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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-20
(45)【発行日】2023-09-28
(54)【発明の名称】電力変換装置およびその制御方法
(51)【国際特許分類】
   H02P 9/00 20060101AFI20230921BHJP
【FI】
H02P9/00 B
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019017120
(22)【出願日】2019-02-01
(65)【公開番号】P2020127260
(43)【公開日】2020-08-20
【審査請求日】2022-01-20
(73)【特許権者】
【識別番号】502129933
【氏名又は名称】株式会社日立産機システム
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岩瀬 裕太
(72)【発明者】
【氏名】田口 義行
【審査官】安池 一貴
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2010/095639(WO,A1)
【文献】特開2004-028009(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0030984(US,A1)
【文献】特開2005-192325(JP,A)
【文献】特開2015-089197(JP,A)
【文献】特開2016-178735(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02P 9/00
H02P 6/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発電機のモータ定数を記憶する記憶部と、
前記発電機の回転機が回転することで発生する誘起電圧に基づいて再現された前記回転機の回転数と、前記モータ定数とを用いて、基準電圧を算出する算出部と、
前記回転機に接続され、還流ダイオードが並列接続された複数のスイッチング素子と、
コンデンサを備え、前記複数のスイッチング素子を介して供給される誘起電圧を平滑する平滑回路と、
前記コンデンサに印加される電圧に基づいた測定電圧と、前記基準電圧とを比較し差分を検出する比較部と、
前記差分が、所定の閾値を超えているとき、報知する報知部と、
を備え
前記回転機の回転数は、前記複数のスイッチング素子が動作していない期間において、前記発電機の回転機が回転することで発生する誘起電圧に基づいて再現され、
前記測定電圧は、前記複数のスイッチング素子が動作していない期間において、前記還流ダイオードを流れる電流に基づいて生じる
電力変換装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電力変換装置において、
前記電力変換装置は、さらに、
供給される信号に基づいて、前記複数のスイッチング素子を動作させるPWM制御器と、
前記比較部からの信号に基づいて、前記PWM制御器への前記測定電圧に基づいた信号の供給および遮断を行う遮断器と、
を備え、
前記比較部は、起動時に、前記遮断器によって前記測定電圧に基づいた信号の前記PWM制御器への供給を遮断し、前記複数のスイッチング素子を非動作の状態にし、
前記複数のスイッチング素子が動作していない期間において、前記差分が前記所定の閾値を超えているとき、前記比較部は、前記期間後も、前記遮断器によって前記測定電圧に基づいた信号の前記PWM制御器への供給の遮断を継続し、
前記複数のスイッチング素子が動作していない期間において、前記差分が前記所定の閾値を超えていないとき、前記比較部は、前記期間後に、前記遮断器によって前記測定電圧に基づいた信号を前記PWM制御器へ供給させ、前記複数のスイッチング素子を動作させる、
電力変換装置。
【請求項3】
発電機のモータ定数と、前記発電機の回転機が回転することで発生する誘起電圧に基づいて再現された前記回転機の回転数とを用いて、基準電圧を算出する算出部と、
還流ダイオードを備え、前記回転機の回転に応じてスイッチング制御される複数のスイッチング素子と、
前記複数のスイッチング素子を介して前記誘起電圧が供給される平滑コンデンサと、
を備え、
前記複数のスイッチング素子を動作させる前に、前記算出部で算出された基準電圧と、前記平滑コンデンサに印加された測定電圧とを比較し、前記基準電圧と前記測定電圧との差分が、所定の閾値を超えているか否かを判定する判定工程を備える、電力変換装置の制御方法。
【請求項4】
請求項3に記載の電力変換装置の制御方法において、
前記判定工程において、前記差分が、前記所定の閾値を超えていると判定されたとき、減磁を報知する、電力変換装置の制御方法。
【請求項5】
請求項4に記載の電力変換装置の制御方法において、
前記基準電圧は、所定の許容電圧範囲を有し、
前記判定工程では、所定の期間における前記測定電圧が、前記所定の許容電圧範囲を外れているか否かの判定が行われる、電力変換装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力変換装置およびその制御方法に関し、発電機に接続して用いられる電力変換装置およびその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
東日本大震災以降、個々に必要な電力を供給可能な水力、風力などによる小型発電機が普及している。小型発電機は、発電機と、発電機に接続されたコンバータなどの電力変換装置とによって構成されている。発電機としては、例えば永久磁石同期発電機が用いられる。この場合、発電機の回転子が水力、風力により回転し、誘起電圧が発生する。水力、風力が不安定な場合、発生する誘起電圧の周波数が不安定となる。周波数が不安定となっている状態でも、安定した直流電圧に変換し、電力を供給することが可能となるように、電力変換装置が発電機に接続されている。
【0003】
交流電圧を直流電圧に変換する場合、主にダイオード素子を複数用いた整流ダイオードブリッジと電圧を平滑するための平滑コンデンサとにより構成された平滑回路を用いて、交流電圧を直流電圧へ変換するのが一般的である。このような構成では、発電機の回転数が低下すると、安定した直流電圧を供給することが困難となる。そのため、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)などのスイッチング素子を備えた電力変換装置が発電機に接続されている。スイッチング素子がスイッチング制御されることにより、力率を改善しながら、直流電圧の昇圧動作が行われる。これにより、電力変換装置は、発電機の回転数が低下した際にも、安定した直流電圧を供給することができる。
【0004】
スイッチング素子を制御する場合、発電機のモータ定数と発電機の減磁電流値(閾値)情報が必要であり、これらの情報がないと、電力変換装置は発電機を制御することができない。通常、モータ定数としては、モータの極数、コイルの抵抗成分、インダクタ成分等の設計値やオートチューニング機能で調整した調整値が、電力変換装置に設定される。また、減磁電流値は、その電流値を超えないように、電力変換装置において過電流保護がかけられて、発電機等の保護が行われている。
【0005】
しかしながら、例えば地絡や誤配線により発電機に減磁電流以上の電流が流れて、発電機内の磁石が非可逆減磁されてしまう可能性がある。一度減磁してしまった発電機は、誘起電圧が下がり、減磁前と同じ回転数で回転しても誘起電圧は低くなってしまい、設計通りの電力を供給することができなくなる。また、減磁によりモータ定数の特性も変わってしまうため、電力変換装置の制御が不安定になる場合が多く、発電機の振動、騒音、発熱などが発生し、思わぬ事故が発生する可能性がある。地絡や誤配線によって、発電機が減磁しないようにするのは物理的に困難であるため、発電機が減磁した場合にその現象を早期に発見し、電力変換装置の表示部、もしくは上位装置に通信などの手段により、異常情報を報知することで、減磁の進行を防ぐシステムの構築が必要である。
【0006】
減磁の有無は誘起電圧の値、もしくは電圧波形をオシロスコープやパワーメータなどの測定器を用いて測定することで判断できるが、稼働しているシステムに測定器を持ち込んで調査をするのは現実的ではない。
【0007】
誘起電圧を推定する技術としては、例えば特許文献1および特許文献2に記載された技術がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2013-42630号公報
【文献】特開2014-192905号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1および2に記載されている技術においては、誘起電圧を推定するために、電力変換装置を構成しているスイッチング素子が動作している状態が前提となっており、発電機に流れる電流の情報が必要とされている。すなわち、減磁が発生し、電力変換装置の制御が不安定になっている状態が、誘起電圧を推定するための前提となっている。そのため、誘起電圧を推定する際には、振動や騒音を避けることができない。また、特許文献1および2には、物体を駆動するモータが記載されているが、発電機は記載されていない。
【0010】
本発明の目的は、振動、騒音等の発生を防ぐことが可能で、減磁を検知することが可能な電力変換装置を提供することにある。
【0011】
本発明の前記並びにその他の目的と新規な特徴は、本明細書の記述及び添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本願において開示される発明のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、次のとおりである。
【0013】
すなわち、電力変換装置は、発電機のモータ定数を記憶する記憶部と、モータ定数と、回転機の回転数とを用いて、基準電圧を算出する算出部と、回転機が回転中に測定した測定電圧と、基準電圧とを比較し差分を検出する比較部と、差分が、所定の閾値を超えているときに報知する報知部とを備える。
【発明の効果】
【0014】
本願において開示される発明のうち、代表的なものによって得られる効果を簡単に説明すれば、以下のとおりである。
【0015】
振動、騒音等の発生を防ぐことが可能で、減磁を検知することが可能な電力変換装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】実施の形態1に係わる電力変換装置の構成を示すブロック図である。
図2】実施の形態1に係わる周波数検出回路の構成を示す回路図である。
図3】実施の形態1に係わる周波数検出回路および回転数再現器を説明するためのタイミングチャート図である。
図4】実施の形態1に係わる電力変換装置の起動シーケンスを示す電圧波形図である。
図5】実施の形態1に係わる電力変換装置の起動シーケンスを示す電圧波形図である。
図6】実施の形態2に係わる電力変換装置の起動シーケンスを示す電圧波形図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下の実施の形態においては便宜上その必要があるときは、複数のセクションまたは実施の形態に分割して説明するが、特に明示した場合を除き、それらは互いに無関係なものではなく、一方は他方の一部または全部の変形例、詳細、補足説明等の関係にある。また、以下の実施の形態において、要素の数等(個数、数値、量、範囲等を含む)に言及する場合、特に明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではなく、特定の数以上でも以下でも良い。
【0018】
さらに、以下の実施の形態において、その構成要素(要素ステップ等も含む)は、特に明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。同様に、以下の実施の形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に明らかにそうでないと考えられる場合等を除き、実質的にその形状等に近似または類似するもの等を含むものとする。このことは、上記数値および範囲についても同様である。
【0019】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一の部材には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は原則として省略する。また、以降では、例えば水車、風車等の回転機駆動機器に接続される電力変換装置、ガスやガソリンなどの内燃機関により回転する回転機駆動機器に接続されるエンジン発電機に用いられる電力変換装置を例として、説明する。
【0020】
(実施の形態1)
図1は、実施の形態1に係わる電力変換装置の構成を示すブロック図である。同図において、100は電力変換装置を示し、1は電力変換装置100に結合された回転機(発電機部)を示し、104は電力変換装置100に結合された上位装置を示している。電力変換装置100は、回路部101と、マイコン部102と、操作部103とを備えている。回路部101、マイコン部102および操作部103のそれぞれは、複数の回路ブロックによって構成されているが、図面が複雑になるのを避けるために、同図には、それぞれの回路ブロックの機能または処理が描かれている。
【0021】
回転機1は、例えば水車、風車あるいはエンジン等で外部から回転させられるモータによって構成されている。回転機1が回転することにより、回転機1は、三相交流の誘起電圧U、VおよびWを発生する。発生した誘起電圧U、VおよびWは、電力変換装置100に供給される。電力変換装置100においては、誘起電圧U、VおよびWは、回路部101に供給される。
【0022】
<回路部>
回路部101は、複数のスイッチング素子2と、平滑コンデンサ3と、直流電圧検出回路4と、周波数検出回路5と、検出回路DT_UおよびDT_Wとを備えている。スイッチング素子2は、IGBTTRと、IGBTのコレクター・エミッタ経路と並列接続された還流ダイオードDDとを備えている。スイッチング素子2は、図1に示すように、誘起電圧U、VおよびWが供給される配線LU、LVおよびLWと、配線LP、LNとの間に接続されている。
【0023】
配線LU、LVおよびLWには、周波数検出回路5が接続されている。周波数検出回路5は、回転機1によって発生した三相交流の誘起電圧U、VおよびWを基にして、回転機1の回転子の位相情報を持ったデジタル信号を出力する。
【0024】
また、回転機1と配線LUとの間には、検出回路DT_Uが接続され、回転機1と配線LWとの間には、検出回路DT_Wが接続されている。検出回路DT_UおよびDT_Wは、配線LV、LWにおける電流波形を検出し、検出した電流波形を、アナログ信号に変換してマイコン部102に供給する。
【0025】
マイコン部102は、スイッチング素子2に対して、スイッチング素子2を制御するPWM(Pulse Width Modulation)信号を供給する。PWM信号によってスイッチング素子2内のIGBTTRがスイッチング制御されることにより、スイッチング素子2と平滑コンデンサ3とにより、三相交流の誘起電圧U、VおよびWは、直流電圧に変換され、昇圧されて、電力変換装置100から外部に電力として供給される。
【0026】
スイッチング素子2が、PWM信号によってスイッチング動作をしていない場合、スイッチング素子2内のIGBTTRは、例えばオフ状態となる。この場合でも、還流ダイオードDDを介して、配線LU、LV、LWと配線LP、LNとの間を電流が流れる。この場合、還流ダイオードDDが整流ダイオードとして動作するため、平滑コンデンサ3と還流ダイオードDDによって、平滑回路を備えた三相全波整流回路が構成されていると見なすことができる。すなわち、スイッチング素子2内のIGBTTRが動作していない(非動作の)場合には、三相交流の誘起電圧U、VおよびWは、三相全波整流回路によって、直流電圧に変換されることになる。一方、スイッチング素子2内のIGBTTRを、スイッチング動作させることにより、三相交流の誘起電圧U、VおよびWの力率の改善と、直流電圧の昇圧動作を行わせならが、三相交流の誘起電圧を、直流電圧へ変換することができる。
【0027】
直流電圧検出回路4は、平滑コンデンサ3の両端における直流電圧を検出し、検出した直流電圧をアナログ信号としてマイコン部102に供給する。すなわち、三相交流から変換された直流電圧が検出され、検出された直流電圧がマイコン部102に供給される。
【0028】
<操作部>
操作部103は、パラメータ設定器10と、表示部15とを備えている。表示部15は、マイコン部102から供給された情報を表示する。パラメータ設定器10は、電力変換装置100を動作させるために必要なパラメータを後で説明する記憶部11に設定するものである。設定するパラメータとしては、誘起電圧定数、減磁判定閾値、目標電圧、起動電圧である。これらのパラメータは、例えばユーザが、パラメータ設定器10を操作することにより、記憶部11に記憶される。なお、図1では省略しているが、操作部103は、電力変換側通信部を備えている。この電力変換側通信部は、上位装置104内の上位装置側通信部16との間で通信を行う。例えば、上位装置104からの指示が、通信によって、電力変換装置100に通知される。また、減磁の状況等に係わる情報が、電力変換側通信部から、上位装置104へ報知される。
【0029】
<マイコン部>
図1には、マイコン部102おいて実行される処理が、回路ブロックとして示されている。マイコン部102は、直流電圧検出部6、回転数再現器7、直流電圧再現器(算出部)8、判定部(比較部)9、記憶部11、直流電圧制御部12、遮断器13、PWM制御器14、スイッチ23およびベクトル制御部24を備えている。
【0030】
直流電圧検出部6は、直流電圧検出回路4から供給されたアナログ信号の直流電圧をデジタル信号に変換して、直流電圧情報として出力する。記憶部11は、例えば、フラッシュメモリ等の電気的に書き換え可能な不揮発性を備えている。記憶部11は、パラメータ設定器10によって設定されたパラメータを記憶するとともに、表示部(報知部)15で表示されたり、上位装置(報知部)104に通知される情報を記憶する。
【0031】
直流電圧制御部12は、直流電圧検出部6から出力された直流電圧情報と、パラメータ設定器10によって設定された目標電圧との間の偏差が、“0”となるような制御を実行する。
【0032】
回転数再現器7は、周波数検出回路5から供給される回転機1内の回転子の位相情報から、回転機1の回転数等を再現する。直流電圧再現器8は、パラメータ設定器10によって設定された誘起電圧定数と、回転数再現器7によって再現された回転機1の回転数とを演算することによって、再現された回転数に応じた直流電圧の値を算出し、算出された直流電圧の値を、直流電圧再現値として出力する。
【0033】
判定部9には、パラメータ設定器10によって設定された目標電圧、起動電圧および減磁判定閾値が記憶部11から供給され、直流電圧再現値が直流電圧再現器8から供給され、再現された回転機1の回転数が回転数再現器7から供給され、直流電圧情報が直流電圧検出部6から供給される。判定部9は、スイッチ23によって直流電圧制御部12と遮断器13との間が電気的に接続されているとき、供給されている電圧値および情報に基づいて、直流電圧制御部12の出力を、PWM制御器14へ伝達するか遮断するかの判定を行う。
【0034】
ベクトル制御部24には、検出回路DT_U、DT_Wから電流波形が供給され、PWM制御器14を制御するための制御信号を出力する。
【0035】
遮断器13は、スイッチ23を介して、直流電圧制御部12またはベクトル制御部24に接続される。遮断器13は、スイッチ23によって、直流電圧制御部12と遮断器13とが接続されているとき、判定部9の判定結果に従って、直流電圧制御部12の出力をPWM制御器14へ伝達または遮断するように動作する。PWM制御器14は、遮断器13からの信号に基づいたPWM信号を、スイッチング素子2に供給する。
【0036】
後で図4および図5を用いて説明するが、実施の形態1に係わる電力変換装置100においては、スイッチング素子2を動作させる起動の前に、回転機1内の磁石が減磁しているか否かの判定が行われる。減磁しているか否かを判定している期間、スイッチ23は、直流電圧制御部12と遮断器13とを電気的に接続するように動作する。一方、スイッチング素子2を動作させている期間においては、スイッチ23は、ベクトル制御部24と遮断器13とを電気的に接続するように動作する。また、スイッチング素子2を動作させている期間においては、遮断器13は、ベクトル制御部24からの制御信号をPWM制御器14へ伝達するように動作する。そのため、スイッチング素子2を動作させている期間においては、配線LU、LV、LWにおける電圧波形に応じた、PWM信号が、PWM制御器14によって出力され、スイッチング素子2は、適切にスイッチング制御される。
【0037】
次に、主要な回路ブロックについて個々に説明する。
【0038】
<<周波数検出回路>>
図2は、実施の形態1に係わる周波数検出回路の構成を示す回路図である。周波数検出回路5は、分圧回路17A~17Cと、フィルタ回路18A~18Cと、コンパレータ19A、19Bと、プルアップ回路20A、20Bと、フィルタ回路21A、21Bとを備えている。特に制限されないが、分圧回路17A~17Cは、互いに同じ構成を有しており、フィルタ回路18A~18Cも、互いに同じ構成を有しており、フィルタ回路21Aおよび21Bも、互いに同じ構成を有している。
【0039】
ここでは、分圧回路17A、フィルタ回路18Aおよび21Aを代表として、分圧回路およびフィルタ回路を説明する。分圧回路17Aは、入力と基準電圧Vsとの間に直列接続された抵抗R1とR2とを備え、抵抗R1とR2との間の接続ノードn1が、分圧回路17Aの出力となっている。フィルタ回路18Aは、入力と基準電圧との間に直列接続された抵抗R3とコンデンサC1とを備え、抵抗R3とコンデンサC1との間の接続ノードn2が、フィルタ回路18Aの出力となっている。同様に、フィルタ回路21Aは、入力と基準電圧との間に直列接続された抵抗R5とコンデンサC2とを備え、抵抗R5とコンデンサC2との間の接続ノードn4が、フィルタ回路21Aの出力となっている。
【0040】
回転機1のU相、V相、W相のそれぞれから誘起電圧U、V、Wが、分圧回路17A、17B、17Cの入力に供給されている。分圧回路17A、17B、17Cに供給された誘起電圧U、V、Wは、抵抗R1とR2の抵抗比で定まる分圧比で分圧され、降圧される。降圧された誘起電圧U、V、Wは、ノイズの除去を目的としたフィルタ回路18A、18B、18Cを介して、コンパレータ19Aおよび19Bに供給されている。降圧された誘起電圧U、V、Wは、コンパレータ19Aおよび19Bによって、電圧値の比較が行われ、デジタル信号としてフィルタ回路21A、21Bに供給されている。フィルタ回路21A、21Bは、入力したデジタル信号からノイズを除去し、U-V間デジタル信号およびW-V間デジタル信号として出力する。なお、コンパレータ19A、19Bの出力における接続ノードn3と電源電圧Vdとの間には抵抗R4が接続されている。この抵抗R4によって、プルアップ回路20A、20Bが構成されている。
【0041】
<<周波数検出回路および回転数再現器>>
図3は、実施の形態1に係わる周波数検出回路および回転数再現器を説明するためのタイミングチャート図である。
【0042】
周波数検出回路5は、回転機1が回転しているときに発生する3相の誘起電圧U、V、Wの大小関係に応じて、回転機1の回転速度、回転方向、および磁極位置の情報を持ったU-V間デジタル信号およびW-V間デジタル信号を形成する。
【0043】
具体的に述べると、スイッチング素子2が動作していない状態で回転機1が回転している場合、回転機1から誘起電圧U、V、Wが発生する。誘起電圧U、V、Wを、回転機1の線間電圧で観測した場合の電圧波形が、図3において誘起電圧波形として示されている。図3において、U-VはU線とV線間の線間電圧、V-WはV線とW線間の線間電圧、W-UはW線とU線間の線間電圧を示している。同図に示すように、線間電圧は、それぞれ120degずつ位相がずれた三相交流となる。
【0044】
周波数検出回路5においては、図2で示したように、分圧回路17A~17Cによって誘起電圧U、V、Wは降圧され、降圧された誘起電圧の電圧値の大小関係が、コンパレータ19A、19Bによって比較され、2つのデジタル信号、すなわちU-V間デジタル信号およびW-V間デジタル信号が形成される。降圧された誘起電圧WとUを比較するコンパレータを、周波数検出回路5に設けるようにしてもよいが、後で説明する回転数再現器7では、コンパレータ19A、19Bによって得られる2つのデジタル信号から、回転速度、回転方向、および磁極位置の情報が取得可能であるため、誘起電圧WとUとを比較するコンパレータは削除されている。
【0045】
また、フィルタ回路18A、18B、18C、およびフィルタ回路21A、21Bのフィルタ時定数はノイズを取り除くことが可能な時定数になるように、それぞれのフィルタ回路に入力されるデジタル信号を観測しながら、時定数を選定すればよい。またプルアップ回路20A、20Bは、電力変換装置100に対する電源の投入直後に、コンパレータ19A、19Bの電源が立ち上がるまでの間に、コンパレータ19A、19Bからのデジタル信号がチャタリングしないようにデジタル信号を論理値“1”(オン状態)となるようにしている。
【0046】
周波数検出回路5により形成されているU-V間デジタル信号およびW-V間デジタル信号を用いることにより、スイッチング素子2が動作していない状態で、回転機1が回転しているときの回転速度、回転方向および磁極位置を推定することが可能である。すなわち、スイッチング素子2が動作していなくても、回転機1が回転することにより、誘起電圧U、V、Wが発生する。これにより、発生する誘起電圧U、V、Wの位相に応じて、U-V間デジタル信号およびW-V間デジタル信号は、論理値“1”、“0”(オン状態、オフ状態)となるため、回転数再現器7によって、回転機1の回転速度、回転方向および磁極位置を推定することが可能である。
【0047】
先ず回転機1の回転速度は、例えばU-V間デジタル信号の立ち上がり(オン)タイミングを毎回検出し、図3に示すように、前回検出したタイミングから今回検出したタイミングまでの時間差ΔTを観測する。勿論、U-V間デジタル信号の立ち下がり(オフ)間の時間差、または立ち上がりと立ち下がりの両方の時間差を測定するようにしてもよい。例えば、U-V間デジタル信号の立ち上がりと立ち下がりの両方の時間差を測定するようにした場合、回転機1が1回転したときの検出回数が2倍となるため、回転数再現器7の検出精度を向上させることが可能である。
【0048】
回転数再現器7は、測定により得た時間差ΔTを周期として、誘起電圧の周波数を算出し、回転機1の検出速度Ffbとして出力する。この検出速度Ffbが、回転機1の回転速度に該当する。
【0049】
次に、回転方向の推定を説明する。U-V間デジタル信号およびW-V間デジタル信号の立ち上がりタイミングおよび立ち下がりタイミングの時間を測定することで、回転方向は推定することが可能である。
【0050】
例えば、U-V間デジタル信号の立ち上りタイミングを起点とすると、回転機1が正転の場合には、次に検出するW-V間デジタル信号の立ち下りタイミングまでの時間差Δt1と、W-V間デジタル信号の立ち下りタイミングから、次に検出するU-V間デジタル信号の立ち下りタイミングまでの時間差Δt2との間の関係は、時間差Δt1>時間差Δt2となる。
【0051】
これに対して、回転機1が逆転の場合には、U-V間デジタル信号の立ち上りタイミングを起点とすると、次に検出するW-V間デジタル信号の立ち上がりタイミングまでの時間差Δt1’と、W-V間デジタル信号の立ち上がりタイミングから、次に検出するU-V間デジタル信号の立ち下りタイミングまでの時間差Δt2’との間の関係が、時間差Δt1’<時間差Δt2’となる。
【0052】
回転数再現器7は、時間差Δt1、時間差Δt2もしくは時間差Δt1’、時間差Δt2’の大小関係により、回転方向を推定する。
【0053】
次に、回転機1の磁極位置の推定について説明する。回転機1が発生する誘起電圧の位相は、回転機1における磁極位置と連動する。一方、U-V間デジタル信号およびW-V間デジタル信号の立ち上がりタイミングおよび立ち下がりタイミングは、誘起電圧の位相と連動している。そのため、図3において、磁極位置角度として示すように、回転機1の回転子が電気角で1回転する間に、U-V間デジタル信号およびW-V間デジタル信号の立ち上がりタイミングおよび立ち下がりタイミングの合計数は、4回である。例えば、磁極位置の検出タイミングが、回転機1の磁極位置角度30deg、150deg、210deg、330degの場合、回転数再現器7は、U-V間デジタル信号およびW-V間デジタル信号の立ち上りもしくは立ち下りのタイミングで、演算している内部位置情報をダイレクトに更新するように処理を行う。
【0054】
この場合、U-V間デジタル信号およびW-V間デジタル信号の立ち上がりタイミングおよび立ち下がりタイミング以外の時間では、先に説明した検出速度Ffbに応じた値の位置更新量θstepを、任意の演算周期で内部位置情報に加算して、内部位置情報を更新する。これにより、回転数再現器7は、回転機1の磁極位置と同期した内部位置情報を、取得し、更新することができる。
【0055】
任意の演算周期で内部位置情報を更新しているとき、U-V間デジタル信号およびW-V間デジタル信号の立ち上りもしくは立ち下りのタイミングで、内部位置情報をダイレクトに更新する処理が発生すると、演算周期で更新していた内部位置情報と、ダイレクトに更新する内部位置情報との間で、位置偏差Δθが発生する場合がある。この場合には、位置偏差Δθが“0”となるように、回転数再現器7においては、PI制御により位置更新量θstepが補正される。
【0056】
スイッチング素子2が動作している状態でも、回転数再現器7は、磁極位置を推定している。しかしながら、この状態においては、回転数再現器7は、演算周期で更新した内部位置情報を磁極位置として推定する。例えば動作させていたスイッチング素子2を停止させると、前記した位置偏差Δθが発生することが考えられる。この場合、回転数再現器7は、前記したように位置更新量θstepを補正する。
【0057】
このように、スイッチング素子2が動作している状態では、回転数再現器7は、U-V間デジタル信号およびW-V間デジタル信号の立ち上りもしくは立ち下りのタイミングで、演算している内部位置情報をダイレクトに更新して、磁極位置を推定する動作は実行しない。これは、スイッチング素子2が動作している場合、回転機1の誘起電圧を、図1に示した配線LU、LV、LWで観測することができないためである。すなわち、スイッチング素子2が動作している状態では、配線LU、LV、LWにおける電圧波形は、スイッチング素子2が動作することにより発生する電圧波形(PWM電圧波形)となる。このPWM電圧波形に基づいて、図1に示したベクトル制御部24およびPWM制御器14が、PWM信号により、スイッチング素子2をスイッチング制御することで、スイッチング素子2が動作している状態においては、適切な電力が電力変換装置100から出力される。
【0058】
<直流電圧再現器>
パラメータ設定器10によって設定される誘起電圧定数は、回転機1の回転数(min-1)と発生する誘起電圧(V)との関係を定める定数である。直流電圧再現器8には、回転数再現器7において推定された回転機1の回転速度と記憶部11から誘起電圧定数が供給されている。直流電圧再現器8は、供給された回転速度から回転数を求め、求めた回転数と誘起電圧定数とから、回転機1で発生する誘起電圧を推定し、直流電圧再現値として出力する。例えば、直流電圧再現器8は、求めた回転数と誘起電圧定数との間で演算を実行することにより、誘起電圧を推定する。
【0059】
<判定部>
判定部9による判定を、図面を用いて説明する。図4および図5は、実施の形態1に係わる電力変換装置の起動シーケンスを示す電圧波形図である。図4には、回転機1内の磁石、例えば回転子の磁石が減磁されていない場合の起動シーケンスが示され、図5には、磁石が減磁されている場合の起動シーケンスが示されている。図4および図5において、横軸は時間を示し、縦軸は電圧を示している。
【0060】
<<起動時のシーケンス>>
先ず、減磁されていない正常な場合の起動シーケンスを、図4を参照して述べる。回転機1が回転し、回転数が最高回転数に到達した後、図1に示したスイッチング素子2を動作させる。スイッチング素子2が動作することにより、昇圧動作が行われ、電力変換装置100から出力される電圧が上昇する。出力される電圧が、目標電圧に到達すると、電力変換装置100においては、出力される電圧が目標電圧を維持するように、PWM信号によって、スイッチング素子2のスイッチング動作が制御される。
【0061】
<<減磁されていない場合>>
回転機1は、遮断器13が判定部9によって遮断されている状態で、回転を始める。回転機1が回転を始めることにより、誘起電圧が発生し、回転数の上昇に応じて誘起電圧も上昇する。このとき、スイッチング素子2は動作していない、すなわちスイッチング素子2内のIGBTTRはオフ状態となっているが、スイッチング素子2内の還流ダイオードDDと平滑コンデンサ3により構成された三相全波整流回路によって、三相交流の誘起電圧U、V、Wは直流電圧に変換される。この変換された直流電圧も、回転機1の回転数の上昇に応じて、図4の実線で示すように上昇する。
【0062】
判定部9は、直流電圧再現器8から出力されている直流電圧再現値が、パラメータ設定器10によって設定された起動電圧に到達したか否かを判定する。判定部9は、直流電圧再現値がパラメータ設定器10によって設定された起動電圧に到達したと判定したタイミングを、判定タイミングとし、判定タイミングから所定の期間を待機時間とする。この待機期間おいて、判定部9は、直流電圧検出部6から出力されている直流電圧情報によって表される直流電圧と誘起電圧とを比較する。実施の形態1においては、誘起電圧を中心とした所定の電圧範囲が、誘起電圧の許容範囲として設定されている。この許容範囲の値は、特に制限されないが、パラメータ設定器10によって設定された減磁判定閾値によって定まる。例えば、誘起電圧を中心として、その上下に減磁判定閾値を加えることにより、許容範囲が設定されている。
【0063】
待機期間において、直流電圧情報によって表される直流電圧が、誘起電圧の許容範囲に入っていれば、判定部9は、減磁は発生していないと判定する。すなわち、直流電圧情報によって表される直流電圧と誘起電圧との差分が、減磁判定閾値を超えていないため、判定部9は、減磁が発生していないと判定する。この場合、判定部9は、待機時間経過後に、遮断器13の遮断を解除する。これにより、スイッチ23を介して、直流電圧制御部12からの信号が、PWM制御器14に供給され、PWM制御器14はPWM信号によってスイッチング素子2を動作させる。その結果、電力変換装置100から出力されている電圧が上昇する。その後、スイッチ23が、ベクトル制御部24と遮断器13とを接続するように切り替えられる。以降、PWM制御器14は、ベクトル制御部24からの制御信号に応じたPWM信号を出力して、スイッチング素子2を動作させる。
【0064】
<<減磁されている場合>>
図5の場合、減磁しているため、回転機1の回転数が上昇しても、回転機1によって発生する誘起電圧は低い状態となっている。
【0065】
図4と同様に、判定部9は、直流電圧再現器8によって推定された誘起電圧が、パラメータ設定器10によって設定された誘起電圧に到達したタイミングを、判定タイミングとする。減磁しているため、直流電圧検出部6から出力されている直流電圧情報によって表される直流電圧は、図5の実線で示すように、待機時間において、誘起電圧の許容範囲に入っておらず、誘起電圧の許容範囲よりも下回っている。すなわち、直流電圧情報によって表される直流電圧と誘起電圧との差分が、減磁判定閾値を超えている。図5において、tmは、判定部9が、回転機1の回転数が最高回転数に達したと判定したタイミングを示している。判定部9は、回転機1の回転数が、最高回転数に達しているのにもかかわらず、直流電圧情報によって表される直流電圧が、待機時間において、誘起電圧の許容範囲に一度も入っていない状態が継続している場合、減磁が発生していると判定し、減磁が発生している旨の報知情報を記憶部11に格納する。記憶部11に格納された報知情報は、図1に示した表示部15に表示される。また、報知情報は、上位装置104に通信で送信され、上位装置104も減磁が発生していることを把握することができる。
【0066】
判定部9が、減磁が発生していると判定した場合、判定部9は、待機時間が経過した後も遮断器13の遮断状態を維持する。これにより、PWM制御器14には信号が供給されないため、スイッチング素子2は動作していない非動作状態を継続することになる。
【0067】
報知情報によって、減磁の発生がユーザに通知されるため、ユーザは例えば回転機1および電力変換装置100を停止する。これにより、振動や騒音の発生を防ぐことが可能となる。
【0068】
なお、判定部9には、回転数再現器7において推定された回転機1の回転速度が供給されている。回転機1の回転数が、最高回転数に到達したか否かは、回転数再現器7から判定部9に供給されている推定回転速度から、判定することが可能である。
【0069】
減磁が発生していると判定するために、回転機1が最高回転数に到達したか否かも判定する例を説明したが、これに限定されるものではない。例えば、直流電圧情報で表される直流電圧が、待機時間において、誘起電圧の許容範囲に何度か入った場合、直流電圧情報で表される直流電圧の待機時間における平均電圧が、誘起電圧の許容範囲に入っていない場合、判定部9は減磁が発生していると判定するようにしてもよい。
【0070】
前記したように、判定部9では、直流電圧情報で表される直流電圧と誘起電圧との比較を行う。この場合、直流電圧情報で表される直流電圧が、回転機1が回転しているときに測定した測定値に該当し、誘起電圧が、比較を行うための基準値に該当する。実施の形態1では、基準値である誘起電圧としては、直流電圧再現器8から出力されている直流電圧再現値が用いられている。しかしながら、基準値として、パラメータ設定部10によって設定された誘起電圧を用いるようにしてもよい。
【0071】
<直流電圧検出回路、直流電圧検出部および直流電圧検出部>
直流電圧検出回路4は、平滑コンデンサ3の両端の電圧を、図2で説明した分圧回路17Aと同様な構成の分圧回路によって降圧し、降圧により得られた電圧を、オペアンプ等を介して出力するように構成されている。降圧することにより、平滑コンデンサ3の両端の電圧は、マイコン部102の入力電圧範囲に整合したアナログ信号に変換される。
【0072】
直流電圧検出部6は、供給されたアナログ信号の直流電圧をデジタル信号に変換するA/D変換器と演算器を備えており、アナログ信号の直流電圧に対応したデジタル信号を直流電圧情報として出力する。
【0073】
直流電圧制御部12は、パラメータ設定器10に設定された目標電圧と直流電圧検出部6からの直流電圧情報との偏差が“0”となるようにPID制御、もしくPI制御を行い、PWM制御器14に、信号によってPWM指令を出力し、スイッチング素子2を制御する演算器である。
【0074】
(実施の形態2)
図6は、実施の形態2に係わる電力変換装置の起動シーケンスを示す電圧波形図である。実施の形態2では、回転機1の回転数のバラツキを考慮した電力変換装置が提供される。
【0075】
回転機1の回転数が、起動時において、所定の時間、一定の値となるように制御される。この所定の時間が、判定時間とされ、判定時間において、判定部9が、直流電圧情報で表される直流電圧が、誘起電圧の許容範囲に入っているか否かの判定を複数回実行する。
【0076】
図6では、判定開始タイミングにおいて、回転機1が、所定の回転数となるように制御され、判定時間の間、所定の回転数を維持するように制御される。これにより、回転機1の回転数にバラツキがあっても、減磁判定の精度を向上させることが可能である。
【0077】
(実施の形態3)
実施の形態3に係わる電力変換装置においては、回転機1の減磁前後の誘起電圧が比較され、比較により求めた差が所定の閾値を超えている場合に、減磁が発生していると判定する。具体的に述べると、減磁前の誘起電圧は、発電機を設置した際の試運転時等で測定する。この場合、回転機の回転数も測定する。測定した減磁前の誘起電圧と回転数は、電力変換装置に搭載されている電気的に書き換え可能な不揮発性メモリに記録しておく。
【0078】
発電機が運用を開始した後、任意のタイミングで、誘起電圧と回転機の回転数が測定される。すなわち、減磁前に測定した回転数と同じ回転数のときの誘起電圧が測定される。運用時に測定した誘起電圧と不揮発性メモリに記録されている誘起電圧とを、判定部で比較し、誘起電圧の差が閾値を超えた場合、判定部は減磁が発生しているとして、報知する。
【0079】
ここでは、減磁前の誘起電圧と回転数を測定する例を説明したが、これに限定されるものではない。例えば、誘起電圧および回転数は、発電機を設計したときの設計値を、予め電気的に書き換え可能な不揮発性メモリに記録してもよい。これにより、減磁前の誘起電圧および回転数の測定を割愛することが可能である。
【0080】
実施の形態1~3によれば、電力変換装置が動作していない状態、すなわちスイッチング素子が動作していない状態でも、回転機が回転している状態であれば、回転機内の磁石が減磁されているか否かを検知することが可能である。そのため、スイッチング素子が動作する前に、電力変換装置の表示部または/および上位装置によって、ユーザ等の外部に減磁の異常を報知することが可能である。報知を受けたユーザが、例えば発電機を停止することにより、減磁に伴う騒音や振動の発生を防ぐことが可能である。
【0081】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0082】
1 回転機
2 スイッチング素子
3 平滑コンデンサ
100 電力変換装置
101 回路部
102 マイコン部
103 操作部
104 上位装置
U、V、W 誘起電圧
図1
図2
図3
図4
図5
図6