5は、シリコン樹脂にホウ酸を混合して成っている。一例で、ホウ酸は、シリコン樹脂に対して5質量%混合される。弾性材5は、緩衝効果、吸振効果または免振効果を有し、アンカーボルト2の振動を吸収可能である。
【0017】
この土台施工方法は、まず、基礎1に下部が固定されたアンカーボルト2の上部を土台3の貫通孔31に挿入させて、土台3を基礎1の上部で支持する。土台3を基礎1の上に載せた後、貫通孔31の土台3とアンカーボルト2との間隙に弾性材5を充填する。次に、アンカーボルト2にナット4を螺合させて土台3を基礎1に固定する。このとき、掘削刃4eにより土台3の貫通孔31の周囲の上面を掘削し、掘削刃4eを土台3の上面に食い込ませる。
【0018】
この土台構造および土台施工方法では、貫通孔31は内径がアンカーボルト2の径より大きいため、アンカーボルト2の取付け角度が曲がっていてもアンカーボルト2の施工誤差を吸収し、アンカーボルト2を貫通孔31に挿入させやすく、熟練者でなくても施工が容易で施工時間を短縮可能である。特に、貫通孔31は上面側開口部および下面側開口部に曲面状に拡径した湾曲面32を有しているため、土台3の上下にかかわらず、アンカーボルト2を貫通孔31にさらに挿入させやすくなっている。また、貫通孔31の土台3とアンカーボルト2との間隙の弾性材5が地震の横揺れなどによるアンカーボルト2の振動を吸収可能なため、地震による振動や車両などの走行による振動を抑えることができる。
この土台構造および土台施工方法では、掘削刃4eにより土台3の貫通孔31の周囲の上面を掘削し、掘削刃4eを土台3に食い込ませ、土台3を基礎1にしっかりと固定することができる。
【0019】
弾性材5はシリコン樹脂にホウ酸を混合して成るため、シリコン樹脂に混合されたホウ酸が貫通孔31から土台3に徐々に浸透し、土台3にホウ酸による防虫効果、防カビ効果、シロアリ予防効果を付与することができる。ホウ酸は、水に溶けて流れやすいが、シリコン樹脂に混合することにより、防カビ等の効果を長期間、発揮することができる。
なお、ホウ酸は、シリコン樹脂に混合する代わりに、貫通孔31に直接、注入して貫通穴31に染み込ませてもよい。また、ホウ酸以外の防腐防蟻材または薬剤を貫通孔31に染み込ませてもよい。さらに、貫通孔31にホウ酸や薬剤等が染み込みやすいよう、貫通孔31の内面を粗く仕上げてもよい。
弾性材5は、ナット4を被覆していてもよい。この場合、ナット4を腐食しにくくすることができる。また、ナット4を弛みにくくすることができる。
【符号の説明】
【0020】
1 基礎
2 アンカーボルト
2a ねじ部
3 土台
31 貫通孔
32 湾曲面
4 ナット
4a 頭部
4b 首部
4c ねじ孔
4d 掘削刃
4e 係合孔
5 弾性材
図1
図2