(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-20
(45)【発行日】2023-09-28
(54)【発明の名称】防音パネル
(51)【国際特許分類】
E04G 21/32 20060101AFI20230921BHJP
E04G 5/00 20060101ALI20230921BHJP
【FI】
E04G21/32 B
E04G5/00 301E
(21)【出願番号】P 2023079350
(22)【出願日】2023-05-12
【審査請求日】2023-05-22
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】520124383
【氏名又は名称】株式会社CSPホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100121821
【氏名又は名称】山田 強
(74)【代理人】
【識別番号】100207859
【氏名又は名称】塩谷 尚人
(72)【発明者】
【氏名】宮澤 直希
【審査官】吉村 庄太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-297528(JP,A)
【文献】実開昭59-069368(JP,U)
【文献】特開2017-043938(JP,A)
【文献】特開平02-058678(JP,A)
【文献】登録実用新案第3094544(JP,U)
【文献】特開2017-203556(JP,A)
【文献】登録実用新案第3094164(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 21/32
E04G 5/00
E04H 17/00
F24F 7/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
工事現場において工事対象物の周りに配置される足場の側面に設けられ、足場の側面を覆う防音パネルであって、
少なくとも上下方向に延びる縦枠を有する枠体と、
前記枠体で囲まれた領域内を覆う遮蔽パネルと、を備え、
前記遮蔽パネルは、複数枚のパネル体が重ねられて構成されるものであり、
それぞれの前記パネル体には、それぞれ通風孔が設けられており、
複数の前記パネル体のうち少なくともいずれか1枚は、前記縦枠に従って上下方向にスライド移動可能なスライドパネルであり、
前記スライドパネルを第1位置にスライド移動させたとき、それぞれの前記パネル体の通風孔が重なる一方、前記スライドパネルを前記第1位置とは異なる第2位置にスライド移動させたとき、互いの前記パネル体によって、それぞれの前記パネル体の通風孔が塞がれ
、
前記遮蔽パネルは、足場側に配置される内側パネルと、足場側とは反対側となる外側に配置される外側パネルと、が重ねられて構成されるものであり、
前記内側パネルが前記枠体に対して固定される固定パネルであり、
前記外側パネルが、上下方向にスライド移動可能なスライドパネルであり、
前記外側パネルの足場側側面には、当該足場側側面から突出する把手が設けられており、
前記内側パネルには、前記把手を露出させ、かつ、前記把手を上下方向に移動可能にするスリットが設けられている防音パネル。
【請求項2】
前記第1位置は、前記第2位置よりも上方の位置である請求項
1に記載の防音パネル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築現場や解体現場などに設置される防音パネルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、建築現場や解体現場などの工事現場では、足場を設置して工事を行う。その際、工事現場から生じる粉塵や騒音が極力外に漏れないように、足場側面をシートや防音パネルで覆うことが一般的である。
【0003】
ところで、台風などが通過する場合、足場側面に設置された防音パネル等は、横から強風による荷重を受ける。特に、ビルなどの高所の現場においてはその影響が顕著である。このため、強風が予想される場合、防音パネル等を一時的に撤去するなど、強風対策のための作業が必要となっていた。
【0004】
そこで、特許文献1では、側面部を覆う防音パネルを開閉可能に構成している。これにより、開放された防音パネルの隙間から風を通過させることができ、風による荷重を低減することができた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、防音パネルを完全に開放すると、開口部から、工具などの物体が落下する可能性が高くなる。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、開放時においても所定の大きさ以上の物体を通過させない防音パネルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための第1の手段は、工事現場において工事対象物の周りに配置される足場の側面に設けられ、足場の側面を覆う防音パネルであって、少なくとも上下方向に延びる縦枠を有する枠体と、前記枠体で囲まれた領域内を覆う遮蔽パネルと、を備え、前記遮蔽パネルは、複数枚のパネル体が重ねられて構成されるものであり、それぞれの前記パネル体には、それぞれ通風孔が設けられており、複数の前記パネル体のうち少なくともいずれか1枚は、前記縦枠に従って上下方向にスライド移動可能なスライドパネルであり、前記スライドパネルを第1位置にスライド移動させたとき、それぞれの前記パネル体の通風孔が重なる一方、前記スライドパネルを前記第1位置とは異なる第2位置にスライド移動させたとき、互いの前記パネル体によって、それぞれの前記パネル体の通風孔が塞がれることを要旨とする。
【0009】
これにより、強風が予想される場合、パネル体をスライド移動させて通風孔を重ねることによって、風を通過させることができる。したがって、強風の場合において、防音パネルを一旦解体して取り外す手間を省くことが可能となる。また、通風孔の大きさを調整することにより、風を通過させる一方で、所定以上の大きさの物体が通過することを防止できる。
【0010】
上記課題を解決するための第2の手段は、工事現場において工事対象物の周りに配置される足場の側面に設けられ、足場の側面を覆う防音パネルであって、少なくとも水平方向に延びる横枠を有する枠体と、前記枠体で囲まれた領域内を覆う遮蔽パネルと、を備え、前記遮蔽パネルは、足場側に配置される内側パネルと、足場側とは反対側となる外側に配置される外側パネルと、が重ねられて構成されるものであり、前記外側パネルは、前記横枠に従って水平方向にスライド移動可能なスライドパネルであり、前記内側パネル及び前記外側パネルには、それぞれ通風孔が設けられており、前記外側パネルを第1位置にスライド移動させたとき、前記内側パネル及び前記外側パネルの通風孔が重なる一方、前記外側パネルを前記第1位置とは異なる第2位置にスライド移動させたとき、前記内側パネル及び前記外側パネルによって、相互の通風孔が塞がれることを要旨とする。
【0011】
これにより、強風が予想される場合、外側パネルをスライド移動させて通風孔を重ねることによって、風を通過させることができる。したがって、強風の場合において、防音パネルを一旦解体して取り外す手間を省くことが可能となる。また、通風孔の大きさを調整することにより、風を通過させる一方で、所定以上の大きさの物体が通過することを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図2】工事現場における防音パネルの設置態様を模式的に示す斜視図。
【
図8】(a)は、閉鎖時における防音パネルの正面図、(b)は、開放時における防音パネルの正面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明にかかる「防音パネル」を具体化した実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0014】
図1に示すように、建設現場や、解体現場、土木工事現場などの工事現場において、建築物10の周りには、仮設の足場11が設置される。工事対象物である建築物10は、建設現場や土木工事現場の場合には、建築対象であり、解体現場の場合には、解体対象である。
【0015】
この足場11は、周知の構成を有しており、例えば、複数の縦支柱12と、縦支柱12の間に固定される水平足場配管13と、水平足場配管13に取り付けられる足場板14等を備える。
【0016】
図2に示すように、防音パネル20は、足場11の側面に設けられ、足場11の側面を覆うものである。より詳しくは、防音パネル20は、足場11に対して、建築物10とは反対側の側面に設けられており、足場11の側面を覆って、工事現場から生じる細かいコンクリート粉などの塵埃や、騒音が外部に漏れることを抑制するものである。また、防音パネル20は、塵埃以外の物体(工具など)の落下や、作業員が転落することを抑制する役割も有する。なお、
図2では、防音パネル20を模式的に示しており、詳細な構成や図については後述する。
【0017】
ところで、従来において、防音パネルは、塵埃や騒音が外部に漏れることを抑制する役割が期待されているため、風なども当然通過させない。このため、強風が吹いたとき、風荷重が防音パネルに加わり、風にあおられやすくなっている。また、足場は、建築物の高さに応じて、複数階に亘って設けられる場合もあり、この場合、強風にあおられて倒壊する虞もある。このため、従来においては、強風が予想される天候の場合(例えば、台風などの場合)、防音パネルや足場を一旦解体して撤去しており、大変な手間が生じていた。そこで、本実施形態では、次のように防音パネル20を構成した。以下、詳しく説明する。
【0018】
なお、
図3は、外側から見たとき(いわゆる表側)における防音パネル20の正面図であり、
図4は、内側(建築物10の側、若しくは足場11の側)から見たとき(いわゆる裏側)における防音パネル20の背面図である。また、本実施形態において、奥行方向とは、防音パネル20に垂直となる方向であり、建築物10の側が、奥行方向の内側に相当し、建築物10とは反対側が、奥行方向の外側に相当する。
【0019】
図3及び
図4に示すように、防音パネル20は、長方形状に形成された枠体30と、枠体30の内側を覆う遮蔽パネル40と、を備える。遮蔽パネル40は、複数枚のパネル体が重ねられて構成されているものであり、本実施形態では、内側に配置される内側パネル41と、外側に配置される外側パネル42の2枚のパネル体が重ねられて構成されている。
【0020】
まず、枠体30について説明する。
図3に示すように、枠体30は、一対の縦枠31と、一対の横枠32を備え、横枠32のほうが縦枠31よりも長い長方形状となっている。防音パネル20は、通常、縦枠31が上下方向に沿い、かつ、横枠32が左右方向(水平方向)に沿うように配置される。つまり、縦枠31が左右両辺に配置され、横枠32が上辺及び底辺に配置される。
【0021】
なお、一対の縦枠31のうち、外側(表側)から見て(
図3において)、右側に配置されるものを、右枠31Rと示し、左側に配置されるものを、左枠31Lと示す場合がある。一対の横枠32のうち、上側に配置されるものを、上枠32Uと示し、下側に配置されるものを、下枠32Dと示す場合がある。
【0022】
縦枠31及び横枠32は、断面がU字形状のレール形状をしている。詳しくは、
図5(a)に示すように、上枠32Uは、内側に配置される内側側壁33と、外側に配置される外側側壁34と、底部35と、を有する。図示しないが、下枠32Dも、上枠32Uと同様である。同様に、
図6(a)に示すように、右枠31Rも、内側に配置される内側側壁33と、外側に配置される外側側壁34と、底部35と、を有する。図示しないが、左枠31Lも同様である。そして、縦枠31及び横枠32は、それぞれ枠体30の内側に開口するように配置される。つまり、下枠32Dは、上方に開口するように下方に底部35が位置するように配置され、上枠32Uは、下方に開口するように上方に底部35が位置するように配置される。同様に、右枠31Rは、左側に開口するように右側に底部35が位置するように配置され、左枠31Lは、右側に開口するように左側に底部35が位置するように配置される。
【0023】
そして、これらの縦枠31及び横枠32の内部に遮蔽パネル40の外縁部分が収容されている。つまり、上枠32Uの内側側壁33と外側側壁34との間に、遮蔽パネル40の上辺部分が収容され、下枠32Dの内側側壁33と外側側壁34との間に、遮蔽パネル40の下辺部分が収容されている。同様に、右枠31Rの内側側壁33と外側側壁34との間に、遮蔽パネル40の右辺部分が収容され、左枠31Lの内側側壁33と外側側壁34との間に、遮蔽パネル40の左辺部分が収容されている。なお、
図5、
図6に示すように、遮蔽パネル40を構成する内側パネル41と外側パネル42は、重ねられた状態で収められている。
【0024】
次に遮蔽パネル40について説明する。
図4に示すように、遮蔽パネル40を構成する内側パネル41は、長方形状の一枚板により構成されている。内側パネル41の素材は、任意であるが、例えば、薄い金属板により構成されている。内側パネル41は、枠体30で囲まれた領域全体を覆うようにして、枠体30に固定されている。その際、
図5及び
図6に示すように、内側パネル41の外縁部分は、それぞれ縦枠31及び横枠32の内部に収容され、内側側壁33に固定されている。内側パネル41の外縁部分は、溶接、ビス止め、接着などの任意の固定方法で固定される。すなわち、内側パネル41は、枠体30に対して移動しない固定パネルである。
【0025】
また、
図4に示すように、内側パネル41には、複数の通風孔41aが設けられている。通風孔41aは、丸孔としているが、角孔、長孔等の任意の形にしてもよい。通風孔41aは、上下方向に複数列、左右方向に複数列となるように、所定間隔を空けて縦横に整列されている。要するに、内側パネル41は、金型を使って孔あけ加工を施した金属の板であるパンチングメタルである。また、内側パネル41の中央部分には、上下方向に延びるスリット41bが形成されている。
【0026】
次に、遮蔽パネル40を構成する外側パネル42について説明する。
図3に示すように、外側パネル42は、長方形状の一枚板により構成されている。外側パネル42の素材は、任意であるが、例えば、薄い金属板により構成されている。
【0027】
外側パネル42は、枠体30で囲まれた領域の大部分を覆う程度の大きさを有する。具体的には、外側パネル42の左右方向における寸法は、内側パネル41の左右方向における寸法と同じである。このため、外側パネル42を枠体30に取り付けたとき、外側パネル42と、右枠31R又は左枠31Lとの間に隙間ができない。
【0028】
一方、外側パネル42の上下方向における寸法は、内側パネル41の上下方向における寸法よりも、短い。このため、
図8に示すように、外側パネル42を枠体30に取り付けたとき、外側パネル42と、上枠32U又は下枠32Dとの間に隙間が形成される。なお、
図8は、表側から防音パネル20を見たときの図であり、内側パネル41をハッチングで図示している。
【0029】
そして、外側パネル42は、枠体30に対して、上下方向にスライド移動可能なように、枠体30に収容されている。つまり、外側パネル42の左右の外縁部分は、右枠31R及び左枠31Lの内部に収容される一方で、上下方向にスライド移動可能となるように、右枠31R及び左枠31Lに固定されていない。すなわち、外側パネル42は、枠体30に対して上下方向にスライド移動可能なスライドパネルであり、右枠31R及び左枠31Lは、外側パネル42をスライド移動可能に保持するスライドレールである。
【0030】
また、
図4及び
図7に示すように、外側パネル42の略中央には、外側パネル42に対して立設する把手42bが固定されている。把手42bは、
図7に示すように、L字状の板状に形成されており、基端が外側パネル42に固定され、先端が外側パネル42に対して垂直となる。詳しくは、
図7に示すように、外側パネル42に形成された貫通孔42cを介して、把手42bの先端部分が外側パネル42の外側から内側に向かって挿通されている。そして、把手42bの基端部分が外側パネル42の外側側面に固定されている。基端部分は、溶接、ビス止め、接着などの任意の固定方法で外側パネル42に固定されている。
【0031】
そして、この把手42bの先端部分は、内側パネル41に形成されたスリット41bを介して内側に突出している。また、
図4に示すように、スリット41bの左右方向における寸法は、把手42bの左右方向における寸法以上となっている。そして、
図7に示すように、スリット41bの上下方向における寸法は、把手42bを所定距離L1だけ上下方向にスライド移動させることができるように、所定距離L1となっている。この把手42bを把持して上下方向にスライド移動することにより、防音パネル20の内側(足場側)から容易に外側パネル42をスライド移動させることができる。
【0032】
また、外側パネル42には、複数の通風孔42aが設けられている。通風孔42aは、丸孔としているが、角孔、長孔等の任意の形にしてもよい。通風孔42aは、上下方向に複数列、左右方向に複数列となるように、所定間隔を空けて縦横に整列されている。要するに、外側パネル42は、金型を使って孔あけ加工を施した金属の板であるパンチングメタルである。
【0033】
そして、外側パネル42の通風孔42aは、内側パネル41の通風孔41aと一致するように、その形状、数、及び配置が決められている。つまり、外側パネル42の通風孔42aは、内側パネル41の通風孔41aと同数であり、かつ、同径の丸孔である。また、外側パネル42の通風孔42aの縦横の配列数と、内側パネル41の通風孔41aの縦横の配列数とが同じであり、かつ、通風孔42aの配置間隔と、通風孔41aの配置間隔とが同じとなっている。
【0034】
ここで、
図8(a)に、外側パネル42を下方にスライド移動させ、下枠32Dに外側パネル42の下辺が収容された状態における防音パネル20の正面図を示す。なお、
図8では、図示の都合上、内側パネル41をハッチングして示している。
図8(a)に示すように、外側パネル42が下方に配置されている場合、それぞれのパネル41,42によって、互いの通風孔41a,42aが塞がれることとなる。つまり、下枠32Dに外側パネル42の下辺が収容された状態では、
図5(a)、
図6(a)及び
図7(a)に示すように、外側パネル42の通風孔42aは、内側パネル41によって塞がれ、内側パネル41の通風孔41aは、外側パネル42によって塞がれる。本実施形態では、下枠32Dに外側パネル42の下辺が収容されたとき、外側パネル42が第2位置に配置されたことに相当する。
【0035】
図8(b)に、外側パネル42を上方にスライド移動させ、上枠32Uに外側パネル42の上辺が収容された状態における防音パネル20の正面図を示す。
図8(b)に示すように、外側パネル42が上方に配置されている場合、外側パネル42の通風孔42aと、内側パネル41の通風孔41aの位置がほぼ一致する。これにより、
図5(b)、
図6(b)及び
図7(b)に示すように、外側パネル42の通風孔42aと、内側パネル41とが連通し、遮蔽パネル40の内外を貫通することとなる。本実施形態では、上枠32Uに外側パネル42の上辺が収容されたとき、外側パネル42が第1位置に配置されたことに相当する。
【0036】
次に本実施形態の防音パネル20の使用方法及び効果について説明する。
【0037】
通常時においては、
図8(a)に示すように、外側パネル42を下方にスライド移動させ、下枠32Dに外側パネル42の下辺が収容された状態にする。これにより、全ての通風孔41a,42aが塞がれるため、塵埃や騒音などが外部に漏れることを抑制することができる。また、スライド移動する外側パネル42が外側に配置されているため、内側から工具や作業員がぶつかったとしても、外側パネル42がずれて、通風孔41a,42aが開口してしまうことを防止できる。また、外側パネル42は、下方に配置されているため、自重や振動により上方にずれることがなく、通風孔41a,42aが開口することを防止できる。
【0038】
一方、強風が予想される天候の場合、
図8(b)に示すように、外側パネル42を上方にスライド移動させ、上枠32Uに外側パネル42の上辺が収容された状態にする。これにより、
図5(b)、
図6(b)及び
図7(b)に示すように、外側パネル42の通風孔42aと、内側パネル41の通風孔41aの位置がほぼ一致し、連通するため、風を好適に通過させることができる。よって、強風などにより防音パネル20が倒れることを抑制できる。
【0039】
また、開放時において、防音パネル20は、通風孔41a,42aを介して風を通過させる一方で、通風孔41a,42aよりも大きい物体が外側に落下することを防止できる。このため、通風孔41a,42aの大きさを調整することにより、防音パネル20の開放時においても、工具などが外側に落下することを防止できる。
【0040】
また、遮蔽パネル40は、枠体30の内側を覆っているため、コンクリート片などの塵埃等が、遮蔽パネル40に当たって落下し、遮蔽パネル40の足下にたまりやすい。しかしながら、内側パネル41は、枠体30の内側側壁33に固定されており、外側パネル42は、外側に配置され、縦枠31に沿って上下方向にスライド移動させるように構成されている。このため、塵埃等が生じやすい現場においても、枠体30の内部に塵埃等が入り込むことがなく、好適にスライド移動させることができる。
【0041】
コンクリート片などの塵埃等は、遮蔽パネル40に当たって落下し、遮蔽パネル40の足下にたまりやすい。このため、遮蔽パネル40の下辺近傍に通風孔41a,42aを設けると、開放時において、足下に溜まった塵埃等が外部に飛散しやすい。そこで、通風孔41a,42aを、下枠32Dよりも予め決められた距離L2以上、上方に配置した。これにより、開放時において、足下に溜まった塵埃等が外部に飛散することを抑制できる。
【0042】
なお、内側パネル41と外側パネル42とは密接しているため、その摩擦力により、自重で下方に移動することはない。つまり、外側パネル42を上方に移動させた場合において、外側パネル42に対して下方へ所定以上の力が加えられなければ、下方に移動することはない。
【0043】
(変形例)
・上記実施形態において、枠体30は、長方形状としたが、正方形状としてもよい。また、枠体30を上下方向に長い長方形状としてもよい。
【0044】
・上記実施形態において、外側パネル42をスライド移動可能に構成するのであれば、左右方向にスライド移動させてもよい。
【0045】
・上記実施形態において、把手42bの数や配置は任意に変更してもよい。また、形状も任意に変更してもよい。
【0046】
・上記実施形態において、枠体30において、上枠32Uと、下枠32Dと、を繋ぐように、上下方向に延びる柱部材が設けられていてもよい。例えば、枠体30の左右方向中央に、上下方向に延びるように形成された柱部材が設けられていてもよい。この柱部材は、枠体30を補強するためのものである。
【0047】
・上記実施形態において、上下方向にスライド移動させるのであれば、奥行方向において、内側パネル41と外側パネル42の配置を入れ替えてもよい。すなわち、上下方向にスライド移動させるのであれば、内側のパネル体をスライド移動させるように構成してもよい。
【0048】
・上記実施形態において、外側パネル42を下方にスライド移動させたとき、通風孔41a,42aが開放し、上方にスライド移動させたとき、通風孔41a,42aが塞がれるように構成してもよい。
【0049】
・上記実施形態において、外側パネル42の移動を規制するロック機構をもうけてもよい。例えば、防音パネル20の開放時(又は閉鎖時)において、内側パネル41と外側パネル42とを貫通する貫通孔を設け、当該貫通孔に閂を挿通して、上下方向の移動を規制してもよい。これによれば、開放していた通風孔41a,42aが意図せず閉じることや、閉鎖していた通風孔41a,42aが意図せず開くことを抑制できる。なお、防音パネル20の開放時においては、閂が挿通される貫通孔として通風孔41a,42aを流用してもよい。
【0050】
・上記実施形態において、外側パネル42の上辺が上枠32Uの内部に収容されたとき、通風孔41a,42aの位置が一致するようにしたが、上枠32Uの内部に収容されなくても、一致するようにしてもよい。つまり、予め決められた任意の第1位置に移動させたとき、通風孔41a,42aの位置が一致するようにしてもよい。同様に、外側パネル42の下辺が下枠32Dの内部に収容されたとき、通風孔41a,42aが塞がれるようにしたが、下枠32Dの内部に収容されなくても、塞がれてもよい。つまり、予め決められた任意の第2位置に移動させたとき、通風孔41a,42aが塞がれるようにしてもよい。なお、第1位置は、第2位置よりも上方に存在することが望ましい。
【0051】
・上記実施形態において、外側パネル42のスライド移動をスムーズにするために、戸車などのスライド機構を設けてもよいし、外側パネル42の左右方向両端に突起部を設けて、縦枠31に対して点接触又は線接触させてもよい。
【0052】
・上記実施形態において、遮蔽パネル40を3枚以上のパネル体で構成してもよい。例えば、奥行方向において内外に2枚の固定パネル(上記内側パネル41に相当)を配置し、2枚の固定パネルの間にスライドパネル(上記外側パネル42に相当)を配置し、2枚の固定パネルで奥行方向からスライドパネルを挟み込むようにしてもよい。このようにすれば、防音パネル20の外側(表側)から何かがぶつかっても、2枚の固定パネルに挟まれるスライドパネルがずれてしまうことを抑制できる。つまり、開放していた通風孔41a,42aが意図せず閉じることや、閉鎖していた通風孔41a,42aが意図せず開くことを抑制できる。
【符号の説明】
【0053】
20…防音パネル、30…枠体、31…縦枠、31D…下枠、31U…上枠、32…横枠、32L…左枠、32R…右枠、33…内側側壁、34…外側側壁、35…底部、40…遮蔽パネル、41…内側パネル、41a…内側パネルの通風孔、42…外側パネル、42a…外側パネルの通風孔、42b…把手。
【要約】
【課題】開放時においても所定の大きさ以上の物体を通過させない防音パネルを提供すること。
【解決手段】防音パネル20は、縦枠32を有する枠体30と、枠体30で囲まれた領域内を覆う遮蔽パネル40と、を備える。遮蔽パネル40は、内側パネル41と外側パネル42が重ねられて構成されるものであり、内側パネル41と外側パネル42には、それぞれ通風孔41a,42aが設けられており、外側パネル42は、縦枠32に従って上下方向にスライド移動可能に構成されている。通風孔41a,42aは、スライド方向に沿って整列するように配置されており、外側パネル42を上方にスライド移動させたとき、通風孔41a,42aが重なる一方、外側パネル42を下方にスライド移動させたとき、内側パネル41及び外側パネル42によって、相互の通風孔41a,42aが塞がれる。
【選択図】
図8