(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-20
(45)【発行日】2023-09-28
(54)【発明の名称】電動工具
(51)【国際特許分類】
B25F 5/00 20060101AFI20230921BHJP
B25B 33/00 20060101ALI20230921BHJP
【FI】
B25F5/00 Z
B25B33/00
(21)【出願番号】P 2018140890
(22)【出願日】2018-07-27
【審査請求日】2021-06-10
(73)【特許権者】
【識別番号】318001706
【氏名又は名称】京セラインダストリアルツールズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】弁理士法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】岡田 厚人
【審査官】山内 康明
(56)【参考文献】
【文献】特許第5718207(JP,B2)
【文献】特開2016-144862(JP,A)
【文献】特開2017-039180(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25F 5/00
B25B 33/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端工具が取り付けられた装着状態、及び、先端工具が外された解除状態の間で切り替えるクランプと、
前記クランプを前記装着状態とするための第1位置と、前記クランプを前記解除状態とするための第2位置との間で移動するクランプ移動部と、
前記クランプ移動部を前記第1位置に付勢するクランプ付勢部と、
前記クランプ、前記クランプ移動部、前記クランプ付勢部の各々における少なくとも一部を収納するケースと、
前記クランプ移動部を前記第2位置で、前記クランプ移動部の軸方向における前記第1位置の側への移動を阻止するように保持する保持部と、
前記クランプを前記解除状態から前記装着状態へ切り替える装着操作を受け付ける装着操作部と、を有し、
前記装着操作部が前記装着操作を受け付けると、前記保持部は、前記クランプ移動部の前記第2位置での前記保持を外し、
前記クランプは、前記ケースの底面側に位置しており、
前記装着操作部は、前記ケースの側面側に位置している、電動工具。
【請求項2】
前記クランプを前記装着状態から前記解除状態へ切り替える解除操作を受け付ける解除操作部を有し、
前記解除操作部の少なくとも一部は、前記ケースから露出しており、前記装着操作部の前記装着操作と異なる方向への解除操作を受け付けることで、前記クランプ移動部を前記第1位置から前記第2位置に移動させ、
前記解除操作部が、前記ケースの表面から回動する解除操作を受け付けた場合、前記クランプ移動部は前記第1位置から前記第2位置に移動して、
前記装着操作部は前記装着操作に伴って前記ケースに押し込まれる方向に移動する、請求項1に記載の電動工具。
【請求項3】
先端工具が取り付けられた装着状態、及び、先端工具が外された解除状態の間で切り替えるクランプと、
前記クランプを前記装着状態とするための第1位置と、前記クランプを前記解除状態とするための第2位置との間で移動するクランプ移動部と、
前記クランプ移動部を前記第1位置に付勢するクランプ付勢部と、
前記クランプ、前記クランプ移動部、前記クランプ付勢部の各々における少なくとも一部を収納するケースと、
前記クランプ移動部を前記第2位置で、前記クランプ移動部の軸方向における前記第1位置の側への移動を阻止するように保持する保持部と、
前記クランプを前記解除状態から前記装着状態へ切り替える装着操作を受け付ける装着操作部と、を有し、
前記装着操作部が前記装着操作を受け付けると、前記保持部は、前記クランプ移動部の前記第2位置での前記保持を外し、
前記クランプを前記装着状態から前記解除状態へ切り替える解除操作を受け付ける解除操作部を有し、
前記解除操作部の少なくとも一部は、前記ケースから露出しており、前記装着操作部の前記装着操作と異なる方向への解除操作を受け付けることで、前記クランプ移動部を前記第1位置から前記第2位置に移動させ、
前記解除操作部が、前記ケースの表面から回動する解除操作を受け付けた場合、前記クランプ移動部は前記第1位置から前記第2位置に移動して、
前記装着操作部は前記装着操作に伴って前記ケースに押し込まれる方向に移動する、電動工具。
【請求項4】
前記クランプ移動部は、前記第1位置と前記第2位置との間で移動する軸部を備え、
前記軸部は、一端部と他端部とを有し、該一端部が前記クランプに接続されており、
前記解除操作部は、回動す
るレバーを有し、
前記保持部は
、カムを備え、
前
記カムは、前記軸部の他端部に当接しつつ回動することで前記軸部を移動させ
るカム面を有し、
前
記カム面は、前記クランプから遠い遠位部と、前記クランプから近い近位部とを備え、
前記クランプ移動部は、前
記カムの前記遠位部が前記軸部の前記他端部に当接することで前記第1位置となり、前
記カムの前記近位部が前記軸部の前記他端部に当接することで前記第2位置となる、請求項2又は3に記載の電動工具。
【請求項5】
前記クランプ移動部は、前記第1位置と前記第2位置との間で移動する軸部を備え、
前記軸部は、一端部と他端部とを有し、該一端部が前記クランプに接続されており、
前記解除操作部は、
回動す
るレバーと、
該レバーの回動中心に位置
するカムと、を有し、
前
記カムは、前記軸部の他端部に当接しつつ回動することで前記軸部を前記第2位置まで移動させ
るカム面を有し、
前記クランプ移動部が前記第2位置で保持されている状態において、前
記カム面は、前記軸部から離れている、請求項2又は3に記載の電動工具。
【請求項6】
先端工具が取り付けられた装着状態、及び、先端工具が外された解除状態の間で切り替えるクランプと、
前記クランプを前記装着状態とするための第1位置と、前記クランプを前記解除状態とするための第2位置との間で移動するクランプ移動部と、
前記クランプ移動部を前記第1位置に付勢するクランプ付勢部と、
前記クランプ、前記クランプ移動部、前記クランプ付勢部の各々における少なくとも一部を収納するケースと、
前記クランプ移動部を前記第2位置で、前記クランプ移動部の軸方向における前記第1位置の側への移動を阻止するように保持する保持部と、
前記クランプを前記解除状態から前記装着状態へ切り替える装着操作を受け付ける装着操作部と、を有し、
前記装着操作部が前記装着操作を受け付けると、前記保持部は、前記クランプ移動部の前記第2位置での前記保持を外し、
前記クランプを前記装着状態から前記解除状態へ切り替える解除操作を受け付ける解除操作部を有し、
前記クランプ移動部は、前記第1位置と前記第2位置との間で移動する軸部を備え、
前記軸部は、一端部と他端部とを有し、該一端部が前記クランプに接続されており、
前記解除操作部は、
回動す
るレバーと、
該レバーの回動中心に位置
するカムと、を有し、
前
記カムは、前記軸部の他端部に当接しつつ回動することで前記軸部を前記第2位置まで移動させ
るカム面を有し、
前記クランプ移動部が前記第2位置で保持されている状態において、前
記カム面は、前記軸部から離れている、電動工具。
【請求項7】
前記保持部は、前記軸部の長手方向の中心に対して接近及び離反するように移動する係合部を備える、請求項4~6のいずれかに記載の電動工具。
【請求項8】
前記軸部は、前記クランプ移動部が前記第2位置にある際に前記係合部と係合する凹部を側面に備える、請求項7に記載の電動工具。
【請求項9】
前記保持部は、少なくとも前記軸部に係合する部分が水平方向に広がる形状である、板形状のロックプレートである、請求項7又は8に記載の電動工具。
【請求項10】
先端工具が取り付けられた装着状態、及び、先端工具が外された解除状態の間で切り替えるクランプと、
前記クランプを前記装着状態とするための第1位置と、前記クランプを前記解除状態とするための第2位置との間で移動するクランプ移動部と、
前記クランプ移動部を前記第1位置に付勢するクランプ付勢部と、
前記クランプ、前記クランプ移動部、前記クランプ付勢部の各々における少なくとも一部を収納するケースと、
前記クランプ移動部を前記第2位置で、前記クランプ移動部の軸方向における前記第1位置の側への移動を阻止するように保持する保持部と、
前記クランプを前記解除状態から前記装着状態へ切り替える装着操作を受け付ける装着操作部と、を有し、
前記装着操作部が前記装着操作を受け付けると、前記保持部は、前記クランプ移動部の前記第2位置での前記保持を外し、
前記クランプ移動部は、前記クランプに接続されて前記第1位置と前記第2位置との間で移動する軸部を備え、
前記保持部は、前記軸部の長手方向の中心に対して接近及び離反するように移動する係合部を備え、
前記軸部は、前記クランプ移動部が前記第2位置にある際に前記係合部と係合する凹部を側面に備える、電動工具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、先端工具を着脱可能な電動工具に関する。
【背景技術】
【0002】
先端工具を着脱可能な電動工具(「マルチツール」とも称する)は、例えば特許文献1に記載されている。特許文献1に記載の構成では、係合部材が保持位置と解除位置との間で移動する。係合部材は保持位置で先端工具と係合する。また、係合部材は、スプリングにより付勢されて保持位置に保たれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、係合部材は解除位置では保たれないので、ユーザーは係合部材を操作するノブを押さえ続けて係合部材を解除位置で保持する必要があった。よって、例えば先端工具の取り付けを行おうとする際の使い勝手に問題があった。
【0005】
本願発明は、先端工具の着脱が容易であって、しかも使い勝手の良い電動工具を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の電動工具は、先端工具が取り付けられた装着状態、及び、先端工具が外された解除状態の間で切り替えるクランプと、前記クランプを前記装着状態とするための第1位置と、前記クランプを前記解除状態とするための第2位置との間で移動するクランプ移動部と、前記クランプ移動部を前記第1位置に付勢するクランプ付勢部と、前記クランプ、前記クランプ移動部、前記クランプ付勢部の各々における少なくとも一部を収納するケースと、前記クランプ移動部を前記第2位置で保持する保持部と、前記クランプを前記解除状態から前記装着状態へ切り替える装着操作を受け付ける装着操作部と、を有し、前記装着操作部が前記装着操作を受け付けると、前記保持部は、前記クランプ移動部の前記第2位置での保持を外す。
【0007】
また、前記クランプ移動部は、前記クランプに接続されて前記第1位置と前記第2位置との間で移動する軸部を備え、前記保持部は、前記軸部の長手方向の中心に対して接近及び離反するように移動する係合部を備え、前記軸部は、前記クランプ移動部が前記第2位置にある際に前記係合部と係合する凹部を側面に備えてもよい。
【0008】
また、前記クランプ移動部は、前記クランプに接続されて前記第1位置と前記第2位置との間で移動する軸部を備え、前記軸部は、一端部と他端部とを有し、該一端部が前記クランプに接続されており、前記保持部はカムを備え、前記カムは、前記軸部の他端部に当接しつつ回動することで前記軸部を移動させるカム面を有し、前記カム面は、前記クランプから遠い遠位部と、前記クランプから近い近位部とを備え、前記クランプ移動部は、前記カムの前記遠位部が前記軸部の前記他端部に当接することで前記第1位置となり、前記カムの前記近位部が前記軸部の前記他端部に当接することで前記第2位置となってもよい。
【0009】
また、前記クランプは、前記ケースの底面側に位置しており、前記装着操作部は、前記ケースの側面側に位置してもよい。
【0010】
また、前記クランプを前記装着状態から前記解除状態へ切り替える解除操作を受け付ける解除操作部を有し、前記解除操作部の少なくとも一部は、前記ケースから露出しており、前記装着操作部の前記装着操作と異なる方向への解除操作を受け付けることで、前記クランプ移動部を前記第1位置から前記第2位置に移動させてもよい。
【0011】
また、前記解除操作部が、前記ケースの表面から回動する解除操作を受け付けた場合、前記クランプ移動部は前記第1位置から前記第2位置に移動して、前記装着操作部は前記装着操作に伴って前記ケースに押し込まれる方向に移動してもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、先端工具の着脱が容易であって、しかも使い勝手が良いとの効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る電動工具を示す、先端部を前後方向での縦断面視とした側面図である。
【
図3】前記電動工具を示す、
図1のA-A矢視の縦断面図であって、(a)はクランプの装着状態を示し、(b)はクランプの解除状態を示す。
【
図4】前記電動工具においてロックプレートの状態変化を示す、
図1のB矢視のうち一部を示した横断面図であり、(a)はクランプの装着状態に対応し、(b)はクランプの解除状態に対応している。
【
図5】前記電動工具においてロックプレートが直線方向に移動するように変更された構成を示す図である。
【
図6】前記電動工具においてカムが軸部を押圧している状態を示す要部縦断面図である。
【
図7】(a)は本発明の第2実施形態に係る電動工具のうち先端部を示す、前後方向での縦断面図であり、(b)はロックプレートの周辺を示す、(a)のC矢視のうち一部を示した横断面図である。
【
図8】前記電動工具における要部縦断面図であり、(a)はカムが軸部を押圧している状態を示し、(b)はクランプの解除状態でロック解除レバーが操作可能な状態を示す。
【
図9】本発明の第3実施形態に係る電動工具のうち先端部を示す、前後方向での縦断面図である。
【
図10】(a)~(d)は、前記電動工具におけるクランプの装着状態から解除状態に至る状態変化を順を追って示した、前後方向での要部縦断面図である。
【
図11】(a)は本発明の第4実施形態に係る電動工具(装着状態)のうち先端部を示す、前後方向での縦断面図であり、(b)はロックプレートの周辺を示す、(a)のD矢視のうち一部を示した横断面図であり、(c)は(a)のE-E矢視の縦断面図である。
【
図12】(a)は前記電動工具(解除状態)のうち先端部を示す、前後方向での縦断面図であり、(b)はロックプレートの周辺を示す、
図12(a)のF矢視のうち一部を示した横断面図であり、(c)は(a)のG-G矢視の縦断面図である。
【
図13】(a)は本発明の第5実施形態に係る電動工具のうち先端部を示す、前後方向での縦断面図であり、(b)は(a)のH-H矢視の縦断面図である。
【
図14】前記電動工具においてレバーの状態変化を示す、
図13(a)のI矢視の要部横断面図であり、(a)はクランプの装着状態に対応し、(b)はクランプの解除状態に対応している。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係る電動工具として、第1実施形態~第5実施形態を例示して図面を示しつつ説明する。なお、以下の方向表現において、平面側とは
図1等の上側を示し、底面側とは
図1等の下側を示す。なお、以下では
図1に示した状態における上下方向での説明も行っている。そして、基端側または後側とは
図1等の左側、そして、先端側または前側が
図1等の右側に対応している。また、作用が共通する構成については、形態が異なっていても共通の符号を図示している。また、後の実施形態にて前の実施形態と重複する構成の説明は重ねて行わない場合がある。
【0015】
-第1実施形態-
本実施形態の電動工具1を
図1及び
図2に示す。この電動工具1は振動工具であって、電動工具1における本体の先端部に取り付けられた先端工具Tを高速で振動させることにより加工対象物を切断、研磨等できる。先端工具Tとしては、例えば
図2に示すように、先端縁部T1に鋸刃が形成された板状の刃物が例示できる。ただし、先端工具Tの形態はこれに限定されない。この電動工具1は、大きくは駆動部2と先端工具装着機構3とを備える。駆動部2は駆動力を発生させるモータ21と、駆動力を先端工具Tに向けて伝達する伝達機構22とを備える。駆動部2には公知の機構を採用することができる。先端工具装着機構3は、先端工具Tを着脱可能であって、取り付けられた先端工具Tを保持する。
【0016】
伝達機構22は駆動軸221を備えている。駆動軸221は基端側に位置するモータ21により周方向に回転する。駆動軸221における先端部には、回転時の回転中心に対して偏心した偏心部2211が形成されている。偏心部2211の先端側には揺動部222が接続されている。揺動部222は先端工具装着機構3(詳しくはそのうちの筒部37)に接続されている。これにより、モータ21が回転することにより揺動部222が揺動するため、筒部37を介して先端工具装着機構3に取り付けられた先端工具Tを振動させることができる。
【0017】
電動工具1は、外装となるケース4を備える。電動工具1の使用時、ユーザーは例えばケース4の基端部分から中間部分を把持する。ケース4の基端からは外部電源に接続するための電源コード5が延びている。ただし、これに限定されず、電動工具1にバッテリーが搭載されており、外部電源に接続不要であってもよい。
【0018】
先端工具装着機構3は、主に、クランプ31、クランプ移動部(軸部32)、クランプ付勢部33、保持部(ロックプレート34の一部)、装着操作部(ロックプレート34の一部分344)、解除操作部(レバー35)、カム36、筒部37を有する。クランプ31の一部、軸部32、クランプ付勢部33、保持部(ロックプレート34の一部)はケース4(特に、ケース4のうちで電動工具1における少なくとも先端側の部分)に収納されている。装着操作部(ロックプレート34の一部)、レバー35、筒部37は、ケース4から一部が突出することでケース4から露出している。
【0019】
筒部37は上下方向に延びた略円筒状の部分であって、クランプ31、クランプ移動部としての軸部32の一部、クランプ付勢部33を収納している。軸部32は筒部37における上部371によって、筒部37に対し長手方向(上下方向)に移動可能に支持されている。このため、軸部32において少なくとも上部371に対し移動する範囲は、横断面形状が一定の形状とされている。また、筒部37の底側端部372は、クランプ31に取り付けられた先端工具Tに当接する。より詳しくは、
図1に示すように、先端工具Tの基端部T2が筒部37の底側端部372に嵌り込む。これにより、先端工具Tはクランプ31と筒部37の両方で安定的に支持される。
【0020】
クランプ31は、先端工具Tが取り付けられた装着状態、及び、先端工具Tが外された解除状態の間で切り替えを行う。装着状態は、
図1及び
図3(a)に示す状態である。解除状態は
図3(b)に示す状態である。なお、本実施形態では、
図1に示したような縦断面視でのクランプ31の解除状態を図示していないが、第4実施形態に係る、
図12(a)に示したクランプ31と同じ状態になる。
【0021】
クランプ31は、ケース4の底面側に位置している。そしてクランプ31は、先端工具Tに係合する一対の係合片311,311を備える。クランプ31の基本的な構成は公知(例えば特表2016-529119号公報参照)である。詳細に説明しないが、一対の係合片311,311のうち先端工具Tに係合する部分としての各クランプ爪部3111は、装着状態において互いに広がることで先端工具Tに係合し(
図1参照)、解除状態において互いに狭まることで先端工具Tとの係合を解除する(第4実施形態に係る
図12(a)参照)。一対の係合片311,311は、軸部32が上昇した状態では互いに広がり、軸部32が下降した状態では互いに狭まる。なお、本実施形態とは異なり、各クランプ爪部3111が、装着状態において互いに狭まることで先端工具Tに係合し、解除状態において互いに広がることで先端工具Tとの係合が解除されてもよい。
【0022】
クランプ移動部は、クランプ31を装着状態とするための第1位置(
図3(a)参照)と、クランプ31を解除状態とするための第2位置(
図3(b)参照)との間で移動する。本実施形態のクランプ移動部は、クランプ31に接続されて第1位置と第2位置との間で移動する軸部32を備える。移動方向は長手方向(上下方向)である。第1位置は、軸部32が上昇した位置であって、第2位置は、軸部32が下降した位置である。本実施形態の軸部32は、底面側(下側)に一端部321を有し、平面側(上側)に他端部322を有する。軸部32の一端部321は二股に分かれていて、クランプ31に接続されている。本実施形態では、ケース4の平面側(上側)に位置する解除操作部としてのレバー35がユーザーにより操作されることで、レバー35と一体とされたカム36が回動し、このカム36の外周におけるカム面361に押圧されることで軸部32が移動(下降)する。本実施形態では、カム36も解除操作部の一部である。また、軸部32には、クランプ付勢部33の付勢力を受ける円板部323が、水平方向に延びるように設けられている。
【0023】
クランプ付勢部33は、クランプ移動部(軸部32)を第1位置に付勢する。クランプ付勢部33は、例えば圧縮コイルばねで構成される。クランプ付勢部33の付勢力は軸部32における円板部323を経て、クランプ31に対し、一対の係合片311,311が開く方向の力として働く。
【0024】
保持部は、クランプ移動部を第2位置で保持する。保持部によってクランプ移動部が第2位置に保持されているときは、レバー35の操作位置に関係なくクランプ31が解除状態に維持される。よって、ユーザーが操作を継続しなくてもクランプ31が解除状態で保たれる。さらに、例えばユーザーが先端工具Tをクランプ31に装着する際に、解除状態のクランプ31に対して先端工具Tの取り付け位置を合わせることが簡単になる。
【0025】
この保持部は、軸部32の長手方向の中心に対して接近及び離反するように移動する係合部を備える。本実施形態の保持部は、
図4(a)(b)に示すように、軸部32の長手方向に交わる方向、詳しくは水平面内における所定範囲を回動するロックプレート34とされている。ロックプレート34は板状体であって、少なくとも軸部32に係合する部分は水平方向に広がる形状である。また、ロックプレート34は圧縮コイルばね345により、後述する一部分344がケース4の外部に突出する方向に付勢されていて、軸部32が第2位置にあるときは、通常は
図4(b)の状態に保持される。なお、例えば
図5に示すようにロックプレート34が回動ではなく直線方向に移動するようにもできる。
【0026】
本実施形態のロックプレート34は、
図4(a)(b)に示すように、電動工具1における先端側には回動中心となる中心軸(具体的にはネジボス)が貫通する回動中心穴341が設けられており、基端側には長穴342が設けられてこの長穴342に回動範囲を規制する規制軸(具体的にはネジボス)が貫通している。また、ロックプレート34の前後方向における中間位置には、軸部32が貫通する係合用貫通穴343を備える。
図4(a)に示すように、この係合用貫通穴343の周縁部が軸部32の凹部324に係合する。この係合は、圧縮コイルばね345による付勢により、ユーザーがロックプレート34を操作することを要さずなされる。
【0027】
軸部32(クランプ移動部)は、第2位置にある際にロックプレート34と係合する凹部324を側面に備える。より具体的には、本実施形態の凹部324は、保持部としてのロックプレート34(詳しくは係合用貫通穴343の周縁部)が係合する形状を有する。凹部324は、軸部32の長手方向に交わる方向(詳しくは水平方向)に形成される溝部を示す。よって
図3(b)に示すように、軸部32に設けられた凹部324は保持部としてのロックプレート34(詳しくは係合用貫通穴343の周縁部)に係合する。本実施形態では、凹部324は、軸部32の他端部322に設けられている。しかし、軸部32上の凹部324の位置はこれに限定されない。
【0028】
従って、クランプ31の装着状態では、軸部32の側面(凹部324のない部分)にロックプレート34の係合用貫通穴343の周縁部が押接され、
図4(a)に示す状態となる。一方、クランプ31の解除状態では、圧縮コイルばね345の付勢によりロックプレート34の係合用貫通穴343の周縁部が軸部32の凹部324に入り込み、
図4(b)に示す状態となる。
【0029】
ロックプレート34の凹部324への係合に伴い、軸部32が長手方向に移動することができなくなる。このため、クランプ31が解除状態で保たれる。
【0030】
装着操作部は、クランプ31を解除状態から装着状態へ切り替える装着操作を受け付ける。装着操作部が装着操作を受け付けると、保持部は、クランプ移動部の第2位置での保持を外す。本実施形態の装着操作部は、クランプ31を解除状態から装着状態とする際に、凹部324に対するロックプレート34の係合用貫通穴343の周縁部の係合が解除されるようにユーザーにより操作される。また、装着操作部は、ロックプレート34と一体に形成されており、ケース4から突出してケース4の側面側に位置している一部分344である。この装着操作部は、前記装着操作、つまり、クランプ31を解除状態から装着状態とする際のユーザーによる操作に伴ってケース4に押し込まれるように移動する。
【0031】
クランプ31は、ケース4の底面側に位置している。このため例えば、ユーザーがまずケース4の底面側(例えば床面や作業台の上面)に先端工具Tを位置(載置)させてから、筒部37の底側端部372を先端工具Tの基端部T2に合わせる。そして、ケース4の側面側の装着操作部(ロックプレート34のうちケース4から突出した一部分344)を操作することでクランプ31に先端工具Tを装着できる。よって、ユーザーの操作感が良好である。
【0032】
解除操作部は、クランプ31を装着状態から解除状態へ切り替える解除操作を受け付ける。本実施形態の解除操作部は、クランプ31を装着状態から解除状態とする際にユーザーにより操作される。解除操作部は、ケース4から露出しており、ケース4の表面から起立するように回動するレバー35を備える。このレバー35は、レバー35の回動中心に位置するカム36と一体に形成されている。
図6に示すように、側面視でレバー35を立ち上げるように回動させることで、カム36のカム面361がクランプ移動部としての軸部32を押圧し、軸部32を第1位置から第2位置に移動させる。移動後の軸部32は、レバー35の回動位置に関係なく、保持部(ロックプレート34)と凹部324との係合により第2位置に保たれる。すなわち、軸部32が第2位置となった状態で、レバー35を
図6に示す状態から
図1に示す状態に戻しても、軸部32は第2位置に保たれる。このため、
図3(b)に示すように、軸部32の他端部322とカム36とが離れた状態となる。
【0033】
解除操作部の移動方向、つまり、クランプ31を装着状態から解除状態とする際の移動方向がケース4から離れる方向(具体的には上方向)であるのに対し、先端工具Tの装着のために操作される装着操作部(ロックプレート34の一部分344)の移動方向はケース4に近づく方向、具体的には横方向である。このため、解除操作部と装着操作部とは操作される方向が異なる。よって、ユーザーが各操作部を容易に識別できる。
【0034】
-第2実施形態-
第2実施形態を
図7及び
図8に示す。本実施形態では、解除操作部としてのロック解除レバー38がレバー35に設けられている。このロック解除レバー38は、
図7(a)及び
図8(a)に示すように、軸部32に対してレバー35と一体に回動する。また、ロック解除レバー38は、レバー35に対して回動するように設けられている。
【0035】
ロック解除レバー38は、
図7(a)に示す状態で、レバー35に対する回動中心383よりもロックプレート34に対して突出した突出部381を備える。ロック解除レバー38は、付勢ばね382によって図示で反時計回りに付勢されている。また、
図7(a)(b)に示すように、ロックプレート34には爪部346が立ち上げられている。なお、本実施形態のロックプレート34は直線方向(
図7(b)における左右方向)に移動する。第2位置において、軸部32の凹部324にロックプレート34(係合用貫通穴343)が係合した際には、
図8(b)に示すように、図示左方に移動したロックプレート34の爪部346に押されて、ロック解除レバー38が図示で時計回りに回動し(回動前の状態を二点鎖線で示している)、ロック解除レバー38の一部がレバー35から浮き上がる。そして、ロック解除レバー38がレバー35に向けて押し込まれると、ロック解除レバー38が図示で反時計回りに回動し、突出部381が爪部346を図示右方に押す。これによりロックプレート34が移動して、ロックプレート34(係合用貫通穴343)の軸部32の凹部324への係合が解除される。その結果、軸部32が第2位置から第1位置へと移動する。
【0036】
なお、本実施形態のロック解除レバー38は、レバー35に対して回動するように設けられていた。しかしこれに限定されず、ロック解除レバー38がレバー35に対して水平移動等の直線移動をするように設けることもできる。
【0037】
-第3実施形態-
第3実施形態を
図9及び
図10に示す。
図9に示すように、本実施形態はロック解除レバー38がレバー35に設けられている点では第2実施形態と共通する。しかし本実施形態では、クランプ移動部としての軸部32、及び、クランプ31の形状が他の実施形態とは異なっている。本実施形態のクランプ31と軸部32は一体に形成されている。また、一対の係合片311,311における基部(上部)は一体となっており、先端側(下端側)は外力を受けて、接近及び離反方向に撓む。一対のクランプ爪部3111,3111を広げるため、一対の係合片311,311の間にピン312が設けられている。また、筒部37における底側端部372に底板373が設けられている。底板373の中央には一対の係合片311,311が長手方向に移動可能に貫通している。
【0038】
図10(a)は装着状態である。各係合片311から対向方向に突出した内突出部3112に対してピン312が当接している。
図10(b)は、軸部32が少し底部側に移動(下降)して、そして、内突出部3112とピン312との当接状態が解除されようとしている状態を示す。なお、図示していないが、他の実施形態と同様、軸部32はレバー35の操作によって下降する。
図10(c)は、軸部32(クランプ31も同様)が更に底部側に移動(下降)した状態であって、内突出部3112とピン312との当接状態が解除され、かつ、各係合片311から対向方向と反対方向に突出した外突出部3113に対して底板373における内周部が当接することで、一対の係合片311,311が閉じている。
図10(d)は解除状態である。この状態は、
図10(c)の状態から軸部32が少し底部側に移動(下降)し、凹部324にロックプレート34が係合した状態である。
【0039】
-第4実施形態-
第4実施形態を
図11及び
図12に示す。本実施形態では、他の実施形態のようにロックプレート34と軸部32の凹部324との係合はなされない。本実施形態では、カム36が保持部として機能する。
【0040】
このカム36は、レバー35と回動中心が同一であるが、レバー35と一体ではなく、別個に回動する。レバー35においてカム36に対向する部分にカム係合部351が設けられている。そして、カム36においてカム係合部351に対向する部分がレバー係合部362とされている。
図11(a)に示すように、カム係合部351とレバー係合部362とが当接している状態では、レバー35を図示時計回りに回動させるとカム36も一緒に回動する。そして、前記回動の後、カム36を回動後の状態(
図11(a)に示す姿勢から図示時計回りに約90°回動した状態)としたまま、カム係合部351とレバー係合部362とが離れるようにレバー35だけを図示反時計回りに回動させることで、
図12(a)に示した状態とできる。
【0041】
カム36は、軸部32の他端部322に当接しつつ回動することで軸部32を移動させるカム面361を有する。また、カム面361は、クランプ31を向いた場合にクランプ31から遠い遠位部3611と、クランプ31から近い近位部3612とを備える。本実施形態のように回動中心を基準とした周方向にカム面361が形成されたカム36では、カム36の回動中心からの距離が小さい小径部が遠位部3611となる。そしてカム36の回動中心からの距離が大きい大径部が近位部3612となる。更に、このカム36はロックプレート34と係合する段部363を備える。
【0042】
軸部32は、
図11(a)に示すように、カム36の遠位部3611が軸部32の他端部322に当接することで第1位置となる。そして、カム36の近位部3612が軸部32の他端部322に当接することで第2位置となる。つまり、カム36における近位部3612が軸部32の他端部322に当接することでクランプ31が解除状態になる。近位部3612と軸部32の他端部322とが当接している場合は、その当接位置は、カム36の回動中心よりも前側に位置している(
図12(a)参照)。この位置関係により、他端部322を介して近位部3612に働くクランプ付勢部33の付勢力は、カム36を反時計回りに回動させる方向に働く回動力となる。本実施形態のロックプレート34は、この回動力によるカム36の反時計回りの回動を規制する。
【0043】
本実施形態のロックプレート34は、
図11(b)、
図12(b)に示すように平面視で略L字状とされている。「略L字」の一辺側が圧縮コイルばね345により図示時計回り方向に付勢されている。クランプ31の装着状態では、カム面361にロックプレート34において「略L字」の他辺側である係合片347が押接され、
図11(b)に示す状態となる。一方、クランプ31の解除状態では、圧縮コイルばね345の付勢により係合片347がカム36の段部363の上方に位置することで段部363に係合し、
図12(a)(b)に示す状態となる。この係合に伴い、カム36の図示反時計回りの回動ができなくなる。すなわち、前記回動力によるカム36の反時計回りの回動が規制される。従って、カム36の近位部3612に軸部32が当接した状態が維持され、軸部32が長手方向の上側に移動することができなくなる。
【0044】
-第5実施形態-
第5実施形態を
図13及び
図14に示す。本実施形態のレバー35は、水平方向に回動する。また、本実施形態のレバー35には円筒状の端面カム39が固定されている。この端面カム39の底側端面であるカム面391は、周方向に順次底面側に突出していく湾曲した斜面とされている。このカム面391は、レバー35の回動に伴い、他の実施形態におけるカム36におけるカム面361と同様に、軸部32を押圧する。第4実施形態と同様、カム面391は、クランプ31から遠い遠位部3911と、クランプ31から近い近位部3912とを備える。本実施形態のように円筒状体における軸方向の端面にカム面391が形成された端面カム39では、斜面で上方に位置する部分が遠位部3911となる。そして斜面で下方に位置する部分が近位部3912となる。
【0045】
本実施形態のロックプレート34は、
図14(a)(b)に示すように平面視で略L字状とされている。「略L字」の一辺側が圧縮コイルばね345により図示時計回り方向に付勢されている。クランプ31の装着状態では、軸部32の側面(凹部324のない部分)にロックプレート34において「略L字」の他辺側である係合片347が押接され、
図14(a)に示す状態となる。一方、クランプ31の解除状態では、圧縮コイルばね345の付勢により係合片347が軸部32の凹部324に入り込むことで係合し、
図14(b)に示す状態となる。この係合に伴い、軸部32が長手方向に移動することができなくなる。
【0046】
以上、第1実施形態~第5実施形態を例示して説明したが、本発明は、これらの実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0047】
電動工具1は、例えば、回転工具、打撃工具でもよい。先端工具Tは、前記各実施形態のような刃物に限定されず、例えば、ドライバービット等でもよい。
【0048】
また、ロックプレート34を操作するための、ロックプレート34とは別体とされたレバーを設けることもできる。このレバーは、例えばケース4によって支持されることができる。
【0049】
また、第4実施形態におけるカム36に代えて、第5実施形態における円筒状の端面カム39を用いることもできる。
【0050】
また、カム36以外に、軸部32の軸線に交差する方向に直線移動する移動体であって、移動方向に順次底面側に突出していく斜面を有するものともできる。この移動体は、カム36における遠位部3611と近位部3612とに相当する部分を備えることができる。
【符号の説明】
【0051】
1…電動工具、2…駆動部、3…先端工具装着機構、4…ケース、5…電源コード、21…モータ、22…伝達機構、31…クランプ、32…軸部(クランプ移動部)、33…クランプ付勢部、34…ロックプレート(保持部、装着操作部)、35…レバー(解除操作部)、36…カム、37…筒部、38…ロック解除レバー、39…端面カム、221…駆動軸、222…揺動部、311…クランプの係合片、312…ピン、321…一端部、322…他端部、323…円板部、324…凹部、341…回動中心穴、342…長穴、343…係合用貫通穴、344…ロックプレートの一部分(操作部)、345…圧縮コイルばね、346…爪部、347…ロックプレートの係合片、351…カム係合部、361…カム面、362…レバー係合部、363…段部、371…筒部の上部、372…筒部の底側端部、373…底板、381…ロック解除レバーの突出部、383…ロック解除レバーの回動中心、391…カム面、2211…偏心部、3111…クランプ爪部、3112…内突出部、3113…外突出部、3611…遠位部、3612…近位部、3911…遠位部、3912…近位部、T…先端工具、T1…先端縁部、T2…基端部