(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-20
(45)【発行日】2023-09-28
(54)【発明の名称】骨付き手羽肉及びその加工方法
(51)【国際特許分類】
A22C 21/00 20060101AFI20230921BHJP
【FI】
A22C21/00 Z
(21)【出願番号】P 2023063964
(22)【出願日】2023-04-11
【審査請求日】2023-04-11
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】523135643
【氏名又は名称】株式会社HIGH-FIVE
(74)【代理人】
【識別番号】100114627
【氏名又は名称】有吉 修一朗
(74)【代理人】
【識別番号】100182501
【氏名又は名称】森田 靖之
(74)【代理人】
【識別番号】100175271
【氏名又は名称】筒井 宣圭
(74)【代理人】
【識別番号】100190975
【氏名又は名称】遠藤 聡子
(72)【発明者】
【氏名】楢岡 力哉
【審査官】村松 宏紀
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-199832(JP,A)
【文献】唐揚げ用のチューリップの作り方/手羽先を使った作り方を丁寧に紹介します!, 白ごはん.comチャンネル, Youtube [online], 2018年1月20日(検索日:2023年6月27日),<URL:https://www.youtube.com/watch?v=_VZVvhAfPlo>
【文献】元祖博多蒸し手羽 TEBASTA 栄店(栄/焼鳥), LINE PLACE[online],2022年6月(検索日:2023年6月27日),<URL:https://place.line.me/reviews/62b1b89530befc00289ea746>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A22C
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鶏肉の部位である手羽中とその先部につながる手羽先から成る手羽の、
前記手羽中と前記手羽先を表皮方向に折り曲げて、前記手羽中内部の二本の中骨の先端部と前記手羽先の骨との接合を外す工程と、
前記各中骨の先端部を裏皮の内面に押し付けて、前記裏皮を突き破り突出させる工程と、
前記各中骨を、前記手羽中の手羽元側の端部で接合する軟骨を切断して前記各中骨を切り離す工程と、
前記手羽中内部の各中骨のうち、何れか一方を前記手羽中の肉身から抜き取り、他方を残す工程と、
前記手羽中の先端につながる手羽先を切除する工程とを備え、
前記抜き取る中骨の抜き取りは、前記手羽中の前記肉身の筋繊維方向と略平行方向にゆっくり行うようにし、かつ前記抜き取る中骨が前記肉身の筋膜を傷付けるのは、前記抜き取る中骨が抜けるところだけになるようにする
骨付き手羽肉の加工方法。
【請求項2】
前記肉身に残した中骨が、前記肉身と皮から先端部を突出させたまま、略加工前の形態を留める前記肉身内部に収まるようにする
請求項1記載の骨付き手羽肉の加工方法。
【請求項3】
前記抜き取る中骨が細い方の中骨となり、前記手羽中の前記肉身に残す中骨が太い方の中骨となるようにする
請求項1又は2記載の骨付き手羽肉の加工方法。
【請求項4】
前記手羽先の切除を、前記手羽先を前記中骨の先端部に略揃えて直線的に切り落として行う
請求項1又は2記載の骨付き手羽肉の加工方法。
【請求項5】
鶏肉の部位である手羽中とその先部につながる手羽先から成る手羽の、前記手羽中と前記手羽先を表皮方向に折り曲げて、前記手羽中内部の二本の中骨の先端部と前記手羽先の骨との接合を外す工程と、
前記各中骨の先端部を裏皮の内面に押し付けて、前記裏皮を付き破り突出させる工程と、
前記各中骨を、前記手羽中の手羽元側の端部で接合する軟骨を切断して前記各中骨を切り離す工程と、
前記手羽中内部の各中骨のうち、何れか一方を前記手羽中の肉身から前記手羽中の前記肉身の筋繊維方向と略平行方向にゆっくり行うようにし、かつ前記抜き取る中骨が前記肉身の筋膜を傷付けるのは、前記抜き取る中骨が抜けるところだけになるようにして抜き取り、他方を前記肉身と皮から先端部を突出させたまま、略加工前の形態を留める前記肉身内部に収まるようにして残す工程と、
前記手羽中の先端につながる手羽先を切除して骨付き手羽肉とする工程と、
該骨付き手羽肉を、前記肉身に残った中骨の先端部が突出していない表皮を下にして焼き台に載せて焼き調理を行う工程とを備える
骨付き手羽肉の調理方法。
【請求項6】
前記焼き調理においては、所定の温度による所定の時間での前焼きを行い、その後に所定の量の水を注水し、所定の温度による所定の時間での蒸し焼きを行う
請求項5記載の骨付き手羽肉の調理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、骨付き手羽肉及びその加工方法に関するものである。詳しくは、肉身がまとまっていてボリュームがあるため、加熱調理したときの見た目も良く、軟らかくふっくらとした食感が得られると共に、食する際に摘まみ持ちがしやすく食べやすい骨付き手羽肉及びその加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
手羽は、鶏の部位の中でも特に味が良いとされ、飲食店や家庭においても様々に調理され、好んで食されている。この手羽をより食べやすくするために、手羽の加工方法(製造方法や下処理の方法)はいくつか提案されており、特許文献1に記載されている「骨付手羽及びその製造方法」もそのひとつである。
【0003】
この従来の製造方法では、手羽中の並列する2本の骨を挟む一方側の肉身に切れ目を入れ、切れ目を開く方向に手羽中を折り曲げて、手羽先の骨と2本の骨との接合を外し、2本の骨の先端部を切れ目から突出させ、2本の骨を挟む他方側に残った肉身を切断し、2本の骨を手羽元側で接合する軟骨を切断するようにしている。
【0004】
これにより、特許文献1の
図1(a)に示されている第1の方法では、手羽中の一端から二本の中骨の先端部が突出した骨付手羽とすることができる。また、特許文献1の
図1(b)に示されている第2の方法では、手羽元側から左右に開いて引き裂くことで二本の中骨を肉身ごと分離させた骨付手羽とすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記従来の発明によれば、鶏肉の手羽中を、外観的にも良好で、串や箸等を用いずに食べることができる付加価値の高い骨付肉とすることができ、また、肉本来の風味を損なうことなく、骨付手羽を得ることができる、とされている。しかしながら、実際には、次のような問題も生じていた。
【0007】
まず、上記第1の方法による骨付手羽の外観については、太さと長さの違う二本の中骨が肉身から突き出ているところが見た目にやや異様である。また、串や箸等を用いずに食べることができる点については、太さの違う二本の中骨の間隔が中途半端なため、各中骨を一緒に摘まんだときの指触りが悪く、結果、摘まみ持ちがしにくく、食べにくくなってしまう。
【0008】
更に、上記第2の方法による骨付手羽は、手羽中の肉が縦に裂かれているので、肉を包む筋膜が大きく破れており、加熱調理時に肉汁を含む水分が肉身から漏れ出るため、肉身がかたくなってしまい、軟らかくふっくらとした食感が得られず食べにくくなる。また、肉身が二つに分かれるため、それぞれの中骨に付いている肉身が細く小さくなり、ボリュームがなくなってしまうので、見た目も良いとはいえない。
【0009】
本発明は、以上の点を鑑みて創案されたものであり、肉身がまとまっていてボリュームがあるため、加熱調理したときの見た目も良く、軟らかくふっくらとした食感が得られると共に、食する際に摘まみ持ちがしやすく食べやすい骨付き手羽肉及びその加工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
〔1〕上記の目的を達成するために、本発明は、鶏肉の部位である手羽中とその先部につながる手羽先から成る手羽の、前記手羽先が切除され、前記手羽中の肉身は、略加工前の形態を留めており、前記手羽中内部の二本の中骨のうち、何れか一方の中骨が残してあり、前記手羽中の前記手羽先が切除された端部から、前記残した中骨が前記手羽中の長さ方向に所定の長さだけ突出している骨付き手羽肉である。
【0011】
本発明の骨付き手羽肉は、鶏肉の部位である手羽中とその先部につながる手羽先から成る手羽の、手羽先が切除されており、ほとんどの部分に骨が入っていて食べられない手羽先が付いていないので、骨付き手羽肉を食する際に食べやすくなる。
【0012】
手羽中の肉身は、略加工前の形態を留めているので、肉身がまとまっていてボリュームがあり、肉身の皮の中の肉表面の筋膜はほとんど破れていない。これにより、加熱調理時に肉汁等の水分が肉身から漏れ出しにくく、肉身内部の水分が加熱後も不足なく保たれるため、肉身は加熱蒸気の作用とも相俟って、軟らかくふっくらとした食感が得られるので、おいしく食べることができる。
【0013】
手羽中内部の二本の中骨のうち、何れか一方の中骨が残してあり、手羽中の手羽先が切除された端部から、残した中骨が手羽中の長さ方向に所定の長さだけ突出しているので、骨付き手羽肉を食する際に、手羽中に残っている中骨を指で摘まんで、調理後の肉身と長さ方向を共通にして持つことができるので、摘まみ持ちがしやすく肉身が食べやすい。
【0014】
〔2〕本発明の骨付き手羽肉は、前記手羽中の肉身は、前記手羽中の肉身が一つの塊である形態、及び前記手羽中の肉身が未加工である形態、及び前記手羽中の肉身の表面の略全体に筋膜がある形態を留めている構成とすることができる。
【0015】
手羽中の肉身が一つの塊である形態を留めている場合は、すなわち肉身が分離していないので筋膜が破れることもなく、加熱調理時にも肉汁等の水分が肉身から漏れ出しにくく、肉身内部の水分が加熱後も不足なく保たれるため、肉身は加熱蒸気の作用とも相俟って、軟らかくふっくらとした食感が得られるので、おいしく食べることができる。
【0016】
また、手羽中の肉身が未加工である形態を留めている場合は、すなわち肉身が分離したり、裏返して寄せたりするなどの変形もないので筋膜が破れることもなく、上記肉身が一つの塊である形態を留めている場合と同様の作用がある。更に、手羽中の肉身の表面の略全体に筋膜がある形態を留めている場合も、筋膜が整い、破れもないことになり、上記肉身が一つの塊である形態を留めている場合と同様の作用がある。
【0017】
〔3〕上記の目的を達成するために、本発明は、鶏肉の部位である手羽中とその先部につながる手羽先から成る手羽の、前記手羽中と前記手羽先を表皮方向に折り曲げて、前記手羽中内部の二本の中骨の先端部と前記手羽先の骨との接合を外す工程と、前記各中骨の先端部を裏皮の内面に押し付けて、前記裏皮を付き破り突出させる工程と、前記各中骨を、前記手羽中の手羽元側の端部で接合する軟骨を切断して前記各中骨を切り離す工程と、前記手羽中内部の二本の中骨のうち、何れか一方を前記手羽中の肉身から抜き取り、他方を残す工程と、前記手羽中の先端につながる手羽先を切除する工程とを備える骨付き手羽肉の加工方法である。
【0018】
本発明の骨付き手羽肉の加工方法は、鶏肉の部位である手羽中とその先部につながる手羽先から成る手羽の、手羽中と手羽先を表皮方向に折り曲げて、手羽中内部の二本の中骨の先端部と前記手羽先の骨との接合を外すことで、各中骨の先端部が自由に動くようになり、次の各中骨による裏皮の突き破りが可能になる。
【0019】
各中骨の先端部を裏皮の内面に押し付けて、裏皮を付き破り突出させることにより、外側から中骨の先端部が持ちやすいので、後の中骨の抜き取り作業がしやすくなる。また、各中骨を、手羽中の手羽元側で接合する軟骨を切断して各中骨を切り離すことにより、後に中骨を手羽中から抜き取る際に、抵抗が小さくなるので、作業がしやすく、中骨に肉身の一部が引っ掛かる等して剥がれてしまうことを抑止できる。
【0020】
手羽中内部の二本の中骨のうち、何れか一方を手羽中の肉身から抜き取り、他方を残すことにより、加熱調理後に手羽中に他方の中骨が肉身とつながったまま残っているので、食する際に中骨を持って摘まみ持ちがしやすく食べやすい。
【0021】
また、手羽中の先端につながる手羽先を切除することにより、加熱調理後の骨付き手羽肉を食する際に、ほとんどの部分に骨が入っていて食べられない手羽先が付いていないので、骨付き手羽肉を食する際に食べやすくなる。
【0022】
なお、上記骨付き手羽肉の加工方法によれば、手羽中に大きな傷や破れは生じにくく、手羽中の肉身は略加工前の形態を留めているので、肉身がまとまっていてボリュームがあり、肉身の肉表面の筋膜はほとんど破れていない骨付き手羽肉を得ることができる。
【0023】
これにより、骨付き手羽肉の加熱調理時には、肉汁等の水分が肉身から漏れ出しにくく、肉身内部の水分が加熱後も不足なく保たれるため、肉身は加熱蒸気の作用とも相俟って、軟らかくふっくらとした食感が得られるので、おいしく食べることができる。
【0024】
〔4〕本発明の骨付き手羽肉の加工方法は、前記手羽中の肉身から抜き取る中骨が細い方の中骨であり、前記手羽中の肉身に残す中骨が太い方の中骨である方が好ましい。
【0025】
この場合は、手羽中の肉身から抜き取る中骨が細い方の中骨であり、肉身から抜き取るときに抵抗が少なく、抜き取りやすい。また、手羽中の肉身に残す中骨が太い方の中骨となるので、肉身につながっている太い方の中骨を、肉身を食べる際に、例えばヤキトリの串のようにして使用できる。串となる中骨は、太く充分な強度があり、指で摘まみやすい。これにより、加熱調理した骨付き手羽肉の加熱調理後の肉身を食する際に、中骨を持って摘まみ持ちがしやすく、取り落とすこともないので、食べやすい。
【0026】
〔5〕本発明の骨付き手羽肉の加工方法は、前記中骨を抜き取る際に、前記手羽中の肉身の筋繊維方向と略平行方向に抜き取る方が好ましい。
【0027】
この場合は、手羽中の肉身の筋繊維方向と略平行方向に抜き取ることにより、肉身の表面にある筋膜を傷付けるのは、抜き取る中骨が抜けるところだけとすることができ、この中骨の太さ程度に充分に小さくすることができる。また、抜き取る中骨に肉身の一部が引っ掛かる等して剥がれて、肉身と共に取られることが抑えられる。
【0028】
〔6〕本発明の骨付き手羽肉の加工方法は、前記手羽先の切除を、前記手羽先を前記中骨の先端部に略揃えて直線的に切り落として行う方が好ましい。
【0029】
この場合は、手羽先の切除を、手羽先を中骨の先端部に略揃えて直線的に切り落として行うので、余計な皮の端切れなどが残らない。これにより、肉身の端部が中骨の先端部に略揃うので、加熱調理したときも姿が整い、きれいな見た目となり、商品価値も高い。
【発明の効果】
【0030】
本発明は、肉身がまとまっていてボリュームがあるため、加熱調理したときの見た目も良く、軟らかくふっくらとした食感が得られると共に、食する際に摘まみ持ちがしやすく食べやすい骨付き手羽肉及びその加工方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】本発明の骨付き手羽肉の材料となる鶏肉の手羽の形状を示す説明図である。
【
図2】手羽の手羽先と手羽中を表皮方向に折り曲げて、二本の中骨の先端部と手羽先との接合を外し、各中骨の先端部を裏皮の内面に押し付けている状態を示す説明図である。
【
図3】
図2の状態から、手羽中の二本の中骨の先端部を、裏皮を突き破って突出させた状態を示す説明図である。
【
図4】
図3に示す手羽に対して行う一連の下処理の方法を示す説明図である。
【
図5】
図4に示す下処理後の骨付き手羽肉の形を示し、(a)は下処理後の骨付き手羽肉の形を示す説明図、(b)は骨付き手羽肉を加熱調理した骨付き手羽肉を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
図1乃至
図5を参照して、本発明の実施の形態を更に詳細に説明する。
なお、鶏の手羽の各部の名称については、慣例的には異なるいい方もあるが、本願明細書では、
図1に示すものを手羽1といい、その基部の肉身が多く付いた部分を手羽中11といい、手羽中11の先につながるやや尖鋭な形をした部分を手羽先12ということとする。この手羽1は、左側の手羽であり、生体では左側の手羽元(図示省略)につながっている。
【0033】
〔手羽1について〕
手羽1は、上記のように、基部の手羽中11と、その先端につながる手羽先12により構成されている。このうち、手羽中11は肉身13が多く付いており、食されるのは、もっぱらこの肉身13の部分である。また、手羽先12は骨と皮だけで構成され、肉身は略付いていない。
【0034】
手羽中11の肉身13の内部には、二本の中骨14、15が所定の間隔で並行して通っている。手羽中11の内側(
図1で上側)を通る中骨14は、加熱調理後に食する際に指で摘まみ持ちができる充分な太さがあり、加工後の骨付き手羽肉C1に残す側(付けたままにする側)の骨である。
【0035】
また、手羽中11の外側(
図1で下側)を通る中骨15は、上記中骨14よりも細くてやや長い。中骨15は、後述するように加工の過程において手羽中11から抜き取って、加工後の骨付き手羽肉には残さない側の骨である。
【0036】
中骨14、15は、先端部(
図1で左端部)が手羽先12の骨(図示省略)と関節で接合している。中骨14、15の基端部(
図1で右端部)は、生体では手羽元と関節で接合していたものであり、手羽1の状態では、この関節の部分で切断されている。この関節は、軟骨で覆われているため、切断しても、中骨14、15の基端部同士は、関節の一部である軟骨16でつながったままである(
図1参照)。
【0037】
〔骨付き手羽肉C1の加工方法について〕
本発明の骨付き手羽肉C1は、上記手羽1を加工してつくる。骨付き手羽肉C1をつくる作業は、作業者の手作業により行うが、工程によってはナイフ7を合わせて使用する。以下、その加工方法の各工程を説明する。
【0038】
(1)作業者が、手羽1を裏皮17が見えるように裏返しにして、手羽中11と手羽先12を手で持つ。次に、手羽中11と手羽先12を表皮18の方向に折り曲げるようにして、手羽中11の内部の二本の中骨14、15の先端部と手羽先12の骨との接合を外す(
図2参照)。
【0039】
(2)作業者は、
図2に示す状態から、更に手羽中11の中骨14、15に力を作用させて、その先端部を裏皮17の内面に強く押し付けるようにして、裏皮17を付き破って突出させる(
図2、
図3参照)。この際、中骨14、15の基端部をまな板等に強く押し付けて行うと、比較的容易に突出させることができる。
【0040】
(3)中骨14、15の先端部を裏皮17から突出させたら、手羽1を持ち替えて、手羽中11の基部にある、中骨14、15をつないでいる軟骨16をナイフ7(或いは、鶏のブツ切り等をつくるナタ等)で切断する(
図4(a)参照)。
【0041】
(4)そして、先端部が裏皮17の皮口19から出ている細い方の中骨15を外方向(矢印方向)へ引き抜く(
図4(b)参照)。このとき、中骨15は、基端部が中骨14から切り離されており(
図4(a)参照)、骨自体も細いので、比較的スムーズな引き抜きが可能である。
【0042】
なお、この中骨15の引き抜きは、上記したように矢印方向、すなわち肉身13の略筋繊維方向と平行にゆっくり行うようにしており、中骨15(特に上記軟骨16の切断部)に肉身13の一部が引っ掛かる等して剥がれることがないようにする。また、肉身13の表面を覆う筋膜を傷付けるのは、抜き取る中骨15が抜けるところだけとすることができ、この中骨15の太さ程度に充分に小さくすることができる。仮に中骨15を矢印方向に対して大きな角度を付けて引き抜くと、その分だけ筋膜の破れが大きくなり、後述するような加熱調理後の食感の良さを阻害してしまう。
【0043】
(5)最後に、手羽先12を手羽中11との境界部分でナイフ7を使用して切除する(
図4(c)参照)。この切除作業は、手羽先12を中骨14の先端部に略揃えて直線的に切り落として行うようにする。このようにして、骨付き手羽肉C1を得ることができる(
図5(a)参照)。
【0044】
なお、上記のような手羽先12の切り落としを行うと、余計な皮の端切れなどが残らず、肉身13の端部が中骨14の先端部に略揃う。これにより、加熱調理したときも骨付き手羽肉C2の姿(形)が整い、きれいな見た目となり、商品価値も高くなる。なお、手羽先の切除は、これに限定せず、手羽先12の骨を皮に沿って削ぎ落として皮を一部残すようにすることもできる。
【0045】
〔骨付き手羽肉C1と調理後の骨付き手羽肉C2について〕
骨付き手羽肉C1は、上記のように加工されることにより、次のような形態となっている。すなわち、手羽中11の先端につながる手羽先12が切除されており、手羽中11の肉身13には、加工によって大きな傷や破れはなく、略加工前の形態を留めている。
【0046】
また、手羽中11の先端部から、手羽中11の長さ方向に、太い方の中骨14が所定の長さだけ突出している。詳しくは、中骨14は、手羽中11の肉身13の内部から肉身13と裏皮17を突き破って外に突出した後は、肉身13の形が元に戻ることにより、先端部を残して肉身13内部に収まっている(
図5(a)参照)。
【0047】
そして、加熱調理前の骨付き手羽肉C1は、手羽中11の肉身13が略加工前の形態を留めているので、肉身13が一つの塊にまとまっていてボリュームがあり、肉身13に特に加工(肉身を寄せたり、切ったり、裏返したり、或いは丸めたりするなどの加工)がされていない。また、肉身13の裏皮17と表皮18の中の肉身13表面の筋膜(図示省略)もほとんど破れていない。
【0048】
これにより、骨付き手羽肉C1は、焼き調理や蒸し調理等の加熱調理時において、肉汁等の水分が肉身13から漏れ出しにくく、多少漏れ出たとしても、肉身13内部の水分が加熱後も不足なく充分に保たれる。上記加熱調理における蒸し調理の一例を挙げると、次の通りである。なお、上記骨付き手羽肉C1の加工について、ここでは簡易的に説明している。
【0049】
手羽1の表皮18の面を下にし、両手で手羽1を持ち、関節のつなぎ目にある大小の中骨14、15の端部を押し出すように反らせ、裏皮17から飛び出させる。手羽1の手羽元に繋がる中骨17、18の端部を繋ぐ軟骨16を切った後、飛び出させた細い方の中骨15を引き抜き、手羽先12を切り落とす。
【0050】
そして、自動餃子グリラー(タニコー株式会社製:TZ-60GF-3)を使用し、骨付き手羽肉C1の表皮18を下にして焼き台に載せ、蓋を閉める。そして、例えば設定温度227度、前焼時間3秒、注水140CC、焼始温度190度、焼き時間4分00秒で調理を行う。このように、骨付き手羽肉C1を高温で一気に蒸し焼きにすることにより、他にはない舌触りと食感が得られる。また、骨付き手羽肉C1の上記独自の形態は、摘まみ持ちでの食べやすさを確立している。
【0051】
上記のような調理によれば、加熱調理後の肉身130や表皮180は加熱蒸気の作用とも相俟って、軟らかくふっくらとした食感が得られるので、おいしく食べることができる。また、ほとんどの部分に骨が入っていて食べられない手羽先12は付いていないので食べやすい(
図5(b)参照)。
【0052】
なお、骨付き手羽肉としては、他に図示をしていない、所謂チューリップ(チキンフラワーともいわれる)がある。このチューリップは、太い方の中骨の一端部に手羽中の肉身を裏返しにして丸めてまとめたもので、一般的には所定の味付けをした後、唐揚げによる加熱調理が行われる。
【0053】
しかし、チューリップは、加工の際に裏皮から突き出した二つの中骨を指で大きく開いた後、分かれた肉身を裏返しにし、細い中骨は抜き取るため、筋膜は大きく破れている。つまり、加熱調理においては肉汁等の水分が肉身から漏れ出しやすく、軟らかくふっくらとした食感は得られない傾向がある。これに対して、本発明の加熱調理後の骨付き手羽肉C2では、上記したように軟らかくふっくらとした食感が得られるので、よりおいしく食べることができる。
【0054】
また、骨付き手羽肉C1でもボリュームがあった手羽中11の肉身13は、加熱調理によって生のときより長さがやや縮んでいるが、太さ(ボリューム)は充分に保たれている。また、調理後の手羽中11の先端部からは、手羽中11の長さ方向に、手羽中11の太い方の中骨14だけが所定の長さだけ突出している(
図5(a)、(b)参照)。
【0055】
そして、加熱調理後の骨付き手羽肉C2を食する際には、上記突出長さがより長くなった、太くしっかりとした中骨14を指で摘まんで持つことができるので、摘まみ持ちがしやすく、中骨14に付いている肉身130を食べるときに食べやすい。
【0056】
本明細書及び特許請求の範囲で使用している用語と表現は、あくまでも説明上のものであって、なんら限定的なものではなく、本明細書及び特許請求の範囲に記述された特徴およびその一部と等価の用語や表現を除外する意図はない。また、本発明の技術思想の範囲内で、種々の変形態様が可能であるということは言うまでもない。
【符号の説明】
【0057】
C1 骨付き手羽肉
1 手羽
11 手羽中
12 手羽先
13 肉身
14 太い方の中骨
15 細い方の中骨
16 軟骨
17 裏皮
18 表皮
19 皮口
C2 加熱調理後の骨付き手羽肉
130 加熱調理後の肉身
180 加熱調理後の表皮
【要約】
【課題】肉身がまとまっていてボリュームがあるため、加熱調理したときの見た目も良く、軟らかくふっくらとした食感が得られると共に、食する際に摘まみ持ちがしやすく食べやすい骨付き手羽肉を提供する。
【解決手段】骨付き手羽肉C1は、鶏肉の手羽1を構成する手羽中11の先端につながる手羽先12が切除され、手羽中11の肉身13は、略加工前の形態を留めており、手羽中11の先端部から、手羽中11の長さ方向に、手羽中11内部の二本の中骨14、15のうち太い方の中骨14だけが手羽中11の肉身13の内部から裏皮17を突き破って突出している。
【選択図】
図5