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特許7352299耐候性試験機および耐候性試験機用試料収容容器
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-20
(45)【発行日】2023-09-28
(54)【発明の名称】耐候性試験機および耐候性試験機用試料収容容器
(51)【国際特許分類】
   G01N 17/00 20060101AFI20230921BHJP
【FI】
G01N17/00
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021013613
(22)【出願日】2021-01-29
(65)【公開番号】P2022117104
(43)【公開日】2022-08-10
【審査請求日】2023-02-24
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000107583
【氏名又は名称】スガ試験機株式会社
(72)【発明者】
【氏名】須賀 茂雄
(72)【発明者】
【氏名】玉田 宏一
【審査官】前田 敏行
(56)【参考文献】
【文献】特公昭49-027072(JP,B1)
【文献】中国特許出願公開第104535482(CN,A)
【文献】中国実用新案第211148047(CN,U)
【文献】実開昭53-098900(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2006/0013728(US,A1)
【文献】特開2020-030151(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
試験槽と、 前記試験槽内において光を放射する光源と、 前記試験槽内に配置され、試料を収容する1または複数の試料収容容器とを備え、 前記試料収容容器は、 前記光源から放射される光のうち、少なくとも300nm以下の波長の光を透過する材料で構成され、 前記試料を収容する収容部と、 前記収容部に前記試料を設置するための開口部と、 前記開口部を密閉する蓋部材と、 外部の圧力調整機構と接続するための孔と、 前記孔を封止する封止部材とを有し、 前記試料収容容器内に吸湿性材料を設置し、 前記圧力調整機構により前記試料収容容器内を真空に調整し、 前記孔を前記封止部材で封止した状態において、 前記試料の耐候性試験が実行される耐候性試験機。
【請求項2】
試験槽と、 前記試験槽内において光を放射する光源と、 前記試験槽内に配置され、試料を収容する1または複数の試料収容容器とを備え、 前記試料収容容器は、 前記光源から放射される光のうち、少なくとも300nm以下の波長の光を透過する材料で構成され、 前記試料を収容する収容部と、 前記収容部に前記試料を設置するための開口部と、 前記開口部を密閉する蓋部材と、 外部の圧力調整機構と接続するための孔と、 前記孔を封止する封止部材とを有し、 前記試料収容容器内に、 受光器と、 ブラックパネル温度計とを設け、 前記圧力調整機構により前記試料収容容器内を真空に調整し、 前記孔を前記封止部材で封止した状態において、 前記試料の耐候性試験が実行される耐候性試験機。
【請求項3】
前記試料収容容器は、 箱型の形状であり、 前記光源と対向する面が前記少なくとも300nm以下の波長の光を透過する材料で構成され、 前記光源と対向する面以外が光を透過しない金属等で構成されている 請求項1または請求項のいずれかに記載の耐候性試験機。
【請求項4】
前記少なくとも300nm以下の波長の光を透過する材料が、前記試料収容容器の前記光源と対向する面の下部に構成され、前記光源と対向する面の上部が光を透過しない前記金属等で構成されている 請求項に記載の耐候性試験機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐候性試験を行う耐候性試験機およびそれら耐候性試験機に用いられる耐候性試験機用試料収容容器に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、温湿度条件に加え、太陽に代わる光源からの放射光を各種試料に照射することにより、促進的環境条件を人工的に再現し、その試料の劣化度合い等を評価するための耐候性試験機が記述されている。
【0003】
耐候性試験機では一般に、温度および湿度等の調節が可能な試験槽の中に、光源として、例えば、キセノンアークランプ、サンシャインカーボンアークランプ、紫外線カーボンアークランプ、メタルハライドランプまたは紫外線蛍光ランプ等が配置されている。また、この光源を中心とする円環状の試料取付枠が設けられ、この試料取付枠に各試料が取り付けられている。そして、上記の促進的環境条件で、数時間から数千時間程度の試験が行われるようになっている。
【0004】
また、このような耐候性試験は主に地上における自然環境を想定して行われているが、近年では特殊な環境を想定した試験が求められるようになってきた。その中には、例えば、低気圧環境や高気圧環境、高湿度環境、低湿度環境、宇宙環境、あるいはガスや液体で満たされた環境等がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第3331548号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、耐候性試験機では一般に、簡易な構造にて耐候性試験を行うことが求められている。
【0007】
しかしながら、特殊な環境を想定した耐候性試験を行う際には、装置の構造が複雑になることや、通常の耐候性試験機を用いる場合には大掛かりな装置の改造を行う必要があった。
【0008】
したがって、簡易な構造にて特殊環境を模擬した耐候性試験を行うことが可能な耐候性試験機および耐候性試験機用試料収容容器を提供することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の耐候性試験機は、試験槽と、試験槽内において光を放射する光源と、試験槽内に配置され、試料を収容する1または複数の試料収容容器とを備えたものである。上記試料収容容器は、試料を収容する収容部と、収容部に試料を設置するための開口部と、開口部を密閉する蓋部材とを有するものである。
【0010】
本発明の耐候性試験機では、試料収容容器が、外部の圧力調整機構と接続するための孔と、孔を封止する封止部材とを有し、圧力調整機構により試料収容容器内を所定の圧力に調整し、孔を封止部材で封止した状態において、試料の耐候性試験が実行されるようにしてもよい。
【0011】
本発明の耐候性試験機では、試料収容容器が、外部のガス供給機構と接続するための孔と、孔を封止する封止部材とを有し、ガス供給機構により試料収容容器内を所定のガス濃度に調整し、孔を封止部材で封止した状態において、試料の耐候性試験が実行されるようにしてもよい。
【0012】
本発明の耐候性試験機では、試料収容容器内に湿度調整部材を設置した状態において、試料の耐候性試験が実行されるようにしてもよい。
【0013】
本発明の耐候性試験機では、試料収容容器が、光源から放射される光のうち、少なくとも紫外線波長領域の光を透過する材料で構成されているようにしてもよい。
【0014】
本発明の耐候性試験機では、試料収容容器の光源と対向する面の全面又は一部が、光源から放射される光のうち、少なくとも紫外線波長領域の光を透過する材料で構成されているようにしてもよい。
【0015】
本発明の耐候性試験機では、試験槽内において光源が中心位置となるように配置され、光源を中心とした回転動作が可能な円環状の試料取付枠を設け、試料取付枠に試料収容容器を取り付けた状態において、試料の耐候性試験が実行されるようにしてもよい。
【0016】
本発明の耐候性試験機では、試料収容容器の内部に試料収容容器温度センサを設けた状態において、試料の耐候性試験が実行されるようにしてもよい。
【0017】
本発明の耐候性試験機用試料収容容器は、耐候性試験機における試験槽内に配置されると共に試料を収容するための容器であって、試料を収容する収容部と、収容部に試料を設置するための開口部と、開口部を密閉する蓋部材とを有するものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明の耐候性試験機および耐候性試験用試料収容容器は、試料を収容した試料収容容器内で特殊な環境を模擬し、光源からの光を照射するようにしたので、特殊な環境を想定した耐候性試験を簡易に実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の一実施の形態に係る耐候性試験機の概略構成例を表す模式図である。
図2図1に示した試験槽内の詳細構成例を表す模式図である。
図3図1に示した試料収容容器の詳細構成例を表す模式斜視図である。
図4】変形例1に係る試料収容容器の詳細構成例を表す模式斜視図である。
図5】変形例2に係る試料収容容器の詳細構成例を表す模式斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、説明は以下の順序で行う。
1.実施の形態(全面が光透過部材で構成されており、内部の圧力を調整し、維持することが可能な試料収容容器の例)
2.変形例
変形例1(正面側のみ光透過部材で構成されており、内部に湿度調整部材を入れた試料収容容器の例)
変形例2(正面側の一部のみ光透過部材で構成されており、内部に液体を収容した試料収容容器の例)
3.その他の変形例
【0021】
<1.実施の形態>
[構成]
図1は、本発明の一実施の形態に係る耐候性試験機1の概略構成例を模式的に表したものである。また、図2は、図1に示した試験槽10内の詳細構成例を模式的に表したものである。
【0022】
耐候性試験機1は、試験槽10内に配置された試料2について、耐候性試験を行うものである。この耐候性試験機1は、図1および図2に示したように、温度等の調節が可能な試験槽10内に、光源11、一対の試料取付枠12a、12b、試料2を内部に収容する試料収容容器13、受光器15およびブラックパネル温度計16を備えている。耐候性試験機1はまた、図1に示したように、回転軸120および制御部17を備えている。なお、試料2としては、一例として、ガラスやプラスチック、塗装板等が挙げられる。
【0023】
光源11は、試験槽10内の中央付近に、Z軸方向に沿って延在するように配置されている。光源11は、例えば、キセノンアークランプやサンシャインカーボンアークランプ、紫外線カーボンアークランプ、メタルハライドランプ、紫外線蛍光ランプ等のランプ光源により構成されている。
【0024】
試料取付枠12a,12bは、それぞれ光源11が中心位置となるようにX-Y平面内に配置された円環状の枠である。試料取付枠12a,12bは、回転軸120が回転方向R1に沿って回転することで、光源11を中心とした一定速度での回転動作を行う。これにより図2に示したように、後述する各試料収容容器13、受光器15およびブラックパネル温度計16もまた、光源11を中心として回転方向R2に沿った回転動作が行われる。
【0025】
(試料収容容器13)
試料収容容器13は、前述したように、試験槽10内において試料2を内部に収容(保持)するための容器(耐候性試験機用試料収容容器)である。この試料収容容器13は、図2に示したように、この例では試験槽10内に複数配置されている。このような試料収容容器13は、図3(A)に示したように開口部131を有し、開口部131の下方側の収容部132と上方側の蓋部材133とで構成されている。試料収容容器13の詳細構成例については、後述する。
【0026】
試料取付枠用部材14は、試料収容容器13を試料取付枠12a,12bに取り付けるための部材である。図3(B)に示したように試料2を収容した試料収容容器13を試料取付枠用部材14に固定し、試料取付枠用部材14を試料取付枠12a,12bに取り付ける構造となっている。これにより、試料2が試験槽10内に設置される。
【0027】
受光器15は、光源11から放射された放射光Loutの放射照度を測定するためのものであり、試料取付枠12a,12b上に取り付けられている。受光器15により得られた受光値は、後述する制御部17へ伝送される。
【0028】
ブラックパネル温度計16は、図2に示したように、試料取付枠12a,12b上に取り付けられており、試料2の表面温度を代表する温度情報を測定するための温度計である。この温度情報としては、放射光Loutの光エネルギーが温度化された成分と、試験槽10内の環境温度成分と、ブラックパネル温度計16の表面を流れる風による熱伝達成分などを含んでいる。このようなブラックパネル温度計16は、例えば、バイメタル、白金抵抗体、サーミスタまたは熱電対等の感熱体と、黒色に塗装された板とを含んで構成されている。
【0029】
制御部17は、耐候性試験機1の動作を制御する。例えば、受光器15により得られた受光値に基づいて光源11の放射強度を制御することにより、試料2への放射照度を制御する機能を有している。また、制御部17は温度制御の基準をブラックパネル温度計16に選択した場合に、このブラックパネル温度計16により得られた温度情報に基づいて、試験槽10内の温度制御を行う機能を有している。
【0030】
[試料収容容器13の詳細構成]
続いて、図1図2に加えて図3を参照して、前述した試料収容容器13の詳細構成例について説明する。
【0031】
図3は、試料収容容器13の詳細構成例を、模式的に表したものである。図3(A)に示したように、試料収容容器13は、開口部131、収容部132、蓋部材133、孔134、封止部材135、試料固定部材136、試料収容容器温度センサ138を有しており、試料収容容器13の全面が光透過部材137で構成されている。
【0032】
開口部131は、収容部132に設けられており、試料収容容器13内に試料2を収容するための開口である。試料2を後述する試料固定部材136に固定し、開口部131から試料固定部材136を収容部132内に収容し、開口部131を蓋部材133で密閉することによって試料収容容器13内に試料2が設置される。また、詳細は後述するが、収容部132は、試料2とは異なる物質を試料2と共に収容可能な構造となっている。
【0033】
孔134は、蓋部材133の上方に配置されている。この孔134により、試料収容容器13と図示しない真空ポンプやコンプレッサー等の圧力調整機構またはガス供給機構とを連結させることが可能となっている。
【0034】
封止部材135は、孔134を封止するための部材である。具体的には、封止部材135は、孔134により試料収容容器13と圧力調整機構またはガス供給機構とを連結し、試料収容容器13内を所定の状態に調整した後に、孔134を封止するための部材である。
【0035】
試料固定部材136は、試料収容容器13内において試料2を固定(保持)するための部材である。図3に示した例では、この試料固定部材136に試料2を吊るすことで、試料2が試料収容容器13の底面から浮いた状態で、試料収容容器13内に試料2を固定している。
【0036】
光透過部材137は、光源11から放射される光を透過させる材料で形成されている。光透過部材137の一例として、光源11から放射される光のうち、紫外線波長領域の光(例えば300nm以下の波長の光)を透過させる材料(例えば石英等)で形成されるようにしてもよい。このような光透過部材137を設けるようにした場合、強紫外域の光を試料2に照射することができるようになり、宇宙環境の光を模擬した耐候性試験を行うことができる。
【0037】
試料収容容器温度センサ138は、試料収容容器13内に設けられ、試料収容容器13内の温度を測定するものである。このような試料収容容器温度センサ138は、例えば、光源11からの放射光Loutの光エネルギーが温度化された成分の影響を受けないように温度感知部が遮光されており、試料収容容器13内の雰囲気の温度を測定するようになっている。この試料収容容器温度センサ138により得られた温度情報に基づいて、制御部17により試験槽10内の温度制御を行うことが可能となっている。
【0038】
[動作および作用・効果]
(A.基本動作)
この耐候性試験機1では、試験槽10内において、必要に応じて光源11から放射光Loutが放射される。また、この際に、複数の試料収容容器13、受光器15およびブラックパネル温度計16が取り付けられた試料取付枠12a,12bがそれぞれ、この光源11を中心とした回転動作を行う。これにより、促進的環境条件で、各試料収容容器13内の試料2に対して、放射光Loutが照射される。このような放射光Loutの放射が所定の試験時間(例えば数時間~数千時間程度)行われることで、試料2の劣化度合い等が評価され、耐候性試験がなされる。
【0039】
このような耐候性試験の際に、制御部17は、受光器15により得られた受光値に基づいて、光源11の放射強度を制御することにより、試料2への放射照度を制御する。これにより、受光値が予め設定された試験条件値と略一致するように光源11の放電電力が制御される。
【0040】
この制御部17はまた、図示しないヒータや冷却器等の動作をそれぞれ制御することにより、例えば、試験槽10内の温度、ブラックパネル温度計16の温度、試料収容容器温度センサ138の温度のうちのいずれか一つまたは複数の温度制御を行う。なお、このような温度制御は、例えば、PID(Proportional-Integral-Derivative)制御を用いて行われる。
【0041】
(試料収容容器内を所定の圧力に調整する動作)
耐候性試験機1における上記した試料収容容器13内の圧力を調整する際の動作について詳細に説明する。試料収容容器13の開口部131から収容部132内に試料2を設置し、開口部131を蓋部材133で密閉した後、孔134により試料収容容器13と圧力調整機構とを接続し、圧力調整機構により試料収容容器13内の圧力を調整する。試料収容容器13内が所定の圧力に調整された後に、孔134を封止部材135で封止することで試料収容容器13内を所定の圧力に維持することが可能となっている。
このような試験は、例えば、試料収容容器13の内部を真空状態に近づけて、光の影響を光照射試験により付与することで、宇宙環境の光を模擬した耐候性試験を行うことができる。
【0042】
(試料収容容器内を所定のガス濃度に調整する動作)
耐候性試験機1について上記した試料収容容器13内のガス濃度を調整する際の動作について詳細に説明する。試料収容容器13の開口部131から収容部132内に試料2を設置し、開口部131を蓋部材133で密閉した後、孔134により試料収容容器13とガス供給機構とを接続し、ガス供給機構により試料収容容器13内のガス濃度を調整する。試料収容容器13内が所定のガス濃度に調整された後に、孔134を封止部材135で封止することで試料収容容器13内を所定のガス濃度に維持することが可能となっている。
このような試験は、例えば、腐食性ガスを作用させながら光の影響を光照射試験により付与することで、腐食性ガス環境の光を模擬した耐候性試験を行うことができる。
【0043】
(B.作用・効果)
このようにして本実施の形態の耐候性試験機1では、試料収容容器13に試料2を収容した後に、試料収容容器13内部の圧力の調整またはガス濃度の調整を行い、試験槽10内に設置する構造となっている。具体的には、試料収容容器13に設けられた孔134に封止部材135が設けられており、孔134により試料収容容器13と圧力調整機構またはガス供給機構とを連結させ、試料収容容器13内の圧力の調整またはガス濃度の調整を行い、封止部材135により孔134を閉めることで試料収容容器13内の状態を維持することが可能となっている。
【0044】
これにより、例えば、試料2を設置した試料収容容器13内を所定の圧力に調整することで、低気圧環境、または高気圧環境を模擬した耐候性試験を、簡易に実現することができる。すなわち、試験槽10内全体の圧力を調整し、調整した圧力に保持するような複雑で大掛かりな構造を用いることなく、特殊な環境を想定した耐候性試験を行うことが可能となっている。
【0045】
更に、試料2を設置した試料収容容器13内を所定のガス濃度に調整して、試料収容容器13内にガスを充填した状態で試料2の耐候性試験を行ってもよい。そのようにした場合、例えば、光の照射による紫外線劣化と、腐食性ガスによる腐食劣化を同時に複合的に付与させることが可能となる。
【0046】
また、光源11を中心として試料収容容器13を回転させることができるため、複数の試料収容容器13における設置場所の違いによる試料2の劣化の度合いの不均一性を低減、もしくは防止し、耐候性試験の精度を向上させることが可能となっている。
【0047】
加えて、試料収容容器13の光透過部材137を光源11から放射される光のうち、紫外線波長領域の光を減衰させずに試料2に照射させることが可能な材料としたことで、例えば、紫外線を主とした300nm以下の波長の光を試料収容容器13内の試料2に照射することで、宇宙環境の光を模擬した耐候性試験を行うことができる。また、試料収容容器13毎に、透過する波長が異なる光透過部材137を用いて、耐候性試験を行うことで、例えば、宇宙環境の光を模擬した試験と地上の光を模擬した試験を同時に行うことが可能となっている。
【0048】
また、試料収容容器13内に試料収容容器温度センサ138を設けたため、試料収容容器13内の温度を測定することができ、例えば、試料収容容器温度センサ138で得られる温度データに基づいて、試験槽10内の温度を制御することが可能となり、試料2の温度を考慮した耐候性試験が可能となっている。
【0049】
以上のように本実施の形態では、試料2を試料収容容器13内に収容し、光源11からの光を照射するようにしたので、試料収容容器13内で特殊な環境を模擬することで特殊な環境を想定した耐候性試験を簡易に実現することができる。
【0050】
<2.変形例>
[変形例1]
続いて、本発明の変形例1について説明する。なお、実施の形態における構成要素と同一のものには同一の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0051】
[構成]
図4は、変形例1に係る試料収容容器13Aの詳細構成例を模式図で表したものである。
【0052】
本変形例の試料収容容器13Aは、実施の形態の試料収容容器13とは異なり、光透過部材137Aが光源11と対向する面のみに配置される構成となっている。試料収容容器13Aの内部には湿度調整部材30が収容されている。
【0053】
具体的には、例えば、図4に示したように、試料収容容器13Aは箱型の形状であり、その正面側(光源11と対向する面)のみ光透過部材137Aで構成され、他の面(斜線部分)は光を透過しない別の部材で構成されている。
【0054】
湿度調整部材30は、試料収容容器13Aの収容部132の下部に収容され、試料収容容器13A内の湿度を調整するものである。例えば、湿度調整部材30として水を収容することで、密閉されている試料収容容器13A内で水が蒸発して試料収容容器13A内の湿度を上昇させることが可能となる。また、例えば、湿度調整部材30として乾燥材等の吸湿性材料を収容することで、試料収容容器13A内の湿度を低下させることが可能となる。更に、複数の試料収容容器13A毎に、湿度調整部材30の種類を変更することで、試料収容容器13A毎に個別に内部の湿度を調整することが可能となる。
【0055】
このようにして、本変形例においても、試料2を試料収容容器13A内に収容し、光源11からの光を照射するようにしたので、試料収容容器13A内で低気圧環境や高気圧環境、ガスを充填させた状態など特殊な環境を模擬することができ、試料2に対して特殊な環境を想定した耐候性試験を簡易に実現することができる。また、試料収容容器13Aを、光源11からの光が照射される正面側のみ光透過部材137Aで構成したため、例えば、正面側以外を強度の高い金属等の光を透過しない材料で構成することが可能となり、試料収容容器13Aの強度を向上させることができる。更に、正面側以外は光が透過しないため、耐候性試験の際の試料収容容器13A内の温度が、光源11から放射される光によってより高い温度となるため、促進性が向上した耐候性試験が可能となる。
【0056】
また、試料収容容器13A内に湿度調整部材30を収容し、試料収容容器13A内の湿度を調整可能としたため、簡易な構造で湿度の影響も考慮した耐候性試験を行うことが可能となる。
【0057】
[変形例2]
続いて本発明の変形例2について説明する。なお、実施の形態における構成要素と同一のものには同一の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0058】
[構成]
図5は、変形例2に係る試料収容容器13Bの詳細構成例を模式図で表したものである。
【0059】
本変形例の試料収容容器13Bは、実施の形態の試料収容容器13とは異なり、光透過部材137Bが光源11と対向する面において部分的に配置される構成となっている。また、試料収容容器13Bの内部には液体31が収容されている。
【0060】
具体的には、例えば、図5に示したように、試料収容容器13Bは箱型の形状であり、その光源11と対向する面(正面側)の一部のみ光透過部材137Bで構成し、他の面は光を透過しない別の部材で構成されている。この図の例では、正面側の下部が光透過部材137Bで構成され、上部が光を透過しない別の部材で構成されており、遮光部139となっている。
【0061】
液体31は、試料収容容器13Bの収容部132に収容され、例えば、図5では、収容部132の下部の試料2が浸からない水位で収容されているが、試料2が浸かる水位まで収容してもよい。このような液体31として、例えば、水や過酸化水素水、油類、腐食性溶液等が挙げられる。
【0062】
このようにして、本変形例においても、試料2を試料収容容器13B内に収容し、光源11からの光を照射するようにしたので、試料収容容器13B内で低気圧環境や高気圧環境、ガスを充填させた状態など特殊な環境を模擬することができ、試料2に対して特殊な環境を想定した耐候性試験を簡易に実現することができる。更に、試料収容容器13Bの正面側の一部のみ光透過部材137Bで構成したため、例えば、他の面を強度の高い金属等の光を透過しない材料で構成することが可能となり、試料収容容器13Bの強度を向上させることができる。また、他の面は光が透過しないため、耐候性試験の際の試料収容容器13B内の温度が光によってより高い温度となり、促進性が向上した耐候性試験が可能となる。更に、遮光部139によって試料収容容器13B内の試料2に光が照射する部分としない部分を作ることができるため、試料2の光が照射される部分と光が照射されない部分により光の有無の影響の違いを比較することができる。
【0063】
また、収容部132に液体31を試料2と一緒に収容することができるため、例えば、液体31として油類を収容した場合、光源11からの放射熱等によって油類を揮発させることで、揮発した油類が充満した過酷環境を再現することが可能となる。また、例えば、液体31として腐食溶液を収容し、腐食溶液の水位を試料2の下部が浸かるようにした場合、試料2の液面付近における腐食の進行などの腐食性の評価を行うことが可能となる。
【0064】
<3.その他の変形例>
以上、実施の形態および変形例をいくつか挙げて本発明を説明したが、本発明はこれらの実施の形態等に限定されず、種々の変形が可能である。
【0065】
例えば、上記実施の形態等では、耐候性試験機における各機器の構成(形状、配置、個数等)を具体的に挙げて説明したが、これらの構成については、上記実施の形態等で説明したものには限られず、他の形状や配置、個数等であってもよい。
【0066】
また、上記実施の形態等では、前述したランプ光源を用いて本発明における「光源」を構成する場合の例について説明したが、これには限られず、例えば、LED等の他の光源を用いて、本発明における「光源」を構成するようにしてもよい。
【0067】
更に、上記実施の形態等では、試料収容容器における構成(形状、材質、配置、個数等)を具体的に挙げて説明したが、これらの構成については、上記実施の形態等で説明したものには限られず、他の形状や材質、配置、個数等であってもよい。具体的には、例えば、上記実施の形態等では、試料収容容器が試験槽内に複数配置されている場合を例に挙げて説明したが、この例には限られず、試験槽内に試料収容容器が1つだけ配置されているようにしてもよい。また、試料収容容器内に受光器とブラックパネル温度計とを備えるようにしてもよい。また、試料収容容器本体を回転させるようにしてもよい。
【0068】
また、上記実施の形態等では、試料収容容器内の圧力やガス濃度、湿度を調整する場合や試料収容容器内に液体を収容する場合を例に挙げて説明したが、この例には限られず、例えば、試料収容容器内に不活性ガス等を供給し、無酸素状態にするようにしてもよい。また、その他に例えば、高気圧酸素状態にしてもよい。
【符号の説明】
【0069】
1…耐候性試験機、10…試験槽、11…光源、12a,12b…試料取付枠、120…回転軸、13、13A,13B…試料収容容器、131…開口部、132…収容部、133…蓋部材、134…孔、135…封止部材、136…試料固定部材、137,137A,137B…光透過部材、138…試料収容容器温度センサ、139…遮光部、14…試料取付枠用部材、15…受光器、16…ブラックパネル温度計、17…制御部、2…試料、30…湿度調整部材、31…液体、Lout…放射光、R1,R2…回転方向

図1
図2
図3
図4
図5