(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-20
(45)【発行日】2023-09-28
(54)【発明の名称】建材製造装置および建材製造方法
(51)【国際特許分類】
B28B 1/52 20060101AFI20230921BHJP
B07B 1/30 20060101ALI20230921BHJP
B28B 11/08 20060101ALI20230921BHJP
B07B 1/28 20060101ALI20230921BHJP
【FI】
B28B1/52
B07B1/30
B28B11/08
B07B1/28 A
(21)【出願番号】P 2019065834
(22)【出願日】2019-03-29
【審査請求日】2021-11-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000110860
【氏名又は名称】ニチハ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】池田 怜司
(72)【発明者】
【氏名】吉田 和久
(72)【発明者】
【氏名】西岡 英則
(72)【発明者】
【氏名】乗田 広規
【審査官】小川 武
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-7229(JP,A)
【文献】特開2009-241479(JP,A)
【文献】特開2005-279939(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B28B 1/00-1/54,11/00-11/24
B07B 1/28,1/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
装置稼動時にそれぞれが波動運動可能であり且つ傾斜して当該傾斜の方向に並
び、篩目を有する第1篩シート及び第2篩シートを含む、一連のシートを有する篩部
と、
前記篩部の篩目を通過した建材原料を受容するための、前記一連のシートの下で移動可能な受具と、
を備える建材製造装置であって、
前記第1篩シートは、前記一連のシートにおけるシート幅方向に同サイズの複数の篩目が等ピッチで並ぶ
シートであり、
前記第2篩シートは、前記傾斜の方向において、前記第1篩シートよりも下位に位置し、且つ、
2以上の異なるサイズの複数の篩目が前記シート幅方向に並ぶか、
或いは、
前記シート幅方向に並ぶ
複数の前記篩目を有する篩目領域および
前記篩目を有しない無篩目領域を有する
シートであり、
前記シート幅方向に対応する前記受具の幅方向に
前記第2篩シートに応じて変化付けされた前記建材原料の層を形成可能な
建材製造装置。
【請求項2】
前記第2篩シートの篩目は、前記第1篩シートの篩目以上のサイズを有する、請求項1に記載の建材製造装置。
【請求項3】
前記第2篩シートは、前記シート幅方向における両端部に前記篩目領域を有し、且つ当該篩目領域間に前記無篩目領域を少なくとも一つ有する、請求項1または2に記載の建材製造装置。
【請求項4】
前記一連のシートは、前記第1篩シートの篩目より大きい複数の同サイズの篩目が前記シート幅方向に等ピッチで並ぶ第3篩シートを、前記第2篩シートよりも下位の位置に含む、請求項1から3のいずれか一つに記載の建材製造装置。
【請求項5】
前記一連のシートは、前記第1篩シートの篩目より大きい複数の同サイズの篩目が前記シート幅方向に等ピッチで並ぶ第3篩シートを、前記第1篩シートと前記第2篩シートの間の位置に含む、請求項1から3のいずれか一つに記載の建材製造装置。
【請求項6】
傾斜して当該傾斜の方向に並
び、篩目を有する第1篩シート及び第2篩シートを含む、一連のシートを有する篩部
と、
前記篩部の篩目を通過した建材原料を受容するための、前記一連のシートの下で移動可能な受具と、を用い、
前記第1篩シートは、前記一連のシートにおけるシート幅方向に同サイズの複数の篩目が等ピッチで並ぶ
シートであり、
前記第2篩シートは、前記傾斜の方向において、前記第1篩シートよりも下位に位置し、且つ、
2以上の異なるサイズの複数の篩目が前記シート幅方向に並ぶか、
或いは、
前記シート幅方向に並ぶ
複数の前記篩目を有する篩目領域および
前記篩目を有しない無篩目領域を有する
シートであり、
前記一連
のシートのそれぞれが波動運動している状態において、
前記一連
のシートによって建材原料の篩分け処理を行い、
前記受具上において、
前記第1篩シートの篩目を通過した建材原料による第1層と、
前記第1層より上位に位置し、
前記第2篩シートの篩目を通過した建材原料よる、
前記シート幅方向に対応する前記受具の幅方向に
前記第2篩シートに応じて変化付けされた第2層と、
を有するマットを形成する、
建材製造方法。
【請求項7】
前記第2篩シートの篩目は、前記第1篩シートの篩目以上のサイズを有する、請求項6に記載の建材製造方法。
【請求項8】
前記第2篩シートは、前記シート幅方向における両端部に前記篩目領域を有し、且つ当該篩目領域間に前記無篩目領域を少なくとも一つ有する、請求項6または7に記載の建材製造方法。
【請求項9】
前記一連のシートは、前記第1篩シートの篩目より大きい複数の同サイズの篩目が前記シート幅方向に等ピッチで並ぶ第3篩シートを、前記第2篩シートよりも下位の位置に含み、
前記受具上において、前記第1篩シートの篩目を通過した建材原料による第1層と、前記第2篩シートの篩目を通過した建材原料による、前記第1層より上位の第2層と、前記第3篩シートの篩目を通過した建材原料による、前記第2層より上位の第3層と、を有するマットを形成する、請求項6から8のいずれか一つに記載の建材製造方法。
【請求項10】
前記一連のシートは、前記第1篩シートの篩目より大きい複数の同サイズの篩目が前記シート幅方向に等ピッチで並ぶ第3篩シートを、前記第1篩シートと前記第2篩シートの間の位置に含み、
前記受具上において、前記第1篩シートの篩目を通過した建材原料による第1層と、前記第3篩シートの篩目を通過した建材原料による、前記第1層より上位の第3層と、前記第2篩シートの篩目を通過した建材原料による、前記第3層より上位の第2層と、を有するマットを形成する、請求項6から8のいずれか一つに記載の建材製造方法。
【請求項11】
装置稼動時にそれぞれが波動運動可能であり且つ傾斜して当該傾斜の方向に並び、篩目を有する複数の篩シートを含む、
一連のシートを有する篩部と、
前記篩部の篩目を通過した建材原料を受容するための、前記一連のシートの下で移動可能な受具と、
を備える建材製造装置であって、
少なくとも1つの篩シートは、2以上の異なるサイズの複数の篩目が前記シート幅方向に並ぶか、或いは、
前記一連のシートにおけるシート幅方向に並ぶ複数の前記篩目を有する篩目領域および前記篩目を有しない無篩目領域を有するシートであり、
前記シート幅方向に対応する前記受具の幅方向に前記少なくとも1つの篩シートに応じて変化付けされた前記建材原料の層を形成可能な建材製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築用板材などの建材を製造するための装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
建築物の外壁や内壁を構成するための建築用板材たる建材としては、例えば、窯業系サイディングボードやセラミックボード等の無機質板、パーティクルボード等の繊維板、および樹脂板が挙げられる。
【0003】
これら各種建材を製造するための一方法として、建材原料である粉体原料を風選により篩分けしつつ当該篩分けを経た所定サイズの原料を受具などの上に堆積させて原料マットを形成する工程と、当該原料マットを加熱プレスする工程とを経る手法が、知られている。このような手法が採用される建材製造方法は、例えば下記の特許文献1に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述の建材製造方法を実施するための従来型の装置は、マット形成工程用の機構として、例えば、風選式での篩分けが行われる篩部と、この篩部に向けて粉体原料を落下させて供給するための原料供給部と、篩分けを経た所定サイズの原料を受けるための受具とを備える。
【0006】
篩部は、落下する粉体原料に対して横方向にエアを吹き付けるための送風機と、送風機からのエアに対面する位置に配設され且つ上位ほど送風機から離れるように所定程度に傾斜する篩網とを備える。装置稼動時には、粉体原料は、これら送風機と篩網との間に向けて原料供給部から落とされ、送風機から篩網に向けてのエアが吹き付けられて、一部が篩網ないしその篩目を通過したうえで更に落下して受具に受けられる(他の一部は、篩網を通過できずに落下する)。そして、粉体原料における篩網通過分が受具上に堆積することによって原料マットが形成される。
【0007】
このような機構を備える従来型の建材製造装置では、受具上の建材原料の堆積量について、篩網の幅方向に対応する受具幅方向において変化付けするのが難しい。そのような装置において、製造対象の建材の意匠面に対応する凹凸形状を内表面に有する型板を受具として用いて当該受具上に原料マットを形成する場合、受具の内表面の凹部上にも凸部上にもほぼ均等に建材が堆積する。こうして形成される原料マットを加熱プレスして得られる建材では、その意匠面に凹部が形成される箇所と凸部が形成される箇所とで構成組織の密度に差を生じやすい。密度にムラの多い建材は、クラックが生じやすく、好ましくない。
【0008】
一方、建材において高強度や高い耐水性を実現するためには、その建材の端部を高密度に形成することが考えられる。しかし、受具上の建材原料堆積量について受具幅方向において変化付けするのが難しい従来型の建材製造装置によると、製造される建材の端部について、その厚さを確保しつつ高密度に形成することは難しい。
【0009】
本発明は、このような事情のもとで考え出されたものであり、その目的は、建材原料を篩分け処理する篩部の下で建材原料を受ける建材作製用受具の上の建材原料堆積量について、受具幅方向において変化付けするのに適した、建材製造装置および建材製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1の側面によると、建材製造装置が提供される。この建材製造装置は、篩部および受具を備える。
【0011】
篩部は、一連のシートを備える。この一連のシートは、装置稼動時にそれぞれが波動運動可能であり、且つ、傾斜して当該傾斜の方向に並ぶ。一連のシートには、第1篩シートおよびこれより下位に位置する第2篩シートが含まれる。第1篩シートでは、一連のシートにおけるシート幅方向に同サイズの複数の篩目が等ピッチで並ぶ。第2篩シートは、2以上の異なるサイズの複数の篩目がシート幅方向に並ぶもの(第1タイプ)、または、シート幅方向に並ぶ篩目領域および無篩目領域を有するもの(第2タイプ)である。シート幅方向とは、例えば、一連のシートの配列方向に直交する方向である。
【0012】
本発明において、シートの波動運動とは、例えば、シートがその厚さ方向に振動を繰り返す波腹を有する運動であり、その振動の周期が短いほど高速の波動運動となる。このような波動運動は、例えば、各シートに対して所定の動力伝達機構を介して連結される偏心式加振機など加振機の稼動によって実現される。
【0013】
受具は、篩部の篩目を通過した建材原料を受容するためのものであり、一連のシートの下で移動可能である。
【0014】
以上のような本建材製造装置の稼動時には、篩部の有する一連のシートのそれぞれが上述のように波動運動している状態で、一連のシートの傾斜方向の例えば上位端にあるシートに向けて粉体原料など建材原料が投下されて、篩部に対する原料供給が行われる。供給される建材原料には粒度につき大小さまざまなものが混在している。本装置の篩部では、そのような建材原料が、波動運動状態にある一連のシートとの衝突による解砕作用を受けつつ一連のシート上を下る過程で、当該一連のシートに含まれる各篩シートでの篩分けを受ける。
【0015】
建材原料のうち、第1篩シートでの篩分けによって第1篩シートの篩目を通過した分については、第1篩シートの下方にて受具上に堆積させることができる。第1篩シートでは、上述のように、シート幅方向に同サイズの複数の篩目が等ピッチで並ぶ。このような第1篩シートの篩目を通過した建材原料は、受具上において、略均等に堆積して、シート幅方向に相当する受具幅方向において厚さが略均一な第1層をなす。
【0016】
建材原料のうち、第2篩シートでの篩分けによって第2篩シートの篩目を通過した分については、第2篩シートの下方において受具上の第1層の上位に堆積させることができる。建材原料のうち第2篩シートの篩目を通過した分は、第1層の上位で第2層をなす。
【0017】
第2篩シートが上記第1タイプ(2以上の異なるサイズの複数の篩目がシート幅方向に並ぶもの)である場合、第1層の上位に形成される第2層をなす建材原料は、第2篩シートにおける より大きな篩目の下方では堆積量がより多く、同シートにおける より小さな篩目の下方では堆積量がより少ない。すなわち、建材原料堆積量調整層としても機能するこのような第2層を上述の第1層とともに有して受具上に形成される原料マットは、建材原料堆積量について受具幅方向において変化付けされたものとなる。
【0018】
また、第2篩シートが上記第2タイプ(シート幅方向に並ぶ篩目領域および無篩目領域を有するもの)である場合、その第2篩シートの篩目領域の下方では第1層の上位に建材原料が堆積して第2層を形成する一方で、同シートの無篩目領域の下方では建材原料が実質的に堆積しない。すなわち、建材原料堆積量調整層としても機能するこのような第2層を上述の第1層とともに有して受具上に形成される原料マットは、建材原料堆積量について受具幅方向において変化付けされたものとなる。
【0019】
第2篩シートが上記第2タイプである場合、当該第2篩シートは、2以上の異なるサイズの複数の篩目がシート幅方向に並ぶ篩目領域を有するものであってもよい。このような第2篩シートによると、第2篩シートが第1タイプである場合に関して上述した作用効果と、第2篩シートが第2タイプである場合に関して上述した作用効果とが、複合的に生ずる。
【0020】
以上のように、本建材製造装置は、建材原料を機械的に分級しつつ、建材原料を篩分け処理する篩部の下で建材原料を受ける建材作製用受具の上の建材原料堆積量について、受具幅方向において変化付けするのに適する。
【0021】
このような本建材製造装置は、意匠面に凹凸形状を有する建材を、密度のムラを抑制しつつ製造するのに適する。例えば次のとおりである。
【0022】
本建材製造装置において、建材意匠面用の凹凸形状を内表面に有する型板を受具として用いて当該受具上に原料マットを形成する場合、当該凹凸形状に対応して建材原料堆積量を変化付け可能な第1タイプまたは第2タイプの第2篩シートを当該型板と共に用いる。第1タイプの第2篩シートは、例えば、受具の内表面の凹部に対応する箇所に相対的に大きな篩目を有し、受具の内表面の凸部に対応する箇所に相対的に小さな篩目を有する。また、第2タイプの第2篩シートは、例えば、受具の内表面の凹部に対応する箇所に篩目領域を有し、受具の内表面の凸部に対応する箇所に無篩目領域を有する。
【0023】
本装置においてこのような第2篩シートを用いることにより、受具上の建材原料堆積量について、受具の内表面の凹凸形状に応じて受具幅方向において変化付けされた原料マットを形成することができるのである。このような原料マットからは、その加熱プレスを経ることにより、建材意匠面に凹部が形成される箇所と凸部が形成される箇所とで構成組織の密度差が抑制された建材、即ち密度にムラの少ない建材を、製造することできる。密度にムラの少ない建材は、クラックが生じにくく、好ましい。
【0024】
また、本建材製造装置は、厚さが確保されつつ高密度である端部を受具幅方向両端に有する建材を製造するのにも適する。例えば、本建材製造装置において、第2篩シートとして、そのシート幅方向における両端部に篩目領域を有し且つ当該篩目領域間に無篩目領域を少なくとも一つ有するものを用いつつ受具上に原料マットを形成する。この場合、受具上に形成される原料マットでは、受具幅方向における両端部(篩目領域対応箇所)での建材堆積量が無篩目領域対応箇所での建材堆積量よりも多い。
【0025】
このような原料マットからは、その加熱プレスを経ることにより、厚さが確保されつつ高密度である端部を受具幅方向両端に有する建材を、製造しやすい。建材の端部が高密度に形成されることは、その建材において高強度や高い耐水性を実現するのに適する。
【0026】
本建材製造装置において、第2篩シートの篩目は、好ましくは、第1篩シートの篩目以上のサイズを有する。
【0027】
このような構成は、受具幅方向において厚さの均一性の高い、相対的に細かい建材原料による第1層と、建材原料堆積量調整層としても機能する、相対的に粗い建材原料による第2層とを有する原料マットを、受具上に形成するのに適する。したがって、当該構成は、受具上において、建材原料堆積量について受具幅方向において変化付けしつつ、相対的に細かい建材原料による第1層と相対的に粗い建材原料による第2層とを有する原料マットを形成するのに適する。
【0028】
原料マットにおける、相対的に細かい建材原料による第1層は、当該原料マットが加熱プレスを経ることによって形成される建材において、より緻密な組織を有して高い耐水性を得やすい表層をなすのに適する。原料マットにおける、相対的に粗い建材原料による第2層は、当該原料マットが加熱プレスを経ることによって形成される建材において、より低密度で軽量な組織を有して高いクッション性を得やすい芯層をなすのに適する。
【0029】
本建材製造装置において、第2篩シートは、好ましくは、シート幅方向における両端部に篩目領域を有し、且つ当該篩目領域間に無篩目領域を少なくとも一つ有する。
【0030】
このような構成は、上述したように、厚さが確保されつつ高密度である端部を受具幅方向両端に有する建材を製造するのに適する。
【0031】
本建材製造装置において、一連のシートは、好ましくは、第1篩シートの篩目より大きい複数の同サイズの篩目がシート幅方向に等ピッチで並ぶ第3篩シートを、第2篩シートよりも下位の位置に含む。
【0032】
このような構成は、受具幅方向において厚さの均一性の高い、相対的に細かい建材原料による第1層と、建材原料堆積量調整層としても機能する、相対的に粗い建材原料による第2層と、受具幅方向において厚さの均一性の高い、相対的に粗い建材原料による第3層とを有する原料マットを、受具上に形成するのに適する。したがって、当該構成は、受具上において、建材原料堆積量について受具幅方向において変化付けしつつ、相対的に細かい建材原料による第1層と相対的に粗い建材原料による第2層および第3層とを有する原料マットを形成するのに適する。
【0033】
本建材製造装置において、一連のシートは、好ましくは、第1篩シートの篩目より大きい複数の同サイズの篩目がシート幅方向に等ピッチで並ぶ第3篩シートを、第1篩シートと第2篩シートの間の位置に含む。
【0034】
このような構成は、受具幅方向において厚さの均一性の高い、相対的に細かい建材原料による第1層と、受具幅方向において厚さの均一性の高い、相対的に粗い建材原料による第3層と、建材原料堆積量調整層としても機能する、相対的に粗い建材原料による第2層とを有する原料マットを、受具上に形成するのに適する。したがって、当該構成は、受具上において、建材原料堆積量について受具幅方向において変化付けしつつ、相対的に細かい建材原料による第1層と相対的に粗い建材原料による第3層および第2層とを有する原料マットを形成するのに適する。
【0035】
本発明の第2の側面によると、建材製造方法が提供される。本製造方法では、次のような篩部および受具を用いる。
【0036】
篩部は、一連のシートを備える。この一連のシートは、傾斜して当該傾斜の方向に並ぶ。一連のシートには、第1篩シートおよびこれより下位に位置する第2篩シートが含まれる。第1篩シートでは、一連のシートにおけるシート幅方向に同サイズの複数の篩目が等ピッチで並ぶ。第2篩シートは、2以上の異なるサイズの複数の篩目がシート幅方向に並ぶもの(第1タイプ)、または、シート幅方向に並ぶ篩目領域および無篩目領域を有するもの(第2タイプ)である。シート幅方向とは、例えば、一連のシートの配列方向に直交する方向である。
【0037】
受具は、篩部の篩目を通過した建材原料を受容するためのものであり、一連のシートの下で移動可能である。
【0038】
本製造方法では、篩部の有する一連のシートのそれぞれが波動運動している状態で、一連のシートの傾斜方向の例えば上位端にあるシートに向けて粉体原料など建材原料が投下されて、篩部に対する原料供給が行われる。供給される建材原料には粒度につき大小さまざまなものが混在している。本方法の篩部では、そのような建材原料が、波動運動状態にある一連のシートとの衝突による解砕作用を受けつつ一連のシート上を下る過程で、当該一連のシートに含まれる各篩シートでの篩分けを受ける(篩分け処理)。
【0039】
そして、本製造方法では、受具上において、第1篩シートの篩目を通過した建材原料による第1層と、第2篩シートの篩目を通過した建材原料による、第1層より上位の第2層と、を有するマットを形成する。この原料マットが加熱プレス工程を経ることにより、板材としての所定の建材が製造されることとなる。
【0040】
本建材製造方法において、建材原料のうち、第1篩シートでの篩分けによって第1篩シートの篩目を通過した分については、第1篩シートの下方にて受具上に堆積させることができる。第1篩シートでは、上述のように、シート幅方向に同サイズの複数の篩目が等ピッチで並ぶ。このような第1篩シートの篩目を通過した建材原料は、受具上において、略均等に堆積して、受具幅方向において厚さが略均一な第1層をなす。
【0041】
本建材製造方法において、建材原料のうち、第2篩シートでの篩分けによって第2篩シートの篩目を通過した分については、第2篩シートの下方において受具上の第1層の上位に堆積させることができる。建材原料のうち第2篩シートの篩目を通過した分は、第1層の上位で第2層をなす。
【0042】
第2篩シートが上記第1タイプ(2以上の異なるサイズの複数の篩目がシート幅方向に並ぶもの)である場合、第1層の上位に形成される第2層をなす建材原料は、第2篩シートにおける より大きな篩目の下方では堆積量がより多く、同シートにおける より小さな篩目の下方では堆積量がより少ない。すなわち、建材原料堆積量調整層としても機能するこのような第2層を上述の第1層とともに有して受具上に形成される原料マットは、建材原料堆積量について受具幅方向において変化付けされたものとなる。
【0043】
また、第2篩シートが上記第2タイプ(シート幅方向に並ぶ篩目領域および無篩目領域を有するもの)である場合、その第2篩シートの篩目領域の下方では第1層の上位に建材原料が堆積して第2層を形成する一方で、同シートの無篩目領域の下方では建材原料が実質的に堆積しない。すなわち、建材原料堆積量調整層としても機能するこのような第2層を上述の第1層とともに有して受具上に形成される原料マットは、建材原料堆積量について受具幅方向において変化付けされたものとなる。
【0044】
第2篩シートが上記第2タイプである場合、当該第2篩シートは、2以上の異なるサイズの複数の篩目がシート幅方向に並ぶ篩目領域を有するものであってもよい。このような第2篩シートによると、第2篩シートが第1タイプである場合に関して上述した作用効果と、第2篩シートが第2タイプである場合に関して上述した作用効果とが、複合的に生ずる。
【0045】
以上のように、本建材製造方法は、建材原料を機械的に分級しつつ、建材原料を篩分け処理する篩部の下で建材原料を受ける建材作製用受具の上の建材原料堆積量について、受具幅方向において変化付けするのに適する。このような方法は、本発明の第1の側面に関して上述したのと同様に、意匠面に凹凸形状を有する建材をその密度のムラを抑制しつつ製造するのに適し、また、厚さが確保されつつ高密度である端部を受具幅方向両端に有する建材を製造するのにも適する。
【0046】
本建材製造方法において、用いられる第2篩シートの篩目は、好ましくは、第1篩シートの篩目以上のサイズを有する。
【0047】
このような構成は、受具幅方向において厚さの均一性の高い、相対的に細かい建材原料による第1層と、建材原料堆積量調整層としても機能する、相対的に粗い建材原料による第2層とを有する原料マットを、受具上に形成するのに適する。したがって、当該構成は、受具上において、建材原料堆積量について受具幅方向において変化付けしつつ、相対的に細かい建材原料による第1層と相対的に粗い建材原料による第2層とを有する原料マットを形成するのに適する。
【0048】
本建材製造方法において、第2篩シートは、好ましくは、シート幅方向における両端部に篩目領域を有し、且つ当該篩目領域間に無篩目領域を少なくとも一つ有する。
【0049】
このような構成は、厚さが確保されつつ高密度である端部を受具幅方向両端に有する建材を製造するのに適する。
【0050】
本建材製造方法において、好ましくは、一連のシートは、第1篩シートの篩目より大きい複数の同サイズの篩目がシート幅方向に等ピッチで並ぶ第3篩シートを第2篩シートよりも下位の位置に含み、受具上において、第1篩シートの篩目を通過した建材原料による第1層と、第2篩シートの篩目を通過した建材原料による、第1層より上位の第2層と、第3篩シートの篩目を通過した建材原料による、第2層より上位の第3層と、を有するマットを形成する。
【0051】
このような構成は、受具幅方向において厚さの均一性の高い、相対的に細かい建材原料による第1層と、建材原料堆積量調整層としても機能する、相対的に粗い建材原料による第2層と、受具幅方向において厚さの均一性の高い、相対的に粗い建材原料による第3層とを有する原料マットを、受具上に形成するのに適する。したがって、当該構成は、受具上において、建材原料堆積量について受具幅方向において変化付けしつつ、相対的に細かい建材原料による第1層と相対的に粗い建材原料による第2層および第3層とを有する原料マットを形成するのに適する。
【0052】
本建材製造方法において、好ましくは、一連のシートは、第1篩シートの篩目より大きい複数の同サイズの篩目がシート幅方向に等ピッチで並ぶ第3篩シートを第1篩シートと第2篩シートの間の位置に含み、受具上において、第1篩シートの篩目を通過した建材原料による第1層と、第3篩シートの篩目を通過した建材原料による、第1層より上位の第3層と、第2篩シートの篩目を通過した建材原料による、第3層より上位の第2層と、を有するマットを形成する。
【0053】
このような構成は、受具幅方向において厚さの均一性の高い、相対的に細かい建材原料による第1層と、受具幅方向において厚さの均一性の高い、相対的に粗い建材原料による第3層と、建材原料堆積量調整層としても機能する、相対的に粗い建材原料による第2層とを有する原料マットを、受具上に形成するのに適する。したがって、当該構成は、受具上において、建材原料堆積量について受具幅方向において変化付けしつつ、相対的に細かい建材原料による第1層と相対的に粗い建材原料による第3層および第2層とを有する原料マットを形成するのに適する。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係る建材製造装置の概略構成図である。
【
図2】
図1に示す建材製造装置におけるシート配列図である。
【
図3】
図1に示す建材製造装置における受具上でのマットの積層形成態様を受具幅方向の断面模式図で表す。
【
図4】
図1に示す建材製造装置の一変形例における受具上でのマットの積層形成態様を受具幅方向の断面模式図で表す。
【
図5】本発明の第2の実施形態に係る建材製造装置の概略構成図である。
【
図6】
図5に示す建材製造装置におけるシート配列図である。
【
図7】
図5に示す建材製造装置における受具上でのマットの積層形成態様を受具幅方向の断面模式図で表す。
【
図8】本発明の第3の実施形態に係る建材製造装置の概略構成図である。
【
図9】
図8に示す建材製造装置におけるシート配列図である。
【
図10】
図8に示す建材製造装置における受具上でのマットの積層形成態様を受具幅方向の断面模式図で表す。
【
図11】本発明の
第4の実施形態に係る建材製造装置の概略構成図である。
【
図12】
図11に示す建材製造装置におけるシート配列図である。
【
図13】
図11に示す建材製造装置における受具上でのマットの積層形成態様を受具幅方向の断面模式図で表す。
【
図14】
図11に示す建材製造装置の一変形例におけるシート配列図である。
【
図15】
図11に示す建材製造装置の一変形例における受具の受具幅方向の断面模式図である。
【
図16】
図11に示す建材製造装置の一変形例における受具上でのマットの積層形成態様を受具幅方向の断面模式図で表す。
【
図17】本発明の
第5の実施形態に係る建材製造装置の概略構成図である。
【
図18】
図17に示す建材製造装置におけるシート配列図である。
【
図19】
図17に示す建材製造装置における受具上でのマットの積層形成態様を受具幅方向の断面模式図で表す。
【
図20】本発明の
第6の実施形態に係る建材製造装置の概略構成図である。
【
図21】
図20に示す建材製造装置におけるシート配列図である。
【
図22】
図20に示す建材製造装置における受具上でのマットの積層形成態様を受具幅方向の断面模式図で表す。
【発明を実施するための形態】
【0055】
図1は、本発明の第1の実施形態に係る建材製造装置X1の概略構成を表す。建材製造装置X1は、篩部10と、原料供給部20と、受具30とを備え、加熱プレス工程を経ることで建材をなす建材用のマットを所定サイズの建材原料の堆積によって形成することができる装置である。
【0056】
篩部10は、装置稼動時にそれぞれが波動運動可能であり且つ傾斜して当該傾斜の方向に並ぶ一連のシートと、当該一連のシートが組み付けられて各シートの波動運動を実現するための本体構造部10'とを有する。シートの波動運動とは、本実施形態では、シートがその厚さ方向に振動を繰り返す波腹を有する運動であり、その振動の周期が短いほど高速の波動運動となる。
【0057】
篩部10における一連のシートには、本実施形態では、受送シート11、第1篩シートとしての篩シート12、第2篩シートとしての篩シート13、第3篩シートとしての篩シート14、および中継シート15が含まれる。各シートは、伸縮性を有する弾性材シートであり、好ましくはウレタン系ゴムシートである。シートの厚さは例えば2~5mmである。また、篩部10における一連のシートの傾斜角度は、水平に対して例えば6~25度である。
【0058】
図2は、本実施形態における一連のシートの配列を表す。本実施形態における一連のシートでは、その上位端側から、受送シート11、篩シート12、篩シート13、中継シート15、および篩シート14がこの順で並ぶ。
【0059】
受送シート11は、一連のシートにおける上位端に位置して装置稼動時に原料投下を受けるシートであり、篩目を有しない。
図1に示すように、篩シート12は受送シート11よりも下位に位置し、篩シート13は篩シート12よりも下位に位置し、中継シート15は篩シート13,14間に位置し、篩シート14は篩シート13よりも下位に位置する。篩シート12,13,14のそれぞれは、
図2に示すように篩目を有する。
【0060】
篩シート12では、一連のシートにおけるシート幅方向Wに同サイズの複数の篩目が等ピッチで並ぶ。このような篩シート12の篩目のサイズ即ち目開きサイズは、例えば1~30mmである。シート幅方向Wとは、本実施形態では、一連のシートの配列方向(シート配列方向D)に直交する方向である。
【0061】
篩シート13は、シート幅方向Wに並ぶ篩目領域R1および無篩目領域R2を有する。本実施形態では、篩シート13は、後述の受具30の内表面の凹部に対応する箇所に篩目領域R1を有し、受具30の内表面の凸部に対応する箇所に無篩目領域R2を有する。篩目領域R1における篩目は、篩シート12の篩目以上のサイズを有する。具体的には、篩シート13の篩目領域R1における篩目のサイズ即ち目開きサイズは、篩シート12の篩目のサイズより大きい限りにおいて、例えば10~40mmである。これに対し、無篩目領域R2には篩目が設けられていない。
【0062】
篩シート14では、篩シート12の篩目より大きい複数の同サイズの篩目がシート幅方向Wに等ピッチで並ぶ。このような篩シート14の篩目のサイズ即ち目開きサイズは、篩シート13の篩目領域R1における篩目のサイズより大きい限りにおいて、例えば30~50mmである。
【0063】
中継シート15は、受送シート11と同様に無篩目のシートである。
【0064】
篩部10の本体構造部10'は、内枠構造体と、外枠構造体と、偏心式加振機とを備える。
【0065】
内枠構造体は、平行に延びる一対の内側側板と、これら内側側板の離隔方向に延びて内側側板間を架橋する複数のクロスビーム(第1クロスビーム)とを有する。各第1クロスビームは、その上端側にシート固定部を有する。
【0066】
外枠構造体は、一対の内側側板の外側においてこれら内側側板に沿って平行に延びる一対の外側側板と、これら外側側板の離隔方向に延びて外側側板間を架橋する複数のクロスビーム(第2クロスビーム)とを有する。各第2クロスビームは、その上端側にシート固定部を有する。
【0067】
内枠構造体の第1クロスビームの上端側(シート固定部を伴う)と外枠構造体の第2クロスビームの上端側(シート固定部を伴う)とが交互に平行に並ぶ配置を内枠構造体と外枠構造体はとり、外枠構造体ないしその一対の外側側板は、内枠構造体ないしその一対の内側側板に対して支持板バネ(図示略)で吊り下げられている。また、内枠構造体は、このように外枠構造体を伴う状態で、所定の傾斜を有する架台(図示略)上に防振ゴム(図示略)を介して設置されている。
【0068】
これら内枠構造体および外枠構造体は、駆動板バネ(図示略)を介して振動源としての偏心式加振機(図示略)に連結されている。具体的には、偏心式加振機の回転駆動によって内枠構造体および外枠構造体に180度の位相差の往復運動が生ずるように、内枠構造体および外枠構造体は偏心式加振機に駆動板バネを介して連結されている。装置稼動時における偏心式加振機の回転駆動速度は、例えば500~600回転/分である。
【0069】
また、篩部10における上述の一連のシートのそれぞれは、隣り合う第1および第2クロスビームに固定されている。具体的には、各シートは、シート配列方向Dにおける一縁端が第1クロスビームのシート固定部に固定され、且つ当該第1クロスビームの隣の第2クロスビームのシート固定部に他縁端が固定されている。
【0070】
篩部10における以上のような本体構造部10'、即ち、篩部10における一連のシートに波動運動を生じさせる機構としては、例えば、ユーラステクノ株式会社製の篩分け機「ジャンピングスクリーン(登録商標)」の本体部が挙げられる。
【0071】
原料供給部20は、篩部10内の受送シート11に向けて建材原料Mを投下して篩部10に原料供給するためのものであり、ベルトコンベア21および均し部22を有する。
【0072】
ベルトコンベア21は、建材原料Mを篩部10の受送シート11の上方まで送るためのものである。均し部22は、ベルトコンベア21上を送られる建材原料Mを均すための回転構造部であり、その回転周端に複数のすき歯が立設されている。本実施形態では、均し部22の回転周端がベルトコンベア21に対向し、且つベルトコンベア21による建材原料Mの送り方向に対して均し部22の回転軸心が直交するように、均し部22は配設されている。
【0073】
建材製造装置X1の大型化や、建材製造装置X1を含む設備全体の大規模化を、抑制・回避する観点からは、原料供給部20は、篩部10における一連のシートの配列方向の水平成分に沿ってベルトコンベア21が延びるように篩部10の上方に配置されるのが好ましい。
【0074】
本実施形態では、上述の篩部10における受送シート11は、
図2に示すシート幅方向W(シート配列方向Dに直交する方向)において、原料供給部20から投下される建材原料Mの投下領域と同じ範囲に広がるか、或いは当該投下領域を超えて広がる。
【0075】
受具30は、篩部10を経た所定の建材原料Mを受容するためのものであり、受具30の移動ラインをなすベルトコンベア31上に載置される。ベルトコンベア31は、篩部10における一連のシートの配列方向の水平成分に沿って延びる。ベルトコンベア31が稼動することにより、一連のシートの下で受具30が移動可能に構成されている。また、受具30は、本実施形態では、製造対象の建材の意匠面に対応する所定の凹凸形状を内表面(建材原料Mを受ける側の表面)に有する型板である。
図3には、受具30の一例について、シート幅方向Wに対応する受具幅方向W'の断面が示されている。
【0076】
建材製造装置X1の稼動時には、篩部10の本体構造部10'において偏心式加振機が回転駆動して内枠構造体および外枠構造体のそれぞれに往復運動が生じる。両往復運動の位相差は上述のように180度である。内枠構造体と外枠構造体がこのような往復運動をすることにより、各シートにおいて、上述の第1および第2クロスビームによって強く引っ張られた状態と弛緩した状態とが交互に繰り返されて波動運動が生じる。偏心式加振機の回転駆動速度が高いほど、各シートに生ずる波動運動も高速となる。
【0077】
以上のような構成を具備する建材製造装置X1の稼動時には、原料貯留部(図示略)から建材原料Mが原料供給部20に連続的に供給される。建材原料Mは、製造対象の建材に応じて用意される。製造対象の建材が例えば窯業系サイディングボードである場合、建材原料Mは、例えば水硬性材料および補強材を含み、また、珪酸質材料や、中空体、混和材、防水剤などを含んでもよい。
【0078】
水硬性材料としては、例えば、セメント、石膏、およびスラグが挙げられる。セメントとしては、例えば、普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、アルミナセメント、高炉セメント、およびフライアッシュセメントが挙げられる。石膏としては、例えば、無水石膏、半水石膏、および二水石膏が挙げられる。スラグとしては、例えば、高炉スラグおよび転炉スラグが挙げられる。
【0079】
補強材としては、例えば、植物系補強材および合成繊維が挙げられる。植物系補強材としては、例えば、木粉、木毛、木片、木質パルプ、木質繊維、木質繊維束、故紙、竹繊維、麻繊維、バガス、籾殻、および稲藁が挙げられる。合成繊維としては、例えば、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、およびアクリル繊維が挙げられる。
【0080】
珪酸質材料としては、例えば、珪砂、ケイ石粉、シリカ粉、石炭灰、フライアッシュ、および珪藻土が挙げられる。
【0081】
中空体としては、例えば、発泡ポリスチレンビーズ、マイクロスフィア、パーライト、フライアッシュバルーン、シラスバルーン、膨張頁岩、膨張粘土、および焼成珪藻土が挙げられる。マイクロスフィアとしては、例えばアクリル系発泡体が挙げられる。
【0082】
混和材としては、例えば、マイカ、製紙スラッジ焼却灰、シリカフューム、ウォラストナイト、炭酸カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、バーミキュライト、セピオライト、ゾノトライト、カオリナイト、およびゼオライトが挙げられる。
【0083】
混和材としては、窯業系サイディングボードなど無機質板の粉砕物も挙げられる。無機質板の粉砕物としては、例えば、無機質板の製造過程で発生した硬化前無機質板の不良板の粉砕物および硬化後無機質板の不良板の粉砕物、並びに、建築現場等で発生した無機質板の端材や廃材の粉砕物が挙げられる。
【0084】
防水剤としては、例えば、ロウ、ワックス、パラフィン、コハク酸、脂肪酸、シリコーン、および合成樹脂が挙げられる。合成樹脂としては、例えば、アクリル系樹脂、ポリエチレン、エチレン-酢酸ビニル共重合体、ウレタン系樹脂、およびエポキシ樹脂が挙げられる。
【0085】
建材製造装置X1の原料供給部20に供給された建材原料Mは、ベルトコンベア21によって篩部10の受送シート11の上方まで例えば一定速度で送られる。ベルトコンベア21上において、建材原料Mは、回転動する均し部22ないしそのすき歯による均し措置を受ける。
【0086】
そして、建材製造装置X1の稼動時には、篩部10の有する一連のシートのそれぞれが波動運動している状態で、この篩部10の受送シート11に向けて原料供給部20から建材原料Mが投下される(原料供給部20からの原料投下経路を破線矢印で示す)。
【0087】
原料供給部20から投下される建材原料Mには、粗大な塊状の形態をとるものも含まれる。そのような建材原料Mは、篩目が無くて原料接触面積の大きな受送シート11により、篩部10においては最初に受けられる。このような構成は、粗大な塊状の形態をとる建材原料Mについて、篩部10の各篩シートに至る前に、波動運動する受送シート11との衝突によって解砕するのに適する。篩部10の各篩シートに至る前に建材原料Mの解砕が進むほど、各篩シートの目詰まりは抑制される傾向にある。
【0088】
これとともに、原料供給部20から投下される建材原料Mが、篩目が無くて原料接触面積の大きな受送シート11により篩部10においては最初に受けられるという構成は、建材原料Mについて、篩部10の各篩シートに至る前に、波動運動する受送シート11との衝突によって例えばシート幅方向Wに分散させるのに適する。篩部10の各篩シートに至る前に建材原料Mが分散されるほど、各篩シートの目詰まりは抑制される傾向にある。
【0089】
建材製造装置X1の稼動時には、波動運動する受送シート11での以上のような解砕と分散化を経た建材原料Mは、波動運動状態にある他のシートとの衝突による解砕作用を受けつつ一連のシート上を下る過程で、各篩シートでの篩分けを受ける(篩分け処理)。そして、篩部10での篩分けで生ずる建材原料Mのうち、篩シート12の篩目を通過した分と、篩シート13の篩目を通過した分と、篩シート14の篩目を通過した分とが受具30上に順次に堆積されて、原料マットが形成される(篩部10からの原料落下経路を破線矢印で示す)。具体的には次のとおりである。
【0090】
まず、ベルトコンベア31によって矢印d1方向に運ばれて篩部10の篩シート12の直下を通過中の受具30の上に、建材原料Mのうち篩シート12の篩目を通過した分の所定量が堆積される。
【0091】
篩シート12では、上述のように、シート幅方向Wに同サイズの複数の篩目が等ピッチで並ぶ。このような篩シート12の篩目を通過した建材原料Mは、受具30上に略均等に堆積する。これにより、例えば
図3(a)に示すように、シート幅方向Wに対応する受具幅方向W'において厚さが略均一な層L1(第1層)が受具30上に形成される。層L1は、篩シート12の篩目を通過した細かい建材原料M(篩シート12通過分)が堆積してなる。
【0092】
次に、ベルトコンベア31によって矢印d1方向に運ばれて篩部10の篩シート13の直下を通過中の受具30における層L1の上に、建材原料Mのうち篩シート13の篩目を通過した分の所定量が堆積される。
【0093】
このとき、例えば
図3(b)に示すように、篩シート13の篩目領域R1の下方では層L1上に建材原料Mが堆積して層L2(第2層)が形成される一方で、篩シート13の無篩目領域R2の下方では建材原料Mが実質的に堆積しない。層L2は、篩シート13の篩目領域R1の篩目を通過した建材原料M(篩シート12通過分より粗い、篩シート13篩目領域通過分)が堆積してなる。
【0094】
篩シート13の篩目領域R1の篩目を通過しなかった建材原料Mは、篩シート14に至る前に、篩目が無くて原料接触面積の大きな中継シート15との衝突による解砕と分散化を経る。篩シート14に至る前に、建材原料Mの解砕が進むほど、また建材原料Mが分散されるほど、篩シート14の目詰まりは抑制される傾向にある。篩シート13の篩目領域R1の篩目を通過せずに篩シート13上を下る建材原料Mに、シート幅方向Wにおいて量的なムラが生じる場合であっても、その建材原料Mが中継シート15上を通過する過程で当該量的ムラは低減・解消される。
【0095】
次に、ベルトコンベア31によって矢印d1方向に運ばれて篩部10の篩シート14の直下を通過中の受具30における層L1,L2の上に、建材原料Mのうち篩シート14の篩目を通過した分の所定量が堆積される。
【0096】
篩シート14では、上述のように、篩シート12の篩目より大きい複数の同サイズの篩目がシート幅方向Wに等ピッチで並ぶ。このような篩シート14の篩目を通過した建材原料Mは、層L1,L2上において略均等に堆積する。これにより、例えば
図3(c)に示すように、受具幅方向W'において厚さが略均一な層L3(第3層)が層L1,L2上に形成される。層L3は、篩シート14の篩目を通過した建材原料M(篩シート13篩目領域通過分より粗い)が堆積してなる。
【0097】
以上のようにして形成される原料マットは、上述の層L1,L2,L3を含む。すなわち、建材製造装置X1によると、上述の篩分け処理によって建材原料Mから3区分の粒度分布原料を得て3層構成の原料マットを形成することができる。
【0098】
層L1は、受具幅方向W'において厚さの均一性が高く、相対的に細かい建材原料M(篩シート12通過分)よりなる。層L2は、建材原料堆積量調整層としても機能する要素であり、篩シート12通過分より粗い建材原料Mよりなる。層L3は、受具幅方向W'において厚さの均一性が高く、篩シート13篩目領域通過分より粗い建材原料Mよりなる。建材原料堆積量調整層としても機能する層L2を層L1,L3とともに有して受具30上に形成される原料マットは、建材原料堆積量について受具幅方向W'において変化付けされたものとなる。
【0099】
このように、建材製造装置X1は、建材原料堆積量について受具幅方向W'において変化付けしつつ、上述の層L1,L2,L3を有する原料マットを形成するのに適する。建材製造装置X1は、建材原料Mを機械的に分級しつつ、建材原料Mを篩分け処理する篩部10の下で建材原料Mを受ける受具30の上の建材原料堆積量について、受具幅方向W'において変化付けするのに適するのである。
【0100】
こうして形成される原料マット、即ち、層L1,L2,L3の積層体は、次に、加熱プレス工程に付される。本工程において、プレス圧力は例えば2~8MPaであり、加熱温度は例えば50~80℃であり、プレス時間は6~12時間である。この後、必要に応じてオートクレーブ養生が行われる。このオートクレーブ養生において、温度条件は例えば150℃以上であり、圧力条件は例えば0.5MPa以上である。加熱プレス工程およびオートクレーブ養生におけるこれら条件については、後記の加熱プレス工程およびオートクレーブ養生についても同様である。
【0101】
層L1,L2,L3の積層体が、加熱プレス工程を経ることにより、或いは加熱プレス工程とその後のオートクレーブ養生を経ることにより、層L1から形成される硬化層と層L2から形成される硬化層と層L3から形成される硬化層との積層構造を有する建材が製造される。例えば、製造対象の建材が窯業系サイディングボードであって上述の建材原料Mが水硬性材料と珪酸質材料と補強材を含む場合、各硬化層は、水硬性材料および珪酸質材料から形成される無機質硬化マトリクスに補強材が分散している構成を有する。
【0102】
相対的に細かい建材原料Mの堆積物である層L1から形成される硬化層は、より緻密な組織を有しているので高い耐水性を得るのに適し、従って、建材の表層をなすのに適する。相対的に粗い建材原料Mの堆積物である層L2,L3から形成される硬化層は、より低密度で軽量な組織を有しているので高いクッション性を得るのに適し、従って、建材の芯層をなすのに適する。
【0103】
また、上述のような層L1,L2,L3を含む原料マットからは、その加熱プレスを経ることにより、建材意匠面に凹部が形成される箇所と凸部が形成される箇所とで構成組織の密度差が抑制された建材、即ち密度にムラの少ない建材を、製造することできる。すなわち、建材製造装置X1は、意匠面に凹凸形状を有する建材を、密度のムラを抑制しつつ製造するのに適するのである。密度にムラの少ない建材は、クラックが生じにくく、好ましい。
【0104】
図4は、建材製造装置X1の一変形例における受具上でのマットの積層形成態様を受具幅方向の断面模式図で表す。本変形例では、建材製造装置X1により原料マットを形成するにあたり、受具30Aが上述の受具30の代わりに用いられる。受具30Aは、受具幅方向W'の少なくとも両端部において、内表面(建材原料Mを受ける側の表面)に凸形状を有しない型板である。
図4には、受具30Aの一例について、幅方向の断面が示されている。本変形例においては、次のようにして原料マットが形成される。
【0105】
まず、
図1に示すベルトコンベア31によって矢印d1方向に運ばれて篩部10の篩シート12の直下を通過中の受具30Aの上に、建材原料Mのうち篩シート12の篩目を通過した分の所定量が堆積される。
【0106】
篩シート12では、上述のように、シート幅方向Wに同サイズの複数の篩目が等ピッチで並ぶ。このような篩シート12の篩目を通過した建材原料Mは、受具30A上に略均等に堆積する。これにより、例えば
図4(a)に示すように、シート幅方向Wに対応する受具幅方向W'において厚さが略均一な層L1(第1層)が受具30A上に形成される。層L1は、篩シート12の篩目を通過した細かい建材原料M(篩シート12通過分)が堆積してなる。
【0107】
次に、ベルトコンベア31によって矢印d1方向に運ばれて篩部10の篩シート13の直下を通過中の受具30Aにおける層L1の上に、建材原料Mのうち篩シート13の篩目を通過した分の所定量が堆積される。
【0108】
このとき、
図4(b)に示すように、篩シート13の篩目領域R1の下方では層L1上に建材原料Mが堆積して層L2(第2層)が形成される一方で、篩シート13の無篩目領域R2の下方では建材原料Mが実質的に堆積しない。層L2は、篩シート13の篩目領域R1の篩目を通過した建材原料M(篩シート12通過分より粗い、篩シート13篩目領域通過分)が堆積してなる。
【0109】
次に、ベルトコンベア31によって矢印d1方向に運ばれて篩部10の篩シート14の直下を通過中の受具30Aにおける層L1,L2の上に、中継シート15上での上述の解砕・分散化を経て篩シート14に至った建材原料Mのうち篩シート14の篩目を通過した分の所定量が、堆積される。
【0110】
篩シート14では、上述のように、篩シート12の篩目より大きい複数の同サイズの篩目がシート幅方向Wに等ピッチで並ぶ。このような篩シート14の篩目を通過した建材原料Mは、層L1,L2上において略均等に堆積する。これにより、
図4(c)に示すように、受具幅方向W'において厚さが略均一な層L3(第3層)が層L1,L2上に形成される。層L3は、篩シート14の篩目を通過した建材原料M(篩シート13篩目領域通過分より粗い)が堆積してなる。
【0111】
以上のようにして形成される原料マットは、上述の層L1,L2,L3を含む。層L1は、受具幅方向W'において厚さの均一性が高く、相対的に細かい建材原料M(篩シート12通過分)よりなる。層L2は、建材原料堆積量調整層としても機能する要素であり、篩シート12通過分より粗い建材原料Mよりなる。層L3は、受具幅方向W'において厚さの均一性が高く、篩シート13篩目領域通過分より粗い建材原料Mよりなる。建材原料堆積量調整層としても機能する層L2を層L1,L2とともに有して受具30A上に形成される原料マットは、建材原料堆積量について受具幅方向W'において変化付けされたものとなる。
【0112】
このような層L1,L2,L3を含む原料マットからは、その加熱プレスを経ることにより、厚さが確保されつつ高密度である端部を受具幅方向W'の両端に有する建材を製造することができる。すなわち、建材製造装置X1は、厚さが確保されつつ高密度である端部を受具幅方向W'の両端に有する建材を製造するのにも適するのである。建材の端部が高密度に形成されることは、その建材において高強度や高い耐水性を実現するのに適する。
【0113】
建材製造装置X1による原料マットの形成においては、上述の層L3を形成した後、ベルトコンベア31によってその図中右端側から図中左端側に受具30を篩部10の下で矢印d2方向に移送しつつ、受具30上において、建材原料Mよりなる各層を更に積層形成してもよい。この場合、受具30を矢印d1方向に移送しつつ受具30上に形成した複数の層が、その積層順とは逆の順で、更に積層形成される。その結果、厚さ方向に対称的な積層構成を有する原料マットが形成される。このように篩部の下で受具を往復動させて、厚さ方向に対称的な積層構成を有する原料マットを形成することができることについては、後記の建材製造装置においても同様である。
【0114】
建材製造装置X1において、受送シート11は、上述のように、シート幅方向Wにおいて、原料供給部20から投下される建材原料Mの投下領域と同じ範囲に広がるか、或いは当該投下領域を超えて広がる。
【0115】
このような構成は、原料供給部20から供給される建材原料Mの全てを篩部10ないしその受送シート11によって適切に受けるうえで好ましい。また、受送シート11が原料投下領域よりも幅広であるという構成は、建材原料Mについて、篩部10の各篩シートに至る前に、波動運動する受送シート11との衝突によってシート幅方向Wに分散させるのに適する。篩部10の各篩シートに至る前に建材原料Mが分散されるほど、各篩シートの目詰まりは抑制される傾向にある。
【0116】
建材製造装置X1において、原料供給部20は、上述のように、建材原料Mを篩部10の受送シート11の上方まで送るためのベルトコンベア21と、ベルトコンベア21上を送られる建材原料Mを均すための均し部22とを有する。
【0117】
このような構成は、篩部10の篩シート12の目詰まりを抑制するうえで好ましい。具体的には、原料供給部20のベルトコンベア21上を送られる建材原料Mに対する均し部22による均し措置は、ベルトコンベア21の終端から受送シート11に向けて投下供給される建材原料Mの供給流量を均等化するのに適し、従って、篩部10における一連のシート上での建材原料Mの偏りを抑えて各篩シートの目詰まりを抑制するうえで好ましい。
【0118】
図5は、本発明の第2の実施形態に係る建材製造装置X2の概略構成を表す。建材製造装置X2は、篩部10Aと、上述の原料供給部20と、受具30Bとを備え、篩部10および受具30に代えて篩部10Aおよび受具30Bを備える点で、第1の実施形態である建材製造装置X1と異なる。
【0119】
篩部10Aは、装置稼動時にそれぞれが波動運動可能であり且つ傾斜して当該傾斜の方向に並ぶ一連のシートと、当該一連のシートが組み付けられて各シートの波動運動を実現するための上述の本体構造部10'とを有する。篩部10Aは、一連のシートにおいて、上述の篩シート13の代わりに、
図6に示すような篩シート13Aを有する点で、篩部10と異なる。篩部10Aの他の構成は、上述の篩部10と同様である。
【0120】
篩シート13Aは、シート幅方向Wに並ぶ篩目領域R1および無篩目領域R2を有する。篩シート13Aの篩目領域R1では、2以上の異なるサイズの複数の篩目がシート幅方向Wに並ぶ。本実施形態では、篩シート13Aの篩目領域R1は、シート幅方向Wにおいて、後述の受具30Bの内表面の より深い凹部に対応する篩目ほどそのサイズが大きい篩目パターンを有する。このような篩シート13Aの篩目領域R1の篩目は、篩シート12の篩目以上のサイズを有する。具体的には、篩シート13Aの篩目領域R1における篩目のサイズ即ち目開きサイズは、篩シート12の篩目のサイズより大きい限りにおいて、例えば10~40mmである。これに対し、篩シート13Aの無篩目領域R2には篩目が設けられていない。
【0121】
受具30Bは、本実施形態では、製造対象の建材の意匠面に対応する所定の凹凸形状を内表面(建材原料Mを受ける側の表面)に有する型板である。
図7には、受具30Bの一例について、シート幅方向Wに対応する受具幅方向W'の断面が示されている。受具30Bの他の構成は、上述の受具30と同様である。
【0122】
以上のような構成を具備する建材製造装置X2の稼動時には、原料貯留部(図示略)から建材原料Mが原料供給部20に連続的に供給され、この建材原料Mは、ベルトコンベア21によって篩部10Aの受送シート11の上方まで例えば一定速度で送られる。ベルトコンベア21上において、建材原料Mは、回転動する均し部22ないしそのすき歯による均し措置を受ける。
【0123】
そして、篩部10Aの有する一連のシートのそれぞれが波動運動している状態で、この篩部10Aの受送シート11に向けて原料供給部20から建材原料Mが投下される(原料供給部20からの原料投下経路を破線矢印で示す)。
【0124】
原料供給部20から供給される建材原料Mは、建材製造装置X1に関して上述したのと同様に、波動運動する受送シート11による解砕および分散化を受ける。これにより、篩部10Aの各篩シートの目詰まりは抑制される傾向にある。
【0125】
建材製造装置X2の稼動時には、波動運動する受送シート11での解砕と分散化を経た建材原料Mは、波動運動状態にある他のシートとの衝突による解砕作用を受けつつ一連のシート上を下る過程で、各篩シートでの篩分けを受ける。そして、篩部10Aでの篩分けで生ずる建材原料Mのうち、篩シート12の篩目を通過した分と、篩シート13Aの篩目を通過した分と、篩シート14の篩目を通過した分とが受具30B上に順次に堆積されて、原料マットが形成される(篩部10Aからの原料落下経路を破線矢印で示す)。具体的には次のとおりである。
【0126】
まず、ベルトコンベア31によって矢印d1方向に運ばれて篩部10の篩シート12の直下を通過中の受具30Bの上に、建材原料Mのうち篩シート12の篩目を通過した分の所定量が堆積される。
【0127】
篩シート12では、上述のように、シート幅方向Wに同サイズの複数の篩目が等ピッチで並ぶ。このような篩シート12の篩目を通過した建材原料Mは、受具30B上に略均等に堆積する。これにより、例えば
図7(a)に示すように、シート幅方向Wに対応する受具幅方向W'において厚さが略均一な層L4(第1層)が受具30B上に形成される。層L4は、篩シート12の篩目を通過した細かい建材原料M(篩シート12通過分)が堆積してなる。
【0128】
次に、ベルトコンベア31によって矢印d1方向に運ばれて篩部10Aの篩シート13Aの直下を通過中の受具30Bにおける層L4の上に、建材原料Mのうち篩シート13Aの篩目を通過した分の所定量が堆積される。
【0129】
このとき、例えば
図7(b)に示すように、篩シート13Aの篩目領域R1の下方では層L4上に建材原料Mが堆積して層L5(第2層)が形成される一方で、篩シート13Aの無篩目領域R2の下方では建材原料Mが実質的に堆積しない。また、層L5では、受具30Bの内表面の より深い凹部に対応する部位ほど、建材原料Mの堆積量は多い傾向にある。このような層L5は、篩シート13Aの篩目領域R1の篩目を通過した建材原料M(篩シート12通過分より粗い、篩シート13A篩目領域通過分)が堆積してなる。
【0130】
篩シート13Aの篩目領域R1の篩目を通過しなかった建材原料Mは、篩シート14に至る前に、篩目が無くて原料接触面積の大きな中継シート15との衝突による解砕と分散化を経る。篩シート14に至る前に、建材原料Mの解砕が進むほど、また建材原料Mが分散されるほど、篩シート14の目詰まりは抑制される傾向にある。篩シート13Aの篩目領域R1の篩目を通過せずに篩シート13A上を下る建材原料Mに、シート幅方向Wにおいて量的なムラが生じる場合であっても、その建材原料Mが中継シート15上を通過する過程で当該量的ムラは低減・解消される。
【0131】
次に、ベルトコンベア31によって矢印d1方向に運ばれて篩部10Aの篩シート14の直下を通過中の受具30Bにおける層L4,L5の上に、建材原料Mのうち篩シート14の篩目を通過した分の所定量が堆積される。
【0132】
篩シート14では、上述のように、篩シート12の篩目より大きい複数の同サイズの篩目がシート幅方向Wに等ピッチで並ぶ。このような篩シート14の篩目を通過した建材原料Mは、層L4,L5上において略均等に堆積する。これにより、例えば
図7(c)に示すように、受具幅方向W'において厚さが略均一な層L6(第3層)が層L4,L5上に形成される。層L6は、篩シート14の篩目を通過した建材原料M(篩シート13A通過分より粗い)が堆積してなる。
【0133】
以上のようにして形成される原料マットは、上述の層L4,L5,L6を含む。層L4は、受具幅方向W'において厚さの均一性が高く、相対的に細かい建材原料M(篩シート12通過分)よりなる。層L5は、建材原料堆積量調整層としても機能する要素であり、篩シート12通過分より粗い建材原料Mよりなる。層L6は、受具幅方向W'において厚さの均一性が高く、篩シート13A通過分より粗い建材原料Mよりなる。建材原料堆積量調整層としても機能する層L5を層L4,L6とともに有して受具30B上に形成される原料マットは、建材原料堆積量について受具幅方向W'において変化付けされたものとなる。
【0134】
このように、建材製造装置X2は、建材原料堆積量について受具幅方向W'において変化付けしつつ、上述の層L4,層L5,L6を有する原料マットを形成するのに適する。建材製造装置X2は、建材原料Mを機械的に分級しつつ、建材原料Mを篩分け処理する篩部10Aの下で建材原料Mを受ける受具30Bの上の建材原料堆積量について、受具幅方向W'において変化付けするのに適するのである。
【0135】
こうして形成される原料マット、即ち、層L4,L5,L6の積層体は、次に、加熱プレス工程に付される。層L4,L5,L6の積層体が、加熱プレス工程を経ることにより、或いは加熱プレス工程とその後のオートクレーブ養生を経ることにより、各層から形成される硬化層の積層構造を有する建材が製造される。
【0136】
相対的に細かい建材原料Mの堆積物である層L4から形成される硬化層は、より緻密な組織を有しているので高い耐水性を得るのに適し、従って、建材の表層をなすのに適する。相対的に粗い建材原料Mの堆積物である層L5,L6から形成される硬化層は、より低密度で軽量な組織を有しているので高いクッション性を得るのに適し、従って、建材の芯層をなすのに適する。
【0137】
また、上述のような層L4,L5,L6を含む原料マットからは、その加熱プレスを経ることにより、建材意匠面に凹部が形成される箇所と凸部が形成される箇所とで構成組織の密度差が抑制された建材、即ち密度にムラの少ない建材を、製造することできる。すなわち、建材製造装置X2は、意匠面に凹凸形状を有する建材を、密度のムラを抑制しつつ製造するのに適するのである。
【0138】
図8は、本発明の第3の実施形態に係る建材製造装置X3の概略構成を表す。建材製造装置X3は、篩部10Bと、上述の原料供給部20と、受具30Cとを備え、篩部10および受具30に代えて篩部10Bおよび受具30Cを備える点で、第1の実施形態である建材製造装置X1と異なる。
【0139】
篩部10Bは、装置稼動時にそれぞれが波動運動可能であり且つ傾斜して当該傾斜の方向に並ぶ一連のシートと、当該一連のシートが組み付けられて各シートの波動運動を実現するための上述の本体構造部10'とを有する。
【0140】
篩部10Bは、
図2を参照して上述した配列の一連のシートに代えて、
図9に示すような配列の一連のシートを有する点で、篩部10と異なる。篩部10Bの他の構成は、上述の篩部10と同様である。
【0141】
篩部10Bにおける一連のシートでは、その上位端側から、上述の無篩目の受送シート11、上述の細目の篩シート12(第1篩シート)、中継シート15、上述の粗目の篩シート14(第3篩シート)、および篩シート13B(第2篩シート)がこの順で並ぶ。第3篩シートである篩シート14は、第1篩シートである篩シート12と第2篩シートである篩シート13Bの間に位置する。
【0142】
篩シート13Bは、シート幅方向Wに並ぶ篩目領域R1および無篩目領域R2を有する。本実施形態では、篩シート13Bは、後述の受具30の内表面の凹部に対応する箇所に篩目領域R1を有し、受具30の内表面の凸部に対応する箇所に無篩目領域R2を有する。篩目領域R1における篩目は、篩シート12の篩目以上のサイズを有する。具体的には、篩シート13Bの篩目領域R1における篩目のサイズ即ち目開きサイズは、篩シート14の篩目のサイズより大きい限りにおいて、例えば30~60mmである。これに対し、無篩目領域R2には篩目が設けられていない。
【0143】
中継シート15は、受送シート11と同様に無篩目のシートであり、細目の篩シート12と粗目の篩シート14との間に位置する。
【0144】
受具30Cは、本実施形態では、製造対象の建材の意匠面に対応する所定の凹凸形状を内表面(建材原料Mを受ける側の表面)に有する型板である。
図10には、受具30Cの一例について、受具幅方向W'の断面が示されている。受具30Cの他の構成は、上述の受具30と同様である。
【0145】
以上のような構成を具備する建材製造装置X3の稼動時には、原料貯留部(図示略)から建材原料Mが原料供給部20に連続的に供給され、この建材原料Mは、ベルトコンベア21によって篩部10Bの受送シート11の上方まで例えば一定速度で送られる。ベルトコンベア21上において、建材原料Mは、回転動する均し部22ないしそのすき歯による均し措置を受ける。
【0146】
そして、篩部10Bの有する一連のシートのそれぞれが波動運動している状態で、この篩部10Bの受送シート11に向けて原料供給部20から建材原料Mが投下される(原料供給部20からの原料投下経路を破線矢印で示す)。
【0147】
原料供給部20から供給される建材原料Mは、建材製造装置X1に関して上述したのと同様に、波動運動する受送シート11による解砕および分散化を受ける。これにより、篩部10Bの各篩シートの目詰まりは抑制される傾向にある。
【0148】
建材製造装置X3の稼動時には、波動運動する受送シート11での解砕と分散化を経た建材原料Mは、波動運動状態にある他のシートとの衝突による解砕作用を受けつつ一連のシート上を下る過程で、各篩シートでの篩分けを受ける。そして、篩部10Bでの篩分けで生ずる建材原料Mのうち、篩シート12の篩目を通過した分と、篩シート14の篩目を通過した分と、篩シート13Bの篩目を通過した分とが受具30C上に順次に堆積されて、原料マットが形成される(篩部10Bからの原料落下経路を破線矢印で示す)。具体的には次のとおりである。
【0149】
まず、ベルトコンベア31によって矢印d1方向に運ばれて篩部10の篩シート12の直下を通過中の受具30Cの上に、建材原料Mのうち篩シート12の篩目を通過した分の所定量が堆積される。
【0150】
篩シート12では、上述のように、シート幅方向Wに同サイズの複数の篩目が等ピッチで並ぶ。このような篩シート12の篩目を通過した建材原料Mは、受具30C上に略均等に堆積する。これにより、例えば
図10(a)に示すように、シート幅方向Wに対応する受具幅方向W'において厚さが略均一な層L7(第1層)が受具30C上に形成される。層L7は、篩シート12の篩目を通過した細かい建材原料Mが堆積してなる。
【0151】
篩シート12の篩目を通過しなかった建材原料Mは、篩シート14に至る前に、篩目が無くて原料接触面積の大きな中継シート15との衝突による解砕と分散化を経る。篩シート14に至る前に、建材原料Mの解砕が進むほど、また建材原料Mが分散されるほど、篩シート14とその下位の篩シート13Bの目詰まりは抑制される傾向にある。
【0152】
次に、ベルトコンベア31によって矢印d1方向に運ばれて篩部10Bの篩シート14の直下を通過中の受具30Cにおける層L7の上に、建材原料Mのうち篩シート14の篩目を通過した分の所定量が堆積される。
【0153】
篩シート14では、上述のように、篩シート12の篩目より大きい複数の同サイズの篩目がシート幅方向Wに等ピッチで並ぶ。このような篩シート14の篩目を通過した建材原料Mは、層L7上において略均等に堆積する。これにより、例えば
図10(b)に示すように、受具幅方向W'において厚さが略均一な層L8(第3層)が層L7上に形成される。層L8は、篩シート14の篩目を通過した建材原料M(篩シート12通過分より粗い、篩シート14通過分)が堆積してなる。
【0154】
次に、ベルトコンベア31によって矢印d1方向に運ばれて篩部10Bの篩シート13Bの直下を通過中の受具30Cにおける層L8の上に、建材原料Mのうち篩シート13Bの篩目領域R1における篩目を通過した分の所定量が堆積される。
【0155】
このとき、例えば
図10(c)に示すように、篩シート13Bの篩目領域R1の下方では層L8上に建材原料Mが堆積して層L9(第2層)が形成される一方で、篩シート13Bの無篩目領域R2の下方では建材原料Mが実質的に堆積しない。層L9は、篩シート13Bの篩目領域R1の篩目を通過した建材原料M(篩シート14通過分より粗い)が堆積してなる。
【0156】
以上のようにして形成される原料マットは、上述の層L7,L8,L9を含む。層L7は、受具幅方向W'において厚さの均一性が高く、相対的に細かい建材原料M(篩シート12通過分)よりなる。層L8は、受具幅方向W'において厚さの均一性が高く、篩シート12通過分より粗い建材原料Mよりなる。層L9は、建材原料堆積量調整層としても機能する要素であり、篩シート14通過分より粗い建材原料Mよりなる。建材原料堆積量調整層としても機能する層L9を層L7,L8とともに有して受具30C上に形成される原料マットは、建材原料堆積量について受具幅方向W'において変化付けされたものとなる。
【0157】
このように、建材製造装置X3は、建材原料堆積量について受具幅方向W'において変化付けしつつ、上述の層L7,L8,L9を有する原料マットを形成するのに適する。建材製造装置X3は、建材原料Mを機械的に分級しつつ、建材原料Mを篩分け処理する篩部10Bの下で建材原料Mを受ける受具30Cの上の建材原料堆積量について、受具幅方向W'において変化付けするのに適するのである。
【0158】
こうして形成される原料マット、即ち、層L7,L8,L9の積層体は、次に、加熱プレス工程に付される。層L7,L8,L9の積層体が、加熱プレス工程を経ることにより、或いは加熱プレス工程とその後のオートクレーブ養生を経ることにより、各層から形成される硬化層の積層構造を有する建材が製造される。
【0159】
相対的に細かい建材原料Mの堆積物である層L7から形成される硬化層は、より緻密な組織を有しているので高い耐水性を得るのに適し、従って、建材の表層をなすのに適する。相対的に粗い建材原料Mの堆積物である層L8,L9から形成される硬化層は、より低密度で軽量な組織を有しているので高いクッション性を得るのに適し、従って、建材の芯層をなすのに適する。
【0160】
また、上述のような層L7,L8,L9を含む原料マットからは、その加熱プレスを経ることにより、建材意匠面に凹部が形成される箇所と凸部が形成される箇所とで構成組織の密度差が抑制された建材、即ち密度にムラの少ない建材を、製造することできる。すなわち、建材製造装置X3は、意匠面に凹凸形状を有する建材を、密度のムラを抑制しつつ製造するのに適するのである。
【0161】
建材製造装置X1において受具30の代わりに受具30A(建材原料Mを受ける側の表面に凸形状を有しない型板)を用いて当該受具30A上に層L1,L2,L3を形成したように、建材製造装置X3においては、上述の受具30Cの代わりに、建材原料Mを受ける側の表面に凸形状を有しない型板である受具を用いて、当該受具上に上述の層L7,L8,L9を形成してもよい。その場合、建材製造装置X1で受具30Aを用いる変形例に関して上述したのと同様に、厚さが確保されつつ高密度である端部を受具幅方向W'の両端に有する建材を製造することができる。
【0162】
図11は、本発明の第4の実施形態に係る建材製造装置X4の概略構成を表す。建材製造装置X4は、篩部10Cと、上述の原料供給部20と、受具30Dとを備え、篩部10および受具30に代えて篩部10Cおよび受具30Dを備える点で、第1の実施形態である建材製造装置X1と異なる。
【0163】
篩部10Cは、装置稼動時にそれぞれが波動運動可能であり且つ傾斜して当該傾斜の方向に並ぶ一連のシートと、当該一連のシートが組み付けられて各シートの波動運動を実現するための上述の本体構造部10'とを有する。
【0164】
篩部10Cは、
図2を参照して上述した配列の一連のシートに代えて、
図12に示すような配列の一連のシートを有する点で、篩部10と異なる。篩部10Cの他の構成は、上述の篩部10と同様である。
【0165】
篩部10Cにおける一連のシートでは、その上位端側から、上述の無篩目の受送シート11、上述の細目の篩シート12(第1篩シート)、篩シート13C(第2篩シート)、上述の中継シート15、および上述の篩シート14(第3篩シート)がこの順で並ぶ。第3篩シートである篩シート14は、第1篩シートである篩シート12と第2篩シートである篩シート13Cより下位に位置する。
【0166】
篩シート13Cでは、2以上の異なるサイズの複数の篩目がシート幅方向Wに並ぶ。本実施形態では、相対的に大きな複数の篩目(第1篩目)は、後述の受具30Dの内表面の凹部に対応する箇所に位置し、相対的に小さな複数の篩目(第2篩目)は、受具30Dの内表面の凸部に対応する箇所に位置する。また、篩シート13Cの篩目は、篩シート12の篩目以上のサイズを有する。具体的には、篩シート13Cの第1篩目のサイズ即ち目開きサイズは、篩シート12の篩目のサイズより大きい限りにおいて、例えば10~40mmであり、篩シート13Cの第2篩目のサイズ即ち目開きサイズは、そのような第1篩目のサイズ即ち目開きサイズより大きい限りにおいて例えば15~45mmである。
【0167】
受具30Dは、本実施形態では、製造対象の建材の意匠面に対応する所定の凹凸形状を内表面(建材原料Mを受ける側の表面)に有する型板である。
図13には、受具30Dの一例について、受具幅方向W'の断面が示されている。受具30Dの他の構成は、上述の受具30と同様である。
【0168】
以上のような構成を具備する建材製造装置X4の稼動時には、原料貯留部(図示略)から建材原料Mが原料供給部20に連続的に供給され、この建材原料Mは、ベルトコンベア21によって篩部10Cの受送シート11の上方まで例えば一定速度で送られる。ベルトコンベア21上において、建材原料Mは、回転動する均し部22ないしそのすき歯による均し措置を受ける。
【0169】
そして、篩部10Cの有する一連のシートのそれぞれが波動運動している状態で、この篩部10Cの受送シート11に向けて原料供給部20から建材原料Mが投下される(原料供給部20からの原料投下経路を破線矢印で示す)。
【0170】
原料供給部20から供給される建材原料Mは、建材製造装置X1に関して上述したのと同様に、波動運動する受送シート11による解砕および分散化を受ける。これにより、篩部10Cの各篩シートの目詰まりは抑制される傾向にある。
【0171】
建材製造装置X4の稼動時には、波動運動する受送シート11での解砕と分散化を経た建材原料Mは、波動運動状態にある他のシートとの衝突による解砕作用を受けつつ一連のシート上を下る過程で、各篩シートでの篩分けを受ける。そして、篩部10Cでの篩分けで生ずる建材原料Mのうち、篩シート12の篩目を通過した分と、篩シート13Cの篩目を通過した分と、篩シート14の篩目を通過した分とが受具30D上に順次に堆積されて、原料マットが形成される(篩部10Cからの原料落下経路を破線矢印で示す)。具体的には次のとおりである。
【0172】
まず、ベルトコンベア31によって矢印d1方向に運ばれて篩部10の篩シート12の直下を通過中の受具30Dの上に、建材原料Mのうち篩シート12の篩目を通過した分の所定量が堆積される。
【0173】
篩シート12では、上述のように、シート幅方向Wに同サイズの複数の篩目が等ピッチで並ぶ。このような篩シート12の篩目を通過した建材原料Mは、受具30D上に略均等に堆積する。これにより、例えば
図13(a)に示すように、シート幅方向Wに対応する受具幅方向W'において厚さが略均一な層L10(第1層)が受具30D上に形成される。層L10は、篩シート12の篩目を通過した細かい建材原料M(篩シート12通過分)が堆積してなる。
【0174】
次に、ベルトコンベア31によって矢印d1方向に運ばれて篩部10Cの篩シート13Cの直下を通過中の受具30Dにおける層L11の上に、建材原料Mのうち篩シート13Cの篩目を通過した分の所定量が堆積される。これにより、例えば
図13(b)に示すように、層L10上に層L11が形成される。層L11は、篩シート13Cの篩目を通過した建材原料M(篩シート12通過分より粗い)が堆積してなる。
【0175】
このとき、層L10上に形成される層L11をなす建材原料は、篩シート13Cにおける より大きな篩目の下方では堆積量がより多く、篩シート13Cにおける より小さな篩目の下方では堆積量がより少ない。
【0176】
篩シート13Cの篩目を通過しなかった建材原料Mは、篩シート14に至る前に、篩目が無くて原料接触面積の大きな中継シート15との衝突による解砕と分散化を経る。篩シート14に至る前に、建材原料Mの解砕が進むほど、また建材原料Mが分散されるほど、篩シート14の目詰まりは抑制される傾向にある。篩シート13Cの篩目を通過せずに篩シート13C上を下る建材原料Mに、シート幅方向Wにおいて量的なムラが生じる場合であっても、その建材原料Mが中継シート15上を通過する過程で当該量的ムラは低減・解消される。
【0177】
次に、ベルトコンベア31によって矢印d1方向に運ばれて篩部10Cの篩シート14の直下を通過中の受具30Dにおける層L11の上に、建材原料Mのうち篩シート14の篩目を通過した分の所定量が堆積される。
【0178】
篩シート14では、上述のように、篩シート12の篩目より大きい複数の同サイズの篩目がシート幅方向Wに等ピッチで並ぶ。このような篩シート14の篩目を通過した建材原料Mは、層L11上において略均等に堆積する。これにより、例えば
図13(c)に示すように、受具幅方向W'において厚さが略均一な層L12(第3層)が層L11上に形成される。層L12は、篩シート14の篩目を通過した建材原料M(篩シート13C通過分より粗い)が堆積してなる。
【0179】
以上のようにして形成される原料マットは、上述の層L10,L11,L12を含む。層L10は、受具幅方向W'において厚さの均一性が高く、相対的に細かい建材原料M(篩シート12通過分)よりなる。層L11は、建材原料堆積量調整層としても機能する要素であり、篩シート12通過分より粗い建材原料Mよりなる。層L12は、受具幅方向W'において厚さの均一性が高く、篩シート13C通過分より粗い建材原料Mよりなる。建材原料堆積量調整層としても機能する層L11を層L10,L12とともに有して受具30D上に形成される原料マットは、建材原料堆積量について受具幅方向W'において変化付けされたものとなる。
【0180】
このように、建材製造装置X4は、建材原料堆積量について受具幅方向W'において変化付けしつつ、上述の層L10,L11,L12を有する原料マットを形成するのに適する。建材製造装置X4は、建材原料Mを機械的に分級しつつ、建材原料Mを篩分け処理する篩部10Cの下で建材原料Mを受ける受具30Dの上の建材原料堆積量について、受具幅方向W'において変化付けするのに適するのである。
【0181】
こうして形成される原料マット、即ち、層L10,L11,L12の積層体は、次に、加熱プレス工程に付される。層L10,L11,L12の積層体が、加熱プレス工程を経ることにより、或いは加熱プレス工程とその後のオートクレーブ養生を経ることにより、各層から形成される硬化層の積層構造を有する建材が製造される。
【0182】
相対的に細かい建材原料Mの堆積物である層L10から形成される硬化層は、より緻密な組織を有しているので高い耐水性を得るのに適し、従って、建材の表層をなすのに適する。相対的に粗い建材原料Mの堆積物である層L11,L12から形成される硬化層は、より低密度で軽量な組織を有しているので高いクッション性を得るのに適し、従って、建材の芯層をなすのに適する。
【0183】
また、上述のような層L10,L11,L12を含む原料マットからは、その加熱プレスを経ることにより、建材意匠面に凹部が形成される箇所と凸部が形成される箇所とで構成組織の密度差が抑制された建材、即ち密度にムラの少ない建材を、製造することできる。すなわち、建材製造装置X4は、意匠面に凹凸形状を有する建材を、密度のムラを抑制しつつ製造するのに適するのである。
【0184】
建材製造装置X4は、
図14に示すように、篩シート13D(第2篩シート)を篩シート13Cの代わりに一連のシートに含むとともに、
図15に示すような受具30Eを受具30Dの代わりに備えてもよい。
図15は、受具30Dの受具幅方向W'の断面模式図である。
【0185】
篩シート13Dでは、2以上の異なるサイズの複数の篩目がシート幅方向Wに並ぶ。篩シート13Dは、シート幅方向Wにおいて、受具30Eの内表面の より深い凹部に対応する篩目ほどそのサイズが大きい篩目パターンを有する。このような篩シート13Dの篩目は、篩シート12の篩目以上のサイズを有する。具体的には、篩シート13Dの篩目のサイズ即ち目開きサイズは、篩シート12の篩目のサイズより大きい限りにおいて、例えば10~45mmである。
【0186】
篩シート13Cおよび受具30Dの代わりにこのような篩シート13Dおよび受具30Eを備える建材製造装置X4を使用して形成される原料マットは、
図16に示すように、層L10,L11,L13を含む。
【0187】
層L10は、上述のように、篩シート12の篩目を通過した細かい建材原料M(篩シート12通過分)が堆積してなり、受具幅方向W'において厚さの均一性が高い。
【0188】
層L13は、篩シート13Dの篩目を通過した建材原料M(篩シート12通過分より粗い)が堆積してなる。層L13をなす建材原料は、篩シート13Dにおける より大きな篩目の下方では堆積量がより多く、篩シート13Dにおける より小さな篩目の下方では堆積量がより少ない。このような層L13は、原料マットにおいて建材原料堆積量調整層としても機能する要素である。
【0189】
層L11は、篩シート14の篩目を通過した建材原料M(篩シート13D通過分より粗い)が堆積してなり、受具幅方向W'において厚さの均一性が高い。
【0190】
建材原料堆積量調整層としても機能する層L13を層L10,L11とともに有して受具30E上に形成される原料マットは、建材原料堆積量について受具幅方向W'において変化付けされたものとなる。
【0191】
このような層L10,L13,L11を含む原料マットからは、その加熱プレスを経ることにより、建材意匠面に凹部が形成される箇所と凸部が形成される箇所とで構成組織の密度差が抑制された建材、即ち密度にムラの少ない建材を、製造することできる。すなわち、建材製造装置X4の以上のような変形例(篩シート13Dを含む
図14に示す一連のシートおよび受具30Eが用いられる変形例)も、建材製造装置X4と同様に、意匠面に凹凸形状を有する建材を、密度のムラを抑制しつつ製造するのに適する。
【0192】
図17は、本発明の第5の実施形態に係る建材製造装置X5の概略構成を表す。建材製造装置X5は、ユニットU1と、ユニットU2と、受具30とを備える。
【0193】
ユニットU1,U2は、それぞれ、篩部10および原料供給部20を備える。篩部10は、上述のように、装置稼動時にそれぞれが波動運動可能であり且つ傾斜して当該傾斜の方向に並ぶ一連のシートと、当該一連のシートが組み付けられて各シートの波動運動を実現するための本体構造部10'とを有する。
【0194】
本実施形態では、ユニットU1の篩部10における一連のシートの配列方向Dの延長領域上に、ユニットU2の篩部10における一連のシートは並ぶ。また、ユニットU1の篩部10の一連のシートにおいてユニットU2に近いシートほど下位に位置し、且つユニットU2の篩部10の一連のシートにおいてユニットU1に近いシートほど下位に位置する。
【0195】
篩部10における一連のシートには、
図2に示す上述のように、受送シート11、篩シート12(第1篩シート)、篩シート13(第2篩シート)、篩シート14(第3篩シート)、および中継シート15が含まれる。建材製造装置X5ないしユニットU1,U2におけるシート配列構成を
図18に示す。
【0196】
本実施形態において、受具30は、二連のユニットU1,U2の篩部10,10を経た所定の建材原料Mを受容するためのものであり、受具30の移動ラインをなすベルトコンベア31A上に載置される。ベルトコンベア31Aが稼動することによって受具30は移動し、ユニットU1の篩部10を経た建材原料Mを受容可能な領域と、ユニットU2の篩部10を経た建材原料Mを受容可能な領域とにわたる領域において、受具30は移動可能に構成されている。
【0197】
受具30は、本実施形態では、製造対象の建材の意匠面に対応する凹凸形状を内表面(建材原料Mを受ける側の表面)に有する型板である。
図19には、受具30の一例について、受具幅方向W'の断面が示されている。
【0198】
このような建材製造装置X5の稼動時には、ユニットU1,U2のそれぞれにおいて、原料貯留部(図示略)から建材原料Mが原料供給部20に連続的に供給され、この建材原料Mは、ベルトコンベア21によって篩部10の受送シート11の上方まで例えば一定速度で送られる。各ベルトコンベア21上において、建材原料Mは、回転動する均し部22ないしそのすき歯による均し措置を受ける。
【0199】
そして、各ユニットにおいて、篩部10の有する一連のシートのそれぞれが波動運動している状態で、篩部10の受送シート11に向けて原料供給部20から建材原料Mが投下される(原料供給部20からの原料投下経路を破線矢印で示す)。
【0200】
各ユニットにおいて、原料供給部20から供給される建材原料Mは、建材製造装置X1に関して上述したのと同様に、篩部10において波動運動する受送シート11による解砕および分散化を受ける。これにより、篩部10の各篩シートの目詰まりは抑制される傾向にある。
【0201】
以上のような構成を具備する建材製造装置X5の稼動時には、ユニットU1の篩部10での篩分けで生ずる建材原料Mの篩シート篩目通過分から原料マットとなる層を形成することが可能であり、また、ユニットU2の篩部10での篩分けで生ずる建材原料Mの篩シート篩目通過分から原料マットとなる層を形成することが可能である(各篩部10からの原料落下経路を破線矢印で示す)。具体的には次のとおりである。
【0202】
まず、ベルトコンベア31Aによって矢印d1方向に運ばれてユニットU1の篩部10の篩シート12の直下を通過中の受具30の上に、建材原料Mのうち当該篩シート12の篩目を通過した分の所定量が堆積される。
【0203】
篩シート12では、上述のように、シート幅方向Wに同サイズの複数の篩目が等ピッチで並ぶ。このような篩シート12の篩目を通過した建材原料Mは、受具30上に略均等に堆積する。これにより、例えば
図19(a)に示すように、シート幅方向Wに対応する受具幅方向W'において厚さが略均一な層L14(第1層)が受具30上に形成される。層L14は、篩シート12の篩目を通過した細かい建材原料M(篩シート12通過分)が堆積してなる。
【0204】
次に、ベルトコンベア31Aによって矢印d1方向に運ばれてユニットU1の篩部10の篩シート13の直下を通過中の受具30における層L14の上に、建材原料Mのうち当該篩シート13の篩目を通過した分の所定量が堆積される。
【0205】
このとき、例えば
図19(b)に示すように、篩シート13の篩目領域R1の下方では層L14上に建材原料Mが堆積して層L15(第2層)が形成される一方で、篩シート13の無篩目領域R2の下方では建材原料Mが実質的に堆積しない。層L15は、篩シート13の篩目領域R1の篩目を通過した建材原料M(篩シート12通過分より粗い)が堆積してなる。
【0206】
篩シート13の篩目領域R1の篩目を通過しなかった建材原料Mは、篩シート14に至る前に、篩目が無くて原料接触面積の大きな中継シート15との衝突による上述の解砕と分散化を経る。
【0207】
次に、ベルトコンベア31Aによって矢印d1方向に運ばれてユニットU1の篩部10の篩シート14の直下を通過中の受具30における層L14,L15の上に、建材原料Mのうち当該篩シート14の篩目を通過した分の所定量が堆積される。
【0208】
篩シート14では、上述のように、篩シート12の篩目より大きい複数の同サイズの篩目がシート幅方向Wに等ピッチで並ぶ。このような篩シート14の篩目を通過した建材原料Mは、層L14,L15上において略均等に堆積する。これにより、例えば
図19(c)に示すように、受具幅方向W'において厚さが略均一な層L16(第3層)が層L14,L15上に形成される。層L16は、篩シート14の篩目を通過した建材原料M(篩シート13篩目領域通過分より粗い)が堆積してなる。
【0209】
次に、ベルトコンベア31Aによって矢印d1方向に運ばれてユニットU2の篩部10の篩シート14の直下を通過中の受具30における層L16上に、ユニットU2における中継シート15上での解砕・分散化を経て篩シート14に至った建材原料Mのうち当該篩シート14の篩目を通過した分の所定量が、堆積される。これにより、例えば
図19(d)に示すように、受具幅方向W'において厚さが略均一な層L17(第3層)が層L16上に形成される。層L17は、ユニットU2における篩シート14の篩目を通過した建材原料M(篩シート14通過分)が堆積してなる。
【0210】
次に、ベルトコンベア31Aによって矢印d1方向に運ばれてユニットU2の篩部10の篩シート13の直下を通過中の受具30における層L17上に、建材原料Mのうち当該篩シート13の篩目を通過した分の所定量が堆積される。このとき、例えば
図19(e)に示すように、ユニットU2における篩シート13の篩目領域R1の下方では層L17上に建材原料Mが堆積して層L18(第2層)が形成される一方で、当該篩シート13の無篩目領域R2の下方では建材原料Mが実質的に堆積しない。層L18は、ユニットU2における篩シート13の篩目領域R1の篩目を通過した建材原料M(篩シート14通過分より細かい)が堆積してなる。
【0211】
次に、ベルトコンベア31Aによって矢印d1方向に運ばれてユニットU2の篩部10の篩シート12の直下を通過中の受具30の上に、建材原料Mのうち当該篩シート12の篩目を通過した分の所定量が堆積される。これにより、例えば
図19(f)に示すように、シート幅方向Wに対応する受具幅方向W'において厚さが略均一な層L19(第1層)が層L17,L18上に形成される。層L19は、ユニットU2における篩シート12の篩目を通過した建材原料M(篩シート13篩目領域通過分より細かい)が堆積してなる。
【0212】
以上のようにして形成される原料マットは、上述の層L14~L19を含む。層L14,L19は、受具幅方向W'において厚さの均一性が高く、相対的に細かい建材原料M(篩シート12通過分)よりなる。層L15,L18は、建材原料堆積量調整層としても機能する要素であり、篩シート12通過分より粗い建材原料Mよりなる。層L16,L17は、受具幅方向W'において厚さの均一性が高く、篩シート13篩目領域通過分より粗い建材原料Mよりなる。建材原料堆積量調整層としても機能する層L15,L18を層L14,L16,L17,L19とともに有して受具30上に形成される原料マットは、建材原料堆積量について受具幅方向W'において変化付けされたものとなる。
【0213】
このように、建材製造装置X5は、建材原料堆積量について受具幅方向W'において変化付けしつつ、上述の層L14~L19を有する原料マットを形成するのに適する。建材製造装置X5は、建材原料Mを機械的に分級しつつ、建材原料Mを篩分け処理する篩部10,10の下で建材原料Mを受ける受具30の上の建材原料堆積量について、受具幅方向W'において変化付けするのに適するのである。
【0214】
こうして形成される原料マット、即ち、層L14~L19の積層体は、次に、加熱プレス工程に付される。層L14~L19の積層体が、加熱プレス工程を経ることにより、或いは加熱プレス工程とその後のオートクレーブ養生を経ることにより、各層から形成される硬化層の積層構造を有する建材が製造される。
【0215】
相対的に細かい建材原料Mの堆積物である層L14,L19から形成される硬化層は、より緻密な組織を有しているので高い耐水性を得るのに適し、従って、建材の表層をなすのに適する。相対的に粗い建材原料Mの堆積物である層L15~L18から形成される硬化層は、より低密度で軽量な組織を有しているので高いクッション性を得るのに適し、従って、建材の芯層をなすのに適する。
【0216】
また、上述のような層L14~L19を含む原料マットからは、その加熱プレスを経ることにより、建材意匠面に凹部が形成される箇所と凸部が形成される箇所とで構成組織の密度差が抑制された建材、即ち密度にムラの少ない建材を、製造することできる。すなわち、建材製造装置X5は、意匠面に凹凸形状を有する建材を、密度のムラを抑制しつつ製造するのに適するのである。
【0217】
図20は、本発明の第6の実施形態に係る建材製造装置X6の概略構成を表す。建材製造装置X6は、ユニットU1と、ユニットU2と、受具30とを備える。建材製造装置X6のユニットU1は、篩部10Dと、原料供給部20と、原料供給部20Aとを備え、篩部10に代えて篩部10Dを備え且つ原料供給部20Aを更に備える点で、建材製造装置X5のユニットU1と異なる。建材製造装置X6のユニットU2および受具30は、建材製造装置X5のユニットU2および受具30と同一の構成を有する。
【0218】
篩部10Dは、装置稼動時にそれぞれが波動運動可能であり且つ傾斜して当該傾斜の方向に並ぶ一連のシートと、当該一連のシートが組み付けられて各シートの波動運動を実現するための上述の本体構造部10'とを有する。ユニットU1の篩部10Dは、
図2を参照して上述した配列の一連のシートに代えて、
図21に示す配列の一連のシートを有する点で、上述の篩部10と異なる。篩部10Dの他の構成は、上述の篩部10と同様である。
【0219】
篩部10Dにおける一連のシートでは、その上位端側から、上述の無篩目の受送シート11、上述の細目の篩シート12(第1篩シート)、中継シート15、上述の粗目の篩シート14(第3篩シート)、および、上述の粗目の篩シート14(第3篩シート)がこの順で並ぶ。篩部10Dにおいて、受送シート11と同様に無篩目のシートである中継シート15は、細目の篩シート12と粗目の篩シート14との間に位置する。
【0220】
原料供給部20Aは、本実施形態では、ユニットU1において篩部10D内の中継シート15に向けて追加の建材原料Mを投下して篩部10Dに原料供給するためのものであり、ベルトコンベア21Aおよび均し部22Aを有する。本実施形態では、原料供給部20Aから供給される建材原料Mは、原料供給部20から供給される建材原料Mよりも粉体サイズが大きくて粗い。原料供給部20Aから供給される建材原料Mと原料供給部20から供給される建材原料Mとは、同じ組成を有してもよいし、異なる組成を有してもよい。
【0221】
ベルトコンベア21Aは、ユニットU1における篩部10Dの中継シート15の上方まで建材原料Mを送るためのものである。均し部22Aは、ベルトコンベア21A上を送られる建材原料Mを均すための回転構造部であり、その回転周端に複数のすき歯が立設されている。本実施形態では、均し部22Aの回転周端がベルトコンベア21Aに対向し、且つベルトコンベア21Aによる建材原料Mの送り方向に対して均し部22Aの回転軸心が直交するように、均し部22は配設されている。
【0222】
建材製造装置X6の大型化や、建材製造装置X6を含む設備全体の大規模化を、抑制・回避する観点からは、原料供給部20Aは、ユニットU1の篩部10Dにおける一連のシートの配列方向の水平成分に沿ってベルトコンベア21Aが延びるように篩部10Dの上方に配置されるのが好ましい。
【0223】
本実施形態では、ユニットU1の篩部10Dにおける中継シート15は、
図21に示すシート幅方向W(シートの配列方向Dに直交する方向)において、原料供給部20Aから投下される建材原料Mの投下領域と同じ範囲に広がるか、或いは当該投下領域を超えて広がる。
【0224】
このような建材製造装置X6の稼動時には、各ユニットにおいて、原料貯留部(図示略)から建材原料Mが原料供給部20に連続的に供給され、この建材原料Mは、ベルトコンベア21によって篩部(篩部10D,篩部10)の受送シート11の上方まで例えば一定速度で送られる。ベルトコンベア21上において、建材原料Mは、回転動する均し部22ないしそのすき歯による均し措置を受ける。そして、各篩部の有する一連のシートのそれぞれが波動運動している状態で、篩部の受送シート11に向けて原料供給部20から建材原料Mが投下される(各原料供給部20からの原料投下経路を破線矢印で示す)。
【0225】
各ユニットにおいて、原料供給部20から供給される建材原料Mは、建材製造装置X1に関して上述したのと同様に、各ユニットの篩部において波動運動する受送シート11による解砕および分散化を受ける。また、ユニットU1では、篩部10Dの細目の篩シート12での篩分け処理にて篩シート12の篩目を通過しない建材原料Mは、建材製造装置X2に関して上述したのと同様に、波動運動する中継シート15による解砕および分散化を受ける。これらにより、各ユニットにおける各篩シートの目詰まりは抑制される傾向にある。
【0226】
また、建材製造装置X6の稼動時には、別の原料貯留部(図示略)から追加の建材原料MがユニットU1の原料供給部20Aに連続的に供給され、この建材原料Mは、ベルトコンベア21Aによって当該篩部10Dの中継シート15の上方まで例えば一定速度で送られる。ベルトコンベア21A上において、建材原料Mは、回転動する均し部22Aないしそのすき歯による均し措置を受ける。
【0227】
そして、ユニットU1における篩部10Dの有する一連のシートのそれぞれが波動運動している状態で、この篩部10Dの中継シート15に向けて原料供給部20Aから追加の建材原料Mが投下される(原料供給部20Aからの原料投下経路を破線矢印で示す)。ユニットU1において、原料供給部20Aから篩部10Dに投下された建材原料Mは、原料供給部20から篩部10Dに投下された後に篩シート12の篩目を通過しない建材原料Mに、中継シート15上で追加される。
【0228】
以上のような構成を具備する建材製造装置X6の稼動時には、ユニットU1の篩部10Dでの篩分けで生ずる建材原料Mの篩シート篩目通過分から原料マットとなる層を形成することが可能であり、また、ユニットU2の篩部10での篩分けで生ずる建材原料Mの篩シート篩目通過分から原料マットとなる層を形成することが可能である(各篩部からの原料落下経路を破線矢印で示す)。具体的には次のとおりである。
【0229】
まず、ベルトコンベア31Aによって矢印d1方向に運ばれてユニットU1の篩部10Dの篩シート12の直下を通過中の受具30の上に、建材原料Mのうち当該篩シート12の篩目を通過した分の所定量が堆積される。
【0230】
篩シート12では、上述のように、シート幅方向Wに同サイズの複数の篩目が等ピッチで並ぶ。このような篩シート12の篩目を通過した建材原料Mは、受具30上に略均等に堆積する。これにより、例えば
図22(a)に示すように、シート幅方向Wに対応する受具幅方向W'において厚さが略均一な層L21(第1層)が受具30上に形成される。層L21は、篩シート12の篩目を通過した細かい建材原料M(篩シート12通過分)が堆積してなる。
【0231】
次に、ベルトコンベア31Aによって矢印d1方向に運ばれてユニットU1の篩部10Dの篩シート14(本実施形態では、連続する2枚の篩シート14)の直下を通過中の受具30における層L15の上に、建材原料Mのうち当該篩シート14の篩目を通過した分の所定量が堆積される。
【0232】
篩シート14では、上述のように、篩シート12の篩目より大きい複数の同サイズの篩目がシート幅方向Wに等ピッチで並ぶ。このような篩シート14の篩目を通過した建材原料Mは、層L21上において略均等に堆積する。これにより、例えば
図22(b)に示すように、受具幅方向W'において厚さが略均一な層L22(第3層)が層L21上に形成される。層L22は、篩シート14の篩目を通過した建材原料M(篩シート12通過分より粗い)が堆積してなる。
【0233】
次に、ベルトコンベア31Aによって矢印d1方向に運ばれてユニットU2の篩部10の篩シート14の直下を通過中の受具30における層L21上に、ユニットU2における中継シート15上での解砕・分散化を経て篩シート14に至った建材原料Mのうち当該篩シート14の篩目を通過した分の所定量が堆積される。これにより、例えば
図22(c)に示すように、受具幅方向W'において厚さが略均一な層L23(第3層)が層L22上に形成される。層L22は、ユニットU2における篩シート14の篩目を通過した建材原料M(篩シート14通過分)が堆積してなる。
【0234】
次に、ベルトコンベア31Aによって矢印d1方向に運ばれてユニットU2の篩部10の篩シート13の直下を通過中の受具30における層L23上に、建材原料Mのうち当該篩シート13の篩目を通過した分の所定量が堆積される。このとき、例えば
図22(d)に示すように、ユニットU2における篩シート13の篩目領域R1の下方では層L23上に建材原料Mが堆積して層L24(第2層)が形成される一方で、当該篩シート13の無篩目領域R2の下方では建材原料Mが実質的に堆積しない。層L24は、ユニットU2における篩シート13の篩目領域R1の篩目を通過した建材原料M(篩シート14通過分より細かい)が堆積してなる。
【0235】
次に、ベルトコンベア31Aによって矢印d1方向に運ばれてユニットU2の篩部10の篩シート12の直下を通過中の受具30の上に、建材原料Mのうち当該篩シート12の篩目を通過した分の所定量が堆積される。これにより、例えば
図22(e)に示すように、シート幅方向Wに対応する受具幅方向W'において厚さが略均一な層L25(第1層)が層L23,L24上に形成される。層L25は、ユニットU2における篩シート12の篩目を通過した細かい建材原料M(篩シート13篩目領域通過分より細かい)が堆積してなる。
【0236】
以上のようにして形成される原料マットは、上述の層L21~L25を含む。層L21,L25は、受具幅方向W'において厚さの均一性が高く、相対的に細かい建材原料M(篩シート12通過分)よりなる。層L22,L23は、受具幅方向W'において厚さの均一性が高く、篩シート13篩目領域通過分より粗い建材原料Mよりなる。層L24は、建材原料堆積量調整層としても機能する要素であり、篩シート12通過分より粗い建材原料Mよりなる。建材原料堆積量調整層としても機能する層L24を層L21,L22,L23,L25とともに有して受具30上に形成される原料マットは、建材原料堆積量について受具幅方向W'において変化付けされたものとなる。
【0237】
このように、建材製造装置X6は、建材原料堆積量について受具幅方向W'において変化付けしつつ、上述の層L21~L25を有する原料マットを形成するのに適する。建材製造装置X6は、建材原料Mを機械的に分級しつつ、建材原料Mを篩分け処理する篩部10D,10の下で建材原料Mを受ける受具30の上の建材原料堆積量について、受具幅方向W'において変化付けするのに適するのである。
【0238】
こうして形成される原料マット、即ち、層L21~L25の積層体は、次に、加熱プレス工程に付される。層L21~L25の積層体が、加熱プレス工程を経ることにより、或いは加熱プレス工程とその後のオートクレーブ養生を経ることにより、各層から形成される硬化層の積層構造を有する建材が製造される。
【0239】
相対的に細かい建材原料Mの堆積物である層L21,L25から形成される硬化層は、より緻密な組織を有しているので高い耐水性を得るのに適し、従って、建材の表層をなすのに適する。相対的に粗い建材原料Mの堆積物である層L22~L24から形成される硬化層は、より低密度で軽量な組織を有しているので高いクッション性を得るのに適し、従って、建材の芯層をなすのに適する。
【0240】
また、上述のような層L21~L25を含む原料マットからは、その加熱プレスを経ることにより、建材意匠面に凹部が形成される箇所と凸部が形成される箇所とで構成組織の密度差が抑制された建材、即ち密度にムラの少ない建材を、製造することできる。すなわち、建材製造装置X6は、意匠面に凹凸形状を有する建材を、密度のムラを抑制しつつ製造するのに適するのである。
【符号の説明】
【0241】
X1~X6 建材製造装置
U1,U2 ユニット
10,10A,10B,10C,10D 篩部
11 受送シート
12,13,14 篩シート
R1 篩目領域
R2 無篩目領域
15 中継シート
D シート配列方向
W シート幅方向
20,20A 原料供給部
21,21A ベルトコンベア
22,22A 均し部
30,30A,30B,30C,30D,30E 受具
W’ 受具幅方向
31,31A 搬送ライン