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特許7352307自殺遺伝子を持つROBO1 CAR-NK細胞、その製造方法及び使用
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-20
(45)【発行日】2023-09-28
(54)【発明の名称】自殺遺伝子を持つROBO1 CAR-NK細胞、その製造方法及び使用
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/62 20060101AFI20230921BHJP
   A61K 35/17 20150101ALI20230921BHJP
   A61K 38/48 20060101ALI20230921BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20230921BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20230921BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20230921BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230921BHJP
   C07K 14/705 20060101ALI20230921BHJP
   C07K 16/30 20060101ALI20230921BHJP
   C07K 19/00 20060101ALI20230921BHJP
   C12N 5/0783 20100101ALI20230921BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20230921BHJP
   C12N 9/48 20060101ALI20230921BHJP
   C12N 15/13 20060101ALI20230921BHJP
   C12N 15/57 20060101ALI20230921BHJP
   C12N 15/867 20060101ALI20230921BHJP
【FI】
C12N15/62 Z ZNA
A61K35/17
A61K38/48
A61K39/395 T
A61K48/00
A61P35/00
A61P43/00 105
C07K14/705
C07K16/30
C07K19/00
C12N5/0783
C12N5/10
C12N9/48
C12N15/13
C12N15/57
C12N15/867 Z
【請求項の数】 30
(21)【出願番号】P 2021555364
(86)(22)【出願日】2020-03-03
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-05-17
(86)【国際出願番号】 CN2020077582
(87)【国際公開番号】W WO2020187016
(87)【国際公開日】2020-09-24
【審査請求日】2021-10-14
(31)【優先権主張番号】201910196531.5
(32)【優先日】2019-03-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】520200230
【氏名又は名称】阿思科力(蘇州)生物科技有限公司
【氏名又は名称原語表記】ASCLEPIUS (SUZHOU) TECHNOLOGY COMPANY GROUP CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】218 Xinghu Str.Suzhou,Jiangsu 215123 China
(74)【代理人】
【識別番号】110002262
【氏名又は名称】TRY国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】韓 昆昆
(72)【発明者】
【氏名】傅 剣敏
(72)【発明者】
【氏名】周 敏
(72)【発明者】
【氏名】曽 凡軍
(72)【発明者】
【氏名】王 強
(72)【発明者】
【氏名】李 華順
【審査官】藤山 純
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/181552(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/218710(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第109136244(CN,A)
【文献】特表2013-509879(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/62
A61K 35/17
A61K 38/48
A61K 39/395
A61K 48/00
A61P 35/00
A61P 43/00
C07K 14/705
C07K 16/30
C07K 19/00
C12N 5/0783
C12N 5/10
C12N 9/48
C12N 15/13
C12N 15/57
C12N 15/867
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
UniProt/GeneSeq
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
核酸であって、
キメラ抗原受容体をコードする遺伝子及び誘導性自殺遺伝子を含み、
前記キメラ抗原受容体は、抗原結合ドメイン、膜貫通ドメイン及び共刺激シグナル伝達領域を含み、
前記キメラ抗原受容体は、構造がScFv-CD8-4-1BB-CD3ζであり、前記ScFvは、腫瘍特異的抗原ROBO1のFN3ドメインに特異的に結合可能であり、ScFv-CD8-4-1BB-CD3ζ融合タンパク質のコーディングヌクレオチド配列は、配列番号11に示され、
前記誘導性自殺遺伝子は、iCaspase9、EGFRt、CD20、ラパマイシン及びRQR8中の一つであることを特徴とする核酸。
【請求項2】
前記誘導性自殺遺伝子は、iCaspase9であり、
前記iCaspase9は、FKBP12-F36V及びΔCaspase9を含み、
前記FKBP12-F36Vのヌクレオチド配列は、配列番号1に示され、
前記ΔCaspase9のヌクレオチド配列は、配列番号2に示されることを特徴とする、請求項1に記載の核酸。
【請求項3】
前記FKBP12-F36VとΔCaspase9はLinkerにより接続され、
前記Linkerのヌクレオチド配列は、配列番号3に示されることを特徴とする、請求項2に記載の核酸。
【請求項4】
前記iCaspase9には、マーカー遺伝子がさらに含まれ、
前記マーカー遺伝子は、CD19、Myc、Flag、HA及びHis中の一つであることを特徴とする、請求項3に記載の核酸。
【請求項5】
前記マーカー遺伝子は、CD19であり、
前記iCaspase9には、切断遺伝子が含まれ、
前記切断遺伝子は、T2Aであり、
前記CD19のヌクレオチド配列は、配列番号4に示され、
前記T2Aのヌクレオチド配列は、配列番号5に示されることを特徴とする、請求項4に記載の核酸。
【請求項6】
前記iCaspase9のヌクレオチド配列は、配列番号6に示されることを特徴とする、請求項5に記載の核酸。
【請求項7】
前記誘導性自殺遺伝子は、EGFRtであり、
前記EGFRtは、EGFRの細胞外ドメインIII、細胞外ドメインIV及び膜貫通領域を含み、
前記EGFRtのヌクレオチド配列は、配列番号12に示されることを特徴とする、請求項1に記載の核酸。
【請求項8】
前記抗原結合ドメインは、ROBO1のFN3ドメインに特異的に結合する抗体又はその抗原結合断片であり、
前記抗原結合断片はScFvであることを特徴とする、請求項1に記載の核酸。
【請求項9】
前記ScFv-CD8-4-1BB-CD3ζ融合タンパク質のアミノ酸配列は、配列番号9に示されることを特徴とする、請求項1に記載の核酸。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか1項に記載の核酸を含むことを特徴とする、自殺遺伝子を持つ構築物。
【請求項11】
前記自殺遺伝子がiCaspase9である場合、前記構築物のヌクレオチド配列は、配列番号7に示され、或いは
前記自殺遺伝子がEGFRtである場合、前記構築物のヌクレオチド配列は、配列番号13に示されることを特徴とする、請求項10に記載の構築物。
【請求項12】
請求項1から9のいずれか1項に記載の核酸によってコードされることを特徴とする、自殺遺伝子を持つキメラ抗原受容体。
【請求項13】
請求項12に記載のキメラ抗原受容体を発現することを特徴とする、自殺遺伝子を持つROBO1 CAR-NK細胞。
【請求項14】
肺がん細胞、膵臓がん細胞、肝がん細胞、乳がん細胞、結腸がん細胞、前立腺がん細胞又は胃がん細胞を効果的に殺傷させるか又は殺すことができることを特徴とする、請求項13に記載の自殺遺伝子を持つROBO1 CAR-NK細胞。
【請求項15】
請求項13又は14に記載の自殺遺伝子を持つROBO1 CAR-NK細胞の製造方法であって、
請求項1から9のいずれか1項に記載の核酸を合成して増幅し、前記核酸をレンチウイルス発現ベクターへクローニングし、自殺遺伝子を持つレンチウイルスベクターを得るステップ(1)と、
さらに、レンチウイルスパッケージング細胞株、及びステップ(1)で得られた自殺遺伝子を持つレンチウイルスベクターを含む3プラスミドシステムによりレンチウイルスをパッケージングして自殺遺伝子を持つレンチウイルスを得た後、前記自殺遺伝子を持つレンチウイルスをROBO1 CAR-NK細胞に感染させることで自殺遺伝子をそのゲノムに導入し、自殺遺伝子を持つROBO1 CAR-NK細胞を得るステップ(2)と、
を含むことを特徴とする、製造方法。
【請求項16】
前記ROBO1 CAR-NK細胞は、
請求項1から9のいずれか1項に記載の核酸を合成し、ScFv-CD8-4-1BB-CD3ζ融合タンパク質のコーディングヌクレオチド配列を含むレンチウイルスベクターを得るステップaと、
レンチウイルスパッケージングプラスミド及びステップaで得られたレンチウイルス発現ベクターによりパッケージング細胞株においてパッケージングを行い、レンチウイルスを製造するステップbと、
ステップbで得られたレンチウイルスをNK細胞に感染させ、ROBO1 CAR-NK細胞を得るステップcと、
を含む方法により製造されることを特徴とする、請求項15に記載の製造方法。
【請求項17】
請求項13若しくは14に記載の自殺遺伝子を持つROBO1 CAR-NK細胞又は請求項15若しくは16に記載の製造方法により製造される自殺遺伝子を持つROBO1 CAR-NK細胞を含む、ことを特徴とする医薬組成物。
【請求項18】
前記医薬組成物はインデューサーをさらに含み、
前記自殺遺伝子がiCaspase9である場合、前記インデューサーはAP1903又はAP20187であり、前記インデューサーの濃度は0~50nMであり、
前記自殺遺伝子がEGFRtである場合、前記インデューサーはセツキシマブであり、その作用濃度が1μg/mlであることを特徴とする請求項17に記載の医薬組成物。
【請求項19】
前記自殺遺伝子を持つROBO1 CAR-NK細胞と腫瘍細胞とのエフェクター/標的比は(0.5~5):1であることを特徴とする請求項17に記載の医薬組成物。
【請求項20】
前記エフェクター/標的比は(0.5~1):1であることを特徴とする、請求項19に記載の医薬組成物。
【請求項21】
薬学的に許容される塩、担体、賦形剤及び補助材料をさらに含むことを特徴とする、請求項17に記載の医薬組成物。
【請求項22】
がんを治療及び/又は予防するための医薬品の製造における請求項13若しくは14に記載の自殺遺伝子を持つROBO1 CAR-NK細胞又は請求項15若しくは16に記載の製造方法により製造される自殺遺伝子を持つROBO1 CAR-NK細胞の使用であることを特徴とする、使用。
【請求項23】
前記がんは、肝臓がん、乳がん、結腸がん、膵臓がん、前立腺がん、胃がん又は肺がんであることを特徴とする、請求項22に記載の使用。
【請求項24】
前記医薬品は、腫瘍内投与剤形の医薬品、腫瘍内注射剤形の医薬品又は静脈内注入剤型の医薬品を含むことを特徴とする、請求項22に記載の使用。
【請求項25】
がんを治療及び/又は予防する注射剤であって、前記注射剤は請求項13若しくは14に記載の自殺遺伝子を持つROBO1 CAR-NK細胞、請求項15若しくは16に記載の製造方法により製造される自殺遺伝子を持つROBO1 CAR-NK細胞、又は請求項17から21のいずれか1項に記載の医薬組成物を含む、
ことを特徴とするがんを治療及び/又は予防する注射剤。
【請求項26】
前記がんは、肝臓がん、乳がん、結腸直腸がん、膵臓がん、前立腺がん、胃がん又は肺がんであることを特徴とする請求項25に記載の注射剤。
【請求項27】
前記がんは、乳がん、結腸直腸がん又は肝臓がんであることを特徴とする、請求項25に記載の注射剤。
【請求項28】
前記自殺遺伝子を持つROBO1 CAR-NK細胞の注射量は(0.5~5)×10細胞/回であることを特徴とする、請求項25に記載の注射剤。
【請求項29】
前記注射剤の投与方法は、腫瘍内注射、静脈注射、胸腔内注射又は局所的介入であることを特徴とする、請求項25に記載の注射剤。
【請求項30】
前記注射剤の投与方法は静脈注射であることを特徴とする、請求項29に記載の注射剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイオ医薬品の技術分野に属し、NK細胞、その製造方法及び使用に関し、具体的には、自殺遺伝子を持つROBO1 CAR-NK細胞、その製造方法及び使用に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、CAR-T細胞に基づく免疫療法は、業界で大きな注目を集めており、「生きている」薬剤として、CAR-T療法は従来の薬剤とは大きく異なっている。まず、この療法では、患者体内からT細胞を分離し、インビトロでキメラ抗原受容体(CAR)によりT細胞を修飾してがん細胞を特異的に識別可能にし、そして改変されたT細胞を増殖させ、患者体内に戻す必要がある。例えば、CD19陽性悪性腫瘍患者へのCD19 CAR-T細胞の応用の成功は、この方法をがん免疫療法として使用可能であることを証明している(Grupp et al.,2013)。また、様々な腫瘍抗原を標的とするCAR-T細胞については、積極的に臨床開発されている(Kalosetal.,2013)。
【0003】
CAR-T療法は大きな可能性を示しているが、それは大きく制限されている。まず、細胞を体外へ分離する必要がある(この過程は時間と費用がかかる)。また、特定の患者に対してT細胞を修飾する必要がある。しかし、一部の患者は、T細胞を採取することができないか、T細胞の準備過程を待つのに十分な時間がない問題がある。CAR-Tは現在、汎用のCAR-Tに向けて開発されているが、実際には臨床的リスクと運用上の困難が高くなっている。さらに、CAR-Tの高いコスト(現在上場している2つの会社、ノバルティスとケイトを参照)に直面すると、これらの制限により、一部の有望な患者がCAR-T免疫療法を受けることができなくなる可能性がある。また、CAR-T療法には、サイトカイン放出症候群CRS、神経毒性などの深刻な毒性又は副作用もある。
【0004】
ナチュラルキラー(NK)細胞は、養子がん免疫療法に用いる重要なエフェクター細胞である。T細胞と同様に、NK細胞は修飾されてキメラ抗原受容体(CARs)を発現することにより抗腫瘍活性を増強させることができる。NK細胞は、がん免疫監視において重要な役割を果たし、養子がん免疫療法に用いる重要なエフェクター細胞を表している。T細胞に比べ、NK細胞は複雑なMHC分子によって提示されるペプチド抗原を事前に活性化して認識する必要はない。逆に、コード化された細胞表面受容体を介してCD3ζ分子を結合することにより、NK細胞は適切な刺激の下で殺傷活性を示すことができる。従って、CAR-NK療法は腫瘍細胞治療の重要な発展の方向性になることが期待されている。
【0005】
本発明者らがNK92細胞を改変してCARを導入したことにより、その標的性が大幅に向上するとともに、自殺遺伝子スイッチ素子を導入したことにより、CAR-NK細胞の安全性及び制御可能性がさらに向上した。臨床前の実験によっても、本発明のCAR-NKは明らかな毒性や副作用を有しないことが証明されている。しかし、CAR-NK療法の安全性及び有効性を向上させるために、さらなる開発及び改良が必要とされている。
【発明の概要】
【0006】
上記の技術的問題に対して、本発明の目的の一つは自殺遺伝子を持つヌクレオチド配列を提供し、本発明のもう一つの目的は自殺遺伝子を持つROBO1 CAR-NK細胞を提供することであり、本発明の別の目的は自殺遺伝子を持つROBO1 CAR-NK細胞の使用を提供することである。本発明では、ROBO1 CAR-NK細胞に自殺遺伝子のスイッチ素子を追加することにより、CAR-NK細胞をより良好に制御でき、臨床上の安全性をさらに向上できる。
【0007】
本発明に係る自殺遺伝子を持つヌクレオチド配列は、自殺遺伝子を持つヌクレオチド配列であって、キメラ抗原受容体をコードする遺伝子及び誘導性自殺遺伝子を含み、上記キメラ抗原受容体は、抗原結合ドメイン、膜貫通ドメイン及び共刺激シグナル伝達領域を含み、上記抗原結合ドメインは、腫瘍特異的抗原に特異的に結合し、膜貫通ドメイン及び共刺激シグナル伝達領域を介してNK細胞を活性化可能であり、上記腫瘍特異的抗原はROBO1である。
【0008】
本発明の好ましい実施例において、上記誘導性自殺遺伝子はiCaspase9、EGFRt、CD20、ラパマイシン及び/又はRQR8である。
【0009】
本発明の好ましい実施例において、上記誘導性自殺遺伝子は、iCaspase9であり、上記iCaspase9は、FKBP12-F36V及びΔCaspase9を含み、上記FKBP12-F36Vのヌクレオチド配列は、配列番号1に示され、上記ΔCaspase9のヌクレオチド配列は、配列番号2に示される。
【0010】
本発明の好ましい実施例において、上記FKBP12-F36VとΔCaspase9はLinkerにより連結され、上記Linkerのヌクレオチド配列は配列番号3に示される。リンカー(Linker)配列の設計は、遺伝子融合技術を成功させるための重要な技術の一つであり、適切なリンカー配列により異なる目的遺伝子を連結し、それを適切な生体内で単一のペプチド鎖となるように発現させる。連結作用を奏するアミノ酸はLinkerと呼ばれる。Linkerは目的タンパク質のそれぞれの機能に影響を与えず、融合タンパク質に正しい空間構造を形成させ、生物学的活性をよりよく発揮させることができる。
【0011】
本発明の好ましい実施例において、上記iCaspase9自殺遺伝子にはマーカー遺伝子がさらに含まれ、上記マーカー遺伝子は、好ましくはCD19、Myc、Flag、HA又はHisである。マーカー遺伝子を検出することにより目的タンパク質が正しく発現されたか否かを確認することができる。
【0012】
本発明の好ましい実施例において、上記マーカー遺伝子はCD19、Myc、Flag、HA又はHisであってもよく、好ましくはCD19である。上記iCaspase9自殺遺伝子には切断遺伝子がさらに含まれる。上記切断遺伝子はT2A又はP2Aであり、好ましくはT2Aである。上記CD19マーカーのヌクレオチド配列は4に示され、上記T2Aのヌクレオチド配列は配列番号5に示される。マーカー遺伝子CD19により細胞内で発現したCaspase9タンパク質を識別することができる。また、切断遺伝子の作用下でmRNAにより翻訳された融合タンパク質のマーカーとiCaspase9とを正常に切断することができる。CD19は短くされたCD19であり、CD19の細胞外セグメント、膜貫通領域及び細胞内における短くされた配列(細胞内シグナル伝達領域を含まない)を含み、自殺遺伝子を検出するためのマーカーのみとして作用し、他の機能を有しない。また、CD19は自殺遺伝子の検出マーカーとしてすでに臨床患者に比較的良い検査結果を示しており、他のマーカーに比べてより高い安全性を有する。2つの遺伝子はT2Aポリペプチドにより1つのORFとなるように連結され、mRNAによって1つの融合タンパク質に翻訳されるが、この融合タンパク質は2Aを識別するプロテアーゼにより2つのタンパク質に消化される。この2つのタンパク質はそれぞれ発現し、それらの機能は互いに影響しない。T2Aの利点は、配列が非常に短く、基本的にタンパク質の機能に影響を与えないことにある。
【0013】
本発明の好ましい実施例において、上記iCaspase9のヌクレオチド配列は、配列番号6に示される。
【0014】
本発明の好ましい実施例において、上記誘導性自殺遺伝子はEGFRtであり、上記EGFRtはEGFRの細胞外ドメインIII、細胞外ドメインIV及び膜貫通領域を含む。
【0015】
本発明の好ましい実施例において、上記EGFRtのヌクレオチド配列は配列番号12に示される。
【0016】
本発明の好ましい実施例において、上記抗原結合ドメインは、腫瘍特異的抗原ROBO1のIg1、Ig2、Ig3、Ig4、Ig5、FN1、FN2及びFN3ドメインのうちの1種又は複数種に特異的に結合可能である。
【0017】
本発明の好ましい実施例において、上記抗原結合ドメインは、腫瘍特異的抗原ROBO1のFN3ドメインに特異的に結合可能である。
【0018】
本発明の好ましい実施例において、上記抗原結合ドメインは、ROBO1のFN3ドメインに特異的に結合する抗体又はその抗原結合断片であり、上記抗原結合断片は、Fab又はScFvである。
【0019】
本発明の好ましい実施例において、上記膜貫通ドメインは、CD28、CD3ε、CD45、CD4、CD5、CD8、CD9、CD16、CD22、CD33、CD37、CD134、CD137、ICOS及びCD154からなる群より選択される1種又は複数種であり、好ましくは、上記膜貫通ドメインは、CD8膜貫通ドメインであり、及び/又は上記共刺激シグナル伝達領域は、共刺激分子の細胞内ドメインを含み、上記共刺激分子は、CD3ζ、CD3γ、CD3δ、CD3ε、CD5、CD22、CD79a、CD79b、CD66d、CD2、CD4、CD5、CD28、CD134、CD137、ICOS、CD154、4-1BB及びOX40からなる群より選択される1種又は複数種であり、好ましくは、上記共刺激シグナル伝達領域は、4-1BB及びCD3ζ細胞内ドメインを含む。
【0020】
本発明の好ましい実施例において、上記キメラ抗原受容体は、構造がScFv-CD8-4-1BB-CD3ζの融合タンパク質であり、上記ScFvは腫瘍特異的抗原ROBO1のFN3ドメインに特異的に結合可能である。
【0021】
本発明の好ましい実施例において、上記ScFv-CD8-4-1BB-CD3ζ融合タンパク質のアミノ酸配列は、配列番号8又は配列番号9に示される。
本発明の好ましい実施例において、上記ScFv-CD8-4-1BB-CD3ζ融合タンパク質のコーディングヌクレオチド配列は、配列番号10又は配列番号11に示される。
【0022】
本発明によれば、上記ヌクレオチド配列を含む自殺遺伝子を持つ構築物がさらに提供される。
【0023】
本発明の好ましい実施例において、上記構築物はレンチウイルス構築物であり、好ましくは、上記自殺遺伝子がiCaspase9である場合、上記構築物のヌクレオチド配列は、配列番号7に示され、或いは上記自殺遺伝子がEGFRtである場合、上記構築物のヌクレオチド配列は、配列番号13に示される。
【0024】
本発明によれば、上記ヌクレオチド配列によってコードされる自殺遺伝子を持つキメラ抗原受容体がさらに提供される。
【0025】
本発明によれば、キメラ抗原受容体を発現する自殺遺伝子を持つROBO1 CAR-NK細胞がさらに提供される。
【0026】
本発明の好ましい実施例において、上記自殺遺伝子を持つROBO1 CAR-NK細胞は、肺がん細胞、膵臓がん細胞、肝がん細胞、乳がん細胞、結腸がん細胞、前立腺がん細胞又は胃がん細胞を効果的に殺傷させるか又は殺すことができる。
【0027】
本発明によれば、
上記ヌクレオチド配列における自殺遺伝子を合成して増幅し、上記ヌクレオチド配列をレンチウイルス発現ベクターへクローニングし、自殺遺伝子を持つレンチウイルスベクターを得るステップ(1)と、
さらに、レンチウイルスパッケージング細胞株、及びステップ(1)で得られた自殺遺伝子を持つレンチウイルスベクターを含む3プラスミドシステムによりレンチウイルスをパッケージングして自殺遺伝子を持つレンチウイルスを得た後、上記自殺遺伝子を持つレンチウイルスをROBO1 CAR-NK細胞に感染させることで自殺遺伝子をそのゲノムに導入し、自殺遺伝子を持つROBO1 CAR-NK細胞を得るステップ(2)と、
を含む上記自殺遺伝子を持つROBO1 CAR-NK細胞の製造方法がさらに提供される。
【0028】
本発明の好ましい実施例において、上記ROBO1-NK細胞は、
上記キメラ抗原受容体をコードするヌクレオチド配列を合成して増幅し、上記ヌクレオチド配列をレンチウイルス発現ベクターへクローニングし、好ましくは、上記ScFv-CD8-4-1BB-CD3ζ融合タンパク質のコーディングヌクレオチド配列を合成し、ScFv-CD8-4-1BB-CD3ζ融合タンパク質のコーディングヌクレオチド配列を含むレンチウイルスベクターを得るステップaと、
レンチウイルスパッケージングに必要なプラスミド及びステップaで得られたレンチウイルス発現ベクターによりレンチウイルスパッケージング細胞株においてパッケージングを行い、レンチウイルスを製造するステップbと、
ステップbで得られたレンチウイルスをNK細胞に感染させ、ROBO1 CAR-NK細胞を得るステップcと、
を含む方法により製造される。
【0029】
本発明によれば、自殺遺伝子を持つROBO1 CAR-NK細胞又は上記製造方法により製造される自殺遺伝子を持つROBO1 CAR-NK細胞を含み、好ましくは、インデューサーをさらに含み、上記自殺遺伝子がiCaspase9である場合、上記インデューサーはAP1903又はAP20187であり、上記低分子化学インデューサーの濃度は0~50nMであり、上記自殺遺伝子がEGFRtである場合、上記インデューサーはセツキシマブであり、その作用濃度が1μg/mlである医薬組成物がさらに提供される。
【0030】
本発明の好ましい実施例において、上記自殺遺伝子を持つROBO1 CAR-NK細胞が腫瘍の殺傷に使用される場合、上記自殺遺伝子を持つROBO1 CAR-NK細胞と腫瘍細胞のエフェクター/標的比は(0.5~5):1であり、好ましくは上記エフェクター/標的比は(0.5~1):1である。
【0031】
本発明の好ましい実施例において、上記医薬組成物は、薬学的に許容される塩、担体、賦形剤及び補助材料をさらに含む。
【0032】
本発明が属する技術分野における通常の方法により、本発明の医薬品を薬学的に許容される様々な剤形、例えば、錠剤、カプセル剤、経口液剤、トローチ剤、注射剤、軟膏剤、顆粒剤又は様々な徐放性製剤などに製剤化することができる。好ましくは、注射剤であり、皮下注射で投与可能である。
【0033】
本発明の医薬品の担体は、薬学分野で入手できる一般的なるタイプであってもよく、接着剤、潤滑剤、崩壊剤、溶解補助剤、希釈剤、安定剤、懸濁剤又は基質などを含む。
【0034】
本発明によれば、がんを治療及び/又は予防するための医薬品の製造における上記自殺遺伝子を持つROBO1 CAR-NK細胞又は上記製造方法により製造される自殺遺伝子を持つROBO1 CAR-NK細胞の使用がさらに提供される。好ましくは、上記がんは、ROBO1高発現腫瘍及びその関連疾患である。
【0035】
本発明の好ましい実施例において、上記がんは、肝臓がん、乳がん、結腸がん、膵臓がん、前立腺がん、胃がん又は肺がんである。
【0036】
本発明の好ましい実施例において、上記医薬品は、腫瘍内投与剤形の医薬品、例えば、腫瘍内注射剤形の医薬品又は静脈内注入剤型の医薬品である。
【0037】
本発明によれば、上記自殺遺伝子を持つROBO1 CAR-NK細胞、上記製造方法により製造される自殺遺伝子を持つROBO1 CAR-NK細胞、又は上記医薬組成物を用いてがんを治療及び/又は予防する方法であって、有効量の自殺遺伝子を持つROBO1 CAR-NK細胞を含む医薬組成物を患者に投与することを含む方法がさらに提供される。
【0038】
本発明の好ましい実施例において、上記がんは、ROBO1高発現腫瘍及びその関連疾患である。
【0039】
本発明の好ましい実施例において、上記がんは、肝臓がん、乳がん、結腸直腸がん、膵臓がん、前立腺がん、胃がん又は肺がんであり、好ましくは、上記がんは、乳がん、結腸直腸がん又は肝臓がんである。
【0040】
本発明の好ましい実施例において、上記自殺遺伝子を持つROBO1 CAR-NK細胞の投与量は(0.5~5)×10細胞/回である。
【0041】
本発明の好ましい実施例において、上記自殺遺伝子を持つROBO1 CAR-NK細胞の投与方法は、腫瘍内注射、静脈注射、胸腔内注射又は局所的介入である。
【0042】
本発明の好ましい実施例において、上記自殺遺伝子を持つROBO1 CAR-NK細胞の投与方法は、静脈注射である。
【0043】
本発明は、以下の有益な効果を有する。
まず、ROBO1 CAR-NK細胞は、腫瘍系疾患の治療薬としてROBO1分子高発現腫瘍の治療に適用でき、且つサイトカインストームなどの有害現象がなく、従来の手術、化学療法、放射線療法に効果のない腫瘍に対して新しい治療法を提供する。また、NK92細胞をそこにCARを導入することで改変することにより標的性は大幅に向上し、CARにおける標的は抗腫瘍標的ROBO1であり、標的性を向上させるとともに、その抗腫瘍性能を大幅に向上させる。さらに、臨床前の実験により、現在使用されているROBO1CAR-NKの毒性や副作用はCAR-Tよりも小さく、殺傷効果はより高いことを発見した。つまり、本発明で構築されるROBO1 CAR-NK細胞は、まず、NK92細胞をそこにCARを導入することで改変することによりその標的性が向上し、そして、NK92細胞はリンパ腫患者の末梢血から分離して構築されたものであるため、MHC制限なしで標的細胞を識別でき、前感作なしで腫瘍細胞を殺傷できるとともに、一連のサイトカインを産生して生体の獲得免疫を調節できるので、ROBO1 CAR-NKは、二次免疫を調節できる作用も有する。しかし、人体に使用した後、腫瘍が形成される可能性がある。
【0044】
そこで、CAR-NK療法の安全性及び制御可能性をさらに向上させるために、本発明者らは、現在のROBO1 CAR-NK細胞をもとに、レンチウイルストランスフェクション技術により、自殺遺伝子をゲノムに組み込んで作用メカニズムが異なる自殺遺伝子を持つCAR-NKを形成した。インビトロで低分子化学インデューサー、例えば、AP1903医薬品を加えると、自殺遺伝子におけるFKBP12-F36V上のドメインと結合して二量体のiCaspase9を形成し、Caspase3,6,7を活性化し、細胞アポトーシスを誘発することができる。インビトロでインデューサーであるセツキシマブを加えると、自殺遺伝子を持つROBO1 CAR-NKは、殺傷/エフェクター細胞(NK92-CD16、即ち、CD16分子を高発現するNK92細胞株)又はPBMCの作用下で、セツキシマブとEGFRtが結合し、そのFcセグメントがNK92-CD16又はPBMC表面のFcRに結合し、抗体依存性細胞が媒介する細胞毒性作用(ADCC)を活性化し、殺傷/エフェクター細胞が標的細胞を直接殺傷するように媒介することにより、CAR-NK細胞をより良好に制御でき、臨床上の安全性及び制御可能性がさらに向上し、CAR-NK療法の発展を促進できる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
図面を参照しながら以下の詳細な説明を読むことにより、本発明をより明確に理解することができる。
図1】本発明の実施例1に係るレンチウイルスプラスミドベクターpRRLSIN-ScFv(anti ROBO1-FN3)の構造模式図である。
図2】本発明の実施例4に係るiCaspase9自殺遺伝子を持つレンチウイルスプラスミドベクター(1942-3-IC9)の構造模式図である。
図3図3a-3bは、本発明の実施例3に係るROBO1 CAR-NK細胞に対してフローサイトメトリーによりCAR陽性率を検出した結果の図である。
図4図4a-4bは、本発明の実施例3に係るROBO1 CAR-NK細胞に対してフローサイトメトリーによりCD56分子陽性率を検出した結果の図である。
図5】本発明の実施例4に係る自殺遺伝子を持つROBO1 CAR-NK細胞に対してフローサイトメトリーによりiCaspase9とROBO1の陽性率を検出した結果の図である。ここで、PEはFlagタブを検出するチャンネルである。Flag-PEチャンネル内の陽性率はROBO1 CAR陽性率の結果を示す。APCはCD19を検出するチャンネルである。APC-CD19チャンネル内の陽性率はiCaspase9陽性率の結果を示す。Flag/CD19は検出された二重陽性の結果を示す。この二重陽性の陽性率は、iCaspase9とROBO1が同時に発現する陽性率の結果を示す。
図6】本発明の実施例4に係る自殺遺伝子を持つROBO1 CAR-NK細胞のRT-PCR mRNAレベルの検出結果である。同図において、1はNK-92細胞、2はROBO1 CAR-NK細胞、3はROBO1-iCaspase9細胞、iCas9はiCaspase9を示す。
図7】本発明の実施例5に係る自殺遺伝子を持つROBO1 CAR-NK細胞の全ゲノムのシークエンシング結果である。結果は分析されたゲノム挿入位置の情報である。
図8】本発明の実施例6に係る自殺遺伝子を持つROBO1 CAR-NK細胞の安定性検出結果である。
図9】AP1903によって誘導される本発明の実施例6に係る自殺遺伝子を持つROBO1 CAR-NK細胞のアポトーシスの結果である。
図10a】本発明の実施例6に係る自殺遺伝子を持つROBO1 CAR-NK細胞ATCG427B-1F7に対してフローサイトメトリーにより陽性率を検出した結果である。
図10b】本発明の実施例6に係る自殺遺伝子を持つROBO1 CAR-NK細胞ATCG427B-2D5に対してフローサイトメトリーにより陽性率を検出した結果である。
図11】本発明の実施例7に係る自殺遺伝子を持つROBO1 CAR-NK細胞に対して異なる濃度のAP1903によりアポトーシスを誘導した結果である。
図12】本発明の実施例7において異なる濃度のAP1903によりそれぞれ2h、4h及び24h処理した細胞に対して新鮮な培地を交換した後、引き続き3日培養した後の細胞存生存率のカウント結果である。
図13】本発明の実施例7において4h処理した後の実験群に対して新鮮な培地を交換して24h培養した結果である。
図14a】本発明の実施例8における異なる乳がん細胞中のROBO1のタンパク質の発現状況の検出結果である。同図において、HCC1187、HCC1937、HCC38、MDAMB-231、MDAMB-453、MDAMB-468はトリプルネガティブ乳がん細胞株である。
図14b図14aで測定されたROBO1の光学密度とGAPDHの光学密度との比の結果である。
図15】本発明の実施例9に係る自殺遺伝子を持つROBO1 CAR-NK細胞を乳がん細胞に用いた殺傷結果である。
図16図16a-cは、本発明の実施例9に係る自殺遺伝子を持つROBO1 CAR-NK細胞を異なるがん細胞に用いた殺傷結果である。
図17a】本発明の実施例9における正常乳腺細胞及びPBMC中のROBO1の発現状況の検出結果である。
図17b】本発明の実施例9に係る自殺遺伝子を持つROBO1 CAR-NK細胞の正常乳腺細胞及びPBMCに対する殺傷の実験結果である。
図18】本発明の実施例9に係るPBMCの自殺遺伝子を持つROBO1 CAR-NK細胞に対する殺傷結果である。
図19】本発明の実施例10に係るレンチウイルスプラスミドベクター1942-3-hEGFRtの構造模式図である。
図20】本発明の実施例10に係るEFGRtの構造模式図である。
図21a】本発明の実施例10に係る自殺遺伝子を持つROBO1 CAR-NK細胞ROBO1-EGFRt-3C10-2D10に対してフローサイトメトリーにより陽性率を検出した結果である。
図21b】本発明の実施例10に係る自殺遺伝子を持つROBO1 CAR-NK細胞ROBO1-EGFRt-3C10-1F11に対してフローサイトメトリーにより陽性率を検出した結果である。
図22】本発明の実施例11に係る異なる種類のがん細胞中のROBO1タンパク質の発現レベルの検出結果である。
図23a】本発明の実施例11に係る自殺遺伝子を持つROBO1 CAR-NK細胞を殺傷実験に用いた殺傷結果の実験図である。
図23b】本発明の実施例11においてROBO1を過剰発現するモノクローナル細胞株(HCT116-ROBO1)モデルにより測定された自殺遺伝子を持つROBO1 CAR-NK細胞を殺傷実験に用いた特異性殺傷結果の実験図である。
図23c】本発明の実施例11においてROBO1を過剰発現するモノクローナル細胞株(MDAMB-231-ROBO1)モデルにより測定された自殺遺伝子を持つROBO1 CAR-NK細胞を殺傷実験に用いた特異性殺傷結果の実験図である。
図24】本発明の実施例12においてインビトロで構築されたNK92-CD16(高親和力)エフェクター細胞により自殺遺伝子を持つROBO1-EGFRt-CAR-NK細胞中の自殺スイッチの有効性を評価する実験結果の図である。
図25】本発明の実施例12においてPBMCエフェクター細胞により自殺遺伝子を持つROBO1-EGFRt-CAR-NK細胞中の自殺スイッチの有効性を評価する実験結果の図である。 図面において、ATCG427A-2h、ATCG427A-4h、ATCG427A-24hはそれぞれAP1903でATCG427Aを2h、4h及び24h誘導処理した結果を示す。ATCG427B-1F7-2h、ATCG427B-1F7-4h、ATCG427B-1F7-24hはそれぞれAP1903でATCG427B-1F7を2h、4h及び24h誘導処理した結果を示す。ATCG427B-2D5-2h、ATCG427B-2D5-4h、ATCG427B-2D5-24hは、AP1903でATCG427B-2D5を2h、4h及び24h誘導処理した結果を示す。 T47D-2h、HCC1187-2h、MCF-2h、HepG2-2h、Huh7-2h、HCT116-2h、HCT116-Flag.ROBO1.Full-1C11-2h、HCT116-Flag.ROBO1.Full-1D11-2h、MDAMB-231-2h、MDAMB-231-Flag.ROBO1.Full-1C11-2h、MDAMB-231-Flag.ROBO1.Full-1D11-2hは、いずれも対応するがん細胞を2h誘導殺傷したがん細胞を示す。HCT116-Flag.ROBO1.Full-1C11-2h、HCT116-Flag.ROBO1.Full-1D11-2hは、それぞれROBO1を過剰発現するHCT116-ROBO1モデルの異なるクローンにより2h誘導殺傷したことを示す。MDAMB-231-Flag.ROBO1.Full-1C11-2h、MDAMB-231-Flag.ROBO1.Full-1D11-2hは、それぞれROBO1を過剰発現するMDAMB-231-ROBO1モデルの異なるクローンにより2h誘導殺傷したことを示す。
【発明を実施するための形態】
【0046】
以下、図面を参照しながら本発明の各例示的実施例を説明する。なお、特に明記しない限り、これらの実施例に記載の方法及びステップのパラメータは本発明の範囲に限定されない。
【0047】
以下、少なくとも1つの例示的実施例に対する説明は、実質的に例示的なものにすぎず、本発明及びその応用又は使用を制限するものではない。
【0048】
関連分野の通常の技術者に知られている技術、方法は詳細に論じられないことがあるが、適切な場合には明細書の一部とみなされる。
【0049】
特に明記しない限り、本明細書に記載の「NK細胞」は、末梢血NK細胞、NK92細胞及び他のNK細胞を含む。
【0050】
特に明記しない限り、本明細書に記載の「NK-92細胞」は、NK細胞と同義である。
【0051】
特に明記しない限り、本明細書に記載の「ROBO1 CAR-NK」とは、ROBO1を標的とするキメラ抗原受容体細胞、特に、ROBO1を標的とする強化されたCAR-T細胞及びCAR-NK細胞を指す。本明細書に記載の英語の名称は大文字と小文字を区別しない。例えば、ROBO1、Robo1、robo1などで表される意味は同じである。Robo1 CAR-NK、Robo1-CAR NKで表される意味は同じである。それらの具体的な製造過程は以下の実施例で後述する。
【0052】
特に明記しない限り、本明細書に記載の「ATCG427A」とは、ROBO1 CAR-NK細胞又はROBO1MCAR-NKを指す。
【0053】
特に明記しない限り、本明細書に記載の「iCaspase9」、「iCas9」とは、いずれも誘導性自殺遺伝子Caspase9を指す。
【0054】
特に明記しない限り、本明細書に記載の「ROBO1-iCaspase9 CAR-NK細胞」とは、自殺遺伝子を持つROBO1 CAR-NK細胞を指す。
【0055】
特に明記しない限り、本明細書に記載の「ATCG427B」とは、自殺遺伝子iCaspase9を持つROBO1 CAR-NK細胞、即ちROBO1-iCaspase9 CAR-NK細胞を指す。
【0056】
特に明記しない限り、本明細書に記載の「FKBP12」とは、FKBP12-F36Vを指す。
【0057】
特に明記しない限り、本明細書に記載の「CMV」とは、CMVプロモーターを指す。
【0058】
特に明記しない限り、本明細書に記載の「ATCG427E」とは、自殺遺伝子EGFRtを持つROBO1 CAR-NK細胞、即ちROBO1-EGFRt CAR-NK細胞を指す。
【0059】
特に明記しない限り、本明細書に記載の「ATCG427A-KO」とは、「Crisp Cas9遺伝子編集によりCARにおけるROBO1-scFV標的の遺伝子配列をノックアウトし、シグナル伝達配列を残したものをNK92細胞にノックインし、即ち427AにおけるCARと同様のゲノム挿入部位にROBO1標的がないCAR配列をノックインしたNK細胞を指す。
【0060】
特に明記しない限り、本明細書に記載の「NK」とは、正常ヒトNK細胞、NKT細胞又はNK細胞株を指し、NK92細胞、YT細胞、NKL細胞、HANK-1細胞、NK-YS細胞、KHYG-1細胞、SNK-6細胞及びIMC-1細胞などを含む。本発明の具体的な実施例ではNK92細胞を例として説明する。
【0061】
特に明記しない限り、本明細書に記載の「担体」は物質組成物であり、分離された核酸を含み、分離された核酸を細胞内部に送達することに使用できる。当該技術分野で知られている担体は数多くあり、線状ポリヌクレオチド、イオン又は両性分子化合物に関連するポリヌクレオチド、プラスミド及びウイルスを含むが、これらに限定されない。したがって、「担体」という用語は、自己複製可能なプラスミド又はウイルスを含む。この用語は、核酸の細胞への転移を促進する非プラスミド及び非ウイルス化合物、例えば、ポリリジン化合物、リポソームなどを含むものとしても解釈されるべきである。ウイルスベクターの例には、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、レトロウイルスベクターなどが含まれるが、これらに限定されない。
【0062】
特に明記しない限り、本明細書に記載の「抗体」は、抗体全体及び任意の抗原結合断片(即ち、抗原結合部分)又は一本鎖を含む。
【0063】
特に明記しない限り、本明細書に記載の試薬は、いずれも分析グレードの純度であり、正規ルートから購入可能である。
【0064】
実施例で使用される材料の由来
NK-92細胞(CC(登録商標)CRL-2407);乳がんBT474、T47D、HCC1187、HCC1937、MCF7、MDAMB-231、MDAMB-453、MDAMB-468、ZR-75-1;肺がん細胞A549、H1299;肝がん細胞Huh7、SMMC7721及びHEPG2;膵臓がん細胞BxPC3、PANC1、Capan-2、及びLenti-X-293T細胞;結腸直腸がん細胞HT-29、LoVo及びHCT116は、いずれも中国科学院上海生科院細胞資源センターから購入した。
【0065】
実施例1:レンチウイルスベクターの製造
ScFv(Anti ROBO1-FN3)-CD8(CD8TM)-4-1BB-CD3ζ融合遺伝子配列(そのアミノ酸配列は配列番号8に示され、遺伝子配列は配列番号10に示される)及び変異型ScFv (Anti ROBO1-FN3)-CD8(CD8TM)-4-1BB-CD3ζ融合遺伝子配列(そのアミノ酸配列は配列番号9に示され、遺伝子配列は配列番号11に示され、その変異部位GCCはGCGであってもよい)をそれぞれ合成した。ScFV(Anti ROBO1-FN3)-CD8TM-4-1BB-CD3ζ融合遺伝子を例としてROBO1 CAR-NK細胞の製造過程を説明する。変異型ScFV(Anti ROBO1-FN3)-CD8TM-4-1BB-CD3ζ融合遺伝子を用いてROBO1M CAR-NK細胞を製造する過程はそれと同じである。
【0066】
酵素消化によりScFv(Anti ROBO1-FN3)-CD8-4-1BB-CD3ζ融合遺伝子配列をpRRLSINベクターに変換結合し、遺伝子の上流はEF-1αプロモーターである。ベクターでStbl3大腸菌株を形質転換し、アンピシリンでスクリーニングし、陽性クローンを得た。プラスミドを抽出し、酵素消化してクローンを同定し、pRRLSIN-ScFv(anti ROBO1-FN3)レンチウイルストランスフェクションベクターを得た(図1)。
【0067】
実施例2:レンチウイルスの製造
(1)トランスフェクションの24時間前、約8×10個の細胞/皿でLenti-X-293T細胞を15cmペトリ皿に接種した。トランスフェクション中に細胞が約80%のコンフルエントでペトリ皿に均一に分布することを確保するようにした。
【0068】
(2)溶液A及び溶液Bの準備
溶液A:6.25ml 2×HEPES buffer緩衝液(5つの大きな皿を一緒にパッケージングした量;最も効果的である)。
【0069】
溶液Bは、以下のプラスミドをそれぞれ添加した混合物である。
112.5μg pRRLSIN-ScFv (anti ROBO1-FN3)(target plasmid);39.5μg pMD2.G(VSV-G envelop);73μg pCMVR8.74(gag,pol,tat,rev);625μl 2Mカルシウムイオン溶液。溶液Bの総体積は6.25mlであった。
【0070】
溶液Bを十分に混合し、溶液Aを軽くボルテックスしながら、溶液Bを一滴ずつ加え、AとBの混合溶液を得た後、5-15分間静置した。上記AとBの混合溶液を軽くボルテックスし、2.5ml/皿でLenti-X-293T細胞を含むペトリ皿に一滴ずつ加え、ペトリ皿を軽く前後揺動してDNAとカルシウムイオンの混合物を均一に分布させ、さらにこのペトリ皿を回転せずにインキュベーターに置いて16-18時間培養した。新鮮な培地を交換して引き続き培養し、それぞれ48時間及び72時間後にウイルスを含む上清を収集した。500g、25℃で10分間遠心分離した。PES膜(0.45μm)で濾過した。濾過したレンチウイルスを含む上清を限外ろ過遠沈管に転移した。各管における上清の体積が管容積の2/3以下であり、25000rpm、4℃で2時間遠心分離した。遠沈管を注意深く取り出し、上清を捨て、遠沈管を逆さにして残留液を除去した。100μl新鮮な培地を加え、遠沈管を密封して4℃で2時間静置し、20分間ごとに軽くボルテックスし、500gで1分間(25℃)遠心分離し、ウイルス上清を収集した。さらに収集したウイルス上清を氷上で冷却した後、-80℃で保存した。
【0071】
実施例3:ROBO1 CAR-NK細胞の製造
NK92細胞密度を(2~3)×10個/mlに調整し、ウイルス:細胞培地=1:5の体積比(V/V)で実施例2で製造されたウイルスを添加し、同時にポリブレン8μg/mlを添加した。4h後に、等量の新鮮な完全培地を補充して細胞密度を1×10個/mlに調整し、引き続き培養した。翌日、すべての細胞を遠心分離し、新鮮な培地を加え、引き続き培養した。細胞密度が(2~3)×10個/mlに維持されるように1~2ごとに培養液を補充した。72h後にCAR抗体染色を行い、フローサイトメトリーによりROBO1 CAR NK-92陽性細胞を選別して拡大培養した。培地の色の変化、細胞密度、細胞形態を毎日観察し、記録した。
【0072】
フローサイトメトリーにより選別した後、陽性ROBO1 CAR NK-92細胞をGMP工場で継続培養し、臨床使用に必要な量に増殖させた後、遠心分離及び3回の洗浄(PBS溶液)を行い、臨床治療のために、ROBO1 CAR-NK 92を生理食塩水に再懸濁させた。
【0073】
臨床治療前に、細胞品質の安全性を確保するために、薬局方に規定の検出方法に従ってROBO1 CAR-NK 92の品質を検査した。検査結果を表1に示す。
【0074】
【表1】
【0075】
フローサイトメトリーによりCAR NK-92細胞の陽性率を検出した。フローサイトメトリー検出の結果を図3a及び図3bに示す。図3a及び図3bにおいて、用いる抗体はAPC蛍光標識であり、横軸に示される。NK-92細胞がCAR分子を正常に発現した場合、信号値は顕著に高くなる。図3a及び図3bから分かるように、APC蛍光標識の信号値は顕著に高くなり、NK-92細胞がCAR分子を正常に発現したことを示しており、CAR-NK92陽性率は98.89%であった。
【0076】
図4a及び図4bは、ROBO1 CAR-NKフローサイトメトリーによりCD56分子の陽性率を検出した結果の図である。図4aは対照群、図4bは実験群である。図4a及び図4bから分かるように、CD56分子は陽性であるため、製造されたCAR-NK92細胞はCD56分子を失わず、他の形の分化が発生せず、NK細胞の基本的な特性を保存していることを示している。
【0077】
同様の方法によりROBO1M CAR-NK細胞を製造した。
実施例4:ROBO1-iCaspase9 CAR-NK細胞の製造
iCaspase9自殺遺伝子[配列番号6:ATGGGAGTGCAGGTGGAAACCATCTCCCCAGGAGACGGGCGCACCTTCCCCAAGCGCGGCCAGACCTGCGTGGTGCACTACACCGGGATGCTTGAAGATGGAAAGAAAGTTGATTCCTCCCGGGACAGAAACAAGCCCTTTAAGTTTATGCTAGGCAAGCAGGAGGTGATCCGAGGCTGGGAAGAAGGGGTTGCCCAGATGAGTGTGGGTCAGAGAGCCAAACTGACTATATCTCCAGATTATGCCTATGGTGCCACTGGGCACCCAGGCATCATCCCACCACATGCCACTCTCGTCTTCGATGTGGAGCTTCTAAAACTGGAA(FKBP12-F36V:配列番号1)TCCGGAGGAGGATCCGGAGTCGAC(Linker:配列番号3)GGATTTGGTGATGTCGGTGCTCTTGAGAGTTTGAGGGGAAATGCAGATTTGGCTTACATCCTGAGCATGGAGCCCTGTGGCCACTGCCTCATTATCAACAATGTGAACTTCTGCCGTGAGTCCGGGCTCCGCACCCGCACTGGCTCCAACATCGACTGTGAGAAGTTGCGGCGTCGCTTCTCCTCGCTGCATTTCATGGTGGAGGTGAAGGGCGACCTGACTGCCAAGAAAATGGTGCTGGCTTTGCTGGAGCTGGCGCAGCAGGACCACGGTGCTCTGGACTGCTGCGTGGTGGTCATTCTCTCTCACGGCTGTCAGGCCAGCCACCTGCAGTTCCCAGGGGCTGTCTACGGCACAGATGGATGCCCTGTGTCGGTCGAGAAGATTGTGAACATCTTCAATGGGACCAGCTGCCCCAGCCTGGGAGGGAAGCCCAAGCTCTTTTTCATCCAGGCCTGTGGTGGGGAGCAGAAAGACCATGGGTTTGAGGTGGCCTCCACTTCCCCTGAAGACGAGTCCCCTGGCAGTAACCCCGAGCCAGATGCCACCCCGTTCCAGGAAGGTTTGAGGACCTTCGACCAGCTGGACGCCATATCTAGTTTGCCCACACCCAGTGACATCTTTGTGTCCTACTCTACTTTCCCAGGTTTTGTTTCCTGGAGGGACCCCAAGAGTGGCTCCTGGTACGTTGAGACCCTGGACGACATCTTTGAGCAGTGGGCTCACTCTGAAGACCTGCAGTCCCTCCTGCTTAGGGTCGCTAATGCTGTTTCGGTGAAAGGGATTTATAAACAGATGCCTGGTTGCTTTAATTTCCTCCGGAAAAAACTTTTCTTTAAAACATCA(ΔCasepase9:配列番号2)GAATTCGGCAGTGGAGAGGGCAGAGGAAGTCTGCTAACATGCGGTGACGTCGAGGAGAATCCTGGCCCA(T2A:配列番号5)ATGCCACCTCCTCGCCTCCTCTTCTTCCTCCTCTTCCTCACCCCCATGGAAGTCAGGCCCGAGGAACCTCTAGTGGTGAAGGTGGAAGAGGGAGATAACGCTGTGCTGCAGTGCCTCAAGGGGACCTCAGATGGCCCCACTCAGCAGCTGACCTGGTCTCGGGAGTCCCCGCTTAAACCCTTCTTAAAACTCAGCCTGGGGCTGCCAGGCCTGGGAATCCACATGAGGCCCCTGGCCATCTGGCTTTTCATCTTCAACGTCTCTCAACAGATGGGGGGCTTCTACCTGTGCCAGCCGGGGCCCCCCTCTGAGAAGGCCTGGCAGCCTGGCTGGACAGTCAATGTGGAGGGCAGCGGGGAGCTGTTCCGGTGGAATGTTTCGGACCTAGGTGGCCTGGGCTGTGGCCTGAAGAACAGGTCCTCAGAGGGCCCCAGCTCCCCTTCCGGGAAGCTCATGAGCCCCAAGCTGTATGTGTGGGCCAAAGACCGCCCTGAGATCTGGGAGGGAGAGCCTCCGTGTCTCCCACCGAGGGACAGCCTGAACCAGAGCCTCAGCCAGGACCTCACCATGGCCCCTGGCTCCACACTCTGGCTGTCCTGTGGGGTACCCCCTGACTCTGTGTCCAGGGGCCCCCTCTCCTGGACCCATGTGCACCCCAAGGGGCCTAAGTCATTGCTGAGCCTAGAGCTGAAGGACGATCGCCCGGCCAGAGATATGTGGGTAATGGAGACGGGTCTGTTGTTGCCCCGGGCCACAGCTCAAGACGCTGGAAAGTATTATTGTCACCGTGGCAACCTGACCATGTCATTCCACCTGGAGATCACTGCTCGGCCAGTACTATGGCACTGGCTGCTGAGGACTGGTGGCTGGAAGGTCTCAGCTGTGACTTTGGCTTATCTGATCTTCTGCCTGTGTTCCCTTGTGGGCATTCTTCATCTTCAAAGAGCCCTGGTCCTGAGGAGGAAAAGAAAGCGAATGACTGACCCCACCAGGAGATTCTTCAAAGTGACGCCTCCCCCAGGAAGCGGGTGA(CD19:配列番号4)]を合成し、さらに、それをレンチウイルスベクターにクローニングし、iCaspase9自殺遺伝子を持つレンチウイルスプラスミドベクター(1942-3-IC9)(図2に示すように、そのヌクレオチド配列は配列番号7に示される)を得た後、3プラスミドシステム(補助プラスミドpMD2.G及びpCMVR8.74)によりウイルスをパッケージングし(ウイルスをパッケージングするヌクレオチド配列は配列番号7に示される)、そしてウイルス感染により実施例3で製造されたROBO1CAR-NK細胞(又はROBO1M CAR-NK細胞;以下の実施例に用いるのはROBO1M CAR-NK細胞である)に感染させ、さらにフローサイトメトリーによりROBO1及びiCaspase9の両方とも陽性である細胞、即ち自殺遺伝子を持つROBO1 CAR-NK細胞(ROBO1-iCaspase9 CAR-NK細胞)を選別し、スクリーニングされた細胞を培養し、培養した細胞に対してフローサイトメトリーにより自殺遺伝子を持つROBO1 CAR-NK細胞の陽性率を検出した。結果を図5に示す。図から分かるように、APC及びPE蛍光標識の信号値はいずれも顕著に高くなり、自殺遺伝子を持つROBO1 CAR-NK細胞(即ち、ROBO1-iCaspase9 CAR-NK細胞)が正常に得られた。
【0078】
さらに、培養後のROBO1-iCaspase9CAR-NK細胞のRNAを抽出し、自殺遺伝子断片をRT-PCR mRNAレベルで検出し、NK-92細胞及びROBO1 CAR-NK細胞を対照とした。結果を図6に示す。図から分かるように、自殺遺伝子を持つROBO1 CAR-NK細胞(ROBO1-iCaspase9CAR-NK細胞)はmRNAレベルで検証され得る。
【0079】
実施例5:ROBO1-iCaspase9 CAR-NK細胞のシークエンシング
実施例4で製造されたROBO1-iCaspase9CAR-NK細胞の全ゲノムをシークエンシングしてNK-92細胞ゲノムでの挿入部位を検出した。シークエンシング結果を図7に示す。PCR方法によりシークエンシング結果を検証したところ、iCaspase9遺伝子が2番染色体に挿入され、ROBO1遺伝子が10番染色体に挿入された。
【0080】
実施例6:ROBO1-iCaspase9 CAR-NK細胞の安定性スクリーニング
実施例4で構築されたROBO1-iCaspase9CAR-NK細胞を培養し、異なるクローンのROBO1-iCaspase9CAR-NK細胞をそれぞれATCG427B-1D11、ATCG427B-1E1、ATCG427B-1F5、ATCG427B-1F7、ATCG427B-1F9、ATCG427B-2C3、ATCG427B-2D5と表記し、そしてフローサイトメトリーによりこれらの細胞におけるタグ抗体Flag及びCD19の陽性率を検出し(具体的には、それぞれフローサイトメトリー用抗体Flag及びCD19により細胞を暗所で15min染色した後、PBSで2回洗浄し、検出する)、細胞安定性の指標とした。結果を図8に示す。
【0081】
異なる量のAP1903医薬品をそれぞれ実施例4で得られたROBO1-iCaspase9CAR-NK細胞(AP1903医薬品の最終濃度は0nM及び10nM)に加えて4h処理し、ROBO1-iCaspase9CAR-NK細胞のアポトーシスへの影響を検出した。結果を図9に示す。
【0082】
図8-9から分かるように、ATCG427B-1F7及び2D5は、インビトロで比較的安定で安全性が比較的高い2本のサブクローンである。
【0083】
フローサイトメトリーにより陽性率を検出した後の自殺遺伝子を持つROBO1 CAR-NK細胞から2本の最適なサブクローンを選んで実験及び連続培養を行い、また、この2本のサブクローン細胞につきシークエンシング検証を行ったところ、シークエンシング結果は正しかった。最後に、検証後のサブクローンに対してフローサイトメトリーによりそれぞれROBO1及びiCaspase 9の陽性率を検出した。結果を図10a-10bに示す。図から分かるように、ATCG427B-1F7及び2D5は、スクリーニングされた安定な2本のサブクローンである。
【0084】
実施例7:AP1903医薬品によって誘導されるROBO1-iCaspase9CAR-NK細胞アポトーシスの検出
異なる量のAP1903医薬品を実施例6でスクリーニングされた自殺遺伝子を持つROBO1 CAR-NK細胞(ATCG427B-1F7及び2D5)に加え、自殺遺伝子を持つROBO1 CAR-NK細胞(ATCG427Bと表記する)アポトーシスに対する影響を検出し、AP1903医薬品をROBO1 CAR-NK細胞に加えて対照とし、3つの実験群に分け、異なる濃度のAP1903医薬品(0nM、10nM、50nM)で細胞を2h、4h及び24h処理し、次いで細胞アポトーシスの状況を確認した。結果を図11に示す。それぞれ4h及び24h処理した後の実験群に対して新鮮な培地を交換して引き続き培養し、3日後に細胞の生存率をカウントした。結果を図12に示す。さらに、4h処理した後の0nM、10nM実験群に対して新鮮な培地を交換して24h培養した後、写真を撮った。結果を図13に示す。
【0085】
図11から分かるように、AP1903医薬品を用いてインビトロ、10nMの濃度で細胞を2h処理することで、ROBO1-iCaspase9細胞は60%のアポトーシス効率に達し、4hでは80%、24hでは95%以上に達する一方、ROBO1CAR-NK細胞はほとんどアポトーシスしなかった。
【0086】
図12から分かるように、AP1903医薬品で処理した後、ROBO1CAR-NK細胞の生存率は80%以上である一方、本発明のROBO1-iCaspase9 CAR-NK細胞はほとんど全部アポトーシスした。
【0087】
図13から分かるように、10nMのAP1903医薬品で処理した後、24h観察したところ、細胞はほとんどアポトーシスした。
【0088】
上記結果より、AP1903医薬品は、24時間内でROBO1-iCaspase9CAR-NK細胞を効果的に殺傷できるが、ROBO1CAR-NK細胞に対して作用しない。これは、ROBO1-iCaspase9CAR-NK細胞をがんの治療に使用すると、AP1903医薬品の誘導によって細胞はアポトーシスし、これによって、CAR-NK細胞をより良好に制御でき、臨床上の安全性を高めることができることを示している。
【0089】
実施例8:異なる乳がん細胞株におけるROBO1発現の検出
異なる乳がん細胞BT474、T47D、HCC1187、HH1937、HCC38、MCF7、MDAMB-231、MDAMB-453、MDAMB-468及びZR-75-1を培養した後、Western Blotにより異なる乳がん細胞におけるROBO1の発現状況を検出した。結果を図14aに示す。ImageJソフトウェアによりWestern Blotで測定したROBO1の光学密度と対照GAPDHの光学密度との比を分析した。結果を図14bに示す。
【0090】
結果から分かるように、異なる乳がん細胞株でのROBO1の発現が異なり、T47Dでの発現量が最も高い。
【0091】
実施例9:ROBO1-iCaspase9 CAR-NK細胞殺傷試験
1.乳がん細胞に対する自殺遺伝子を持つROBO1 CAR-NK細胞の殺傷
CFSE染色方法(A Mathematical Model of Natural Killer Cell Activity, Anna Scherbakova,1,2 Helen Lust,1,2 Hele Everaus,1,2,3 Alar Aints1,2,4*を参照)により、実施例5でスクリーニングされた自殺遺伝子を持つROBO1 CAR-NK細胞(ATCG427B-1F7、ATCG427B-2D5)の殺傷効果を検出し、ROBO1 CAR-NK及びNK-92細胞を対照とした。異なる乳がん細胞には、BT474、T47D、HCC1187、HCC1937、MCF7、MDAMB-231、MDAMB-453、MDAMB-468及びZR-75-1が含まれる。
【0092】
実験の操作方法
(1)標的細胞を事前に処理し、1×10個の細胞/1μlでCFSEを加え、暗所でインキュベーターで15minインキュベートし、10%のBSAで停止させ、PBSで2回洗浄し、24ウェルプレートに調製された500μl腫瘍細胞懸濁液(8×10個の細胞/ウェル)を加えた。培養プレートをインキュベーターで12h前培養した。
(2)エフェクター細胞と標的細胞との比が0.5:1及び1:1であるように500μlのエフェクター細胞を加え、各実験につき3重測定し、エフェクター細胞と標的細胞を2時間インキュベートした。
(3)2時間後、上清を1.5のEP管に移し、各ウェルに200μlのパンクレアチンを加え、1min消化した後、移された上清を用いて細胞をピペッティングし、遠心分離し、PBSで再懸濁させ、1ulの7-AADを加え、暗所で15minインキュベートした後、検出した。
(4)殺傷率=(標的細胞の殺傷率-自発的死亡率)/(1-自発的死亡率)100%;
【0093】
結果を図15に示す。図から分かるように、異なるがん細胞のインビトロ殺傷効果は異なり、ROBO1発現量が高い細胞、例えば、T47D細胞の殺傷効果は比較的高く、ROBO1不発現細胞、例えば、HCC1937の殺傷効果は比較的低かった。MDAMB-231にROBO1が発現されたが、殺傷効果は比較的低かった。その理由は、(1)MDAMB-231自体が発現するROBO1タンパク質が比較的低く;(2)MDAMB-231細胞においてPDL1分子が高発現され、殺傷過程においてPD1-PD-L1信号経路がエフェクター細胞の殺傷を抑制し、(3)MDAMB-231自体においてMICA/Bがほとんど発現されず、NK細胞の殺傷作用の一部が活性化受容体、例えば、NKG2DとリガンドMICA/Bとの結合に依存するため、MICA/Bの不発現もMDAMB-231細胞に対する殺傷を低減させることであると考えられる。また、エフェクター細胞のMDAMB-231に対する殺傷は他の免疫メカニズムにより制御される可能性もある。つまり、ROBO1-iCaspase9CAR-NK細胞のMDAMB-231細胞に対する殺傷の制御メカニズムについては、さらに検証される余地がある。
【0094】
上記実験の結果から分かるように、本発明の自殺遺伝子を持つROBO1 CAR-NK細胞は殺傷に適用され、その特異的殺傷効果は、ROBO1発現レベルと正の相関関係を示す。
【0095】
2.異なるがん細胞に対する自殺遺伝子を持つROBO1 CAR-NK細胞殺傷
上記1と同じ方法により他の種類の腫瘍細胞を2h殺傷し、実施例5でスクリーニングされた自殺遺伝子を持つROBO1 CAR-NK細胞(ATCG427B-1F7、ATCG427B-2D5)の異なる腫瘍細胞に対する殺傷効果を検出した。異なる腫瘍細胞には、肺がん細胞A549、H1299;肝がん細胞Huh7、SMMC7721;膵臓がん細胞BxPC3、PANC1、Capan-2が含まれる。培養した後、殺傷を行った。結果を図16a-cに示す。図から分かるように、ROBO1-iCaspase9細胞の肺がん及び肝臓がんに対する殺傷効果は比較的良好である。
【0096】
3.正常乳腺細胞及びPBMCに対する自殺遺伝子を持つROBO1 CAR-NK細胞の殺傷
健常者を3名ランダムに選択し、それぞれ50ml新鮮な血液を採取し、PBSを用いて1:1で希釈し、新しい遠沈管を取り、Ficoll(リンパ球分離液)を入れ、管を45度傾斜し、希釈した血液をFicoll:血液=2:1でFicoll液面の上方にゆっくりと加え、2000rpmで30min遠心分離した後、ピペットを雲層に直接挿入し、雲層(即ち、単一の核細胞層)を吸い出し、新しい遠沈管に入れ、洗浄して上清を捨て、1mlのRPMI-1640培地を加え、ピペッティングして均一に混合することにより、PBMC細胞懸濁液を製造し、それをそれぞれPBMC-1、PBMC-2、PBMC-3とし、正常乳腺細胞及びPBMCにおけるROBO1の発現状況を検出した。結果を図17aに示す。上記1と同じ方法により、ROBO1-iCaspase9細胞の正常乳腺細胞PBMC-1、PBMC-2、PBMC-3及びMDA-kb2に対する殺傷効率を検出し、殺傷過程においてPBMC-1、PBMC-2、PBMC-3及びMDA-kb2細胞に対するNK92とROBO1 CAR-NKの殺傷率を比較した。結果を図17bに示す。図から分かるように、ROBO1-iCaspase9CAR-NK細胞は、インビトロで正常乳腺及びPBMCに対する殺傷が顕著ではないことで、自殺遺伝子を持つROBO1 CAR-NK細胞医薬品の安全性がさらに証明されている。
【0097】
4.自殺遺伝子を持つROBO1 CAR-NK細胞に対するPBMCの殺傷
ROBO1 CAR-NK細胞が異体細胞として人体に注入された後、体内のPBMC免疫細胞は、異体由来細胞に対して殺傷効果を発揮する可能性がある。ROBO1 CAR-NK細胞がPBMCによって除去されるか否かを検証するために、インビトロで、健常者を3名ランダムに選択し、採血し、分離してPBMC細胞を製造し(製造方法は上記方法と同じ)、それぞれPBMC-4、PBMC-5、PBMC-6と表記し、上記1と同じ方法によりROBO1-iCaspase9CAR-NK細胞に対するPBMC-4、PBMC-5、PBMC-6の殺傷を検出し、各群の実験においてNK92及びROBO1 CAR-NK細胞に対するPBMCの殺傷を比較した。結果を図18に示す。図18から分かるように、PBMCはインビトロでROBO1-iCaspase9細胞に対する殺傷が顕著ではなく、これによって、自殺遺伝子を持つROBO1 CAR-NK細胞医薬品は、インビボで特異的殺傷作用をより良好に発揮できることがさらに証明されている。
【0098】
上記の実験結果より、本発明のROBO1-iCaspase9 CAR-NK細胞の殺傷効果は、ROBO1 CAR-NK細胞の殺傷効果と相当し、腫瘍細胞を効果的に殺傷でき、CAR-T細胞よりも毒性が小さく、殺傷効果が高いとともに、自殺遺伝子(iCaspase9スイッチ素子)が増加したため、安全性がさらに向上する。さらに、実験によりこの細胞は正常細胞を殺傷することがなく、正常細胞はこの細胞を殺傷することもないことが証明され、ROBO1-iCaspase9 CAR-NK細胞の安全性がさらに証明されている。
【0099】
実施例10:ROBO1-EGFRt-CAR-NK細胞の製造及びモノクローナル細胞株のスクリーニング
を合成した(配列番号12;最初と最後の斜体で下線付きの部分は酵素切断部位である)(その簡略化構造を図20に示す)。さらにそれをレンチウイルスベクターへクローニングし、図19に示されるレンチウイルスベクター(1942-3-hEGFRtと呼ばれる)(そのヌクレオチド配列は配列番号13に示される)を得た。さらに3プラスミドシステム(補助プラスミドpMD2.G及びpCMVR8.74)によりウイルスをパッケージングし、そしてウイルス感染により実施例3で製造されたROBO1CAR-NK細胞(又はROBO1M CAR-NK細胞;以下の実施例に用いるのはROBO1M CAR-NK細胞)に感染させ、次いでフローサイトメトリーによりROBO1とEGFRtが共に陽性である細胞、即ち自殺遺伝子を持つROBO1 CAR-NK細胞(ROBO1-EGFRt CAR-NK細胞;427Eとも呼ばれる)を選別し、スクリーニングされた細胞をモノクローナルスクリーニングして培養し、その後、培養した細胞をフローサイトメトリーにより自殺遺伝子を持つROBO1 CAR-NK細胞の陽性率を検出した。結果を図21a-bに示す。図から分かるように、APC及びPE蛍光標識の信号値はいずれも顕著に高くなり、2つの自殺遺伝子を持つROBO1 CAR-NKモノクローナル細胞(ROBO1-EGFRt CAR-NK細胞、即ち427E)が正常にスクリーニングにされ、それぞれROBO1-EGFRt-3C10-2D10及びROBO1-EGFRt-3C10-1F11(それぞれ427E-3C10-2D10及び427E-3C10-1F11とも呼ばれる)と表記した。この2つのモノクローナル細胞のマザークローンはROBO1-EGFRt-3C10(427E-3C10)である。
【0100】
実施例11:ROBO1-EGFRt-CAR-NK細胞の殺傷実験
実施例10で製造されたモノクローナル細胞株及び上記2つのモノクローナル細胞株のマザークローンに対して腫瘍特異的殺傷の実験を行った。実験過程は以下の通りである。まず、Westernにより乳がん細胞以外の他の異なる種類のがん細胞におけるROBO1タンパク質の発現レベルを検出し、具体的には、異なるがん細胞株を収集し、総タンパク質を抽出して分解し、BCAキットを用いて総タンパク質を定量し、次いでSDS-PAGEゲルによりROBO1タンパク質に対して電気泳動、転写膜を行い、最後に現象してROBO1タンパク質を検出した。一部の乳がん細胞におけるROBO1の発現状況を図14aに示す。結腸直腸がん(例えば、HT-29、LoVo及びHCT116)、肝臓がん(例えば、SMMC7721、Huh7及びHEPG2)の検出結果を図22に示す。結果により、異なる種類のがん細胞におけるROBO1タンパク質の発現には確かに明らかな違いがあることが示されている。
【0101】
T47D、HCC1187、MCF7、HepG2及びHuh7を含む異なるがん細胞を取って培養すると同時に、ROBO1-EGFRt-3C10、ROBO1-EGFRt-3C10-2D10及びROBO1-EGFRt-3C10-1F11を培養し、それぞれエフェクター/標的=0.5:1及び1:1でインビトロで2時間殺傷し、NK92及び427Aを対照群として添加した。HCC1187、MCF7、HepG2の殺傷実験には427A-KO実験群がさらに追加された(427A-KOについては、Crisp Cas9遺伝子編集によりCARにおけるROBO1-scFV標的の遺伝子配列をノックアウトし、他のシグナル伝達配列を残したものをNK92細胞にノックインし、即ち、427AにおけるCARと同様のゲノム挿入部位にROBO1標的のCAR配列がないNK細胞をノックインした)。中国検験検疫科学研究院「免疫細胞治療剤のインビトロ殺傷効果評価方法についての分析及び研究」により、RTCA Systemsリアルタイム細胞分析システムは新しいタイプの細胞検出システム(ACEA)である。結果を図23aに示す。殺傷分析から分かるように、ROBO1-EGFRt-CAR-NK細胞は、高い殺傷効果を示し、固形腫瘍に対する殺傷効果が顕著であり、この細胞の特異的殺傷効果はROBO1の発現レンベルと正の相関を示す。これによって、ROBO1-EGFRt CAR-NK細胞医薬品の有効性が証明されている。
【0102】
ROBO1 CARの特異性を証明するために、インビトロでROBO1を過剰発現するモノクローナル細胞株(HCT116-ROBO1)モデルも構築し、HCT116を対照として使用し、上記方法により殺傷実験を行った。結果を図23bに示す。図から分かるように、野生型HCT116では、427E殺傷はNK92殺傷よりも強くなり、427A-KOはROBO1標的がノックアウトされた後、NK92、427Aと違いがないが、ROBO1を過剰発現するHCT116モノクローナル細胞株において、427A-KOは427A及びEよりも殺傷が顕著に低くなるとともに、427Eは過剰発現HCT116細胞株における殺傷も野生型HCT116の殺傷活性よりも顕著に高くなった。これによって、本発明のROBO1-EGFRt-CAR-NK細胞におけるROBO1の標的性及び特異性が効果的に証明されている。
【0103】
さらに、同様の方法によりROBO1を過剰発現するモノクローナル細胞株(MDAMB-231-ROBO1)モデルを構築し、MDAMB-231を対照群とし、上記方法により殺傷実験を行った。結果を図23cに示す。MDAMB-231の対照群に比べ、ROBO1を過剰発現するモノクローナル細胞株(MDAMB-231-ROBO1)モデルの殺傷活性及び特異性は顕著に高くなった。
【0104】
実施例12:ROBO1-EGFRt-CAR-NK細胞の安全性実験
安全性研究は、自殺スイッチインデューサー(セツキシマブ)に対する殺傷/エフェクター細胞の存在でのROBO1-EGFRt CAR-NK細胞の感度を研究するものである。インデューサーであるセツキシマブによりROBO1-EGFRt CAR-NK細胞(実施例10で製造されたモノクローナル細胞株及びこの2つのモノクローナル細胞株のマザークローン)のアポトーシスを誘導し、インビトロで構築されたNK92-CD16(高親和力)エフェクター細胞を添加して自殺スイッチの有効性を評価した。それぞれエフェクター細胞の作用濃度、エフェクター/標的比、作用時間、作用システムなどについて考察した結果、インデューサーであるセツキシマブの最適化作用条件は、インビトロ、作用時間4時間、作用濃度1μg/ml、NK92-CD16(高親和力)、ROBO1-EGFRt CAR-NK細胞のエフェクター/標的比25:1(E:T)であった。検出方法は、CFSE(A Mathematical Model of Natural Killer Cell Activity, Anna Scherbakova,1,2 Helen Lust,1,2 Hele Everaus,1,2,3 Alar Aints1,2,4*を参照)を採用し、7-AAD/CFSE二重染色により細胞アポトーシス効率を検出した。具体的には、構築されたNK92-CD16エフェクター細胞を事前にCFSEで標識し、そしてエフェクター/標的比でROBO1-EGFR CAR-NK及びNK92-CD16細胞をプレートに敷いた後、それぞれ作用濃度が0、1及び10μg/mlのセツキシマブを加え、4時間作用した後、7-AADにより10min染色し、そしてフローサイトメーターにより検出した(実験を並行して3回繰り返した)。検出結果を図24に示す。結果から分かるように、スクリーニングされたサブクローン細胞株において、セツキシマブによって誘導されたアポトーシス効率は40%~50%であった。
【0105】
インビボでのADCCのメカニズムをよりよくシミュレートし、自殺スイッチの有効性をより正確に評価するために、インビトロで2名の健常者から末梢血を採取してPBMCを単離し、それぞれPBMC-ZF及びPBMC-CQと表記した。上記実験の方法及び条件に従って、PBMC-ZF及びPBMC-CQをNK92/427A/427E細胞株と共にインキュベートし、セツキシマブ(作用濃度は、それぞれ0、1及び10μg/mlである)を加え、エフェクター/標的比25:1で4時間作用した後、フローサイトメトリーを用いてセツキシマブの作用下で427E細胞株がPBMCにより殺傷される効率を検出した(図25)。結果から分かるように、同じエフェクター/標的比及び作用濃度下で、異なるヒトのPBMCは細胞殺傷を誘導する効率が異なるが、これは、人によって免疫細胞の成分と機能が異なるためである。しかし、427Eは、427A、NK92細胞に比べ、細胞殺傷の誘導効率は顕著に高くなった。全体として、PBMCをエフェクター細胞(エフェクター/標的比25:1)とする場合、ATCG427E-3C10-1F11及びATCG427E-3C10-2D10がセツキシマブ(作用濃度1μg/ml)によって誘導されたアポトーシス効率は30%~40%であり、NK92-CD16をエフェクター細胞とする場合での誘導されたアポトーシス効率よりもやや低く、これも先行文献及び特許文献に記載のデートと一致し、本発明の作用効果はより顕著である。
【0106】
以上のことから、インビトロでのADCC作用効果に対する評価から分かるように、NK92-CD16又はPBMCを殺傷/エフェクター細胞とするにもかかわらず、427Eはセツキシマブによって効果的に誘導されて自殺スイッチ素子をオンにし、細胞アポトーシスを引き起こし、細胞の制御可能性を向上させることができる。
【0107】
上記実験結果から分かるように、まず、本発明のROBO1-iCaspase9 CAR-NK及びROBO1-EGFRt CAR-NK細胞の殺傷効果は、ROBO1 CAR-NK細胞の殺傷効果に相当し、NK92細胞に比べ、特異的殺傷効果は顕著に強くなり、効果的に腫瘍細胞を標的として殺傷することができ、また、CAR-NK細胞は、CAR-T細胞に比べて毒性が小さく、作用時間が短く、殺傷効果が速く、最後に、本発明のCAR-NK細胞には自殺遺伝子(例えば、iCaspase9又はEGFRt誘導性自殺スイッチ素子)が追加されているため、CAR-NK細胞の安全性及び制御可能性をさらに向上でき、これによって、臨床使用はより安全で制御されやすくなる。
【0108】
本発明の説明は、例示及び説明のために与えられるものであり、漏れなく、又は開示された形態に本発明を限定するものではない。多くの修正及び変化は、当業者にとって自明なものである。実施例を選択及び説明することは、本発明の原理及び実際の適用をよりよく説明し、本発明を当業者に理解させるために特定の目的に適した様々な変形を伴う様々な実施例を設計するためである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10a
図10b
図11
図12
図13
図14a
図14b
図15
図16
図17a
図17b
図18
図19
図20
図21a
図21b
図22
図23a
図23b
図23c
図24
図25
【配列表】
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