(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-20
(45)【発行日】2023-09-28
(54)【発明の名称】複数の実装基板の製造方法
(51)【国際特許分類】
H05K 3/00 20060101AFI20230921BHJP
H01L 33/62 20100101ALI20230921BHJP
H01L 33/50 20100101ALI20230921BHJP
H05K 3/34 20060101ALI20230921BHJP
H05K 1/02 20060101ALI20230921BHJP
H01L 23/12 20060101ALI20230921BHJP
G02B 5/20 20060101ALI20230921BHJP
【FI】
H05K3/00 X
H01L33/62
H01L33/50
H05K3/34 512A
H05K1/02 G
H01L23/12 F
G02B5/20
(21)【出願番号】P 2019017773
(22)【出願日】2019-02-04
【審査請求日】2021-12-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000003296
【氏名又は名称】デンカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】小西 正宏
【審査官】鹿野 博司
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-227726(JP,A)
【文献】特開2015-096580(JP,A)
【文献】特開2014-112669(JP,A)
【文献】特開2016-092276(JP,A)
【文献】特開2014-175447(JP,A)
【文献】実開平03-092066(JP,U)
【文献】国際公開第2018/155253(WO,A1)
【文献】特開2007-036198(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 3/00
H01L 33/00
H05K 3/34
H05K 1/02
H01L 23/12
G02B 5/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に複数の配線パターンが形成され、裏面を固定部材で固定された基板を切断して複数の個片基板を得る工程であって、前記固定部材が前記基板に固定されたまま前記基板を刃で切断する切断工程と、
前記固定部材に固定されたまま前記複数の個片基板がそれぞれ切断時の位置関係で並べられた状態で、前記複数の個片基板のそれぞれに電子部品を実装して複数の実装基板を得る実装工程と、
前記複数の実装基板から前記固定部材を分離する分離工程と、
を含み、
前記切断工程の前に、前記基板の前記表面に前記複数の配線パターンを形成するパターン形成工程を含み、
前記パターン形成工程の後かつ前記切断工程の前に、前記基板の表面に蛍光体層を形成する蛍光体層形成工程を含み、
前記切断工程の後かつ前記分離工程の前に、前記実装工程を行い、
前記実装工程を、前記蛍光体層形成工程の後に行う、
複数の実装基板の製造方法。
【請求項2】
前記電子部品は、はんだにより前記配線パターンに接合されて、前記複数の個片基板のそれぞれに実装される、
請求項1に記載の複数の実装基板の製造方法。
【請求項3】
前記基板の厚みは、600μm以下である、
請求項1又は2に記載の複数の実装基板の製造方法。
【請求項4】
前記固定部材は、前記基板の前記裏面における、前記刃で切断されて形成される切断線を挟んで両側の部分に跨って固定される、
請求項1~3のいずれか1項に記載の複数の実装基板の製造方法。
【請求項5】
前記固定部材には、粘着材又は粘着層が設けられており、
前記固定部材は、前記粘着材又は前記粘着層により前記裏面に粘着されて固定される、
請求項1~4のいずれか1項に記載の複数の実装基板の製造方法。
【請求項6】
前記固定部材は、固定部材本体を有し、
前記粘着材又は前記粘着層は、前記固定部材本体の表面に粘着されており、
前記固定部材本体の表面に対する前記粘着材又は前記粘着層の粘着力は、前記基板の裏面に対する前記粘着材又は前記粘着層の粘着力よりも大きい、
請求項5に記載の複数の実装基板の製造方法。
【請求項7】
前記パターン形成工程の後かつ前記分離工程の前に、前記電子部品の実装検査及び前記複数の実装基板の外観検査の一方又は両方を行う検査工程を含む、
請求項1~6のいずれか1項に記載の複数の実装基板の製造方法。
【請求項8】
前記電子部品は、発光素子である、
請求項1~7のいずれか1項に記載の複数の実装基板の製造方法。
【請求項9】
前記パターン形成工程の後かつ前記分離工程の前に、前記電子部品の実装検査及び前記複数の実装基板の外観検査の一方又は両方を行う検査工程を含み、
前記電子部品は、発光素子であり、
前記検査工程における前記電子部品の前記実装検査として、前記発光素子の点灯検査を行う、
請求項1~6のいずれか1項に記載の複数の実装基板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の実装基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、複数の実装基板の製造方法が開示されている。この製造方法では、基板に複数の配線パターンを形成し、各配線パターンにそれぞれ電子部品(例えば発光素子)を実装し、基板を刃で切断して、複数の実装基板を製造している(特許文献1の明細書段落「0058」~「0071」、
図7等)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されている製造方法では、基板に電子部品を実装した後に、基板を切断して複数の実装基板を製造する。この製造方法の場合、基板の切断時に例えば電子部品と配線パターンとの接合部分(例えば、はんだ等)に負荷(応力)がかかる。そのため、この製造方法により製造された実装基板は、上記接合部分の接合不良を生じる虞がある。
【0005】
本発明は、基板を刃で切断して得られる複数の個片基板から複数の実装基板を製造する方法において、信頼性が高い複数の実装基板の製造方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1態様の複数の実装基板の製造方法は、表面に複数の配線パターンが形成され、裏面を固定部材で固定された基板を切断して複数の個片基板を得る工程であって、前記固定部材が前記基板に固定されたまま前記基板を刃で切断する切断工程と、前記固定部材に固定されたまま前記複数の個片基板がそれぞれ切断時の位置関係で並べられた状態で、前記複数の個片基板のそれぞれに電子部品を実装して複数の実装基板を得る実装工程と、前記複数の実装基板から前記固定部材を分離する分離工程と、を含み、
前記切断工程の前に、前記基板の前記表面に前記複数の配線パターンを形成するパターン形成工程を含み、
前記パターン形成工程の後かつ前記切断工程の前に、前記基板の表面に蛍光体層を形成する蛍光体層形成工程を含み、
前記切断工程の後かつ前記分離工程の前に、前記実装工程を行い、
前記実装工程を、前記蛍光体層形成工程の後に行う。
【0007】
本発明の第2態様の複数の実装基板の製造方法は、第1態様の複数の実装基板の製造方法において、前記電子部品は、はんだにより前記配線パターンに接合されて、前記複数の個片基板のそれぞれに実装される。
【0008】
本発明の第3態様の複数の実装基板の製造方法は、第1又は第2態様の複数の実装基板の製造方法において、前記基板の厚みは、600μm以下である。
【0009】
本発明の第4態様の複数の実装基板の製造方法は、第1~第3態様のいずれか一態様の複数の実装基板の製造方法において、前記固定部材は、前記基板の前記裏面における、前記刃で切断されて形成される切断線を挟んで両側の部分に跨って固定される。
【0010】
本発明の第5態様の複数の実装基板の製造方法は、第1~第4態様のいずれか一態様の複数の実装基板の製造方法において、前記固定部材には、粘着材又は粘着層が設けられており、前記固定部材は、前記粘着材又は前記粘着層により前記裏面に粘着されて固定される。
【0011】
本発明の第6態様の複数の実装基板の製造方法は、第5態様の複数の実装基板の製造方法において、前記固定部材は、固定部材本体を有し、前記粘着材又は前記粘着層は、前記固定部材本体の表面に粘着されており、前記固定部材本体の表面に対する前記粘着材又は前記粘着層の粘着力は、前記基板の裏面に対する前記粘着材又は前記粘着層の粘着力よりも大きい。
【0016】
本発明の第7態様の複数の実装基板の製造方法は、第1~第6態様のいずれか一態様の複数の実装基板の製造方法において、前記パターン形成工程の後かつ前記分離工程の前に、前記電子部品の実装検査及び前記複数の実装基板の外観検査の一方又は両方を行う検査工程を含む。
【0017】
本発明の第8態様の複数の実装基板の製造方法は、第1~第7態様のいずれか一態様の複数の実装基板の製造方法において、前記電子部品は、発光素子である。
【0018】
本発明の第9態様の複数の実装基板の製造方法は、第1~6態様のいずれか一態様の複数の実装基板の製造方法において、前記パターン形成工程の後かつ前記分離工程の前に、前記電子部品の実装検査及び前記複数の実装基板の外観検査の一方又は両方を行う検査工程を含み、前記電子部品は、発光素子であり、前記検査工程における前記電子部品の前記実装検査として、前記発光素子の点灯検査を行う。
【発明の効果】
【0023】
本発明の複数の実装基板の製造方法によれば、基板を刃で切断して得られる複数の個片基板から複数の実装基板を製造する方法において、信頼性が高い。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本実施形態の発光基板の製造方法のフロー図である。
【
図2A】本実施形態の製造方法により製造される発光基板の平面図である。
【
図2C】
図2Aの1C-1C切断線により切断した発光基板の部分断面図である。
【
図3A】本実施形態の蛍光体基板(蛍光体層を省略)の平面図である。
【
図4】本実施形態の発光基板の発光動作を説明するための図である。
【
図5A】本実施形態の発光基板の製造方法における第1工程の説明図である。
【
図5B】本実施形態の発光基板の製造方法における第2工程の説明図である。
【
図5C】第2工程終了時に複数の電極層(複数の配線パターン)が形成されたマザーボードの平面図である。
【
図5D】本実施形態の発光基板の製造方法における第3工程の説明図である。
【
図5E】本実施形態の発光基板の製造方法における第4工程の説明図である。
【
図5F】第4工程終了時に複数の電極層(複数の配線パターン)が形成されたマザーボードの平面図である。
【
図5G】本実施形態の発光基板の製造方法における第5工程の説明図である。
【
図5H】本実施形態の発光基板の製造方法における第6工程の説明図である。
【
図5I】本実施形態の発光基板の製造方法における第7工程の説明図である。
【
図5J】本実施形態の発光基板の製造方法における第8工程の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
≪概要≫
以下、本実施形態について図面を参照しながら説明する。まず、本実施形態の発光基板10(
図2A~
図2C参照)の製造方法S100(以下、本実施形態の製造方法S100という。
図1参照)により製造される発光基板10の構成及び機能について説明する。次いで、本実施形態の発光基板10の発光動作について
図4を参照しながら説明する。次いで、本実施形態の製造方法S100について
図1及び
図5A~
図5Jを参照しながら説明する。次いで、本実施形態の効果について
図1等を参照しながら説明する。なお、以下の説明において参照するすべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0026】
≪本実施形態の製造方法S100により製造される発光基板の構成及び機能≫
図2Aは本実施形態の発光基板10(実装基板の一例)の平面図(表面31から見た図)、
図2Bは本実施形態の発光基板10の底面図(裏面33から見た図)である。
図2Cは、
図2Aの1C-1C切断線により切断した発光基板10の部分断面図である。
本実施形態の発光基板10は、表面31及び裏面33から見て、一例として矩形とされている。また、本実施形態の発光基板10は、複数の発光素子20(電子部品の一例)と、蛍光体基板30と、コネクタ、ドライバIC等の電子部品(図示省略)とを備えている。すなわち、本実施形態の発光基板10は、蛍光体基板30(個片基板及び配線基板の一例)に、複数の発光素子20及び上記電子部品が実装されたものとされている。
本実施形態の発光基板10は、コネクタを介して外部電源(図示省略)から給電されると、発光する機能を有する。そのため、本実施形態の発光基板10は、例えば照明装置(図示省略)等における主要な光学部品として利用される。
【0027】
<複数の発光素子>
複数の発光素子20は、それぞれ、一例として、フリップチップLED22(以下、LED22という。)が組み込まれたCSP(Chip Scale Package)とされている(
図2C参照)。複数の発光素子20は、
図2Aに示されるように、蛍光体基板30の表面31に、表面31の全体に亘って規則的に並べられた状態で、蛍光体基板30に実装されている。なお、本実施形態の各発光素子20が発光する光の相関色温度は、一例として3,018Kとされている。また、複数の発光素子20は、発光動作時に、ヒートシンク(図示省略)や冷却ファン(図示省略)を用いることで、蛍光体基板30を一例として常温から50℃~100℃に収まるように放熱(冷却)されるようになっている。ここで、本明細書で数値範囲に使用する「~」の意味について補足すると、例えば「50℃~100℃」は「50℃以上100℃以下」を意味する。そして、本明細書で数値範囲に使用する「~」は、「『~』の前の記載部分以上『~』の後の記載部分以下」を意味する。
【0028】
<蛍光体基板>
図3Aは、本実施形態の蛍光体基板30の図であって、蛍光体層36を省略して図示した平面図(表面31から見た図)である。
図3Bは、本実施形態の蛍光体基板30の平面図(表面31から見た図)である。なお、本実施形態の蛍光体基板30の底面図は、発光基板10を裏面33から見た図と同じである。また、本実施形態の蛍光体基板30の部分断面図は、
図2Cの部分断面図から発光素子20を除いた場合の図と同じである。すなわち、本実施形態の蛍光体基板30は、表面31及び裏面33から見て、一例として矩形とされている。
【0029】
本実施形態の蛍光体基板30は、絶縁層32と、電極層34(配線パターンの一例)と、蛍光体層36と、裏面パターン層38とを備えている(
図2B、
図2C、
図3A及び
図3B参照)。なお、
図3Aでは蛍光体層36が省略されているが、蛍光体層36は、
図3Bに示されるように、一例として、絶縁層32及び電極層34の表面31における、後述する複数の電極対34A以外の部分に配置されている。
【0030】
また、蛍光体基板30には、
図2B及び
図3Aに示されるように、四つ角付近の4箇所及び中央付近の2箇所の6箇所に貫通孔39が形成されている。6箇所の貫通孔39は、蛍光体基板30及び発光基板10の製造時に位置決め孔として利用されるようになっている。あわせて、6箇所の貫通孔39は、(発光)灯具筐体への熱引き効果確保(基板反り及び浮き防止)のための取り付け用のネジ穴として利用される。なお、本実施形態の蛍光体基板30は、後述するように、絶縁板の両面に銅箔層が設けられたマザーボードMB(基板の一例、
図5A参照)を加工(エッチング等)して製造される。
【0031】
〔絶縁層〕
以下、本実施形態の絶縁層32の主な特徴について説明する。
形状は、前述のとおり、一例として表面31及び裏面33から見て矩形である。
材質は、一例としてビスマレイミド樹脂及びガラスクロスを含む絶縁材である。また、当該絶縁材にはハロゲン及びリンは含まれていない(ハロゲンフリー、リンフリー)。
厚みは、一例として、50μm~600μm、好ましくは100μm~200μmである。
縦方向及び横方向の熱膨張係数(CTE)は、それぞれ、一例として、50℃~100℃の範囲において10ppm/℃以下である。また、別の見方をすると、縦方向及び横方向の熱膨張係数(CTE)は、それぞれ、一例として、6ppm/Kである。この値は、本実施形態の発光素子20の場合とほぼ同等(90%~110%、すなわち±10%以内)である。
ガラス転移温度は、一例として、300℃よりも高い。
貯蔵弾性率は、一例として、100℃~300℃の範囲において、1.0×1010Paよりも大きく1.0×1011Paよりも小さい。
縦方向及び横方向の曲げ弾性率は、一例として、それぞれ、常態において35GPa及び34GPaである。
縦方向及び横方向の熱間曲げ弾性率は、一例として、250℃において19GPaである。
吸水率は、一例として、23℃の温度環境で24時間放置した場合に0.13%である。
比誘電率は、一例として、1MHz常態において4.6である。
誘電正接は、一例として、1MHz常態において、0.010である。
なお、本実施形態の絶縁層32はマザーボードMBの絶縁層の部分に相当するが、マザーボードMBには一例として利昌工業株式会社製のCS-3305Aが用いられる。
【0032】
〔電極層〕
本実施形態の電極層34は、絶縁層32の表面31側に設けられた金属層とされている。本実施形態の電極層34は一例として銅箔層(Cu製の層)とされている。別言すれば、本実施形態の電極層34は、少なくともその表面が銅を含んで形成されている。
電極層34は、絶縁層32に設けられたパターンとされ、コネクタ(図示省略)が接合される端子37と導通している。そして、電極層34は、コネクタを介して外部電源(図示省略)から給電された電力を、発光基板10の構成時の複数の発光素子20に供給するようになっている。そのため、電極層34の一部は、複数の発光素子20がそれぞれ接合される複数の電極対34Aとされている。すなわち、本実施形態の発光基板10の電極層34は、絶縁層32に配置され、各発光素子20に接続されている。また、別の見方をすると、本実施形態の蛍光体基板30の電極層34は、絶縁層32に配置され、各発光素子20に接続される。また、前述のとおり、本実施形態の発光基板10における複数の発光素子20は表面31の全体に亘って規則的に並べられていることから、複数の電極対34Aも表面31の全体に亘って規則的に並べられている(
図3A参照)。電極層34における複数の電極対34A以外の部分を、配線部分34Bという。本実施形態では、
図2Cに示されるように、一例として、複数の電極対34Aは、配線部分34Bよりも絶縁層32(蛍光体基板30)の厚み方向外側に突出している。別言すると、電極層34における絶縁層32の厚み方向外側に向く面において、それぞれ各発光素子20が接合される面(接合面34A1)は、接合面34A1以外の面(非接合面34B1)よりも、絶縁層32の厚み方向外側に位置している。
なお、絶縁層32の表面31における電極層34が配置されている領域(電極層34の専有面積)は、一例として、絶縁層32の表面31の60%以上の領域(面積)とされている(
図3A参照)。
【0033】
〔蛍光体層〕
本実施形態の蛍光体層36は、
図3Bに示されるように、一例として、蛍光体層36は、絶縁層32及び電極層34の表面31における、複数の電極対34A以外の部分に配置されている。すなわち、蛍光体層36は、電極層34における複数の電極対34A以外の領域に配置されている。別言すると、蛍光体層36の少なくとも一部は、表面31における、各接合面34A1の周囲に配置されている(
図2C及び
図3B参照)。さらに、別の見方をすると、蛍光体層36の少なくとも一部は、表面31側から見て、各接合面34A1の周りを全周に亘って囲むように配置されている。そして、本実施形態では、絶縁層32の表面31における蛍光体層36が配置されている領域は、一例として、絶縁層32の表面31における80%以上の領域とされている。
なお、本実施形態では、蛍光体層36における絶縁層32の厚み方向外側の面は、電極層34の接合面34A1よりも当該厚み方向外側に位置している(
図2C及び
図5E参照)。しかしながら、本実施形態の場合と逆の構成、すなわち、蛍光体層36における絶縁層32の厚み方向外側の面が接合面34A1よりも当該厚み方向内側に位置している構成(図示省略)であってもよい。また、蛍光体層36における絶縁層32の厚み方向外側の面が接合面34A1と当該厚み方向で同じ位置に位置している構成(図示省略)であってもよい。
【0034】
本実施形態の蛍光体層36は、一例として、後述する蛍光体とバインダーとを含む、絶縁層とされている。蛍光体層36に含まれる蛍光体は、バインダーに分散された状態で保持されている微粒子とされ、各発光素子20の発光を励起光として励起する性質を有する。具体的には、本実施形態の蛍光体は、発光素子20の発光を励起光としたときの発光ピーク波長が可視光領域にある性質を有する。なお、バインダーは、例えば、エポキシ系、アクリレート系、シリコーン系等で、ソルダーレジストに含まれるバインダーと同等の絶縁性を有するものであればよい。
【0035】
(蛍光体の具体例)
ここで、本実施形態の蛍光体層36に含まれる蛍光体は、一例として、Euを含有するα型サイアロン蛍光体、Euを含有するβ型サイアロン蛍光体、Euを含有するCASN蛍光体及びEuを含有するSCASN蛍光体からなる群から選ばれる少なくとも一種以上の蛍光体とされている。なお、前述の蛍光体は、本実施形態の一例であり、YAG、LuAG、BOSその他の可視光励起の蛍光体のように、前述の蛍光体以外の蛍光体であってもよい。
【0036】
Euを含有するα型サイアロン蛍光体は、一般式:MxEuySi12-(m+n)Al(m+n)OnN16-nで表される。上記一般式中、MはLi、Mg、Ca、Y及びランタニド元素(ただし、LaとCeを除く)からなる群から選ばれる、少なくともCaを含む1種以上の元素であり、Mの価数をaとしたとき、ax+2y=mであり、xが0<x≦1.5であり、0.3≦m<4.5、0<n<2.25である。
【0037】
Euを含有するβ型サイアロン蛍光体は、一般式:Si6-zAlzOzN8-z(z=0.005~1)で表されるβ型サイアロンに発光中心として二価のユーロピウム(Eu2+)を固溶した蛍光体である。
【0038】
また、窒化物蛍光体として、Euを含有するCASN蛍光体、Euを含有するSCASN蛍光体等が挙げられる。
【0039】
Euを含有するCASN蛍光体(窒化物蛍光体の一例)は、例えば、式CaAlSiN3:Eu2+で表され、Eu2+を付活剤とし、アルカリ土類ケイ窒化物からなる結晶を母体とする赤色蛍光体をいう。なお、本明細書におけるEuを含有するCASN蛍光体の定義では、Euを含有するSCASN蛍光体が除かれる。
【0040】
Euを含有するSCASN蛍光体(窒化物蛍光体の一例)は、例えば、式(Sr,Ca)AlSiN3:Eu2+で表され、Eu2+を付活剤とし、アルカリ土類ケイ窒化物からなる結晶を母体とする赤色蛍光体をいう。
【0041】
〔裏面パターン層〕
本実施形態の裏面パターン層38は、絶縁層32の裏面33側に設けられた金属層とされている。本実施形態の裏面パターン層38は一例として銅箔層(Cu製の層)とされている。
裏面パターン層38は、
図2Bに示されるように、絶縁層32の長手方向に沿って直線状に並べられている複数の矩形部分の塊が短手方向において位相をずらしたよう隣接して並べられている層とされている。
なお、裏面パターン層38は、一例として、独立フローティング層とされている。また、裏面パターン層38は、絶縁層32(蛍光体基板30)の厚み方向において、一例として、表面31に配置されている電極層34の80%以上の領域と重なっている。
【0042】
以上が、本実施形態の製造方法により製造される発光基板10及び蛍光体基板30の構成についての説明である。
【0043】
≪本実施形態の発光基板の発光動作≫
次に、本実施形態の発光基板10の発光動作について
図4を参照しながら説明する。ここで、
図4は、本実施形態の発光基板10の発光動作を説明するための図である。
【0044】
まず、複数の発光素子20を作動させる作動スイッチ(図示省略)がオンになると、コネクタ(図示省略)を介して外部電源(図示省略)から電極層34への給電が開始され、複数の発光素子20は光L光Lを放射状に発散出射し、その光Lの一部は蛍光体基板30の表面31に到達する。以下、出射された光Lの進行方向に分けて光Lの挙動について説明する。
【0045】
各発光素子20から出射された光Lの一部は、蛍光体層36に入射することなく外部に出射される。この場合、光Lの波長は、各発光素子20から出射された際の光Lの波長と同じままである。
【0046】
また、各発光素子20から出射された光Lの一部分の中のLED22自身の光は、蛍光体層36に入射する。ここで、前述の「光Lの一部分の中のLED22自身の光」とは、出射された光Lのうち各発光素子20(CSP自身)の蛍光体により色変換されていない光、すなわち、LED22自身の光(一例として青色(波長が470nm近傍)の光)を意味する。そして、LED22自身の光Lが蛍光体層36に分散されている蛍光体に衝突すると、蛍光体が励起して励起光を発する。ここで、蛍光体が励起する理由は、蛍光体層36に分散されている蛍光体が青色の光に励起ピークを持つ蛍光体(可視光励起蛍光体)を使用しているためである。これに伴い、光Lのエネルギーの一部は蛍光体の励起に使われることで、光Lはエネルギーの一部を失う。その結果、光Lの波長が変換される(波長変換がなされる)。例えば、蛍光体層36の蛍光体の種類によっては(例えば、蛍光体に赤色系CASNを用いた場合には)光Lの波長が長くなる(例えば650nm等)。また、蛍光体層36での励起光はそのまま蛍光体層36から出射するものもあるが、一部の励起光は下側の電極層34に向かう。そして、一部の励起光は電極層34での反射により外部に出射する。以上のように、蛍光体による励起光の波長が600nm以上の場合、電極層34がCuでも反射効果が望める。なお、蛍光体層36の蛍光体の種類によっては光Lの波長が前述の例と異なるが、いずれの場合であっても光Lの波長変換がなされることになる。例えば、励起光の波長が600nm未満の場合、電極層34又はその表面を例えばAg(鍍金)とすれば反射効果が望める。
【0047】
以上のとおり、各発光素子20が出射した光L(各発光素子20が放射状に出射した光L)は、それぞれ、上記のような複数の光路を経由して上記励起光とともに外部に照射される。そのため、蛍光体層36に含まれる蛍光体の発光波長と、発光素子20(CSP)におけるLED22を封止した(又は覆う)蛍光体の発光波長とが異なる場合、本実施形態の発光基板10は、各発光素子20が出射した際の光Lの束を、各発光素子20が出射した際の光Lの波長と異なる波長の光Lを含む光Lの束として上記励起光とともに照射する。例えば、本実施形態の発光基板10は、発光素子20が出射した光(波長)と蛍光体層36より出射された光(波長)との合成光を照射する。
これに対して、蛍光体層36に含まれる蛍光体の発光波長と、発光素子20(CSP)におけるLED22を封止した(又は覆う)蛍光体の発光波長とが同じ場合(同じ相関色温度の場合)、本実施形態の発光基板10は、各発光素子20が出射した際の光Lの束を、各発光素子20が出射した際の光Lの波長と同じ波長の光Lを含む光Lの束として上記励起光とともに照射する。
【0048】
以上が、本実施形態の発光基板10の発光動作についての説明である。
【0049】
≪本実施形態の発光基板の製造方法≫
次に、本実施形態の製造方法S100について、
図1及び
図5A~
図5Jを参照しながら説明する。ここで、
図1は、本実施形態の発光基板の製造方法のフロー図である。本実施形態の製造方法S100は第1工程、第2工程、第3工程、第4工程、第5工程、第6工程、第7工程及び第8工程を含んでおり、各工程はこれらの記載順で行われる。
【0050】
<第1工程>
図5Aは、第1工程の開始時及び終了時を示す図である。第1工程は、マザーボードMBの表面31に厚み方向から見て電極層34と同じパターン34Cを、裏面33に裏面パターン層38を形成する工程である。本工程は、例えばマスクパターン(図示省略)を用いたエッチングにより行われる。
なお、本工程では、対を成すパターン34C及び裏面パターン層38のセットを、マザーボードMBの複数箇所(一例として15箇所(
図5C参照))に形成する。
【0051】
<第2工程>
図5Bは、第2工程の開始時及び終了時を示す図である。第2工程は、各パターン34の一部をハーフハッチ(厚み方向の途中までエッチング)する工程である。本工程が終了すると、結果的に、複数の電極対34Aと配線部分34Bとを有する複数(一例として15個)の電極層34が形成される。すなわち、本工程が終了すると、各電極層34に複数の接合面34A1と複数の非接合面34B1とが形成される。本工程は、例えばマスクパターン(図示省略)を用いたエッチングにより行われる。
ここで、
図5Cは、第2工程終了時に複数(15個)の電極層34(配線パターン)が形成されたマザーボードの平面図である。また、第1工程及び第2工程を組み合わせた工程は、第6工程(切断工程)の前に、マザーボードMBの表面31に複数の電極層34を形成するパターン形成工程(
図1のS110参照)の一例である。
【0052】
<第3工程>
図5Dは、第3工程の開始時及び終了時を示す図である。第3工程は、絶縁層32の表面31、すなわち電極層34が形成された面の全面に蛍光体塗料36Cを塗布する工程である。本工程では、例えば、印刷により蛍光体塗料36Cを塗布する。この場合、蛍光体塗料36Cをすべての電極対34Aよりも厚く塗布する。別言すると、この場合、蛍光体塗料36Cを絶縁層32の厚み方向において、各接合面34A1を厚み方向の外側から覆うように(各接合面34A1が蛍光体塗料36Cで隠れるように)塗布する。
なお、第3工程は、第1工程及び第2工程を組み合わせた工程(パターン形成工程)の後かつ第6工程(切断工程)の前に、マザーボードMBの表面31に蛍光体層36を形成する蛍光体層形成工程(
図1のS120参照)の一例である。
【0053】
<第4工程>
図5Eは、第4工程の開始時及び終了時を示す図である。第4工程は、蛍光体塗料36Cが硬化した蛍光体層36の一部を除去して、すべての電極対34Aの接合面34A1を露出させる工程である。ここで、蛍光体塗料36Cのバインダーが例えば熱硬化性樹脂である場合は、加熱により蛍光体塗料36Cを硬化させた後に2次元レーザー加工装置(図示省略)を用いて蛍光体層36における各接合面34A1上の部分に選択的にレーザー光を照射する。その結果、蛍光体層36における各接合面34A1上の部分及び電極対34Aの各接合面34A1付近の部分がアブレーションされて、各接合面34A1が露出する。以上の結果、本実施形態の蛍光体基板30が製造される。
【0054】
なお、本工程は、上記の方法の他に、例えば、以下の方法により行ってもよい。蛍光体塗料36Cのバインダーが例えばUV硬化性樹脂(感光性樹脂)である場合、各接合面34A1と重なる部分(塗料開口部)にマスクパターンをかけて、UV光を露光し、当該マスクパターン以外をUV硬化させ、非露光部(未硬化部)を樹脂除去液により取り除くことで、各接合面34A1を露出させる。その後、一般的には、熱をかけてアフターキュアを行う(写真現像法)。
【0055】
ここで、
図5Fは、第4工程終了時に複数の電極層34(複数の配線パターン)が形成されたマザーボードMBの平面図である。「第4工程終了時に複数の電極層34(複数の配線パターン)が形成されたマザーボードMB」とは、互いに接続された状態の複数(一例として15個)の蛍光体基板30の集合体30Aを意味する。すなわち、第1~第4工程により、複数の蛍光体基板30の集合体30Aが製造される。ここで、図中の線CL(仮想線)は、後述する第6工程(切断工程)の際に後述する刃型BL(刃の一例、
図5H参照)により切断される切断線CLとなる。なお、本工程は、蛍光体層36の一部を除去する除去工程(
図1のS130参照)の一例である。
【0056】
<第5工程>
図5Gは、第5工程終了時を示す図である。第5工程は、マザーボードMBよりも大きい板状の固定部材FMを第4工程終了後のマザーボードMBの裏面33に固定する工程である。すなわち、本工程は、マザーボードMBに固定部材FMを固定する固定工程(
図1のS140参照)である。
固定部材FMは、一例としてマザーボードMBよりも硬い材料で形成されている。また、固定部材FMは、固定部材本体と、当該固定部材本体における表面(マザーボードMBに固定される側の面)の全域に配置された(粘着された)粘着層(図示省略)とを有している。すなわち、固定部材FMの表面には、一例として粘着層が設けられている。なお、前述の固定部材本体は、外観上、
図5G、
図5H、
図5J等に図示されているとおりの形状とされ、粘着層は、一例として、固定部材本体の厚みに比べて薄く、固定部材本体の表面に設けられている。そして、本実施形態の固定部材FMは、マザーボードMBの裏面33に固定される。この場合、マザーボードMBの裏面33に対する粘着層の粘着力は、切断時(第6工程時)や実装時(第7工程時)に、マザーボードMBが動かない程度でできる限り小さくすることが好ましい。また、固定部材FMは、マザーボードMBの裏面33における、後述する刃型BL(
図5H参照)で切断されて形成される切断線CLを挟んで両側の部分に跨って固定される。なお、本実施形態では、固定部材本体の表面に対する粘着層の粘着力は、一例として、マザーボードMB(又は蛍光体基板30)の裏面33に対する粘着層の粘着力よりも大きい。
前述の説明では、固定部材FMの表面には一例として粘着層が設けられているとしたが、粘着層に換えて層状でない粘着材としてもよい。粘着材は、固定部材本体の表面の複数箇所に分かれて配置されていてもよい。
【0057】
<第6工程>
図5Hは、第6工程の開始時、実行時及び終了時を示す図である。第6工程は、第5工程終了後のまま(固定部材FMがマザーボードMBに固定されたまま)、マザーボードMBを刃型BLで切断する切断工程(
図1のS150参照)である。
ここで、本実施形態の刃型BLは、切断線CL(
図5F参照)のように、縦方向及び横方向にそれぞれ複数の刃を有する型とされている。
そして、本工程では、裏面33を固定部材FMで固定されたマザーボードMB(複数の蛍光体基板30の集合体30A)の表面31側の定められた位置に、刃型BLをセットし、刃型BLを定められた距離移動させ、再度元の位置に戻す。この場合、固定部材FMの固定部材本体は刃型BLにより切断されないように設定されている。ここで、固定部材FMの粘着層は、刃型BLにより完全に切断されるように設定されていてもよく、その厚み方向の途中まで部分的に切断されるように設定されていてもよい。以上の結果、複数の蛍光体基板30の集合体30Aは、裏面33で固定部材FMに固定されたまま切断線CLに沿って切断されて個片化される。
【0058】
なお、第6工程が終了すると、複数の蛍光体基板30と、複数の蛍光体基板30の裏面33に固定されている固定部材FMと、を備える複数の蛍光体基板30の集合体30Aが製造される(
図5Hの第6工程終了時の図を参照)。この場合、複数の蛍光体基板30には、定められた位置関係で並べられ、かつ、それぞれの表面31に、電極層34及び蛍光体層36が配置されている。また、固定部材FMは、複数の蛍光体基板30が定められた位置関係で並べられた状態を維持するように、複数の蛍光体基板30の裏面33に固定されている(
図5Hの第6工程終了時の図を参照)。ここで、定められた位置関係とは、一例として、
図5Fにおける複数の蛍光体基板30の位置関係を意味する。
【0059】
<第7工程>
図5Iは、第7工程の開始時及び終了時を示す図である。第7工程は、蛍光体基板30に複数の発光素子20を実装する工程である。本工程は、複数の蛍光体基板30が固定部材FMに固定されたまま、蛍光体基板30の複数の電極対34Aの各接合面34A1にはんだペーストSP(はんだの一例)を印刷し、各接合面34A1に複数の発光素子20の各電極を位置合わせした状態ではんだペーストを一例として約250℃で溶かす。その後、はんだペーストSPが冷却された固化すると、各電極対34Aに各発光素子20が接合される。すなわち、本工程は、一例としてリフロー工程により行われる。
以上のとおりであるから、本工程は、固定部材FMに固定されたまま複数の蛍光体基板30がそれぞれ切断時の位置関係で並べられた状態で、複数の蛍光体基板30のそれぞれに発光素子20を実装して複数の発光基板10を得る実装工程(
図1のS160参照)である。
【0060】
なお、第7工程が終了すると、複数の発光基板10と、複数の発光基板10の裏面33に固定されている固定部材FMと、を備える複数の発光基板10の集合体10Aが製造される(
図5J参照)。この場合、複数の発光基板10には、定められた位置関係で並べられ、かつ、それぞれの表面31に、電極層34、蛍光体層36及び電極層34の電極対34Aに接合された発光素子20が配置されている(
図5I及び
図5J参照)。また、固定部材FMは、複数の発光基板10が定められた位置関係で並べられた状態を維持するように、複数の発光基板10の裏面33に固定されている(
図5J参照)。ここで、定められた位置関係とは、一例として、
図5Fにおける複数の蛍光体基板30の位置関係を意味する。
【0061】
<第8工程>
図5Jは、第8工程の開始時及び終了時を示す図である。第8工程は、複数の発光基板10から固定部材FMを分離する分離工程(
図1のS170参照)である。本工程は、例えば、作業者による手作業で行われる。
そして、第8工程が終了すると、複数の発光基板10が製造されて、本実施形態の製造方法が終了する。
【0062】
なお、第7工程の終了後かつ第8工程の開始前に、固定部材FMに複数の発光基板10が固定されている状態で、複数の発光素子20等の電子部品が適切に実装されているか否かを検査する実装検査、複数の発光素子20が適切に点灯するか否かを点灯検査、複数の発光基板10の外観検査等を行ってもよい。
【0063】
以上が、本実施形態の製造方法についての説明である。
【0064】
≪本実施形態の効果≫
次に、本実施形態の効果について図面を参照しながら説明する。
【0065】
<第1の効果>
第1の効果については、本実施形態を以下に説明する比較形態(図示省略)と比較して説明する。ここで、比較形態の説明において、本実施形態と同じ構成要素等を用いる場合は、その構成要素等に本実施形態の場合と同じ名称、符号等を用いることとする。
【0066】
比較形態の発光基板10の製造方法(以下、比較形態の製造方法という。)では、本実施形態の製造方法における第1~第4工程を行った後、複数の蛍光体基板30の集合体30Aを構成する各蛍光体基板30にそれぞれ複数の発光素子20を実装してから切断線CLに沿って集合体30Aを刃型BLで切断して、複数の発光基板10を得る。
比較形態の製造方法の場合、集合体30Aの切断時に例えば発光素子20と電極層34の電極対34Aとの接合部分(例えば、はんだ等)に負荷(応力)がかかる。そのため、比較形態の製造方法により製造された発光基板10は、上記接合部分の接合不良を生じる虞がある。
【0067】
これに対して、本実施形態の場合、集合体30A(マザーボードMB)を切断した後に、発光素子20を実装する(
図1参照)。そのため、本実施形態の場合、集合体30A(マザーボードMB)の切断時に集合体30A(マザーボードMB)に発光素子20が実装されていない。すなわち、本実施形態の場合、そもそも、比較形態の場合のような接合不良が生じる状況が起こり得ない。
【0068】
したがって、本実施形態の製造方法によれば、マザーボードMBを刃型BLで切断して得られる複数の蛍光体基板30から複数の発光基板10を製造する方法において、比較形態の製造方法よりも、実装基板としての信頼性が高い。すなわち、本実施形態の製造方法によれば、応力によるはんだクラック、電極ダメージ等の潜在的な不良の原因を削減することができる。
【0069】
<第2の効果>
また、本実施形態の場合、第5工程(
図1のS140、
図5G等参照)において、固定部材FMは、マザーボードMBの裏面33における、刃型BLで切断されて形成される切断線CLを挟んで両側の部分に跨って固定される。そのうえで、本実施形態の場合、第6工程(
図1のS150及び
図5H参照)において、刃型BLは、マザーボードMBのみを切断し、固定部材FMの粘着層を切断しない。その後、本実施形態の場合、発光素子20の実装工程が行われる(
図1参照)。以上のとおりであるから、本実施形態の場合、切断後の各蛍光体基板30同士の位置関係を保ったまま、各蛍光体基板30に発光素子20が実装される。すなわち、本実施形態の場合、発光素子20の実装工程を、複数の蛍光体基板30に対して同じセッティングで行うことができる(複数の蛍光体基板30に対して別々に行う必要がない)。
したがって、本実施形態の製造方法によれば、第1の効果を奏しつつ、複数の発光基板10の製造効率が高い。
【0070】
<第3の効果>
また、本実施形態の場合、固定部材FMは、粘着によりマザーボードMBに固定される。そのため、本実施形態の製造方法は、第8工程(
図5J参照)の際に、簡単に、複数の発光基板10から固定部材FMを分離することができる。
【0071】
<第4の効果>
また、本実施形態の場合、固定部材本体の表面に対する粘着層の粘着力は、マザーボードMB(又は蛍光体基板30)の裏面33に対する粘着層の粘着力よりも大きい。そのため、本実施形態の場合、第8工程時に、複数の発光基板10から固定部材FMを分離する場合に、粘着層は固定部材本体の表面に粘着したまま、複数の発光基板10から分離する。
以上より、本実施形態によれば、固定部材FMを複数回使いまわすことができる。別言すれば、本実施形態によれば、複数の発光基板10の製造コストを低減することができる。
【0072】
<第5の効果>
前述のとおり、本実施形態の製造方法は、第1~第3の効果を奏する。そのため、本実施形態の製造方法の途中で得られる複数の発光基板10の集合体10B(
図5J参照)及び本実施形態の製造方法で製造される複数の発光基板10は、製造安定性の高い製造方法により製造された物といえる。
したがって、本実施形態の複数の発光基板10の集合体10B及び発光基板10は、品質が高い(安定した発光動作を実現することができる)。
【0073】
以上が、本実施形態の効果についての説明である。
【0074】
以上のとおり、本発明について前述の実施形態を例として説明したが、本発明は前述の実施形態に限定されるものではない。本発明の技術的範囲には、例えば、下記のような形態(変形例)も含まれる。
【0075】
例えば、本実施形態の説明では、発光素子20の一例をCSPであるとした。しかしながら、発光素子20の一例はCSP以外でもよい。例えば、単にフリップチップを搭載したものでもよい。また、COBデバイスの基板自身に応用することもできる。
【0076】
また、本実施形態の固定部材FMは、マザーボードMBの裏面33の全域に粘着層により固定されるとして説明した。しかしながら、切断後の各蛍光体基板30を定められた位置関係で維持することができれば、固定部材FMは、マザーボードMBの裏面33の全域を固定しなくてもよい。例えば、切断線CL挟んで両側の部分に跨って固定されればよい。
【0077】
また、本実施形態の説明では、蛍光体層36における絶縁層32の厚み方向外側の面は、電極層34の接合面34A1よりも当該厚み方向外側に位置しているとした(
図2C参照)。しかしながら、前述の第1の効果の説明のメカニズムを考慮すると、蛍光体層36における絶縁層32の厚み方向外側の面が電極層34の接合面34A1と当該厚み方向において同じ又は接合面34A1よりも当該厚み方向内側の位置としてもよい。
【0078】
また、本実施形態の説明では、蛍光体基板30の裏面33に裏面パターン層38が備えられているとした(
図2B参照)。しかしながら、前述の第1の効果の説明のメカニズムを考慮すると、蛍光体基板30の裏面33に裏面パターン層38が備えられていなくても第1の効果を奏することは明らかである。しかたがって、裏面33に裏面パターン層38がない点のみ本実施形態の蛍光体基板30及び発光基板10と異なる形態であっても、当該形態は本発明の技術的範囲に属するといえる。
【0079】
また、本実施形態の説明では、蛍光体層36は、絶縁層32及び電極層34の表面31における、複数の電極対34A以外の部分に配置されているとした(
図3B参照)。しかしながら、前述の第1の効果の説明のメカニズムを考慮すると、蛍光体基板30の表面31における複数の電極対34A以外の部分の全域に亘って配置されていなくても第1の効果を奏することは明らかである。しかたがって、本実施形態の場合と異なる表面31の範囲に蛍光体層36が配置されている点のみ本実施形態の蛍光体基板30及び発光基板10と異なる形態であっても、当該形態は本発明の技術的範囲に属するといえる。
【0080】
また、本実施形態の説明では、蛍光体基板30及び発光基板10を製造するに当たり、利昌工業株式会社製のCS-3305AをマザーボードMBとして用いると説明した。しかしながら、これは一例であり、異なるマザーボードMBを用いてもよい。例えば、利昌工業株式会社製のCS-3305Aの絶縁層厚、銅箔厚等の標準仕様にこだわるものではなく、特に銅箔圧は更に厚いものを用いてもよい。
【0081】
なお、本実施形態では、実装基板の一例を発光基板10として説明した。しかしながら、本実施形態の製造方法は、マザーボードMBを用いて複数の実装基板(配線パターンが形成された個片基板に電子部品が実装された基板)を製造する方法に適用してもよい。
【符号の説明】
【0082】
10 発光基板(実装基板の一例)
10A 複数の発光基板の集合体
10B 複数の蛍光体基板の集合体
20 発光素子(電子部品の一例)
30 蛍光体基板(個片基板の一例)
31 表面
32 絶縁層
33 裏面
34 電極層(配線パターンの一例)
34A 電極対
34A1 接合面
34B 配線部分
34B1 非接合面
36 蛍光体層
38 裏面パターン層
BL 刃型(刃の一例)
FM 固定部材
L 光
MB マザーボード(基板の一例)
SP はんだペースト(はんだの一例)