(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-20
(45)【発行日】2023-09-28
(54)【発明の名称】ボンディング装置及びボンディングヘッド調整方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/60 20060101AFI20230921BHJP
H01L 21/52 20060101ALI20230921BHJP
【FI】
H01L21/60 311T
H01L21/52 F
(21)【出願番号】P 2022524396
(86)(22)【出願日】2021-05-11
(86)【国際出願番号】 JP2021017854
(87)【国際公開番号】W WO2021235269
(87)【国際公開日】2021-11-25
【審査請求日】2022-07-01
(31)【優先権主張番号】P 2020087251
(32)【優先日】2020-05-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】519294332
【氏名又は名称】株式会社新川
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100170818
【氏名又は名称】小松 秀輝
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンダー ジャンギーロフ
(72)【発明者】
【氏名】野口 勇一郎
【審査官】今井 聖和
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-027728(JP,A)
【文献】特開2012-094912(JP,A)
【文献】特開2002-359263(JP,A)
【文献】国際公開第2015/107715(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2010/0122456(US,A1)
【文献】特開2006-253384(JP,A)
【文献】特開2010-245370(JP,A)
【文献】特開2014-168089(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/60
H01L 21/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板が載置される載置面を有するステージと、
チップ部品を吸着保持するチップ保持面と、前記チップ保持面の傾きを調整する調整手段を有し、前記ステージに載置された前記基板に対して前記チップ部品を配置するボンディングヘッドと、
前記載置面における位置と、前記位置における傾きとを関連付けた前記ステージの傾き情報を保持する情報保持部と、
前記チップ保持面が押し付けられる倣い面を有し、前記チップ保持面の傾きが前記傾き情報に示される傾きに対応するように前記倣い面の傾きを変更可能な倣い治具と、を備える、ボンディング装置。
【請求項2】
前記倣い治具は、前記倣い面を含み、前記倣い面から受ける力によって前記倣い面が受動的に傾く受動傾斜部を有し、
前記情報保持部から前記傾き情報を取得し、前記チップ保持面が前記倣い面に押し付けられたときに、前記位置における傾きに基づいて前記チップ保持面が前記倣い面に与える力を制御する制御部をさらに備える、請求項1に記載のボンディング装置。
【請求項3】
前記受動傾斜部は、前記倣い面を含む板部材と、前記板部材において前記倣い面とは逆側の面に設けられた弾性変形部と、を含み、
前記弾性変形部は、樹脂材料である、請求項2に記載のボンディング装置。
【請求項4】
前記受動傾斜部は、前記倣い面を含む板部材と、前記板部材において前記倣い面とは逆側の面に設けられた弾性変形部と、を含み、
前記弾性変形部は、金属製のバネである、請求項2に記載のボンディング装置。
【請求項5】
前記倣い治具は、前記倣い面を含み、前記倣い面から受ける力によらず前記倣い面が能動的に傾く能動傾斜部を有し、
前記能動傾斜部は、前記倣い面を含む板部材と、前記板部材において前記倣い面とは逆側の面に設けられて前記板部材の傾きを能動的に制御する板部材駆動部と、を有し、
前記板部材駆動部は、前記倣い面の傾きが前記情報保持部から提供される前記傾き情報に示される傾きに対応するように、前記板部材を傾ける、請求項1に記載のボンディング装置。
【請求項6】
基板が載置される載置面を有するステージの載置面に載置された基板に対して、チップ部品を配置するボンディングヘッドが有する前記チップ部品を吸着保持するチップ保持面の傾きを調整するボンディングヘッド調整方法であって、
前記載置面における位置と、前記位置における傾きとを関連付けた傾き情報を得る第1工程と、
前記チップ部品が配置される前記基板の位置に対応する前記載置面における位置に関連付けられた前記傾き情報に基づいて、前記チップ保持面の傾きを調整する第2工程と、を有し、
前記第2工程は、前記チップ保持面の押し付けに応じて受動的に倣い面の傾きが生じる倣い治具を用いて、前記チップ保持面の傾きを調整する
、ボンディングヘッド調整方法。
【請求項7】
基板が載置される載置面を有するステージの載置面に載置された基板に対して、チップ部品を配置するボンディングヘッドが有する前記チップ部品を吸着保持するチップ保持面の傾きを調整するボンディングヘッド調整方法であって、
前記載置面における位置と、前記位置における傾きとを関連付けた傾き情報を得る第1工程と、
前記チップ部品が配置される前記基板の位置に対応する前記載置面における位置に関連付けられた前記傾き情報に基づいて、前記チップ保持面の傾きを調整する第2工程と、を有し、
前記第2工程は、前記チップ保持面の押し付けによらず能動的に倣い面の傾きを生じさせる倣い治具を用いて、前記チップ保持面の傾きを調整する
、ボンディングヘッド調整方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボンディング装置及びボンディングヘッド調整方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、フリップチップ実装方法を開示する。特許文献1の実装方法は、半導体チップを回路基板に実装するときに用いられる。半導体チップの取り扱いには、吸着ツールを用いる。まず、吸着ツールを用いて、支持具に配置された半導体チップをピックアップする。次に、吸着ツールは、半導体チップを保持した状態で回路基板が載置されているボンディングステージまで移動する。そして、吸着ツールは、半導体チップが回路基板の所望の位置に配置されるように、移動する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
回路基板に半導体チップを配置するときには、目標位置に対して所望の位置精度をもって半導体チップが配置されるように、吸着ツールを移動させる。半導体チップを配置するとき、回路基板に対する半導体チップの姿勢も重要である。回路基板に対する半導体チップの姿勢とは、半導体チップが実装される回路基板の面に対する半導体チップの傾きをいう。
【0005】
例えば、回路基板に対面する半導体チップの接合面が、回路基板の実装面に対して平行であるように配置することが要求されることがある。半導体チップが実装面に対して傾いていると、半導体チップが実装上の不良を生じる。例えば、半導体チップのバンプ電極と回路基板の電極パッドとの間で、電気的な接合の不良が生じる可能性がある。実装面に対する半導体チップの傾きが大きい場合には、半導体チップの一部が回路基板に接触することもあり得る。半導体チップの一部が回路基板に接触した場合には、半導体チップが物理的なダメージを受けることもあり得る。実装上の不良が生じると、ダイボンド作業における歩留まりが低下する。
【0006】
本発明は、ダイボンド作業の歩留まりを向上可能なボンディング装置及びボンディングヘッド調整方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一形態であるボンディング装置は、基板が載置される載置面を有するステージと、チップ部品を吸着保持するチップ保持面と、チップ保持面の傾きを調整する調整手段を有し、ステージに載置された基板に対してチップ部品を配置するボンディングヘッドと、載置面における位置と、当該位置における傾きとを関連付けたステージの傾き情報を保持する情報保持部と、チップ保持面が押し付けられる倣い面を有し、チップ保持面の傾きが傾き情報に示される傾きに対応するように倣い面の傾きを変更可能な倣い治具と、を備える。
【0008】
ボンディング装置によれば、ステージに基板が載置された状態であっても、情報保持部がステージの傾き情報を有している。その結果、ボンディングヘッドの傾きをチップ部品が配置される場所の傾きに応じて調整することができる。従って、ダイボンド作業の歩留まりを向上することができる。
【0009】
一形態において、倣い治具は、倣い面を含み、倣い面から受ける力によって倣い面が受動的に傾く受動傾斜部を有してもよい。一形態のボンディング装置は、情報保持部から傾き情報を取得し、チップ保持面が倣い面に押し付けられたときに、当該位置における傾きに基づいてチップ保持面が倣い面に与える力を制御する制御部をさらに備えてもよい。この構成によれば、倣い治具の構成を簡易にすることができる。
【0010】
一形態において、受動傾斜部は、倣い面を含む板部材と、板部材において倣い面とは逆側の面に設けられた弾性変形部と、を含んでもよい。弾性変形部は、樹脂材料であってもよい。この構成によっても、倣い治具の構成を簡易にすることができる。
【0011】
一形態において、受動傾斜部は、倣い面を含む板部材と、板部材において倣い面とは逆側の面に設けられた弾性変形部と、を含んでもよい。弾性変形部は、金属製のバネであってもよい。この構成によっても、倣い治具の構成を簡易にすることができる。
【0012】
一形態において倣い治具は、倣い面を含み、倣い面から受ける力によらず倣い面が能動的に傾く能動傾斜部を有してもよい。能動傾斜部は、倣い面を含む板部材と、板部材において倣い面とは逆側の面に設けられて板部材の傾きを能動的に制御する板部材駆動部と、を有してもよい。板部材駆動部は、倣い面の傾きが情報保持部から提供される傾き情報に示される傾きに対応するように、板部材を傾けてもよい。この構成によれば、倣い面を傾き情報が示すように確実に傾けることができる。
【0013】
本発明の別の形態は、基板が載置される載置面を有するステージの載置面に載置された基板に対してチップ部品を配置するボンディングヘッドが有するチップ部品を吸着保持するチップ保持面の傾きを調整するボンディングヘッド調整方法である。ボンディングヘッド調整方法は、載置面における位置と、当該位置における傾きとを関連付けた傾き情報を得る第1工程と、チップ部品が配置される基板の位置に対応する載置面における位置に関連付けられた傾き情報に基づいて、チップ保持面の傾きを調整する第2工程と、を有する。ボンディングヘッド調整方法によれば、ステージに基板が載置された状態であっても、情報保持部がステージ主面の傾き情報を有している。その結果、ボンディングヘッドの傾きをチップ部品が配置される場所の傾きに応じて調整することができる。従って、ダイボンド作業の歩留まりを向上することができる。
【0014】
別の形態において、第2工程は、チップ保持面の押し付けに応じて受動的に倣い面の傾きが生じる倣い治具を用いて、チップ保持面の傾きを調整してもよい。この方法によっても、ボンディングヘッドの傾きをチップ部品が配置される場所の傾きに応じて調整することができる。
【0015】
別の形態において、第2工程は、チップ保持面の押し付けによらず能動的に倣い面の傾きを生じさせる倣い治具を用いて、チップ保持面の傾きを調整してもよい。この方法によっても、ボンディングヘッドの傾きをチップ部品が配置される場所の傾きに応じて調整することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、ダイボンド作業の歩留まりを向上可能なボンディング装置及びボンディングヘッド調整方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1は、ボンディング装置及びボンディングヘッド調整方法が適用されるボンディング動作の様子を示す概略図である。
【
図2】
図2は、ボンディング装置の構成を示す図である。
【
図3】
図3(a)は弾性変形部が有する位置と傾きとの関係を示す図である。
図3(b)は弾性変形部が有する加重と傾きとの関係を示す図である。
図3(c)は弾性変形部における剛性と傾きとの関係を示す図である。
【
図4】
図4(a)はボンディング作業の一工程を示す図である。
図4(b)はボンディング作業における
図4(a)に続く工程を示す図である。
図4(c)はボンディング作業における
図4(b)に続く工程を示す図である。
【
図5】
図5(a)はボンディングヘッド調整作業における工程を示す図である。
図5(b)はボンディングヘッド調整作業における
図5(a)に続く工程を示す図である。
【
図6】
図6(a)はボンディングヘッド調整作業における
図5(b)に続く工程を示す図である。
図6(b)はボンディングヘッド調整作業における
図6(a)に続く工程を示す図である。
【
図7】
図7(a)はボンディングヘッド調整作業に続くボンディング作業の一工程を示す図である。
図7(b)はボンディング作業における
図7(a)に続く工程を示す図である。
【
図8】
図8(a)はボンディング作業における
図7(b)に続く工程を示す図である。
図8(b)はボンディング作業における
図8(a)に続く工程を示す図である。
【
図9】
図9は、変形例1のボンディング装置の構成を示す図である。
【
図10】
図10は、変形例2のボンディング装置の構成を示す図である。
【
図11】
図11(a)はボンディングヘッド調整作業における工程を示す図である。
図11(b)はボンディングヘッド調整作業における
図11(a)に続く工程を示す図である。
【
図12】
図12(a)はボンディングヘッド調整作業における
図11(b)に続く工程を示す図である。
図12(b)はボンディングヘッド調整作業における
図12(a)に続く工程を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付図面を参照しながら本発明を実施するための形態を詳細に説明する。図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0019】
図1に示すように、ボンディング装置1は、基板201にチップ部品202を接合する。この接合は、機械的な接合及び電気的な接合の意味を含む。チップ部品202は、例えば、半導体ウェハが個片化されることによって得られる半導体チップである。チップ部品202は、その他のパッケージ化された電子部品などであってもよい。チップ部品202は、チップステージ203に複数載置されている。基板201は、例えば配線パターン及び電極パッドが形成された回路基板である。基板201は、基板ステージ204に載置されている。チップ部品202が備えるバンプ電極は、基板201の電極パッドに接合される。ボンディング装置1のボンディングヘッド200は、チップステージ203上に移動する。続いて、ボンディングヘッド200は、チップステージ203に近づくように下降する。続いて、ボンディングヘッド200は、チップ部品202を保持する。続いて、チップ部品202を保持したボンディングヘッド200は、基板201上に移動する。続いて、ボンディングヘッド200は、基板201の所定の位置にチップ部品202を載置する。そして、ボンディングヘッド200は、チップ部品202を基板201に接合するために必要な処理を行う。例えば、ボンディングヘッド200は、機械的な接合に要する接着剤を熱硬化させるために、チップ部品202に熱を加える。
【0020】
チップ部品202を基板201に配置するとき、基板201に対するチップ部品202の姿勢が重要である。基板201に対するチップ部品202の姿勢とは、例えば、チップ部品202が実装される基板201の実装面201aに対する、チップ部品202のチップ接合面202aの傾きである。理想的には、チップ接合面202aは、実装面201aに平行であることが望ましい。例えば、チップ部品202の接合のために、ボンディング装置1のボンディングヘッド200がチップ部品202を基板201に向けて押圧することがある。チップ接合面202aが実装面201aに平行であると、押圧力の分布に偏りが生じない。チップ接合面202aが実装面201aに平行である場合には、チップ部品202と基板201との間に配置される接着剤に対して均一に熱を与えることもできる。チップ接合面202aが実装面201aに対して傾いている場合には、押圧力の分布及び熱の分布に偏りが生じる可能性がある。チップ接合面202aが実装面201aに対して極端に傾いている場合には、チップ部品202の一部が基板201に接触することもあり得る。
【0021】
従って、基板201に対するチップ部品202の姿勢の制御が重要である。本実施形態のボンディング装置及びボンディングヘッド調整方法は、基板201に対するチップ部品202の姿勢を良好に設定するものである。
【0022】
ボンディング装置1について、簡単に説明する。ボンディング装置1は、主要な構成要素として、ボンディングヘッド200と、基板ステージ204(ステージ)と、調整コントローラ20(情報保持部)と、倣い治具10と、を有する。
【0023】
ボンディングヘッド200は、チップ保持部101と、傾き調整機構102(調整手段)と、を有する。チップ保持部101は、チップ保持面101aを有する。チップ保持部101は、チップ保持面101aにチップ部品202を着脱可能に保持する。例えば、チップ部品202の保持には、真空吸着機構などを用いてよい。チップ保持部101は、傾き調整機構102に取り付けられている。傾き調整機構102は、基準軸に対するチップ保持部101の傾きを変更する。傾き調整機構102は、チップ保持部101の傾きを維持する。傾き調整機構102は、球面空気圧軸受を含む。傾き調整機構102は、軸受を構成する可動部102aを自在に傾けることができる。従って、傾き調整機構102は、チップ保持部101を任意の傾きに設定できる。可動部102aの位置は、例えば、真空吸着によって保持される。傾き調整機構102は、アクチュエータ103に取り付けられている。アクチュエータ103は、傾き調整機構102及びチップ保持部101を三軸方向に移動させる。以下の説明では、基板201等に対して近づく又は離れる方向をZ方向とする。Z方向に直交する方向をX方向とする。アクチュエータ103は、メインコントローラ104(制御部)が提供する制御信号φ1に基づいて動作する。
【0024】
図2に示すように、チップ保持部101が倣い治具10に押し付けられると、倣い治具10は、当該押圧力に応じて変形する。この変形は、倣い治具10の傾きを生じる。傾きは、偏差Dと、押圧力Fの大きさによって制御できる。偏差Dとは、倣い治具10の治具基準軸A1から傾き調整機構102のステージ基準軸A2までの距離である。倣い治具10は、任意の傾きを生じさせることが可能である。従って、この傾きにチップ保持部101を倣わせることにより、チップ保持部101を任意の傾きに調整することができる。この倣いと傾きの保持とは、傾き調整機構102によって実現される。
【0025】
倣い治具10は、受動傾斜部11と、ベース12と、を有する。受動傾斜部11は、板部材13と、弾性変形部14と、を有する。板部材13は、平板である。板部材13は、チップ保持部101の押圧によって有意な変形を生じない程度の剛性を有する。板部材13は、倣い面13aを有する。倣い面13aには、チップ保持面101aが押し付けられる。倣い面13aの大きさは、チップ保持面101aより大きくてもよい。弾性変形部14は、板部材13とベース12とに挟まれている。弾性変形部14は、押圧力Fに対して有意な変形を生じる。弾性変形部14の剛性は、板部材13の剛性よりも低い。ここでいう剛性は、変形のしやすさを示す度合いである。ここでいう剛性は、弾性係数又はヤング率と言い換えることもできる。弾性変形部14は、ゴム又は樹脂からなるブロックである。弾性変形部14は、例えばフッ素ゴム又はシリコーンゴムを用いることができる。しかし、弾性変形部14には、これに限らず弾性体であれば用いることができる。弾性変形部14は、1個または複数個の金属製のバネであってもよい。有意な傾きを発生させる観点から、弾性変形部14の厚みは、板部材13の厚みよりも大きい。治具基準軸A1は、弾性変形部14の中立軸であるともいえる。押圧力Fの軸線が治具基準軸A1に重複するとき、弾性変形部14は、傾きを生じることなくZ方向に縮む。押圧力Fの軸線は、ステージ基準軸A2であるとも言える。押圧力Fの軸線が治具基準軸A1からずれるとき、弾性変形部14は、Z方向に縮む。しかし、縮む量は場所によって異なる。従って、弾性変形部14の上に配置された板部材13に傾きが生じる。
【0026】
弾性変形部14の特性は、
図3(a)のグラフG1及び
図3(b)のグラフG2によって例示できる。
図3(a)の横軸は、位置を示す。
図3(b)の縦軸は、傾きを示す。横軸でいう位置は、換言すると、治具基準軸A1に対するステージ基準軸A2の位置(偏差D)である。位置がゼロとは、治具基準軸A1にステージ基準軸A2が重複していることを意味する。
図3(b)の横軸は、加重を示す。
図3(b)の縦軸は、傾きを示す。加重が大きくなるほど、傾きが増加する。グラフG3では、加重と傾きとの関係は比例する場合を例示する。
【0027】
変形例1として後に説明するが、弾性変形部14は、その剛性が一定である構成に限定されない。
図3(c)のグラフG3に示すように弾性変形部14の剛性は、可変であってもよい。この場合には、押圧力を一定として、弾性変形部14の剛性を制御することによっても、任意の傾きを発生させることが可能である。
【0028】
調整コントローラ20は、所望の傾きが生じる押圧の態様となるように、メインコントローラ104に制御信号φ2を提供する。調整コントローラ20は、後述するステージ主面204a(載置面)におけるチップ部品202が配置される位置と、当該位置におけるステージ主面204aの傾きと、が互いに紐づけられた情報を保持している。調整コントローラ20は、メインコントローラ104から次に配置されるチップ部品202の位置情報を受け取る。調整コントローラ20は、受け取った位置情報に対応する傾き情報を呼び出す。続いて、調整コントローラ20は、呼び出した傾き情報に基づいて、チップ保持部101の傾き目標を設定する。調整コントローラ20は、
図3(a)及び
図3(b)に示される弾性変形部14の特性に基づいて、治具基準軸A1に対するステージ基準軸A2の偏差Dを算出する。偏差Dは、チップ保持部101のX方向及びY方向の位置に換算される。調整コントローラ20は、チップ保持部101が倣い治具10を押圧する力を算出する。チップ保持部101が倣い治具10を押圧する力は、チップ保持部101のZ方向の位置に換算される。調整コントローラ20は、チップ保持部101を算出したX方向、Y方向及びZ方向のそれぞれの位置に移動させるように、制御信号φ1をメインコントローラ104に出力する。
【0029】
<ボンディングヘッド調整方法>
以下、
図4~
図8を適宜参照しながら、ボンディング調整方法を含むボンディング方法について説明する。
【0030】
基板ステージ204を準備する(S1:
図4(a))。基板ステージ204には、後の工程においてステージ主面204aに基板201が載置される。載置された基板201と、ステージ主面204aと、の位置関係は、予めわかっている。具体的には、チップ部品202が配置される基板201上の位置と、チップ部品202が配置される位置に対応するステージ主面204aの位置と、の対応関係が明らかとなっている。
図4(a)に示す例では、3箇所の対応領域R1、R2、R3を図示する。理想的には、ステージ主面204aは二点鎖線で示すように、Z方向に対して直交する。しかし、実際には、ステージ主面204aは、実線で示すように傾くことがあり得る。
【0031】
次に、ステージ主面204aの傾きを得る(S2(第1工程):
図4(b))。この傾きを得る作業は、面の傾きを測定できる所望の測定装置206を用いてよい。測定装置206は、ステージ主面204aにおける測定位置ごと(対応領域R1、R2、R3ごと)に傾きを測定する。測定装置206は、位置情報と傾きの情報とを関連付けて、調整コントローラ20に出力する。
【0032】
次に、ステージ主面204aに基板201を載置する(S3:
図4(c))。工程S3より後の工程では、ステージ主面204aの傾きを直接に測定することができない。しかし、実施形態のボンディング装置1は、チップ部品202が配置される領域に対応する傾き情報を既に調整コントローラ20に保持している。従って、ステージ主面204a上に基板201が載置された状態であっても、チップ部品202が配置される領域に対応する傾きを知ることができる。
【0033】
次に、チップ保持部101の傾きを調整する(S4(第2工程):
図5及び
図6)。
【0034】
調整コントローラ20は、チップ部品202が配置される位置に対応する傾き情報を読み出す。そして、読み出した傾き情報と、弾性変形部14の特性情報と、を利用して、治具基準軸A1に対するステージ基準軸A2の位置(偏差D)と、押圧力Fと、を算出する。算出した偏差Dと押圧力Fとに基づいて、調整コントローラ20は、メインコントローラ104にチップ保持部101の目標位置を示す制御信号を出力する。制御信号を受けたメインコントローラ104は、X方向の位置及びY方向の位置が目標位置となるように、アクチュエータに対して制御信号φ1を出力する(S4a:
図5(a)参照)。
【0035】
この状態では、傾き調整機構102の可動部102aは、ロックされている。つまり、可動部102aは、傾くことができない。メインコントローラ104は、制御信号φ1を与えて傾き調整機構102のロックを解除する(S4b:
図5(b)参照)。
【0036】
調整コントローラ20は、チップ保持部101のZ方向の位置が目標位置となるように、メインコントローラ104に対して制御信号φ2を出力する。チップ保持部101のチップ保持面101aは、倣い面13aに対して押し付けられる。弾性変形部14が偏った変形を生じるので、板部材13が傾く。チップ保持部101を保持する傾き調整機構102の可動部102aが板部材13の傾きに倣って傾く(S4c:
図6(a)参照)。倣い治具10の板部材13は、押圧力Fに起因して傾く。倣い治具10の傾きは、チップ保持部101を押圧することなしには生じない。チップ保持部101を押圧することによって倣い治具10の傾きが生じることを、倣い治具10の傾きは、受動的に生じると称する。
【0037】
そして、倣い治具10の傾きが生じた状態であるとき、メインコントローラ104は、制御信号φ1を与える。その結果、傾き調整機構102の可動部102aがロックされる(S4d:
図6(b)参照)。従って、チップ保持部101の傾きが維持される。
【0038】
次に、チップ部品202を保持する(S5:
図7(a))。メインコントローラ104は、アクチュエータ103に制御信号φ1を与える。その結果、ボンディングヘッド200は、チップ部品202の上方まで移動する。次に、メインコントローラ104は、ボンディングヘッド200をZ方向に沿って下向きに移動させる。次に、メインコントローラ104は、ボンディングヘッド200にチップ部品202を保持させる。そして、メインコントローラ104は、チップ部品202を保持したボンディングヘッド200をZ方向に沿って上向きに移動させる。
【0039】
次に、チップ部品202を基板201まで移動させる(S6:
図7(b))。メインコントローラ104は、アクチュエータ103に制御信号φ1を与える。その結果、ボンディングヘッド200は、基板201におけるチップ部品202を配置する領域の上方まで移動する。
【0040】
次に、チップ部品202を基板201に実装する(S7:
図8(a))。メインコントローラ104は、アクチュエータ103に制御信号φ1を与える。その結果、ボンディングヘッド200は、基板201に向けてZ方向の下向きに移動する。このとき、チップ保持部101のチップ保持面101aは、基板201の実装面201aに対して平行である。チップ部品202におけるチップ保持部101に保持された面と、基板201に対面する逆側の面とが互いに平行であるとすれば、チップ保持面101aに保持されているチップ部品202のチップ接合面202aも基板201の実装面201aに対して平行である。ボンディングヘッド200は、接着剤の熱硬化のための加熱といった接合に要する所望の処理を行う。
【0041】
次に、ボンディングヘッド200をチップ部品202から離す(S8:
図8(b))。メインコントローラ104は、ボンディングヘッド200に制御信号φ1を与える。その結果、ボンディングヘッド200の吸着動作は停止する。メインコントローラ104は、アクチュエータ103に制御信号φ1を与える。その結果、ボンディングヘッド200は、基板201に向けてZ方向の上向きに移動する。以上の工程によって、チップ部品202が基板201に実装される。
【0042】
<作用効果>
ボンディング装置1及びボンディングヘッド調整方法は、基板ステージ204に基板201が載置された状態であっても、調整コントローラ20がステージ主面204aの傾き情報を有している。その結果、チップ保持部101の傾きをチップ部品202が配置される場所の傾きに応じて調整することができる。従って、ダイボンド作業の歩留まりを向上することができる。
【0043】
本発明のボンディング装置は、上記の態様に限定されない。
【0044】
<変形例1>
上述したように、弾性変形部は、その剛性が一定である構成に限定されない。
図3(c)のグラフG3に示すように弾性変形部の剛性は、可変であってもよい。
図9は、弾性変形部14Aの剛性を任意の剛性に制御可能なボンディング装置1Aの一例である。ボンディング装置1Aは、倣い治具10Aを備えている。倣い治具10Aは、受動傾斜部11Aを有する。倣い治具10Aが有する受動傾斜部11Aの弾性変形部14Aは、剛性(弾性係数、ヤング率)を制御可能な可変剛性部14sを含んでいる。可変剛性部14sは、例えば、油圧、水圧又は空気圧によって剛性を調整コントローラ20が出力する制御信号φ2に基づいて制御することができる。
【0045】
<変形例2>
実施形態の倣い治具10は、板部材13の傾きが押圧力に起因して受動的に生じるものであった。例えば、
図10に示すように、ボンディング装置1Bの倣い治具10Bの傾きは、能動的に生じるものであってもよい。この能動的とは、チップ保持部101が押圧されなくても、傾きが生じることを意味する。変形例2のボンディング装置1Bは、受動傾斜部11に変えて、能動傾斜部15を有する。能動傾斜部15は、板部材13と、駆動柱16(板部材駆動部)と、を有する。駆動柱16は、例えば、板部材13の角部に配置される。駆動端16aの先端は、板部材13に当接する。板部材13の支持体は、全て駆動柱16である必要はない。矩形である板部材13の3つの角部には、駆動柱16が設けられる。1つの角部には支持柱17が配置されてもよい。支持柱17は、駆動柱16のように突き出し長さが可変ではない。駆動柱16は、調整コントローラ20からの制御信号φ2を受ける。その結果、駆動柱16の突き出し長さが調整される。駆動柱16の突き出し長さを調整することによって、板部材13の傾きを所望の傾きに設定することが可能である。
【0046】
ボンディング装置1Bによれば、
図11及び
図12に示す工程によってチップ保持部101の傾きを調整できる。
図11(a)に示すように、チップ保持部101を倣い治具10B上に移動させる。チップ保持部101は、板部材13上に位置すればよい。実施形態のように、治具基準軸A1とステージ基準軸A2との偏差Dに示されるような厳密な位置合わせは不要である。次に、
図11(b)に示すように、調整コントローラ20は、駆動柱16に制御信号φ2を出力する。駆動柱16は、制御信号φ2に基づいて駆動端16aの長さを調整する。駆動端16aの長さの調整によって、板部材13は、所望の傾きに設定される。さらに、メインコントローラ104は、傾き調整機構102のロックを解除する。続いて、
図12(a)に示すように、メインコントローラ104は、制御信号φ1を出力する。アクチュエータ103は、傾き調整機構102及びチップ保持部101をZ方向の下向きに移動させる。このとき、傾き調整機構102の可動部102aのロックは、解除されている。従って、可動部102aに固定されているチップ保持部101は、板部材13の傾きに倣う。このとき、チップ保持面101aが倣い面103aに接触していればよい。つまり、押圧力は発生していない。その後、メインコントローラ104は、可動部102aをロックする。そして、
図12(b)に示すように、メインコントローラ104は、制御信号φ1を出力する。アクチュエータ103は、傾き調整機構102及びチップ保持部101をZ方向の上向き移動させる。以上の工程によって、チップ保持部101の傾きの調整が完了する。
【符号の説明】
【0047】
1,1A,1B…ボンディング装置、10,10A,10B…倣い治具、11,11A…受動傾斜部、12…ベース、13…板部材、13a…倣い面、14,14A…弾性変形部、14s…可変剛性部、15…能動傾斜部、16…駆動柱、20…調整コントローラ、101…チップ保持部、101a…チップ保持面、102…傾き調整機構(傾き調整手段)、103…アクチュエータ、104…メインコントローラ(制御部)、200…ボンディングヘッド、201…基板、201a…実装面、202…チップ部品、202a…チップ接合面、203…チップステージ、204…基板ステージ(ステージ)、204a…ステージ主面(載置面)、A1…治具基準軸、A2…ステージ基準軸、D…偏差、F…押圧力。