IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ポーラ化成工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-粘土鉱物複合体 図1
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-20
(45)【発行日】2023-09-28
(54)【発明の名称】粘土鉱物複合体
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/25 20060101AFI20230921BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20230921BHJP
   A61Q 15/00 20060101ALI20230921BHJP
   C01B 33/12 20060101ALI20230921BHJP
【FI】
A61K8/25
A61Q19/00
A61Q15/00
C01B33/12 A
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019076874
(22)【出願日】2019-04-15
(65)【公開番号】P2020176058
(43)【公開日】2020-10-29
【審査請求日】2022-03-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000113470
【氏名又は名称】ポーラ化成工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】仁王 厚志
(72)【発明者】
【氏名】リード, ニコラス
(72)【発明者】
【氏名】力丸 慎太郎
(72)【発明者】
【氏名】岩永 知幸
【審査官】▲高▼ 美葉子
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-240547(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0286826(US,A1)
【文献】特開平02-267114(JP,A)
【文献】特開2020-138949(JP,A)
【文献】韓国公開特許第2009-39969(KR,A)
【文献】Put On A Happy Face Tinted Moisturizer,ID 5945635,Mintel GNPD[online],2018年8月,[検索日2023.01.26],URL,https://www.portal.mintel.com
【文献】Applied Clay Science(2016),Vol.127-128,p.17-22
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
A61K 9/00- 9/72
A61K47/00-47/69
A61K35/00
A61K36/06
C01B33/12
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機化合物で修飾された粘土鉱物複合体であって、
前記有機化合物の分子サイズが前記粘土鉱物の電荷間距離の100%以下であり、
前記有機化合物が水添レシチンであり、
前記粘土鉱物がベントナイト及びヘクトライトからなる群から選択される、複合体。
【請求項2】
前記有機化合物の前記粘土鉱物に対する実測修飾率が50%以上である、請求項1に記載の複合体。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の複合体を含有する、皮膚外用剤。
【請求項4】
化粧料である、請求項に記載の皮膚外用剤。
【請求項5】
微小粒子付着抑制用である、請求項又はに記載の皮膚外用剤。
【請求項6】
前記微小粒子が、粒子状物質、花粉、粉塵、排出ガス、及び石綿からなる群から選択される、請求項5に記載の皮膚外用剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機化合物で修飾された粘土鉱物複合体に関する。
【背景技術】
【0002】
大気中には、種々の化学物質や生体異物が浮遊・飛翔していることが知られている。具体的には、自動車、火力発電所、焼却炉、暖炉、タバコなどの排煙、火山噴火による噴出物、土壌粒子などが由来の粒子状物質(PM)、花粉、粉塵、硫黄酸化物(二酸化硫黄など)、窒素酸化物(二酸化窒素など)などの排出ガス、石綿など、マイクロスケールの粒子が存在する。
【0003】
これらの微小粒子は、大気汚染を引き起こし、口や鼻から吸入することによって呼吸器系に悪影響を及ぼす他に、生体の最外層であり常に外界に曝されている皮膚からも体内に取り込まれ、肌にトラブルやダメージを生じさせることが懸念されている。例えば、タバコの排煙は窒素酸化物あるいは活性酸素種の生成を介して、皮膚におけるしわの形成や透明度を低下させることが知られているし、ある種の有機化合物は皮膚炎症を生じさせる危険性があり、また、粉塵の微小粒子がその表面に芳香族系炭化水素を吸着したまま皮膚組織を透過して遺伝子に影響することも指摘されている。また、スギやヒノキ等の花粉はアレルギー性鼻炎(花粉症)の原因となる。
【0004】
そのため、微小粒子が皮膚に付着したり、皮膚を介して体内に入り込んだりして、悪影響を及ぼすのを防ぐための試みが検討されている。例えば、特許文献1には、αゲル構造を有する組成物を適用して皮膚表面に膜を形成することにより、微小汚染物質が肌に付着し透過するのを抑制することが記載されている。特許文献2には、両性及びアニオン性ポリマー含有組成物を皮膚や衣類の表面に適用することにより花粉の付着を防止することが記載されている。非特許文献1には、ホスホリルコリンとアクリル酸モノマーとを重合して得た導電性の被膜を形成する素材を、微小粒子の付着抑制用素材とすることが記載されている。
【0005】
ところで、化粧料においては、ベントナイト等の粘土鉱物を有機化合物で修飾して得た有機変性粘土鉱物が、系の分散安定性やレオロジー調整性を高める素材として汎用されている(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2016-88866号公報
【文献】特開2006-2147号公報
【文献】特許第5044402号
【非特許文献】
【0007】
【文献】Miyazawa K. “Development of a shield technology to keep off air pollutants - Contribution to healthcare through a biocompatible polymer”, IFSCC Conference, Seoul (2017)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1~2及び非特許文献1の素材では、微小粒子の皮膚への付着抑制が必ずしも満足なものではなく、改善の余地があった。
かかる状況に鑑み、本発明は、微小粒子の皮膚表面への付着を抑制する技術を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、非特許文献1のように導電性の被膜が微小粒子の皮膚表面への付着抑制に有効であることに着目し、かかる被膜を形成しうる新たな素材を探索した。その結果、粘土鉱物からなる粉体が皮膚上に均一に並ぶこと、及び該粉体が通常負に荷電していることに着目し、該粉体を正電荷を有する有機化合物で修飾することにより、皮膚上で導電性の被膜を形成しうる複合体が得られることを見出した。そして、前記被膜の導電性を高めると微小粒子の皮膚表面への付着抑制効果を向上することにも着目し、導電性を高めるべく有機化合物の粘土鉱物からなる粉体への修飾率を上げることが有効であること、さらに所定の分子サイズの有機化合物を用いることで該修飾率を上げることができることに想到し、本発明を完成させた。
【0010】
すなわち、本発明は以下の通りである。
[1]有機化合物で修飾された粘土鉱物複合体であって、
前記有機化合物の分子サイズが前記粘土鉱物の電荷間距離の100%以下である、複合体。
[2]前記有機化合物の前記粘土鉱物に対する実測修飾率が50%以上である、[1]に記載の複合体。
[3]前記有機化合物がカチオン性又は両性化合物である、[1]又は[2]に記載の複合体。
[4]前記有機化合物がレシチンである、[3]に記載の複合体。
[5]前記粘土鉱物がベントナイト及びヘクトライトからなる群から選択される、[1]~[4]のいずれかに記載の複合体。
[6][1]~[5]のいずれかに記載の複合体を含有する、皮膚外用剤。
[7]化粧料である、[6]に記載の皮膚外用剤。
[8]微小粒子付着抑制用である、[6]又は[7]に記載の皮膚外用剤。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、微小粒子の皮膚への付着抑制作用に優れる被膜を形成することができる素材となる複合体が提供される。本発明の複合体は化粧料などの皮膚外用剤に好適に配合することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の複合体の塗膜を形成する複合体の帯電量と、該塗膜から剥離後の(遊離した)花粉への帯電移行量とを示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の複合体は、有機化合物で修飾された粘土鉱物である。
【0014】
本発明の複合体における粘土鉱物は、通常は板状粉体である。板状であることにより、皮膚等に塗布したときに平面上に均一に並びやすくなる。後述するように本発明の複合体は電気的に中性に近い導電膜を形成できる。通常、電荷を帯びている微小粒子は、皮膚上での静電気により付着しやすいところ、皮膚上に塗布された本発明の複合体の膜が皮膚の帯電を抑制できるため、微小粒子の付着を抑制することができる。このように電荷を逃がしやすくするため、粘土鉱物は平面上に並ぶことが好ましい。
【0015】
粘土鉱物は、通常は電荷を帯びており、正電荷でも負電荷でも構わないが、負電荷を有するものが好ましい。
粘土鉱物としては、スクメタイト系のヘクトライト、ベントナイトやモントリロナイト、カオリナイト、イライト、マリーン粘土鉱物(海泥)、デザートローズ粘土鉱物、パスカライトなどが挙げられ、これらのうちベントナイト及びヘクトライトが特に好ましい。なお、これらはいずれも負電荷を有する。
粘土鉱物の帯電部位は、等間隔に配置しており、板状粉体では板に並行な方向に規則的に並んでいる。通常その電荷間距離は特開2011-150037号公報に開示される方法で算出することができる。例えば、ベントナイトの主成分であるNa型モンモリロナイトのアニオンサイト間の距離は約1nmである。
粘土鉱物は、通常化粧料に配合され得る大きさのものを複合体調製に用いることができる。例えば、粘土鉱物は、原料として流通時に通常は凝集しているところ、かかる二次粒子の体積平均粒子径が、0.5~1000μmのものが好ましいが、特に限定されない。なお、粘土鉱物は一般的に、化粧料等の組成物に配合・分散する際に加温・攪拌等の処理を施され、通常は粒子径が小さくなる。例えば、25~80℃程度の加温と高せん断速度の攪拌により、体積平均粒子径が好ましくは5μm以下、3μm以下、より好ましくは1μm以下となり得る。ここで粒子径は、乾式粒度分布測定装置(例えば、ベックマンコルター社製、LS 13 320)を用いてレーザー回折散乱法により測定された値である。
【0016】
本発明の複合体における有機化合物は、通常は帯電している粘土鉱物を効率的に修飾するために、電荷を帯びており、正電荷でも負電荷でも構わないが、水中で正電荷を有するもの、より具体的にはカチオン性化合物又は両性化合物が好ましい。
すなわち、本発明の複合体を構成する粘土鉱物と有機化合物とは、負電荷を有する粘土鉱物とカチオン性有機化合物との組み合わせが好ましい。
【0017】
本発明の複合体における有機化合物は、前記粘土鉱物の帯電部位を効率的に修飾するため、粘土鉱物の電荷間距離に収まりやすい大きさのものである。具体的には、分子サイズが前記粘土鉱物の電荷間距離の100%以下であり、好ましくは80%以下であり、より好ましくは70%以下である有機化合物を用いる。かかる大きさの有機化合物を用いることにより、本発明の複合体の修飾化率は高いものとなり、その結果、後述の中性化率も高いものとなるため、微小粒子の付着抑制作用を発揮する。
本明細書において「分子サイズ」は、協和界面科学製自動表面張力計CBVP-Zを用いる表面張力測定により表面過剰濃度を算出し、その逆数である分子断面積の平方根をとった値である分子間距離の値を指すものとすることができる。また、単分子膜の表面膜圧を測定してπ-A曲線(表面圧-面積曲線)から算出した値であってもよい(椿信之ら、油化学、第41巻、第7号、551-557、(1992) 参照)。
【0018】
本発明の複合体における有機化合物は、天然由来のものでも合成物でも構わないが、好ましくは天然由来のものである。なお、天然由来とは、動植物、鉱物等から得られた物自体のほか、その化合物を人工的に製造したものも含まれる。
天然由来のものとしては、レシチンが好ましく挙げられる。ここで、レシチンには水添レシチン及び非水添レシチンが含まれ、本発明においては所定の分子サイズを満たす限りにおいていずれも好ましく用いることができる。なお、水添のレシチン(ジステアロイルホスファチジルコリン)場合、その分子サイズは、0.71nmである。
【0019】
また、本発明の複合体における有機化合物としては、4級アミノ基を有する化合物が好ましく挙げられる。具体的には、ステアリルトリメチルアンモニウムクロリド、ジメチルジステアリルアンモニウムクロリド等が挙げられる。
【0020】
本発明の複合体における、有機化合物による粘土鉱物の修飾の態様は、イオン結合および共有結合を介するものが含まれる。
複合化は、修飾に用いる有機化合物がカチオン化するpH領域の水媒体中で、該有機化
合物と粘土鉱物とを混合することにより行うことができる。例えば、有機化合物としてレシチンを用いる場合は、好ましくはpH6以下、より好ましくはpH3以下、さらに好ましくはpH2~3条件であり、かかるpH条件の水溶液中でカチオン化したレシチンが粘土鉱物に結合することにより複合体が形成される。
【0021】
本発明の複合体における、有機化合物の粘土鉱物に対する理論修飾率は、通常は100%となる。また、実測修飾率は、好ましくは50%以上、より好ましくは60%以上、さらに好ましくは70%以上である。
ここで、修飾率とは、複合化している有機化合物と粘土鉱物の単位格子平面あたりに存在する、有機化合物の有する電荷(通常はカチオン)のモル量を、粘土鉱物の交換可能な電荷(通常はアニオン)部位のモル量で除した値であり、有機化合物が粘土鉱物の結合部位(通常は電荷部位)に充填している率を表す。
理論修飾率は、有機化合物の分子サイズと粘土鉱物の電荷間距離とから、算出することができる。具体的には、粘土鉱物の表面をその電荷間距離の間隔の格子に見立てて、該格子の上に有機化合物の分子サイズを直径とする円を重ならないように最密充填した場合の、粘土鉱物の表面積に対する有機化合物分子の占有面積の割合として算出できる。また、理論修飾率は、特開2011-150037号公報の段落0031~0034に開示されるイオン間距離に係る記載に基づいても算出することができる。
また、実測修飾率は、熱分析装置により複合体の加熱重量変化を測定し、酸化発熱分解による重量減少量を複合化していた有機化合物の量とみなし、これを用いて算出した修飾率とすることができる。
【0022】
前述の通り本発明の複合体は、通常は互いに反対の電荷を有する有機化合物により粘土鉱物が修飾されたものであるため、電荷的に中性に近い。電荷が打ち消され合って、得られる複合体が電気的に中性になった程度を表す「中性化率」(100%に近いほど中性化の程度が大きい)は、前述の修飾率と同義であってよい。
また、本発明の複合体は、電荷的に中性に近く、具体的にはイースパートアナライザ(ホソカワミクロン、EST-G)で測定(印加電圧:100V、粒子カウント数:1000、室温25℃±2℃、湿度30%±3%、窒素ガス圧:0.02MPa)したときの、複合体の粒子の帯電量の絶対値が好ましくは1.5μC/g以下、より好ましくは1.0μC/g以下、さらに好ましくは0.7μC/g以下、さらに好ましくは0.5μC/g以下、特に好ましくは0.4μC/g以下である。
【0023】
本発明の複合体は、微小粒子の付着抑制作用を有する。
これは、本発明の複合体が形成する導電性の被膜が、通常帯電している微小粒子を電荷反発により避けるためである。なお、被膜による物理的な付着抑制作用をも同時に生じることは妨げられない。
【0024】
なお、本明細書において微小粒子とは、微小物質全般をいい、通常は肌に悪影響を与えうるものであり、具体的には特に限定されないが、自動車、火力発電所、焼却炉、暖炉、タバコなどの排煙、火山噴火による噴出物、土壌粒子などが由来の粒子状物質(PM)、花粉、粉塵、硫黄酸化物(二酸化硫黄など)、窒素酸化物(二酸化窒素など)などの排出ガス、石綿などの、化学物質や生体異物をいう。また、通常、マイクロスケールの粒子であり、例えば長径50μm以下のものである。また、粒子の形状は特に問わない。
【0025】
一般に、微小粒子は肌表面に物理的な刺激を与えたり、表皮に入り込んで炎症性因子の放出を促す刺激を生じさせたりすることが知られている。本発明の複合体は、微小粒子が肌に付着することを抑制できることから、微小粒子による炎症惹起を抑制しうるので、肌ダメージの予防のためにも好ましく用いることができる。ここで、「肌ダメージ」とは、肌が健康でないあらゆる状態をいい、例えば、表皮細胞が刺激を受けて炎症性因子の放出
により炎症が生じた状態や、その結果シワや色素沈着等が生じた状態をいう。
【0026】
したがって、本発明の複合体は組成物に好ましく配合することができ、前記組成物としてはは皮膚外用剤の態様とすることが好ましく、化粧料の態様とすることがさらに好ましい。化粧料としては、スキンケア化粧料、メークアップ化粧料、ヘアケア化粧料等特に限定されない。
【0027】
前記組成物の剤型としては、乳化剤型、ローション、オイル剤型、ジェル剤型、オイルゲル剤型、スプレー剤型、シートマスク剤型等、特に限定されない。
本発明の複合体は、組成物に他の界面活性剤を配合せずとも優れた分散性をも発揮するため、乳化剤型やオイルゲル剤型がより好ましい。
【0028】
前記組成物における、本発明の複合体の含有量は、組成物全量に対して総量で、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは1質量%以上、さらに好ましくは2質量%以上であり、また好ましくは20質量%以下、より好ましくは10質量%以下、さらに好ましくは5質量%以下である。例えば、本発明の複合体を油中水乳化剤型の組成物に配合する場合、組成物全量に対して、好ましくは0.5~5.0質量%、より好ましくは1.0~4.0質量%、さらに好ましくは2.0~3.5質量%の含有量とすることが好ましい。
かかる範囲とすることにより、所望の効果を得やすく、また処方設計の自由度を確保できる。
【0029】
前記組成物においては、通常の皮膚外用剤等で使用される任意成分を、本発明の効果を損なわない限りにおいて任意に含有することができる。この様な任意成分としては、各種有効成分、油性成分、他の界面活性剤、多価アルコール、増粘剤、粉体類、紫外線吸収剤等が挙げられる。
【0030】
有効成分としては、美白成分、シワ改善成分、抗炎症成分、他の動植物由来の抽出物等が挙げられる。
美白成分としては、一般的に化粧料に用いられているものであれば特に限定はない。例えば、4-n-ブチルレゾルシノール、アスコルビン酸グルコシド、3-О-エチルアスコルビン酸、アルブチン、エラグ酸、コウジ酸、リノール酸、ニコチン酸アミド、5,5'-ジプロピルビフェニル-2,2'-ジオール、5'-アデニル酸二ナトリウム、4-メトキシサリチル酸カリウム塩、ハイドロキノン、パントテン酸等が挙げられる。
【0031】
シワ改善成分としては、一般的に化粧料に用いられているものであれば特に限定はない。例えば、三フッ化イソプロピルオキソプロピルアミノカルボニルピロリジンカルボニルメチルプロピルアミノカルボニルベンゾイルアミノ酢酸ナトリウム、ニコチン酸アミド、ビタミンA又はその誘導体(レチノール、レチナール、レチノイン酸、トレチノイン、イソトレチノイン、レチノイン酸トコフェロール、パルミチン酸レチノール、酢酸レチノール等)、ウルソール酸ベンジルエステル、ウルソール酸リン酸エステル、ベツリン酸ベンジルエステル、ベンジル酸リン酸エステルが挙げられる。
【0032】
抗炎症成分としては、グリチルリチン酸、グリチルレチン酸、アラントイン、イソプロピルメチルフェノール、クラリノン、グラブリジン、サリチル酸、トコフェロール酢酸エステル、トコフェロールニコチン酸エステル、ニコチン酸アミド、パントテン酸、パントテニルアルコール、及びこれらの塩又は誘導体等が挙げられ、好ましくは、グリチルリチン酸及びその塩、グリチルレチン酸及びその塩、パントテニルアルコール並びにパントテン酸及びその塩である。
【0033】
他の動植物由来の抽出物としては、一般的に化粧料等に用いられているものであれば特
に限定はない。例えば、アケビエキス、アスナロエキス、アスパラガスエキス、アボカドエキス、アマチャエキス、アーモンドエキス、アルニカエキス、アロエエキス、アロニアエキス、アンズエキス、イチョウエキス、インドキノエキス、ウイキョウエキス、ウドエキス、エイジツエキス、エゾウコギエキス、エンメイソウエキス、オウゴンエキス、オウバクエキス、オウレンエキス、オタネニンジンエキス、オトギリソウエキス、オドリコソウエキス、オレンジエキス、カキョクエキス、カッコンエキス、カモミラエキス、カロットエキス、カワラヨモギエキス、キウイエキス、キューカンバーエキス、グアバエキス、クジンエキス、クチナシエキス、クマザサエキス、クララエキス、クルミエキス、グレープフルーツエキス、黒米エキス、クロレラエキス、クワエキス、ケイケットウエキス、ゲットウヨウエキス、ゲンチアナエキス、ゲンノショウコエキス、紅茶エキス、ゴボウエキス、コメエキス、コメ発酵エキス、コメヌカ発酵エキス、コメ胚芽油、コケモモエキス、サルビアエキス、サボンソウエキス、ササエキス、サンシャエキス、サンショウエキス、シイタケエキス、ジオウエキス、シコンエキス、シソエキス、シナノキエキス、シモツケソウエキス、シャクヤクエキス、ショウキョウエキス、ショウブ根エキス、シラカバエキス、スギナエキス、ステビアエキス、ステビア発酵物、セイヨウキズタエキス、セイヨウサンザシエキス、セイヨウニワトコエキス、セイヨウノコギリソウエキス、セイヨウハッカエキス、セージエキス、ゼニアオイエキス、センキュウエキス、センブリエキス、ソウハクヒエキス、ダイオウエキス、ダイズエキス、タイソウエキス、タイムエキス、タンポポエキス、茶エキス、チョウジエキス、チンピエキス、甜茶エキス、トウガラシエキス、トウキエキス、トウキンセンカエキス、トウニンエキス、トウヒエキス、ドクダミエキス、トマトエキス、納豆エキス、ニンジンエキス、ニンニクエキス、ノバラエキス、ハイビスカスエキス、バクモンドウエキス、ハスエキス、パセリエキス、バーチエキス、ハマメリスエキス、ヒキオコシエキス、ヒノキエキス、ビワエキス、フキタンポポエキス、フキノトウエキス、ブクリョウエキス、ブッチャーブルームエキス、ブドウエキス、ブドウ種子エキス、ヘチマエキス、ベニバナエキス、ペパーミントエキス、ボダイジュエキス、ボタンエキス、ホップエキス、マツエキス、マヨナラエキス、マロニエエキス、ミズバショウエキス、ムクロジエキス、メリッサエキス、モズクエキス、モモエキス、ヤグルマギクエキス、ユーカリエキス、ユキノシタエキス、ユズエキス、ユリエキス、ヨクイニンエキス、ヨモギエキス、ラベンダーエキス、緑茶エキス、リンゴエキス、ルイボス茶エキス、レイシエキス、レタスエキス、レモンエキス、レンギョウエキス、レンゲソウエキス、ローズエキス、ローズマリーエキス、ローマカミツレエキス、ローヤルゼリーエキス、ワレモコウエキス等のエキスが好ましいものとして挙げられる。
【0034】
油性成分としては、極性油、揮発性炭化水素油等が挙げられる。
極性油としては、合成エステル油として、ミリスチン酸イソプロピル、オクタン酸セチル、ミリスチン酸オクチルドデシル、パルミチン酸イソプロピル、ステアリン酸ブチル、ラウリン酸ヘキシル、ミリスチン酸ミリスチル、オレイン酸デシル、ジメチルオクタン酸ヘキシルデシル、乳酸セチル、乳酸ミリスチル、酢酸ラノリン、イソノナン酸2-エチルヘキシル、ステアリン酸イソセチル、イソステアリン酸イソセチル、12-ヒドロキシステアリン酸コレステリル、ジ-2-エチルヘキサン酸エチレングリコール、ジペンタエリスリトール脂肪酸エステル、モノイソステアリン酸N-アルキルグリコール、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、リンゴ酸ジイソステアリル、ジ-2-ヘプチルウンデカン酸グリセリル、トリ-2-エチルヘキサン酸トリメチロールプロパン、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、テトラ-2-エチルヘキサン酸ペンタンエリスリトール、トリ-2-エチルヘキサン酸グリセリル、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパンを挙げることができる。
【0035】
さらに、セチル2-エチルヘキサノエート、2-エチルヘキシルパルミテート、トリミリスチン酸グリセリル、トリ-2-ヘプチルウンデカン酸グリセライド、ヒマシ油脂肪酸メチルエステル、オレイン酸オイル、セトステアリルアルコール、アセトグリセライド、
パルミチン酸2-ヘプチルウンデシル、アジピン酸ジイソブチル、N-ラウロイル-L-グルタミン酸-2-オクチルドデシルエステル、アジピン酸ジ-2-ヘプチルウンデシル、エチルラウレート、セバチン酸ジ-2-エチルヘキシル、ミリスチン酸2-ヘキシルデシル、パルミチン酸2-ヘキシルデシル、アジピン酸2-ヘキシルデシル、セバチン酸ジイソプロピル、コハク酸2-エチルヘキシル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸アミル、クエン酸トリエチル、オクチルメトキシシンナメート等も挙げられる。
【0036】
また、天然油として、アボガド油、ツバキ油、タートル油、マカデミアナッツ油、トウモロコシ油、ミンク油、オリーブ油、ナタネ油、卵黄油、ゴマ油、パーシック油、小麦胚芽油、サザンカ油、ヒマシ油、アマニ油、サフラワー油、綿実油、エノ油、大豆油、落花生油、茶実油、カヤ油、コメヌカ油、シナギリ油、日本キリ油、ホホバ油、胚芽油、トリグリセリン、トリオクタン酸グリセリル、トリイソパルミチン酸グリセリル等が挙げられる。
【0037】
揮発性炭化水素油としては、直鎖でも分岐鎖でもよい炭素数12~16のアルカン、具体的にはイソドデカン、イソヘキサデカン等が挙げられる。
【0038】
界面活性剤としては、脂肪酸セッケン(ラウリン酸ナトリウム、パルミチン酸ナトリウム等)、ラウリル硫酸カリウム、アルキル硫酸トリエタノールアミンエーテル等のアニオン界面活性剤類、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ベンザルコニウム、ラウリルアミンオキサイド等のカチオン界面活性剤類、ベタイン系界面活性剤(アルキルベタイン、アミドベタイン、スルホベタイン等)、イミダゾリン系両性界面活性剤(2-ココイル-2-イミダゾリニウムヒドロキサイド-1-カルボキシエチロキシ2ナトリウム塩等)、アシルメチルタウリン等の両性界面活性剤類、ソルビタン脂肪酸エステル類(ソルビタンモノステアレート、セスキオレイン酸ソルビタン等) 、グリセリン脂肪酸エステル類(モノステアリン酸グリセリル等)、プロピレングリコール脂肪酸エステル類(モノステアリン酸プロピレングリコール等)、硬化ヒマシ油誘導体、グリセリンアルキルエーテル、POEソルビタン脂肪酸エステル類(POEソルビタンモノオレエート、モノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン等)、POEソルビット脂肪酸エステル類(POE-ソルビットモノラウレート等)、POEグリセリン脂肪酸エステル類(POE-グリセリンモノイソステアレート等)、POE脂肪酸エステル類(ポリエチレングリコールモノオレート、POEジステアレート等)、POEアルキルエーテル類(POE2-オクチルドデシルエーテル等)、POEアルキルフェニルエーテル類(POEノニルフェニルエーテル等)、プルロニック型類、POE・POPアルキルエーテル類(POE・POP2-デシルテトラデシルエーテル等)、テトロニック類、POEヒマシ油・硬化ヒマシ油誘導体(POEヒマシ油、POE硬化ヒマシ油等)、ショ糖脂肪酸エステル、アルキルグルコシド等の非イオン界面活性剤類、等が挙げられる。
【0039】
多価アルコールとしては、ポリエチレングリコール、グリセリン、1,3-ブチレングリコール、エリスリトール、ソルビトール、キシリトール、マルチトール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ジグリセリン、イソプレングリコール、1,2-ペンタンジオール、2,4-ヘキシレングリコール、1,2-ヘキサンジオール、1,2-オクタンジオール等が挙げられる。
【0040】
増粘剤としては、グアーガム、クインスシード、カラギーナン、ガラクタン、アラビアガム、ペクチン、マンナン、デンプン、キサンタンガム、カードラン、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース、コンドロイチン硫酸、デルマタン硫酸、グリコーゲン、ヘパラン硫酸、ヒアルロン酸、ヒアルロン酸ナトリウム、トラガントガム、ケラタン硫酸、コンドロイチン、ムコイチン硫酸、ヒドロキシエチルグアガム、カルボキシメチルグアガム、デキストラ
ン、ケラト硫酸、ローカストビーンガム、サクシノグルカン、カロニン酸,キチン、キトサン、カルボキシメチルキチン、寒天、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマー、アルキル変性カルボキシビニルポリマー、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリエチレングリコール、ベントナイト等が挙げられる。
【0041】
粉体類としては、表面を処理されていてもよい、マイカ、タルク、カオリン、合成雲母、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、無水ケイ酸(シリカ)、酸化アルミニウム、硫酸バリウム等の粉体類、表面を処理されていてもよい、ベンガラ、黄酸化鉄、黒酸化鉄、酸化コバルト、群青、紺青、酸化チタン、酸化亜鉛の無機顔料類、表面を処理されていてもよい、雲母チタン、魚燐箔、オキシ塩化ビスマス等のパール剤類、レーキ化されていてもよい赤色202号、赤色228号、赤色226号、黄色4号、青色404号、黄色5号、赤色505号、赤色230号、赤色223号、橙色201号、赤色213号、黄色204号、黄色203号、青色1号、緑色201号、紫色201号、赤色204号等の有機色素類、ポリエチレン末、ポリメタクリル酸メチル、ナイロン粉末、オルガノポリシロキサンエラストマー等の有機粉体類、が挙げられる。
【0042】
紫外線吸収剤としては、パラアミノ安息香酸系紫外線吸収剤、アントラニル酸系紫外線吸収剤、サリチル酸系紫外線吸収剤、桂皮酸系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、糖系紫外線吸収剤、2-(2'-ヒドロキシ-5'-t-オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、4-メトキシ-4'-t-ブチルジベンゾイルメタン等の紫外線吸収剤類、等が挙げられる。
【実施例
【0043】
以下に、実施例を挙げて、本発明について更に詳細に説明を加えるが、本発明がかかる実施例にのみ限定されないことは言うまでもない。
【0044】
<試験例1>複合体の調製及び修飾率の検討
(1)カチオン領域の確認
修飾に用いる有機化合物においては、その水溶液においてカチオン化するpH領域をゼータ電位測定(大塚電子製ELSZ-2)により確認した。
【0045】
(2)分子サイズの算出
前記有機化合物としては、レシチン(水添レシチンEmulmetik 950、Lucas Meyer Cosmetics製)、ジメチルジオクタデシルアンモニウムクロリド(富士フイルム和光純薬株式会社製)、及びラウリルベタイン(Amphitol 24B、花王株式会社製)を用いた。
ジメチルジオクタデシルアンモニウムクロリド及びラウリルベタインについては、表面張力測定(協和界面科学製自動表面張力計CBVP-Z)により、表面過剰濃度を算出した。表面過剰濃度の逆数である分子断面積から分子サイズを求めた。
レシチンの分子サイズは、単分子膜のπ-A曲線から算出された文献値((椿信之ら、油化学、第41巻、第7号、551-557、(1992))を採用した。
【0046】
(3)複合体の調製
各種有機化合物(終濃度1~25 mM)、ベントナイト(ホージュン、ベンゲルA)8 g、1N
HClまたはクエン酸を適量(pH調整用)、及び純水(up to 800g)を混合し、80±5℃下で2時間、スターラー撹拌した。その後、pH2.5~3に調整したHCl水溶液にて洗浄し、遠心分離したのち、上清廃棄する洗浄操作を3回実施した。さらに純水で1回洗浄後、吸引ろ過した残渣を減圧乾燥機(80℃、-0.1 MPa)にて一晩乾燥後、粉砕した。
【0047】
(4)修飾率の測定
熱分析装置(リガク製TP2-R/TG-DTA)により、加熱重量変化を測定し、酸化発熱分解に
よる重量減少量を複合化した有機化合物量とし、中性化度を算出した。
測定条件:温度範囲20~500℃、昇温速度5℃/min.、大気雰囲気下
試料容器:アルミパン
修飾率は、複合化している有機化合物/ベントナイトのmol比×100(%)とした
【0048】
表1に、各有機化合物の分子サイズと修飾率を示す。
分子サイズが1.12 nmのジメチルジオクダデシルアンモニウムクロリドや1.78 nmのラウリルベタインでは、修飾率はそれぞれ46.4%、24.7%と低かった。一方、分子サイズが0.71 nmと小さいレシチンでは、92.3%と高い修飾率となりほぼ完全に中性化されたといえる。
【0049】
【表1】
【0050】
<試験例2>付着抑制効果の検討
(1)試料 以下の粉体粒子を用いた。
実施例1:試験例1で調製したレシチン修飾ベントナイト複合体
比較例1:ジアルキルアンモニウム塩修飾ベントナイト「ベントン38V」(エレメンティスジャパン社製)
比較例2:ベントナイト
比較例3:ケラチンパウダー
【0051】
(2)粉体粒子(基剤)の帯電量の測定
実施例・比較例のいずれかの粉体粒子をガラス棒瓶に入れ3分間振とうし帯電前処理(強制帯電)とした。帯電している各粉体粒子の帯電量を、イースパートアナライザ(ホソカワミクロン、EST-G)を用いて測定した。測定条件は、印加電圧:100V、粒子カウント数:1000、室温25℃±2℃、湿度30%±3%、窒素ガス圧:0.02MPaとした。
【0052】
(3)花粉への帯電移行量の測定
花粉をガラス棒瓶に入れ3分間振とうし、帯電前処理(強制帯電)とした。
実施例・比較例のいずれかの粉体粒子の10質量%エタノール溶液を調製し、人工皮革(サプラーレ)に均一に塗布・乾燥した後、その人工皮革上に帯電している花粉を散布し、窒素ガスを吹き付け花粉を剥離した。遊離した花粉1000個の帯電量をイースパートアナライザを用いて測定した(測定条件は(2)と同様)。(剥離後の花粉の帯電量-散布前の花粉の帯電量)の絶対値を花粉への帯電移行量とした。
【0053】
結果を図1に示す。横軸は、粉体粒子(基剤)の帯電量であり、その絶対値が小さいほど中性化の程度が大きいことを示す。縦軸は、塗膜から花粉を剥離した時の、遊離した花粉への帯電移行量であり、大きいほど塗膜に付着した花粉が剥離されにくいことを示す。レシチン修飾ベントナイト複合体(実施例1)の形成する塗膜では、花粉への帯電移行量が小さく、優れた付着抑制効果が確認された。
図1