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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-20
(45)【発行日】2023-09-28
(54)【発明の名称】ワイヤボンディング装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/60 20060101AFI20230921BHJP
【FI】
H01L21/60 301L
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2022528838
(86)(22)【出願日】2021-06-01
(86)【国際出願番号】 JP2021020814
(87)【国際公開番号】W WO2021246396
(87)【国際公開日】2021-12-09
【審査請求日】2022-11-29
(31)【優先権主張番号】P 2020098350
(32)【優先日】2020-06-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】519294332
【氏名又は名称】株式会社新川
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100170818
【弁理士】
【氏名又は名称】小松 秀輝
(72)【発明者】
【氏名】早田 滋
【審査官】小池 英敏
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-306732(JP,A)
【文献】特開平10-242191(JP,A)
【文献】特開2003-163243(JP,A)
【文献】特開2009-176956(JP,A)
【文献】特開2008-306040(JP,A)
【文献】特開2007-248473(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/60-21/607
G01B 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボンディング対象物が載置されるボンディングステージと、
前記ボンディング対象物にボンディングワイヤを接合するキャピラリ、前記キャピラリを往復移動させるキャピラリ駆動部、及び、前記キャピラリ及び前記キャピラリ駆動部を前記往復移動の方向と交差する二次元平面に沿って移動させるXYステージを有するワイヤボンディングユニットと、
前記ボンディングステージに載置された前記ボンディング対象物を撮像する撮像ユニットと、
前記ワイヤボンディングユニット及び前記撮像ユニットが取り付けられる基台と、を備え、
前記ワイヤボンディングユニットは、前記基台の第1の部分に取り付けられ、
前記撮像ユニットは、前記基台の前記第1の部分とは別の第2の部分に取り付けられ、
前記ワイヤボンディングユニットにおいて前記撮像ユニットで撮像できる面には、前記ワイヤボンディングユニットの位置を代表する参照点が設けられる、ワイヤボンディング装置。
【請求項2】
前記撮像ユニットは、前記参照点を撮像すると共に前記ボンディングステージに載置された前記ボンディング対象物を撮像する、請求項1に記載のワイヤボンディング装置。
【請求項3】
前記撮像ユニットは、前記参照点を含む第1画像と、前記ボンディング対象物を含み、前記第1画像とは別の第2画像と、を得る、請求項2に記載のワイヤボンディング装置。
【請求項4】
前記第1画像における前記参照点の視野座標と前記XYステージの位置座標との間の相関関係を算出したキャリブレーション値を取得する制御部をさらに備える、請求項3に記載のワイヤボンディング装置。
【請求項5】
前記参照点は、前記ワイヤボンディングユニットの超音波ホーンの上面に設けられている、請求項4に記載のワイヤボンディング装置。
【請求項6】
前記撮像ユニットは、撮像部と、前記撮像部を前記往復移動の方向と交差する二次元平面に沿って移動させるカメラ駆動部と、を有する、請求項1~5の何れか一項に記載のワイヤボンディング装置。
【請求項7】
前記撮像ユニットは、撮像装置と、前記ボンディング対象物及び前記参照点からの光を前記撮像装置に導く光学系と、を有し、
前記光学系は、前記撮像装置と前記ボンディング対象物との間、及び、前記撮像装置と前記参照点との間において、光軸上に配置されたレンズと光分岐部と、を含み、
前記レンズは、前記撮像装置側に配置され、
前記光分岐部は、前記ボンディング対象物側及び前記参照点側に配置されている、請求項5に記載のワイヤボンディング装置。
【請求項8】
前記光分岐部は、ハーフミラーと、前記ハーフミラーに光を照射する照明と、を含み、
前記光分岐部は、前記ハーフミラーに照射する光によって、前記第1画像を取得する光路と、前記第2画像を取得する光路と、を切り替える、請求項7に記載のワイヤボンディング装置。
【請求項9】
前記撮像ユニットは、撮像部と、前記撮像部を前記往復移動の方向と交差する二次元平面に沿って移動させるカメラ駆動部と、を有し、
前記制御部は、前記第画像において、前記キャリブレーション値に基づいて変換された前記参照点の座標を算出し、前記第1画像を得るための視野にボンディング点が収まるように前記カメラ駆動部を駆動させて前記ボンディング点の座標を得たのち、前記参照点が前記第2画像を得るための視野に収まるように前記XYステージを駆動させてカメラオフセット値を取得する、請求項に記載のワイヤボンディング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワイヤボンディング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1、2は、ワイヤボンディング装置を開示する。ワイヤボンディング装置は、キャピラリによってボンディングワイヤを基板又は半導体チップの所望の位置に接合する。キャピラリをボンディング位置に正確に移動させるために、例えば、画像処理による位置制御が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平08-306732号公報
【文献】特開平10-242191号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ワイヤボンディングの技術分野では、ボンディングワイヤを対象物へ確実に接合することが望まれている。ボンダビリティと呼ばれる接合部分の特性は、ボンディング作業中におけるいくつかの要因の影響を受ける。例えば、ボンディング作業中に、キャピラリに対して外部から振動が印加されて、キャピラリに意図しない振動が生じると、ボンダビリティが低下する。
【0005】
本発明は、ボンダビリティの低下を抑制できるワイヤボンディング装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一形態であるワイヤボンディング装置は、ボンディング対象物が載置されるボンディングステージと、ボンディング対象物にボンディングワイヤを接合するキャピラリ、キャピラリを往復移動させるキャピラリ駆動部、及び、キャピラリ及びキャピラリ駆動部を往復移動の方向と交差する二次元平面に沿って移動させるXYステージを有するワイヤボンディングユニットと、ボンディングステージに載置されたボンディング対象物を撮像する撮像ユニットと、ワイヤボンディングユニット及び撮像ユニットが取り付けられる基台と、を備える。ワイヤボンディングユニットは、基台の第1の部分に取り付けられる。撮像ユニットは、基台の第1の部分とは別の第2の部分に取り付けられる。
【0007】
ワイヤボンディング装置は、ワイヤボンディングユニット及び撮像ユニットのそれぞれが、基台の互いに異なる部分に取り付けられている。そうすると、撮像ユニットの動作に起因して生じる振動は、ワイヤボンディングユニットに到達するまでに十分に減衰される。その結果、撮像ユニットの動作に起因して生じる振動は、ワイヤボンディングユニットの動作に影響を与えにくくなる。従って、良好な状態においてボンディングを行うことが可能になるので、ボンダビリティの低下を抑制できる。
【0008】
一形態において、撮像ユニットは、ワイヤボンディングユニットの位置を代表する参照点を撮像すると共にボンディングステージに載置されたボンディング対象物を撮像してもよい。この構成によれば、ワイヤボンディングユニットに対する撮像ユニットのキャリブレーションを好適に行うことができる。
【0009】
一形態において、撮像ユニットは、参照点を含む第1画像と、ボンディング対象物を含み、第1画像とは別の第2画像と、を得てもよい。この構成によっても、ワイヤボンディングユニットに対する撮像ユニットのキャリブレーションを好適に行うことができる。
【0010】
一形態のワイヤボンディング装置は、第1画像における参照点の視野座標とXYステージの位置座標との間の相関関係を算出したキャリブレーション値を取得する制御部をさらに備えてもよい。この構成によっても、ワイヤボンディングユニットに対する撮像ユニットのキャリブレーションを好適に行うことができる。
【0011】
一形態において、参照点は、ワイヤボンディングユニットの超音波ホーンの上面に設けられてもよい。この構成によっても、ワイヤボンディングユニットに対する撮像ユニットのキャリブレーションを好適に行うことができる。
【0012】
一形態において、撮像ユニットは、撮像装置と、ボンディング対象物及び参照点からの光を撮像装置に導く光学系と、を有してもよい。光学系は、撮像装置とボンディング対象物との間、及び、撮像装置と参照点との間において、光軸上に配置されたレンズと光分岐部と、を含んでもよい。レンズは、撮像装置側に配置されてもよい。光分岐部は、ボンディング対象物側及び参照点側に配置されてもよい。この構成によれば、ワイヤボンディングユニットに対する撮像ユニットのキャリブレーションを簡易に行うことができる。
【0013】
一形態において、光分岐部は、ハーフミラーと、ハーフミラーに光を照射する照明と、を含んでもよい。光分岐部は、ハーフミラーに照射する光によって、第1画像を取得する光路と、第2画像を取得する光路と、を切り替えてもよい。この構成によっても、ワイヤボンディングユニットに対する撮像ユニットのキャリブレーションを簡易に行うことができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、ボンダビリティの低下を抑制できるワイヤボンディング装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、実施形態のワイヤボンディング装置を正面から見た図である。
図2図2は、実施形態のワイヤボンディング装置を側面から見た図である。
図3図3は、撮像ユニットを正面から見た図である。
図4図4は、撮像ユニットを側面から見た図である。
図5図5(a)は第1光路を示す図である。図5(b)は第2光路を示す図である。
図6図6(a)は第3光路を示す図である。図6(b)は第4光路を示す図である。
図7図7は、撮像ユニットの第3光路を斜め方向から見た図である。
図8図8は、コントローラの機能ブロック図である。
図9図9は、ワイヤボンディング方法の主要な工程を示すフロー図である。
図10図10は、カメラオフセット値を設定する工程を詳細に示す工程表である。
図11図11(a)、図11(b)、図11(c)及び図11(d)は、カメラオフセット値を設定する工程において取得される画像の例示である。
図12図12(a)及び図12(b)は、位置決め動作を行う工程を詳細に示す工程表である。
図13図13は、位置決め動作を行う工程を説明するための画像の例示である。
図14図14は、撮像ユニットの変形例を側面から見た図である。
図15図15は、撮像ユニットの変形例を側面から詳細に見た図である。
図16図16は、撮像ユニットのさらに別の変形例を側面から見た図である。
図17図17は、参照点の変形例を示すワイヤボンディング装置の側面図である。
図18図18は、カメラオフセット値を設定する工程の変形例を詳細に示す工程表である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面を参照しながら本発明を実施するための形態を詳細に説明する。図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0017】
図1は、本発明の実施形態に係るワイヤボンディング装置100の正面図である。図2は、図1に示すワイヤボンディング装置100の側面図である。ワイヤボンディング装置100は、半導体チップ20に対してボンディングワイヤ200を接合する。
【0018】
ワイヤボンディング装置100は、主要な構成要素として、ワイヤボンディングユニット40と、撮像ユニット50と、コントローラ60(制御部:図2参照)と、基台70と、を有する。ワイヤボンディングユニット40は、半導体チップ20に対してボンディングワイヤ200を接合する。撮像ユニット50は、ワイヤボンディングユニット40の動作を制御するための画像を得る。コントローラ60は、ワイヤボンディングユニット40及び撮像ユニット50の動作を制御する。例えば、コントローラ60は、撮像ユニット50を制御する。その結果、半導体チップ20及びキャピラリ1などが含まれた画像が得られる。
【0019】
コントローラ60は、画像を処理することにより、ワイヤボンディングユニット40を制御する。ワイヤボンディングユニット40の制御には、半導体チップ20に対するキャピラリ1の先端の位置制御及びキャピラリ1によるワイヤボンディング動作の制御といった一連の動作が含まれる。基台70には、少なくともワイヤボンディングユニット40及び撮像ユニット50が取り付けられる。基台70は、ワイヤボンディングユニット40に対する撮像ユニット50の相対的な位置を保持する。コントローラ60は、基台70に取り付けられてもよい。コントローラ60は、基台70に取り付けられていなくてもよい。
【0020】
<ワイヤボンディングユニット>
ワイヤボンディングユニット40は、キャピラリ1と、超音波ホーン2と、ワイヤクランパ3と、ホーンホルダ4と、Z軸駆動部5(キャピラリ駆動部)と、ツール用XYステージ6(XYステージ)と、を有する。
【0021】
ボンディングツールであるキャピラリ1は、ボンディングワイヤ200を半導体チップ20に接合する。キャピラリ1は、超音波ホーン2の先端側に着脱可能に取り付けられている。超音波ホーン2の基端側は、ホーンホルダ4の先端側に取り付けられている。ホーンホルダ4の先端側には、超音波ホーン2に加えて、ワイヤクランパ3の基端側も取り付けられている。ワイヤクランパ3の先端側は、おおむねキャピラリ1の上方に位置する。
【0022】
ホーンホルダ4の基端側は、Z軸駆動部5に取り付けられている。ボンディングヘッドであるZ軸駆動部5は、ホーンホルダ4を円弧状の軌跡に沿って移動させる。ホーンホルダ4の円弧状の軌跡に沿う移動によれば、ホーンホルダ4に対して直接または間接に取り付けられているキャピラリ1、超音波ホーン2及びワイヤクランパ3も円弧状の軌跡に沿って移動する。キャピラリ1の円弧状の軌跡に沿う移動によって、キャピラリ1は、ボンディング動作を行う。Z軸駆動部5には、トーチアーム91も取り付けられている。トーチアーム91の先端側には、トーチ(不図示)のためのアダプタ92が取り付けられている。Z軸駆動部5は、ツール用XYステージ6に取り付けられている。Z軸駆動部5に対して直接または間接に取り付けられているキャピラリ1、超音波ホーン2、ワイヤクランパ3、ホーンホルダ4及びZ軸駆動部5は、XY平面に沿う平行移動が可能である。ツール用XYステージ6はサーボモータを用いた高速・高精度ステージである。ボンディングステージ7は、キャピラリ1の下方に配置される。ボンディングステージ7は、半導体チップ20をキャピラリ1の下方に保持する。
【0023】
要するに、ワイヤボンディングユニット40において、超音波ホーン2に取り付けられたボンディングツールであるキャピラリ1と、キャピラリ1を円弧状の軌跡に沿って移動させることによりボンディング動作を行うZ軸駆動部5と、は、ツール用XYステージ6上に設置されている。
【0024】
<撮像ユニット>
撮像ユニット50は、キャピラリ1の位置決めのための画像を得る。位置決め用の光学系である撮像ユニット50は、ツール用XYステージ6とは独立した別の光学系用XYステージ11を含む。
【0025】
撮像ユニット50は、光学系10(撮像部)と、光学系用XYステージ11(カメラ駆動部)と、を有する。光学系10は、撮像範囲が互いに異なる画像を得る。例えば、光学系10は、半導体チップ20の位置を特定するマーカーを含む画像と、キャピラリ1の位置を特定するための参照点21(後述)を含む画像と、を得る。光学系10は、撮像倍率が互いに異なる画像を得る。光学系用XYステージ11は、光学系10を撮像対象に対して相対的に移動させる。撮像対象は、半導体チップ20及び参照点21が設けられた超音波ホーン2などである。
【0026】
図3は、光学系10を正面から見た図である。図4は、光学系10を側面から見た図である。図3及び図4に示すように、光学系10は、第1撮像装置30Aと、第2撮像装置31Aと、ミラー36と、ハーフミラー30B、31B、34、37、38と、第1照明32と、第2照明33と、第1光学部品30と、第2光学部品31と、第3光学部品39と、を有する。
【0027】
第1撮像装置30Aは、高倍率の画像を得る。第2撮像装置31Aは、低倍率の画像を得る。第1撮像装置30A及び第2撮像装置31Aは、例えば、高画素カメラであってよい。例えば、第1撮像装置30A及び第2撮像装置31Aとして、1.1インチサイズであり1200万画素を有する高画素カメラを採用した場合、2倍の倍率とすると、視野サイズは4.2mm×3.5mmである。この視野サイズは、従来のワイヤボンダが有する二眼鏡筒の低倍視野の約2倍である。この場合、画素分解能は、1.7μm/pixelである。画像処理によれば、画素分解の数分の一から十分の一の認識精度を実現できる。例えば、要求されるボンディング精度が2μmであるとき、高精度ワイヤボンダとして十分な認識精度を確保できる。低倍率と高倍率との二眼鏡筒とした場合には、後述するリードロケータにおいて撮像回数を減らすことができる。なお、高画素カメラを使用した場合であって、且つ広視野を確保できる場合には、光学系10は、一眼でも良い。
【0028】
光学系10は、第1視野202に存在する物体の画像と、第2視野203に存在する物体の画像と、を得る。従って、光学系10は、第1光路R1(図5(a)参照)と、第2光路R2(図5(b)参照)と、を構成する。第1光路R1は、第1視野202からの光を第1撮像装置30Aに導く。第2光路R2は、第1視野202からの光を第2撮像装置31Aに導く。さらに、光学系10は、第3光路R3(図6(a)参照)と、第4光路R4(図6(b)参照)と、を構成する。第3光路R3は、第2視野203からの光を第1撮像装置30Aに導く。第4光路R4は、第2視野203からの光を第2撮像装置31Aに導く。
【0029】
第1視野202の位置は、第2視野203の位置と異なる。第1光学部品30から撮像対象である半導体チップ20までの光路長は、第2光学部品31から撮像対象である参照点21までの光路長と同じである。具体的には、光路長は、a1+a2=b1+b2として示すことができる。a1は、半導体チップ20からハーフミラー34までの光路長である。a2は、ハーフミラー34からハーフミラー37までの光路長である。b1は、参照点21からミラー36からまでの光路長である。b2は、ミラー36からハーフミラー37までの光路長である。後述するキャリブレーション値に関係する倍率は、第1視野202及び第2視野203ともに同じである。
【0030】
図5(a)に示すように、第1光路R1は、第1視野202からの光を第1撮像装置30Aに導く。第1視野202は、半導体チップ20が配置される。従って、第1光路R1は、半導体チップ20からの光を第1撮像装置30Aに導く。第1光路R1は、ハーフミラー34(光分岐部)と、第1光学部品30とにより構成される。
【0031】
図5(b)に示すように、第2光路R2は、第1視野202からの光を第2撮像装置31Aに導く。従って、第2光路R2は、半導体チップ20からの光を第2撮像装置31Aに導く。第2光路R2は、ハーフミラー34、37、30B、31Bと、第2光学部品31と、により構成される。
【0032】
要するに、半導体チップ20からの光は、ハーフミラー34、37を経た後に、ハーフミラー30Bによって高倍率側の第1光学部品30へ導かれる光路と、低倍率側の第2光学部品31へ導かれる光路と、に分けられる。第1光学部品30へ導かれた光は、高倍率用の第1撮像装置30Aによって撮像される。低倍率側の第2光学部品31に導かれた光は、低倍率用の第2撮像装置31Aによって撮像される。これらの光路により半導体チップ20を撮像する視野を、第1視野202と呼ぶ。
【0033】
図6(a)及び図7に示すように、第3光路R3は、第2視野203からの光を第1撮像装置30Aに導く。第2視野203には、超音波ホーン2に設けられた参照点21が配置される。従って、第3光路R3は、参照点21からの光を第1撮像装置30Aに導く。第3光路R3は、ミラー36と、ハーフミラー37と、第1光学部品30と、により構成される。
【0034】
第2視野203は、ツール用XYステージ6の任意の場所にある参照点21を撮像する。参照点21は、超音波ホーン2の上面に形成されたマーカーである。参照点21は、ツール用XYステージ6によって移動可能な部品に設けられる。
参照点21は、例えば、超音波ホーン2に設けられる。参照点21は、キャピラリ1からの距離が近い位置に設けることが望ましい。超音波ホーン2の上にはワイヤクランパ3が設置されている。しかし、超音波ホーン2の上面は、ワイヤクランパ3の隙間から見ることができる。超音波ホーン2の上面には、画像認識が容易かつ所望の精度を満たすことが可能な認識マーク(例えば、十字形状)をつけても良い。認識マークは、参照点21である。例えば、参照点21として、積極的に設けた認識マークに代えて、超音波ホーン2のエッジを採用してもよい。また、参照点21として、超音波ホーン2を構成する金属部材の表面の模様を用いてもよい。
【0035】
ボンディングエリアは、参照点21の位置に起因する制限を受ける。例えば、位置合わせに対する要求精度が比較的緩い場合には、参照点21を設ける位置の自由度を高めることができる。参照点21は、キャピラリ1からの距離が遠い点に置くことが許容される。第1視野202及び第2視野203を構成する光路長の長さを一致させるための部品の配置は、自由度が高まる。参照点21の変形例は、後述する。
【0036】
図6(b)に示すように、第4光路R4は、第2視野203からの光を第2撮像装置31Aに導く。従って、第4光路R4は、参照点21からの光を第2撮像装置31Aに導く。第4光路R4は、ミラー36と、ハーフミラー37、30B、31Bと、第2光学部品31と、により構成される。
【0037】
第2照明33から参照点21へ照射された光は、ミラー36、ハーフミラー37を経た後に、ハーフミラー30Bによって、高倍率側の第1光学部品30に導かれる光路と、低倍率側の第2光学部品31に導かれる光路と、に分けられる。
高倍率側の第1光学部品30に導かれた光は、高倍率用の第1撮像装置30Aによって撮像される。低倍率側の第2光学部品31に導かれた光は、低倍率用の第2撮像装置31Aによって撮像される。
【0038】
レンズである第1光学部品30及び第2光学部品31は、光軸方向に駆動されることにより、フォーカス調整(焦点調整)を行う。
【0039】
光学系10は、第1光路R1及び第2光路R2を構成する第1視野態様と、第3光路R3及び第4光路R4を構成する第2視野態様と、を相互に切り替え可能である。換言すると、光学系10は、第1視野202からの光を第1撮像装置30A及び第2撮像装置31Aのそれぞれに導く第1視野態様と、第2視野203からの光を第1撮像装置30A及び第2撮像装置31Aのそれぞれに導く第2視野態様と、を相互に切り替え可能である。
【0040】
態様の切り替えは、第1照明32の点灯及び消灯の切り替えと、第2照明33の点灯及び消灯の切り替えと、によって制御できる。第1照明32は、ハーフミラー34の背面側に第3光学部品39を介して配置されている。第1照明32は、ハーフミラー34から第1視野202に至る光軸の延長線上に配置されている。第1照明32は、第3光学部品39及びハーフミラー34を介してボンディングの対象物である半導体チップ20に照明光を照射する。第2照明33は、ハーフミラー37から第2視野203に至る光軸と交差するハーフミラー38(光分岐部)の背面側に配置されている。第2照明33は、ハーフミラー38を介して参照点21に照明光を照射する。
【0041】
第1視野態様とする場合には、第1照明32を点灯すると共に第2照明33を消灯する(図5(a)及び図5(b)参照)。第2視野態様とする場合には、第1照明32を消灯すると共に第2照明33を点灯する(図6(a)及び図6(b)参照)。第1照明32の点灯及び消灯と、第2照明33の点灯及び消灯と、は、コントローラ60から提供される制御信号によって制御されてもよい。
【0042】
図4に示すように、光学系10を構成するそれぞれの部品は、図示しないフレームなどに固定される。その結果、光学系10を構成するそれぞれの部品の相対的な位置関係が保たれる。部品が取り付けられたフレームは、光学系用XYステージ11に取り付けられる。光学系用XYステージ11は、基台70に取り付けられる。例えば、光学系用XYステージ11は、ワイヤボンディングユニット40の上に吊るされている天吊り構造である。光学系用XYステージ11の位置精度は、要求されない。例えば、光学系用XYステージ11の位置精度は、ツール用XYステージ6の位置精度より低くてよい。
【0043】
第1視野202と第2視野203とは、X方向にずれている。つまり、第1視野202は、第2視野203に対してオフセットしている。オフセットしている理由は、第2視野203に配置されるツール(超音波ホーン2)の上面にあるボンディングワイヤ供給部(不図示)から延びるボンディングワイヤ200との干渉を避けるためである。ワイヤを供給する系の構造によっては、このオフセットを持たずに、ツールの上面を第2視野203とすることも可能である。このような場合に対応する光学系の構成は、変形例として後に詳細に説明する。
【0044】
第1視野202及び第2視野203は、ハーフミラー37で光路が合流するまでは、いくつかの光学部品を通る。これらの光学部品が温度変化によって、変形したり位置がずれたりすると、位置決めの誤差になる。位置決めの誤差への対応としては、いくつかの対策が挙げられる。第1の対策は、画像ずれの温度補正である。第2の対策は、線膨張係数が小さい材料を用いた光学部品を採用することである。第3の対策は、温度変化しても画像ずれが小さい光学系の構成を採用することである。換言すると、温度変化しても画像ずれがキャンセルできる光学系の構成を採用することである。なお、第1~第3の対策とは異なる対策を採用してもよい。
【0045】
本実施形態の撮像ユニット50において、半導体チップ20を加熱するヒーターから撮像ユニット50までの距離は、従来の構造のワイヤボンディング装置におけるヒーターから撮像ユニットまでの距離よりも大きい。一例として、半導体チップ20を加熱するヒーターから撮像ユニット50までの距離は、従来の構造のワイヤボンディング装置におけるヒーターから撮像ユニットまでの距離の3倍程度である。従って、ヒーターに起因する熱に起因して撮像ユニット50が暖められることによる温度変化の影響は、抑制されている。
【0046】
<基台>
基台70は、ワイヤボンディングユニット40に対する撮像ユニット50の位置を保持できればよい。従って、基台70の具体的な構成は、ワイヤボンディングユニット40の構成、撮像ユニット50の構成及びワイヤボンディングユニット40に対する撮像ユニット50の位置などに応じて適宜変更が許される。以下、基台70の構成の一例について説明する。
【0047】
図1及び図2に示すように、基台70は、メインフレーム71と、サブフレーム72と、を有する。メインフレーム71は、高い剛性を有する構造物である。メインフレーム71は、ワイヤボンディングユニット40及び撮像ユニット50を取り付けた場合に、それらの重量や動作に起因して発生する力に対して、有意な変形を生じない。例えば、Z軸駆動部5によって円弧状の軌跡に沿ってキャピラリ1を往復移動させた場合には、加振力が生じる。メインフレーム71は、この加振力によっても、ボンディングの精度及び品質に影響を及ぼすような有意な変形を生じない。サブフレーム72は、ワイヤボンディング装置100を構成するユニット及び部品をメインフレーム71に固定する機械的なインターフェースである。サブフレーム72もメインフレーム71と同様に、搭載物の重量及び外力に起因する有意な変形を生じない。
【0048】
図2の例では、サブフレーム72は、メインフレーム71の第1の部分71aに固定されている。サブフレーム72には、ワイヤボンディングユニット40が固定されている。より詳細には、サブフレーム72には、ツール用XYステージ6とボンディングステージ7とが固定されている。ワイヤボンディングユニット40は、サブフレーム72を介してメインフレーム71に固定されている。この構成は、例示である。例えば、ワイヤボンディングユニット40は、メインフレーム71に直接に固定されてもよい。一方、撮像ユニット50は、メインフレーム71の第2の部分71bに対して直接に固定されている。
【0049】
ワイヤボンディングユニット40と撮像ユニット50とは、共通の基台70に対してそれぞれ並列に固定される。換言すると、ワイヤボンディングユニット40に対して、撮像ユニット50が直接に配置されない。例えば、実施形態のワイヤボンディング装置100では、ワイヤボンディングユニット40のツール用XYステージ6に、撮像ユニット50が搭載されることはない。ワイヤボンディングユニット40と撮像ユニット50との間には、何らかの構造物が介在する。例えば、ワイヤボンディングユニット40と撮像ユニット50との間には、メインフレーム71及びサブフレーム72が介在する。
【0050】
<コントローラ>
図8に示すように、コントローラ60は、いくつかの機能的構成要素を有する。コントローラ60は、コンピュータおよびコンピュータに接続された電子回路であり、CPUによって所定のプログラムを実行することにより、機能的構成要素が実現される。コントローラ60は、機能的構成要素として、第1ステージ制御部61と、ボンディング制御部62と、第2ステージ制御部63と、撮像制御部64と、照明制御部65と、計算処理部66と、記憶部67と、を有する。コントローラ60は、これらの機能的構成要素だけでなく、ワイヤボンディング装置100に要求される動作のための機能的構成要素をさらに有してもよい。
【0051】
第1ステージ制御部61は、ツール用XYステージ6に制御信号を出力する。ボンディング制御部62は、Z軸駆動部5に制御信号を出力する。第2ステージ制御部63は、光学系用XYステージ11に制御信号を出力する。撮像制御部64は、第1撮像装置30A及び第2撮像装置31Aに制御信号を出力する。撮像制御部64は、第1撮像装置30A及び第2撮像装置31Aから画像のデータを受ける。照明制御部65は、第1照明32及び第2照明33に制御信号を出力する。計算処理部66は、画像のデータなどを用いて、所定の計算処理を行う。計算処理部66は、第1ステージ制御部61及び第2ステージ制御部63に対して、制御信号を生成するための座標情報などを出力する。記憶部67は、ワイヤボンディング装置100の動作に要する種々の情報を記憶する。
【0052】
<ワイヤボンディング方法>
以下、図9を参照しながら、ワイヤボンディング装置100を用いたワイヤボンディング方法について説明する。ワイヤボンディング方法は、装置の設定工程と、実際のボンディング工程と、を有する。具体的には、ワイヤボンディング方法は、設定工程1(S10)と、設定工程2(S20)と、ボンディング工程(S30)と、を有する。
【0053】
設定工程1(S10)は、デバイスに起因しない工程である。設定工程1(S10)は、第1キャリブレーションを行う工程S1と、第2キャリブレーションを行う工程S2と、カメラオフセット値を設定する工程S3と、を含む。
【0054】
設定工程2(S20)は、デバイスに起因する工程である。設定工程2(S20)は、ボンディングの対象物を変更するごとに行われる。設定工程2(S20)は、第1アライメント点を登録する工程S4と、第2アライメント点を登録する工程S5と、パッドセンタリングを行う工程S6と、を有する。
【0055】
ボンディング工程(S30)は、リードロケータを行う工程S7と、位置決め動作を行う工程S8と、を含む。
【0056】
<第1キャリブレーションを行う工程>
第1キャリブレーションとは、ツール用XYステージ6のエンコーダ値と撮像ユニット50の第2視野203における画素の座標との相関を得る動作である。この相関とは、ツール用XYステージ6のXY座標系と、カメラの第2視野203内のXY座標系との間における、スケールと座標回転の相関である。この相関を得る作業を、カメラキャリブレーションと呼ぶ。ツール用XYステージ6のXY座標系の原点は、エンコーダが読み取ることができる任意の位置に設定する。カメラのXY座標系の原点は、視野内の任意の位置に設定する。以下、説明を容易にするために、カメラのXY座標系の原点は、視野の中心とする。第2視野203における画素の座標は、視野座標の一例である。エンコーダ値は、位置座標の一例である。
【0057】
第1キャリブレーションを行う工程S1として、カメラキャリブレーションを行う。工程S1では、ツール用XYステージ6と撮像ユニット50との関係を補正する情報として、カメラキャリブレーション値を得る。カメラキャリブレーション値は、低倍率側の第1撮像装置30Aに設定すると共に高倍率側の第2撮像装置31Aにも設定する。
【0058】
工程S1は、まず、(1)ツール用XYステージ6を移動させることによって、第2視野203に参照点21を収める。次に、参照点21が含まれた低倍率の画像と、参照点21が含まれた高倍率の画像と、を得る。次に、(2)得られた画像から特徴的なパターンを登録する。次に、(3)ツール用XYステージ6を所定のピッチで移動させる動作と、移動後に参照点21の画像を得る動作と、を繰り返す。また、移動させるごとにツール用XYステージ6の移動量をエンコーダを用いて取得する。次に(4)移動させるごとに得た画像を用いた画像認識処理によって、パターンの移動量及び移動方向を算出する。次に、(5)パターンの移動量及び移動方向を統計処理することによって、ツール用XYステージ6のエンコーダと、第1撮像装置30A及び第2撮像装置31Aの画素との関係(大きさ、方向)を算出する。この関係が、これが第1キャリブレーション値である。
【0059】
<第2キャリブレーションを行う工程>
第2キャリブレーションとは、光学系用XYステージ11のエンコーダ値またはパルス値と、撮像ユニット50の第1視野202における画素と、の相関を得る動作である。この相関とは、光学系用XYステージ11のXY座標系と、カメラの第2視野203内のXY座標系との間における、スケールと座標回転の相関である。この相関を得る動作も、カメラキャリブレーションと呼ぶ。第2キャリブレーションを行う工程S2として、カメラキャリブレーションを行う。この工程S2では、光学系用XYステージ11と撮像ユニット50との関係を補正する情報としてカメラキャリブレーション値を得る。カメラキャリブレーション値は、低倍率側の第1撮像装置30Aに設定すると共に高倍率側の第2撮像装置31Aにも設定する。
【0060】
工程S2は、(1)光学系用XYステージ11を移動させることにより第1視野202に半導体チップ20を収める。次に、半導体チップ20が含まれた低倍率の画像と、半導体チップ20が含まれた高倍率の画像と、を得る。次に、(2)得られた画像から特徴的なパターンを登録する。次に、(3)光学系用XYステージ11を所定のピッチで移動させる動作と、移動後に半導体チップ20の画像を得る動作と、を繰り返す。また、移動させるごとに光学系用XYステージ11の移動量をエンコーダから取得する。なお、光学系用XYステージ11の移動量は、光学系用XYステージ11を移動させるパルス値を用いて得てもよい。次に、(4)移動させるごとに得た画像を用いた画像認識処理によって、パターンの移動量及び移動方向を算出する。次に、(5)パターンの移動量及び移動方向を統計処理することによって、光学系用XYステージ11の位置(エンコーダ又はパルス位置)と、第1撮像装置30A及び第2撮像装置31Aの画素との関係(大きさ、方向)を算出する。この関係が、これが第2キャリブレーション値である。
【0061】
<カメラオフセット値を設定する工程>
カメラオフセット値とは、ツール用XYステージ6に搭載されたワイヤボンディングユニット上にある参照点21が第2視野203の中心にあるとき、第1視野202の中心にボンディングするために、ツール用XYステージ6に要求される移動距離である。本実施形態のカメラオフセット値は、従来のワイヤボンダで用いられる用語のカメラオフセットとは異なる、別の概念である。図10は、カメラオフセット値を設定する工程S3の詳細を示す工程表である。工程S3では、光学系10とボンディングツールとの相関関係を設定する。光学系10とボンディングツールとの相関関係は、カメラオフセット値とも称する。カメラオフセット値を設定する工程S3は、ボンディング点を設定する第1動作S31と、ボンディング又は圧痕を形成する第2動作S32と、ボンディング位置を算出する第3動作S33と、を含む。
【0062】
第1動作S31は、以下の動作を含む。第1視野202に半導体チップ20が収まるように光学系用XYステージ11を動作させる(S31a、S31b、図11(a)参照)。次に、第1視野202の中心202Cをボンディング点として設定する(S31c)。次に、参照点21が第2視野203に収まるように、ツール用XYステージ6を動作させる(S31d)。次に、第2視野203の撮像を行う(S32e、図11(b)参照)。次に、計算を行う(S31f)。具体的には、エンコーダから読み取ったツール用XYステージ座標を(x0、y0)に設定する。次に、画像認識によって第2視野203のカメラ座標における参照点21の位置(x0s’、y0s’)を求める(S31e、図11(b)参照)。次に、画素単位であるカメラ座標から、先に求めた第1キャリブレーションの値をもとに、実際長さ(μm)に座標を変換する。その結果、座標(x0s、y0s)を得る。ツール用XYステージ6のXY座標及び方向と、スケールと、は同じである。原点は、第2視野203のカメラ座標と同一である。従って、ツール用XYステージ6を(-x0s、-y0s)だけ移動させると、参照点21は第2視野203の中心である。実際の運用時には、参照点21を視野中心に移動させる必要はない。第1動作S31の後、光学系用XYステージ11は、退避する(S31g)。
【0063】
第2動作S32は、以下の動作を含む。キャピラリ1がボンディング点に移動するように、装置に記憶されているカメラオフセット値の距離だけツール用XYステージ6を動作させる(S32a)。次に、Z軸駆動部5は、ボンディングを行う(S32b)。なお、ボンディング動作に代えて、圧痕を形成する動作を行ってもよい。第2動作S32の後、光学系用XYステージ11は、退避する(S32c)。
【0064】
第3動作S33は、以下の動作を含む。第1視野202にボンディング点22が収まるように光学系用XYステージ11を動作させる(S33a)。S33aにおける学系用XYステージ11の位置は、S31a、S31cにおける光学系用XYステージ11の位置と同じである。換言すると、学系用XYステージ11に設けられたエンコーダの出力値または学系用XYステージ11に提供されるパルスが同じ値である。次に、第1視野202の撮像を行う(S33b、図11(c)参照)。次に、計算を行う(S33c)。この計算では、第1視野202の中心に対するボンディング位置を得る。まず、第1視野202のカメラ座標に基づきボンディング点22の座標(Xb’、Yb’)を得る。次に、この座標(Xb’、Yb’)をツール用XYステージ6の座標に変換する。その結果、座標(Xb、Yb)を得る。次に、参照点21が第2視野203に収まるように、ツール用XYステージ6を動作させる(S33d)。次に、第2視野203の撮像を行う(S33e、図11(d)参照)。そして、計算を行う(S33f)。具体的には、エンコーダから読み取ったツール用XYステージ座標を(x1、y1)とする。画像認識によって第2視野203のカメラ座標における参照点21の位置(x1s’、y1s’)を求める。参照点21の位置をツール用XYステージ6の座標スケールに変換する。その結果、座標(x1s、y1s)を得る。
【0065】
ワイヤボンディング装置100には、カメラオフセット値(Xc0、Yc0)が記憶されている。カメラオフセット値は、温度変化などで変化する。カメラオフセット値の変化(ΔXc、ΔYc)は上記で求めた値を用いると、下記式(1)のとおりである。
(ΔXc、ΔYc)=((x1s-x1)-(x0s-x0)+Xb、(y1s-y1)-(y0s-y0)+Yb)…(1)
従って、新たに設定されたカメラオフセット値(Xc、Yc)は、下記式(2)のとおりである。
(Xc、Yc)=(Xc0+ΔXc、Yc0+ΔYc)=(Xc0+(x1s-x1)-(x0s-x0)+Xb、Yc0+(y1s-y1)-(y0s-y0)+Yb)…(2)
【0066】
<第1アライメント点を登録する工程>
ボンディングの対象となる部品の品種ごとにアライメント点を登録する(工程S4)。工程S4では、チップ側のアライメント点を設定する。具体的には、まず(1)光学系用XYステージ11を動作させることにより、第1視野202にボンディングを行う半導体チップ20を移動させる。次に、(2)半導体チップ20を第1視野202に収めた状態として、第1撮像装置30Aによって画像を得ると共に第2撮像装置31Aによっても画像を得る。次に、(3)得られた画像から、特徴的な半導体チップ20の領域を第1アライメント点として登録する。
【0067】
<第2アライメント点を登録する工程>
ボンディングの対象となる部品の品種ごとにアライメント点を登録する(工程S5)。工程S5では、リード側のアライメント点を設定する。具体的には、(1)光学系用XYステージ11を動作させることにより、ボンディングを行う半導体チップ20のリードが第1視野202に含まれるように移動させる。なお、半導体チップ20の第1アライメント点を登録する視野の内側に、リード側の第2アライメント点が含まれる場合は、光学系用XYステージ11を動作させる必要はない。この場合には、第1アライメント点を登録する工程S4で得た画像を用いてよい。次に、(2)半導体チップ20のリード側を、第1視野202に収めた状態として、第1撮像装置30Aによって画像を得ると共に第2撮像装置31Aによっても画像を得る。次に、(3)得られた画像から、特徴的な半導体チップ20のリード側の領域を第2アライメント点として登録する。
【0068】
<パッドセンタリングを行う工程>
個々のパッドを第1視野202に収めた状態で、撮像する(工程S6)。個々の画像は、視野端の一定領域で重なる。その結果、複数の画像によって全体のパッドの位置が把握できる。なお、光学系用XYステージ11の精度が良い場合は、画像の端を重ねる必要はない。
【0069】
<リードロケータを行う工程>
リードロケータを行う工程S7を実施する(図12(a)参照)。第1視野202に個々のリード204(図13参照)が収まるように、ツール用XYステージ6を動作させる(S7a)。次に、第1視野202の画像を取得する(S7b)。この画像には、個々のリード204が含まれる。個々のリード204を第1視野202に収めた状態で、撮像する。個々の画像は、視野の端部における一定の領域で重なる。その結果、複数の画像によって全体のリード204の位置が把握できる。なお、光学系用XYステージ11の精度が良い場合は、画像の端を重ねる必要はない。
【0070】
<位置決め動作を行う工程>
図12(b)の工程表に示す一連の動作により位置決めを行う(工程S8)。位置決め動作を行う工程S8は、アライメントを行う第4動作S81と、相関関係を取得する第5動作S82と、アライメントを行う第6動作S83と、相関関係を取得する第7動作S84と、を有する。図13は、アライメントを行う第4動作S81において取得した第1視野202の画像の例示である。第1視野202には、半導体チップ20の大部分が収まっている。部品102は、ウィンドクランパといった半導体チップ20の位置を保持するための部品である。
【0071】
第4動作S81は、以下の動作を含む。第1視野202に第1リードアライメント点L1、第1チップアライメント点A1及び第2チップアライメント点A2が収まるように、光学系用XYステージ11を動作させる(S81a)。次に、第1撮像装置30Aを用いて第1視野202における高倍率の画像を取得する(S81b)。この画像には、第1チップアライメント点A1及び第2チップアライメント点A2が含まれる。次に、第2撮像装置31Aを用いて第1視野202における低倍率の画像を得る(S81c)。この画像には、第1リードアライメント点L1が含まれる。
【0072】
第5動作S82では、ツール用XYステージ6と第1撮像装置30Aとの相関関係を取得する。さらに、第5動作S82では、ツール用XYステージ6と第2撮像装置31Aとの相関関係も取得する。第2視野203に参照点21が収まるように、ツール用XYステージ6を動作させる(S82a)。次に、第2視野203の画像を取得する(S82b)。次に、ツール用XYステージ6を用いてツールを退避させる。
【0073】
第6動作S83は、以下の動作を含む。第1視野202に第2リードアライメント点が収まるように、光学系用XYステージ11を動作させる(S83a)。次に、第2撮像装置31Aを用いて第1視野202における低倍率の画像を取得する(S83b)。この画像には、第2リードアライメント点が含まれる。
【0074】
第7動作S84では、ツール用XYステージ6と第1撮像装置30Aとの相関関係を取得する。さらに、第7動作S84では、ツール用XYステージ6と第2撮像装置31Aとの相関関係を取得する。第2視野203に参照点21が収まるように、ツール用XYステージ6を動作させる(S84a)。次に、第2視野203の画像を取得する(S84b)。次に、ツール用XYステージ6を用いて参照点21を含むツールを退避させる(S84c)。
【0075】
なお、視野が十分に広い場合は、低倍率の光路系と高倍率の光路系とを含む二眼構成を要しない。つまり、視野が十分に広い場合は、一眼としてよい。なお、「一眼」及び「二眼」とは、互いに倍率等の異なる光路系の数と理解してもよい。
【0076】
<作用効果>
ワイヤボンディング装置100は、半導体チップ20が載置されるボンディングステージ7と、半導体チップ20にボンディングワイヤ200を接合するキャピラリ1、キャピラリ1を往復移動させるZ軸駆動部5、及び、キャピラリ1及びZ軸駆動部5を往復移動の方向と交差する二次元平面に沿って移動させるツール用XYステージ6を有するワイヤボンディングユニット40と、光学系10と、光学系10を往復移動の方向と交差する二次元平面に沿って移動させる光学系用XYステージ11とを有し、ワイヤボンディングユニット40が取り付けられる基台70と、を備える。ワイヤボンディングユニット40は、基台70の第1の部分71aに取り付けられる。光学系用XYステージ11は、基台70の第1の部分71aとは別の第2の部分71bに取り付けられる。
【0077】
ワイヤボンディング装置100は、ワイヤボンディングユニット40及び撮像ユニット50のそれぞれが、基台70の互いに異なる部分に取り付けられている。そうすると、従来のようにXYステージおよびキャピラリ駆動部の動作によって発生した振動が、撮像ユニット50の片持ち構造に作用して、キャピラリ1に意図しない振動を発生させることはない。撮像ユニット50の動作に起因して生じる振動は、ワイヤボンディングユニット40に到達するまでに十分に減衰できるので、ワイヤボンディングユニット40の動作に影響を与えにくくなる。従って、良好な状態においてボンディングを行うことが可能になるので、ボンダビリティの低下を抑制できる。
【0078】
本実施形態のワイヤボンディング装置100では、位置決め用の光学系10がZ軸駆動部5を備えるボンディングツールと同じツール用XYステージ6に搭載されない。この構成によれば、以下に示すいくつかの有利な効果を奏する。まず、ツール用XYステージ6が負担する質量が減る。従って、ツール用XYステージ6の負荷が小さくなる。その結果、ボンディングツールの移動時間をより短縮できるので、1個の被処理部品(ユニット)に要する処理時間を示す指標(UPH:Unit Per Hour)が向上する。さらに、撮像ユニット50とワイヤボンディングユニット40との間に介在する系は、単純であり距離が短い。その結果、撮像ユニット50とワイヤボンディングユニット40との間に生じる温度変化に起因する熱変形の補正が容易である。
【0079】
光学系10及びボンディングヘッドであるZ軸駆動部5の振動は、制御系に影響を与えることがあり得る。しかし、位置決め用の光学系10は、ボンディングツールと同じツール用XYステージ6に搭載されない。従って、Z軸駆動部5が受ける光学系10の振動の影響は、抑制される。その結果、光学系10及びZ軸駆動部5及びツール用XYステージ6の振動の減衰を待つ時間(振動静定タイマー)を設ける必要がない。従って、UPHをさらに向上させることができる。そのうえ、光学系10を高速のツール用XYステージ6に搭載しない。従って、光学系10の形状及び質量に対する制限を緩和できる。その結果、光学系10には、検査等の新たな機能を搭載することが可能になる。
【0080】
本実施形態のワイヤボンディング装置100は、以下の作用効果を奏することもできる。まず、ツール用XYステージ6に搭載される部品の質量が減る。具体的には、撮像ユニット50の質量が減る。その結果、ツール用XYステージ6を駆動するための、モータの負荷を減らすことができる。例えば、ツール用XYステージ6のモータの負荷をおよそ半分にできる。その結果、単純計算として、移動時間を3割も低減させることができる。従って、ボンディング速度をさらに高めることができる。その結果、1個の被処理部品(ユニット)に要する処理時間を示す指標(UPH:Unit Per Hour)を向上させることができる。
【0081】
そのうえ、撮像ユニット50を構成する光学系10は、高速移動が可能なステージに搭載する必要があった。従って、撮像ユニット50には、高速移動を可能とするために形状、質量及び構造等に大きな制限があった。しかし、撮像ユニット50をワイヤボンディングユニット40と別体とすることにより、当該制限をある程度緩和することが可能である。その結果、撮像ユニット50又はワイヤボンディングユニット40には、検査等の新たな機能を実現するための部品を搭載することが可能になる。
【0082】
撮像ユニット50を構成する光学系10の振動が、キャピラリ1を含むワイヤボンディングユニット40の制御系に与える影響を抑制できる。その結果、ワイヤボンディングユニット40の制御がより容易になる。さらに、撮像ユニット50を構成する光学系10の振動は、ボンディングツールであるキャピラリ1に影響を与えない。その結果、ボンダビリティを向上させることができる。そのうえ、撮像ユニット50を構成する光学系10の振動の影響が無視できない場合には、ワイヤボンディング装置100を構成する種々の部品に生じる振動が減衰するまで待機する必要がある。しかし、ワイヤボンディング装置100は、撮像ユニット50を構成する光学系10の振動の影響が抑制される。換言すると、光学系10の振動の影響は、実質的に無視できる。従って、振動が減衰するまで待機する時間は、不要である。その結果、上述したUPHを向上させることができる。
【0083】
位置決め用の光学系を用いてツール用XYステージ6の参照点21の画像を取得する。光学系10とツール用XYステージ6との相関を取る。この相関の取得により温度変化などによるボンディングオフセットの変化も補正できる。これは、キャピラリ1の先端位置を撮像する機能(RPS:Reference Positioning System)の代替として用いることが可能である。従って、ワイヤボンディング装置100へのRPS機能の搭載を省略することができる。その結果、Y方向のボンディングエリアを拡大できる。
【0084】
オフセットの変化を温度補正する場合、補正で考慮すべき要因は、参照点21の移動と、第1視野202の移動である。参照点21の移動は、例えば、ボンディングツールの伸び及び超音波ホーン2の伸びに起因する。第1視野202の移動は、例えば、光学系の先端部分の伸びに起因する。光学系の先端部分とは、分岐ハーフミラーより物体面側の部分を意味する。つまり、補正で考慮すべき要因は少なく、単純である。従って、温度補正を容易に行うことができる。
【0085】
要するに、本実施形態の装置は、可動ステージであるツール用XYステージ6にボンディングツールが搭載されているワイヤボンダである。ワイヤボンダは、可動ステージの外に設置された光学系により、ボンディング対象物の画像および可動ステージ上の参照点21の画像を取得する。そして、画像から得られる座標及び可動ステージの座標を利用して、ボンディング対象物とボンディングツールとの位置関係を算出する。
【0086】
上記のワイヤボンダの光学系は、可動ステージに搭載されていてもよい。さらに、上記のワイヤボンダは、同一の撮像装置により、ボンディング対象物の画像と参照点21の画像とを取得してもよい。さらに、上記のワイヤボンダは、参照点21が超音波ホーンまたはホーンホルダ上にあってもよい。さらに、上記のワイヤボンダは、同一のレンズを用いて、ボンディング対象物の画像と参照点21の画像とを取得してもよい。
【0087】
上述した構成を有するワイヤボンディング装置100によれば、ボンディングスピードの向上と、UPHの向上と、ボンディング精度の向上と、ボンダビリティの向上と、を実現できる。また、ワイヤボンディング装置100によれば、ボンディングエリアを拡大することもできる。
【0088】
以上、ワイヤボンディング装置の実施形態について説明した。ワイヤボンディング装置は、上述した実施形態に限定されない。
【0089】
<光路構成の変形例>
第1視野202から第1撮像装置30A及び第2撮像装置31Aまでの光路長と、第2視野203から第1撮像装置30A及び第2撮像装置31Aまでの光路長と、を一致させるための構成は、所望の構成を採用してよい。図14は、このような場合の光路構成の一例を示す。図14及び図15に示すように、空気中の距離が一致するように複数のミラーによって光路を折り曲げる構成を採用してもよい。撮像ユニット50Aは、実施形態の撮像ユニット50の構成に加えて、さらに光路長補正部材95を有する。撮像ユニット50Aは、必要に応じて追加の光学部品30C、30D(図15参照)を有してもよい。光路長補正部材95は、ハーフミラー37と、ハーフミラー38との間に配置されている。光路長補正部材95は、図15に示すように複数のミラー41、42、43、44を用いて、4回の反射を行う光路を構成する。この光路構成によって光路長を補正する。なお、ミラー41、42、43、44に代えて、プリズムを採用してもよい。
【0090】
図16に示す光学系10Bは、レンズ30E、30F及び光路長補正部材95Aを含む。光路長補正部材95Aは、光路上に配置された屈折率が空気と異なる材料からなる光学部材96である。光路長補正部材95Aとは、光路を折り曲げるためのミラー及び屈折率が空気と異なる光学部材などを含む。レンズの特性から、像面からレンズの後側主平面までの光路長がガラス内を通ることにより短くなると、フォーカス位置が短くなる。従って、図16のような構成が可能となる。
【0091】
図15に示した変形例は、図3の変形例とは異なり、第2視野203で参照点21を見たときに、第1視野202はキャピラリの直上にある。すなわち、X方向のカメラオフセット値はゼロに近い。従って、第2視野203で参照点21を見ている状態からツールが退避すると、第1視野202にてボンディング点の近傍におけるボンディングの対象物をそのまま見ることができる。この構造を用いると、図3に示した変形例に比べて、光学系の構造及び位置合わせ方法が簡略化できる。
【0092】
光学系10の構成は、第1視野202から第1撮像装置30A及び第2撮像装置31Aまでの光路長と、第2視野203から第1撮像装置30A及び第2撮像装置31Aまでの光路長と、を一致させる構成に限定されない。光路長が異なっていても、第1視野202にフォーカスを合わせると共に、第2視野203にもフォーカスを合わせることが可能な構成を採用することもできる。例えば、光学系は、レンズ、曲率を持ったミラー又はプリズムを含んで構成してもよい。
【0093】
レンズ及びミラーなどの光学素子の位置を機械的に移動させる構成を採用してもよい。このような構成は、レンズの駆動によってフォーカスを調整する機能を備えた光学系である。光学素子の曲率を変えることにより補正する機能を備えた光学系を採用してもよい。このような光学系には、液体レンズが採用される。なお、この場合には、第1視野202の倍率と第2視野203の倍率とは、そのままでは一致しない。従って、倍率の補正が必要である。
【0094】
<参照点を設ける位置の変形例>
図17に示すように、参照点21を設ける部材は、超音波ホーン2に限定されない。例えば、ツール用XYステージ6の上のから突き出すように設けられたアーム部材であるトーチアーム91の先端に参照点21Aを設けてもよい。参照点21Bは、ホーンホルダ4に設けてもよい。参照点21Cは、ボンディングヘッドであるZ軸駆動部5の上面に設けてもよい。
【0095】
<カメラオフセット値を設定する工程の変形例>
カメラオフセット値を設定する工程は、図10等に示す一連の動作に限定されない。図18は、上述したカメラオフセット値を設定する工程S3に代えて採用できる別の一連の動作(工程S9)を示す。変形例では、特徴的なパターンを画像認識する。その結果、参照点21を用いることなくカメラオフセット値を設定できる。
【0096】
図18は、カメラオフセット値を設定する工程S9の変形例の詳細を示す工程表である。カメラオフセット値を設定する工程S9は、ボンディング点を設定する第8動作S91と、ボンディング又は圧痕を形成する第9動作S92と、ボンディング位置を算出する第10動作S93と、を含む。
【0097】
第8動作S91は、以下の動作を含む。第1視野202に半導体チップ20が収まるように光学系用XYステージ11を動作させる(S91a、S91b)。次に、第1視野202においてレチクルを用いてボンディング点を設定する(S91c)。次に、計算を行う(S91d)。具体的には、第1視野202における特徴的なパターンに対する、設定したボンディング点の相対位置を求める。相対位置は、カメラ座標(Xb2’,Yb2’)に従う。第8動作S91の後、光学系用XYステージ11は、退避する(S91e)。次に、ツール用XYステージ6を動作させて(S91f)、第2視野203に参照点21を配置する(S91g)。次に、参照点21を画像認識して、第2視野203の内部における参照点21の位置を求める(S91h)。
【0098】
第9動作S92は、以下の動作を含む。キャピラリ1がボンディング点に移動するように、ツール用XYステージ6を動作させる(S92a)。この移動距離は、装置に記憶されているカメラオフセットに対して、S91で求めた第2視野203の中心に対する参照点21のずれを減算した値である。すなわち、参照点21が第2視野203の中心にあって、記憶されているカメラオフセットだけ移動した場合と同じように、ツール用XYステージ6が移動することになる。次に、Z軸駆動部5は、ボンディングを行う(S92b)。なお、ボンディング動作に代えて、圧痕を形成する動作を行ってもよい。その後、ツール用XYステージ6は、退避する(S92c)
【0099】
第10動作S93は、以下の動作を含む。第1視野202にボンディング点が収まるように光学系用XYステージ11を動作させる(S93a)。次に、第1視野202に収まったボンディング点の撮像を行う(S93b)。次に、計算を行う(S93c)。具体的には、第1視野202における特徴的なパターンに対する、設定したボンディング点の相対位置を求める。相対位置は、カメラ座標(Xb3’,Yb3’)に従う。
【0100】
装置に記憶されているカメラオフセット値を(Xc0、Yc0)とする。カメラオフセット値として、前回設定した値や装置生産時は設計値を採用してよい。カメラオフセット値の変化は、カメラ座標に基づくと(Xb3’-Xb2’、Yb3’-Yb2’)である。ツール用XYステージ6の座標に変換したカメラオフセット値の変化は、(Xb3-Xb2、Yb3-Yb2)である。その結果、光学系の視野中心の位置と、ツールが下降する位置との相関関係は(Xc、Yc)=(Xc0+Xb3-Xb2、Yc0+Yb3-Yb2)である。
【0101】
<その他の変形例>
実施形態では、ボンディングの対象物である半導体チップ20と参照点21とは、共通の撮像装置を用いて画像を取得していた。例えば、ワイヤボンディング装置100は、ボンディングの対象物の画像を取得する撮像装置と、参照点21の画像を取得する撮像装置と、をそれぞれ別個のものとして備えてもよい。
【0102】
実施形態では、第1視野202にボンディングの対象物を収めて画像を得ると共に、第2視野203に参照点21を収めて画像を得た。例えば、第1視野202又は第2視野203の一方にボンディングの対象物及び参照点21を納めて画像を得てもよい。つまり、第1視野202と第2視野203とを統合するように、動作させてもよい。
【0103】
フレーム内、ウィンドクランパの開口部を複数回撮像することにより複数の画像を得る。そして、それらの画像を合成した後に、参照点21を基準としてボンディングを行ってもよい。
【符号の説明】
【0104】
1…キャピラリ、2…超音波ホーン、5…Z軸駆動部(キャピラリ駆動部)、6…ツール用XYステージ(XYステージ)、7…ボンディングステージ、10,10B…光学系、11…光学系用XYステージ(カメラ駆動部)、21…参照点、21A,21B,21C…参照点、30B,31B,37…ハーフミラー、30E,30F…レンズ、34,38…ハーフミラー(光分岐部)、40…ワイヤボンディングユニット、50,50A…撮像ユニット(撮像部)、70…基台、71a…第1の部分、71b…第2の部分、100…ワイヤボンディング装置、200…ボンディングワイヤ。
図1
図2
図3
図4
図5
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図7
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図15
図16
図17
図18