(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-20
(45)【発行日】2023-09-28
(54)【発明の名称】バイパスバルブ
(51)【国際特許分類】
F16K 31/68 20060101AFI20230921BHJP
【FI】
F16K31/68 C
(21)【出願番号】P 2019029532
(22)【出願日】2019-02-21
【審査請求日】2022-02-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000241795
【氏名又は名称】北越工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002398
【氏名又は名称】弁理士法人小倉特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】棚橋 功佑
【審査官】橋本 敏行
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-033712(JP,A)
【文献】実開昭59-142568(JP,U)
【文献】特許第2939244(JP,B1)
【文献】実公平07-020528(JP,Y2)
【文献】特開2013-072531(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 31/64-31/72
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業機本体からの流体を,熱交換器を備えた冷却流路及び/又は前記冷却流路に並列に接続されたバイパス流路を介して,前記作業機本体に循環導入する流体の循環路の前記冷却流路と前記バイパス流路との連結点に設けられ,
前記冷却流路に連通される第1副室と,前記バイパス流路に連通される第2副室,及び,前記第1副室及び第2副室と連通する主室をバルブボディ内に備えると共に,前記主室内の流体温度に応じて,前記主室と前記第1副室間の流路面積と,前記主室と前記第2副室間の流路面積を変化させて,前記冷却流路と前記バイパス流路を流れる流体の流量を制御するサーモスタットを備えたバイパスバルブにおいて,
前記主室に隣接して前記第1副室を設け,前記主室と前記第1副室間の仕切壁に,前記主室と前記第1副室間を常時連通
して前記作業機本体の作動中に前記熱交換器内に前記流体が滞留することを防止するリーク流路を設けたことを特徴とするバイパスバルブ。
【請求項2】
前記サーモスタットに,ペレットの一端側より外周方向に突設するフランジ部を設け,
前記主室と前記第1副室とを前記バルブボディ内で連通する第1連通口の,前記主室側の開口縁に,前記フランジ部を係止する段部を設けると共に,
前記フランジ部の係止位置の外周側の前記段部に,前記リーク流路を形成したことを特徴とする請求項1記載のバイパスバルブ。
【請求項3】
前記リーク流路が,前記主室と前記第1副室間を連通する1又は複数の加工穴であることを特徴とする請求項2記載のバイパスバルブ。
【請求項4】
前記リーク流路が,前記第1連通口の開口縁に形成された1又は複数の切欠であることを特徴とする請求項2記載のバイパスバルブ。
【請求項5】
前記バルブボディを,内部に前記主室が形成された主室側バルブボディと,内部に前記第1副室及び第2副室が形成された副室側バルブボディ,及び前記主室側バルブボディと前記副室側バルブボディ間に挟持されて前記主室と前記第1副室間の境界を画定するプレートにより形成し,
前記プレートの中央に設けた開口を前記第1連通口と成すと共に,該プレートの前記主室側の表面を,前記サーモスタットの前記フランジ部を係止する前記段部としたことを特徴とする請求項2~4いずれか1項記載のバイパスバルブ。
【請求項6】
前記サーモスタットが,前記主室内の流体温度に応じて進退移動する円筒状の弁体を備えると共に,
前記バルブボディ内に,前記第1連通口の前記第1副室側に,前記主室内の温度が前記サーモスタットの作動開始温度未満であるときに前記弁体の一端縁が着座する第1弁座と,前記第1副室と前記第2副室間を連通すると共に,前記弁体を内嵌する第2連通口を設け,
前記第1弁座に対し前記弁体の前記一端縁が着座した状態において,前記弁体によって前記主室と前記第1副室間の連通が遮断されると共に,前記主室と前記第2副室とが,前記第1副室を貫通する前記弁体によって連通するように構成すると共に,
前記リーク流路を,前記弁体の側壁を貫通して設けたことを特徴とする請求項2記載のバイパスバルブ。
【請求項7】
前記バイパス流路と前記冷却流路の二次側の連結点に設けると共に,前記主室を,前記作業機本体の一次側に連通する請求項1~6いずれか1項記載のバイパスバルブ。
【請求項8】
前記バイパス流路と前記冷却流路の一次側の連結点に設けると共に,前記主室を,前記作業機本体の二次側に連通する請求項1~6いずれか1項記載のバイパスバルブ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,油冷式スクリュ圧縮機における潤滑油の循環路や,エンジンのクーラントの循環路のように,流体を冷却するためのオイルクーラやラジエータ等の熱交換器を備えた冷却用の流路(冷却流路)と,この熱交換器をバイパスする流路(バイパス流路)とが並列に接続された流体循環路に設けられ,この流体循環路内を流れる流体の温度に応じて,前記冷却流路を通過させる流体の流量と,前記バイパス流路を通過させる流体の流量を制御するバイパスバルブに関する。
【背景技術】
【0002】
流体循環路を備える作業機の一例として,油冷式スクリュ圧縮機を例に挙げて説明すると,この油冷式スクリュ圧縮機は,圧縮作用空間を潤滑,冷却及び密封するために,吸入した被圧縮気体を潤滑油と共に圧縮して圧縮気体と潤滑油の気液混合流体を吐出する圧縮機本体102を備えている(
図10参照)。
【0003】
このように,油冷式スクリュ圧縮機の圧縮機本体102は,潤滑油との気液混合流体として圧縮気体を吐出することから,圧縮機本体102の吐出口102aより吐出された圧縮気体は,これを一旦,レシーバタンク103内に導入して気液分離した後,潤滑油が除去された圧縮気体が消費側に供給される一方,レシーバタンク103内に回収された潤滑油は,オイルクーラ104を介して冷却されると共にオイルフィルタ105を介して不純物が除去された後,給油口102bを介して再度圧縮機本体102に導入することができるように構成されており,圧縮機本体102から,レシーバタンク103,オイルクーラ104,及びオイルフィルタ105を介して再び圧縮機本体102に循環する,潤滑油の循環路100が形成されている。
【0004】
このような循環路100には,通常,オイルクーラ104をバイパスするバイパス流路107が設けられており,このバイパス流路107と,オイルクーラ104を備えた冷却流路106との連結点に,サーモスタット120を内蔵したバイパスバルブ110を設け,油冷式スクリュ圧縮機が始動直後である場合のように,潤滑油の温度がサーモスタット120の作動開始温度未満の状態では,冷却流路106を閉じてバイパス流路107を介した潤滑油の循環を行い,潤滑油の温度がサーモスタット120の始動開始温度以上に上昇すると,冷却流路106を開いてオイルクーラ104に対する潤滑油の導入を開始すると共にバイパス流路107を絞ってオイルクーラ104をバイパスさせる潤滑油の流量を減少させ,潤滑油の温度がサーモスタット120の動作終了温度以上に上昇すると,バイパス流路107を閉じると共に冷却流路106を全開として,冷却流路106を介した潤滑油の循環が行われるように構成されており,これにより,始動時における圧縮機本体102の暖機を早期に完了させることができるように構成されている。
【0005】
このバイパスバルブ110は,一例として
図11に示すように,バルブボディ111内にレシーバタンク103に連通される主室112と,冷却流路106に連通される第1副室113,及び,バイパス流路107に連通される第2副室114を備えており,主室112と第1副室113とを第1連通口115を介してバルブボディ111内で連通させていると共に,第1副室113と第2副室114とを第2連通口116を介してバルブボディ内で連通させている(特許文献1の
図2)。
【0006】
そして,前述のサーモスタット120として,ワックス等の熱によって膨張する熱膨張材料が封入されたペレット121と,前記ペレット121の一端より外周方向に突設された複数本の脚部122aと,該脚部122aの先端間を連結する環状のフランジ部122bを有する取付ベース122,前記ペレット121の前記一端よりペレット121外に突設され,前記熱膨張材料の膨張によってペレット121より押し出されると共に前記熱膨張材料の収縮によってペレット121内に引き込まれるスピンドル123と,前記スピンドル123に取り付けられた円筒状の弁体124を備えたものをバルブボディ111内に収容している。
【0007】
バルブボディ111に対するサーモスタット120の収容は,主室112側から第1連通口115を介して第1副室113内に弁体124を挿入し,この弁体124を更に第2連通口116内にシール材117を介して嵌合させると共に,取付ベース122に設けたフランジ部122bを,主室112側において第1連通口115の開孔縁に固定して,ペレット121が主室112内に配置されるように取り付けられており,
図12(A)に示すようにペレット121内にスピンドル123が引き込まれている状態(紙面右側に後退している状態)では,弁体124の一端縁124aが取付ベースに設けた第1弁座125に着座し,スピンドル123がペレット121より押し出されて紙面左側に前進すると,弁体124の一端縁124aが第1弁座125から離間すると共に,スピンドル123がペレット121より最大限押し出された状態では,
図12(B)に示すように弁体124の他端縁124bが弁体124の進行方向前方で第2副室114の内壁より突設された第2弁座118に着座するように構成されている。
【0008】
従って,潤滑油の温度が低く,スピンドル123がペレット121内に最大限引き込まれて弁体124の一端縁124aが第1弁座125に着座した状態では,
図12(A)に示すように,レシーバタンク103から主室112内に導入された潤滑油は,取付ベース122の脚部122a間を通過すると共に円筒状の弁体124内を通過して,弁体124の他端縁124bと第2弁座118間の間隔δ2を介して第2副室114に至り,その全量がバイパス流路107に導入されるようになっている。
【0009】
そして,潤滑油の温度が上昇してペレット121内の熱膨張材料が膨張を開始してスピンドル123が押し出され始めると,弁体124の一端縁124aが第1弁座125により離間し,これにより生じた間隔δ1〔
図12(B)参照〕を介して主室112からの潤滑油の一部が第1副室113を介してオイルクーラ104を備える冷却流路106に導入される一方,弁体124の他端縁124bと第2弁座118間の間隔δ2が狭まり,第2副室114を介してバイパス流路107に導入される潤滑油量が減少する。
【0010】
そしてさらに,潤滑油の温度が上昇してペレット121よりスピンドル123が最大限押し出された状態となると,
図12(B)に示すように弁体124の他端縁124bが第2弁座118に着座して,弁体124の他端縁124bと第2弁座118間の間隔δ2を介した第2副室114への潤滑油の導入が停止すると共に,弁体124の一端縁124aと第1弁座125との間隔δ1が最大限開いて,主室112に導入された潤滑油が第1副室113を介してオイルクーラに導入されるようになっている。
【0011】
以上のように構成された循環路100において,潤滑油の温度が低く,レシーバタンク103内の温度が圧縮気体中の水蒸気の露点温度に達していないと,圧縮気体中の水蒸気が結露することにより生じたドレンが潤滑油中に混入してしまい,潤滑油が乳化する等の問題が生じることに鑑み,潤滑油の温度に拘わらず,潤滑油の一部を,常時,バイパス流路107側に導入してオイルクーラ104を通過させないようにすることで,潤滑油の温度,従って,レシーバタンク103内の温度を上昇させて,結露の発生を防止することも提案されている(特許文献1)。
【0012】
前掲の
図11及び
図12に示したバイパスバルブ110は,このように,潤滑油の一部が常時,バイパス流路107側に導入されるように構成したもので,主室112とは反対側にバルブボディ111を延長し,第2弁座118の中心に第2副室114と連通すると共にバルブボディ111外に至る貫通穴119を形成すると共に,この貫通穴119の内壁から第2副室114に至る連通路131を形成し,潤滑油の温度が上昇してサーモスタット120に設けた弁体124の他端縁124bが第2弁座118に着座した状態となっても,主室112から第1副室113に導入された潤滑油が,更に弁体124内を通って貫通穴119に至り,該貫通穴119の内壁に入口131aが形成された連通路131を介して第2副室114に導入できるように構成されていると共に,前記貫通穴119の内周に形成された雌ネジと螺合する雄ネジが外周に形成されたピストン132を,バルブボディ111外より貫通穴119内に螺着して,ピストン132の先端で連通路131の入口131aの開度を調整することにより,連通路131を介して第2副室114にリークさせる潤滑油量を調整できるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
以上で特許文献1として紹介した公報に記載されているバイパスバルブ110では,連通路131を設けてレシーバタンク103から主室112内に導入された潤滑油の一部を,常時,第2副室114にリークさせてバイパス流路107に導入できるようにしたことで,オイルクーラ104を通過する潤滑油量の減少分,循環路100内を流れる潤滑油の温度が上昇し,これにより圧縮気体中の水蒸気が結露し難くなることで,潤滑油に対するドレンの混入を防止できるものとなっている。
【0015】
しかし,上記構成のバイパスバルブ110では,潤滑油の温度上昇に伴ってバイパス流路107を介した潤滑油の循環から冷却流路106を介した潤滑油の循環に切り換わる際に,サーモスタット120に設けた弁体124が短時間のうちに開閉動作を繰り返す,所謂「ハンチング」が生じることで,圧縮機本体に導入される油温が変化するために,圧縮機の性能が安定しないだけでなく,油温変動で発生する繰り返し応力により,循環路100内の機器,例えばオイルクーラ104などの熱交換器が破損するおそれがある。
【0016】
すなわち,圧縮機本体102内で潤滑,冷却及び密封に使用されることで潤滑油の温度が上昇し,サーモスタットの作動開始温度以上になると,ペレット121内の熱膨張材料が膨張してスピンドル123が押し出されて第1弁座125から弁体124の一端縁124aが離間する。
【0017】
これにより主室112と第1副室113が連通することで,冷却流路106及びオイルクーラ104に対する潤滑油の導入が開始されるが,冷却流路106やオイルクーラ104内には,油冷式スクリュ圧縮機の始動開始からサーモスタット120が作動を開始する迄の間,潤滑油の導入が行われていないため低温の潤滑油が滞留しており,主室112と第1副室113が連通して冷却流路106に対する潤滑油の導入が開始されると,この低温の潤滑油がオイルクーラ104から押し出されて循環中の潤滑油に合流することで,循環路100内を循環する潤滑油の温度が低下する。
【0018】
その結果,この潤滑油の温度低下によってサーモスタット120のペレット121内の熱膨張材料が収縮してスピンドル123は再度,ペレット121内に引き戻されて第1弁座125に弁体124の一端124aが着座して冷却流路106を閉じ,バイパス流路107を介した潤滑油の循環を再開する。
【0019】
このようにして,冷却流路106が閉じることにより循環する潤滑油の温度は短時間でサーモスタット120の作動開始温度まで上昇し,冷却流路106に対する潤滑油の導入が再開されるが,冷却流路106内の潤滑油は十分に温まっていないため,再度,潤滑油温度が低下して,第1弁座125に弁体124の一端縁124aが着座して冷却流路106が閉じられ,冷却流路106内の潤滑油を含め,循環路100内を循環する潤滑油の温度がある程度上昇して安定するまでは,スピンドル123が進退動作を繰り返し,スピンドル123に取り付けられている弁体124が短時間のうちに開閉動作を繰り返す,前述の「ハンチング」が発生する。
【0020】
その結果,圧縮機本体102に導入される油温が短時間のうちに変化を繰り返すために,圧縮機の性能が安定しないだけでなく,油温変動で発生する繰り返し応力により熱交換器が破損するおそれがある。
【0021】
また,圧縮機から吐出される圧縮気体の圧力が高くなった場合,吐出口より吐出された圧縮気体の温度は急激に上昇し,それに伴い,循環路内の潤滑油の温度も急激に上昇する。このとき潤滑油の温度上昇に対し,バイパス流路107を閉じると共に冷却流路106を全開として,冷却流路106を介した潤滑油の循環が行われるバイパスバルブ110の作動が間に合わず,圧縮機へ供給する潤滑油の温度が目標温度を超える,所謂「オーバーシュート」が生じると,吐出口より吐出された圧縮気体の温度が高温状態となり,圧縮機の非常停止や焼き付きを招く等の不具合が発生する可能性がある。
【0022】
また,前掲の特許文献1に記載のバイパスバルブ110は,弁体124が第2弁座118に着座した状態にあっても,潤滑油の一部を,連通路131を介して第2副室114にリークできるようにした点で優れるが,このように潤滑油の一部をリークさせるために,バルブボディ111を主室とは反対側に大幅に拡張する構成を採用しているため,バイパスバルブ110が大型化すると共に,部品点数の増加による構造の複雑化により,製造コストが増加する。
【0023】
しかも,貫通穴119の側壁に設けた単一の連通路131の入口131aの開度を,ピストン132の先端で調整してリーク量の調整を行うため,リーク量の調整幅が小さく,また,微調整も行い難くなっている。
【0024】
なお,以上の説明では,油冷式スクリュ圧縮機の潤滑油の循環路に設けるバイパスバルブに関して説明したが,このようなバイパスバルブは,油冷式スクリュ圧縮機における潤滑油の循環路の他,例えばエンジンのクーラントの循環路のように,作業機の作動開始から,作業機が暖機されるまで,潤滑油や冷媒等をオイルクーラやラジエータ等の熱交換器に導入することなくバイパスさせて循環させるバイパス流路を備えた循環路に広く設けられていると共に,前述したハンチングの発生は,これらの流体の循環路に使用されるバイパスバルブにおいていずれも生じ得る問題である。
【0025】
そこで本発明は,上記従来技術の欠点を解消するためになされたもので,比較的簡単な構造でありながらハンチングの発生を防止することができ,しかも,調整作業等が容易であるバイパスバルブを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0026】
以下に,課題を解決するための手段を,発明を実施するための形態で使用する符号と共に記載する。この符号は,特許請求の範囲の記載と発明を実施するための形態の記載との対応を明らかにするためのものであり,言うまでもなく,本発明の技術的範囲の解釈に制限的に用いられるものではない。
【0027】
上記目的を達成するために,本発明のバイパスバルブ10は,
作業機本体2からの流体を,熱交換器を備えた冷却流路6及び/又は該冷却流路6に並列に接続されたバイパス流路7を介して,前記作業機本体2に循環して導入する流体の循環路1の前記冷却流路6と前記バイパス流路7との連結点に設けられ,
前記冷却流路6に連通される第1副室13と,前記バイパス流路7に連通される第2副室14,及び,前記第1副室13及び第2副室14と連通する主室12をバルブボディ11内に備えると共に,前記主室12内の流体温度に応じて,前記主室12と前記第1副室13間の流路面積(弁体24の一端縁24aと第1弁座25間の間隔δ1)と,前記主室12と前記第2副室14間の流路面積(弁体24の他端縁24bと第2弁座18間の間隔δ2)を変化させて,前記冷却流路6と前記バイパス流路7を流れる流体の流量を制御するサーモスタット20を備えたバイパスバルブ10において,
前記主室12に隣接して前記第1副室13を設け,前記主室12と前記第1副室13間の仕切壁に,前記主室12と前記第1副室13間を常時連通して前記作業機本体の作動中に前記熱交換器内に前記流体が滞留することを防止するリーク流路30を設けたことを特徴とする(請求項1)。
【0028】
上記構成のバイパスバルブ10において,前記サーモスタット20に,ペレット21の一端側より外周方向に突設するフランジ部22bを設け,
前記主室12と前記第1副室13とを前記バルブボディ11内で連通する第1連通口15の,前記主室12側の開口縁に,前記フランジ部22bを係止する段部40を設けると共に,
前記フランジ部22bの係止位置の外周側の前記段部40に,前記リーク流路30を形成するものとしても良い(請求項2)。
【0029】
この場合,前記リーク流路30を,前記主室12と前記第1副室13間を連通する1又は複数の加工穴31によって形成することができる(請求項3)。
【0030】
または,前記加工穴31に代えて,前記リーク流路30を,前記第1連通口15の開口縁に形成された1又は複数の切欠32によって形成するものとしても良い(請求項4)。
【0031】
更に,前述したように第1連通口15の外周側にリーク流路30を設ける場合,前記バルブボディ11を,内部に前記主室12が形成された主室側バルブボディ11aと,内部に前記第1副室13及び第2副室14が形成された副室側バルブボディ11b,及び前記主室側バルブボディ11aと前記副室側バルブボディ11b間に挟持されて前記主室12と前記第1副室13間の境界を画定するプレート11cにより形成し,
前記プレート11cの中央に設けた開口を前記第1連通口15と成すと共に,該プレート11cの前記主室12側の表面を,前記サーモスタット20の前記フランジ部22bを係止する前記段部40とするものとしても良い(請求項5)。
【0032】
更に,前記サーモスタット20に,前記主室12内の流体温度に応じて進退移動する円筒状の弁体24を設けると共に,
前記バルブボディ11内に,前記第1連通口15の前記第1副室13側に,前記主室12内の温度が前記サーモスタット20の作動開始温度未満であるときに前記弁体24の一端縁24aが着座する第1弁座25と,前記第1副室13と前記第2副室14間を連通すると共に,前記弁体24を内嵌する第2連通口16を設け,
前記第1弁座25に対し前記弁体24の前記一端縁24aが着座した状態において,前記弁体24によって前記主室12と前記第1副室13間の連通が遮断されると共に,前記主室12と前記第2副室14とが,前記第1副室13を貫通する前記弁体24によって連通するように構成すると共に,
前記リーク流路30を,前記弁体24の側壁を貫通して設けるものとしても良い(請求項6)。
【0033】
なお,本発明のバイパスバルブ10は,前記バイパス流路7と前記冷却流路6の二次側(下流側)の連結点に設け,前記主室12を,前記作業機本体2の一次側(給油口2b側)に連通するものとしても良い(請求項7)。
【0034】
又は,前記バイパス流路7と前記冷却流路6の一次側(上流側)の連結点に設けると共に,前記主室12を,前記作業機本体2の二次側(吐出口2a側)に連通するものとしても良い(請求項8)。
【発明の効果】
【0035】
以上で説明した本発明の構成により,本発明のバイパスバルブ10は,以下の顕著な効果を得ることができた。
【0036】
前記主室12に隣接して前記第1副室13を設けると共に,前記主室12と前記第1副室13間の仕切壁に,前記主室と前記第1副室間を常時連通するリーク流路30を設けたことで,作業機の始動直後から一定量の流体を熱交換器4に送り,熱交換器4内に冷たい流体を滞留させないようにしてバイパス流路7内の流体の温度に近付けておくことで,サーモスタット20が作動して熱交換器4側へ流体の流量を増大させても,循環する流体の温度低下を抑制することができ,その結果,弁体24が弁座(第1弁座25,第2弁座18)に対する着座と離間を繰り返す前述のハンチングの発生を防止して,圧縮機の性能を安定させることができると共に,熱交換器の破損を防止できた。
【0037】
また,バイパスバルブ10内のリーク流路30から,熱交換器内の冷たい流体が流れるため,圧縮機を始動してから短時間で圧縮機を高速運転にした場合に発生する,急激な潤滑油の温度上昇に対する冷却にも対応できる。これにより,前述のオーバーシュートの発生を防止できた。
【0038】
しかも,仕切壁に加工穴31や切欠32を設けることで容易にリーク流路30を形成することができることから,別途,リーク用の配管等を接続する場合に比較して構造が簡単であると共に,加工穴31や切欠32の形成数や形成サイズの変更により,リーク流路30の流路面積の調整が容易である。
【0039】
このようなリーク流路30を,バルブボディ11の第1連通口15の周縁に形成した段部40に設けたことで,バルブボディ11の加工時に,第1連通口の加工等と共に,共通の切削工具を使用したマシニング加工等によりリーク流路30を容易に形成することができた。
【0040】
また,形成する加工穴31や切欠32の形成数やサイズにより,リーク流路30の流路面積の調整が容易であると共に,流路面積の調整幅を広く取ることができ,使用条件等の相違によるリーク流路30の調整が容易である。
【0041】
バルブボディ11を,主室側バルブボディ11aと副室側バルブボディ11b,及びこれらの間に挟持されるプレート11cによって形成し,このプレート11cに設けた開口を第1連通口15とした構成では,該プレート11cに加工穴31や切欠32等を設けて容易にリーク流路30を形成することができるだけでなく,リーク流路30となる加工穴31や切欠32の形成数やサイズが異なる複数のプレート11cを準備しておくことで,使用条件に合わせて最適なプレート11cを選択して取り付けるのみで,容易に流量調整を行うことが可能である。
【0042】
このようなリーク流路30の形成は,上述した位置に限定されず,サーモスタット20の弁体24に貫通孔や切欠を設けることにより形成するものとしても良く,この構成では,既存のバイパスバルブ10のバルブボディ11側の設計を一切変更することなく,装着するサーモスタット20を,弁体24にリーク流路30が形成されたものに交換するだけで,ハンチングの発生やオーバーシュートの発生を防止し得るバイパスバルブ10を得ることができた。
【0043】
なお,本発明のバイパスバルブ10は,バイパス流路7と冷却流路6の二次側(下流側)の連結点に設ける場合,及び,一次側(上流側)の連結点に設ける場合のいずれにおいても好適に使用することができた。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【
図1】本発明のバイパスバルブを備えた油冷式スクリュ圧縮機の潤滑油の循環路の説明図(バイパスバルブをバイパス流路と冷却流路の二次側の連結点に設けた例)。
【
図2】本発明のバイパスバルブを備えた油冷式スクリュ圧縮機の潤滑油の循環路の説明図(バイパスバルブをバイパス流路と冷却流路の一次側の連結点に設けた例)。
【
図4】サーモスタットを省略した
図3のIV-IV線断面図(加工穴により連通路を形成した例)。
【
図5】サーモスタットを省略した
図3のIV-IV線断面図(切欠により連通路を形成した例)。
【
図6】サーモスタットの動作と流体の流れの説明図であり,(A)は流体温度がサーモスタットの作動開始温度未満,(B)は作動開始温度以上,作動終了温度未満,(C)は作動終了温度以上の状態をそれぞれ示す。
【
図8】サーモスタットを省略した
図7のVIII-VIII線断面図(加工穴により連通路を形成した例)。
【
図10】バイパスバルブを備えた油冷式スクリュ圧縮機の潤滑油の循環路の説明図(従来)。
【
図11】従来(特許文献1)のバイパスバルブの断面図。
【
図12】
図11のバイパスバルブ(従来)の動作説明図であり,(A)は流体温度がサーモスタットの作動開始温度未満,(B)は作動終了温度以上の状態をそれぞれ示す。
【発明を実施するための形態】
【0045】
以下に,添付図面を参照しながら本発明のバイパスバルブについて説明する。
【0046】
なお,以下の説明では,本発明のバイパスバルブを,油冷式スクリュ圧縮機の潤滑油の循環路に設けた構成を例に挙げて説明するが,本発明のバイパスバルブの用途は,これに限定されず,例えばエンジンのクーラントの循環路等,作動によって熱を発する作業機本体からの潤滑油や冷媒等の流体を,オイルクーラやラジエータ等の熱交換器を介して冷却した後,再度作業機本体に戻す流体の循環路において,前記熱交換器をバイパスするバイパス流路を設ける場合に広く適用可能である。
【0047】
本発明のバイパスバルブ10を油冷式スクリュ圧縮機に適用した場合の潤滑油の循環路1の全体構成例を
図1に示す。
【0048】
油冷式スクリュ圧縮機には,圧縮作用空間を潤滑,冷却及び密封するために,吸入した被圧縮気体を潤滑油と共に圧縮して圧縮気体と潤滑油の気液混合流体を吐出する圧縮機本体2と,この圧縮機本体2の吐出口2aより気液混合流体として吐出された圧縮気体を導入して圧縮気体と潤滑油とに一次分離するレシーバタンク3を備え,前記レシーバタンク3で圧縮気体より分離された潤滑油を冷却するオイルクーラ4や,潤滑油中の不純物を除去するオイルフィルタ5を介して,再度,給油口2bを介して圧縮機本体2に導入する潤滑油の循環路1が形成されていると共に,前述のオイルクーラ4の一次側と二次側を連通して,オイルクーラ4をバイパスするバイパス流路7と,このバイパス流路7と,オイルクーラを備えた冷却流路6との連結点に,サーモスタット20を備えたバイパスバルブ10を設け,該循環路1内を循環する潤滑油の温度に応じて,バイパス流路7を通過する潤滑油量と,冷却流路6を通過する潤滑油量を制御可能とした点は,
図10を参照して説明した従来の油冷式スクリュ圧縮機における潤滑油の循環路100と同様である。
【0049】
なお,
図10を参照して説明した従来の潤滑油の循環路100では,バイパス流路107と冷却流路106の一次側(上流側)の連結点にバイパスバルブ110を設ける構成について説明した一方,
図1を参照して説明した潤滑油の循環路1では,バイパス流路7と冷却流路6の二次側(下流側)の連結点にバイパスバルブ10を設ける構成を示したが,本発明のバイパスバルブ10においても,これを
図2に示すように,バイパス流路7と冷却流路6の一次側(上流側)の連結点に設けて使用することもできる。
【0050】
なお,以下の説明では本発明のバイパスバルブ10を,
図1に示すように,バイパス流路7と冷却流路6の二次側(下流側)の連結点に設ける場合を例に挙げて説明する。
【0051】
この,バイパス流路7と冷却流路6の連結点に設けられる本発明のバイパスバルブは,
図3に示すように,オイルフィルタ5を介して圧縮機本体2の給油口2bに連通される主室12と,冷却流路6に連通されてオイルクーラ4を通過した潤滑油が導入される第1副室13,及び,バイパス流路7に連通されてレシーバタンク3で回収された潤滑油が直接導入される第2副室14がバルブボディ11内にそれぞれ形成されていると共に,主室12と第1副室とが隣接して形成されていると共に,第1連通口15を介してバルブボディ11内で連通しており,また,第1副室13と第2副室14とが隣接して設けられ,第2連通口16を介してバルブボディ11内で連通している。
【0052】
このバルブボディ11は,内部に主室12が形成された略円筒状の主室側バルブボディ11aと,内部に第1副室13及び第2副室14が形成された副室側バルブボディ11bをボルト等の締結具によって連結することにより構成されている。
【0053】
このうちの副室側バルブボディ11bには,第1副室13に連通する,前述の第1連通口15となる開口が形成されており,この開口の形成位置において略円筒状に形成されている主室側バルブボディ11aの一端を,前記副室側バルブボディ11bに連結することで,この開口を,主室12と第1副室13とを連通する前述した第1連通口15としている。
【0054】
この第1連通口15の主室12側における周縁部分には,フランジ部22bの直径よりも大きな直径を有する座繰りが形成されており,この座繰り内に平坦な段部40が形成されており,主室側バルブボディ11aを取り付けた際に,この段部40と,主室側バルブボディ11aの端面間で,フランジ部22bを挟持してサーモスタット20をバルブボディ11内の所定の位置に固定することができるようにしている。
【0055】
そして,このフランジ部22bの外周に位置する前記段部40に,主室12と第1副室13間を連通する1又は複数(
図4の例では9個)の加工穴31が,リーク流路30として設けられていると共に,このリーク流路30の形成位置において主室12の内壁を段部40の外周位置まで外向きに拡張した膨出部12aを設けることで,リーク流路30を主室12内で開放させている。
【0056】
このように加工穴31によってリーク流路30を形成することで,形成する加工穴31の数やサイズの調整によって,リーク流路30全体の流路面積を容易に調整することができるようにしている。
【0057】
なお,
図4に示した実施形態では,加工穴31によってリーク流路30を形成する場合を例に挙げて説明したが,この構成に代え,
図5に示すように,前述した第1連通口15となる開口の周縁部を外周方向に切欠いて切欠32を形成し,この切欠32によってリーク流路30を形成するものとしても良い。
【0058】
この場合,形成する切欠32の長さや形成個数によって,リーク流路30の流路面積を調整することができる。
【0059】
主室12と第1副室13を連通する前述の第1連通口15と,第1副室13と第2副室14を連通する前述の第2連通口16は,
図3に示すようにいずれも同一軸線上に中心が配置されるように形成されている。
【0060】
また,第2副室14には,第2副室14の内壁面より第2連通口16に向かって円筒状に突出する第2弁座18が設けられており,この第2弁座18に,後述するサーモスタット20に設けた弁体24の他端縁24bが着座できるように構成されている。
【0061】
以上のように構成されたバルブボディ11内には,主室12内の潤滑油の温度に応じて,主室12と第1副室13間,及び主室12と第2副室14間の流路面積を変化させてバイパス流路7と冷却流路6を流れる潤滑油の流量を制御するサーモスタット20が設けられている。
【0062】
このサーモスタット20は,ワックス等の熱によって膨張する熱膨張材料が封入されたペレット21と,前記ペレット21の一端より外周方向に突設された複数本の脚部22aと,該脚部22aの先端間を連結する環状のフランジ部22bを有する取付ベース22,前記ペレット21の前記一端よりペレット21外に突設され,前記熱膨張材料の膨張によってペレット21より押し出されると共に,前記熱膨張材料の収縮によってペレット21内に引き込まれるスピンドル23と,前記スピンドル23に取り付けられた円筒状の弁体24を備えている。
【0063】
このサーモスタット20は,前述のペレット21が主室内に配置されるように,取付ベース22に設けられたフランジ部22bを,第1連通口15の主室12側の開口縁に形成された段部40に係止して,弁体24を第2連通口16内にシール材17を介して嵌合させている。
【0064】
サーモスタット20の弁体24は,ペレット21内にスピンドル23が引き込まれている状態では,弁体24の一端縁24aがフランジ部22b裏面に形成された第1弁座25に着座するように構成されていると共に,スピンドル23がペレット21より押し出されると,弁体24の一端縁24aが第1弁座25から離間すると共に,スピンドル23がペレット21より最大限押し出された状態では,弁体24の他端縁24bが第2副室14内に設けた第2弁座18に着座するように構成されている。
【0065】
従って,
図6(A)に示すように,潤滑油の温度が低く,スピンドル23がペレット21内に最大限引き込まれて第2弁座18から弁体の他端縁24bが離れていると共に,弁体24の一端縁24aが第1弁座25に着座している状態では,レシーバタンク3よりバイパス流路7に導入された潤滑油は,第2弁座18と弁体24の他端縁24b間の間隔δ2を介して弁体24内の空間を通り,取付ベース22に設けた脚部22a間の間隔を通り主室12に至り,圧縮機本体2側に導入される。
【0066】
一方,レシーバタンク3よりオイルクーラ4を備えた冷却流路6に連通されている第2副室14内の潤滑油は,第1弁座25と弁体24の一端縁24a間を通過することができず,前述したリーク流路30を通過可能な量だけ主室12側に導入される。
【0067】
このように,レシーバタンク3からの潤滑油はその多くがバイパス流路7を介して圧縮機本体2に戻り,オイルクーラ4を通過する潤滑油は僅かであることから,比較的短時間で潤滑油の温度を上昇させることができる一方,オイルクーラ4に対してもリーク流路30を介して一定量の潤滑油が導入されるため,オイルクーラ4内に冷たい潤滑油が滞留することを防止できる。
【0068】
また,
図6(B)に示すように,潤滑油の温度がサーモスタット20の作動開始温度以上に上昇して,スピンドル23がペレット21内より押し出されると,弁体24の他端縁24bが第2弁座18に近付いて,第2弁座18と弁体24の他端縁24b間の間隔δ2が狭まると共に,弁体24の一端縁24aが第1弁座25より離間する。
【0069】
これにより,レシーバタンク3よりバイパス流路7に導入される潤滑油量が減少すると共に,弁体24の一端縁24aと第1弁座25間の間隔δ1を介して第1副室13の潤滑油が主室12に導入されることで,レシーバタンク3よりオイルクーラ4を備えた冷却流路6側に導入される潤滑油量が増加する。
【0070】
このサーモスタット20の作動開始時,オイルクーラ4内には,冷たい潤滑油が滞留していないため,オイルクーラ4を通過する潤滑油量が増加しても,主室12内に導入される潤滑油の温度が低下することが抑制されるため,ハンチングの発生を抑制することができるものとなっている。
【0071】
そして,
図6(C)に示すように,潤滑油の温度が,サーモスタット20の動作終了温度以上に上昇して,スピンドル23がペレット21より最大限押し出された状態となると,弁体24の他端縁24bが第2弁座18に着座することで,バイパス流路7にはレシーバタンク3からの潤滑油が導入されなくなると共に,弁体24の一端縁24aが第1弁座25より完全に離間して,レシーバタンク3からの潤滑油は,全量が冷却流路6を介して第1副室13に導入され,第1弁座25と弁体24の一端縁24a間の間隔δ1及びリーク流路30を介して主室12側に導入され,その後,オイルフィルタ5を介して圧縮機本体2の給油口2bに導入される。
【0072】
以上,
図3~
図6を参照して説明した本発明のバイパスバルブ10では,前述のリーク流路30を,副室側バルブボディ11bに直接,加工穴31又は切欠32を形成することにより形成する構成を説明したが,この構成に代え,
図7及び
図8に示すように,前述の副室側バルブボディ11bと,主室側バルブボディ11a間に,中央に開口が形成されたプレート11cを挟持し,このプレート11cに形成された開口を,第1副室13と主室12間を連通する,前述の第1連通口15とすると共に,この第1連通口15の外周位置に,
図8に示すように加工穴31を形成して,リーク流路30を形成するものとしても良い。
【0073】
なお,
図7及び
図8に示す実施形態では,リーク流路30を加工穴31によって形成する例について説明したが,図示は省略するがこの構成に代えて第1連通口15の周縁部を外周方向に切り欠いて切欠を形成し,この切欠によってリーク流路を形成するものとしても良い。
【0074】
図3~
図6を参照して説明したように,副室側バルブボディ11bに直接,リーク流路30を加工して形成する構成では,一旦,リーク流路30を形成すると,リーク流路30の流路面積の拡張については加工穴31や切欠32の形成数の増加等によって事後的に行うことができるものの,流路面積の減少を行うためには,一旦形成した加工穴31や切欠32の一部を塞ぐ,煩雑な作業が必要となる。
【0075】
これに対し,
図7及び
図8に示したように副室側バルブボディ11bと主室側バルブボディ11a間に挟持したプレート11cにリーク流路30を形成した構成では,リーク流路30と成す加工穴31や切欠32の形成数が異なる複数のプレート11cを準備しておき,プレート11cの交換によりリーク流路30の流路面積を容易に変更することができる。
【0076】
更に,
図3~
図8を参照して説明した実施形態では,主室12と第1副室13を連通する第1連通口15の外周部分にリーク流路30を設ける構成について説明したが,このようなリーク流路30は,主室12と第1副室13とを仕切る他の壁面に設けるものとしても良く,
図9に示す実施形態では,このようなリーク流路30を,サーモスタット20の弁体24の側壁を貫通する加工穴によって形成している。
【0077】
なお,図示の例では,リーク流路30を加工穴として例を示したが,この構成に代えて,図示は省略するが例えば弁体24の一端縁24aに切欠を形成し,この切欠によってリーク流路30を形成するものとしても良い。
【0078】
このように,バルブボディ11ではなく,サーモスタット20側にリーク流路30を設けることで,バルブボディ11側の設計を変更することなく,内部に組み込むサーモスタット20のみを交換することでハンチングの発生を防止することができるバイパスバルブ10を得ることができた。
【符号の説明】
【0079】
1,100 循環路(油冷式スクリュ圧縮機の循環油の)
2,102 圧縮機本体(作業機本体)
2a,102a 吐出口
2b,102b 給油口
3,103 レシーバタンク
4,104 オイルクーラ(熱交換器)
5,105 オイルフィルタ
6,106 冷却流路
7,107 バイパス流路
10,110 バイパスバルブ
11,111 バルブボディ
11a 主室側バルブボディ
11b 副室側バルブボディ
11c プレート
12,112 主室
12a 膨出部
13,113 第1副室
14,114 第2副室
15,115 第1連通口
16,116 第2連通口
17,117 シール材
18,118 第2弁座
20,120 サーモスタット
21,121 ペレット
22,122 取付ベース
22a,122a 脚部
22b,122b フランジ部
23,123 スピンドル
24,124 弁体
24a,124a 一端縁(弁体の)
24b,124b 他端縁(弁体の)
25,125 第1弁座
30 リーク流路
31 加工穴
32 切欠
40 段部
119 貫通穴
131 連通路
131a 入口(連通路の)
132 ピストン
δ1 間隔(弁体と第1弁座間の)
δ2 間隔(弁体と第2弁座間の)